説明

超多孔質炭素ナノアーキテクチャー上におけるナノスケール酸化マンガンの無電解析出

【解決手段】 複合材料を形成する方法であって、表面と細孔とを有する多孔質炭素構造を提供する工程と、前記細孔の大半を完全に充填または閉塞することなく、MnOを有するコーティングを前記構造に溶浸する工程とを有する方法。電荷を蓄積する方法であって、アノードとカソードと電解質とを有するキャパシタ(コンデンサ)を提供する工程であって、前記アノード、前記カソード、またはその双方は、表面および細孔を有する多孔質炭素構造を有する複合材料と、MnOを有するコーティングであって、前記細孔の大半を完全に充填または閉塞しないものである、前記表面上のコーティングと、前記複合材料と電気的に接触する集電体とを有するものである、前記キャパシタを提供する工程と、前記キャパシタを充電する工程とを有する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2006年9月11日付で出願された米国仮特許出願第60/847,399号に基づく利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
電気化学キャパシタ(別称「スーパーキャパシタ」または「ウルトラキャパシタ」)はエネルギー貯蔵材料の1分類であり、電池の高エネルギー密度と誘電体キャパシタから得られる高出力密度と間にある性能ギャップの架け橋になるものとして非常に期待されている。電気化学キャパシタでのエネルギー貯蔵は、二重層容量および疑似容量という2つの主な機序により達成される。
【0003】
二重層容量は、電圧を印加した界面に生じる電荷の分離から生じる。この機序の場合、容量は活性電極の表面積に関係し、液体電解質での実用的な容量は10〜40μFcm−2である。二重層容量ベースの電気化学キャパシタは、通常、炭素エアロゲル、発泡材(発泡体)、ナノチューブまたはナノファイバーの集合体、および紙を含む大表面積の炭素電極を伴って設計される。特に炭素エアロゲルとそれに関連する多孔性炭素は、表面積が大きく、多孔率が高く、また導電率が優れている(>40Scm−1)ことから魅力的である。このような質の高い炭素ナノアーキテクチャーの多孔率は急速な充放電動作をサポートするが、炭素電極の全体的なエネルギー貯蔵容量は、その二重層容量機構に依存するため最終的に限られている。
【0004】
疑似容量は、電流−電圧プロファイルが二重層キャパシタの電流−電圧プロファイルに似たファラデー反応を広義に説明したものである。この機序には真の電子移動反応が伴い、厳密に電極面だけに限定されないため、疑似容量を呈する材料は、二重層キャパシタと比べ高いエネルギー密度を有することが多い。疑似容量に関し研究されている主な材料の分類は、遷移金属酸化物および導電性高分子の2つである。
【0005】
現時点における電気化学キャパシタの最良候補の一部は、カチオン−電子挿入機序により電荷を蓄えるRuOなど、イオン−電子導電性金属酸化物を混合しナノスケールの形態にしたものをベースとしている。
【0006】
【数1】

【0007】
無秩序な水和RuOをベースとした電極では、最高720Fg−1の比容量が得られる。しかしながら、RuOの適用は、ルテニウム前駆体がコスト高なことにより制約を受ける。
【0008】
最近、電気化学キャパシタ用の活性物質として酸化マンガンが注目を集めたが、これは主に水和RuOと比べ大幅にコスト安なためである。NRLにおいて最近の文献調査および諸研究結果を合わせたものによると、ミクロン厚膜などの従来の電極構成、または炭素および結合剤を含んだ複合電極で調製した場合、MnOは炭素スーパーキャパシタに匹敵する〜200Fg−1の比容量をもたらすが、水和RuOで得られる720Fg−1に比べるとはるかに劣ることが示されている。ただし、PangらおよびToupinらの個別の報告によると、MnOは、集電板上に非常に薄い膜として生成した場合(数十ナノメートル以下)、それぞれ700Fg−1および1380Fg−1の比容量をもたらすことが可能である。この容量測定値の差は、MnOの長距離の電子および/またはイオン伝導率(導電率)が良好でなかったことによる可能性があり、その場合、従来の電極設計における充放電工程は抑制されてしまう。MnOの極薄膜は高い比容量をもたらすが、この構成では、実用的なEC装置の、面積によって規定された比容量を制限してしまうおそれがある。
【0009】
その代替態様としては、(高価な炭素基板である)カーボンナノチューブまたは代替MnO成膜方法(電着やスパッタリングなど)を取り入れた電極構造を伴うものがあるが、これらはより複雑でコストがかかり、制御もより困難である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、ナノスケールのMnO析出物でコーティングされた高度に多孔質の炭素ナノ構造を有するハイブリッド電極構造の概略図を示したものである。
【図2】図2は、(i)成長する膜により細孔が最終的に閉塞されてしまう不完全に管理された態様、および(ii)管理された自己制御的な析出での、超多孔質電極構造への電着の概略図を示したものである。
【図3】図3は、(aおよびb)酸性条件で4時間析出したMnO−炭素、(cおよびd)中性条件で4時間析出したMnO−炭素、および(eおよびf)炭素ナノフォームのみの走査型電子顕微鏡画像を示したものである。
【図4】図4は、中性条件で4時間析出したMnO−炭素の断面の走査型電子顕微鏡画像(最上部および当該試料の同じ領域に対応した、炭素成分およびマンガン成分に関する元素マッピング画像(中および最下部をそれぞれ示したものである)。
【図5】図5は、炭素エアロゲルだけの電極(―)、ならびにそれぞれ4時間酸性析出(− − −)および4時間中性析出させた(. . .)MnO−炭素ナノフォーム電極の、1M NaSO中、2および20mVs−1でのサイクリックボルタモグラムを示したものである。
【図6】図6は、酸性析出および中性析出させたMnO−炭素ナノフォームと、炭素ナノフォームだけのものとについて、ナイキストプロットおよび容量対周波数のプロファイル(曲線)を示したものである。
【図7】図7は、AgMnOを析出前駆体として4時間中性析出させたMnO−炭素ナノフォームの表面の走査型電子顕微鏡画像を示したものであり、これらは、pH6.9のリン酸緩衝液を追加したもの(上)およびpH6.9のリン酸緩衝液を追加しなかったもの(下)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ナノ構造化したMnOと炭素ナノアーキテクチャーとのハイブリッドは、高い出力密度を維持する高エネルギー密度電気化学キャパシタ用の電極構造として設計できる。ナノスケールMnOの均一な極薄コーティングは、制御されたpH条件下で水溶性の過マンガン酸塩から無電解析出を行うことにより、多孔質で大表面積の炭素基板(炭素ナノフォームなど)の内部に組み込むことができる。その結果得られるハイブリッド構造は、水溶性の電解質中で電気化学的に循環させた場合、重量比容量、体積比容量、および面積によって規定された比容量の点で改善された特性を呈する。この設計は、連続した細孔網を有する他のメソ多孔質(メソポーラス)およびマクロ多孔質(マクロポーラス)の炭素形態にも拡張できる。
【0012】
電気化学キャパシタに関するMnOの性能限界は、多孔質で大表面積の炭素構造にMnOの不連続なナノスケールコーティングまたは成膜を施すハイブリッド電極設計により対処できる(図1を参照)。そのような構成では炭素骨格により長距離の電子伝導が促進され、MnO相を介した固体中のイオンの輸送距離は、巨視的な(マクロスケールの)多孔質電極の全体にわたりナノスケールの炭素‖MnO‖電解質界面を保つことにより最小限に抑えられる。このような設計は、エアロゲル/ナノフォーム、鋳型メソ多孔質炭素、およびナノチューブ/ナノファイバーの集合体を含む(これに限定されるものではないが)種々の多孔質炭素基板を使って実現できる。
【0013】
MnO−炭素複合材料の合成および電気化学的特徴付けは、すでに報告されており、諸成分の単純な物理的混合、KMnOなどの前駆体を使った化学的析出、および電気化学的析出を含む種々のアプローチを使って、ナノスケールMnO析出物をカーボンナノチューブに取り込むことに主に焦点が置かれている。これらの場合、MnOを組み入れることにより、MnOにより修飾されたカーボンナノチューブを含む電極構造の容量は改善されるが、その複合構造の全体的な比容量は、通常、MnOローディングの重量%が高い電極でさえ<200Fg−1に制限される。ただしLeeらにより例外が1件報告されており、それによるとMnO複合構造で最高415Fg−1(正規化済み)の比容量が実証された。しかし、これらの結果はMnOにより修飾されたカーボンナノチューブを含んだミクロン厚の電極構造についてのみ実現されたものであり、ここでも構成がエネルギー密度を制限することとなっている。
【0014】
Dongらが示したように、鋳型メソ多孔質炭素粉末もMnO析出させるための基板として使用されており、Dongらは、過マンガン酸塩と前記炭素基板との反応を使って、メソ多孔質壁上に直接ナノスケールMnO析出物を生成した。その結果得られたMnO−メソ多孔質炭素構造を電気化学的に試験した結果、MnO析出物自体は、ナノメートル厚のMnO膜についてPangらが報告した700Fg−1に近い〜600Fg−1の比容量を呈したことが明らかになった。このようにMnO正規化容量が高いにもかかわらず、MnOのローディング重量が比較的少ない(最高26%)ため、ハイブリッドMnO−メソ多孔質炭素構造の全体的な比容量は200Fg−1にとどまった。メソ多孔質炭素基板内でのMnO成膜の度合いは、炭素の細孔径が本質的に小さい(〜3nm)ことにより制限される可能性がある。
【0015】
DongらおよびLeeらの研究では、大表面積基板上のナノスケールのMnO析出物が実際に高い比容量をもたらすことを実証している。電気化学キャパシタ用にMnO−炭素ハイブリッド構造の性能をさらに最適化するには、少なくとも次の3つの設計パラメータ対策を講じなければならない。(i)高いMnOローディングを実現する(>50重量%)、(ii)巨視的厚み(数十〜数百ミクロン)を伴った電極構造を製作する、および(iii)連通した細孔サイズ>5nmの3次元細孔網を保つ。
【0016】
分散された炭素粉末と対照的に、厚みのある炭素基板を使うと、炭素鋳型の天然細孔構造を維持しながら、電極構造全体にわたり均一なMnO析出をもたらす上で新しい課題が生じる。高品質な細孔構造は高レートでのEC動作に必要不可欠であり、これにより電解質の溶浸およびイオンの輸送が促進される。これらの特性は、図2に概略的に示したように、本質的に自己制御的なコーティング方法を使って達成できる。本開示では、水溶性過マンガン酸塩(MnO)および炭素エアロゲル/ナノフォーム基板の酸化還元反応(レドックス反応)に基づいた、ナノスケールMnOの自己制御的無電解析出について説明している。このプロトコルにより調製したMnOは、カチオンおよび水を取り込んだ複雑な構造になり、この材料は本願の本文中でMnOと呼ばれる。
【実施例1】
【0017】
炭素ナノフォーム上におけるMnOの無電解析出
炭素ナノフォーム紙は、市販のものを購入するか、または自作した。MnO−炭素ナノアーキテクチャーハイブリッドは、水溶液中の過マンガン酸塩の還元分解に基づいて作製した。この炭素ナノアーキテクチャー表面を、水溶性過マンガン酸塩を不溶性MnOに変換する犠牲還元体として作用させることができる。
【0018】
まず、炭素ナノフォーム基板(〜170μm厚)を、pHを調整した水溶液(0.1M HSO、0.1M NaSO、または0.1M NaOH)中で、真空溶浸により湿らせた。次に、それらの試料をそれぞれのpHで、5分間〜4時間、0.1MのNaMnOに浸した。前記MnO−炭素ナノフォーム紙を超純水で完全に洗ったのち、N下において〜50℃で8時間乾燥させたのち、減圧下で一晩置いた。
【0019】
炭素ナノアーキテクチャー全体にわたりナノスケールMnO析出物を生じさせ、それと同時に炭素電極の外側の境界に厚いMnOコーティングが形成されないようにするには、過マンガン酸塩の還元反応の制御が必要になる場合がある。予備的な結果によると、MnO析出物の品質を決定する際、pHが重要な因子である可能性が示唆された。
【0020】
図3aおよび3bの走査型電子顕微鏡画像(scanning electron micrograph:SEM)で示すように、酸性条件の場合、過マンガン酸塩は炭素ナノフォームに反応して、おそらく酸中の過マンガン酸塩の自己触媒分解により、炭素電極の外側の境界上に主にMnOの厚いクラスト(殻)を形成する。酸性溶液から析出したMnOクラストの断面画像(図3aの挿入図)を見ると、4時間の析出後、クラストの厚さが〜4μmであったことが明らかである。これと対照的に、中性pHまたはアルカリ性pHの溶液における過マンガン酸塩の還元は、炭素エアロゲルだけの場合(図3eおよび3f)とほぼ見分けがつかない態様で均一なMnO析出物を生じ(中性試料は図3cおよび3d)、前記ナノフォーム電極の外側境界にMnOクラストは形成されなかった。
【0021】
MnOの取り込み質量(24時間の析出で最高〜60%)は、溶液のpHとは比較的無関係な可能性がある。さらにSEM解析により、初期の炭素ナノフォームの多孔質微細凹凸は、MnO析出後もおおむね保たれる可能性があることが確認された(図3dおよび3fを参照)。ナノフォームの高品質細孔構造を維持することにより、高レートの充放電動作でより優れた電気化学性能が得られる。
【0022】
中性条件で合成されたMnO−炭素ナノフォームの断面SEMおよび元素マッピング画像(図4)は、当該電極構造の厚み全体にわたりMnが均一に分布可能なことを示している。多孔質炭素ナノアーキテクチャー内に、このような均一かつ適合性の高い態様でMnOドメインを取り込むと、酸性の析出条件で得られた理想より劣る構造と比べ、優れた性能を伴ったハイブリッド電極構造が得られる。X線光電子分光法を使用し、Mn析出物が主にMnIII/IVの形態であり残留MnOはなかったことが確認された。
【実施例2】
【0023】
ハイブリッド構造の電気化学的特徴付け
前記MnO−炭素ナノフォーム電極を、電気化学分析のため1M NaSOにより減圧下で湿らせ、サイクリックボルタンメトリー、インピーダンス分光法、および定電流充放電測定などの技術を使って、従来の3電極電気化学セル(電気化学電池)で特徴付けた。炭素エアロゲルだけの電極、ならびにそれぞれ4時間酸性析出および4時間中性析出させたMnO−炭素ナノフォーム電極の、1M NaSO中、2および20mVs−1での代表的なサイクリックボルタモグラムを、図5に示す。
【0024】
すべての電気化学的測定には、飽和カロメル参照電極(基準電極)(saturated calomel reference electrode、略称SCE)および網目ガラス状炭素補助電極を使用した。2mVs−1ですべての曲線が略対称な矩形を呈し、比較的低い非補償電極または非補償溶液抵抗を示した。これらの曲線の0.1〜0.6V対SCEの区間について、重量測定値(試料の総質量で正規化)、容積測定値、および面積で正規化した容量値を計算したものが表1である。酸性および中性で析出させた試料については、総重量測定による容量値も容積測定による容量値も増加している。特筆すべき点として、中性析出試料について、重量測定容量は2倍増加している一方、容積測定容量は4倍以上大きい。中性で析出させたハイブリッド電極など、均一なナノスケールMnO析出物の場合、MnOを取り込むと、電極構造の容積を増やすことなく付加的な容量が得られることは注目に値する。マイクロ電気機械(microelectromechanical、略称MEMS)装置やオンチップ装置など、設置面積または面積が制限された構成でパルス出力が必要とされる場合は、面積で正規化したエネルギー貯蔵能力も考慮すべきである。MnO/炭素複合材料について面積で正規化した容量は報告されないことが多いが、通常、約10〜50mFcm−2である。これと対照的に、本ハイブリッド電極設計では、ナノスケール電極/電解質界面の利点を維持しつつ、中性で析出させたMnO−炭素ハイブリッド電極の面積正規化容量が?2Fcm−2のオーダーを超えるよう、限られた設置面積で電極構造を3次元に突出させる。
【0025】
表1のMnOに起因する容量の上限および下限は、次の2つの仮定の一方を使って推定した。(1)すべての容量はMnO相から生じる(上限)、あるいは(2)試料の総容量は、炭素二重層容量およびMnO容量の和である(下限)。酸性および中性で析出させた試料の場合、MnO相に起因する容量は、この範囲に含まれる可能性が高く、炭素からの容量寄与は、MnOの空間分布の変動により、酸性および中性の場合で異なることが期待される。例えば酸性の場合、電極内部におけるMnO析出量は限られているため、炭素の二重層容量からの寄与は概して影響を受けないはずである。そのため、MnOで正規化した容量は、下限推定値付近になる可能性が高い一方、中性試料に関するMnO正規化容量は、電極内部の炭素に対する広範囲なMnOコーティングの結果、より高まることが期待される。
【0026】
表1の酸性および中性で析出させたMnO試料に関する容量の総増加分は、類似しているが、2つの試料のMnO空間分布の違いは、境界にクラストが形成された酸性析出MnO−炭素ナノフォームの20mVs−1でのボルタンメトリー曲線の傾きに現れており、これは不均一なMnO析出(成膜)により抵抗が増加したためである。この抵抗増加は、図6の電気化学インピーダンス解析(EDC=200mV対SCE)により確認された(0および600mVでも同様な結果が見られた)。
【0027】
高周波数では、ナイキストプロット(図6a)で示すとおり、各電極の非補償溶液抵抗(RΩ)は同様であった。ただし、酸性条件で析出したMnO−炭素ナノフォーム電極の大きな半球状成分が分極したことが、約15Ωの電荷移動抵抗(R)で示されている。これに対し、中性で析出させた試料のプロファイル(曲線)は、炭素ナノフォームだけの場合(R〜1Ω)により類似している。図6bの中性析出試料に関する容量対周波数のプロファイル(曲線)は、約0.01〜1Hzの区間で、炭素ナノフォームだけの試料に対し、MnO成分による容量増加が可能であることを示している。周波数の増加に伴い、どちらの電極の容量も低下し始め、200Hzで1Fg−1まで落ちた。前記酸性析出試料は、初期0.01Hzで、ナノフォームだけのものに対し高容量だったが、前記中性析出試料よりははるかに低く、0.1〜1Hzで低下し始め、30Hzで1Fg−1まで落ちた。
【0028】
前記酸性析出試料については、電極外側に形成された厚いMnOクラストが電子およびイオンの輸送を妨げるため、上記より高抵抗および低容量になる可能性が高いが、中性条件で析出したより理想的で均一な試料へのMnO分布は、ナノフォームだけの試料により類似した電気化学特性をもたらす。
【0029】
【表1】

【0030】
これらのデータは、酸性または中性の過マンガン酸塩溶液から4時間の析出を行って得られたものである。
** ナノフォーム電極面の幾何学的面積で正規化した。
【0031】
本明細書で説明した無電解析出は、未修飾の炭素基板より優れた電気化学容量を伴ったMnO−炭素ハイブリッドナノアーキテクチャーを合成する上で、単純で費用効果が高くスケーラブルなアプローチにできる。本開示では、析出工程中に溶液のpHを制御することにより、巨視的厚みのある多孔質炭素鋳型全体にわたり均一なMnO析出が実現されることを示している。
【0032】
このような構造の電気化学的解析から容易に理解されるように、均一なMnO析出には、多数の利点が考えられる。例えば、均一なMnO分布を呈するMnO−炭素ハイブリッド(中性pHでの析出)は、全体的により高い重量測定容量および容積測定容量と、MnOが主に電極の外側境界上のクラストとして析出する酸性析出MnO−炭素ハイブリッドの場合より高いMnO比容量とをさらに呈する。
【0033】
また、炭素ナノアーキテクチャー内部で均一な析出が生じると、電極構造の容積を増やさずにMnO成分が追加されて容量増加に寄与するため、容積測定容量の観点からより大きな改善がもたらされる。例えば、中性pH条件でコーティングした炭素ナノフォームの場合は、重量測定容量が3.3倍になり、容積測定容量は4.1倍になった。これらハイブリッドの電気化学性能は、無電解析出条件をさらに最適化し(溶液温度、前駆体濃度、過マンガン酸塩の対イオン(遷移金属スペシエーションを含む)、緩衝液を含む酸性または中性の媒体を画成する成分を変更するなど)、また炭素鋳型細孔構造を変更し、特に細孔径より大きくし(100〜200nm)全体的に多孔率を高めることを目標としてMnOをより多くローディングできるようにすると、いっそうの改善が可能である。
【0034】
析出プロトコルの2つの修正を加えた実施例では、炭素ナノフォームを緩衝液を加えた条件および緩衝液なしの条件で、市販されている名目上中性の水溶液AgMnOに浸した。結果的に得られるAgMnIII/IV1−x析出物の形態は、緩衝剤の有無により影響される。緩衝液なしでは、酸化物コーティングがより多くの小塊を有し、外側の境界に選択的に析出する一方、緩衝液を加えた媒体では、析出物がより均一に分布し、小塊を有さず、より薄くなる(図7に見られるように)。
【0035】
明らかに、本発明は上記の説明に照らして種々の変形が可能である。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明は、本明細書で説明した形態以外でも実施可能であることは言うまでもない。また、単数形扱いしている要素については、当該要素を単数のみに限定すると解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料を形成する方法であって、
表面と細孔とを有する既製の電極構造を提供する工程と、
前記細孔の大半を完全に充填または閉塞することなく、MnOを有するコーティングを前記構造に溶浸する工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記MnOには、カチオンおよび水が取り込まれるものである。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、前記構造は炭素エアロゲルである。
【請求項4】
請求項2記載の方法において、前記構造は、炭素ナノフォーム、キセロゲル、鋳型メソ多孔質(メソポーラス)炭素、鋳型マクロ多孔質(マクロポーラス)炭素、およびカーボンナノチューブ/炭素ナノファイバー集合体からなる群から選択されるものである。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記細孔は、約2nm〜約1μmの平均直径を有するものである。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記コーティングは、約50nm未満の厚さを有するものである。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、前記コーティングは、約10nm未満の厚さを有するものである。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記溶浸する工程は、自己制御的な無電解析出を有するものである。
【請求項9】
電荷を蓄積する方法であって、
アノードとカソードと電解質とを有するキャパシタ(コンデンサ)を提供する工程であって、
前記アノード、前記カソード、またはその双方は、
表面および細孔を有する既製の電極構造を有する複合材料と、
MnOを有するコーティングであって、前記細孔の大半を完全に充填または閉塞しないものである、前記表面上のコーティングと、
前記複合材料と電気的に接触する集電体と
を有するものである、前記キャパシタを提供する工程と、
前記キャパシタを充電する工程と
を有する方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、前記MnOには、カチオンおよび水が取り込まれるものである。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記構造は、炭素エアロゲルであるものである。
【請求項12】
請求項11記載の方法において、前記構造は、炭素ナノフォーム、キセロゲル、鋳型メソ多孔質(メソポーラス)炭素、鋳型マクロ多孔質(マクロポーラス)炭素、およびカーボンナノチューブ/炭素ナノファイバー集合体からなる群から選択されるものである。
【請求項13】
請求項11記載の方法において、前記細孔は、約2nm〜約1μmの平均直径を有するものである。
【請求項14】
請求項10記載の方法において、前記コーティングは、約50nm未満の厚さを有するものである。
【請求項15】
請求項11記載の方法において、前記コーティングは、約10nm未満の厚さを有するものである。
【請求項16】
請求項10記載の方法において、前記電解質は、水溶性の硫酸ナトリウムを含むものである。
【請求項17】
請求項10記載の方法において、前記電解質は、緩衝成分を伴う、または伴わない、水溶性で公称上中性(pH6〜8)の電解質を有するものである。
【請求項18】
請求項10記載の方法において、前記電解質は、緩衝成分を伴う、または伴わない、水溶性でアルカリ性(pH>8)の電解質からなる群から選択される液体を有するものである。
【請求項19】
請求項10記載の方法において、前記電解質は、非水液体であって、当該非水液体中で可溶性の塩を解離するために十分な誘電率を有する非水液体からなる群から選択される液体を有するものである。
【請求項20】
請求項10記載の方法において、前記コーティングは、自己制御的な無電解析出により形成されるものである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−503241(P2010−503241A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528245(P2009−528245)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/019548
【国際公開番号】WO2008/033271
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(500238790)アメリカ合衆国 (13)
【Fターム(参考)】