説明

超純水製造装置および超純水製造方法

【課題】エネルギーおよび薬品の消費量を低減できると共に洗浄能力の優れた超純水を製造可能な超純水製造装置および超純水製造方法を提供する。
【解決手段】この超純水製造装置では、原水が導入される前処理装置17、一次純水製造装置18と、この一次純水製造装置18からの一次純水が導入されると共にナノバブル発生機14を有する二次純水製造装置19とを備える。ナノバブル発生機14には窒素ガスが導入され、二次純水製造装置19に導入された一次純水中に硝酸イオンとナノバブルを含有させることができる。よって、二次純水製造装置19から、硝酸イオンとナノバブルを含有した超純水が得られる。上記硝酸イオンとナノバブルを含有した超純水は、各ユースポイント13へ供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超純水製造装置および超純水製造方法に関し、一例として、製造した超純水の洗浄能力が、硝酸イオン、オゾンおよびナノバブルを超純水中に含有し、洗浄能力が格段に優れている超純水の超純水製造装置および超純水製造方法に関する。また、洗浄能力が格段に優れている超純水により超純水配管の殺菌作業を激減できる超純水製造装置および超純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業界では、各種工程における洗浄は各分野,各業界で実施されている。この洗浄としては、薬品による洗浄や、超純水による洗浄など、いくつかの例があり、それらを組み合わせて、洗浄を実施している場合もある。それぞれの工場で目的に応じた洗浄方法が採用されている。
【0003】
薬品洗浄についても、薬品として、酸、アルカリ、界面活性剤など多くの薬品を組み合わせて使用している例もある。
【0004】
一方、半導体工場や液晶工場では、大規模な洗浄装置が採用されている。そして、多種類の薬品を使用している。また、薬品洗浄後に多量の超純水で、2次洗浄を実施して薬品を洗い流している。
【0005】
また、超純水製造に関わる超純水配管等の殺菌方法としては、(1)薬品としての過酸化水素水による方法、(2)熱水殺菌法、(3)オゾン水殺菌法がある。
【0006】
上記(1)の薬品としての過酸化水素水による殺菌方法は、薬品のコスト代および殺菌後の残留過酸化水素による水質の立ち上げに時間を要する。また、上記(2)の熱水殺菌法では、熱水を利用しての殺菌方法であるためにエネルギーを多量消費する上に、少ないが過酸化水素水も利用するので、ランニングコストの観点からが高コストとなっている。また、上記(3)のオゾン水殺菌法は、多量のオゾンを使用するので、オゾン発生機の準備や設置スペースが必要となっている。また、オゾンは、オゾン水として従来から使用されているが、水中での持続性がない状況であった。
【0007】
また、従来技術としてのナノバブルの利用方法および装置が、特開2004−121962号公報(特許文献1)に示されている。
【0008】
この技術は、ナノバブルが有する浮力の減少、表面積の増加、表面活性の増大、局所高圧場の生成、静電分極の実現による界面活性作用と殺菌作用などの特性を活用したものである。より具体的には、それらが相互に関連することによって、汚れ成分の吸着機能、物体表面の高速洗浄機能、殺菌機能によって各種物体を高機能、低環境負荷で洗浄することができ、汚濁水の浄化を行うことができることを開示している。
【0009】
また、従来技術としてのナノ気泡の生成方法が、特開2003−334548号公報(特許文献2)に示されている。この技術は、液体中において、(1)液体の一部を分解ガス化する工程、(2)液体中で超音波を印加する工程、または(3)液体の一部を分解ガス化する工程および超音波を印加する工程から構成されている。
【0010】
また、従来技術としてのオゾンマイクロバブルを利用する廃液の処理装置が、特開2004−321959号公報(特許文献3)に示されている。この技術では、マイクロバブル発生装置に、オゾン発生装置より生成されたオゾンガスと処理槽の下部から抜き出された廃液とを、加圧ポンプを介して供給している。また、生成されたオゾンマイクロバブルをガス吹き出しパイプの開口部より処理槽内の廃液中に通気することを開示している。
【0011】
ところで、環境を重視する時代に至って、洗浄薬品を削減することも重要なテーマである。すなわち、洗浄に多量の薬品を使用すれば、薬品を含む排水の処理が新たに必要になるという課題がある。
【0012】
したがって、使用する薬品を削減し、水等による洗浄が求められているが、水等の洗浄には限界があり、水等の洗浄能力を何らかの工夫により、格段に向上させることが求められている。また、排水処理設備に対しても、当然のことであるが省エネルギーでしかもランニングコストが低いことも求められる。
【0013】
どちらにしても、超純水を含む単なる水等の一般的な物質で効果的な洗浄方法や洗浄装置が存在していない課題がある。
【0014】
一方、上述した超純水配管等の殺菌法は、(1)薬品としての過酸化水素水による方法、(2)熱水殺菌法、(3)オゾン水殺菌法があるが、すべて作業性やランニングコストの観点から、合理的かつ短時間に殺菌できる方法ではない。特に、薬品としての過酸化水素水による殺菌方法が一般的であるが、殺菌後に、元の水質まで立ち上げるのに数時間を必要とする課題がある。
【0015】
これに対して、短時間に殺菌可能でランニングコストも低い殺菌方法が求められている。
【0016】
また、最近、少量の過酸化水素水を添加した熱水殺菌法も採用されて来ているが、水温を上げることによるエネルギーの消費があり、省エネルギーを達成できないという課題がある。
【0017】
省エネルギー時代に至って、エネルギーを浪費しないシステムは時代の要請でもあり、殺菌方法についても、地球温暖化の関係から、省エネルギータイプの殺菌方法が求められている。
【特許文献1】特開2004−121962号公報
【特許文献2】特開2003−334548号公報
【特許文献3】特開2004−321959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、この発明の課題は、エネルギーおよび薬品の消費量を低減できると共に洗浄能力の優れた超純水を製造可能な超純水製造装置および超純水製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、この発明の超純水製造装置は、原水が導入される前処理装置と、
上記前処理装置からの処理水が導入される一次純水製造装置と、
上記一次純水製造装置からの一次純水が導入されると共にナノバブル発生機を有する二次純水製造装置とを備えることを特徴としている。
【0020】
この発明の超純水製造装置によれば、上記一次純水製造装置から二次純水製造装置に導入された一次純水中にナノバブルを含有させることができる。よって、この二次純水製造装置から、ナノバブルを含有した超純水が得られる。このナノバブルを含有する超純水は、洗浄能力や殺菌力が従来の超純水と比較して向上した超純水にすることができる。よって、この発明によれば、エネルギーおよび薬品の消費量を低減できると共に洗浄能力の優れた超純水を製造可能である。
【0021】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記ナノバブル発生機には窒素ガスが供給される。
【0022】
この実施形態によれば、上記ナノバブル発生機には窒素ガスが供給されるので、上記一次純水製造装置から二次純水製造装置に導入された処理水(一次純水)中に窒素ガスとナノバブルを含有させることができる。よって、この二次純水製造装置から、窒素ガスとナノバブルを含有した超純水が得られる。そして、上記窒素ガスは、ナノバブルによって酸化されて硝酸イオンとなり、上記超純水は、硝酸イオンおよびナノバブルを含有する超純水となる。この超純水は、洗浄能力や殺菌力が従来の超純水と比較して向上した超純水にすることができる。よって、この実施形態によれば、エネルギーおよび薬品の消費量を低減できると共に洗浄能力の優れた超純水を製造可能である。
【0023】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記ナノバブル発生機にはオゾンガスが供給される。
【0024】
この実施形態によれば、上記一次純水製造装置から二次純水製造装置に導入された一次純水中にオゾンガスとナノバブルを含有させることができる。そして、上記二次純水製造装置から、オゾンおよびナノバブルを含有した超純水が得られ、洗浄能力や殺菌力が従来の超純水と比較して向上した超純水を確保することができる。
【0025】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記二次純水製造装置は、
上記一次純水製造装置からの一次純水が導入される二次純水タンクと、
上記二次純水タンクの後段に順に設置された熱交換器,紫外線殺菌器,イオン交換ポリッシャー,限外ろ過膜とを有し、
上記二次純水タンクと上記熱交換器との間に、上記ナノバブル発生機が設置されている。
【0026】
この実施形態によれば、上記熱交換器により二次純水を適温に保つことが可能となり、上記紫外線殺菌器で上記二次純水を殺菌でき、上記イオン交換ポリッシャーで(微量)金属イオンを除去でき、上記限外ろ過膜で微粒子やバクテリアを除去できる。そして、二次純水としての超純水にナノバブルを含有させることができる。そして、上記ナノバブル発生機に窒素ガスが供給される場合は、ナノバブルによって酸化されて硝酸イオンとなり、硝酸イオンおよびナノバブル含有超純水が得られる。これにより、従来の超純水と比較して洗浄能力や殺菌力が向上した超純水を確保することができる。
【0027】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記二次純水製造装置は、上記一次純水製造装置からの一次純水が導入される二次純水タンクと、
上記二次純水タンクの後段に順に設置された熱交換器,紫外線殺菌器,イオン交換ポリッシャー,限外ろ過膜とを有し、
上記ナノバブル発生機は、上記熱交換器と上記紫外線殺菌器との間に設置されている。
【0028】
この実施形態によれば、紫外線殺菌器の前段にナノバブル発生機を設置しているので、このナノバブル発生機で生成されたナノバブル含有超純水は続いて上記紫外線殺菌器に導入される。これにより、殺菌能力の向上を図ることができる。特に、上記ナノバブル発生機に窒素ガスが導入される場合は、このナノバブル発生機で生成された硝酸イオンおよびナノバブル含有超純水は続いて上記紫外線殺菌器に導入される。よって、この実施形態によれば、洗浄能力や殺菌力が従来の超純水と比較して向上した超純水を確保できる。また、殺菌能力の向上により、紫外線殺菌器のランプの点灯本数を削減することができると同時に、紫外線殺菌器のランニングコストを低減できる。
【0029】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記二次純水製造装置は、
上記一次純水製造装置からの一次純水が導入される二次純水タンクと、
上記二次純水タンクの後段に順に設置された熱交換器,紫外線殺菌器,イオン交換ポリッシャー,限外ろ過膜を有し、
上記限外ろ過膜の後段に設置されたタンクまたは配管に上記ナノバブル発生機を設置した。
【0030】
この実施形態によれば、上記限外ろ過膜の後段にナノバブル発生機を有するタンクまたは配管を設置しているので、ユースポイントに近い位置で、水質を殆ど悪化させることなく、ナノバブルを含有する超純水を製造している。したがって、ユースポイントでの生産装置や目的対象物に対する洗浄効果と殺菌効果を期待できる上に、超純水配管を洗浄し殺菌することができる。特に、上記ナノバブルを含有する超純水が硝酸イオンまたはオゾンガスを有する場合には、特に、洗浄,殺菌効果を向上できる。
【0031】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記ナノバブル発生機は、上記二次純水タンクの後段で順に設置された気液混合循環ポンプ,第1気体せん断部,第2気体せん断部,第3気体せん断部と、上記気液混合循環ポンプに接続されたガス配管と、上記ガス配管に設けた電動ニードルバルブとを有する。
【0032】
この実施形態によれば、上記ナノバブル発生機は、上記第1〜第3の3段階の気体せん断部を有しているので、上記3段階の気体せん断部により、多量のナノバブルを含有した超純水を効率よく製造できる。特に、上記ナノバブルを含有した超純水が硝酸イオンまたはオゾンガスを有する場合には、特に、洗浄,殺菌効果を向上できる。
【0033】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記気液混合循環ポンプの揚程が40m以上である。
【0034】
この実施形態によれば、上記気液混合循環ポンプの揚程が40m以上であるので、所定の吐出圧力を維持して、上記3段階の気体せん断部によって、ナノバブルを製造できる。
【0035】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記ナノバブル発生機が有する上記第1気体せん断部は、内部が、楕円形または真円形構造であり、かつ上記内部が鏡面仕上げとなっている。
【0036】
この実施形態によれば、上記第1気体せん断部によって、導入されたガスに対して、効率の良い高速旋回とせん断を達成することが可能となる。
【0037】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記第2気体せん断部と第3気体せん断部の形状が、楕円形、または真円形であり、かつ小孔が開いており、この小孔の孔径が4mm以上かつ9mm以下である。
【0038】
この実施形態によれば、上記第2,第3気体せん断部によって、導入されたガスに対して、効率の良い高速旋回とせん断を達成することが可能となる。
【0039】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記気液混合循環ポンプを構成する材料の厚みが6mm以上かつ12mm以下である。
【0040】
この実施形態によれば、上記気液混合循環ポンプの材料の厚みが通常の仕様よりも厚いので、振動が発生しても流体運動エネルギーが振動として、外部気体に伝播して逃げることがなく、また、必要な高速旋回とせん断エネルギーを維持することができる。
【0041】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記気液混合循環ポンプを構成する材料が、ステンレス、もしくは樹脂である。
【0042】
この実施形態によれば、上記気液混合循環ポンプを構成する材料として、目的および用途に合った材料を選定することができる。特に、製薬業界では、材質を樹脂としており、上記気液混合循環ポンプを樹脂製とすれば、医薬品の製造、すなわち製薬に使用することができる。
【0043】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記気液混合循環ポンプの運転を開始させた後に、上記電動ニードルバルブを自動的に閉から開に制御する制御部を有する。
【0044】
この実施形態によれば、上記気液混合循環ポンプの運転を開始させた後(望ましくは例えば60秒が経過した後)に、上記電動ニードルバルブを自動的に閉から開にしているので、気液混合循環ポンプのインペラが損傷することを防止できる。これに対し、気液混合循環ポンプの運転開始と電動ニードルバルブの開とを同時に行う場合は、気液混合循環ポンプのインペラが損傷する。
【0045】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記気液混合循環ポンプは、吐出口の口径サイズを、吸い込み口の口径サイズよりも小さくした。
【0046】
この実施形態によれば、上記気液混合循環ポンプの吐出口の口径サイズを、吸い込み口の口径サイズよりも小さく(望ましくは例えば50%以上かつ80%以下)としたことで、吐出圧力を高めて、マイクロバブルを安定的に製造している。
【0047】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記電動ニードルバルブの開度を制御して、上記第1気体せん断部でのマイクロバブルの製造性能を制御する制御部を有する。
【0048】
この実施形態によれば、上記電動ニードルバルブの開度により、上記第1気体せん断部で製造するマイクロバブルの気体量を制御できる。
【0049】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記第1気体せん断部は、内部に、流体の旋回乱流を制御するための2本以上の溝が形成されている。
【0050】
この実施形態によれば、上記第1気体せん断部の内部に形成された複数本の溝により、流体の旋回乱流を制御できる。
【0051】
また、一実施形態の超純水製造装置では、上記気液混合循環ポンプは、吐出量が、毎分15リットル以上かつ毎分120リットル以下であり、上記電動ニードルバルブからの吸い込み気体量が、毎分0.3リットル以上かつ毎分1.5リットル以下である。
【0052】
この実施形態によれば、ナノバブルを効率よく発生させることができる。ナノバブルを効率よく発生させるための条件として、電動ニードルバルブからの吸い込み気体量が、毎分0.3リットル〜1.5リットルの条件が有る。
【発明の効果】
【0053】
この発明の超純水製造装置によれば、一次純水製造装置から二次純水製造装置に導入される一次純水中にナノバブルを含有させることができ、この二次純水製造装置から、ナノバブルを含有した超純水が得られる。特に、上記ナノバブルを含有した超純水が窒素ガスを含有する場合は、この窒素ガスがナノバブルによって酸化されて硝酸イオンとなり、上記超純水は、硝酸イオンおよびナノバブルを含有する超純水となる。この超純水は、洗浄能力や殺菌力が従来の超純水と比較して向上した超純水にすることができるので、エネルギーおよび薬品の消費量を低減できると共に洗浄能力の優れた超純水を製造可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0055】
図7を参照して、超純水製造装置の一般的な構成と処理の流れを説明する。
【0056】
まず、前処理装置17に原水が導入される。この原水としては、工業用水、水道水、地下水、河川水等が挙げられる。この前処理装置17において、上記原水が前処理され、続いて、一次純水製造装置18に導入されて、一次純水が製造される。続いて、一次純水製造装置18からの一次純水が二次純水製造装置19に導入されて、二次純水が製造される。そして、この二次純水製造装置19で製造された二次純水が超純水として、生産装置20に供給される。この生産装置20が、例えば半導体工場である場合、上記超純水はウエハ洗浄等を目的として、供給される。なお、産業界では、各種生産装置が存在しており、図7の一例のように、生産装置20において超純水のみで洗浄される場合もあれるが、各種薬品を併用する場合も存在しており、多くのケースが存在する。
【0057】
(第1の実施の形態)
次に、図1を参照して、この発明の超純水製造装置の第1実施形態を説明する。この図1はこの第1実施形態の超純水製造装置が備える二次純水製造装置を模式的に示す図である。なお、この第1実施形態は、上述の図7の前処理装置17と一次純水製造装置18を有していると共に、上記生産装置20(各ユースポイント13)を半導体工場の内部に設置している。
【0058】
図1において、符号1は、二次純水タンクであり、この二次純水タンク1には、図7に示す超純水製造装置の一次純水製造装置18で製造された一次純水が導入される。この二次純水タンク1は、常時窒素ガスが微量であるが封入(すなわちパージ)されている。その理由は、超純水は、水質として溶存酸素の項目があり、ppbのオーダーが求められている。よって、溶存酸素を可能な限り低減するために、空気が混入して溶存酸素が増加しないように窒素パージをしている。
【0059】
この二次純水タンク1の外部には、ナノバブル発生機14が設置されている。
【0060】
すなわち、より詳しくは、上記ナノバブル発生機14は、第1気体せん断部3を有する気液混合循環ポンプ2と、この第1気体せん断部3と配管で接続されている第2気体せん断部4と、この第2気体せん断部4に配管で接続されている第3気体せん断部6を有している。この第3気体せん断部6は、圧力容器5に収容されている。上記第1気体せん断部3には窒素ガス配管23が接続され、この窒素ガス配管23には電動ニードルバルブ8が取付けられている。この電動ニードルバルブ8によって、窒素ガス配管23から第1気体せん断部3に供給する窒素ガス量を調整可能になっている。
【0061】
気液混合循環ポンプ2を備えたナノバブル発生機14では、窒素ナノバブルを発生させて、短時間のうちに、硝酸イオンおよびナノバブル含有水を製造する。すなわち、窒素ガスをナノバブルが有するフリーラジカルに起因する強力な酸化作用で、酸化すると硝酸イオンが形成される。
【0062】
このナノバブル発生機14では、硝酸イオンおよびナノバブルを含有した超純水は、気液混合循環ポンプ2により、熱交換器9に圧送される。この熱交換器9は、この二次純水製造装置で超純水が循環することにより、超純水の水温が上昇した場合の対策として設置されている。すなわち、この熱交換器9は、処理に適した水温を確保するためのものである。また、この熱交換器9では、各ユースポイント13における生産装置で求められている水温に、上記超純水の水温を調節している。
【0063】
次に、硝酸イオンおよびナノバブルを含有する水は、上記熱交換器8から続いて紫外線殺菌器10に送水されて、殺菌される。そして、この紫外線殺菌器10を出た水は、イオン交換ポリッシャー11、続いて限外ろ過膜12を経て、超純水となる。
【0064】
図1に示すバイパス配管16は、上記二次純水製造装置の全体を殺菌する場合に、イオン交換ポリッシャー11のイオン交換樹脂が殺菌剤で損傷を受けることを回避するためのものである。つまり、上記殺菌剤による殺菌時には、バイパス配管16に設けられたバルブ15を開とする一方、バルブ24を閉とすることで、上記殺菌剤がバイパス配管16を通って限外ろ過膜12に導入されるようにし、上記殺菌剤がイオン交換ポリッシャー11を通らないようにしている。なお、上記殺菌剤による殺菌時ではない通常動作時には、バルブ15を閉とする一方、バルブ24を開とする。
【0065】
この実施形態の超純水製造装置によれば、上記一次純水製造装置18から二次純水製造装置19に導入された一次純水中に窒素ガスとナノバブルを含有させることができる。よって、この二次純水製造装置19から、窒素ガスとナノバブルを含有した超純水が得られる。そして、上記窒素ガスは、ナノバブルによって酸化されて硝酸イオンとなり、上記超純水は、硝酸イオンおよびナノバブルを含有する超純水となる。この超純水は、洗浄能力や殺菌力が従来の超純水と比較して向上した超純水にすることができる。よって、この実施形態によれば、エネルギーおよび薬品の消費量を低減できると共に洗浄能力の優れた超純水を製造可能である。
【0066】
そして、上記限外ろ過膜12から得られる超純水は、超純水配管21を通って各ユースポイント13に供給される。また、この各ユースポイント13で使用された超純水は、超純水配管22を通って二次純水タンク1へ返送される。
【0067】
また、この実施形態によれば、上記窒素ナノバブル発生機14は、上記第1〜第3の3段階の気体せん断部3,4,6を有しているので、上記3段階の気体せん断部3,4,6により、多量の硝酸イオンおよびナノバブルを含有した超純水を効率よく製造できる。
【0068】
次に、上記ナノバブル発生機14のメカニズムを詳細に説明する。前述の如く、このナノバブル発生機14は、気液混合循環ポンプ2と、第1気体せん断部3と、第2気体せん断部4と、電動ニードルバルブ8および、圧力容器5に収容された第3気体せん断部6とそれらを連結する配管から構成されている。
【0069】
このナノバブル発生機14において、ナノバブルは、大きくは、次に説明する第1段階と第2段階を経て製造される。
【0070】
先ず、第1段階について簡単に説明する。
【0071】
上記第1気体せん断部3において、流体力学的に圧力を制御し、負圧形成部分から気体を吸入し、高速流体運動させて、負圧部を形成して、マイクロバブルを発生させる。より解り易く簡単に説明すると、水と窒素ガスを効果的に自給,混合,溶解し、圧送することにより、窒素ガスマイクロバブル白濁水を製造することが、第1段階である。
【0072】
続いて、第2段階について簡単に説明する。
【0073】
上記第1気体せん断部3と第2気体せん断部4において、高速流体運動させて、負圧部を形成し、マイクロバブルを発生させて、上記第2気体せん断部4と第3気体せん断部6に水配管を通じて導入し、流体運動としてせん断することによって、マイクロバブルからナノバブルを発生させることになる。
【0074】
さらに、第1段階と第2段階をより詳細に説明する。
【0075】
(第1段階)
ナノバブル発生機14に使用している気液混合循環ポンプ2は、揚程40m以上(すなわち、4kg/cmの高圧)の高揚程のポンプである。すなわち、第1気体せん断部3を有する気液混合循環ポンプ2は、高揚程のポンプであることが望ましい。また、この高揚程のポンプとしては、2ポールと4ポールのうちでトルクが安定している2ポールのポンプを選定することが好ましい。
【0076】
また、この気液混合循環ポンプ2は圧力の制御が必要であり、この高揚程のポンプの回転数を回転数制御器(例えばインバーター)で目的にあった圧力としている。この目的にあった圧力でもって、気液混合循環ポンプ2において、バブルサイズが纏まったマイクロバブルを製造することができる。
【0077】
ここで、上記第1気体せん断部3を有する気液混合循環ポンプ2でのマイクロバブル発生のメカニズムを説明する。
【0078】
上記第1気体せん断部3において、マイクロバブルを発生させるために、液体および気体の混相旋回流を発生させ、この第1気体せん断部3の中心部に高速旋回する気体空洞部を形成する。次に、この気体空洞部を圧力で竜巻状に細くして、より高速で旋回する回転せん断流を発生させる。この空洞部に気体としての窒素ガスを、マイナス圧(負圧)を利用して、自動的に供給させる。この発明では、上記気体を硝酸イオンを製造する目的から窒素ガスとしたが、目的によって、他の気体(炭酸ガス、酸素ガス、オゾンガス)を選定する場合も在る。
【0079】
さらに、上記窒素ガスを切断,粉砕しながら混相流を回転させる。この切断,粉砕は、第1気体せん断部3の出口付近における内外の気液二相流体の旋回速度差により起きる。その時の回転速度は、500〜600回転/秒である。
【0080】
すなわち、第1気体せん断部3において、流体力学的に圧力を制御することで、負圧形成部分から気体を吸入し、高揚程ポンプで高速流体運動させて、負圧部を形成し、マイクロバブルを発生させる。より解り易く簡単に説明すると、高揚程ポンプで水と空気を効果的に自給,混合,溶解し、圧送することにより、マイクロバブル白濁水を製造することが、第1段階である。
【0081】
なお、気液混合循環ポンプ2の運転は、制御部の一例であるシーケンサ30が出力する制御信号によって制御している。例えば、この実施形態では、シーケンサ30からの制御信号によって、上記気液混合循環ポンプ2の運転を開始させた後(例えば60秒が経過した後)に、上記電動ニードルバルブ8を自動的に閉から開にしているので、気液混合循環ポンプ2のインペラが損傷することを防止できる。また、この実施形態では、上記気液混合循環ポンプ2の吐出口の口径サイズを、吸い込み口の口径サイズよりも小さく(例えば50%以上かつ80%以下)としたことで、吐出圧力を高めて、マイクロバブルを安定的に製造している。また、一例として、上記電動ニードルバルブ8の開度を制御して上記第1気体せん断部3でのマイクロバブルの製造性能を制御する制御部を備えてもよい。また、この実施形態では、一例として、上記気液混合循環ポンプ2は、吐出量が、毎分1.5リットル以上かつ毎分120リットル以下であり、上記電動ニードルバルブ8からの吸い込み気体量が、毎分0.3リットル以上かつ毎分1.5リットル以下である。この条件によれば、ナノバブルを効率よく発生させることができる。
【0082】
上記第1気体せん断部3は、内部形状が楕円形であり、高速旋回とせん断の効率が最大となる形状は真円形であり、更に内部摩擦を小さくするために鏡面仕上げとしている。また、第1気体せん断部3の内部に、流体の旋回乱流を制御するために溝深さ0.3mm〜0.6mm、溝幅0.8mm以内の溝を複数本設けている。
【0083】
(ナノバブル発生機14での第2段階)
上記第1段階後、第1気体せん断部3を有する気液混合循環ポンプ2で発生させたマイクロバブルを水配管を通じて第2気体せん断部4に圧送する際、この第2気体せん断部4と第3気体せん断部6においては、さらに、配管サイズを細くして、かつ高速流体運動させて、気体空洞部を竜巻状に細くして、より高速で旋回する回転せん断流を発生させる。これによって、マイクロバブルからナノバブルが発生すると同時に、超高温の極限反応場が形成される。この第2気体せん断部4と第3気体せん断部6を構築している理由は、気体せん断部を1段階で構成するよりも、気体せん断部を2段階で構成する方が、ナノバブル量をより多く発生させることができるからである。すなわち、超高温の極限反応場が形成されると、局部的に高温高圧状態となり、不安定なフリーラジカルができ、同時に熱を発生することになる。
【0084】
なお、第2気体せん断部4と第3気体せん断部6はステンレス製とするのが一般であり、その形状は、楕円形、好ましくは真円形である。また、第2気体せん断部4と第3気体せん断部6には小孔が開いているが、その吐出口径は、4mm〜9mmが最適である。
【0085】
次に、上述した第1段階での高速流体運動について説明する。第1気体せん断部3において、マイクロバブルを発生させるために、まず、「高速流体運動」として、ポンプのインペラと呼ばれている羽を超高速で回転させて、液体および気体の混相旋回流を発生させ、第1気体せん断部3の中心部に高速旋回する気体空洞部を形成させる。次に、この気体空洞部を圧力で竜巻状に細くして、より高速で旋回する回転せん断流を発生させる。この気体空洞部に気体としての窒素ガス(炭酸ガス、酸素ガス、オゾンガスの場合もある)を自給させる。さらに、この気体空洞部を切断,粉砕しながら混相流を回転する。この切断,粉砕は、装置出口付近における内外の気液二相流体の旋回速度差により起きる。回転速度は、500〜600回転/秒であることが判明している。
【0086】
また、第1気体せん断部3を構成する金属の厚みが薄いと、気液混合循環ポンプ2が運転されることにより、振動が発生し、流体運動エネルギーが振動として外部に伝播して逃げ、そのことが、必要な高速流動運動すなわち、高速旋回とせん断エネルギーを低下させる。よって、第1気体せん断部3を構成する金属の厚みは、6mm〜12mmの範囲が好ましい。
【0087】
次に、「流体運動としてせん断すること」について説明する。第1気体せん断部3を有する気液混合循環ポンプ2で発生させたマイクロバブルを、第2気体せん断部4と第3気体せん断部6に水配管を通じて圧送する。ここで、第2気体せん断部4と第3気体せん断部6においては、第1段階の第1気体せん断部3よりもさらに、配管サイズを細くして、かつ高速流体運動させて、気体空洞部を竜巻状に細くして、より高速で旋回する回転せん断流を発生させる。
【0088】
次に、「負圧形成部分」について説明する。「負圧形成部分」とは、装置出口付近における内外の気液二相流体の旋回速度差により発生する。上記したように、回転速度は、500〜600回転/秒である。また、次に「負圧部」について説明する。この「負圧部」とは、気体液体混合物中で周りと比較して圧力が小さな領域を意味する。以上が、ナノバブル発生機14のメカニズムである。
【0089】
なお、ナノバブル発生機14を基本的に構成している気液混合循環ポンプ2、第1気体せん断部3、第2気体せん断部4と第3気体せん断部6のセットは、市販されているものを採用できるがメーカーを限定するものではなく、具体的一例では、株式会社 協和機設の商品であるバビダスHYK型(商品名)を採用できる。
【0090】
また、ここで、3種類のバブルについて説明する。
(1) 通常のバブル(気泡)は水の中を上昇して、ついには表面でパンとはじけて消滅する。
【0091】
(2) マイクロバブルは、その発生時において、10〜数10μmの気泡径を有する微細気泡で、水中で縮小していき、ついには消滅(完全溶解)してしまう。マイクロバブルは、発生後に収縮運動により『マイクロナノバブル』に変化する。
【0092】
(3) ナノバブルは、マイクロバブルよりさらに小さいバブル(直径が数100nm以下)でいつまでも水の中に存在することが可能なバブル、と言われている。
【0093】
マイクロナノバブルとは、マイクロバブルとナノバブルとが混合したバブルと説明でき、10μmから数100nm前後の直径を有する気泡である。
【0094】
(第2の実施の形態)
次に、図2にこの発明の超純水製造装置の第2実施形態を示す。この第2実施形態は、前述の第1実施形態のナノバブル発生機14に供給する気体を窒素ガスに替えてオゾンガスにした点だけが、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第2実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0095】
この第2実施形態では、オゾンガス配管27からナノバブル発生機14へ気体としてオゾンガスが供給される。したがって、この第2実施形態では、超純水配管21から各ユースポイント13にオゾンおよびナノバブル含有超純水が供給される。このオゾンおよびナノバブル含有超純水によって、各ユースポイント13における対象物の殺菌や洗浄をより強力に行うことができる。
【0096】
また、殺菌に関しては、窒素ナノバブル含有超純水に比べて、オゾンおよびナノバブル含有超純水の方が、各機器,配管をより強力に殺菌できる。また、各機器,配管の殺菌に関しては、オゾン水よりもオゾンナノバブル含有水の方がオゾンの持続性があることから、少ないオゾン量で殺菌でき、ランニングコストの低減に役立つこととなる。よって、この実施形態の超純水製造装置によれば、 洗浄能力や殺菌作用が強力で持続性があるオゾンおよびナノバブル含有超純水を各ユースポイント13に供給できる。
【0097】
(第3の実施の形態)
次に、図3にこの発明の超純水製造装置の第3実施形態を示す。この第3実施形態は、前述の第1実施形態におけるナノバブル発生機14を二次純水タンク1と熱交換器9の間に設置するのではなく、熱交換器9と紫外線殺菌器10との間に設置した点だけが、前述の第1実施形態と異なる。よって、この第3実施形態では、前述の第1の実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0098】
図3に示すように、この第3実施形態では、二次純水タンク1は循環ポンプ24を介して熱交換器9に接続されている。また、この第3実施形態では、図3に示すように、紫外線殺菌器10の前段に窒素ガスを利用したナノバブル発生機14を設置している。この第3実施形態では、硝酸イオンとナノバブル含有超純水と紫外線殺菌器10の両方で二次純水製造装置内の殺菌を行うことができる。これにより、各ユースポイント13での対象物の洗浄能力や殺菌能力の向上が図れる。また、殺菌能力の向上が図れるので、紫外線殺菌器10のランプの点灯本数を削減することができ、ランニングコストの低減に役立つ。
【0099】
以上がこの実施形態における洗浄や殺菌についての説明であるが、上記窒素ガス利用ナノバブル発生機14では、熱交換器9の後段かつ紫外線殺菌器10の前段で、イオン交換ポリッシャー11内のイオン交換樹脂に影響しない量の硝酸イオンおよびナノバブル含有超純水を製造させている。
【0100】
(第4の実施の形態)
次に、図4にこの発明の超純水製造装置の第4実施形態を示す。この第4実施形態は、前述の第3実施形態のナノバブル発生機14へ供給する気体を、窒素ガスに替えてオゾンガスにした点だけが、前述の第3実施形態と異なる。よって、この第4実施形態では、前述の第3実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第3実施形態と異なる部分を説明する。
【0101】
図4に示すように、この第4実施形態では、二次純水タンク1は循環ポンプ24を介して熱交換器9に接続されている。また、この第4実施形態では、紫外線殺菌器10の前段に、オゾンガス配管27からオゾンガスが導入されるナノバブル発生機14が設置されている。つまり、ナノバブル発生機14が発生するオゾンおよびナノバブル含有超純水が続いて紫外線殺菌器10に導入される。これにより、殺菌能力の向上を図ることができる。よって、この実施形態によれば、各ユースポイント13における対象物の殺菌や洗浄を、より強力に実施することができる。また、殺菌に関して、窒素ナノバブルより、オゾンおよびナノバブル含有超純水の方が、各機器,配管をより強力に殺菌および洗浄できる。
【0102】
また、各機器,配管の殺菌に関して、オゾン水よりも、オゾンおよびナノバブル含有超純水の方が、オゾン持続性があることより、少ないオゾン量で殺菌でき、ランニングコストの低減に役立つこととなる。よって、この実施形態によれば、オゾンおよびナノバブル含有超純水による作用が強力で持続性がある洗浄,殺菌効果が発揮される。また、上述の殺菌能力の向上により、紫外線殺菌器10のランプの点灯数を削減することもできる。
【0103】
(第5の実施の形態)
次に、図5にこの発明の超純水製造装置の第5実施形態を示す。この第5実施形態は、前述の第1実施形態のナノバブル発生機14を二次純水タンク1と熱交換器9との間ではなく、限外ろ過膜12の後段に設置した点が、前述の第1実施形態と異なる。つまり、この第5実施形態では、ナノバブル発生機14は、限外ろ過膜12の後段に設置した三次純水タンク25に取り付けられている。よって、この第5実施形態では、前述の第1実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて詳細説明を省略し、前述の第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0104】
図5に示すように、この第5実施形態では、二次純水タンク1は循環ポンプ24を介して熱交換器9に接続されている。また、この第5実施形態では、限外ろ過膜12からの超純水が三次純水タンク25に導入される。この三次純水タンク25には、窒素ガス配管23Bから窒素ガスが導入され、二次純水タンク1と同様、窒素ガスが常時封入されている。そして、この三次純水タンク25に取り付けられたナノバブル発生機14には窒素ガス配管23Aから窒素ガスが供給され、硝酸イオンおよびナノバブルを含有する超純水が生成される。なお、このナノバブル発生機14の第1気体せん断部3,第2気体せん断部4は三次純水タンク25外に配置され、第3気体せん断部6は三次純水タンク25内に配置されている。そして、この三次純水タンク25内で生成された硝酸イオンおよびナノバブルを含有する超純水は、ナノバブル洗浄水送水ポンプ26によって、各ユースポイント13に供給される。
【0105】
この第5実施形態によれば、上記限外ろ過膜12の後段にナノバブル発生機14を有するタンク25設置して、ユースポイント13に近い位置で、水質を殆ど悪化させることなく、硝酸イオンおよびナノバブルを含有する超純水を製造している。したがって、ユースポイントでの生産装置や目的対象物に対する洗浄効果と殺菌効果の向上を期待できる上に、超純水配管21,22を洗浄し殺菌する効果の向上も期待できる。
【0106】
また、この第5実施形態によれば、三次純水タンク25およびナノバブル発生機14を、既存の二次純水製造装置や、新規の市販されている二次純水製造装置に追加設置することが容易である。
【0107】
なお、この第5実施形態において、上記三次純水タンク25を取り去り、上記限外ろ過膜12と超純水配管21との間に配管を介してナノバブル発生機14を接続してもよい。
【0108】
(第6の実施の形態)
次に、図6にこの発明の超純水製造装置の第6実施形態を示す。この第6実施形態は、前述の第2実施形態ではナノバブル発生機14が二次純水タンク1と熱交換器9との間に設置されているのではなく、限外ろ過膜12の後段に設置された三次純水タンク25に取り付けた点が、前述の第2実施形態と異なる。よって、この第6実施形態では、前述の第2実施形態と同じ部分については、同じ符号を付けて、詳細説明を省略し、前述の第2実施形態と異なる部分を説明する。
【0109】
図6に示すように、この第6実施形態では、二次純水タンク1は循環ポンプ24を介して熱交換器9に接続されている。また、この第6実施形態では、限外ろ過膜12からの超純水が三次純水タンク25に導入される。この三次純水タンク25には、窒素ガス配管23Bから窒素ガスが導入され、二次純水タンク1と同様、窒素ガスが常時封入されている。そして、この三次純水タンク25に取り付けられたナノバブル発生機14にはオゾンガス配管27Bからオゾンガスが供給され、オゾンおよびナノバブルを含有する超純水が生成される。なお、このナノバブル発生機14の第1気体せん断部3,第2気体せん断部4は三次純水タンク25外に配置され、第3気体せん断部6は三次純水タンク25内に配置されている。そして、この三次純水タンク25内で生成されたオゾンおよびナノバブルを含有する超純水は、ナノバブル洗浄水送水ポンプ26によって、各ユースポイント13に供給される。
【0110】
この第6実施形態によれば、上記限外ろ過膜12の後段にナノバブル発生機14を有するタンク25設置して、ユースポイント13に近い位置で、水質を殆ど悪化させることなく、オゾンおよびナノバブルを含有する超純水を製造している。したがって、ユースポイントでの生産装置や目的対象物に対する洗浄効果と殺菌効果の向上を期待できる上に、超純水配管21,22を洗浄し殺菌する効果の向上も期待できる。
【0111】
また、この第6実施形態によれば、三次純水タンク25およびナノバブル発生機14を、既存の二次純水製造装置や、新規の市販されている二次純水製造装置に追加設置することが容易である。
【0112】
なお、この第6実施形態において、上記三次純水タンク25を取り去り、上記限外ろ過膜12と超純水配管21との間に配管を介してナノバブル発生機14を接続してもよい。
【0113】
(実験例)
図1に示す第1実施形態に基づいて実験装置を製作した。この実験装置における二次純水タンク1の容量は1000リットル(市販のポリエチレン製で装置メーカーは野村マイクロサイエンス株式会社)とした。また、熱交換器9の寸法は、0.5m×0.5m×0.2mとし、装置メーカーは野村マイクロサイエンス株式会社で、単品のメーカーは日阪製作所とした。また、紫外線殺菌器10の寸法は、0.6m×0.6m×0.2mとし、装置メーカーは野村マイクロサイエンスとした。また、イオン交換ポリッシャー11は、100リットルとし装置メーカーは野村マイクロサイエンス株式会社とした。また、限外ろ過膜12は60リットルとし、装置メーカーは野村マイクロサイエンス株式会社とした。また、ナノバブル発生機14としては、株式会社協和機設のバビダスHYK―32型を採用した。
【0114】
そして、この実験装置で製造した硝酸イオンおよびナノバブル含有超純水を洗浄水の供試体1とし、一般的な従来の二次純水製造装置からの超純水とを洗浄水の供試体2として、ダストを付着させシリコンウエハを洗浄する洗浄比較試験を実施した。この洗浄比較試験の結果、硝酸イオンおよびナノバブル含有超純水である供試体1の方が,一般の超純水である供試体2よりも、32%だけ洗浄効果が向上していた。
【0115】
尚、洗浄比較試験は、次の内容で実施した。すなわち、最初にシリコンウエハをエチルアルコールで洗浄し、超純水でさらに洗浄した。100ccの超純水に0.1ccのアルミナ微粒子(アルミナ粒径70nm以下)を添加して撹拌し、この中に前記シリコンウエハを10秒間漬けた。そして、前記第1実施形態による実験装置におけるユースポイント13用に密閉容器(洗浄水の供試体1入り)を予め準備しておいて、この密閉容器の中に前記アルミナ微粒子が付着したシリコンウエハを投入して、約1時間洗浄した。また、同様の作業を一般の超純水製造装置での超純水(供試体2)による洗浄実験を行った。そして、光学顕微鏡でシリコンウエハ表面のダスト(アルミナ微粒子)数を計測し、供試体1で洗浄したシリコンウエハ表面のダスト数と供試体2で洗浄したシリコンウエハ表面のダスト数とを比較したところ、供試体1で洗浄した場合の方が供試体2で洗浄した場合よりも、32%だけ洗浄効果が向上していた。
【0116】
また、上記実験装置による約2ヶ月間の試運転の後、バイパス配管16を使用した殺菌作業を実施し、二次純水の立ち上がり時間を測定した。その結果、約1時間後に抵抗率、全有機炭素、微粒子、溶存酸素、微生物等の項目が全て元の水質になった。これは、通常の立ち上がり時間と比較して、約1/3であり、約1/3の立上り時間にて殺菌効果を確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】この発明の超純水製造装置の第1実施形態の二次純水製造装置を模式的に示す図である。
【図2】この発明の超純水製造装置の第2実施形態の二次純水製造装置を模式的に示す図である。
【図3】この発明の超純水製造装置の第3実施形態の二次純水製造装置を模式的に示す図である。
【図4】この発明の超純水製造装置の第4実施形態の二次純水製造装置を模式的に示す図である。
【図5】この発明の超純水製造装置の第5実施形態の二次純水製造装置を模式的に示す図である。
【図6】この発明の超純水製造装置の第6実施形態の二次純水製造装置を模式的に示す図である。
【図7】一般的な超純水製造装置のブロックフロー図である。
【符号の説明】
【0118】
1 二次純水タンク
2 気液混合循環ポンプ
3 第1気体せん断部
4 第2気体せん断部
5 圧力容器
6 第3気体せん断部
7 ナノバブル流
8 電動ニードルバルブ
9 熱交換器
10 紫外線殺菌器
11 イオン交換ポリッシャー
12 限外ろ過膜
13 各ユースポイント
14 ナノバブル発生機
15、24 バルブ
16 バイパス配管
17 前処理装置
18 一次純水製造装置
19 二次純水製造装置
20 生産装置
21、22 超純水配管
23、23A、23B 窒素ガス配管
24 循環ポンプ
25 三次純水タンク
26 ナノバブル洗浄水送水ポンプ
27、27B オゾンガス配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水が導入される前処理装置と、
上記前処理装置からの処理水が導入される一次純水製造装置と、
上記一次純水製造装置からの一次純水が導入されると共にナノバブル発生機を有する二次純水製造装置とを備えることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超純水製造装置において、
上記ナノバブル発生機には窒素ガスが供給されることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超純水製造装置において、
上記ナノバブル発生機にはオゾンガスが供給されることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の超純水製造装置において、
上記二次純水製造装置は、
上記一次純水製造装置からの一次純水が導入される二次純水タンクと、
上記二次純水タンクの後段に順に設置された熱交換器,紫外線殺菌器,イオン交換ポリッシャー,限外ろ過膜とを有し、
上記二次純水タンクと上記熱交換器との間に、上記ナノバブル発生機が設置されていることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1つに記載の超純水製造装置において、
上記二次純水製造装置は、
上記一次純水製造装置からの一次純水が導入される二次純水タンクと、
上記二次純水タンクの後段に順に設置された熱交換器,紫外線殺菌器,イオン交換ポリッシャー,限外ろ過膜とを有し、
上記ナノバブル発生機は、上記熱交換器と上記紫外線殺菌器との間に設置されていることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1つに記載の超純水製造装置において、
上記二次純水製造装置は、
上記一次純水製造装置からの一次純水が導入される二次純水タンクと、
上記二次純水タンクの後段に順に設置された熱交換器,紫外線殺菌器,イオン交換ポリッシャー,限外ろ過膜を有し、
上記限外ろ過膜の後段に設置されたタンクまたは配管に上記ナノバブル発生機を設置したことを特徴とする超純水製造装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の超純水製造装置において、
上記ナノバブル発生機は、
上記二次純水タンクの後段で順に設置された気液混合循環ポンプ,第1気体せん断部,第2気体せん断部,第3気体せん断部と、
上記気液混合循環ポンプに接続されたガス配管と、
上記ガス配管に設けた電動ニードルバルブとを有することを特徴とする超純水製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載の超純水製造装置において、
上記気液混合循環ポンプの揚程が40m以上であることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載の超純水製造装置において、
上記ナノバブル発生機が有する上記第1気体せん断部は、内部が、楕円形または真円形構造であり、かつ上記内部が鏡面仕上げとなっていることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1つに記載の超純水製造装置において、
上記第2気体せん断部と第3気体せん断部の形状が、楕円形、または真円形であり、かつ小孔が開いており、この小孔の孔径が4mm以上かつ9mm以下であることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項11】
請求項7から10のいずれか1つに記載の超純水製造装置において、
上記気液混合循環ポンプを構成する材料の厚みが6mm以上かつ12mm以下であることを特徴とする超純水製造装置
【請求項12】
請求項7から11のいずれか1つに記載の超純水製造装置において、
上記気液混合循環ポンプを構成する材料が、ステンレス、もしくは樹脂であることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項13】
請求項7から12のいずれか1つに記載の超純水製造装置において、
上記気液混合循環ポンプの運転を開始させた後に、上記電動ニードルバルブを自動的に閉から開に制御する制御部を有することを特徴とする超純水製造装置。
【請求項14】
請求項7から13のいずれか1つに記載の超純水製造装置において、
上記気液混合循環ポンプは、吐出口の口径サイズを、吸い込み口の口径サイズよりも小さくしたことを特徴とする超純水製造装置。
【請求項15】
請求項7から14のいずれか1つに記載の超純水製造装置において、
上記電動ニードルバルブの開度を制御して、上記第1気体せん断部でのマイクロバブルの製造性能を制御する制御部を有することを特徴とする超純水製造装置。
【請求項16】
請求項7から15のいずれか1つに記載の超純水製造装置において、
上記第1気体せん断部は、内部に、流体の旋回乱流を制御するための2本以上の溝が形成されていることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項17】
請求項7から16のいずれか1つに記載の超純水製造装置において、
上記気液混合循環ポンプは、吐出量が、毎分15リットル以上かつ毎分120リットル以下であり、
上記電動ニードルバルブからの吸い込み気体量が、毎分0.3リットル以上かつ毎分1.5リットル以下であることを特徴とする超純水製造装置。
【請求項18】
原水を順に前処理装置,一次純水製造装置に導入し、
上記一次純水製造装置からの一次純水を、ナノバブル発生機を有する二次純水製造装置に導入することを特徴とする超純水製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−106831(P2009−106831A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280127(P2007−280127)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】