説明

超低周波交流磁界を用いた刺激装置

【課題】筋肉のこりや痛み,身体の怠さ,指先のしびれ,むくみ,あるいは、けがの後遺症などで苦しんでいる人々の回復に効果のある超低周波交流磁界を用いた刺激装置を提供する。
【解決手段】本発明による超低周波交流磁界を用いた刺激装置は、皮膚に磁界を作用させる方向に配置される電磁石(2A,2B)と、前記電磁石(2A,2B)を心拍相当の周波数で交流磁界を発生させる励磁電流を供給する電源装置1から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疲労の回復、こりの解消等に利用できる超低周波交流磁界を用いた刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体に磁気を作用させると、疲労の回復、こりの解消に役立つことが知られており、多くの提案がなされ、永久磁石のペレットを絆創膏で皮膚表面に配置する商品が広く用いられている。
特許文献1に係る電磁気コリ治療装置の発明は、磁界と電流による刺激を併用し、電流の流れの方向と磁界(直流)の方向、および流れ戻る細静脈血流の方向とを、それぞれ直交させ、流れ戻る静脈血流を増速させるコリの患部治療装置を提案している。
特許文献2に係る発明は、リッツ線コイルを用い1.0〜3.3kHzの磁界を発生する磁気刺激装置を提案している。
特許文献3に係る発明は、1〜2kHz程度の交番磁界による無痛治療器を提案している。
また特許文献4に係る発明は、約10000Hzの磁界を作用させる磁気治療器を提案している。
【特許文献1】特開平7−88196号公報
【特許文献2】特開2002−306614号公報
【特許文献3】特開平6−170003号公報
【特許文献4】特開平8−10341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本件発明者は、筋肉のこりや痛み,身体の怠さ,指先のしびれ,むくみ,あるいは、けがの後遺症などで苦しんでいる人々の部位を低周波治療器や直流磁石,あるいは、マッサージなどで刺激しても、一時的な回復でしかなく、回復効果の持続性が乏しいことおよびさらに、末梢血管からの鬱血が見られるようなけがの後遺症では、ほとんど効能が見られないことを見いだした。
種々の実験の結果、直流磁界や、交流磁界(低周波,高周波)ではなくその間の超低周波交流磁界が、血液やリンパに対して良い影響を与えていることに着目した。
本発明の目的は、ヒトの脈拍と同程度の非常に低い周波数で余り大きくない磁束密度を利用し、筋肉のこりや痛み,身体の怠さ,指先のしびれ,むくみ,あるいは、けがの後遺症などで苦しんでいる人々の回復に効果のある超低周波交流磁界を用いた刺激装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明による請求項1記載の超低周波交流磁界を用いた刺激装置は、
皮膚に磁界を作用させる方向に配置される電磁石と、
前記電磁石に心拍相当の周波数で交流磁界を発生させる励磁電流を供給する電源装置から構成されている。
本発明による請求項2記載の超低周波交流磁界を用いた刺激装置は、請求項1記載の超低周波交流磁界を用いた刺激装置において、
前記超低周波交流磁界は0.8〜1.2Hzの範囲内に設定または調節可能であり、電磁石の磁力は600〜800ガウスである。
本発明による請求項3記載の超低周波交流磁界を用いた刺激装置は、前記電磁石を独立してまたは拘束下に多数個使用する請求項1または2記載の超低周波交流磁界を用いた刺激装置において、
前記電磁石を独立して使用する場合は手動により、または前記電磁石を吸着盤で、皮膚に固定して磁界を作用させるか、
前記電磁石複数個を相互拘束下に磁界を作用させるものである。
本発明による請求項4記載の超低周波交流磁界を用いた刺激装置は、請求項3記載の超低周波交流磁界を用いた刺激装置において、
前記拘束下に磁界を作用させる複数の電磁石は、シートに固定されて皮膚表面に固定され磁界を作用させるものであるか、あるいは、
前記複数の電磁石がシート状体に面的に配置固定され、シート状体上の人の皮膚に磁界を作用させるものである。
【発明の効果】
【0005】
脈拍と同程度の非常に低い周波数で余り大きくない磁束密度を利用し、筋肉のこりや痛み,身体の怠さ,指先のしびれ,むくみ,あるいは、けがの後遺症などで苦しんでいる人々の回復に効果のある超低周波交流磁界を用いた刺激装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図面等を参照して、本発明による超低周波交流磁界を用いた刺激装置をさらに詳しく説明する。
交流磁気治療器に使われている磁気量は800ガウス程度であり、市販されている永久磁石を使用しているピップエレキバン(登録商標)は2000ガウスもの磁気量である。
本発明では600〜800ガウスの交流磁界を、疲労回復を図るために、血液とリンパに作用させる。
【0007】
血液は赤血球(ヘモグロビン(鉄分))と白血球、ブドウ糖を含んでおり、静脈血の滞留を防止することにより、肩こり等を解消できることが知られている。
本発明によれば、磁気治療器を現在の永久磁石から交流にする。これにより、ヘモグロビンが磁化され、方向性を持たせず常時刺激できるようにする。しかし従来の装置のように高い交流磁界を使用せず、心拍数(50〜70拍/秒)に略等しい交流とする。
なおこのようにすると、心臓ペースメーカーを装着した使用者も交流磁気の周波数を心拍数に準拠させるので心臓にはあまり影響を与えることなく使用できる可能性がある。
【0008】
リンパの場合、Na+ ,K+ ,Ca2+,Mg2+,Cl- ,HCO3- などのイオンが溶解した水溶液の濃度差が引き起こす浸透圧によって細胞間を移動する。そのリンパの移動には、電解質のイオン化傾向が効いてくる。このリンパの移動が速やかに行われなくなると、疲労やむくみが発生するので、交流磁気で電解質を刺激して細胞間のリンパの流れを滑らかにする。リンパの流れは手や足の指先から首筋まで流れて、首筋で静脈に流れ込む。
【0009】
血液に着目すると、疲労すると、グリコーゲン+ヘモグロビンに付着した酸素(動脈血)の酸化反応でエネルギーを出して疲労を回復させるが、そのあとの老廃物質を含んだ静脈血が毛細血管に滞留して疲労が回復しない。その静脈血中のヘモグロビンを刺激して血液の循環を活性化する。
【0010】
血流とリンパの流れをよくすると血流では毛細血管に滞留した静脈血のヘモグロビン(赤血球)とリンパ中の無機塩類のイオンを磁気が刺激して、それぞれの流れをよくする。また、刺激を交流磁気にすることで、使用者の血液が磁化されて一定の状態(閾値)に達するのを防止する。
【0011】
なお本発明による超低周波交流磁界を用いた刺激装置では、血液のみならずリンパの循環も問題にしているから、人の循環システム中のリンパについて概観する。
リンパは、白い血液と呼ばれる体液のことを言う。心臓のポンプ作用によって流れる血液に比べて滞りやすく、放置しておくと疲れやむくみが起こりやすくなるだけでなく、免疫力の低下にもつながる。
リンパ節は、リンパ管が集まっているジョイント部分なので、ここの流れをよくすることはとても大切である。リンパ節は、最も重要な鎖骨リンパ節の他に、腋下,わきの下,ひざの後ろ,脚のつけ根などにもある。
【0012】
リンパ管のところどころにはリンパ節がある。リンパ節は、股のつけ根の鼡径部や腕のつけ根の腋窩といった、四肢のリンパ管が体幹に入るあたりに多く集中している。また頭からのリンパ管のために、頸部にもリンパ節が集まっている。
たとえば足に傷をすると、鼡径部のリンパ節が腫れる。傷口から入った細菌は、傷の周りに炎症を起こすだけでなく、リンパ管に乗って運ばれていくので、リンパ節は、生体内に侵入した細菌や有害物質を血液循環中に入れないための関所の役目をして、そこでキャッチする。
リンパの滞りをなくし、リンパの流れをスムーズにするために本発明による超低周波交流磁界を用いた刺激装置が働く。リンパは、皮膚の表面近くを流れている為、刺激が強すぎると逆に、むくみや血行障害を起す原因となってしまう。
リンパはリンパ筋で合流し、心臓へ運びこまれる。前述したように本発明による超低周波交流磁界を用いた刺激装置の刺激によれば、良好に還流させられる。
【0013】
(超低周波交流磁界を用いた刺激装置の電磁石の実施例1)
超低周波交流磁界を用いた刺激装置の磁界発生部の実施形態を詳しく説明する。図1に後述する回復実験で使用した磁界発生部のブロック図を示す。
使用する交流磁気は600〜800ガウスである。周波数は1Hz(心臓に負担をかけないために、心拍数60〜70回/分に近似)である。
交流電源1の出力電圧は25V,インピーダンスは500オーム、出力電流は0.05Aである。周波数は1Hzつまり、0.5Hzで極性が変わる電流を供給して0.5Hzで磁界の方向を変える。
【0014】
この実施例は一組の電磁石2A,2Bを交流電源1に並列に接続して利用する例を示している。
電磁石2Aの鉄心4Aに捲回されているコイル部分3Aは非透磁性の絶縁ゴム6Aでカバーされている。磁気を発生する鉄心4Aの円盤状の先端部を患部に密着させるようにシリコンゴム製で円錐状の吸盤5Aを採用した。電磁石2Bの構成についても全く同様であるから説明を省略する。
【0015】
600ガウスの交流磁気の発生部を設計するために、磁力Bと磁束密度Φを式(1) と式(2) でそれぞれ表すと
B=Φ/S[T] ・・・ (1)
Φ=μn2 ILS[G] ・・・ (2)
となり、1G=10-4Tを用いて式(1) と式(2) の係数を合わせた後、式(2) の結果を式(1) に代入すると
104 B=μn2 IL ・・・ (3)
となり、式(3) が得られる。その式をエナメル線の巻数nを求める式(4) に変換すると
2 =104 B/(μIL) ・・・ (4)
となる。
なお、B:磁力[T],Φ:磁束密度[G],S:面積[m2],μ:透磁率,L:鉄心の長さ[m],n:エナメル線(直径0.3mm)の巻数,I:電流[A]をそれぞれ表す。
鉄心に用いる純鉄の透磁率μは8π×105 〜1.2π×104 の範囲であるが、600ガウス近傍の交流磁気を得るためにμ=8π×105 を採用した。
電流はI=0.05A,鉄心の長さをL=0.05mとして、式(3) から算出したエナメル線の巻数はn=309となる。
【0016】
(回復試験の結果と考察)
交流磁気によるこりや痛みの回復試験は3日間隔で、15分間ずつ3回、被験者がこりや痛みを訴えた首筋,肩,背中,腰のうち、もっともひどい部位に600ガウスの交流磁気の発生端子を吸着させて行った。
2時間後に回復状況を調査するのであるが、けがの後遺症で苦しんでいる3名については、特別にその部位を対象とした。
こりや痛みの被験者を25歳から45歳未満の若年層,45歳から65歳未満の中年層,65歳以上の老人の3グループに分け、1グループを男女5名ずつ計10名とした。
【0017】
3グループとも大体2回の回復処置で閾値(こりや痛みの回復度60%)に達した。2回目の調査結果に注目すると、若年層の40%は15分の回復処置時間が『長すぎる』と回答し、中年層では20%が『短すぎる』と回答した。老人になると100%が『丁度よい』と回答している。その理由として社会活動の重みが挙げられる。つまり、中年層は社会の中枢で活躍しており、若年層はその予備段階で、老人は社会の活動からリタイアした状況にある。さらに、回復効果の追跡調査をしたところ、15分、3回の回復処置で2〜3週間にわたって効果が持続するという回答が約70%の被験者から得られた。
【0018】
つぎに、鞭打ち症(若年層),右肩打撲(老人),半月板の損傷による両膝関節の鬱血(老人)などに対する3回の回復処置効果であるが、鞭打ち症は、交流磁気による心理的抑圧感からの解消と末梢血管部の静脈血における循環機能の活性化のために、身体がすっきりし、患部が暖かくなったと考えられる。右肩打撲傷と両膝関節の半月板の損傷は、交流磁気の回復処置によって、鞭打ち症と同様に末梢血管部の静脈血における循環機能が活性化したために、右肩打撲傷では痛みが取れ、肩がまわるようになり、両膝関節の半月板損傷の場合は、痛みは残存するけれども、膝関節の鬱血が見られなくなった。
【0019】
(超低周波交流磁界を用いた刺激装置の交流電磁石の実施例2)
図2は、交流電磁石の実施例2の平面図(A)および断面図(B)である。先に説明した実施例1の電磁石2A,2Bと略同等の電気的な仕様を持つが、より薄くした電磁石である。
図において、電磁石10は、ブラスチックのボビン(15,16)の中心に鉄心14を受け入れている。ボビンの軸回りにコイル13が巻かれている。コイル13には、リード線17,17を介して励磁電流が供給される。ボビンの直径は30mm、鉄心14の直径は10mmであり、電磁石10の厚みは10mmである。
【0020】
図2に示した電磁石10を多数個用いて人体の種々の部位に適用して血流、リンパの還流を促進することができる。
(首回りの応用 第1の利用例)図3は電磁石10を首回りのリンパ節に適用する例を示している。同図(A)に示すように、シリコンゴムバンド31に電磁石10を複数個固定する。シリコンゴムバンド31の両端には適宜な締結手段(面ファスナー)32,32が設けられている。電源内蔵操作部33には操作キーが設けられている。そして、電源内蔵操作部33は、ケース等に適宜収容され、携帯して簡単に操作可能に構成されている。同図(B)は着用状態を示してある。
【0021】
(両肩や腰等の任意の部位への対応)電磁石10の磁界発生端の回りにシリコンゴム製の吸盤(図示せず)を装着し、肩や腰に吸着させ超低周波交流磁界を作用させて刺激する。なお吸盤については図1参照。
(広域な適用 第2の利用例)図4に示すように、シート43の上に面ファスナー42を展開し、その上の任意の位置に、底面41が固定されている電磁石10を適宜固定する。その表面にシート44を配置する。あらかじめ、マットの中に電磁石10を埋め込みにしておくこともできる。図5は、刺激装置の電磁石の配置例を示す図である。図の例では、6×18=108個配置してある。
【0022】
交流磁気によって、こりや痛み,あるいは、けがの後遺症などが回復したのは、循環機能が低下していた静脈血中のヘモグロビンが交流磁気によってプラス、マイナス交互に1秒間当たり100〜120回刺激されることにより、ヘモグロビンの動きが活性化され、それによって低下していた末梢血管部の静脈血の循環機能も回復したと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による超低周波交流磁界を用いた刺激装置の電磁石の実施例1を示すブロック図である。
【図2】本発明による超低周波交流磁界を用いた刺激装置の電磁石の実施例2を示す図である。
【図3】本発明による超低周波交流磁界を用いた刺激装置の第1の利用例を示す説明図である。
【図4】本発明による超低周波交流磁界を用いた刺激装置の第2の利用例を示す説明図である。
【図5】前記第2の利用例における電磁石の平面配置例を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 交流電源
2A,2B,10 電磁石
3A,3B,13 コイル
4A,4B,14 鉄心
5A,5B 吸盤
6A,6B 絶縁ゴム
15,16,41 ボビン形成要素
17 リード線
31 シリコンゴムバンド
32,42 締結手段(面ファスナー)
33 電源内蔵操作部
43,44 シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に磁界を作用させる方向に配置される電磁石と、
前記電磁石に心拍相当の周波数で交流磁界を発生させる励磁電流を供給する電源装置から構成した超低周波交流磁界を用いた刺激装置。
【請求項2】
請求項1記載の超低周波交流磁界を用いた刺激装置において、前記超低周波交流磁界は0.8〜1.2Hzの範囲内に設定または調節可能であり、電磁石の磁力は600〜800ガウスである超低周波交流磁界を用いた刺激装置。
【請求項3】
前記電磁石を独立してまたは拘束下に多数個使用する請求項1または2記載の超低周波交流磁界を用いた刺激装置において、
前記電磁石を独立して使用する場合は手動により、または前記電磁石を吸着盤で、皮膚に固定して磁界を作用させるか、
前記電磁石複数個を相互拘束下に磁界を作用させる超低周波交流磁界を用いた刺激装置。
【請求項4】
請求項3記載の超低周波交流磁界を用いた刺激装置において、
前記拘束下に磁界を作用させる複数の電磁石は、シートに固定されて皮膚表面に固定され磁界を作用させるものであるか、あるいは、
前記複数の電磁石がシート状体に面的に配置固定され、シート状体上の人の皮膚に磁界を作用させるものである超低周波交流磁界を用いた刺激装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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