説明

超弾性コイル状ステント

【課題】生物医学的ステント、特に頭蓋内動脈瘤を治療するための超弾性コイル状ステントを提供する。
【解決手段】本発明は、ステント受けチューブを備えたカテーテルとステント受けチューブに軸線方向に受け取られるコイル状ステントとを含み、コイル状ステントがカテーテルを通じて血管を通って動脈瘤まで送出される、動脈瘤を治療するためのシステムを提供する。本発明はまた、コイル状ステントと頭蓋内動脈瘤を治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、生物医学的ステントに関する。より詳細には、本発明は、頭蓋内動脈瘤を治療するための超弾性コイル状ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
脳内及び身体の他の部位の動脈瘤は、通常、動脈が弱くなることにより、異常な膨張を動脈壁に発現させて発生する。脳動脈瘤は、動脈又は静脈の壁の衰弱によって起こり、脳の基底部にある大動脈の接合部で頻繁に起こる。動脈瘤が破裂すると、出血と、麻痺、言語障害、記憶喪失、又は更に死亡のような脳卒中に似た問題とを引き起こす場合がある。脳動脈瘤からの出血は、多くの場合に命に関わるものであり、生き延びた者も身体が不自由になることが多い。
【0003】
脳動脈瘤の治療の第一の目的は、血管内壁が更に腫大すること及び将来破裂することを防ぐことである。動脈瘤は、外科的技術を用いて血管の外部から又は血管内技術を用いて血管の内部から治療することができる。従来は、外科医は、頭蓋骨を切開し、外科用クリップを血管付近の動脈瘤嚢のネック部又は口に配置して動脈瘤を排除するか又は閉鎖することにより、破裂又は未破裂の脳動脈瘤を治療してきた。この手法では、罹患した動脈を露出させて動脈瘤を直接目に見えるようにする必要がある。微小神経外科技術の出現と、一時的クリッピング及び神経保護のような脳血管手術の進歩は、動脈瘤手術の適用性を拡大し、手術結果を向上させた。これらの進歩にも関わらず、外科的治療が困難である動脈瘤が依然として存在する。
【0004】
外科手術とは対照的に、動脈瘤の血管内治療は、動脈造影中に使用されるのと同様のカテーテルを用いて行うことができる。これは、カテーテルを通じて動脈瘤の空洞に物質を詰め込み、これによって動脈血がその中に流れるのを阻止する塞栓術と呼ばれる技術である。動脈瘤塞栓術に使用される物質は、直径約100ミクロンの固有の螺旋を記憶した柔軟で可撓性のプラチナコイルを含む。この治療は、動脈瘤内に置かれたマイクロカテーテルを通じて動脈瘤の内腔内にプラチナコイルを肝動脈で送出することを伴っている。動脈瘤に入った状態で、コイル状ワイヤの端部をカテーテルから分離するために電流を使用し、所定位置にこのコイルを置くことができる。この処置は、動脈瘤の大部分をコイルで満すことによって血流が動脈瘤を迂回するまで繰り返される。コイルの目的は、コイルの周りに血栓又は血塊が短時間で形成するように促進することである。
従来の血管閉塞コイルは、伸縮抵抗性ワイヤを2つの末端キャップ間の主コイル内に取り付けたプラチナワイヤの螺旋に巻いたコイルから作ることができる。残念ながら、このような構成は、コイルの間隔及びコイルの曲げ部の半径に依存する比較的複雑で非線形の曲げ特性を有する。
【0005】
Villar他は、2001年9月11日に付与された「装着されたポリマー材料を有する血管閉塞装置」という名称の米国特許第6,287,318号で螺旋状コイル器具を説明している。この装置は、螺旋に巻いた金属コアと、組紐に編まれた異なる血栓形成用の2つのポリマー結合部とを含む。発明者は、コイルを線維状付加物と結合させることにより、血管系に新毛細血管を出現させることができると示唆している。
動脈瘤の治療に使用されるコイルに、生体活性薬剤のコーティングが加えられてきた。生体活性薬剤又はコラーゲン物質で被覆したコイル状血管閉塞装置は、2001年2月13日に付与された「血管閉塞装置のための生体活性コーティング」という名称の米国特許第6,187,024号でBoock他により開示されている。
【0006】
コイル技術は頭蓋内動脈瘤を有する患者の大多数に好ましい治療法であると医療専門家は推察している。医療臨床試験は、コイル技術が死亡及び身体障害を外科手術に比べてほぼ4分の1に低減することができることを示している。動脈瘤のこの治療は、他の処置よりも侵襲性が少なく、より早く回復して入院期間を短くすることができる。しかし、コイルは、遠位の蛇行血管系へ送出するのは困難である場合があり、又は、動脈瘤を完全に又は部分的に削除しない場合もある。動脈瘤を塞ぐために使用されるコイルは、それらが埋め込まれる定位置に留まるということが重要である。しかし、配置後にコイルが移動するということは、これらのコイルに起こりうる問題である。頭蓋内血管系内に固定された塞栓用コイルを使用する方法は、2000年10月3日に付与された「自己固定式コイルを使用した頭蓋内血管塞栓治療法」という名称の米国特許第6,126,672号にBerryman他により開示されている。
【0007】
頭蓋底にある動脈瘤又は非常に大きい動脈瘤のような一部の動脈瘤は、外科的処置もプラチナコイルを用いた塞栓術も適さない。いくつかの取外し可能なバルーンを動脈瘤付近に配置することが可能な場合には、大きな動脈瘤の閉鎖が最小の危険性で達成されることもある。「米国連邦医薬品局(FDA)」は、1998年に取外し可能なシリコーンバルーンの使用を認可した。このバルーン処置は、問題の動脈を永久的に閉鎖することを伴い、患者が動脈の閉塞に耐えることができる場合に使用することができる。動脈の閉塞が必要な血液の流れを妨げると考えられる時には、血管を閉鎖する前にバイパス処置が必要になる場合がある。
【0008】
動脈瘤に使用されるように提案された他の種類の装置には、可撓性パッチ又はアンカーの付いた球根状装置がある。血管を通って動脈瘤の口まで送出される可撓性材料を使用する動脈瘤パッチは、2002年6月25日に付与された「二次元形状記憶合金用の分散活性剤を含む動脈瘤パッチ」という名称の米国特許第6,409,749号にMaynardにより開示されている。このパッチは、小嚢状動脈瘤又は漿果状動脈瘤とも呼ばれる嚢状動脈瘤に付着させるのに有効であろう。一般的に、嚢状及び横の動脈瘤は、多くの場合に親血管の湾曲沿いの分岐点の区域で、血管の一方の側にのみ膨らみ、その湾曲がなければ流れが進むであろう方向に向いている。動脈瘤パッチは、動脈瘤の異常な形状の凹部の場合、又は血管周囲全体を伴う傾向があり、そうでなければほぼ円筒形の血管のセグメントを外側に膨らませる非嚢状又は軸状の動脈瘤の場合にはあまり有効ではないであろう。
【0009】
球根状の本体部分及びアンカーを有する動脈瘤閉塞装置は、2001年1月2日に付与された「動脈瘤を塞ぐ方法及び器具」という名称の米国特許第6,168,622号にMazzocchiにより開示されている。この装置の弾力性本体及びアンカーは、拡大した本体と、本体を頭蓋内血管以外の身体の他の部分で血管の壁に結合する狭まったネック部とで機能することができるが、繊細な脳組織及び蛇行性脳血管を通る送出に対しては適さない場合がある。
【0010】
ステントは、脳の血管手術に使用するために提案された閉塞装置のうちの1つである。従来のステントは、血管の開通性を回復して維持するために折り畳んだ状態で血管内に埋め込まれ、血管内の望ましい位置に配置される時に広げられる。それらは、一般的に、バルーンカテーテルのバルーン部分上にステントを取り付け、体腔内にステントを位置決めし、バルーンを膨張させてステントを広げることにより展開される。バルーンは、その後、ステントを所定位置に残して収縮させて取り除かれる。しかし、バルーンカテーテルの配置、膨張、及び収縮は、ステントの埋め込みを超えて繊細な頭蓋内の血管系に対する危険性を伴う複雑な処置であり、従って、折り畳んだステントを治療される部位に置き、バルーンを使用することなくステントを展開するより簡単なステントシステムを提供することが望ましいと考えられる。また、従来のステントは、繊細な脳の血管系に比べて嵩があり固いものである。
【0011】
ステントは、一般的に、血管の補強構造として機能するのに必要な強度をもたらすために金属構造を有するが、通常は、ステントで治療される位置で血管の限局治療的薬物処置を送り出すものではない。治療薬を運んで放出することができるポリマー材料から形成されたステントは、ポリマー材料の薬物充填がポリマー材料の構造的及び機械的特性に有意な影響を与える可能性があるために、特にポリマー材料に薬物が充填されている時には、ステントに対する適切な構造及び機械的要件を与えない場合がある。ステントで治療される位置で血管の限局治療的処置を提供することができることが多くの場合に望ましいために、このようなポリマー材料をステント構造と結合させ、治療される血管系の特定の部位に治療薬又は他の生体活性薬剤を担持して送出する機能を有するステントを提供することが望ましいであろう。
【0012】
マイクロケーブルの内部構造を備えたコラーゲンのチューブから形成されたコラーゲン被覆超弾性ステントは、2002年12月24日に付与された「被覆超弾性ステント」という名称の米国特許第6,497,671号においてFerrera及びWilsonにより開示されている。螺旋形状ステントは、リボンを形成する、コラーゲンチューブ内に配置された形状記憶材料の1つ又はそれよりも多い可撓性ストランドを使用する。マイクロコイル状ステントは、脳動脈瘤の場合に使用され、動脈瘤内に置かれたマイクロカテーテルを通じて動脈瘤の内腔の中に入ることができる。この処置は、上述のマイクロコイルを使用する動脈瘤治療と同様に、動脈瘤をステントのコイルで充填するものである。
【0013】
別のコイル状ステントは、1996年5月7日に付与された「分かれるコイル状ステント」という名称の米国特許第5,514,176号においてBoselyにより開示されている。このコイル状ステントは、上述のステントとは違い、カテーテルにより展開されるよりもむしろ外科的に配置され、体内に単に一時的に置かれるように設計されている。それは、恒久的装置が好ましい脳動脈瘤には恐らくあまり望ましい閉塞装置ではないが、それは、緊密に巻かれたコイルのループが実質的に無孔になる可能性があることを示している。
血管閉塞装置及びステントは、血管系の重要な治療を提供してきた。しかし、血管を破るか又は壊れやすい脳組織を損傷する可能性の少ない頭蓋内動脈瘤を塞ぐためのより簡単な処置を提供し、死に至る場合もある小さい動脈瘤の有効な治療を提供し、かつ他のコイル状処置と併用することができるステントシステム及び方法を提供することが望ましいと考えられる。
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,287,318号
【特許文献2】米国特許第6,187,024号
【特許文献3】米国特許第6,126,672号
【特許文献4】米国特許第6,409,749号
【特許文献5】米国特許第6,168,622号
【特許文献6】米国特許第6,497,671号
【特許文献7】米国特許第5,514,176号
【発明の開示】
【0015】
本発明の1つの態様は、ステント受けチューブを備えたカテーテルとコイル状ステントとを含む動脈瘤を治療するためのシステムを提供する。コイル状ステントは、ステント受けチューブに軸線方向に受け取られ、カテーテルによって血管を通り動脈瘤まで送出される。コイル状ステントは、動脈瘤に展開される時に螺旋バネを形成する。
本発明の別の態様は、ステント受けチューブ内で軸線方向に伸長される時にステント受けチューブ内に同軸的に位置し、かつステント受けチューブから送出されて動脈瘤に隣接して展開される時に反跳するコイル状ステントフレームワークを含む、動脈瘤を治療するためのコイル状ステントである。
【0016】
本発明の別の態様は、頭蓋内動脈瘤を治療する方法である。軸線方向に受け取られたコイル状ステントを含むカテーテルは、体内の血管に挿入される。この軸線方向に受け取られたコイル状ステントは、頭蓋内動脈瘤に隣接して位置決めされ、カテーテルから分離される。反跳したステントの少なくとも一部分は、コイル状ステントが展開される時に頭蓋内動脈瘤の動脈瘤ネック部を塞ぐものである。
本発明は、様々な実施形態の添付図面及び以下に与える詳細説明によって解説される。図面は、本発明を特定的な実施形態に限定するように取るべきではなく、説明と理解のためのものである。詳細説明及び図面は、限定的ではなく本発明を単に例示するものであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物によって規定されている。本発明の上述の態様及び他の付随する利点は、添付図面と共に詳細説明によって更に容易に認められであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に従って頭蓋内動脈瘤に展開されたコイル状ステントの説明図を100で示している。コイル状ステント120は、カテーテル140によって頭蓋内動脈瘤110に隣接して展開される。
コイル状ステント120は、頭蓋内動脈瘤110の動脈瘤ネック部112を塞ぐように位置決めすることができる。動脈瘤ネック部112は、動脈瘤嚢114が頭蓋内血管116に隣接している領域である動脈瘤口とも呼ばれる。動脈瘤ネック部112は、広い開口部、狭い開口部、又は不規則な形状の開口部を有することができ、動脈瘤の口と呼ばれることもある。動脈瘤の閉塞は、頭蓋内動脈瘤110と頭蓋内血管116の間の血管内流体の移動を妨げるか又は制限するものである。頭蓋内血管116は、頭蓋118の頭蓋内血管系内の多くの繊細な血管系内血管の1つとすることができる。
【0018】
頭蓋内動脈瘤110は、軸線方向動脈瘤、横動脈瘤、漿果状動脈瘤とも呼ばれる嚢状動脈瘤、又は頭蓋118内に形成されるあらゆる動脈瘤とすることができる。本発明は、頭蓋内動脈瘤のための治療方法として表すが、体内の他の適切な位置で動脈瘤を治療するために、またコイル状ステントを使用する他の処置のために利用することもできる。
図2は、本発明の一実施形態に従って螺旋バネとして形成されたコイル状ステントの斜視図を200で示している。コイル状ステント220は、ステントの隣接する巻きの間の中心間の間隔dによって中心軸に関して螺旋状に巻いている。
【0019】
一実施形態では、隣接する巻き間の間隔d、ステントフレームワークを形成するワイヤの直径、及びコイル状ステント220の外径及び内径は、コイル状ステント220の軸線方向長さに沿って名目上は一定である。コイル状ステント220の形状は、コイルの隣接する巻き間に小さな間隔ができるように設定することができる。螺旋バネのコンプライアンスは、ワイヤの直径、巻線の数、材料組成、並びにコイル状ステント220の外径及び内径によって部分的には判断される。コイル状ステント220は、コイル状ステントが動脈瘤に展開される時に螺旋バネを形成するように製造することができる。一例では、ステントフレームワークのワイヤの直径は、0.010インチよりも小さい。別の例では、ステントフレームワークの直径は、名目上0.001インチである。コイル状ステントは、例えば、1から5ミリメートルの間の外径と、数ミリメートルから30ミリメートル又はそれよりも大きい長さとを有することができる。
【0020】
コイル状ステント220は、コイル状ステントフレームワークを含む。コイル状ステントフレームワークは、ステント受けチューブ(図示せず)内で軸線方向に伸長された時にステント受けチューブ内で同軸状に位置することができ、ステント受けチューブから送出されて動脈瘤に隣接して展開される時に反跳することができる。例えば、コイル状ステント220は、カテーテルのステント受けチューブ内に置かれた時に軸線方向に延ばされ、後の展開のためにワイヤの直径よりも僅かに大きい内径を有する薄肉チューブ内に収容される。別の例では、コイル状ステント220は、ステント受けチューブ内に押し込まれて薄い覆いで覆われ、覆いが引っ込んでステントの展開を可能にする。
【0021】
他の実施形態では、コイル状ステント220の内径及び外径は、血管に沿った外向きの圧力を最小にしながら血管内のステントを保護するのに役立つように、かつ動脈瘤を塞ぐのに役立つように、ステントの軸線方向長さに沿って変化することもできる。ステントフレームワークのワイヤの直径及び断面形状は、コイルの巻きに沿って変化してもよく、単位長さ当たりの巻きの密度は、コイル状ステント220の調整された剛性をもたらすために、並びに少なくともコイル状ステント220の一部分に沿って動脈瘤頚部又は動脈瘤嚢の口を塞ぐ助けになるより緊密なウェブを形成するために軸線方向長さに沿って変化することができる。
【0022】
コイル状ステント220は、金属基部を含むことができる。金属基部は、ニチノール、ニッケル−スズ合金、形状記憶材料のような超弾性金属、及び他の超弾性材料を含むことができる。これらの材料は、特に、望ましい最終的な形に形成することができ、延伸、引っ張り、又は曲げによって大きく変形し、もはや負荷がないか又は拘束されない時に望ましい最終形態に戻ることが可能であるために好ましいものである。超弾性材料の最大8%又はそれを超える弾性歪み限度のために、ステントを永久的又は可塑的に変形させることなく超弾性材料を大きく歪ませることができる。
【0023】
例えば、緊密に巻かれた螺旋コイルに形成された超弾性材料の小直径のワイヤは、引っ張ることによりそれを軸線方向に延ばして直線的なワイヤに大きく変形させ、その後送出された後に緊密に巻かれた構成に戻すことができる。脳の繊細な血管系は、体内の他の血管よりも比較的小さな直径を有するために、コイル状ステントの直径、ステントフレームワークのワイヤの直径、及び展開機構もまた小さくすべきである。
【0024】
コイル状ステントが軸線方向に延ばされる時に、ステントフレームワークのワイヤ内で生じる曲げ歪みは、ワイヤの直径が小さくかつコイル状ステントの直径が十分に大きい時には恐らくは小さいために、ステントフレームワークのワイヤは、超弾性でない材料から形成することができる。コイル状ステントのステントフレームワークのワイヤは、例えば、ステンレス鋼、ニチノール、タンタル、「MP35N」合金、プラチナ、チタン、クロムベース合金、適切な生体適合性合金、適切な生体適合性ポリマー、又はその組合せのような金属基部を含むことができる。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態に従って動脈瘤を治療するシステムの説明図を300で示している。動脈瘤治療システム300は、ステント受けチューブ330を備えたカテーテル340と、ステント受けチューブ330内に軸線方向に受け取られたコイル状ステント320とを含む。コイル状ステント320は、カテーテルにより体内の血管を通って動脈瘤へ送出される。通常、カテーテルは、例えば、大腿上方の小さな切開から挿入され、血流を通って脳内の動脈瘤の部位まで導かれる。カテーテル340は、本明細書では明確にするために示していないガイドワイヤのようなカテーテル340を導くための他の構造体を含むこともできる。
【0026】
ステント受けチューブ330は、遠位端332及び近位端334を有する。ステント受けチューブ330は、外径336及び内径338を有する。外径336及び内径338は、軸線方向に受け取られたコイル状ステント320を収容する大きさにすることができる。ステント受けチューブ330は、ガイドワイヤと軸線方向に受け取られたコイル状ステントを位置決めして展開するための他の装置とを収容するカテーテルの一部を含む。
【0027】
ステント受けチューブ330は、内径が軸線方向に広げられたコイル状ステント320とコイル状ステントフレームワークのあらゆるコーティングとを受け入れる大きさにされた薄肉チューブを含むことができる。別の実施形態では、ステント受けチューブ330は、軸線方向に受け取られたコイル状ステント320を取り囲む送出覆いを含み、これを引き裂くか又は引っ込めてステントの展開を可能にする。送出覆いは、例えば、コイルのワイヤの直径よりも僅かに大きい内径を有することができる。ステント受けチューブと軸線方向に受け取られたコイル状ステントとを備えたカテーテルは、非常に目立たない可撓性の送出可能なインプラントを提供する。
【0028】
ステント受けチューブ330を備えたカテーテル340は、コイル状ステント320を動脈瘤に隣接して位置決めするために足、胸、首、又は頭にある1つ又はそれよりも多い血管を通って縫うようにして進む遠位端332によって血管内に挿入される。一実施形態では、軸線方向に受け取られたコイル状ステント320をステント受けチューブ330に通してステント受けチューブ330の遠位端332の外へ移動させるために、プッシュワイヤ350がカテーテルに挿入される。軸線方向に受け取られたコイル状ステント320がステント受けチューブ330から展開されると、コイル状ステント320は、所定のコイル形状に反跳して戻る。所定のコイル形状は、例えば、軸線方向長さに沿って一定の外径を有する螺旋コイルとすることができる。コイル状ステント320は、コイル状ステント320が動脈瘤に展開されると螺旋バネを形成する。所定のコイル形状は、例えば、動脈瘤に送出されると軸線方向長さに沿って1つ又はそれよりも多いテーパ又は起伏を有する螺旋コイルとすることができる。
【0029】
図4は、本発明の一実施形態に従って少なくとも1つのテーパ又は起伏を有する螺旋バネとして形成されたコイル状ステントの斜視図を400で示している。コイル状ステント420は、動脈瘤に展開された時に螺旋バネの軸線方向長さに沿って少なくとも1つのテーパ又は起伏を有する螺旋バネを形成する。この実施形態では、コイル状ステント420の長さの中ほどで直線状テーパが始まり、コイル状ステント420の各端部に向けて直径を一様な量で低減する。直線状テーパは、頭蓋内血管にコイル状ステント420を展開して固定することを助けることができる。いくつかの場合には、コイル状ステント420の拡大した中央部分は、動脈瘤嚢内に一部侵入し、嚢のネック部又は開口部を塞ぎ、血流のような心臓血管活動からの運動又は脈動の結果として頭蓋内血管を上下に動かすことからコイル状ステント420を固定することができる。
コイル状ステント420は、直線又は曲線状テーパ、一端から始まり他端で終わる単一テーパ、両端部が大きい逆テーパ、又はその組合せを有することができる。テーパ及び起伏は、起伏が最大になる所でコイルの巻き密度を増大又は減少させ、望ましい閉塞、展開、及びコンプライアンス特性を与えるように調整することができる。
【0030】
図5は、本発明の別の実施形態に従って少なくとも1つのテーパ又は起伏を有する螺旋バネとして形成されたコイル状ステントの断面図を500で示している。コイル状ステント520は、動脈瘤に展開された時に螺旋バネの軸線方向長さに沿って少なくとも1つのテーパ又は起伏を有する螺旋バネを形成する。この実施形態では、コイル状ステント520は、名目上一様な直径を有する中央区域522と、中央区域522からコイル状ステントの直径が一様な量で減少する直線状テーパを備えたコイル状ステント520の各端に向けて延びる2つの端部区域524及び526とを含む。中央区域522の一定の直径は、展開された時に動脈瘤嚢のネック部又は開口部を塞ぐことを助け、動脈瘤嚢を出入りする血管内流体の流れを妨げるか又は制限し、それによって動脈瘤壁に対するこのような圧力を制限して動脈瘤嚢が更に大きくなるか又は動脈瘤壁が破裂する可能性を低減する。直線状テーパは、頭蓋内血管にコイル状ステント520を展開して固定することを助けることができる。
【0031】
コイル状ステント520の各端部区域524及び526のテーパは、直線又は曲線状とすることができる。単一テーパを一端で又は他端で使用することができ、両端が大きくなる逆テーパを使用することもできる。動脈瘤の口又はネック部の閉塞性を増大させるために、コイル状ステント520の長さに沿った起伏及び他の波状変形を含むことができる。テーパ及び起伏は、例えば、動脈瘤に隣接するコイル状ステント520の両側を通る血管内の流体の移送を制限するための部分的なウェブを形成するために、直径が名目上一様である中央区域522でコイルの巻き密度を増大させることができる。コイル状ステント520の中央区域におけるコイルの巻きの密度は、隣接するコイルの巻きが少なくともコイル状ステント520の一部で連続的なウェブを形成するように緊密に巻かれてもよい。ステントフレームワークの直径及び断面形状は、例えば、ウェブを形成するためにより大きい直径のワイヤ又は矩形の巻き断面に中央区域で変えることができる。また、コイル状ステントの一部に沿った巻きにポリマーコーティング又は他の物質を付加することも、部分的又は連続的ウェブの形成を助けることができる。
【0032】
図6は、本発明の一実施形態に従って接着層及びポリマーコーティングをコイル状ステントの一部分に沿って周囲に配置したコイル状ステントの断面図を600で示している。コイル状ステント620は、コイル状ステントフレームワーク622と、コイル状ステント620の少なくとも一部分上に周方向に配置されたポリマーコーティング624とを含む。接着層626は、コイル状ステントフレームワーク622とポリマーコーティング624の間に位置決めすることができる。
【0033】
ポリマーコーティング624は、コイル状ステント620が展開された時にコイル状ステント620の長さの少なくとも一部分に沿って配置され、それによって配置したポリマーコーティング624は、コイル状ステント620の少なくとも一部分に沿って部分的又は連続的ウェブを形成することができる。ポリマーコーティング624の層の厚さ及び数は、ポリマーコーティング624とコイル状ステントフレームワーク622とが結合して部分的又は連続的ウェブを形成するように、コイル状ステント620の隣接する巻き間の間隔に基づいて判断することができる。部分的又は連続的ウェブは、動脈瘤壁が破損する可能性を低減しながら動脈瘤を塞ぐために、動脈瘤の開口部又はネック部に隣接して位置決めすることができる。ポリマーコーティング624は、部分的には、伸長したステントとコイル状ステント620を包み込む送出チューブ又はカテーテルとの間の摩擦係数を制御するように選択することができる。
【0034】
ポリマーコーティング624は、コイル状ステント620を被覆するためにかつ体内に展開するために適切な1つ又はそれよりも多いポリマー材料を含むことができる。ポリマーコーティング624は、生体分解性ポリマー又は生体安定性ポリマーを含むことができる。ポリマーコーティング624は、例えば、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコリド(PGA)、又はポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)のような生体分解性ポリマー、又は、シリコーン−ウレタンコポリマー、ポリウレタン、又はエチレン酢酸ビニル(EVA)のような生体安定性ポリマーを含むことができる。
【0035】
ポリマーコーティング624は、例えば、動脈瘤に展開された時に治療効果を与えるための1つ又はそれよりも多い生体活性薬剤を含有する薬剤ポリマーを含むことができる。ポリマーコーティング624は、薬剤や生体活性薬剤のような1つ又はそれよりも多い治療化合物を含むことができる。ポリマーコーティング624は、例えば、1つ又はそれよりも多い生体活性薬剤が相互に分散されたポリマーマトリックスを含有することができる。ポリマーコーティング624の1つ又はそれよりも多い層は、コイル状ステントフレームワーク622上に配置することができる。
【0036】
治療化合物は、冠状動脈再狭窄、心臓血管再狭窄、血管造影再狭窄、動脈硬化、過形成、並びに他の病気及び状態を含む1つ又はそれよりも多い状態を治療又は予防するものである。例えば、治療化合物は、血管の再狭窄、すなわち、ステントが置かれた体腔の直径が狭くなること又は狭窄に相当する状態を抑制するか又は予防するために、ポリマーコーティング624の中に組み込むことができる。一実施形態では、生体活性薬剤は、再狭窄防止薬を含む。別の実施形態では、治療化合物は、アンチセンス薬、抗腫瘍薬、抗増殖薬、抗血栓薬、抗凝固剤、抗血小板薬、抗生物質、抗炎症薬、ステロイド、遺伝子治療薬、治療剤、有機薬剤、医薬品、組み換えDNA製品、組み換えRNA製品、コラーゲン、コラーゲン誘導剤、プロテイン、プロテイン類似化合物、サッカリド、又はサッカリド誘導剤のような生体活性薬剤を含む。別の実施形態では、ポリマーコーティング624は、医薬剤の組合せを含む。
【0037】
いくつかの医薬剤は、ポリマーコーティング624に使用される可能性を有する。例えば、ラパマイシン、ラパマイシン類似化合物、又はラパマイシン誘導剤のような再狭窄防止薬は、体腔の狭まり及び閉塞の再発を防止又は低減する。アンチセンス薬は、遺伝子レベルで作用して、病気を引き起こすプロテインが生成される過程を妨げる。抗腫瘍薬は、一般的に、ステントの周辺で癌細胞の増殖及び広がりを防止し、鎮静化し、又は阻止するために使用される。抗増殖薬は、狙った細胞又は細胞型が成長するのを防止するか又は阻止することができる。抗血栓薬は、血栓の形成を積極的に遅らせるものである。抗凝固剤は、多くの場合、ヘパリン及びクマリンのような化合物を使用し、抗凝固治療で血液の凝固を遅らせるか又は防止する。抗血小板薬は、血小板に作用するように使用することができ、血小板の血液凝固の機能を抑制する。抗生物質は、微生物の成長を抑制するために及び病気や感染と闘うために頻繁に使用される。デキサメタゾンのような抗炎症薬は、ステント周辺の炎症を弱めるか又は軽減するために使用することができる。埋め込まれたステントに近接する瘢痕組織を軽減するために、時にはステロイドが使用される。遺伝子療法薬は、病気を治療し、治癒し、又は究極的には予防するために人の遺伝子の発現を変更することができる場合がある。
【0038】
本質的に、生体活性薬剤とは、病気又は不調を予防又は治療するあらゆる治療剤である。有機薬剤は、あらゆる小分子の治療物質である。医薬品は、治療効果のあるあらゆる化合物である。組み換えDNA製品又は組み換えRNA製品は、修正したDNA又はRNA遺伝物質を含む。医薬的価値のある生体活性薬剤はまた、コラーゲン、及び他のプロテイン、サッカリド、及びそれらの誘導体を含むこともできる。
【0039】
ポリマーコーティング624は、少なくとも1つの生体活性薬剤を溶出する。ポリマーコーティング624は、複数の生体活性薬剤を含んで溶出することができる。ポリマーコーティング624は、主として拡散過程によって1つ又はそれよりも多い生体活性薬剤の溶出を制御するように調整することができる。いくつかの場合には、ポリマーコーティングの一部分が体内に吸収されてコーティング内から生体活性薬剤を放出する。
薬剤ポリマーをポリマーコーティング624に組み込むことにより、例えば、手術の24時間以内に薬理活性の薬剤又は生体活性薬剤を迅速に送出し、第2の生体活性薬剤を次の3ヶ月から6ヶ月後にゆっくりと定常的に送出することが可能になる。
【0040】
ポリマーコーティング624は、複数の薬剤を含むことができ、各薬剤は、所定の溶出速度を有する。一実施形態では、第1の生体活性薬剤は、ステントフレームワークに隣接して集まり、第2の生体活性薬剤は、ポリマーコーティング624の外面に隣接して集まる。例えば、第1の生体活性薬剤は、ラパマイシン、ラパマイシン類似化合物、又はラパマイシン誘導剤のような再狭窄防止剤を含むことができる。第2の生体活性薬剤は、デキサメタゾンのような抗炎症剤を含むことができる。
【0041】
接着層626は、ポリマーコーティング624とコイル状ステントフレームワーク622の間に置いて、ポリマーコーティングの接着性及び耐久性を向上させることができる。接着層626は、ポリマー材料又は下に重なるステントフレームワーク、特にコイル状ステント620の金属基部に良好に接着するあらゆる材料とすることができる。接着層626は、コイル状ステントフレームワーク622に良好に接着し、ポリマーコーティング624のような別のポリマー材料を容易に被覆することができるように選択される。接着層626は、パリレン、ポリウレタン、フェノキシ、エポキシ、ポリイミド、又はペラセンのようなあらゆる適切な接着層とすることができる。
【0042】
図7は、本発明の一実施形態に従って頭蓋内動脈瘤を治療する方法の流れ図を700で示している。頭蓋内動脈瘤の治療方法700は、形成し、位置決めし、展開し、並びに軸線方向動脈瘤、横動脈瘤、嚢状又は漿果状動脈瘤、及び頭蓋内血管系の他の動脈瘤を治療する段階と、体内の他の位置にある血管内の異なる種類の動脈瘤を治療する段階とを含む。
ブロック705に見られるように、コイル状ステントを形成する。コイル状ステントフレームワークは、金属基部を含むことができる。コイル状ステントは、ニチノール、ニッケル−スズ合金、又は形状記憶材料のような超弾性材料から形成することができる。コイル状ステントは、例えば、型の周りで巻かれ、その巻かれた形状を維持するためにマルテンサイト−オーステナイト相転移温度を超えて加熱処理されるか又は形状固定された小直径ニチノールワイヤの一片から形成することができる。コイル状ステントを加熱処理及び形状固定するためには、例えば、摂氏490度から摂氏525度及びそれよりも高い温度を使用することができる。
【0043】
いくつかの形状記憶合金では、転移温度が体温よりも低く、更に室温よりも低い場合がある。これらの合金を使用しているコイル状ステントでは、コイルを冷却し、直線状にするか又は軸線方向に伸長させ、ステント受けチューブに挿入することができる。動脈瘤に送出されると、軸線方向に伸長したコイル状ステントは、転移温度を超えて温められて螺旋のコイル型に戻る。十分に堅固なステント受けチューブ又は送出カテーテル覆いに装着される場合は、軸線方向に伸長したコイル状ステントは冷却され、軸線方向に伸長され、ステント受けチューブに挿入され、そこでコイル状ステントは温まってオーステナイト相転移温度まで移行するが、ステント受けチューブから送出されるまで伸長した形状で維持される。
【0044】
代替的に、コイル状ステントが展開されて体温まで温められた時に、室温及びそれ以下でのコイル状ステントの変形が直ちに回復するように、形状記憶合金の転移温度は、室温よりも高く標準体温よりも低くすることができる。別の実施形態では、形状記憶合金の転移温度は、標準体温よりも高く設定されている。高い弾性歪み限度のようなマルテンサイト相での形状記憶合金の超弾性特性により、コイル状ステントをカテーテル展開用の小直径の受入チューブの中に縦方向に拡張し、同時に展開されて受入チューブから分離されるとコイル状ステントを螺旋形状に容易に回復させることが可能である。送出カテーテル上の薄肉ステント受けチューブ又は覆いは、弾力的に伸長したコイル状ステントを展開されるまで拘束する。
【0045】
十分に細いワイヤでは、コイル状ステントは、他の非超弾性の非形状記憶材料から作ることができる。コイル状ステントは、ステンレス鋼、ニチノール、タンタル、「MP35N」合金、プラチナ、チタン、クロム基合金、適切な生体適合性合金、適切な生体適合性ポリマー、又はその組合せのような他の材料から形成することができる。特に、コイル状ステントフレームワークが小直径のワイヤを含み、コイル状ステントの外径が過度に小さくない場合には、軸線方向に伸長された時に生じる歪みが、使用される材料の弾性歪み限度を超えないので、これらの材料は適切である。一実施形態では、これらの材料のうちの1つのワイヤが、型又は固定具の周りに巻かれてコイル状ステントの望ましい形状を作り、次に、この材料は熱処理されて材料内の応力を軽減するために焼き戻され、好ましい形状に固定する。別の実施形態では、これらの材料のうちの1つのワイヤは、小半径の固定具にわたって引っ張られ、次に、巻かれた形状を維持するために熱処理される。代替的に、ワイヤは焼き戻されて熱で柔らかくされ、ワイヤを望ましい形状に可塑的に変形させるために小直径の型の周りで巻かれる。ある一定の量の弾性反跳を許した後に、コイルの巻きは、次に、降伏応力を増大させて弾性挙動の範囲を向上させるために、スエージ加工又は冷間加工することができる。
【0046】
コイル状ステントは、コイルの隣接する巻きの間を小さい間隔にするように形状固定することができる。コイル状ステントは、一様の外径を有するか又は1つ又はそれよりも多いテーパ又は起伏を有する螺旋バネを形成するように形状固定することができる。
代替的に、コイル状ステントは、その長さに沿って可変直径を有し、その長さに沿って可変強度をもたらすようにワイヤから形成することができる。脳の繊細な血管系に展開されるコイル状ステントを形成するために、調整された半径方向強度を有する非常に細い直径のワイヤを使用することができる。別の実施形態では、コイル状ステントフレームワークは、細長い又は矩形の断面を含む。
【0047】
ブロック710に見られるように、接着層をコイル状ステントの金属基部に配置することができる。接着層は、コイルを巻く前に金属ワイヤ上に配置することができる。代替的に、接着層は、コイル状ステントが巻かれた後にコイル状ステントフレームワークの少なくとも一部分上に配置することができる。接着層は、浸漬け、塗装、刷毛塗り、又は吹き付けのようなあらゆる適切な技術を使用して付加され、次に、真空又は制御された環境において室温又は上昇させた温度で乾燥させることができる。接着層は、ポリマーコーティングを金属ステントフレームワークに接着するのを助けるために、コイル状ステントの金属基部とポリマーコーティングの間に位置決めすることができる。
【0048】
ポリマーコーティングは、ブロック715に見られるように、コイル状ステントの少なくとも一部上で周方向に配置することができる。コイル状ステントフレームワークを形成するワイヤは、例えば、その周囲の回りを生体適合性ポリマーで被覆することができる。反跳して展開された時に、コーティングは、コイル状ステントの隣接する巻回の間の空間を部分的又は完全に密封し、動脈瘤嚢への漏れを防ぐことができる。
【0049】
ポリマーコーティングは、浸漬け、塗装、刷毛塗り、又は吹き付けのようなあらゆる適切な技術で付加され、次に、あらゆる溶剤を取り除くことによって乾かされ、必要に応じて硬化させることができる。ポリマーコーティングは、コイル状ステントが軸線方向に広げられた時又は望ましい螺旋形状に形成されるか又は反跳した時に付加することもできる。ポリマーコーティングとコイル状ステントフレームワークとの接着性を向上させるために、コイル状ステントの少なくとも一部分に配置された接着層上にポリマーコーティングを付加することもできる。
【0050】
コイル状ステントが展開された時に、配置されたポリマーコーティングがコイル状ステントの少なくとも一部分に沿って連続的又はほぼ連続的なウェブを形成するように、ポリマーコーティングは、1つ又はそれよりも多いポリマー層を使用して適切な厚さまで付加することができる。
コイル状ステントフレームワーク上に配置されたポリマーコーティングは、薬剤ポリマーを含むことができる。1つ又はそれよりも多い生体活性薬剤は、動脈瘤に展開された時の送出のために、ポリマーコーティングにわたって相互に分散させることができる。薬剤ポリマーの1つ又はそれよりも多い層は、ポリマーコーティング中に含まれる1つ又はそれよりも多い薬剤の溶出速度を制御するために、コイル状ステントフレームワークに付加することができる。医薬品の溶出速度を制御するために、薬剤ポリマー層の間又はポリマーコーティングの周囲上に1つ又はそれよりも多いバリア層を含めることができる。
【0051】
コイル状ステントは、ブロック720に見られるようにステント受けチューブに挿入される。ステント受けチューブは、軸線方向に受け取られたコイル状ステントを位置決めして展開するためのガイドワイヤ及び他の装置を収容するカテーテルの一部を含む。ステント受けチューブは、軸線方向に広げられたコイル状ステント及びコイル状ステントフレームワークのあらゆるコーティングを受け入れる大きさの内径を備えた薄肉チューブを含むことができる。代替的に、ステント受けチューブは、軸線方向に受け取られたコイル状ステントを囲む送出覆いを含み、これを引き裂いて又は引っ込めてステントの展開を可能にする。送出覆いは、コイルのワイヤ直径よりも僅かに大きい内径を有することができる。コイル状ステントは、通常、ステント受けチューブに挿入する前に滅菌される。
【0052】
ブロック725に見られるように、軸線方向に受け取られたコイル状ステントを備えたカテーテルは、体内の血管に挿入される。カテーテルは、例えば、頭、首、胸、及び脚にある1つ又はそれよりも多い血管を通して挿入することができる。この血管は、例えば、体内の頭蓋内血管系に位置していてもよい。軸線方向に受け取られたコイル状ステントを備えたカテーテルは、血管内処置のための適切な入口点を通って頭蓋内血管に挿入される。
【0053】
軸線方向に受け取られたコイル状ステントは、ブロック730に見られるように、頭蓋内動脈瘤に隣接して位置決めすることができる。軸線方向に受け取られたコイル状ステントは、頭及び首の中の時折曲がりくねった経路を通ってガイドワイヤでカテーテルの先端を物理的に操作することによって位置決めすることができる。X線及び蛍光透視撮像システムのようなあらゆる適切な撮像システムを利用してカテーテルの先端の位置を判断し、それを動脈瘤の方へ導くことができる。例えば、カテーテルの端部又はコイル状ステント沿いの1つ又はそれよりも多い位置に放射線不透過性マーカを装着させることができる。
【0054】
軸線方向に受け取られたコイル状ステントは、ブロック735に見られるように、カテーテルから分離することができる。一例では、軸線方向に受け取られたコイル状ステントは、送出覆いを軸線方向に受け取られたコイル状ステントの周囲から引っ込めてコイル状ステントを動脈瘤に隣接して展開することにより、カテーテルから分離される。別の例では、軸線方向に受け取られたコイル状ステントをステント受けチューブに通して移動させ、コイル状ステントを動脈瘤に隣接して展開するために、プッシュワイヤを使用して軸線方向に展開されたコイル状ステントをカテーテルから分離する。プッシュワイヤは、例えば、プッシュワイヤの近位端を握って軸線方向に受け取られたコイル状ステントをステント受けチューブの遠位端から優しく押し出すことにより操作し、コイル状ステントをステント受けチューブから分離することができる。軸線方向に受け取られたコイル状ステントがステント受けチューブの遠位端から現れると、それは、ステント受けチューブから送出されて動脈瘤に隣接して展開される時に螺旋形状に再形成するか又は反跳する。
【0055】
コイル状ステントがステント受けチューブから分離される時に、ステントは、ブロック740に見られるように反跳する。ステントは、1つ又はそれよりも多いテーパ又は起伏を含むことができる螺旋形状に反跳する。コイル状ステントが展開される時に、反跳したステントの少なくとも一部分は、動脈瘤のネック部又は頭蓋内動脈瘤の開口部を塞ぐ。動脈瘤の頚部は、例えば、コイル状ステントの一部分を動脈瘤に隣接して置くことにより、完全に又は部分的に塞ぐことができる。コイル状ステントは、動脈瘤に隣接した領域では緊密な間隔の巻きを含むことができる。コイル状ステントは、コイル状ステントが展開された時にコイル状ステントの少なくとも一部分に沿って連続的ウェブを形成するように、巻きの上にポリマーコーティングを含むことができる。
【0056】
治療化合物は、ブロック745に見られるように、1つ又はそれよりも多い医薬剤又は生体活性薬剤をポリマーコーティング中に相互に分散させて頭蓋内の血管又は頭蓋内動脈瘤に送出することができる。1つ又はそれよりも多い相互に分散された治療化合物を有したポリマーコーティングは、コイル状ステントが展開される時に、コイル状ステントの少なくとも一部分上に周方向に配置することができる。治療化合物は、生体活性薬剤とポリマーコーティング及びその上に配置されたあらゆるバリアコーティングの溶出特性とに依存して、数分、数時間、数日、又は更に数ヶ月の期間にわたって動脈瘤又は血管又はその両方に送出することができる。
【0057】
頭蓋内動脈瘤を治療する方法に限って説明したが、本方法は、軸線方向に受け取られたコイル状ステントを展開することができる身体の別の部分のあらゆる動脈瘤又は血管に適用することができる。小さな血管閉塞コイルを動脈瘤嚢内に置くことのような他の外科的処置は、コイル状ステントが、動脈瘤のネック部又は開口部を塞ぐ時にいずれの血管閉塞コイルをも動脈瘤嚢内に維持することを助けるように、軸線方向に受け取られたステントの前及びそれと組み合わせて送り出すことができる。本発明の一実施形態では、血管閉塞コイルをコイル状ステントフレームワークに取り付けて、血管閉塞コイルを動脈瘤嚢に保持して配置することを更に助けることができる。
本明細書で開示した本発明の実施形態は、現時点で好ましいと考えられるものであるが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を行うことができる。本発明の範囲は、特許請求の範囲に示されており、均等物の意味及び範囲に該当する全ての変更は、本発明の範囲に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に従って頭蓋内動脈瘤に展開されたコイル状ステントの説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に従って螺旋バネとして形成されたコイル状ステントの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に従って動脈瘤を治療するためのシステムの説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に従って少なくとも1つのテーパ又は起伏を有する螺旋バネとして形成されたコイル状ステントの斜視図である。
【図5】本発明の別の実施形態に従って少なくとも1つのテーパ又は起伏を有する螺旋バネとして形成されたコイル状ステントの断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に従って接着層及びポリマーコーティングをコイル状ステントの一部分に沿って周囲に配置したコイル状ステントの断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に従って頭蓋内動脈瘤を治療する方法の流れ図である。
【符号の説明】
【0059】
100 コイル状ステントの説明
110 頭蓋内動脈瘤
112 動脈瘤ネック部
120 コイル状ステント
140 カテーテル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈瘤を治療するためのシステムであって、
ステント受けチューブを含むカテーテルと、
前記ステント受けチューブに軸線方向に受け取られ、前記カテーテルを通じて血管を通って動脈瘤まで送出されるコイル状ステントと、
を含むことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記カテーテルは、前記ステントを展開するために後退する送出覆いを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記カテーテルは、前記軸線方向に受け取られたコイル状ステントを収容する大きさの内径を有する薄肉チューブを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記コイル状ステントは、該コイル状ステントが動脈瘤で展開される時に螺旋バネを形成することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記コイル状ステントは、該コイル状ステントが動脈瘤で展開される時に螺旋バネを形成し、該螺旋バネの軸線方向長さに沿って少なくとも1つのテーパ又は起伏を有することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コイル状ステントは、金属基部を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記金属基部は、ニチノール、ニッケル−スズ合金、及び形状記憶材料から成る群から選択された超弾性金属を含むことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記金属基部は、ステンレス鋼、タンタル、「MP35N」合金、プラチナ、チタン、クロムベース合金、適切な生体適合性合金、適切な生体適合性ポリマー、及びその組合せから成る群から選択された材料を含むことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記軸線方向に受け取られたコイル状ステントを前記ステント受けチューブに通して移動し、該コイル状ステントを動脈瘤に隣接して展開するためのプッシュワイヤ、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記コイル状ステントの少なくとも一部分上に周方向に配置されたポリマーコーティング、
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記配置されたポリマーコーティングは、前記コイル状ステントが展開される時に該コイル状ステントの少なくとも一部分に沿って連続ウェブを形成することを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記配置されたポリマーコーティングは、薬剤ポリマーを含むことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記配置されたポリマーコーティングと前記コイル状ステントの金属基部との間に位置決めされた接着層、
を更に含むことを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項14】
動脈瘤を治療するためのコイル状ステントであって、
ステント受けチューブ内で軸線方向に伸長される時に該ステント受けチューブ内に同軸的に位置し、該ステント受けチューブから送出されて動脈瘤に隣接して展開される時に反跳するコイル状ステントフレームワーク、
を含むことを特徴とするコイル状ステント。
【請求項15】
コイル状ステントが動脈瘤で展開される時に螺旋バネを形成することを特徴とする請求項14に記載のコイル状ステント。
【請求項16】
動脈瘤で展開される時に螺旋バネを形成し、該螺旋バネの軸線方向長さに沿って少なくとも1つのテーパ又は起伏を有することを特徴とする請求項14に記載のコイル状ステント。
【請求項17】
金属基部を含むことを特徴とする請求項14に記載のコイル状ステント。
【請求項18】
前記金属基部は、ニチノール、ニッケル−スズ合金、及び形状記憶材料から成る群から選択された超弾性金属を含むことを特徴とする請求項17に記載のコイル状ステント。
【請求項19】
前記金属基部は、ステンレス鋼、タンタル、「MP35N」合金、プラチナ、チタン、クロムベース合金、適切な生体適合性合金、適切な生体適合性ポリマー、及びその組合せから成る群から選択された材料を含むことを特徴とする請求項17に記載のコイル状ステント。
【請求項20】
コイル状ステントの少なくとも一部分上に周方向に配置されたポリマーコーティング、
を更に含むことを特徴とする請求項14に記載のコイル状ステント。
【請求項21】
前記配置されたポリマーコーティングは、コイル状ステントが展開される時にコイル状ステントの少なくとも一部分に沿って連続ウェブを形成することを特徴とする請求項20に記載のコイル状ステント。
【請求項22】
前記配置されたポリマーコーティングは、薬剤ポリマーを含むことを特徴とする請求項20に記載のコイル状ステント。
【請求項23】
前記配置されたポリマーコーティングとコイル状ステントの金属基部との間に位置決めされた接着層、
を更に含むことを特徴とする請求項14に記載のコイル状ステント。
【請求項24】
頭蓋内動脈瘤を治療するための方法であって、
体内の血管の中に軸線方向に受け入れられたコイル状ステントを含むカテーテルを挿入し、
前記軸線方向に受け入れられたコイル状ステントを頭蓋内動脈瘤に隣接して位置決めし、
前記軸線方向に受け入れられたコイル状ステントをカテーテルから分離し、
前記軸線方向に受け入れられたコイル状ステントを螺旋形状に再形成し、再形成されたステントの少なくとも一部分は、再形成されたステントが展開するとき、頭蓋内動脈瘤の動脈瘤ネック部を閉塞する、ことを特徴とする方法。
【請求項25】
前記動脈瘤は、軸線方向動脈瘤、横動脈瘤、漿果状動脈瘤を有する、ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記血管は、体の頭蓋内の脈管構造に位置している、ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項27】
コイル状ステントが展開するとき、頭蓋内の血管又は頭蓋内動脈瘤に、コイル状ステントの少なくとも一部の周囲に配置されたポリマーコーティングと共に、治療用化合物を送出し、ポリマーコーティングは、少なくとも1つの治療用化合物を含む、ことを特徴とする請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−524449(P2007−524449A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517449(P2006−517449)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/019651
【国際公開番号】WO2004/112655
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(502129357)メドトロニック ヴァスキュラー インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】