説明

超耐熱性アガロ―ス分解酵素

【課題】融点が60℃以上のアガロース、特に融点が70〜80℃のアガロースを工業的に分解し得るアガロース分解酵素を提供する。
【解決手段】寒天からのネオアガロオリゴ糖の生成を触媒する活性を有するアガロース分解酵素であって、至適温度が60〜80℃であり、かつ、80℃で10分間の高温条件下に供した後の前記活性が、該高温条件下に供する前の前記活性と比べて80%以上である、アガロース分解酵素。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な耐熱性のアガロース分解酵素およびその利用、該アガロース分解酵素のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドおよびその利用、該アガロース分解酵素の製造方法、ならびに該アガロース分解酵素を生産する微生物に関する。
【背景技術】
【0002】
寒天は、テングサ、オゴノリ等の紅藻類から得られる多糖類であり、その主成分はアガロースである。寒天中にはアガロースに硫酸、硫酸ピルビン酸等がエステル結合したアガロペクチンと総称される多糖も少量存在している。
【0003】
アガロースをアガロース分解酵素の一種であるβ−アガラーゼにより加水分解することによりネオアガロオリゴ糖が得られる。ネオアガロオリゴ糖は、デンプン老化防止作用が強いこと、加熱処理により静菌作用を生じること、低カロリーであること等の面から食品分野で高機能性食品の原料として有用である。また、海藻成分をβ−アガラーゼにより加水分解して得られるオリゴ糖には免疫機能活性化機能や、肌への美白、保湿効果が認められている。さらに、アガロース分解酵素を用いて海藻類の強固な細胞組織を分解し、生理活性物質を抽出したり、あるいは該酵素を用いて作成したプロトプラストを利用して海藻の有用品種の開発をすることは未開発の海洋生物資源の新たな有効利用として期待されている。
【0004】
アガロース分解酵素としては、たとえば、本発明者らによって見出されたアガロース分解酵素が知られている(特許文献1を参照)。特許文献1に記載の酵素は、54℃で30分間の熱処理を行っても活性が残存することから、寒天の高温下での迅速分解を実現でき、産業上有利に利用することができる。
【0005】
この他にも、至適温度が60℃付近にあるアガロース分解酵素が特許文献2および3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/090127号パンフレット
【特許文献2】特開平7−255475号公報
【特許文献3】特再公表2002−068659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、アガロースとしては種々のものがあり、融点が60℃以上であるものは少なくない。また、酵素の性質として、至適温度の範囲が広く、その至適温度の高温域で安定性が認められるものは、工業上安定して利用され得る。
【0008】
そこで、本発明は、融点が60℃以上のアガロース、特に融点が70〜80℃のアガロースを工業的に分解し得るアガロース分解酵素を提供することを、発明が解決しようとする課題とした。また、これに関連して、該アガロース分解酵素の利用、該アガロース分解酵素のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドおよびその利用、該アガロース分解酵素の製造方法、ならびに該アガロース分解酵素を生産する微生物を提供することもまた、発明が解決しようとする課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を積み重ねた結果、これまでアガロース分解酵素の産生可能性について注目されていなかったハロコッカス属微生物が耐熱性のアガロース分解酵素を産生し得ることを見出した。また、本発明者らが取得することに成功したハロコッカス属微生物であるハロコッカス・スピーシーズ(Halococcus sp.) 197A(受領番号:FERM ABP-11336)は、至適温度の範囲として70〜80℃を含み、かつ、この温度範囲において安定性が認められる新規の耐熱性アガロース分解酵素を生産し得るものであった。本発明は、これらの知見や成功例に基づき、完成された発明である。
【0010】
したがって、本発明によれば、寒天からのネオアガロオリゴ糖の生成を触媒する活性を有するアガロース分解酵素であって、
至適温度が60〜80℃であり、かつ、
80℃で10分間の高温条件下に供した後の前記活性が、該高温条件下に供する前の前記活性と比べて80%以上である、前記アガロース分解酵素が提供される。
【0011】
好ましくは、分子量が、SDS−PAGE法で54,000〜58,000、または、ゲルろ過法では53,000〜57,000である。
好ましくは、一価陽イオンとして、Na、KまたはLiを要求する。
好ましくは、至適pHが5.5〜7.0である。
好ましくは、ハロコッカス属微生物由来の酵素である。
好ましくは、前記ハロコッカス属微生物がハロコッカス・スピーシーズ 197A(受領番号:FERM ABP-11336)である。
【0012】
本発明の別の態様として、寒天からのネオアガロオリゴ糖の生成を触媒する活性を有するアガロース分解酵素であって、
至適温度が60〜80℃であり、
80℃で10分間の高温条件下に供した後の前記活性が、該高温条件下に供する前の前記活性と比べて80%以上であり、かつ、
以下(1)〜(3)のいずれかのアミノ酸配列を有する、前記アガロース分解酵素が提供される。
(1)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列
(2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加および/または挿入されたアミノ酸配列
(3)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列
【0013】
好ましくは、前記アミノ酸配列が配列表の配列番号8に記載のアミノ酸配列である。
【0014】
本発明の別の態様として、本発明のアガロース分解酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドが提供される。
【0015】
好ましくは、前記塩基配列が以下(a)〜(c)のいずれかの塩基配列である。
(a)配列表の配列番号2に記載の塩基配列
(b)配列表の配列番号2に記載の塩基配列において1から複数個の塩基が欠失、置換、付加および/または挿入された塩基配列
(c)配列表の配列番号2に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列
【0016】
好ましくは、前記塩基配列が配列表の配列番号9に記載の塩基配列である。
【0017】
本発明の別の態様として、本発明のポリヌクレオチドを有する組換えベクターが提供される。
【0018】
本発明の別の態様として、本発明の組換えベクターにより形質転換された微生物が提供される。
【0019】
本発明の別の態様として、本発明の微生物を培養し、培養物よりアガロース分解酵素を採取することを含む、アガロース分解酵素の製造方法が提供される。
【0020】
本発明の別の態様として、ハロコッカス・スピーシーズ 197A(受領番号:FERM ABP-11336)を培養し、培養物よりアガロース分解酵素を採取することを含む、アガロース分解酵素の製造方法が提供される。
【0021】
本発明の別の態様として、本発明の製造方法により得られる、アガロース分解酵素が提供される。
【0022】
本発明の別の態様として、DNAを含有したアガロースゲルに、本発明のアガロース分解酵素を作用させてアガロースゲル中のDNAを回収することを含む、アガロースゲル中のDNAの回収方法が提供される。
【0023】
本発明の別の態様として、本発明のアガロース分解酵素、
ナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩、および
pH5.5〜7.0の緩衝液
を含む、アガロースゲル中のDNAを回収するためのキットが提供される。
【0024】
本発明の別の態様として、ハロコッカス・スピーシーズ 197A(受領番号:FERM ABP-11336)が提供される。
【発明の効果】
【0025】
本発明のアガロース分解酵素によれば、融点が60℃以上のアガロース、特に融点が70〜80℃のアガロースを分解することができる。特に、本発明のアガロース分解酵素は、80℃での温度安定性を有するものであるため、80℃という高温条件下で寒天からの安定したネオアガロオリゴ糖の工業生産を可能とする。
【0026】
本発明のアガロース分解酵素の製造方法および本発明のポリヌクレオチドや微生物を利用したアガロース分解酵素の製造方法によれば、生産物であるアガロース分解酵素が耐熱性を有することから、アガロース分解酵素を工業的に安定して生産できる。
【0027】
本発明のアガロースゲル中のDNAの回収方法によれば、従来のアガロース分解酵素と比べて回収率を向上させたアガロースゲル電気泳動後の核酸抽出が実施できる。この用途のために、本発明のキットは、遺伝子解析関連試薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】アガラーゼ生産菌が形成した分解斑を示した図である。寒天分解活性をヨウ素液で検出し、寒天の分解によって還元糖が生じた部分を非染色領域として検出している。
【図2】アガラーゼ生産菌と既知近縁種との近隣結合系統樹を示した図である。括弧内はアクセッション番号を示す。
【図3】SDS−PAGEによる分子量解析を示した図である。Mは分子量マーカー。(A)はハロコッカス・スピーシーズ(Halococcus sp.) 197A株が生産するアガラーゼを示す。
【図4】アガラーゼ活性に対するNaCl濃度の影響を示した図である。NaCl濃度3.4Mにおける活性を100%とした相対活性でプロットしてある。
【図5】アガラーゼ活性に対するKClとLiCl濃度の影響を示した図である。NaCl濃度3.4Mにおける活性を100%とした相対活性でプロットしてある。■KClおよび◆LiCl。
【図6】アガラーゼ活性に対する温度の影響を示した図である。70℃における活性を100%とした相対活性でプロットしてある。
【図7】アガラーゼの温度安定性を示した図である。各温度で0−60分間加熱処理したときの残存活性。■70℃、◆80℃、▲90℃および●95℃。
【図8】アガラーゼ活性のpH依存性を示した図である。測定結果はpH 6.8のリン酸ナトリウム緩衝液を100%とした相対活性でプロットしてある。■クエン酸緩衝液、◆MES緩衝液、▲リン酸ナトリウム緩衝液、●グリシルグリシン緩衝液および−TABS緩衝液。
【図9】アガラーゼ分解産物のTLC解析を示した図である。1、22:ネオアガロ6糖。2、21:ネオアガロ4糖。3、20:ガラクトース。4−8:JAMB−A33由来α−アガラーゼ分解産物(0、2、4、8、16時間)。9−14:197A株由来アガラーゼ分解産物(0、1、2、4、8、16時間)。15−19:JAMB−A94株由来β−アガラーゼ分解産物(0、2、4、8、16時間)。
【図10】ゲノムシークエンスにより取得したリード配列の長さと数を示した図である。
【図11】新規アガラーゼの遺伝子配列とアミノ酸配列を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の詳細について説明する。
[1]本発明のアガロース分解酵素
本発明のアガロース分解酵素は、寒天からのネオアガロオリゴ糖の生成を触媒する活性を有するアガロース分解酵素である。本発明のアガロース分解酵素は、至適温度が60〜80℃であり、かつ、80℃で10分間、より好ましくは30分間、さらに好ましくは60分間の高温条件下に供した後の前記活性が、該高温条件下に供する前の前記活性と比べて80%以上(以下、高温条件下の残存活性ともいう)である。
【0030】
本明細書において「アガロース分解酵素」とは、寒天からのネオアガロオリゴ糖の生成を触媒する活性を有する酵素をいう。アガロース分解酵素の該活性は、アガロースのβ−1,4結合を加水分解し、ネオアガロオリゴ糖を生成する活性であるものと推測される。そこで、本明細書では、寒天からのネオアガロオリゴ糖の生成を触媒する活性を「アガラーゼ活性」ともいう。
【0031】
本発明のアガロース分解酵素は、寒天、アガロース等のD−ガラクトースと3,6−アンヒドロ−L−ガラクトースが交互にβ−1,4結合およびα−1,3結合した骨格を有する多糖類ならびに同骨格を有するオリゴ糖に作用し、寒天由来オリゴ糖を生成する。本発明のアガロース分解酵素の好ましい態様はエンド型β−アガラーゼである。
【0032】
本発明のアガロース分解酵素は、研究用試薬として、アガロースゲルにアプライしたDNAを電気泳動後にゲルから回収する方法等に使用することができる。さらに、藻類、特に紅藻類からのプロトプラストの製造や有用物質の抽出等の用途に使用することができる。
【0033】
本発明のアガロース分解酵素のアガラーゼ活性は、特に別段の記載がない限り、DNS法(Dinitro salicylic acid法)による還元糖の定量により、実施例の第2 1.[1]に記載の通りに測定する。概略すると、まず、アガロース基質溶液900μlと酵素液100μlとの混合溶液を75℃、15分間で反応させる。次いで反応後の混合溶液に1mlのDNS試薬を加えて混合した反応液を、100℃、5分間の加熱により発色させる。次いで発色させた反応液を室温まで冷却した後、4mlの蒸留水を加えて希釈し、分光光度計により波長535nmの吸収を測定する。1分間に1μmolのガラクトースに相当する還元糖を生成する酵素活性を1unitと定義する。
【0034】
本明細書において「至適温度」とは、アガラーゼ活性測定において、アガロース基質溶液と酵素液との混合溶液を反応させる温度を変化させた場合に、その温度を70℃に設定したときのアガラーゼ活性を100%として、80%以上の相対活性が観測された温度をいう。
【0035】
本発明のアガロース分解酵素について、高温条件下の残存活性を測定する際は、アガラーゼ活性測定に用いる酵素液を2分割し、一方を80℃で所定の期間の高温条件下に曝した後にアガラーゼ活性測定に供し、他方を該高温条件下に曝すことなくアガラーゼ活性測定に供する。
【0036】
本発明のアガロース分解酵素は、至適温度および高温条件下の残存活性が上記した通りのものであれば特に制限されないが、たとえば、分子量はSDS−PAGE法で54,000〜58,000、または、ゲルろ過法で53,000〜57,000であり;一価陽イオンとしてNa、KまたはLiを要求し;および、至適pHは5.5〜7.0である。ただし、「至適pH」とは、アガラーゼ活性測定において、アガロース基質溶液の緩衝液をクエン酸緩衝液、MES緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液、グリシルグリシン緩衝液またはTABS緩衝液としてpHを変化させた場合に、そのpHを6.0(MES緩衝液)に設定したときのアガラーゼ活性を100%として、80%以上の相対活性が観測されたpHをいう。
【0037】
本発明のアガロース分解酵素は、上記したアガラーゼ活性、至適温度および高温条件下の残存活性の他、分子量、一価陽イオン要求性および至適pHなどを指標として、種々の微生物、たとえば、ハロコッカス属(Halococcus sp.)微生物の生産物を分析および評価することにより採取することが可能である。
【0038】
本発明のアガロース分解酵素を生産する微生物を取得する方法は特に制限されないが、たとえば、天日塩サンプル、好ましくは高度好塩菌の存在が確認できた天日塩サンプルから、アガラーゼを生産する古細菌を探索することにより取得できる。アガラーゼ生産菌の探索用培地としては種々のものが使用できるが、好ましいのは実施例の表1に示した固体寒天培地である。アガラーゼ生産菌の存在は、たとえば、固体寒天培地の寒天の分解によって生じる凹みを目視で観察することにより検出できる。次いで、陽性の可能性がある株については、たとえば、固体寒天培地にルゴール液をかけて染色し、寒天の加水分解で生じた還元糖による非染色領域を形成せしめたものをアガラーゼ生産菌として取得できる。菌株を単離する方法は特に制限されないが、たとえば、画線法と限界希釈法により純粋培養株とすることができる。このようにして取得したアガラーゼ生産菌の中から、本発明のアガロース分解酵素を生産する微生物を取得できる。
【0039】
本発明のアガロース分解酵素を生産するハロコッカス属微生物として好ましいのは、後述する本発明の微生物であるハロコッカス・スピーシーズ(Halococcus sp.) 197Aである。
【0040】
本発明のアガロース分解酵素の具体的な態様は、アガラーゼ活性を有するアガロース分解酵素であって、
至適温度が60〜80℃であり、
80℃で10分間、好ましくは30分間、より好ましくは60分間の高温条件下に供した後の前記活性が、該高温条件下に供する前の前記活性と比べて80%以上であり、かつ、
以下(1)〜(3)のいずれかのアミノ酸配列を有する、前記アガロース分解酵素である。
(1)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列
(2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加および/または挿入されたアミノ酸配列
(3)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列
【0041】
上記(1)のアミノ酸配列は、後述する実施例に記載の502アミノ酸からなる。
【0042】
上記(2)のアミノ酸配列の「1から複数個のアミノ酸の欠失、置換、付加および/または挿入」における「1から複数個」の範囲は、上記(2)のアミノ酸配列を含むアガロース分解酵素について、至適温度が60〜80℃であり、かつ、80℃で10分間の高温条件下に供した後のアガラーゼ活性が、該高温条件下に供する前のアガラーゼ活性と比べて80%以上であれば特に限定されないが、たとえば、1から20個、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個、より好ましくは1、2、3、4、5、6または7個、さらに好ましくは1、2、3、4または5個、特に好ましくは1、2または3個程度を意味する。また、「アミノ酸の欠失」とは配列中のアミノ酸残基が欠落もしくは消失していること、「アミノ酸の置換」とは配列中のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置き換えられていること、「アミノ酸の付加」とは配列中に新たなアミノ酸残基が付け加えられていること、および「アミノ酸の挿入」とは配列中のアミノ酸残基の間に別のアミノ酸残基が挿し入れられていることをそれぞれ意味する。
【0043】
「1から複数個のアミノ酸の欠失、置換、付加および/または挿入」の具体的な態様としては、1から複数個のアミノ酸が別の化学的に類似したアミノ酸で置き換えられた態様がある。たとえば、ある疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸に置換する場合、ある極性アミノ酸を同じ電荷を有する別の極性アミノ酸に置換する場合などを挙げることができる。このような化学的に類似したアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において知られている。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
【0044】
上記(3)のアミノ酸配列は、至適温度が60〜80℃であり、かつ、80℃で10分間の高温条件下に供した後のアガラーゼ活性が該高温条件下に供する前のアガラーゼ活性と比べて80%以上であるアガロース分解酵素を構成するものとして、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列と90%以上のアミノ酸配列の相同性(同一性ともいう)、好ましくは93%以上の相同性、より好ましくは95%以上の相同性、さらに好ましくは97%以上の相同性、なおさらに好ましくは99%以上の相同性があるアミノ酸配列をいう。アミノ酸配列の相同性を求める方法は特に制限されないが、たとえば、通常知られる方法を利用して、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列と対象となるアミノ酸配列とをアラインメントし、両者の配列の一致率を計算することにより求められる。
【0045】
本発明のアガロース分解酵素の好適な具体的態様は、配列表の配列番号8に記載のアミノ酸配列を有するアガロース分解酵素である。配列表の配列番号8に記載のアミノ酸配列は529アミノ酸からなり、配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列のN末端側にシグナル配列を有するものである。
【0046】
本発明のアガロース分解酵素を取得する方法は特に制限されるものではなく、上記したスクリーニング法以外にも、たとえば、本発明のアガロース分解酵素の製造方法により製造してもよいし、配列表の配列番号1の記載を参照して物理化学的に合成してもよいし、遺伝子工学的に本発明のポリヌクレオチドから作成してもよいし、本発明の微生物から培養工学的に製造してもよい。
【0047】
本発明のアガロース分解酵素を用いた寒天由来オリゴ糖の製造としては、特に限定はされないが、たとえば、次に示す手順を用いることができる。アガロース、寒天等のD−ガラクトースと3,6−アンヒドロ−L−ガラクトースが交互にβ−1,4結合、α−1,3結合した骨格を持つ多糖類または同様の骨格を有するオリゴ糖を含む藻類の破砕または抽出物に、本発明のアガロース分解酵素を混ぜ、pH5.5〜7.0、60〜80℃の範囲で保温することで寒天由来オリゴ糖等のオリゴ糖を生成できる。
【0048】
本発明のアガロース分解酵素を用いた、寒天、アガロース等のD−ガラクトースと3,6−アンヒドロ−L−ガラクトースが交互にβ−1,4結合およびα−1,3結合した骨格を持つ多糖類を細胞組織成分に有する藻類を原料としたプロトプラストの製造は、特に限定はされないが、たとえば、以下の手順で実施することができる。供試海藻を0.7Mのマンニトール含有MES緩衝液(pH7.5)中でパパインを作用させる。その後0.7Mのマンニトール含有MES緩衝液(pH7.5)を用いて、40μmのナイロンメッシュでろ過洗浄し、洗浄した葉体をナイフで数ミリ片に裁断する。裁断片を本発明酵素と市販のセルラーゼオノズカRSならびに、マイセロチームR−10、それに0.7Mのマンニトール含有MES緩衝液(pH6.0)(塩化ナトリウム含有)中で振とうすることによって、プロトプラストを得ることができる。
【0049】
[2]本発明のポリヌクレオチド
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のアガロース分解酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドである。本発明のポリヌクレオチドの好ましい態様は、たとえば、以下(a)〜(c)のいずれかの塩基配列を有するポリヌクレオチドである。
(a)配列表の配列番号2に記載の塩基配列
(b)配列表の配列番号2に記載の塩基配列において1から複数個の塩基が欠失、置換、付加および/または挿入された塩基配列
(c)配列表の配列番号2に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列
【0050】
上記(a)の塩基配列は、後述する実施例に記載の1509bpからなる塩基配列である。
【0051】
上記(b)のポリヌクレオチドの塩基配列における「1から複数個の塩基の欠失、置換、付加および/または挿入」における「1から複数個」の範囲は、該塩基配列が、至適温度が60〜80℃であり、かつ、80℃で10分間の高温条件下に供した後のアガラーゼ活性が、該高温条件下に供する前のアガラーゼ活性と比べて80%以上であるアガロース分解酵素のアミノ酸配列をコードするものであれば特には限定されないが、たとえば、1から40個、好ましくは1から30個、より好ましくは1から20個、より好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個、さらに好ましくは1、2、3、4または5個、特に好ましくは1、2または3個程度を意味する。また、「塩基の欠失」とは配列中の塩基が欠落もしくは消失していること、「塩基の置換」とは配列中の塩基が別の塩基に置き換えられていること、「塩基の付加」とは塩基が付け加えられていること、および「塩基の挿入」とは配列中の塩基の間に別の塩基が挿し入れられていることをそれぞれ意味する。
【0052】
上記(c)のポリヌクレオチドについての「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」ポリヌクレオチドとは、ポリヌクレオチドをプローブとして使用し、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold
Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989(以下、モレキュラークローニング第2版と略す)または、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons
(1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)等に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0053】
本明細書でいう「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件および高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、たとえば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、たとえば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、たとえば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(たとえばDNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0054】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドとしては、プローブとして使用するポリヌクレオチドの塩基配列と一定以上の相同性(同一性ともいう)を有するポリヌクレオチドが挙げられ、たとえば80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、なおさらに好ましくは98%以上の相同性を有するポリヌクレオチドが挙げられる。塩基配列の相同性を求める方法は特に制限されないが、たとえば、通常知られる方法を利用して、配列表の配列番号2に記載の塩基配列と対象となる塩基配列とをアラインメントし、両者の配列の一致率を計算することにより求められる。
【0055】
本発明のポリヌクレオチドの好適な具体的態様は、配列表の配列番号9に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドである。配列表の配列番号9に記載の塩基配列は1590bpからなり、配列表の配列番号2に記載の塩基配列の5’末端側にシグナル配列をコードする塩基配列を有するものである。
【0056】
本発明のポリヌクレオチドの取得方法は特に限定されない。たとえば、本明細書中の配列表の配列番号1に記載したアミノ酸配列および配列番号2に記載の塩基配列の情報に基づいて適当なプローブやプライマーを調製し、それらを用いてハロコッカス属微生物やその他の微生物の染色体DNAライブラリーから本発明のポリヌクレオチドを得ることができる。また、本発明のポリヌクレオチドは、配列表の配列番号2に記載の塩基配列の情報を基に化学合成、遺伝子工学的手法または突然変異誘発などの当業者に通常知られる任意の方法で作製することができる。
【0057】
本発明のポリヌクレオチドは、通常、組換えDNAの形態で宿主に導入される。組換えDNAは、通常、DNAと自律増殖可能なベクターを含んでなり、本発明のポリヌクレオチドを入手できれば、通常知られる組換えDNA技術により調製することができる。たとえば、本発明のポリヌクレオチドを自律増殖可能なベクターに挿入して組換えDNAとし、これを適宜宿主に導入して得られる形質転換体を培養し、培養物から菌体を採取し、この菌体から当該DNAを含むプラスミドを採取する。
【0058】
[3]本発明の組換えベクター
本発明のポリヌクレオチドは適当なベクター中に挿入して使用することができる。本発明で用いるベクターの種類は特に限定されず、たとえば、自律的に複製することが可能なベクター(たとえばプラスミド等)でもよいし、あるいは、宿主細胞に導入された際に宿主細胞の染色体に組み込まれ、染色体と共に複製されるものであってもよい。好ましくは、本発明で用いるベクターは発現ベクターである。発現ベクターにおいて本発明のポリヌクレオチドは、転写に必要な要素(たとえば、プロモーター等)と機能的に連結される。プロモーターは宿主細胞において転写活性を示すDNA配列であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。
【0059】
また、自律的に複製することが可能なベクターの具体例としては、pET21a、pRSETA、pCR8、pBR322、pBluescript II SK(+)、pUC18、pCR2.1、pLEX、pJL3、pSW1、pSE280、pSE420、pHY300PLK、pTZ4、pC194、pUB110、pHV14、TRp7、YEp7、pBS7、pTA2等のプラスミドベクターやλgt11、λZAP、λgt・λB、ρ11、φ1、φ105等のファージベクターが挙げられるが、大腸菌で発現させるには、pET21a、pRSETA、pCR8、pBR322、pBluescript II SK(+)、pUC18、pKK223−3、pCR2.1およびpTA2が好適であり、枯草菌で発現させるには、pUB110、pTZ4、pC194、ρ11、φ1およびφ105が好適である。pHY300PLK、pHV14、TRp7、YEp7およびpBS7は、組換えDNAを2種以上の宿主内で増殖させる場合に有用である。
【0060】
作動可能なプロモーターとしては、挿入断片に含まれる宿主中において機能することができるプロモーターであれば特に制限されないが、たとえば、大腸菌においてはラクトースオペロン(lac)、トリプトファンオペロン(trp)などのプロモーターやtacプロモーターを挙げることができ;枯草菌においてはバチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)のマルトジェニックアミラーゼ遺伝子、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)のα−アミラーゼ遺伝子、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)のアルカリプロテアーゼ遺伝子、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)のキシロシダーゼ遺伝子などのプロモーターを挙げることができ;酵母ではアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(ADH)、酸性フォスファターゼ遺伝子(PHO)、ガラクトシダーゼ遺伝子(GAL)、グリセロアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(GPD)などのプロモーター、酵母解糖系遺伝子由来のプロモーター、TPI1プロモーター、ADH2−4cプロモーターなどを挙げることができ;カビではα−アミラーゼ遺伝子(amy)、セロビオハイドロラーゼI遺伝子(CBHI)などのプロモーター、ADH3プロモーター、tpiAプロモーターなどを挙げることができ;哺乳動物細胞では、SV40プロモーター、MT−1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター、アデノウイルス2主後期プロモーターなどを挙げることができ;昆虫細胞では、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーター、オートグラファ・カリホルニカ・ポリヘドロシス塩基性タンパクプロモーター、バキュウロウイルス即時型初期遺伝子1プロモーター、バキュウロウイルス39K遅延型初期遺伝子プロモーターなどを挙げることでき、その他としてはファージ・ラムダのPRプロモーター、PLプロモーターなどを挙げることができる。
【0061】
本発明の組換えベクターはさらに選択マーカーを含有してもよい。選択マーカーとしては、たとえば、薬剤耐性マーカー、栄養要求マーカーを使用することができる。選択マーカーの具体例としては、使用する宿主細胞が細菌の場合はアンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ヒグロマイシ耐性遺伝子などであり、酵母の場合はジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子、シゾサッカロマイセス・ポンベTPI遺伝子、トリプトファン合成遺伝子(TRP1)、ウラシル合成遺伝子(URA3)、ロイシン合成遺伝子(LEU2)などがあり、カビの場合はハイグロマイシン耐性遺伝子(Hyg)、ビアラホス耐性遺伝子(Bar)、硝酸還元酵素遺伝子(niaD)などが挙げられる。
【0062】
本発明の組換えベクターは、本発明のポリヌクレオチドによって転写されるタンパク質の発現に必要なDNA配列、たとえばプロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、分泌シグナル配列、ターミネーターなどを適当な順で連結していることことが好ましい。本発明の組換えベクターを構築する方法や本発明の組換えベクターを宿主に挿入する方法は当業者に通常知られるものである。
【0063】
[4]本発明の形質転換体
本発明の組換えベクターを適当な宿主に導入することによって形質転換体を作製することができる。すなわち、本発明の形質転換体とは、本発明の組換えベクターにより形質転換された微生物をいう。
【0064】
本発明の組換えベクターが導入される宿主細胞は、宿主−ベクター系が確立されているものであればいずれも利用可能であり、細菌、酵母、真菌および高等真核細胞等が挙げられる。細菌細胞の例としては、枯草菌または放線菌等のグラム陽性菌または大腸菌等のグラム陰性菌が挙げられる。これら細菌の形質転換は、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、カルシウムイオンを用いる方法等により行えばよい。
【0065】
本発明の形質転換体を製造する上で好ましい宿主−ベクター系としては、たとえば、大腸菌Escherichia coli HB−101(TaKaRa)−TAクローニング用ベクターpTA2が挙げられる。
【0066】
本発明の形質転換体を用いて、本発明のアガロース分解酵素を得ることができる。たとえば、本発明の形質転換体を適当な条件で培養し、得られた培養液から一般的な方法によって酵素の分取や精製を行うことにより本発明のアガロース分解酵素を得ることができる。
【0067】
[5]本発明のアガロース分解酵素の製造方法
本発明のアガロース分解酵素の製造方法は、本発明の形質転換体またはハロコッカス・スピーシーズ 197A(受領番号:FERM ABP-11336)(以下、これらを酵素生産微生物ともいう)を培養し、培養物よりアガロース分解酵素を採取することを含む。具体的には、酵素生産微生物を常法にしたがって適当な培地に接種して適切な条件下で培養し、得られた培養物からアガロース分解酵素を採取することを含む、アガロース分解酵素の製造方法である。
【0068】
本発明のアガロース分解酵素の製造方法は、大別すると、(a)酵素生産微生物を培養して、アガロース分解酵素含有培養物を得る工程、および(b)該培養物からアガロース分解酵素を採取する工程の二つの工程に分けられる。
【0069】
培養に用いる栄養培地としては、酵素生産微生物が増殖し得る培地を広く使用できる。酵素生産微生物の培養に際して、微生物増殖用とアガロース分解酵素生産用の二種類の培地を用いてもよい。この場合、アガロース分解酵素生産用の培地には、寒天またはアガロース、寒天分解物等を炭素源として含むことが望ましい。寒天、アガロースは、市販のもの、あるいは加工、精製される前の紅藻類を単独、併用して用いることができる。寒天またはアガロースの濃度は、0.1〜1.5%が好ましい。酵素生産微生物を培養して得た培養物をそのまま粗酵素として用いる場合、培地調製において、pH、一価塩その他酵素活性に影響する要因には注意を要する。
【0070】
培養法としては液体培養法(振とう培養法もしくは通気攪拌培養法)が好ましく、工業的には通気攪拌培養法が好ましい。酵素生産微生物がハロコッカス属微生物である場合の培養は、通常、温度20〜45℃、好ましくは25〜40℃、pH5〜9、好ましくは6〜8から選ばれる条件で好気的に実施する。培養時間はハロコッカス属微生物が増殖し始める時間以上の時間であればよく、好ましくは数時間〜数日間であり、さらに好ましくは所望のアガラーゼ活性が最大値に達成する時間までである。菌体増殖を確認する方法は特に制限はないが、たとえば、培養物を採取して顕微鏡で観察してもよいし、吸光度で観察してもよい。また、培養液の溶存酸素濃度には特に制限はないが、通常は、0.5〜20ppmが好ましい。そのために、通気量を調節したり、撹拌したり、通気に酸素を追加したりすればよい。培養方式は、回分培養、流加培養、連続培養、灌流培養など、いずれを用いてもよい。
【0071】
上記のようにして培養して得られた培養物から、アガロース分解酵素を採取する。アガロース分解酵素の採取法は、一般の酵素の採取の手段に準じて実施することができる。たとえば、固液分離などの通常知られる手段によって細胞を除いた後に培養上清を粗酵素として用いることができる。固液分離には、通常知られる方法を制限なく利用することができ、たとえば、培養物を遠心分離する方法、培養物に濾過助剤を加えることや濾過助剤をプレコートしたプレコートフィルターなどにより濾過分離する方法、平膜、中空糸膜などを用いる膜濾過分離する方法などが採用される。
【0072】
粗酵素は、そのままで使用することもできるが、精製して使用することが好ましい。たとえば、ここに挙げるものに限定されるものではないが、得られた粗酵素を、熱処理などの耐熱性の差を利用する方法;透析、限外ろ過、レジンカラム、ゲルろ過、ゲルろ過クロマトグラフィーおよびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動などの分子量の差を利用する方法;塩沈澱、硫安沈殿、アルコール沈殿およびその他の溶媒沈澱などの溶解性の差を利用する方法;DEAE−トヨパール樹脂などを用いるイオン交換クロマトグラフィーなどの電荷の差を利用する方法;アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法;ブチルトヨパール樹脂などを用いる疎水クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法;吸着クロマトグラフィーなどの物理化学的な吸着性の差を利用する方法;等電点電気泳動および等電点クロマトグラフィーなどの等電点の差を利用する方法といった通常知られる方法を単独または組み合わせて供することにより、精製酵素を調製できる。
【0073】
粗酵素および精製酵素は、固定化することもできる。たとえば、イオン交換体への結合法、樹脂および膜などとの共有結合・吸着法、高分子物質を用いた包括法などを採用することができる。
【0074】
本発明のアガロース分解酵素の製造方法によって得られるアガロース分解酵素は、本発明のアガロース分解酵素の別の態様として提供される。
【0075】
[6]本発明のアガロースゲル中のDNAの回収方法
本発明のアガロースゲル中のDNAの回収方法は、DNAを含有したアガロースゲルに、本発明のアガロース分解酵素を作用させてアガロースゲル中のDNAを回収することを含む。本発明のアガロースゲル中のDNAの回収方法の具体例としては、特に制限されないが、次の方法が挙げられる。DNAを電気泳動で分画後、目的のDNA断片含むアガロースゲル断片に本発明のアガロース分解酵素を加えて、溶解する。溶解後、必要であればDNA断片を含む溶液を、たとえば、フェノール処理、エタノール沈澱、カラムや樹脂を使用した精製等の精製方法を単独、あるいは併用して精製することも可能である。
【0076】
[7]本発明のキット
本発明のキットは、本発明のアガロース分解酵素、ナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩、およびpH5.5〜7.0の緩衝液を含む、アガロースゲル中のDNAを回収するためのキットである。ナトリウム塩、カリウム塩およびリチウム塩としては特に制限されないが、たとえば、塩化物やフッ化物などのハロゲン化物などが挙げられる。pH5.5〜7.0の緩衝液としては、特に制限されないが、たとえば、pH5.5〜7.0のMES緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液、グリシルグリシン緩衝液などが挙げられる。
【0077】
本発明のキットは、本発明のアガロース分解酵素、ナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩、およびpH5.5〜7.0の緩衝液がそれぞれ個別に包装されていてもよく、それらが混合した状態で存在していてもよい。
【0078】
本発明のキットの構成成分のアガロースゲルへの添加順序は特に制限されないが、それぞれ個装されている場合には、pH5.5〜7.0の緩衝液、ナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩および本発明のアガロース分解酵素の順に添加することが好ましい。
【0079】
[8]本発明の微生物
本発明の微生物は、本発明の酵素を生産し得るハロコッカス・スピーシーズ(Halococcus sp.) 197A(受領番号:FERM ABP-11336)に関する。このハロコッカス・スピーシーズ 197Aは、独立行政法人産業技術総合研究所の特許生物寄託センター(〒305−8566 茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター 中央第6)に2011年1月27日付けで受領番号:FERM ABP-11336として寄託されている。
【0080】
Halococcus sp. 197A株は25%のNaClを含む寒天培地上で、直径が1〜2mm、橙色〜赤色のコロニーを形成した。液体培養した細胞は直径0.8〜2.0μmの球形を呈した。本菌株は濃度0.5%のYeast extract(DIFCO)とCasamino acids(DIFCO)を栄養源として、NaCl濃度25%、pH7の条件下で極めて良好に増殖した。
【0081】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0082】
第1 アガラーゼ生産菌の探索
1.実験方法
[I]アガラーゼの探索
天日塩から、アガラーゼを生産する微生物を探索した。用いた培地組成は表1に示した。培地のpHは1N KOH溶液あるいは1N HCl溶液でpH 7に調製した後、121℃、20分間のオートクレーブ滅菌を行って調製した。天日塩1gを1M NaCl溶液3mlに溶解し、プレート1枚につき500μlを塗布した後、37℃で培養した。
【表1】

【0083】
[II]16S rRNA遺伝子配列による系統解析
(1)粗精製ゲノムDNAの抽出
対数増殖期後期まで培養した培養液から8000×g、3分間の遠心により菌体を回収した。培養液5mlから回収した菌体ペレットを200μlのST緩衝液(1M NaCl、20mM Tris−HCl)に再懸濁した後、200μlのLS緩衝液(100mM EDTA pH 8.0、0.2% SDS)を加えて転倒混和した。10分間静置した後、2.6mlの滅菌蒸留水を加えて転倒混和した。調製した溶菌液に6mlのエタノールを重層し、ガラス棒で界面をかき混ぜながら長鎖DNAを巻き取って回収した。回収したDNAは70% エタノール溶液で2度洗浄し、風乾の後で適量の滅菌蒸留水に再溶解した。調製したDNA溶液は−20℃で保存した。
【0084】
(2)PCRによる16S rRNA遺伝子の増幅
ゲノムDNA中の16S rRNA遺伝子を、TaKaRa LA Taq(タカラバイオ)を用いてPCR法により増幅した。プライマーセットは配列表の配列番号3および4に示した。
【0085】
(3)アガロース電気泳動
増幅したDNA断片を1.1%(w/v)アガロースゲルを用いた電気泳動によって分析および分離精製を行った。泳動用緩衝液にはTAE緩衝液(40mM Tris塩基、20mM 酢酸、1mM EDTA)を用いた。分子量マーカーにはHi−Lo DNA Marker(アートケム)を用い、DNA溶液は4×Loading Bufferと混合してゲルにセットした。100V、30minの電気泳動の後、エチジウムブロマイド溶液に浸漬してDNAを染色し、波長365nmのUVライトを照らしてDNAのバンドを確認した。UVライト照射下でDNAのバンドを切り出し、DNAのゲル抽出精製に供した。精製にはWizard SV Gel and PCR Clean−up System(Promega)を用いた。
【0086】
(4)TAクローニングおよび形質転換
精製したPCR産物はTAクローニング用ベクターpTA2(TOYOBO TArget Clone)に連結した後、大腸菌Escherichia coli HB−101(TaKaRa)を形質転換した。形質転換体の検出には100μg/mlのアンピシリン含有LB(DIFCO)寒天培地 を用い、34℃で16時間培養した。同寒天培地上にコロニーを形成した株をプラスミド抽出に供した。
【0087】
(5)プラスミドDNAの抽出
100μg/mlのアンピシリン含有LB培地(DIFCO)で180rpm、37℃、16時間培養した形質転換体をプラスミドDNAの抽出に用いた。培養液を12000×g、1分間の遠心で集菌し、菌体ペレット中からHigh Pure Plasmid Isolation Kit(Roche)を用いてプラスミドDNAを抽出した。
【0088】
(6)塩基配列の解析
調製したDNAサンプルについて、BigDye Terminator Ver. 3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を用いてシークエンス反応を行った。使用したプライマーは配列表の配列番号5および6に示した。反応産物の精製にはCENTRI−SEP(Applied Biosystems)を使用した。得られた試料は真空引きしたデシケータ−内で完全に乾燥させた後、Hi−Di Formamide(Applied Biosystems)に再溶解し、98℃で3分間、次いで4℃で3分間の熱処理を施して、ABI 3130xl DNAシークエンサー(Applied Biosystems)を用いた配列解析に供した。
【0089】
(7)塩基配列の結合編集および相同性検索
シークエンス解析の結果はATGC Ver.6(GENETYXコーポレーション)を用いて結合編集した後、NCBI BLASTプログラム(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/)を用いて既知16S rRNA遺伝子配列との相同性検索を行い、近縁種を推定した。
【0090】
(8)系統樹の作成
分離株と、既知近縁種の16S rRNA遺伝子配列データをGENETYX Ver. 10(GENETYXコーポレーション)を用いてFASTAフォーマットに変換し、ClustalX Ver.2を用いてMultiple Aligmentsを行った。出力ファイルから近隣結合法を用いて系統樹を作成した。この時、ブートストラップ値は1000として枝分岐の信頼度を計算した。
【0091】
2.実験結果
(1)アガラーゼ活性の検出
アガラーゼ生産菌は、寒天の分解によって生じる寒天培地の凹みを目視で観察して検出した。陽性と疑われた株についてはルゴール液をかけて寒天を染色し、寒天の加水分解で生じた還元糖による非染色領域を形成したものをアガラーゼ生産菌として取得した(図1)。菌株は画線法と限界希釈法により純粋培養株とし、アガラーゼ生産菌197A株(受領番号:FERM ABP-11336)を分離した。
【0092】
(2)アガラーゼ生産菌の系統解析
取得した197A株からDNAを抽出し、PCR法にて増幅した16S rRNA遺伝子の塩基配列解析を行った。決定した配列を用いてNCBI BLASTプログラムにより既知近縁種を推定し、系統樹を作成した(図2)。本解析の結果、197A株は既知近縁種と99%以下の相同性を示し、Halococcus saccharolyticusの近縁種であることが判った。
【0093】
第2 Halococcus sp. 197A株が生産するアガラーゼの性質解析
1.実験方法
[I]アガラーゼ活性の定義
アガラーゼ活性の測定はDNS法(Dinitro salicylic acid法)による還元糖の定量によって行った。反応液の組成はアガロース基質溶液(表2;いずれも終濃度)900μl、酵素液100μlとし、反応条件は75℃、15分間とした。反応後の溶液に1mlのDNS試薬(表3;1L当り)を加えて混合して100℃、5分間の加熱により発色させた。反応液は室温まで冷却した後、4mlの蒸留水を加えて希釈し、分光光度計により波長535nmの吸収を測定した。1分間に1μmolのガラクトースに相当する還元糖を生成する酵素活性を1unitと定義した。
【表2】

【表3】

【0094】
[II]アガラーゼの生産と精製
アガラーゼ生産菌はHcc培地(1L当りの組成)(表4)で培養し、酵素生産の誘導にはHcc−Salt培地(1L当りの組成)(表5)を用いた。
【表4】

【表5】

【0095】
定常期まで培養したHalococcus sp. 197A株をHcc培地に1%植菌し、37℃、120rpmで振とう培養を行った。O.D.600を経時的にモニターし、対数増殖期中期まで培養した後、無菌的に8000×gで遠心分離して菌体を回収した。回収した菌体は培養に用いたHcc培地と同量のHcc−Salt培地に再懸濁し、120rpm、37℃で3日間の酵素生産を行った。誘導の後、8000×gで15分間の遠心操作により、菌体と培養上清を分離した。これより以後の操作は全て4℃で実施した。得られた培養上清にTris−HCl pH 7.0緩衝液を終濃度5mM加え、次いでNaClを飽和するまで溶解し、30% NaClを含む5mM Tris−HCl pH 7.0緩衝液で平衡化したPhenyl−TOYOPEARL 650(東ソー、2.5×15cm)に供した。平衡化に用いた緩衝液でカラムを洗浄し、5mM Tris−HCl pH 7.0溶液を含む5.0、4.5、4.0、3.5、3.0、2.5、2.0、1.5、1.0、0.5および0M NaCl溶液で段階的にタンパク質の溶出を行った。アガラーゼ活性のある溶出画分を回収し、再び飽和するまでNaClを溶解した後、Phenyl−Toyopearl 650カラム(1×10cm)に供した。タンパク質の溶出は5〜0MのNaCl(5mM Tris−HCl pH 7.0)を用いた直線濃度勾配により行った。アガラーゼ活性のある溶出画分を回収し、2.5M NaClを含む5mM Tris−HCl pH 7.0緩衝液に透析し、得られた酵素液をその後の性質解析実験に用いた。
【0096】
[III]分子量測定
(1)SDS−PAGE
遠心式限外ろ過濃縮カラム(Milipore、Amicon Ultra 3kDa)を用いて酵素液を濃縮した後、微量透析器 (トミー精工、EasySep MD−003)を用いて5mM Tris−HCl pH 7.0緩衝液に透析を行った。透析済のサンプル溶液を再度限外ろ過濃縮し、SDS−PAGE(Sodium Dodecyl Sulfate−PolyAcrylamide Gel Electrocataphoresis)に供した。分離用ゲルには5〜20%の濃度勾配ゲル(和光純薬、SuperSep 5−20%)を用い、プレシジョンPlusデュアルスタンダード(BIO−RAD、10−250kDa)を分子量マーカーとして分子量を解析した。電気泳動後のゲルは蒸留水でSDSを除去した後、CBBにより染色し、タンパク質を検出した。
【0097】
(2)ゲル濾過クロマトグラフィー
濃縮した酵素溶液をSephacryl S−200(GEヘルスケア)カラムによる分子量解析に供した。移動相には5mM Tris−HCl pH 7を含む3.5M NaCl溶液 (1.5 ml/min)を用い、制御および検出装置にはAKTA Explorerシステム(GEヘルスケア)を使用した。分子量は同条件で解析したリボヌクレアーゼ(14.8kDa)、オブアルブミン(43.5kDa)、アルブミン(61.3kDa)、アルドラーゼ(176kDa)、カタラーゼ(219kDa)のリテンションタイムから計算した。
【0098】
[IV]アガラーゼ配列の解析
(1)N末端アミノ酸配列の解析
SDS−PAGE解析したゲルをMini Trans−Blot Cell(BIO−RAD)を用いてポアサイズ0.45μmのPVDF膜に転写した。転写膜はCBB染色によりタンパク質を染色して可視化した後、メタノールを含む脱色液で洗浄して不要なCBBを除去した。風乾により乾燥した膜から目的のバンドをカッターナイフで切り出してN末端アミノ酸配列解析の試料とした。解析システムにはProcise 492cLCアミノ酸シークエンサー(Applied Biosystems)を使用し、15サイクルのエドマン分解とアミノ酸分析を行った。
【0099】
(2)ゲノムシークエンスの解析
アガラーゼ遺伝子の取得を目的とし、Halococcus sp. 197A株のゲノム遺伝子配列を決定した。解析装置にはGenome Sequencer FLX(Roche)を使用し、70Mbp程度のデータ取得を目標とした。本シークエンス解析装置は1フラグメント当たりの読み取り塩基長が400bp程度に設定されており、データ取得後の配列結合解析が容易なことから、De novo解析に有効である。
【0100】
まず、対数増殖基中期まで培養した菌体をSDSおよびProteinase Kを用いた定法により溶菌し、RNase処理した後、PCI抽出とエタノール中でのスプーリングによって高分子ゲノムDNAを抽出した。ゲノムDNAは300−800bpに断片化処理し、3’末端と5’末端に特異的に結合する2種類のアダプターを結合・反応させて最終的に1本差DNAとし、アダプターを介して1つずつビーズに結合させた。各ビーズは油水エマルジョン中に包み込むことでマイクロリアクターを形成し、アダプターの塩基配列を利用したemPCRによりフラグメント配列を増幅した。増幅反応後に油水エマルジョンを破壊してビーズを回収し、シークエンス解析に用いた。
【0101】
2.結果
[I]酵素の精製
Halococcus sp. 197A株が生産するアガラーゼはカラムクトマトグラム技術を用いて精製した。精製酵素はSDS−PAGE解析によりゲル上で単一のバンドを形成する事を確認し、このとき分子量は約56kDaと見積もられた(図3)。また、ゲルろ過クロマトグラフィー分析では、約55kDaに相当する位置にタンパク質に由来する波長280nmの吸収ピークが現れた。回収したフラクション中のアガラーゼ活性のピークは、同ピークと一致した。
【0102】
精製酵素は0.3% アガロース(ナカライテスク、Agarose ME)溶液(3.5M NaCl、50mM リン酸ナトリウム pH 6.8)を基質としたとき、75℃、15分間の測定条件下で、約2unit(酵素1mg当たり、1分間にガラクトース2μmolに相当する還元糖を生成)に相当するアガラーゼ活性を示した。
【0103】
[II]酵素学的解析
(1)基質特異性
寒天はアンヒドロガラクトースとガラクトースを基本単位とした天然高分子であるが、原料とする海藻の種類や、採集地域、製法により、最終製品中のアンヒドロガラクトースや硫酸基の含有量が異なる。これらは寒天溶液の粘度やゲル強度等の物理化学的性質を決定する要素であるが、酵素学的には基質として不均質な状態と見なす事ができる。そこでHalococcus sp. 197A株が生産するアガラーゼの基質として最適な寒天を検討した。表6に、Agarose MEに対する活性を100%とした各基質の相対活性を示す。基質溶液は終濃度3.5MのNaCl、50mMのpH 6.8リン酸カリウム緩衝液をベースとし、各基質を0.3%加えて調製した。
【0104】
試験した基質
Agarose ME(ナカライテスク)、Agarose S(ニッポンジーン)、Agarose LE(ナカライテスク)、Agar Noble(DIFCO)、Bacto Agar(DIFCO)、Agarose(BIO−RAD)、Agar(WAKO)。
【表6】

【0105】
(2)塩濃度依存性
NaCl濃度を0−5.0Mに調製した基質溶液を用いて、アガラーゼ活性のNaCl濃度依存性を調べた(図4)。
【0106】
(3)塩の代替
基質溶液中のNaCl(塩化ナトリウム)を、KCl(塩化カリウム)、CaCl(塩化カルシウム)、LiCl(塩化リチウム)、MgCl・6HO(塩化マグネシウム六水和物)、MgSO・7HO(硫酸マグネシウム七水和物)に変更し、塩化ナトリウム以外の塩溶液中で活性を発現できるか調べた(表7)。表7において、“○”は代替可能なもの、“×”は代替不可のものを示す。代替できたLiClおよびKClについてはその濃度依存性についても調べた(図5)。
【表7】

【0107】
その結果、197A株が生産するアガラーゼは塩化ナトリウム、塩化カリウムあるいは塩化リチウム存在下で活性を呈した。一方、その他の塩化物塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、硫酸塩では代替できなかった。従って、本酵素の活性の発現には1価の陽イオンが必須であった。
【0108】
(4)温度依存性
活性測定を35−100℃でそれぞれ行い、活性の温度依存性を調べた。結果を図6に示す。
【0109】
(5)温度安定性
酵素溶液を70℃、80℃、90℃および95℃で、それぞれ0−60min処理した後の残存活性を経時的に調べた。結果を図7に示す。
【0110】
(6)pH依存性
基質溶液中の緩衝液を、クエン酸緩衝液(pH 4.0、4.5、5.0、5.5、6.0)、MES緩衝液(pH 5.5、6.0、6.5)、リン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.5、6.8、7.0、7.5、8.0)、グリシルグリシン緩衝液(pH 7.0、7.5、8.0、8.5)、TABS緩衝液(pH 8.5、9.0、9.5)に変更してそれぞれ活性測定を行い、アガラーゼ活性のpH依存性を調べた。結果を図8に示す。
【0111】
(7)分解産物
アガロースを酵素分解した反応産物をTLC解析した。反応産物のリファレンスには、ガラクトース、ネオアガロオリゴ4糖、ネオアガロ6糖、アガロースにThalassomonas sp. JAMB−A33由来α−アガラーゼを作用させた分解産物、アガロースにMicrobulbifer sp. JAMB−A94由来β−アガラーゼを作用させた分解産物を用いた。
【0112】
実験の結果、本酵素はアガロースからネオアガロ糖を生成するエンド型β−アガラーゼと判断された(図9)。
【0113】
[III]アガラーゼ配列の解析
(1)N末端アミノ酸配列の解析
精製酵素2.8pmolをProcise 492cLCアミノ酸シークエンサー(Applied Biosystems)により解析して、15残基のN末端アミノ酸配列(配列表の配列番号7)を決定した。
【0114】
得られた配列をサーチキーとしてNCBI Protein BLASTプログラムによる相同配列検索を行ったが、糖質の加水分解に関連するどのタンパク質もヒットせず、新規性の高いアミノ酸配列を持つアガラーゼであることが判った。
【0115】
(2)ゲノムシークエンスの解析
Genome Sequencer FLX(Roche)によるゲノムシークエンスの結果、総リード数186,788、総塩基数69,217,128bp(約69Mbp)のシークエンスデータを得た。各リードの平均長さは370.57bpであった(図10)。
【0116】
取得した全リードデータをGS FLX付属ソフトウェアGS De Novo AssemblerのGenome ProjectによってDe novoアッセンブルした。500bp以上の配列が得られたコンティグ数は45、総塩基数は3,472,732bp(約3.5Mbp)、コンティグの平均長さは77,171bpであり、得られたコンティグの50%以上は166,758bp以上の長さを有していた。配列の99.83%は誤差率0.01%以下の高精度で決定した。また、コンティグ後に100bp以上の配列が得られたコンティグ数は58、総塩基数は3,475,320bp(約3.5Mbp)であった。ゲノムシークエンス結果の概要を表8に示す。
【表8】

【0117】
(3)アガラーゼ遺伝子の取得
N末端アミノ酸配列解析によって得られた15残基のアミノ酸配列(配列表の配列番号7)をサーチキーとして、ゲノムシークエンス解析によって得られた塩基配列に対しBLAST X検索(プロテインクエリー VS 翻訳塩基配列)を行った。検索対象の塩基配列データベースは、検索過程でフォワードおよびリバース方向の計6つの読み取り枠でアミノ酸翻訳した。検索プログラムにはGENETYX Ver.10(GENETYXコーポレーション)を使用した。その結果、コンティグNo.00005の約60kbpの配列中から、サーチキーに用いたN末端アミノ酸配列と100%一致する配列が1件ヒットした。他の配列との相同性は29%以下であり、類似配列は得られなかった。
【0118】
ヒットした配列の27残基上流には、開始コドンと考えられるATG/メチオニンが、488残基下流には終止コドンと考えられるTAAが存在しており、本ORF(Open Reading Frame)は529アミノ酸(1590bp)で構成されていた(図11)。分子量は57.2kDaでシステインを3残基含み、本酵素を構成するアミノ酸は疎水性48.58%、親水性28.17%、酸性11.98%、塩基性11.34%、中性23.25%であった。また、pI値は5.17と計算された。
【0119】
N末端アミノ酸配列の解析によって得られた15残基のアミノ酸配列(配列表の配列番号7)から終止コドンまでの502アミノ酸から計算される分子量は約54.6kDaと見積もられ、SDS−PAGEおよびゲル濾過クロマトグラフィーで解析した分子量(56kDa、55kDa)とも良く一致した。相同配列の検索では、150アミノ酸以下の短い部分配列に対して最大29%の相同性を持つ配列がアサインされるのみであり、またその件数も僅か8件に過ぎず、酵素として有意に相同性のある配列はヒットしなかった。Glycoside hydrolase family 16(GH16)、GH50、GH86、GH118に属する既知のアガラーゼと配列のアライメント解析も試みたが、触媒残基等の保存領域は見つからなかった。
【0120】
[配列番号1]耐熱性アガロース分解酵素のアミノ酸配列
ARETVPPNASASKIQKRIDRAHRKTDAHGYGIVDGEGRTYTIGESLVLRSNTVLQNMKIRVAKGANIDAVTSANFEQNVENSAKTPAEGVPYNFGLSHVTIDGNRGKSNDETYGFSETYNTEGRGVAFYGQNITAQHVTIYRCAGDGWYSRFDHVAPYWEDDWDDLRGLAHTVIGPMYIRRCGGHGLHWEGPHDTTLTKVISAMNNKRGWYQKGVGMDAGVVHTFANSWGSDKSAYPNLHEAPLHINIYYADDDLVVANEMLQAATFRGPYGPNLTLNSNAQIGNLSIWGAGESRDGVVFNGWANQSVNNLNVYEYDGDGVVIDGPHVHIADGRSVQNTGYGVRMGVGTKVWACNVSFQGLNRNEKAGFRYGPAGGGEDNVNSYNRVNLRDWIAGEYVGYDTEDGTLPDSTDEFHIALSGSAEGTGMSWEEGSAVRSGGNGKQFTIAHDMVAAPEHVQITPKTEAAMGEYRVDGDGEAITITYRNAPASGTDNLGWYYRAAL
[配列番号2]耐熱性アガロース分解酵素遺伝子の塩基配列
GCCCGTGAAACCGTTCCGCCGAACGCCTCGGCATCCAAAATCCAGAAGCGGATCGACAGGGCTCACCGGAAAACCGACGCTCACGGCTACGGGATCGTCGATGGAGAGGGGCGGACGTACACCATCGGTGAGTCGCTCGTCCTTCGGTCGAACACCGTCCTCCAGAACATGAAGATTCGGGTCGCCAAGGGCGCGAACATCGACGCCGTCACGTCGGCGAACTTCGAACAGAACGTGGAAAACAGCGCGAAGACCCCCGCGGAAGGCGTCCCGTACAACTTCGGTCTGTCCCACGTCACCATCGACGGCAACCGTGGCAAGTCGAACGACGAGACGTACGGGTTCAGCGAGACGTACAACACGGAGGGCCGCGGTGTCGCCTTCTACGGTCAGAACATCACGGCTCAACACGTCACGATCTACAGATGTGCCGGGGACGGGTGGTACTCCAGGTTCGATCACGTCGCCCCGTACTGGGAGGACGACTGGGACGACCTCCGAGGCCTCGCACACACCGTCATCGGTCCGATGTACATCCGACGCTGTGGCGGCCACGGCCTCCACTGGGAGGGACCACACGACACGACCCTCACCAAAGTGATCAGCGCGATGAACAACAAGCGGGGATGGTACCAGAAGGGAGTCGGGATGGATGCGGGCGTCGTCCACACGTTCGCGAACTCGTGGGGGAGCGACAAGAGCGCCTACCCGAATCTCCACGAGGCGCCGCTCCATATCAACATCTACTACGCGGACGACGACCTCGTCGTGGCCAACGAGATGCTCCAGGCGGCGACCTTCCGGGGGCCCTACGGTCCGAACCTCACGCTCAACAGCAACGCACAGATCGGGAACCTGTCGATCTGGGGAGCCGGTGAATCACGGGATGGCGTCGTCTTCAACGGCTGGGCGAACCAGAGCGTCAACAATCTCAACGTGTACGAGTACGACGGGGACGGCGTCGTGATCGATGGTCCCCACGTGCATATCGCCGACGGTCGGTCGGTCCAGAACACGGGTTACGGCGTCCGGATGGGTGTCGGGACGAAGGTCTGGGCCTGCAACGTGTCGTTCCAGGGGCTGAACCGAAACGAGAAGGCAGGGTTCCGCTACGGCCCCGCCGGCGGCGGGGAGGACAACGTCAACTCGTACAACCGCGTGAACCTCCGGGACTGGATCGCGGGGGAGTACGTGGGCTACGACACCGAGGACGGAACGCTCCCCGACTCCACCGACGAGTTCCACATCGCGCTCTCCGGTTCGGCCGAAGGGACCGGCATGTCGTGGGAGGAGGGGAGCGCGGTCCGGAGCGGGGGCAACGGGAAACAGTTCACGATCGCACACGACATGGTCGCCGCGCCCGAACACGTCCAGATCACGCCGAAGACCGAGGCCGCGATGGGCGAGTATCGGGTCGACGGCGACGGGGAAGCGATCACGATCACGTACCGGAACGCGCCAGCGAGCGGCACGGACAACCTCGGCTGGTACTACAGGGCGGCGCTGTAA
[配列番号3]古細菌用ユニバーサルプライマー 1F
ATTCCGGTTGATCCTGCCGG
[配列番号4]古細菌用ユニバーサルプライマー 1472R
AGGAGGTGATCCAGCCGCAG
[配列番号5]pTA_F (vector’s side)
GTAAAACGACGGCCAGTGAGCG
[配列番号6]pTA_R (vector’s side)
GGAGCTCCACCGCGGTGGC
[配列番号7]N末端アミノ酸配列
ARETVPPNASASKIQ
[配列番号8]シグナル配列を含む耐熱性寒天分解酵素アガロース分解酵素のアミノ酸配列
MAFGGRASADTESSVASEAAGPSGTQQARETVPPNASASKIQKRIDRAHRKTDAHGYGIVDGEGRTYTIGESLVLRSNTVLQNMKIRVAKGANIDAVTSANFEQNVENSAKTPAEGVPYNFGLSHVTIDGNRGKSNDETYGFSETYNTEGRGVAFYGQNITAQHVTIYRCAGDGWYSRFDHVAPYWEDDWDDLRGLAHTVIGPMYIRRCGGHGLHWEGPHDTTLTKVISAMNNKRGWYQKGVGMDAGVVHTFANSWGSDKSAYPNLHEAPLHINIYYADDDLVVANEMLQAATFRGPYGPNLTLNSNAQIGNLSIWGAGESRDGVVFNGWANQSVNNLNVYEYDGDGVVIDGPHVHIADGRSVQNTGYGVRMGVGTKVWACNVSFQGLNRNEKAGFRYGPAGGGEDNVNSYNRVNLRDWIAGEYVGYDTEDGTLPDSTDEFHIALSGSAEGTGMSWEEGSAVRSGGNGKQFTIAHDMVAAPEHVQITPKTEAAMGEYRVDGDGEAITITYRNAPASGTDNLGWYYRAAL
[配列番号9]シグナル配列を含む耐熱性寒天分解酵素アガロース分解酵素遺伝子の塩基配列
ATGGCGTTTGGCGGACGTGCCTCCGCCGACACCGAGTCGTCCGTGGCGAGCGAAGCAGCGGGGCCCAGCGGAACCCAGCAGGCCCGTGAAACCGTTCCGCCGAACGCCTCGGCATCCAAAATCCAGAAGCGGATCGACAGGGCTCACCGGAAAACCGACGCTCACGGCTACGGGATCGTCGATGGAGAGGGGCGGACGTACACCATCGGTGAGTCGCTCGTCCTTCGGTCGAACACCGTCCTCCAGAACATGAAGATTCGGGTCGCCAAGGGCGCGAACATCGACGCCGTCACGTCGGCGAACTTCGAACAGAACGTGGAAAACAGCGCGAAGACCCCCGCGGAAGGCGTCCCGTACAACTTCGGTCTGTCCCACGTCACCATCGACGGCAACCGTGGCAAGTCGAACGACGAGACGTACGGGTTCAGCGAGACGTACAACACGGAGGGCCGCGGTGTCGCCTTCTACGGTCAGAACATCACGGCTCAACACGTCACGATCTACAGATGTGCCGGGGACGGGTGGTACTCCAGGTTCGATCACGTCGCCCCGTACTGGGAGGACGACTGGGACGACCTCCGAGGCCTCGCACACACCGTCATCGGTCCGATGTACATCCGACGCTGTGGCGGCCACGGCCTCCACTGGGAGGGACCACACGACACGACCCTCACCAAAGTGATCAGCGCGATGAACAACAAGCGGGGATGGTACCAGAAGGGAGTCGGGATGGATGCGGGCGTCGTCCACACGTTCGCGAACTCGTGGGGGAGCGACAAGAGCGCCTACCCGAATCTCCACGAGGCGCCGCTCCATATCAACATCTACTACGCGGACGACGACCTCGTCGTGGCCAACGAGATGCTCCAGGCGGCGACCTTCCGGGGGCCCTACGGTCCGAACCTCACGCTCAACAGCAACGCACAGATCGGGAACCTGTCGATCTGGGGAGCCGGTGAATCACGGGATGGCGTCGTCTTCAACGGCTGGGCGAACCAGAGCGTCAACAATCTCAACGTGTACGAGTACGACGGGGACGGCGTCGTGATCGATGGTCCCCACGTGCATATCGCCGACGGTCGGTCGGTCCAGAACACGGGTTACGGCGTCCGGATGGGTGTCGGGACGAAGGTCTGGGCCTGCAACGTGTCGTTCCAGGGGCTGAACCGAAACGAGAAGGCAGGGTTCCGCTACGGCCCCGCCGGCGGCGGGGAGGACAACGTCAACTCGTACAACCGCGTGAACCTCCGGGACTGGATCGCGGGGGAGTACGTGGGCTACGACACCGAGGACGGAACGCTCCCCGACTCCACCGACGAGTTCCACATCGCGCTCTCCGGTTCGGCCGAAGGGACCGGCATGTCGTGGGAGGAGGGGAGCGCGGTCCGGAGCGGGGGCAACGGGAAACAGTTCACGATCGCACACGACATGGTCGCCGCGCCCGAACACGTCCAGATCACGCCGAAGACCGAGGCCGCGATGGGCGAGTATCGGGTCGACGGCGACGGGGAAGCGATCACGATCACGTACCGGAACGCGCCAGCGAGCGGCACGGACAACCTCGGCTGGTACTACAGGGCGGCGCTGTAA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒天からのネオアガロオリゴ糖の生成を触媒する活性を有するアガロース分解酵素であって、
至適温度が60〜80℃であり、かつ、
80℃で10分間の高温条件下に供した後の前記活性が、該高温条件下に供する前の前記活性と比べて80%以上である、前記アガロース分解酵素。
【請求項2】
分子量が、SDS−PAGE法で54,000〜58,000、または、ゲルろ過法では53,000〜57,000である、請求項1に記載のアガロース分解酵素。
【請求項3】
一価陽イオンとして、Na、KまたはLiを要求する、請求項1または2に記載のアガロース分解酵素。
【請求項4】
至適pHが5.5〜7.0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアガロース分解酵素。
【請求項5】
ハロコッカス属微生物由来の酵素である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアガロース分解酵素。
【請求項6】
前記ハロコッカス属微生物がハロコッカス・スピーシーズ 197A(受領番号:FERM ABP-11336)である、請求項5に記載のアガロース分解酵素。
【請求項7】
寒天からのネオアガロオリゴ糖の生成を触媒する活性を有するアガロース分解酵素であって、
至適温度が60〜80℃であり、
80℃で10分間の高温条件下に供した後の前記活性が、該高温条件下に供する前の前記活性と比べて80%以上であり、かつ、
以下(1)〜(3)のいずれかのアミノ酸配列を有する、前記アガロース分解酵素。
(1)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列
(2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において1から複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加および/または挿入されたアミノ酸配列
(3)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列
【請求項8】
前記アミノ酸配列が配列表の配列番号8に記載のアミノ酸配列である、請求項7に記載のアガロース分解酵素。
【請求項9】
請求項7または8に記載のアガロース分解酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記塩基配列が以下(a)〜(c)のいずれかの塩基配列である、請求項9に記載のポリヌクレオチド。
(a)配列表の配列番号2に記載の塩基配列
(b)配列表の配列番号2に記載の塩基配列において1から複数個の塩基が欠失、置換、付加および/または挿入された塩基配列
(c)配列表の配列番号2に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドの塩基配列
【請求項11】
前記塩基配列が配列表の配列番号9に記載の塩基配列である、請求項9に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを有する組換えベクター。
【請求項13】
請求項12に記載の組換えベクターにより形質転換された微生物。
【請求項14】
請求項13に記載の微生物を培養し、培養物よりアガロース分解酵素を採取することを含む、アガロース分解酵素の製造方法。
【請求項15】
ハロコッカス・スピーシーズ 197A(受領番号:FERM ABP-11336)を培養し、培養物よりアガロース分解酵素を採取することを含む、アガロース分解酵素の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の製造方法により得られる、アガロース分解酵素。
【請求項17】
DNAを含有したアガロースゲルに、請求項1〜8のいずれか1項に記載のアガロース分解酵素を作用させてアガロースゲル中のDNAを回収することを含む、アガロースゲル中のDNAの回収方法。
【請求項18】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のアガロース分解酵素、
ナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩、および
pH5.5〜7.0の緩衝液
を含む、アガロースゲル中のDNAを回収するためのキット。
【請求項19】
ハロコッカス・スピーシーズ 197A(受領番号:FERM ABP-11336)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−165655(P2012−165655A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26736(P2011−26736)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(501061319)学校法人 東洋大学 (68)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【Fターム(参考)】