超臨界流体システムにおける試料回収容器と、試料回収装置および試料回収方法
【課題】 超臨界流体に含まれる多成分の試料を、廉価に高い回収率で回収し得る超臨界流体システム用の試料回収容器、試料回収装置、試料回収方法を提供すること。
【解決手段】 試料を含む超臨界流体を大気圧に近い圧力に減圧し、断熱膨張して形成される液体成分のエアロゾルを含んだ気体CO2を含有試料毎に分画してリッキッド・ハンドラーのプローブ60へ送り、大気圧下にあるバイアルキャップ100付きの多数本の回収バイアル300へ分注する。エアロゾルを含む気体CO2はバイアルキャップ100に設けた導入チューブ210の先端から回収バイアル300の内周面308に沿って円周方向よりは下向きに噴き出され、旋回して下降する間に、試料を含む液体成分は内周面308に衝突して捕捉され、気体CO2はバイアルキャップ100の排気孔109から排出される。
【解決手段】 試料を含む超臨界流体を大気圧に近い圧力に減圧し、断熱膨張して形成される液体成分のエアロゾルを含んだ気体CO2を含有試料毎に分画してリッキッド・ハンドラーのプローブ60へ送り、大気圧下にあるバイアルキャップ100付きの多数本の回収バイアル300へ分注する。エアロゾルを含む気体CO2はバイアルキャップ100に設けた導入チューブ210の先端から回収バイアル300の内周面308に沿って円周方向よりは下向きに噴き出され、旋回して下降する間に、試料を含む液体成分は内周面308に衝突して捕捉され、気体CO2はバイアルキャップ100の排気孔109から排出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超臨界流体システムにおける改良された試料回収容器と、その試料回収容器を備えた試料回収装置およびその試料回収容器を使用する試料回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超臨界流体クロマトグラフィ(SFC)や超臨界流体抽出(SFE)などの超臨界流体システムを使用する産業が盛んになっている。これは圧力と温度を変化させることによって超臨界流体への溶質の溶解度を変え得るという特異な性質を利用することができるからである。超臨界流体に使用される物質の中でも、二酸化炭素(CO2)は臨界温度31.1℃、臨界圧力7.38MPaの如く比較的温和な条件で超臨界流体にすることができるほか、化学的に不活性であり、かつ高純度のものを廉価で入手することができる等の利点を持っているので、複数成分の分析や分取、有用な複数成分の抽出における超臨界流体として多用されている。この時、分析や分取における分離モードの自由度を高めるために、CO2に有機溶剤を混合する手法も広く用いられる。この有機溶剤はモディファイヤとも呼ばれる。なお、モディファイヤは液相CO2に対して最大50%程度添加される。
【0003】
上記の超臨界流体システムにおける試料回収方法として、カラムで分離され溶出された試料を含む超臨界流体(液相CO2と有機溶媒との混合溶媒)は、自動圧力調整弁を出た後、多ポート分配弁によって対応する多数本の移送管へ移送されて、移送管から所定の圧力(20〜100psi≒0.14〜0.69MPa)に維持されている採集室内のビンへ注入されている。この時にCO2が急激に気化し有機溶媒がエアロゾル化し飛散することを抑制するために、移送管を加熱しているほか採集室およびビンを上記の圧力下にあるように維持しており、気相および液相からなる流体をビン内へ渦巻き状に送り込み、気相CO2は所定の圧力でビンから排出し、液相の有機溶媒はビン内に採集する試料採取方法が開示されている(特許文献1を参照)。
【0004】
また、超臨界流体システムにおける試料回収装置として、液相CO2とモディファイヤとからなる混合溶媒に注入した複数成分からなる試料を回収するに際し、カラムで試料を成分毎に分離し、溶出されてくる試料を含む超臨界流体を自動圧力調整弁において大気圧に近い圧力に減圧され形成されるエアロゾルを含む気体を流路分配バルブによって分画し、分画したそれぞれを対応する配管から気液分離器へ送ることにより、気体CO2を分離させると共に、試料を含む液体成分を気液分離器内へ渦巻き状に噴き出させることによって液滴化させ、気液分離器に接続された回収瓶へ滴下させる試料回収装置が開示されている。すなわち、若干加圧された状態にある気液分離器内において気体CO2と液体成分との分離が行われている(特許文献2を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−71534号公報
【特許文献2】特開2007−120972号公報
【0006】
なお、特許文献2における気液分離器のほか、図19に示すように、回収容器400の上端開口に取り付けて使用されるキャップ型の気液分離器410がある。すなわち、図19Aはキャップ型気液分離器410を取り付けた回収容器400の平面図であり、図19Bは同縦断面図であり、図19Cは図19Bにおける[C]−[C]線方向の側面図である。図19Bに示すように、気液分離器410は、大部分が回収容器400内へ挿入される気液分離部421と、気液分離部421上に設けられた排気部441と、気液分離器410を回収容器400へ取り付けるためのクリップ部451とからなる。
【0007】
気液分離部421は、全体としては、回収容器400の上端に座部422によって載置されて固定される。そして、気液分離部421の上端側の側方には、分画されたエアロゾルを含む気体を導入するための導入配管423が、後述の円柱状の空間S1へ接線方向に流入させるように設けられている。導入配管423に続いて円筒状空間S1を有する加熱部424が設けられている。また、加熱部424の下端部に固定部材431によって吊り下げた状態で有底円筒状のステンレス焼結フィルタ432が固定されて分離部433が形成されている。そして上記焼結フィルタ432で囲われた空間S2は加熱部424の空間S1と連通している。
【0008】
排気部441では、加熱部424の空間S1の上端側に排気管443が接続されており、その排気管443に排気管444が接続されている。そしてクリップ部451の上側挟み453は気液分離部421の上端部に取り付けられており、気液分離器410は回収容器400の首部を掴む開閉可能な下側挟み454によって回収容器400に着脱される。そして下側挟み454の開閉はクリップ部451の可動レバー452を操作して行われる。
【0009】
そして、導入配管423から導入される液体成分のエアロゾルを含む気体は、加熱部424の空間S1から分離部433の空間S2へ移行されると、ステンレス焼結フィルタ432から回収容器400内の全方位へ排出されることにより流体の線速度は大幅に低下する。このことにより、ステンレス焼結フィルタ432の間隙を通過する液体成分を飛散させる力よりも、液体成分とステンレス焼結フィルタ432の付着力の方が大となって液体成分の飛散は抑制される。そして液体成分は重力によって下方へ移行し、ステンレス焼結フィルタ432の底部から回収容器400内へ滴下するようにしたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の超臨界流体システムにおける試料の採集方法は、試料を採集するためのビンを加圧下に保持しているので装置コストを上昇させるものとなっている。更には多ポート分配弁を使用しているのでポートの数によって分離し得る試料成分の数が制限されるという問題がある。また、特許文献2に例示されている超臨界流体システムも同様に多ポートの流路分配バルブを使用しているほか、気液分離器を必要としている。すなわち特許文献1、特許文献2の何れの場合にも、試料成分の数が増えると、その数に応じたポートを有する多ポート分配弁が必要になる。ポートの数が増えるほど多ポート分配弁は高価になる。そして、必要な数のポートを有する多ポート分配弁が市販されていない場合には、複数の多ポート分配弁を使用することになり、それらの制御は複雑になる。
【0011】
本発明を説明するにあたっての従来例として、液相CO2とモディファイヤとの混合溶媒である超臨界流体を使用し、かつ気液分離器を備えた試料回収装置を有する超臨界クロマトグラフィの装置を説明する。図1はそのような装置の典型的な構成を示す概略図である。
【0012】
図1に示した超臨界流体クロマトグラフィの装置1においては、CO2のボンベ11から配管へ供給される液相CO2は熱交換器付きCO2ポンプ13内の熱交換器へ送られ−10℃の温度まで冷却されて完全な液相CO2になる。そして充分に冷却された液相CO2はCO2ポンプ13の送液ヘッドから高圧で送液される。
【0013】
他方、モディファイヤ容器12から供給されるモディファイヤはモディファイヤポンプ14よって送液中の液相CO2内へ送り込まれて混合される。超臨界流体である混合溶媒はプレヒートコイル15において後述のカラム19における展開に適した温度とされた後に、ループ注入方式のインジェクタ16へ送られる。そして、シリンジポンプ17によって試料がループへ送られた後、インジェクタ16を切り替えて試料がカラム19へ送られる。
【0014】
注入され混合溶媒に溶解している試料はカラム・オーブン18内のカラム19において展開され、試料の成分毎に分離される。カラム19から溶出した混合溶媒に含まれる試料は検出器20においてその特性(例えば吸光度)がモニタリングされた後、自動圧力調整弁21に到る。CO2ポンプ13およびモディファイヤポンプ14と自動圧力調整弁21との間における混合溶媒は自動圧力調整弁21によって所定の圧力に調整される。
【0015】
混合溶媒の圧力は自動圧力調整弁21より上流側では10〜35MPa程度であるが、自動圧力調整弁21を出た後では常圧近辺になる。従って液相CO2は断熱膨張して気化すると共に温度が低下する。この時、試料はモディファイヤが主体の液体成分の方へ溶解する。液体成分は急激に膨張する気体CO2によってエアロゾル化し配管内を移送される。
【0016】
プレヒータ22によって加熱された後、試料が溶解していないエアロゾルを含む気体は流路切換えバルブ23において系外へ排出される。試料が溶解しているエアロゾルを含む気体は検出器20からの信号に基づいて切換えられる流路切換えバルブ23から配管24を経て8方分配バルブ25へ移送され、溶解している試料に対応する導入配管26から気液分離器27へ送られる。
【0017】
気液分離器27においては、気体CO2は分離されて系外へ排出され、液体成分は気液分離器27内で渦巻き状に旋回される間に捕捉されて液滴となり、下方に接続されている回収容器28へ滴下して回収される。なお、この系の全体はコンピュータ38によって制御されている。
【0018】
上記の段落[0015]に記述した温度と圧力の急激な変化によって次に示すような障害が派生し易い。
(1)CO2が断熱膨張し温度低下することによって、CO2の凝固物であるドライアイスが生成する以外に、モディファイヤが凝固する場合もあるので、回収容器28への導入配管26が詰まり易い。
(2)CO2が断熱膨張する際に液体成分が飛び散るほか、特に導入配管26の出口においては気体CO2の流量が大になり流速が極めて高くなるために、共存する液体成分の多くは回収容器28の外へ放出され回収ロスを生じる。
(3)導入配管26では詰まり始めると圧力が上昇するので、その圧力によって詰まりは取れるが、取れた瞬間に気体CO2の流速が更に高まるために液体成分の飛散を助長し、試料の回収率を低下させる。
(4)回収容器28内にドライアイスやモディファイヤ凝固物が溜まることによって、滴下されてくるモディファイヤの液滴が回収容器28から溢れ出す。
【0019】
なお、超臨界流体を使用して分離された試料を回収するに際し、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)において一般的なフラクションコレクタを使用し、そのフラクションコレクタの配管を回収容器28に導くだけでは、上記のような障害を防ぐことはできず、試料の回収を満足に行うことはできない。すなわち、高速液体クロマトグラフィで使用されるフラクションコレクタには多種のものが市販されているが、何れも配管から重力で落下する液滴を試験管やフラスコで受けるものである。液体成分のエアロゾルを含む気体CO2が噴き出る超臨界流体クロマトグラフィや超臨界流体抽出の装置で、そのフラクションコレクタを使用しても液体成分の捕捉が困難である。
【0020】
更には、図1に示した従来の超臨界流体クロマトグラフィの装置1では、分画されたエアロゾルを含む気体は、8方分配バルブ25の何れかのポートに接続された導入配管26から気液分離器27を経由して回収容器28に回収するように構成されている。上記ではポートの数は8であるが、上述したように、一般に多ポート分配弁におけるポートの数はせいぜい10個程度であり、試料中の成分の数がポートの数以上であると、存在する全ての試料を回収できない。これに対処するために多ポート分配弁を複数設けた装置も考えられるが、多ポート分配弁は高価な為に、そのような装置は高価なものとなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は上述の問題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、超臨界流体システムにおいて、試料に含まれる多数の成分を、廉価に、かつ高い回収率で回収することができる試料回収容器を提供することにある。
【0022】
また第2の目的は、上記試料回収容器を備えた試料回収装置、および上記試料回収容器を使用する試料回収方法を提供することにある。
【0023】
本発明の目的を達成するための請求項1の試料回容器は、超臨界流体システムに使用される試料回収容器であって、分離部から溶出された試料を含む超臨界流体が大気圧に近い圧力に減圧され、形成されるエアロゾルを含む気体を注入して試料を回収する円筒状の回収バイアルと、回収バイアルの上端開口に取り付けられるバイアルキャップとを含み、
バイアルキャップは、回収バイアル内と外気とを連通する排気孔と、エアロゾルを含む気体をバイアルキャップの外部から回収バイアルの内部へ導入する導入路とを有し、導入路の先端部は、回収バイアルの内周面に近接した位置において、内周面の円周方向または円周方向よりは下向きの方向に開口しており、大気圧下においてエアロゾルを含む気体が注入されることを特徴とする試料回収容器である。
【0024】
このような試料回収容器は、液体成分のエアロゾルを含む気体をバイアルキャップから導入路を経て回収バイアルの内部へ分注することに使用される。導入路の先端部は回収バイアルの内周面に近くに配置されており、かつ内周面の円周方向または円周方向よりは下向きの方向に開口しているので、先端部から噴き出されるエアロゾルを含む気体は、回収バイアルの内周面に沿って回転するように流れる。そのために円筒状の回収バイアルはサイクロンセパレータとして作用する。すなわち、気体はバイアルキャップの排気孔から外気側へ排出され、液体成分のエアロゾルは回収バイアルの内周面に衝突して捕捉される。そして、捕捉された液体成分は続くエアロゾルの衝突によって径が成長して液滴となり、下方へ移行して回収バイアルの底部に回収される。
【0025】
請求項2の試料回容器は、請求項1の試料回容器において、導入路がバイアルキャップに穿設された上下方向の導入孔と、該導入孔に接続された導入チューブとからなる試料回収容器である。
このような試料回収容器では、超臨界流体の流量、試料の性質に応じて、導入チューブの形状を最も適切なものにできる。
【0026】
請求項3の試料回収容器は、請求項2の試料回容器において、導入チューブが導入孔に接続された直線部分、および該直線部分に続いて回収バイアルの内周面に沿う螺旋状部分を有する試料回収容器である。
このような試料回収容器は、導入チューブの螺旋状部分の先端から噴き出させる液体成分を回収バイアルの内周面に沿って回転させながら下降させて試料を回収することができる。
【0027】
請求項4の試料回収容器は、請求項2または請求項3の試料回容器において、バイアルキャップに設けた導入チューブが、その先端部を斜めにカットした試料回収容器である。
このような試料回収容器は、導入チューブの先端開口から噴き出るエアロゾルを含む気体からの気体の分離を円滑に進行させる。
【0028】
請求項5の試料回収容器は、請求項1の試料回収容器において、導入路がバイアルキャップに穿設された上下方向の導入孔と、バイアルキャップから回収バイアル内へ延在する円柱状の延在部に穿設され連通導入孔を経由して延在部の外周面に至り開口する複数の分配導入孔とからなる試料回収容器である。
このような試料回収容器は、導入路自体が振動されることはなく、また分注されるエアロゾルを含む気体は複数の分配導入孔に分配されることから、それらの開口端からの噴き出し速度は大幅に低減され、安定した状態での試料回収が可能である。
【0029】
請求項6の試料回収容器は、請求項5の試料回容器において、分配導入孔が円弧状とされて、連通導入孔の下端部から水平に、または連通導入孔の下端部を頂点とする円錐面に沿って下がり傾斜に形成されている試料回収容器である。
このような試料回収容器は、分配導入孔の開口端から噴き出させるエアロゾルを含む気体を回収バイアルの内周面に沿って回転させながら下降させることができ、回収バイアルがサイクロンセパレータとして作用して試料の回収率を高める。
【0030】
請求項7の試料回収容器は、請求項1の試料回容器において、バイアルキャップの少なくとも上部が円錐台状とされ、その外周面が回収バイアルの上端開口の端部に支持されているか、またはバイアルキャップの周縁部に設けたフランジが回収バイアルの上端開口の端部に載置されている試料回収容器である。
このような試料回収容器は、回収バイアルの上端部に支持または載置されたバイアルキャップが横滑りすることを防ぎ、かつ回収バイアルに対するバイアルキャップの着脱を極めて容易にさせる。
【0031】
請求項8の超臨界流体システムにおける試料回収装置は、分離部から溶出された試料を含む超臨界流体を大気圧に近い圧力まで減圧して形成される液体成分のエアロゾルを含む気体を分画し、分画されたエアロゾルを含む気体を試料回収容器へ分注する超臨界流体システムにおいて、請求項1から請求項7までの何れかの円筒状の回収バイアルおよびバイアルキャップを含む複数の試料回収容器と、それぞれの回収バイアルの上方へ移動可能とされており、各回収バイアルの上方位置から下降され、分画されたエアロゾルを含む気体を大気圧下にある回収バイアルへ分注するプローブとからなることを特徴とする試料回収装置である。
【0032】
このような試料回収装置では、試料が溶解している超臨界流体を大気圧に近い圧力まで減圧させると、断熱膨張する気体CO2によって試料を含む液体成分はミスト状に分散されてエアロゾルとなる。このエアロゾルを含む気体を、含まれている成分に応じて分画する。分画したエアロゾルを含む気体をプローブの先端部からバイアルキャップの導入路を経由させ、大気圧下にある円筒状の回収バイアルの内周面に沿って噴き出させて分注する
。回収バイアルをサイクロンセパレータとして作用させることにより、気体成分はバイアルキャップに設けた排気孔から外気側へ排出され、試料を含む液体成分は回収バイアル内へ効率よく回収される。
【0033】
請求項9の超臨界流体システムにおける試料回収方法は、分離部から溶出された試料を含む超臨界流体を大気圧に近い圧力まで減圧して形成される液体成分のエアロゾルを含む気体を分画し、分画されたエアロゾルを含む気体を試料回収容器へ分注する超臨界流体システムにおいて、請求項1から請求項7までの何れかの円筒状の回収バイアルおよびバイアルキャップを含む複数の試料回収容器と、それぞれの回収バイアルの上方へ移動可能とされており、各回収バイアルの上方位置から下降され、分画されたエアロゾルを含む気体を大気圧下にある回収バイアルへ分注するプローブとを使用する試料回収方法であって、
上方から下降させるプローブの先端部をバイアルキャップの導入路へ密接させて、分画されたエアロゾルを含む気体を導入路の先端開口から回収バイアル内へ分注し、試料を含む液体成分を回収バイアル内に回収すると共に、気体はバイアルキャップの排気孔から外気側へ排出させることを特徴とする試料回収方法である。
【0034】
このような試料回収方法は、試料が溶解している超臨界流体を大気圧に近い圧力まで減圧させると、断熱膨張する気体CO2によって試料を含む液体成分はミスト状に分散されてエアロゾルとなる。 このエアロゾルを含む気体を、含まれている成分に応じて分画す
る。分画したエアロゾルを含む気体をプローブの先端部からバイアルキャップの導入路を経由させ、 大気圧下にある円筒状の回収バイアルの内周面に沿って噴き出させて分注す
る。回収バイアルをサイクロンセパレータとして作用させて、気体成分をバイアルキャップに設けた排気孔から外気側へ排出し、試料を含む液体成分を回収バイアル内へ効率よく回収することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の超臨界流体システムにおける試料回収容器、および試料回収装置、試料回収方法によれば、試料の回収は大気圧下で行うので試料回収容器に耐圧性は不要であり、バイアルキャップおよび回収バイアルはプラスチックス製とすることができる。そのため金型を使用する一般的な熱成形加工が可能であり廉価に製造することができる。勿論、回収バイアルはガラス製であってもよい。
また、円筒状の回収バイアルをサイクロンセパレータとして作用させることから、エアロゾルを含む気体中の気体は回収バイアル内を上昇してバイアルキャップの排気孔から排除されるに対し、試料を含む液体成分のエアロゾルは回収バイアルの内周面に衝突して捕捉され、続くエアロゾルの衝突によって径が成長し、液滴となって回収バイアルの底部へ移行するので、試料を回収バイアル内に高い回収率で回収することができる。
【0036】
更には、ポートの数が限定される多ポート分配バルブを使用せず、多数本の回収バイアルの上方へ移動させることが可能なプローブを使用してエアロゾルを含む気体を回収バイアルのバイアルキャップへ分注するので、分離、分画される試料の数が多くても、その数に応じた本数の回収バイアルを用意しておくことにより、試料の全てを回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に本発明の超臨界流体システムにおける改良された試料回収容器と、その試料回収容器を備えた試料回収装置およびその試料回収容器を使用する試料回収方法について図面を参照して説明する。
【0038】
<試料回収装置>
図2は本発明の試料回収容器を備えた超臨界流体クロマトグラフィの装置2の構成を示す図であり、従来の超臨界流体クロマトグラフィの装置1を示した図1に対応する図である。図2に示した装置2の構成要素の中で図1に示した装置1の構成要素と同一の要素には同じ符号を付しているので、それらの説明は省略する。
【0039】
そして図2の超臨界流体クロマトグラフィの装置2が図1に示した装置1と異なる所は次の通りである。流路切換えバルブ23より下流側が、フレキシブルな樹脂チューブ39を介して、XYZの3方向へ移動可能とされているプローブ60のステンレス・チューブ63に接続されている。そして、プローブ先端部61から、バイアルキャップ100を備えた多数本の回収バイアル300へエアロゾルを含む気体が分注されるようになっていることにある。すなわち、超臨界流体クロマトグラフィの装置2においては、バイアルキャップ100および回収バイアル300の上流側には図1に示した気液分離器27を備えていない。なお図2に示した装置2の全体がパソコン38で制御されていることは、図1に示した装置1と同様である。
【0040】
上記のプローブ60をX、Y、Zの3方向へ移動させ、多数本の回収バイアル300へエアロゾルを含む気体を注入して試料を回収する試料回収装置40の全体を図3の斜視図に示した。図3において、プローブ60をX、Y、Zの3方向へ移動させるXYZ移動機構41は、X方向へ移動可能とされている水平アーム52、水平アーム52上においてY方向へ移動可能な垂直アーム53を備えている。その垂直アーム53にステンレス・チューブ63がZ方向(上下方向)へ移動可能に取り付けられている。なお、上記XYZ移動機構41はギルソン社から商品名「リキッド・ハンドラー」として市販されているものである。
【0041】
試料回収装置40には、XYZ移動機構41と同じ基板43上に固定されたトレイ44に複数のバイアルラック45が配置されており、それらのバイアルラック45の天面板46に形成されている多数の保持穴47に、例えば後述する図7に示す、バイアルキャップ100を組み合わせた円筒状の回収バイアル300が挿入されて保持される。なお上記では「リキッド・ハンドラー」を説明したが、同様な機能を有するものであれば、それ以外のものであってもよい。
【0042】
図4はバイアルラック45を示す図であり、図4Aは4個のバイアルラック45の平面図であり、その天面板46における保持穴47の配列の一例を示す。そして左端のバイアルラック45の保持穴47に示した数字はエアロゾルを含む気体が分注される順番の一例を示す。また図4Bは1個のバイアルラック45の斜視図である。保持穴47に保持される各回収バイアル300に対して、プローブ60がXYZ移動機構41によって移動される。プローブ60は先端部61を取り付けたステンレス・チューブ63等から構成される。そして、そのプローブ先端部61から試料を含有している液体成分のエアロゾルを含む気体が分注される。
【0043】
図5はプローブ60およびXYZ移動機構41の一部を拡大して示す斜視図である。図5に示すように、垂直アーム53の側面には上下方向のガイド溝54が設けられており、アクチュエータ(不図示)を備えたスライダー55がガイド溝54に沿って上下方向(Z方向)に移動可能とされており、このスライダー55にエアロゾルを含む気体を移送するステンレス・チューブ63が取り付けられている。上述したように、ステンレス・チューブ63の上端には図2に示したフレキシブルなチューブ(例えば樹脂チューブ)39の下流端が継手を介して接続される。
【0044】
図6はプローブ60の全体を示す部分断面図である。ステンレス・チューブ63の上端部は、保持部材65によって、垂直アーム53の側面に上下のZ方向に摺動可能に保持されている。また、ステンレス・チューブ63の下半部はステンレス・チューブ63の曲がりを防ぐためのガイドパイプ64によって囲われており、ガイドパイプ64の上端部と下端部にはZ方向に移動するステンレス・チューブ63を摺動可能に保持するブッシュ66が設けられている。そして、ガイドパイプ64は固定部材67によって垂直アーム53に固定されている。
【0045】
ステンレス・チューブ63の下端には、継手68を介して、分注用のプローブ先端部61が取り付けられている。プローブ先端部61は先端を半球状とし、内部に注入孔62が穿設されている。そして、プローブ60が下降されることにより、プローブ先端部61はバイアルキャップ100と当接される。
【0046】
図7は本発明の試料回収容器の一例を示す図である。図7に示す試料回収容器は、上記した回収バイアル300と、回収バイアル300内へエアロゾルを含む気体を分注するためのバイアルキャップ100との組み合わせからなる。回収バイアル300は円筒状の本体301と広口首部302とからなる。上側ほど径が大きいバイアルキャップ100の外周面が広口首部302で固定される。従って、バイアルキャップ100の着脱が極めて容易である。またバイアルキャップ100を回収バイアル300に取り付けただけでも使用できるが、更に確実に固定するために中央に穴の開いたスクリューキャップ304(図7では一点鎖線で示す)を回収バイアル300に捻じ込んで使用することも可能である。
【0047】
プローブ60のステンレス・チューブ63が下降されて、図7に示すように、プローブ先端部61がバイアルキャップ100の導入孔103周辺の内壁面104に密接され、プローブ先端部61の注入孔62がバイアルキャップ100の導入孔103と接続される。後述の図8にも示すが、バイアルキャップ100の下半部の内壁面104は導入孔103の部分を除いて円錐状の面とされており、プローブ先端部61の先端は半球状とされているので、プローブ先端部61とバイアルキャップ100の内壁面104とは密接され、プローブ先端部61の注入孔62とバイアルキャップ100の導入孔103とが軸心を整合されて接続される。
【0048】
図8はバイアルキャップ100を拡大して示す断面図である。図8に示すように、バイアルキャップ100の本体101はカップ形状に成形されており、本体101の底部102の中心部に上下方向の導入孔103が穿設されている。また底部102の下面には上記の導入孔103と軸心を共有する中空孔を備えた装着用管105が突設されており、この装着用管105の外周面にエアロゾルを含む気体を回収バイアル300内へ導く導入チューブ210が嵌め込まれて固定されている。
【0049】
図7に示したように、 導入チューブ210は回収バイアル300の内周面308に接する円弧状で、その長さは一周以下である。その先端は水平な円周方向よりは下がっている( 傾斜角度5〜10度 )。 エアロゾルを含む気体は導入チューブ210の先端開口211から回収バイアル300の内周面308に沿って噴き出され、気体CO2と液体成分とに分離する。この時に導入チューブ210の先端開口211の面を上方へ向けておくことにより、気体CO2の分離が最も良好に行われることが判明した。すなわち、液体成分は気体CO2に引きずられて上昇することは無く、導入チューブ210の方向に沿って流れることが確認出来た。なお上記の導入チューブ210は、バイアルキャップ100の本体101と一体成形したものであってもよい。
【0050】
そのほか、図7、図8に示すように、バイアルキャップ本体101には底部102の下面から内壁面104に至る排気孔109が形成されている。この排気孔109は回収バイアル300内から上昇して来る気体のCO2を系外へ排除するためのものである。
【0051】
導入チューブ210、バイアルキャップ100、および回収バイアル300の材料には、使用するモディファイヤに対して耐溶媒性を有するプラスチックスが使用される。例えばポリプロピレン(PP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ないしは4フッ化エチレンと6フッ化プロピレンとの共重合体(FEP)、4フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体(PFA)、4フッ化エチレンとエチレンとの共重合体(ETFE)等のフッ素樹脂をモディファイヤの溶解性に応じて使用し、導入チューブ210、バイアルキャップ100、および回収バイアル300を金型で成形加工することにより廉価に作成することができる。
【0052】
上記のようなバイアルキャップ100や回収バイアル300は使用後に洗浄して再使用することも可能であるが、前回に回収した試料の混入が問題となるような場合には1回限りの使用とされる。
<試料回収方法>
【0053】
本発明の試料回収容器を備えた試料回収装置を有する超臨界流体システム2は以上のように構成されるが、次にその試料回収容器を使用する試料回収方法を図2〜図7によって説明する。上述したように、図2に示した超臨界流体システム2の流路切換えバルブ23までの構成要素は図1に示した従来例の超臨界流体システム1における構成要素と同様であるから、流路切換えバルブ23までの説明は省略する。そして、図3に示した試料回収装置40のバイアルラック45には、バイアルキャップ100を備えた多数の回収バイアル300が保持されている。
【0054】
図2を参照して、カラム19から送り出される液相CO2とモディファイヤとの混合溶媒中の試料が検出器20で検出されない間は、混合溶媒は自動圧力調整弁21を出て大気圧に近い圧力に減圧され、従来例の場合と同様、断熱膨張する気体のCO2によって液体成分がエアロゾル化し、プレヒータ22を経て流路切換えバルブ23から系外へ排出される。そして、検出器20によって最初の試料が検出されると、所定の時間後に流路切換えバルブ23が切換えられることにより、最初に検出された試料を含む液相CO2とモディファイヤとの混合溶媒は自動圧力調整弁21を出て大気圧に近い圧力に減圧され、同様にエアロゾルを含む気体になった後、プレヒータ22で加熱され、流路切換えバルブ23から樹脂チューブ39に接続されているプローブ60のステンレス・チューブ63の方へ移送される。
【0055】
プローブ60はXYZ移動機構41によってX方向とY方向とに移動されて、図4Aに示したバイアルラック45の数字1で示した保持穴47に保持されている回収バイアル300の直上へ移動され、次いでステンレス・チューブ63がZ方向に下降されて、プローブ先端部61がバイアルキャップ100に設けられた導入孔103の周辺の内壁面104に密接され、プローブ先端部61の注入孔62がバイアルキャップ100の導入孔103と接続される。
【0056】
従って、エアロゾルを含む気体は樹脂チューブ39を経由してプローブ60のステンレス・チューブ63を下方へ移送される。そして図7に示すように、ステンレス・チューブ63の下端のプローブ先端部61が密接しているバイアルキャップ100を経て、バイアルキャップ100の底面に取り付けられており全体は回収バイアル300内に存在する導入チューブ210に移送され、導入チューブ210の先端開口211から回収バイアル300の内周面308に沿って円周方向よりは若干下向きの方向へ噴き出される。
【0057】
噴き出されたエアロゾルを含む気体は回収バイアル300の内周面308に沿って回転しながら徐々に下降するが、この時、円筒状の回収バイアル300はサイクロンセパレータとして作用する。すなわち、気体CO2中に分散している液体成分のエアロゾルは内周面308に衝突して捕捉され、気体CO2は分離されて回収バイアル300内を上昇してバイアルキャップ100の排気孔109から外気側へ排除される。そして内周面308に
捕捉された液体成分は続く液体成分の衝突によって径が成長して液滴となり下方へ流れ落ちて回収バイアル300の底部に溜まる。このようにして、分離された試料を含む液体成分が高い回収率で回収される。
【0058】
そして、最初に分離、分画された試料のカラム19からの溶出の完了が検出器20によって検出されると、流路切換えバルブ23は系外の方へ切換えられ、XYZ移動機構41によってステンレス・チューブ63は回収バイアル300からZ方向へ持ち上げられる。次いで例えばY方向へ移動させて隣接する回収バイアル300の直上方で停止され、ステンレス・チューブ63が下降されて、プローブ先端部61を隣接する回収バイアル300のバイアルキャップ100に気密に当接させる。
【0059】
その後、溶出されてくる次の試料が検出器20によって検出されると、流路切換えバルブ23は再度プローブ60の方へ切換えられ、自動圧力調整弁21以降において形成されるエアロゾルを含む気体を樹脂チューブ39からプローブ60のステンレス・チューブ63へ送り、上記の隣接する回収バイアル300へ分注する。その後も回収バイアル300を変えて、同様な操作が含まれている試料の数に応じた回数だけ繰り返される。
【0060】
なお、これ迄の説明は、超臨界クロマトグラフィを前提としたが、本発明の試料回収容器は超臨界抽出にも適用することができる。図2の超臨界流体クロマトグラフィの装置2において、インジェクタ16を外し、カラム19の代わりに抽出容器(内部に抽出物を封入したもの)を接続すれが超臨界流体抽出装置とすることができる。また本発明の試料回収容器は高速液体クロマトグラフィにおいて試料の回収率が十分でない場合に適用してもよい。
【実施例】
【0061】
図3に示したプローブ60を移動させる「リキッド・ハンドラー」のXYZ移動機構41を使用し、図2に示した超臨界クロマトグラフィの装置2によって試料(ワルファリン)の回収を試みた。すなわち、ステンレス・チューブ63に接続されている図7に示したプローブ先端部61を下降させ、バイアルキャップ100の内壁面104に密接させて、回収バイアル300内へ試料を回収する試験を実施した。下記の混合溶媒を超臨界流体とし、以下に示す条件にて超臨界流体の流量による試料の回収率の変化を求めた。
【0062】
[超臨界流体の種類と流量]
超臨界流体 CO2/エチルアルコール(モディファイヤ)
流量 5g/min/0.5mL/min
10g/min/0.8mL/min
30g/min/2.0mL/min
50g/min/2.0mL/min
[カラム]
温度 40℃
[試料と注入量]
試料 ワルファリン100.0mg/エチルアルコール50mLの溶液
注入量 10μL
[圧力]
20MPa
[UV検出器]
セル 光路長5mmの高耐圧セル
検出波長 280nm
【0063】
上記の条件下における超臨界流体の流量と試料回収率とは表1に示す如くであった。なお、このテストは純粋なワルファリンを使用して回収率を確認するために行ったものであるから分画は1成分で、使用した回収バイアル300は1本のみである。
【0064】
表1 実施例における超臨界流体の流量と試料回収率
【比較例】
【0065】
比較の為、「リキッド・ハンドラー」を使用し、市販の回収バイアルと穴あきスクリューキャップとの間に介装したセプタムに対し、プローブ60の先端に取り付けたステンレス・チューブを貫通させて試料を回収する試験を実施した。なお、セプタムには予め気体のCO2を排除する排気用切込みを設けておいた。この場合における超臨界流体の流量と試料回収率とは表2に示す如くであった。
【0066】
表2 比較例における超臨界流体の流量と試料回収率
【0067】
表1と表2とを比較して、超臨界流体の流量をCO25g/min、エチルアルコール0.5mL/minの如く小とした場合において、実施例における回収率は98%以上であるに対し、比較例における試料の回収率は88%にしか達していない。また比較例では超臨界流体の流量をCO220g/min、エチルアルコール2.0mL/minにすると回収率は56%まで低下している。これに対して、実施例においては超臨界流体の流量をCO230g/min、エチルアルコール3.0mL/minとしても98%以上の回収率を得ており、本発明の装置を使用する試料回収方法での試料回収率の大幅な向上が明らかである。
【0068】
実施例と比較例とが大きく異なるところは、比較例では市販の一般的な回収バイアル内へステンレス・チューブによって先端から下方へ向けてエアロゾルを含む気体を噴き出させているので、回収バイアルの底に達したエアロゾルは向きを反転させ、気体のCO2は排気用切込みの方へ上昇して排除される。従って回収バイアルの底には試料が溶解した液体成分が溜まるが、エアロゾルの流れの反転に伴い液体成分の一部はCO2と共に排気用切込みから排出されるために試料の回収率が低下する。これに対して実施例では、回収バイアル300をサイクロンセパレータとして作用させるので、気体のCO2はバイアルキャップ100の排気孔109から外気側へ排除され、試料が溶解した液体成分は回収バイアル300の内周面308に衝突して捕捉され、径が成長し液滴となって底部へ移行して溜まることにより、試料が溶解した液体成分が高い回収率で回収されるのである。
<バイアルキャップの異なる形状例1>
【0069】
図7においては導入チューブ210をバイアルキャップ100の底面の中心部において下方へ延びる直線部分に続き側方へ延びて回収バイアル300の内周面308に沿う一周以下の長さのものを示したが、図9に示すように、導入チューブを回収バイアル300の内周面308に沿って1周ないし2周する程度の長さを有し、若干の下がり傾斜(水平な円周方向より5〜10度下向きが好適である)の螺旋状導入チューブ220としてもよい。その場合、螺旋状導入チューブ220は内部を流れるエアロゾルを含む気体によって周径を拡大させる力を受けるので、螺旋状導入チューブ220の先端部による回収バイアル300の内周面308への接触が安定になる。
【0070】
回収バイアル300内の中心部では気体CO2が上昇するので、それに伴われて回収バイアル300の底部に溜まっているモディファイヤ液は内周面308に沿って上昇する。回収バイアル300の内周面308に密着する螺旋状導入チューブ220は上昇するモディファイヤ液の障害となって液体成分を下方へ戻すように作用し、モディファイヤ液が気体CO2と共にバイアルキャップ100の排気孔109から飛散されることを防ぐので、試料の回収率の低下を抑制する。
<バイアルキャップの異なる形状例2>
【0071】
バイアルキャップの異なる形状例1においては回収バイアル300の内周面308に沿って1周ないし2周する導入チューブ220を示したが、図10に示すように、回収バイアル310の内周面318の上端部に、当該内周面318の径と同等の外径のO‐リング311を取り付けても良い。このようなO−リング311も回収バイアル310の内周面318に沿って上昇する液体成分を下方へ戻すように作用する。
<バイアルキャップの異なる形状例3>
【0072】
また図7、図8においてはプローブ先端部61として先端を半球状としたものを示したが、これに替えて図11に示すように、ステンレス・チューブ63の下端に先端を円錐状としたプローブ先端部71を取り付けたものとし、バイアルキャップ110の円錐状の内壁面114にプローブ先端部71が下降された時に密接するようにしてもよい。プローブ先端部71の軸心部には注入孔72が形成されている。
<バイアルキャップの異なる形状例4>
【0073】
図12は回収バイアル320とバイアルキャップ120とを示す図である。すなわち、回収バイアル320は円筒状とされており、その上端開口321の縁部にバイアルキャップ120の本体121の周縁部に設けたフランジ126を載置したものである。そして底部122の中心部に突設された装着用管125の外周面に導入チューブ210の上端部が嵌め込まれて固定されていることは図7、図8に示した場合と同様である。排気孔129がバイアルキャップ120の底面からバイアルキャップ120の上面までの貫通孔として形成されている。上記のように円筒状の回収バイアル320とフランジ126付きのバイアルキャップ120とを組み合わせた結果、回収部の組立てと分解が容易になり、特に回収バイアルを多数本セットする場合において作業性が向上する。
<バイアルキャップの異なる形状例5>
【0074】
そのほか図13に示すように、バイアルキャップの底面に設けた装着用管の回りに回転する回転導入チューブを取り付けても良い。図13Aは図12に示した回収バイアル320と組み合わせたバイアルキャップ120の底部122の中央部に溝付き装着用管135を突設したものである。溝付き装着用管135の外周面には円周方向のガイド溝136が切り込まれている。そしてガイド溝136に対して、回転導入チューブ230の上端に取り付けた穴あき円板231の穴232の内周縁部を係合させたものである。
【0075】
図13Bは図13Aの[B]−[B]線における断面図である。図13Bに示すように、回転導入チューブ230の先端からエアロゾルを含む気体がp方向へ噴き出されると、その反動によって回転導入チューブ230は装着用管135の周りをq方向へ回転される。その結果、エアロゾルを回収バイアル320の内周面328の全方位へ均等に噴き出させることができるほか、内周面328に対する噴き出し速度を低下させることができる。
<回収バイアルの異なる形状例2とバイアルキャップの異なる形状例6>
【0076】
図14は短い広口首部332を有する回収バイアル330とバイアルキャップ140とを示す図である。すなわち、図14Aは回収バイアル330の上に載置したバイアルキャップ140を示す平面図であり、図14Bは図14Aの[B]−[B]線における断面図である。図14Bに示すように、短い広口首部332の開口端にバイアルキャップ140が載置されている。そして、バイアルキャップ140は、周縁部に排気孔149を設けた漏斗状の本体141と、本体141の外周側のフランジ146と、フランジ146の底面から下方へ延在する円筒状のスカート147と、導入チューブ240とが一体成形されたものである。
【0077】
円錐状の内壁面144を有する本体141と導入チューブ240は他例において説明したものとほぼ同様な形状であるから、それらの説明は省略する。図14Aに示すように本体141が外周側のフランジ146と接する境界部分の3箇所に排気孔149が等角度間隔に形成されている。また、スカート147は回収バイアル330の広口首部332の内周面に接触することなく形成されている。
【0078】
上述したように、回収バイアル330の内周面338に沿って上昇するモディファイヤ液はスカート147によって阻まれ、またスカート147は排気孔149の隔壁となっているので、液体成分が排気孔149から外部へ散逸して回収ロスとなることを防ぐ。更には、排気孔149は漏斗状本体141の外周側に設けられ、かつ排気孔149の上端開口は漏斗状本体141の上端より低い位置にあることから、排気孔149の上端開口の周辺に付着するモディファイヤ液があっても、漏斗状本体141内へ流れ込むことはなく、本体141へ分注される試料を汚染させない。
<バイアルキャップの異なる形状例7>
【0079】
図15は、図7、図9、図10に示したものと同様な回収バイアル300、すなわち本体301と広口首部302とからなる回収バイアル300と、その広口首部302の開口縁部に載置して固定するバイアルキャップ150とを示す断面図である。バイアルキャップ150は、排気孔159が上端側に形成されている漏斗状の本体151と、本体151の中央底部に一体的に成形された下方へ延びる直線部分252が長い導入チューブ250と、本体151の外周部の底面から下方へ延在して導入チューブ250の直線部分252を囲うように形成された円筒状のスカート157と、スカート157の上端の外周面に形成されたフランジ156とが一体的に成形されたものである。そして、バイアルキャップ150はそのフランジ156が回収バイアル300の広口首部302の開口縁部に載置される。
【0080】
図15に示すように、バイアルキャップ150は、穴あきスクリューキャップ305によって回収バイアル300に固定されるようになっている。すなわち、穴あきスクリューキャップ305は天井面にバイアルキャップ150の本体151を挿通させる穴306が形成されており、穴306の内周縁部でバイアルキャップ150のフランジ156の上面を抑えて固定するようにしたものである。そして穴あきスクリューキャップ305の周壁内面に設けた雌ねじ307を、広口首部302の外周面に形成された雄ねじ303に噛み合わせて捻じることにより、バイアルキャップ150は回収バイアル300に固定される。
【0081】
このようなバイアルキャップ150によっても、回収バイアル300の内周面308に沿って上昇する液体成分はスカート157によって阻まれ、かつスカート157は排気孔159の隔壁となっているので、モディファイヤ液が排気孔159から外部へ散逸して回収ロスとなることを防ぐことができる。
<バイアルキャップの異なる形状例8>
【0082】
図16は円筒状の回収バイアル320と、回収バイアル320の開口縁部に載置されたバイアルキャップ160を示す断面図である。図16に示すように、バイアルキャップ160は、円錐状の内壁面164と排気孔169を有する本体161と、本体161の外周側に設けたフランジ166と、本体161の底部の中央部に下向きに突設された装着用管165と、その装着用管165の外周面に上端部を嵌め込まれた導入チューブ210と、フランジ166の下面から下方へ延在し、回収バイアル320の内周面328に接して挿入される円筒体162とからなる。円筒体162の内周面168に若干下がり傾斜(水平から5〜10度下向きが好適)の螺旋溝167が形成されているものである。
【0083】
バイアルキャップ160の本体161へ分注されるエアロゾルを含む気体は導入チューブ210の先端開口211から円筒体162の螺旋溝167に導かれて螺旋状に旋回し下降する間に、液体成分は円筒体162の内周面168に衝突して捕捉され、続く液体成分の衝突によって径が成長し液滴となって落下し、気体のCO2は上昇して排気孔169から排除される。このような円筒体162に形成された螺旋溝167はエアロゾルを含む気体の旋回を助けるので液体成分の捕捉を促進し、試料の回収率の向上に寄与する。
<バイアルキャップの異なる形状例9>
【0084】
図17に示すバイアルキャップ170は、図8、図11、に示したバイアルキャップとは異なり、エアロゾルを含む気体の噴き出しを導入チューブによるのではなく、バイアルキャップ170内に設けた円弧状の分配導入孔177から噴き出すようにしたものである。図17Aはバイアルキャップ170の縦断面図である。図17Aに示すように、バイアルキャップ170は本体171、中間体172、および分配導入孔形成体173を一体に重ねたものである。そして図17Bは図17Aにおける[B]−[B]線方向の図、すなわち、分配導入孔形成体173の平面図である。これらの中で本体171は図8に示したバイアルキャップ100の本体101と同様なものであるから、その説明は省略する。中間体172は本体171の導入孔174と連通する連通導入孔175が穿設されている円柱体である。
【0085】
図17Bに示すように、分配導入孔形成体173は中間体172の底面と密接する上面に、連通導入孔175の下端に対応する中心部176と、その中心部176から分配導入孔形成体173の外周面に至る円弧状の2本の分配導入溝177を対称に形成したものである。従って、分配導入孔形成体173の上へ中間体172を重ねた状態において分配導入孔177となる。
【0086】
そして、本体171の導入孔174へ注入されるエアロゾルを含む気体は、中間体172の連通導入孔175を経由し、導入孔形成体173の中央部176から2本の分配導入孔177へ分配され、分配導入孔形成体173の外周面における分配導入孔177の開口から回収バイアル(不図示)の内周面へ円周方向に噴き出される。
このようなバイアルキャップ170の内部に形成された分配導入孔177は、導入チューブにようにエアロゾルの導入開始時等における噴き出し速度の変動によって振動されたり、変形されることもないので、エアロゾルの噴き出し状態を安定化させる。さらに導入孔174から分注されるエアロゾルを含む気体は2本の分配導入孔177に分配されるので、1本の分配導入孔177の開口からのエアロゾルの噴き出し速度は導入チューブの場合の約半分に減速され、飛散ロスが抑制される。
【0087】
そのほか、図17A、図17Bに示すように、バイアルキャップ170には回収バイアル(不図示)内から上昇してくる気体のCO2を排除するための2本の排気孔179が導入孔形成体173、中間体172、および本体171を貫通して設けられている。加えて、図17Aに示すように、分配導入孔形成体173の底面から下方へ2本の排気用管178が突設されており、排気用管178は、上記排気孔179に連通している。従って、下方から上昇してくる気体CO2は排気用管178の中空孔および排気孔179を経由して系外へ排除される。
【0088】
この排気用管178を設けずに、排気孔179の下端から排気すると、分配導入孔177の開口のレベルと排気孔179の下端のレベルとが近くなり、分配導入孔177から噴き出されるエアロゾルが気体のCO2に伴われて排気孔179へ吸い込まれ易くなる。排気用管178はそのような回収ロスを防ぐ。
【0089】
そして、分配導入孔177の開口から回収バイアル(不図示)の内周面へ円周方向に噴き出されるエアロゾルを含む気体は、回収バイアルの内周面に沿って旋回しつつ下降する間に、液体成分が回収バイアルの内周面に衝突して捕捉されることは上述した他例の場合と同様である。なお、図17においては円弧状の2本の分配導入孔177を設けたが、角度120度の等角度間隔で3本の分配導入孔177を設けてもよく、もちろん3本以上としてもよい。また、中間体172と分配導入孔形成体173とが一体に成形されたものであってもよい。
<バイアルキャップの異なる形状例10>
【0090】
図17においては円弧状の2本の分配導入孔177を水平に設けたバイアルキャップ170を示したが、その異なる形状例として、図18に示すように、2本の分配導入孔187を円錐面上に設けてもよい。図18はそのような分配導入孔187を備えたバイアルキャップ180を示す図であり、図18Aはバイアルキャップ180の縦断面図である。図
18Aに示すように、バイアルキャップ180は本体181、中間体182、および分配導入形成体183を一体に重ねたものである。そして図18Bは図18Aにおける[B]−[B]線方向の図、すなわち、分配導入形成体183の平面図である。なお、図18は図17と同様な図であるが、図18Aにおいて分配導入孔187の全体を示すために、図18Bのバイアルキャップ180は、図17Bに示したバイアルキャップ170を右回りに90度回転させた位置に相当する位置で描いている。従って図18Bに対応する図18Aにおいて、分配導入孔187は破線と一点鎖線で全長が示されている。なお、図18Aでは断面位置の関係でバイアルキャップ180の底面の奥(図18Bにおいて上側)位置する排気用管188、排気孔189のみが示されており、図18Bにおいて下側の排気用管188、排気孔189は図示されていない。
【0091】
図18Aに示すように、バイアルキャップ180は本体181と中間体182と分配導入孔形成体183とを一体に重ねたものであるが、本体181の構成は図17に示したものと同様であるから、その説明は省略する。中間体182には本体181の導入孔184と連通する連通導入孔185が形成されており、上面は本体181の底面に密接する平面であり、下面は分配導入孔形成体183の円錐面に密接する円錐面とされた円柱体である。そして、分配導入孔形成体183は上面を円錐面とされた円柱体であり、その円錐面に連通導入孔185の下端部に対応する中心部186と、その中心部186から分配導入孔形成体183の外周面に至る円弧状の2本の分配導入溝187が形成されている。従って、分配導入孔形成体183の上面に中間体182の下面を重ねた時に分配導入孔187となる。分配導入孔187は中心部186から円錐面に沿って円弧形状に下降する孔である。
【0092】
従って、バイアルキャップ180の導入孔184へ分注されるエアロゾルを含む気体は中間体182の連通導入孔185を経由して、分配導入孔形成体183の円錐面の頂部である中心部186から2本の円弧状の分配導入孔187へ分配され、分配導入孔形成体183の外周面における開口から回収バイアル(不図示)の内周面に沿って水平な円周方向よりは下向きの方向へ噴き出される。このようなバイアルキャップ180も図17に示したバイアルキャップ170と同様にエアロゾルを含む気体の噴き出し状態を安定化させるほか、エアロゾルを含む気体は分配導入孔187の開口から円周方向よりは下向きの方向へ噴き出されるので円周方向に噴き出す図17のバイアルキャップ170と比較して、液体成分は上昇する気体CO2に伴われ難くなる。また分配導入孔187の開口からのエアロゾルを含む気体の噴き出し速度が導入チューブの場合の約半分に減速され、飛散ロスが抑制される。なお、中間体182と分配導入孔形成体183とは一体に成形したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】気液分離器に接続された回収瓶からなる従来例の試料回収機器を有する超臨 界流体クロマトグラフィの典型的な装置1の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の試料回収容器を備えた試料回収装置を有する超臨界流体クロマトグ フィの装置2の全体構成を概略的に示す図である。
【図3】試料回収装置の全体を示す斜視図である。
【図4】バイアルラックを示す図であり、図4Aは4個のバイアルラックにおける 保持穴の配列の一例を示す平面図であり、図4Bは1個のバイアルラック の斜視図である。
【図5】プローブを含むXYZ移動機構を拡大して示す斜視図である。
【図6】プローブを示す部分破断図である。
【図7】回収バイアルとバイアルキャップとの組み合わせの一例を示す断面図である。
【図8】バイアルキャップの一例を拡大して示す断面図である。
【図9】螺旋状導入チューブを示す断面図である。
【図10】内周面にO−リングを備えた回収バイアルを示す断面図である。
【図11】先端部が円錐台状の面を有するプローブを示す断面図である。
【図12】異なる形状例の回収バイアルと異なる形状例のバイアルキャップとの組 み合わせの一例を示す断面図である。
【図13】回転導入チューブを示す断面図である。
【図14】他の異なる形状例のバイアルキャップを示す断面図である。
【図15】他の異なる形状例のバイアルキャップを示す断面図である。
【図16】他の異なる形状例のバイアルキャップを示す断面図である。
【図17】水平な2本の分配導入孔を設けたバイアルキャップを示す図である。図17 Aはバイアルキャップの三層構成を示す縦断面図であり、図17Bは図17 Aにおける[B]−[B]線方向の図、すなわち下層の平面図である。
【図18】2本の分配導入孔を円錐面上に設けたバイアルキャップを示す図である。 図18Aはバイアルキャップの三層構成を示す縦断面図であり、図18Bは 図18Aにおける[B]−[B]線方向の図、すなわち下層の平面図である。
【図19】気液分離器の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
1・・・従来例の試料回収機器を有する超臨界流体クロマトグラフィの装置、
2・・・本発明の試料回収容器を備えた超臨界流体クロマトグラフィの装置、
40・・・試料回収装置、 41・・・XYZ移動機構、
45・・・バイアルラック、 47・・・保持穴、
52・・・水平アーム、 53・・・垂直アーム、
54・・・ガイド溝、 55・・・スライダー、
60・・・プローブ、 61・・・プローブ先端部、
62・・・注入孔、 63・・・ステンレス・チューブ、
100・・・バイアルキャップ、 101・・・本体、
102・・・底部、 103・・・導入孔、
104・・・内壁面、 105・・・装着用管、
109・・・排気孔、 110・・・バイアルキャップ、
120・・・バイアルキャップ、 126・・・フランジ、
135・・・溝付き装着用管、 136・・・ガイド溝、
140・・・バイアルキャップ、 146・・・フランジ、
147・・・スカート、 150・・・バイアルキャップ、
156・・・フランジ、 157・・・スカート、
160・・・バイアルキャップ、 166・・・フランジ、
162・・・挿入内筒、 167・・・螺旋溝、
170・・・バイアルキャップ、 171・・・本体、
172・・・中間体、 173・・・分配導入孔形成体、
174・・・導入孔、 175・・・連通導入孔、
176・・・中心部、 177・・・分配導入孔(溝)、
178・・・排気用管、 179・・・排気孔、
180・・・バイアルキャップ、 187・・・分配導入孔(溝)、
210・・・導入チューブ、 211・・・先端開口、
220・・・螺旋状導入チューブ、 221・・・先端開口、
230・・・回転導入チューブ、 231・・・穴あき円板、
232・・・穴、 240・・・導入チューブ、
250・・・導入チューブ、 260・・・導入チューブ、
300・・・回収バイアル、 301・・・本体、
302・・・広口首部、 303・・・雄ねじ、
304・・・スクリューキャップ、 305・・・穴あきスクリューキャップ、
306・・・穴、 307・・・雌ねじ、
310・・・O−リング付き回収バイアル、311・・・O−リング、
320・・・直管状回収バイアル、 330・・・広口首部付き回収バイアル、
【技術分野】
【0001】
本発明は超臨界流体システムにおける改良された試料回収容器と、その試料回収容器を備えた試料回収装置およびその試料回収容器を使用する試料回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超臨界流体クロマトグラフィ(SFC)や超臨界流体抽出(SFE)などの超臨界流体システムを使用する産業が盛んになっている。これは圧力と温度を変化させることによって超臨界流体への溶質の溶解度を変え得るという特異な性質を利用することができるからである。超臨界流体に使用される物質の中でも、二酸化炭素(CO2)は臨界温度31.1℃、臨界圧力7.38MPaの如く比較的温和な条件で超臨界流体にすることができるほか、化学的に不活性であり、かつ高純度のものを廉価で入手することができる等の利点を持っているので、複数成分の分析や分取、有用な複数成分の抽出における超臨界流体として多用されている。この時、分析や分取における分離モードの自由度を高めるために、CO2に有機溶剤を混合する手法も広く用いられる。この有機溶剤はモディファイヤとも呼ばれる。なお、モディファイヤは液相CO2に対して最大50%程度添加される。
【0003】
上記の超臨界流体システムにおける試料回収方法として、カラムで分離され溶出された試料を含む超臨界流体(液相CO2と有機溶媒との混合溶媒)は、自動圧力調整弁を出た後、多ポート分配弁によって対応する多数本の移送管へ移送されて、移送管から所定の圧力(20〜100psi≒0.14〜0.69MPa)に維持されている採集室内のビンへ注入されている。この時にCO2が急激に気化し有機溶媒がエアロゾル化し飛散することを抑制するために、移送管を加熱しているほか採集室およびビンを上記の圧力下にあるように維持しており、気相および液相からなる流体をビン内へ渦巻き状に送り込み、気相CO2は所定の圧力でビンから排出し、液相の有機溶媒はビン内に採集する試料採取方法が開示されている(特許文献1を参照)。
【0004】
また、超臨界流体システムにおける試料回収装置として、液相CO2とモディファイヤとからなる混合溶媒に注入した複数成分からなる試料を回収するに際し、カラムで試料を成分毎に分離し、溶出されてくる試料を含む超臨界流体を自動圧力調整弁において大気圧に近い圧力に減圧され形成されるエアロゾルを含む気体を流路分配バルブによって分画し、分画したそれぞれを対応する配管から気液分離器へ送ることにより、気体CO2を分離させると共に、試料を含む液体成分を気液分離器内へ渦巻き状に噴き出させることによって液滴化させ、気液分離器に接続された回収瓶へ滴下させる試料回収装置が開示されている。すなわち、若干加圧された状態にある気液分離器内において気体CO2と液体成分との分離が行われている(特許文献2を参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−71534号公報
【特許文献2】特開2007−120972号公報
【0006】
なお、特許文献2における気液分離器のほか、図19に示すように、回収容器400の上端開口に取り付けて使用されるキャップ型の気液分離器410がある。すなわち、図19Aはキャップ型気液分離器410を取り付けた回収容器400の平面図であり、図19Bは同縦断面図であり、図19Cは図19Bにおける[C]−[C]線方向の側面図である。図19Bに示すように、気液分離器410は、大部分が回収容器400内へ挿入される気液分離部421と、気液分離部421上に設けられた排気部441と、気液分離器410を回収容器400へ取り付けるためのクリップ部451とからなる。
【0007】
気液分離部421は、全体としては、回収容器400の上端に座部422によって載置されて固定される。そして、気液分離部421の上端側の側方には、分画されたエアロゾルを含む気体を導入するための導入配管423が、後述の円柱状の空間S1へ接線方向に流入させるように設けられている。導入配管423に続いて円筒状空間S1を有する加熱部424が設けられている。また、加熱部424の下端部に固定部材431によって吊り下げた状態で有底円筒状のステンレス焼結フィルタ432が固定されて分離部433が形成されている。そして上記焼結フィルタ432で囲われた空間S2は加熱部424の空間S1と連通している。
【0008】
排気部441では、加熱部424の空間S1の上端側に排気管443が接続されており、その排気管443に排気管444が接続されている。そしてクリップ部451の上側挟み453は気液分離部421の上端部に取り付けられており、気液分離器410は回収容器400の首部を掴む開閉可能な下側挟み454によって回収容器400に着脱される。そして下側挟み454の開閉はクリップ部451の可動レバー452を操作して行われる。
【0009】
そして、導入配管423から導入される液体成分のエアロゾルを含む気体は、加熱部424の空間S1から分離部433の空間S2へ移行されると、ステンレス焼結フィルタ432から回収容器400内の全方位へ排出されることにより流体の線速度は大幅に低下する。このことにより、ステンレス焼結フィルタ432の間隙を通過する液体成分を飛散させる力よりも、液体成分とステンレス焼結フィルタ432の付着力の方が大となって液体成分の飛散は抑制される。そして液体成分は重力によって下方へ移行し、ステンレス焼結フィルタ432の底部から回収容器400内へ滴下するようにしたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の超臨界流体システムにおける試料の採集方法は、試料を採集するためのビンを加圧下に保持しているので装置コストを上昇させるものとなっている。更には多ポート分配弁を使用しているのでポートの数によって分離し得る試料成分の数が制限されるという問題がある。また、特許文献2に例示されている超臨界流体システムも同様に多ポートの流路分配バルブを使用しているほか、気液分離器を必要としている。すなわち特許文献1、特許文献2の何れの場合にも、試料成分の数が増えると、その数に応じたポートを有する多ポート分配弁が必要になる。ポートの数が増えるほど多ポート分配弁は高価になる。そして、必要な数のポートを有する多ポート分配弁が市販されていない場合には、複数の多ポート分配弁を使用することになり、それらの制御は複雑になる。
【0011】
本発明を説明するにあたっての従来例として、液相CO2とモディファイヤとの混合溶媒である超臨界流体を使用し、かつ気液分離器を備えた試料回収装置を有する超臨界クロマトグラフィの装置を説明する。図1はそのような装置の典型的な構成を示す概略図である。
【0012】
図1に示した超臨界流体クロマトグラフィの装置1においては、CO2のボンベ11から配管へ供給される液相CO2は熱交換器付きCO2ポンプ13内の熱交換器へ送られ−10℃の温度まで冷却されて完全な液相CO2になる。そして充分に冷却された液相CO2はCO2ポンプ13の送液ヘッドから高圧で送液される。
【0013】
他方、モディファイヤ容器12から供給されるモディファイヤはモディファイヤポンプ14よって送液中の液相CO2内へ送り込まれて混合される。超臨界流体である混合溶媒はプレヒートコイル15において後述のカラム19における展開に適した温度とされた後に、ループ注入方式のインジェクタ16へ送られる。そして、シリンジポンプ17によって試料がループへ送られた後、インジェクタ16を切り替えて試料がカラム19へ送られる。
【0014】
注入され混合溶媒に溶解している試料はカラム・オーブン18内のカラム19において展開され、試料の成分毎に分離される。カラム19から溶出した混合溶媒に含まれる試料は検出器20においてその特性(例えば吸光度)がモニタリングされた後、自動圧力調整弁21に到る。CO2ポンプ13およびモディファイヤポンプ14と自動圧力調整弁21との間における混合溶媒は自動圧力調整弁21によって所定の圧力に調整される。
【0015】
混合溶媒の圧力は自動圧力調整弁21より上流側では10〜35MPa程度であるが、自動圧力調整弁21を出た後では常圧近辺になる。従って液相CO2は断熱膨張して気化すると共に温度が低下する。この時、試料はモディファイヤが主体の液体成分の方へ溶解する。液体成分は急激に膨張する気体CO2によってエアロゾル化し配管内を移送される。
【0016】
プレヒータ22によって加熱された後、試料が溶解していないエアロゾルを含む気体は流路切換えバルブ23において系外へ排出される。試料が溶解しているエアロゾルを含む気体は検出器20からの信号に基づいて切換えられる流路切換えバルブ23から配管24を経て8方分配バルブ25へ移送され、溶解している試料に対応する導入配管26から気液分離器27へ送られる。
【0017】
気液分離器27においては、気体CO2は分離されて系外へ排出され、液体成分は気液分離器27内で渦巻き状に旋回される間に捕捉されて液滴となり、下方に接続されている回収容器28へ滴下して回収される。なお、この系の全体はコンピュータ38によって制御されている。
【0018】
上記の段落[0015]に記述した温度と圧力の急激な変化によって次に示すような障害が派生し易い。
(1)CO2が断熱膨張し温度低下することによって、CO2の凝固物であるドライアイスが生成する以外に、モディファイヤが凝固する場合もあるので、回収容器28への導入配管26が詰まり易い。
(2)CO2が断熱膨張する際に液体成分が飛び散るほか、特に導入配管26の出口においては気体CO2の流量が大になり流速が極めて高くなるために、共存する液体成分の多くは回収容器28の外へ放出され回収ロスを生じる。
(3)導入配管26では詰まり始めると圧力が上昇するので、その圧力によって詰まりは取れるが、取れた瞬間に気体CO2の流速が更に高まるために液体成分の飛散を助長し、試料の回収率を低下させる。
(4)回収容器28内にドライアイスやモディファイヤ凝固物が溜まることによって、滴下されてくるモディファイヤの液滴が回収容器28から溢れ出す。
【0019】
なお、超臨界流体を使用して分離された試料を回収するに際し、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)において一般的なフラクションコレクタを使用し、そのフラクションコレクタの配管を回収容器28に導くだけでは、上記のような障害を防ぐことはできず、試料の回収を満足に行うことはできない。すなわち、高速液体クロマトグラフィで使用されるフラクションコレクタには多種のものが市販されているが、何れも配管から重力で落下する液滴を試験管やフラスコで受けるものである。液体成分のエアロゾルを含む気体CO2が噴き出る超臨界流体クロマトグラフィや超臨界流体抽出の装置で、そのフラクションコレクタを使用しても液体成分の捕捉が困難である。
【0020】
更には、図1に示した従来の超臨界流体クロマトグラフィの装置1では、分画されたエアロゾルを含む気体は、8方分配バルブ25の何れかのポートに接続された導入配管26から気液分離器27を経由して回収容器28に回収するように構成されている。上記ではポートの数は8であるが、上述したように、一般に多ポート分配弁におけるポートの数はせいぜい10個程度であり、試料中の成分の数がポートの数以上であると、存在する全ての試料を回収できない。これに対処するために多ポート分配弁を複数設けた装置も考えられるが、多ポート分配弁は高価な為に、そのような装置は高価なものとなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は上述の問題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、超臨界流体システムにおいて、試料に含まれる多数の成分を、廉価に、かつ高い回収率で回収することができる試料回収容器を提供することにある。
【0022】
また第2の目的は、上記試料回収容器を備えた試料回収装置、および上記試料回収容器を使用する試料回収方法を提供することにある。
【0023】
本発明の目的を達成するための請求項1の試料回容器は、超臨界流体システムに使用される試料回収容器であって、分離部から溶出された試料を含む超臨界流体が大気圧に近い圧力に減圧され、形成されるエアロゾルを含む気体を注入して試料を回収する円筒状の回収バイアルと、回収バイアルの上端開口に取り付けられるバイアルキャップとを含み、
バイアルキャップは、回収バイアル内と外気とを連通する排気孔と、エアロゾルを含む気体をバイアルキャップの外部から回収バイアルの内部へ導入する導入路とを有し、導入路の先端部は、回収バイアルの内周面に近接した位置において、内周面の円周方向または円周方向よりは下向きの方向に開口しており、大気圧下においてエアロゾルを含む気体が注入されることを特徴とする試料回収容器である。
【0024】
このような試料回収容器は、液体成分のエアロゾルを含む気体をバイアルキャップから導入路を経て回収バイアルの内部へ分注することに使用される。導入路の先端部は回収バイアルの内周面に近くに配置されており、かつ内周面の円周方向または円周方向よりは下向きの方向に開口しているので、先端部から噴き出されるエアロゾルを含む気体は、回収バイアルの内周面に沿って回転するように流れる。そのために円筒状の回収バイアルはサイクロンセパレータとして作用する。すなわち、気体はバイアルキャップの排気孔から外気側へ排出され、液体成分のエアロゾルは回収バイアルの内周面に衝突して捕捉される。そして、捕捉された液体成分は続くエアロゾルの衝突によって径が成長して液滴となり、下方へ移行して回収バイアルの底部に回収される。
【0025】
請求項2の試料回容器は、請求項1の試料回容器において、導入路がバイアルキャップに穿設された上下方向の導入孔と、該導入孔に接続された導入チューブとからなる試料回収容器である。
このような試料回収容器では、超臨界流体の流量、試料の性質に応じて、導入チューブの形状を最も適切なものにできる。
【0026】
請求項3の試料回収容器は、請求項2の試料回容器において、導入チューブが導入孔に接続された直線部分、および該直線部分に続いて回収バイアルの内周面に沿う螺旋状部分を有する試料回収容器である。
このような試料回収容器は、導入チューブの螺旋状部分の先端から噴き出させる液体成分を回収バイアルの内周面に沿って回転させながら下降させて試料を回収することができる。
【0027】
請求項4の試料回収容器は、請求項2または請求項3の試料回容器において、バイアルキャップに設けた導入チューブが、その先端部を斜めにカットした試料回収容器である。
このような試料回収容器は、導入チューブの先端開口から噴き出るエアロゾルを含む気体からの気体の分離を円滑に進行させる。
【0028】
請求項5の試料回収容器は、請求項1の試料回収容器において、導入路がバイアルキャップに穿設された上下方向の導入孔と、バイアルキャップから回収バイアル内へ延在する円柱状の延在部に穿設され連通導入孔を経由して延在部の外周面に至り開口する複数の分配導入孔とからなる試料回収容器である。
このような試料回収容器は、導入路自体が振動されることはなく、また分注されるエアロゾルを含む気体は複数の分配導入孔に分配されることから、それらの開口端からの噴き出し速度は大幅に低減され、安定した状態での試料回収が可能である。
【0029】
請求項6の試料回収容器は、請求項5の試料回容器において、分配導入孔が円弧状とされて、連通導入孔の下端部から水平に、または連通導入孔の下端部を頂点とする円錐面に沿って下がり傾斜に形成されている試料回収容器である。
このような試料回収容器は、分配導入孔の開口端から噴き出させるエアロゾルを含む気体を回収バイアルの内周面に沿って回転させながら下降させることができ、回収バイアルがサイクロンセパレータとして作用して試料の回収率を高める。
【0030】
請求項7の試料回収容器は、請求項1の試料回容器において、バイアルキャップの少なくとも上部が円錐台状とされ、その外周面が回収バイアルの上端開口の端部に支持されているか、またはバイアルキャップの周縁部に設けたフランジが回収バイアルの上端開口の端部に載置されている試料回収容器である。
このような試料回収容器は、回収バイアルの上端部に支持または載置されたバイアルキャップが横滑りすることを防ぎ、かつ回収バイアルに対するバイアルキャップの着脱を極めて容易にさせる。
【0031】
請求項8の超臨界流体システムにおける試料回収装置は、分離部から溶出された試料を含む超臨界流体を大気圧に近い圧力まで減圧して形成される液体成分のエアロゾルを含む気体を分画し、分画されたエアロゾルを含む気体を試料回収容器へ分注する超臨界流体システムにおいて、請求項1から請求項7までの何れかの円筒状の回収バイアルおよびバイアルキャップを含む複数の試料回収容器と、それぞれの回収バイアルの上方へ移動可能とされており、各回収バイアルの上方位置から下降され、分画されたエアロゾルを含む気体を大気圧下にある回収バイアルへ分注するプローブとからなることを特徴とする試料回収装置である。
【0032】
このような試料回収装置では、試料が溶解している超臨界流体を大気圧に近い圧力まで減圧させると、断熱膨張する気体CO2によって試料を含む液体成分はミスト状に分散されてエアロゾルとなる。このエアロゾルを含む気体を、含まれている成分に応じて分画する。分画したエアロゾルを含む気体をプローブの先端部からバイアルキャップの導入路を経由させ、大気圧下にある円筒状の回収バイアルの内周面に沿って噴き出させて分注する
。回収バイアルをサイクロンセパレータとして作用させることにより、気体成分はバイアルキャップに設けた排気孔から外気側へ排出され、試料を含む液体成分は回収バイアル内へ効率よく回収される。
【0033】
請求項9の超臨界流体システムにおける試料回収方法は、分離部から溶出された試料を含む超臨界流体を大気圧に近い圧力まで減圧して形成される液体成分のエアロゾルを含む気体を分画し、分画されたエアロゾルを含む気体を試料回収容器へ分注する超臨界流体システムにおいて、請求項1から請求項7までの何れかの円筒状の回収バイアルおよびバイアルキャップを含む複数の試料回収容器と、それぞれの回収バイアルの上方へ移動可能とされており、各回収バイアルの上方位置から下降され、分画されたエアロゾルを含む気体を大気圧下にある回収バイアルへ分注するプローブとを使用する試料回収方法であって、
上方から下降させるプローブの先端部をバイアルキャップの導入路へ密接させて、分画されたエアロゾルを含む気体を導入路の先端開口から回収バイアル内へ分注し、試料を含む液体成分を回収バイアル内に回収すると共に、気体はバイアルキャップの排気孔から外気側へ排出させることを特徴とする試料回収方法である。
【0034】
このような試料回収方法は、試料が溶解している超臨界流体を大気圧に近い圧力まで減圧させると、断熱膨張する気体CO2によって試料を含む液体成分はミスト状に分散されてエアロゾルとなる。 このエアロゾルを含む気体を、含まれている成分に応じて分画す
る。分画したエアロゾルを含む気体をプローブの先端部からバイアルキャップの導入路を経由させ、 大気圧下にある円筒状の回収バイアルの内周面に沿って噴き出させて分注す
る。回収バイアルをサイクロンセパレータとして作用させて、気体成分をバイアルキャップに設けた排気孔から外気側へ排出し、試料を含む液体成分を回収バイアル内へ効率よく回収することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の超臨界流体システムにおける試料回収容器、および試料回収装置、試料回収方法によれば、試料の回収は大気圧下で行うので試料回収容器に耐圧性は不要であり、バイアルキャップおよび回収バイアルはプラスチックス製とすることができる。そのため金型を使用する一般的な熱成形加工が可能であり廉価に製造することができる。勿論、回収バイアルはガラス製であってもよい。
また、円筒状の回収バイアルをサイクロンセパレータとして作用させることから、エアロゾルを含む気体中の気体は回収バイアル内を上昇してバイアルキャップの排気孔から排除されるに対し、試料を含む液体成分のエアロゾルは回収バイアルの内周面に衝突して捕捉され、続くエアロゾルの衝突によって径が成長し、液滴となって回収バイアルの底部へ移行するので、試料を回収バイアル内に高い回収率で回収することができる。
【0036】
更には、ポートの数が限定される多ポート分配バルブを使用せず、多数本の回収バイアルの上方へ移動させることが可能なプローブを使用してエアロゾルを含む気体を回収バイアルのバイアルキャップへ分注するので、分離、分画される試料の数が多くても、その数に応じた本数の回収バイアルを用意しておくことにより、試料の全てを回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に本発明の超臨界流体システムにおける改良された試料回収容器と、その試料回収容器を備えた試料回収装置およびその試料回収容器を使用する試料回収方法について図面を参照して説明する。
【0038】
<試料回収装置>
図2は本発明の試料回収容器を備えた超臨界流体クロマトグラフィの装置2の構成を示す図であり、従来の超臨界流体クロマトグラフィの装置1を示した図1に対応する図である。図2に示した装置2の構成要素の中で図1に示した装置1の構成要素と同一の要素には同じ符号を付しているので、それらの説明は省略する。
【0039】
そして図2の超臨界流体クロマトグラフィの装置2が図1に示した装置1と異なる所は次の通りである。流路切換えバルブ23より下流側が、フレキシブルな樹脂チューブ39を介して、XYZの3方向へ移動可能とされているプローブ60のステンレス・チューブ63に接続されている。そして、プローブ先端部61から、バイアルキャップ100を備えた多数本の回収バイアル300へエアロゾルを含む気体が分注されるようになっていることにある。すなわち、超臨界流体クロマトグラフィの装置2においては、バイアルキャップ100および回収バイアル300の上流側には図1に示した気液分離器27を備えていない。なお図2に示した装置2の全体がパソコン38で制御されていることは、図1に示した装置1と同様である。
【0040】
上記のプローブ60をX、Y、Zの3方向へ移動させ、多数本の回収バイアル300へエアロゾルを含む気体を注入して試料を回収する試料回収装置40の全体を図3の斜視図に示した。図3において、プローブ60をX、Y、Zの3方向へ移動させるXYZ移動機構41は、X方向へ移動可能とされている水平アーム52、水平アーム52上においてY方向へ移動可能な垂直アーム53を備えている。その垂直アーム53にステンレス・チューブ63がZ方向(上下方向)へ移動可能に取り付けられている。なお、上記XYZ移動機構41はギルソン社から商品名「リキッド・ハンドラー」として市販されているものである。
【0041】
試料回収装置40には、XYZ移動機構41と同じ基板43上に固定されたトレイ44に複数のバイアルラック45が配置されており、それらのバイアルラック45の天面板46に形成されている多数の保持穴47に、例えば後述する図7に示す、バイアルキャップ100を組み合わせた円筒状の回収バイアル300が挿入されて保持される。なお上記では「リキッド・ハンドラー」を説明したが、同様な機能を有するものであれば、それ以外のものであってもよい。
【0042】
図4はバイアルラック45を示す図であり、図4Aは4個のバイアルラック45の平面図であり、その天面板46における保持穴47の配列の一例を示す。そして左端のバイアルラック45の保持穴47に示した数字はエアロゾルを含む気体が分注される順番の一例を示す。また図4Bは1個のバイアルラック45の斜視図である。保持穴47に保持される各回収バイアル300に対して、プローブ60がXYZ移動機構41によって移動される。プローブ60は先端部61を取り付けたステンレス・チューブ63等から構成される。そして、そのプローブ先端部61から試料を含有している液体成分のエアロゾルを含む気体が分注される。
【0043】
図5はプローブ60およびXYZ移動機構41の一部を拡大して示す斜視図である。図5に示すように、垂直アーム53の側面には上下方向のガイド溝54が設けられており、アクチュエータ(不図示)を備えたスライダー55がガイド溝54に沿って上下方向(Z方向)に移動可能とされており、このスライダー55にエアロゾルを含む気体を移送するステンレス・チューブ63が取り付けられている。上述したように、ステンレス・チューブ63の上端には図2に示したフレキシブルなチューブ(例えば樹脂チューブ)39の下流端が継手を介して接続される。
【0044】
図6はプローブ60の全体を示す部分断面図である。ステンレス・チューブ63の上端部は、保持部材65によって、垂直アーム53の側面に上下のZ方向に摺動可能に保持されている。また、ステンレス・チューブ63の下半部はステンレス・チューブ63の曲がりを防ぐためのガイドパイプ64によって囲われており、ガイドパイプ64の上端部と下端部にはZ方向に移動するステンレス・チューブ63を摺動可能に保持するブッシュ66が設けられている。そして、ガイドパイプ64は固定部材67によって垂直アーム53に固定されている。
【0045】
ステンレス・チューブ63の下端には、継手68を介して、分注用のプローブ先端部61が取り付けられている。プローブ先端部61は先端を半球状とし、内部に注入孔62が穿設されている。そして、プローブ60が下降されることにより、プローブ先端部61はバイアルキャップ100と当接される。
【0046】
図7は本発明の試料回収容器の一例を示す図である。図7に示す試料回収容器は、上記した回収バイアル300と、回収バイアル300内へエアロゾルを含む気体を分注するためのバイアルキャップ100との組み合わせからなる。回収バイアル300は円筒状の本体301と広口首部302とからなる。上側ほど径が大きいバイアルキャップ100の外周面が広口首部302で固定される。従って、バイアルキャップ100の着脱が極めて容易である。またバイアルキャップ100を回収バイアル300に取り付けただけでも使用できるが、更に確実に固定するために中央に穴の開いたスクリューキャップ304(図7では一点鎖線で示す)を回収バイアル300に捻じ込んで使用することも可能である。
【0047】
プローブ60のステンレス・チューブ63が下降されて、図7に示すように、プローブ先端部61がバイアルキャップ100の導入孔103周辺の内壁面104に密接され、プローブ先端部61の注入孔62がバイアルキャップ100の導入孔103と接続される。後述の図8にも示すが、バイアルキャップ100の下半部の内壁面104は導入孔103の部分を除いて円錐状の面とされており、プローブ先端部61の先端は半球状とされているので、プローブ先端部61とバイアルキャップ100の内壁面104とは密接され、プローブ先端部61の注入孔62とバイアルキャップ100の導入孔103とが軸心を整合されて接続される。
【0048】
図8はバイアルキャップ100を拡大して示す断面図である。図8に示すように、バイアルキャップ100の本体101はカップ形状に成形されており、本体101の底部102の中心部に上下方向の導入孔103が穿設されている。また底部102の下面には上記の導入孔103と軸心を共有する中空孔を備えた装着用管105が突設されており、この装着用管105の外周面にエアロゾルを含む気体を回収バイアル300内へ導く導入チューブ210が嵌め込まれて固定されている。
【0049】
図7に示したように、 導入チューブ210は回収バイアル300の内周面308に接する円弧状で、その長さは一周以下である。その先端は水平な円周方向よりは下がっている( 傾斜角度5〜10度 )。 エアロゾルを含む気体は導入チューブ210の先端開口211から回収バイアル300の内周面308に沿って噴き出され、気体CO2と液体成分とに分離する。この時に導入チューブ210の先端開口211の面を上方へ向けておくことにより、気体CO2の分離が最も良好に行われることが判明した。すなわち、液体成分は気体CO2に引きずられて上昇することは無く、導入チューブ210の方向に沿って流れることが確認出来た。なお上記の導入チューブ210は、バイアルキャップ100の本体101と一体成形したものであってもよい。
【0050】
そのほか、図7、図8に示すように、バイアルキャップ本体101には底部102の下面から内壁面104に至る排気孔109が形成されている。この排気孔109は回収バイアル300内から上昇して来る気体のCO2を系外へ排除するためのものである。
【0051】
導入チューブ210、バイアルキャップ100、および回収バイアル300の材料には、使用するモディファイヤに対して耐溶媒性を有するプラスチックスが使用される。例えばポリプロピレン(PP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ないしは4フッ化エチレンと6フッ化プロピレンとの共重合体(FEP)、4フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体(PFA)、4フッ化エチレンとエチレンとの共重合体(ETFE)等のフッ素樹脂をモディファイヤの溶解性に応じて使用し、導入チューブ210、バイアルキャップ100、および回収バイアル300を金型で成形加工することにより廉価に作成することができる。
【0052】
上記のようなバイアルキャップ100や回収バイアル300は使用後に洗浄して再使用することも可能であるが、前回に回収した試料の混入が問題となるような場合には1回限りの使用とされる。
<試料回収方法>
【0053】
本発明の試料回収容器を備えた試料回収装置を有する超臨界流体システム2は以上のように構成されるが、次にその試料回収容器を使用する試料回収方法を図2〜図7によって説明する。上述したように、図2に示した超臨界流体システム2の流路切換えバルブ23までの構成要素は図1に示した従来例の超臨界流体システム1における構成要素と同様であるから、流路切換えバルブ23までの説明は省略する。そして、図3に示した試料回収装置40のバイアルラック45には、バイアルキャップ100を備えた多数の回収バイアル300が保持されている。
【0054】
図2を参照して、カラム19から送り出される液相CO2とモディファイヤとの混合溶媒中の試料が検出器20で検出されない間は、混合溶媒は自動圧力調整弁21を出て大気圧に近い圧力に減圧され、従来例の場合と同様、断熱膨張する気体のCO2によって液体成分がエアロゾル化し、プレヒータ22を経て流路切換えバルブ23から系外へ排出される。そして、検出器20によって最初の試料が検出されると、所定の時間後に流路切換えバルブ23が切換えられることにより、最初に検出された試料を含む液相CO2とモディファイヤとの混合溶媒は自動圧力調整弁21を出て大気圧に近い圧力に減圧され、同様にエアロゾルを含む気体になった後、プレヒータ22で加熱され、流路切換えバルブ23から樹脂チューブ39に接続されているプローブ60のステンレス・チューブ63の方へ移送される。
【0055】
プローブ60はXYZ移動機構41によってX方向とY方向とに移動されて、図4Aに示したバイアルラック45の数字1で示した保持穴47に保持されている回収バイアル300の直上へ移動され、次いでステンレス・チューブ63がZ方向に下降されて、プローブ先端部61がバイアルキャップ100に設けられた導入孔103の周辺の内壁面104に密接され、プローブ先端部61の注入孔62がバイアルキャップ100の導入孔103と接続される。
【0056】
従って、エアロゾルを含む気体は樹脂チューブ39を経由してプローブ60のステンレス・チューブ63を下方へ移送される。そして図7に示すように、ステンレス・チューブ63の下端のプローブ先端部61が密接しているバイアルキャップ100を経て、バイアルキャップ100の底面に取り付けられており全体は回収バイアル300内に存在する導入チューブ210に移送され、導入チューブ210の先端開口211から回収バイアル300の内周面308に沿って円周方向よりは若干下向きの方向へ噴き出される。
【0057】
噴き出されたエアロゾルを含む気体は回収バイアル300の内周面308に沿って回転しながら徐々に下降するが、この時、円筒状の回収バイアル300はサイクロンセパレータとして作用する。すなわち、気体CO2中に分散している液体成分のエアロゾルは内周面308に衝突して捕捉され、気体CO2は分離されて回収バイアル300内を上昇してバイアルキャップ100の排気孔109から外気側へ排除される。そして内周面308に
捕捉された液体成分は続く液体成分の衝突によって径が成長して液滴となり下方へ流れ落ちて回収バイアル300の底部に溜まる。このようにして、分離された試料を含む液体成分が高い回収率で回収される。
【0058】
そして、最初に分離、分画された試料のカラム19からの溶出の完了が検出器20によって検出されると、流路切換えバルブ23は系外の方へ切換えられ、XYZ移動機構41によってステンレス・チューブ63は回収バイアル300からZ方向へ持ち上げられる。次いで例えばY方向へ移動させて隣接する回収バイアル300の直上方で停止され、ステンレス・チューブ63が下降されて、プローブ先端部61を隣接する回収バイアル300のバイアルキャップ100に気密に当接させる。
【0059】
その後、溶出されてくる次の試料が検出器20によって検出されると、流路切換えバルブ23は再度プローブ60の方へ切換えられ、自動圧力調整弁21以降において形成されるエアロゾルを含む気体を樹脂チューブ39からプローブ60のステンレス・チューブ63へ送り、上記の隣接する回収バイアル300へ分注する。その後も回収バイアル300を変えて、同様な操作が含まれている試料の数に応じた回数だけ繰り返される。
【0060】
なお、これ迄の説明は、超臨界クロマトグラフィを前提としたが、本発明の試料回収容器は超臨界抽出にも適用することができる。図2の超臨界流体クロマトグラフィの装置2において、インジェクタ16を外し、カラム19の代わりに抽出容器(内部に抽出物を封入したもの)を接続すれが超臨界流体抽出装置とすることができる。また本発明の試料回収容器は高速液体クロマトグラフィにおいて試料の回収率が十分でない場合に適用してもよい。
【実施例】
【0061】
図3に示したプローブ60を移動させる「リキッド・ハンドラー」のXYZ移動機構41を使用し、図2に示した超臨界クロマトグラフィの装置2によって試料(ワルファリン)の回収を試みた。すなわち、ステンレス・チューブ63に接続されている図7に示したプローブ先端部61を下降させ、バイアルキャップ100の内壁面104に密接させて、回収バイアル300内へ試料を回収する試験を実施した。下記の混合溶媒を超臨界流体とし、以下に示す条件にて超臨界流体の流量による試料の回収率の変化を求めた。
【0062】
[超臨界流体の種類と流量]
超臨界流体 CO2/エチルアルコール(モディファイヤ)
流量 5g/min/0.5mL/min
10g/min/0.8mL/min
30g/min/2.0mL/min
50g/min/2.0mL/min
[カラム]
温度 40℃
[試料と注入量]
試料 ワルファリン100.0mg/エチルアルコール50mLの溶液
注入量 10μL
[圧力]
20MPa
[UV検出器]
セル 光路長5mmの高耐圧セル
検出波長 280nm
【0063】
上記の条件下における超臨界流体の流量と試料回収率とは表1に示す如くであった。なお、このテストは純粋なワルファリンを使用して回収率を確認するために行ったものであるから分画は1成分で、使用した回収バイアル300は1本のみである。
【0064】
表1 実施例における超臨界流体の流量と試料回収率
【比較例】
【0065】
比較の為、「リキッド・ハンドラー」を使用し、市販の回収バイアルと穴あきスクリューキャップとの間に介装したセプタムに対し、プローブ60の先端に取り付けたステンレス・チューブを貫通させて試料を回収する試験を実施した。なお、セプタムには予め気体のCO2を排除する排気用切込みを設けておいた。この場合における超臨界流体の流量と試料回収率とは表2に示す如くであった。
【0066】
表2 比較例における超臨界流体の流量と試料回収率
【0067】
表1と表2とを比較して、超臨界流体の流量をCO25g/min、エチルアルコール0.5mL/minの如く小とした場合において、実施例における回収率は98%以上であるに対し、比較例における試料の回収率は88%にしか達していない。また比較例では超臨界流体の流量をCO220g/min、エチルアルコール2.0mL/minにすると回収率は56%まで低下している。これに対して、実施例においては超臨界流体の流量をCO230g/min、エチルアルコール3.0mL/minとしても98%以上の回収率を得ており、本発明の装置を使用する試料回収方法での試料回収率の大幅な向上が明らかである。
【0068】
実施例と比較例とが大きく異なるところは、比較例では市販の一般的な回収バイアル内へステンレス・チューブによって先端から下方へ向けてエアロゾルを含む気体を噴き出させているので、回収バイアルの底に達したエアロゾルは向きを反転させ、気体のCO2は排気用切込みの方へ上昇して排除される。従って回収バイアルの底には試料が溶解した液体成分が溜まるが、エアロゾルの流れの反転に伴い液体成分の一部はCO2と共に排気用切込みから排出されるために試料の回収率が低下する。これに対して実施例では、回収バイアル300をサイクロンセパレータとして作用させるので、気体のCO2はバイアルキャップ100の排気孔109から外気側へ排除され、試料が溶解した液体成分は回収バイアル300の内周面308に衝突して捕捉され、径が成長し液滴となって底部へ移行して溜まることにより、試料が溶解した液体成分が高い回収率で回収されるのである。
<バイアルキャップの異なる形状例1>
【0069】
図7においては導入チューブ210をバイアルキャップ100の底面の中心部において下方へ延びる直線部分に続き側方へ延びて回収バイアル300の内周面308に沿う一周以下の長さのものを示したが、図9に示すように、導入チューブを回収バイアル300の内周面308に沿って1周ないし2周する程度の長さを有し、若干の下がり傾斜(水平な円周方向より5〜10度下向きが好適である)の螺旋状導入チューブ220としてもよい。その場合、螺旋状導入チューブ220は内部を流れるエアロゾルを含む気体によって周径を拡大させる力を受けるので、螺旋状導入チューブ220の先端部による回収バイアル300の内周面308への接触が安定になる。
【0070】
回収バイアル300内の中心部では気体CO2が上昇するので、それに伴われて回収バイアル300の底部に溜まっているモディファイヤ液は内周面308に沿って上昇する。回収バイアル300の内周面308に密着する螺旋状導入チューブ220は上昇するモディファイヤ液の障害となって液体成分を下方へ戻すように作用し、モディファイヤ液が気体CO2と共にバイアルキャップ100の排気孔109から飛散されることを防ぐので、試料の回収率の低下を抑制する。
<バイアルキャップの異なる形状例2>
【0071】
バイアルキャップの異なる形状例1においては回収バイアル300の内周面308に沿って1周ないし2周する導入チューブ220を示したが、図10に示すように、回収バイアル310の内周面318の上端部に、当該内周面318の径と同等の外径のO‐リング311を取り付けても良い。このようなO−リング311も回収バイアル310の内周面318に沿って上昇する液体成分を下方へ戻すように作用する。
<バイアルキャップの異なる形状例3>
【0072】
また図7、図8においてはプローブ先端部61として先端を半球状としたものを示したが、これに替えて図11に示すように、ステンレス・チューブ63の下端に先端を円錐状としたプローブ先端部71を取り付けたものとし、バイアルキャップ110の円錐状の内壁面114にプローブ先端部71が下降された時に密接するようにしてもよい。プローブ先端部71の軸心部には注入孔72が形成されている。
<バイアルキャップの異なる形状例4>
【0073】
図12は回収バイアル320とバイアルキャップ120とを示す図である。すなわち、回収バイアル320は円筒状とされており、その上端開口321の縁部にバイアルキャップ120の本体121の周縁部に設けたフランジ126を載置したものである。そして底部122の中心部に突設された装着用管125の外周面に導入チューブ210の上端部が嵌め込まれて固定されていることは図7、図8に示した場合と同様である。排気孔129がバイアルキャップ120の底面からバイアルキャップ120の上面までの貫通孔として形成されている。上記のように円筒状の回収バイアル320とフランジ126付きのバイアルキャップ120とを組み合わせた結果、回収部の組立てと分解が容易になり、特に回収バイアルを多数本セットする場合において作業性が向上する。
<バイアルキャップの異なる形状例5>
【0074】
そのほか図13に示すように、バイアルキャップの底面に設けた装着用管の回りに回転する回転導入チューブを取り付けても良い。図13Aは図12に示した回収バイアル320と組み合わせたバイアルキャップ120の底部122の中央部に溝付き装着用管135を突設したものである。溝付き装着用管135の外周面には円周方向のガイド溝136が切り込まれている。そしてガイド溝136に対して、回転導入チューブ230の上端に取り付けた穴あき円板231の穴232の内周縁部を係合させたものである。
【0075】
図13Bは図13Aの[B]−[B]線における断面図である。図13Bに示すように、回転導入チューブ230の先端からエアロゾルを含む気体がp方向へ噴き出されると、その反動によって回転導入チューブ230は装着用管135の周りをq方向へ回転される。その結果、エアロゾルを回収バイアル320の内周面328の全方位へ均等に噴き出させることができるほか、内周面328に対する噴き出し速度を低下させることができる。
<回収バイアルの異なる形状例2とバイアルキャップの異なる形状例6>
【0076】
図14は短い広口首部332を有する回収バイアル330とバイアルキャップ140とを示す図である。すなわち、図14Aは回収バイアル330の上に載置したバイアルキャップ140を示す平面図であり、図14Bは図14Aの[B]−[B]線における断面図である。図14Bに示すように、短い広口首部332の開口端にバイアルキャップ140が載置されている。そして、バイアルキャップ140は、周縁部に排気孔149を設けた漏斗状の本体141と、本体141の外周側のフランジ146と、フランジ146の底面から下方へ延在する円筒状のスカート147と、導入チューブ240とが一体成形されたものである。
【0077】
円錐状の内壁面144を有する本体141と導入チューブ240は他例において説明したものとほぼ同様な形状であるから、それらの説明は省略する。図14Aに示すように本体141が外周側のフランジ146と接する境界部分の3箇所に排気孔149が等角度間隔に形成されている。また、スカート147は回収バイアル330の広口首部332の内周面に接触することなく形成されている。
【0078】
上述したように、回収バイアル330の内周面338に沿って上昇するモディファイヤ液はスカート147によって阻まれ、またスカート147は排気孔149の隔壁となっているので、液体成分が排気孔149から外部へ散逸して回収ロスとなることを防ぐ。更には、排気孔149は漏斗状本体141の外周側に設けられ、かつ排気孔149の上端開口は漏斗状本体141の上端より低い位置にあることから、排気孔149の上端開口の周辺に付着するモディファイヤ液があっても、漏斗状本体141内へ流れ込むことはなく、本体141へ分注される試料を汚染させない。
<バイアルキャップの異なる形状例7>
【0079】
図15は、図7、図9、図10に示したものと同様な回収バイアル300、すなわち本体301と広口首部302とからなる回収バイアル300と、その広口首部302の開口縁部に載置して固定するバイアルキャップ150とを示す断面図である。バイアルキャップ150は、排気孔159が上端側に形成されている漏斗状の本体151と、本体151の中央底部に一体的に成形された下方へ延びる直線部分252が長い導入チューブ250と、本体151の外周部の底面から下方へ延在して導入チューブ250の直線部分252を囲うように形成された円筒状のスカート157と、スカート157の上端の外周面に形成されたフランジ156とが一体的に成形されたものである。そして、バイアルキャップ150はそのフランジ156が回収バイアル300の広口首部302の開口縁部に載置される。
【0080】
図15に示すように、バイアルキャップ150は、穴あきスクリューキャップ305によって回収バイアル300に固定されるようになっている。すなわち、穴あきスクリューキャップ305は天井面にバイアルキャップ150の本体151を挿通させる穴306が形成されており、穴306の内周縁部でバイアルキャップ150のフランジ156の上面を抑えて固定するようにしたものである。そして穴あきスクリューキャップ305の周壁内面に設けた雌ねじ307を、広口首部302の外周面に形成された雄ねじ303に噛み合わせて捻じることにより、バイアルキャップ150は回収バイアル300に固定される。
【0081】
このようなバイアルキャップ150によっても、回収バイアル300の内周面308に沿って上昇する液体成分はスカート157によって阻まれ、かつスカート157は排気孔159の隔壁となっているので、モディファイヤ液が排気孔159から外部へ散逸して回収ロスとなることを防ぐことができる。
<バイアルキャップの異なる形状例8>
【0082】
図16は円筒状の回収バイアル320と、回収バイアル320の開口縁部に載置されたバイアルキャップ160を示す断面図である。図16に示すように、バイアルキャップ160は、円錐状の内壁面164と排気孔169を有する本体161と、本体161の外周側に設けたフランジ166と、本体161の底部の中央部に下向きに突設された装着用管165と、その装着用管165の外周面に上端部を嵌め込まれた導入チューブ210と、フランジ166の下面から下方へ延在し、回収バイアル320の内周面328に接して挿入される円筒体162とからなる。円筒体162の内周面168に若干下がり傾斜(水平から5〜10度下向きが好適)の螺旋溝167が形成されているものである。
【0083】
バイアルキャップ160の本体161へ分注されるエアロゾルを含む気体は導入チューブ210の先端開口211から円筒体162の螺旋溝167に導かれて螺旋状に旋回し下降する間に、液体成分は円筒体162の内周面168に衝突して捕捉され、続く液体成分の衝突によって径が成長し液滴となって落下し、気体のCO2は上昇して排気孔169から排除される。このような円筒体162に形成された螺旋溝167はエアロゾルを含む気体の旋回を助けるので液体成分の捕捉を促進し、試料の回収率の向上に寄与する。
<バイアルキャップの異なる形状例9>
【0084】
図17に示すバイアルキャップ170は、図8、図11、に示したバイアルキャップとは異なり、エアロゾルを含む気体の噴き出しを導入チューブによるのではなく、バイアルキャップ170内に設けた円弧状の分配導入孔177から噴き出すようにしたものである。図17Aはバイアルキャップ170の縦断面図である。図17Aに示すように、バイアルキャップ170は本体171、中間体172、および分配導入孔形成体173を一体に重ねたものである。そして図17Bは図17Aにおける[B]−[B]線方向の図、すなわち、分配導入孔形成体173の平面図である。これらの中で本体171は図8に示したバイアルキャップ100の本体101と同様なものであるから、その説明は省略する。中間体172は本体171の導入孔174と連通する連通導入孔175が穿設されている円柱体である。
【0085】
図17Bに示すように、分配導入孔形成体173は中間体172の底面と密接する上面に、連通導入孔175の下端に対応する中心部176と、その中心部176から分配導入孔形成体173の外周面に至る円弧状の2本の分配導入溝177を対称に形成したものである。従って、分配導入孔形成体173の上へ中間体172を重ねた状態において分配導入孔177となる。
【0086】
そして、本体171の導入孔174へ注入されるエアロゾルを含む気体は、中間体172の連通導入孔175を経由し、導入孔形成体173の中央部176から2本の分配導入孔177へ分配され、分配導入孔形成体173の外周面における分配導入孔177の開口から回収バイアル(不図示)の内周面へ円周方向に噴き出される。
このようなバイアルキャップ170の内部に形成された分配導入孔177は、導入チューブにようにエアロゾルの導入開始時等における噴き出し速度の変動によって振動されたり、変形されることもないので、エアロゾルの噴き出し状態を安定化させる。さらに導入孔174から分注されるエアロゾルを含む気体は2本の分配導入孔177に分配されるので、1本の分配導入孔177の開口からのエアロゾルの噴き出し速度は導入チューブの場合の約半分に減速され、飛散ロスが抑制される。
【0087】
そのほか、図17A、図17Bに示すように、バイアルキャップ170には回収バイアル(不図示)内から上昇してくる気体のCO2を排除するための2本の排気孔179が導入孔形成体173、中間体172、および本体171を貫通して設けられている。加えて、図17Aに示すように、分配導入孔形成体173の底面から下方へ2本の排気用管178が突設されており、排気用管178は、上記排気孔179に連通している。従って、下方から上昇してくる気体CO2は排気用管178の中空孔および排気孔179を経由して系外へ排除される。
【0088】
この排気用管178を設けずに、排気孔179の下端から排気すると、分配導入孔177の開口のレベルと排気孔179の下端のレベルとが近くなり、分配導入孔177から噴き出されるエアロゾルが気体のCO2に伴われて排気孔179へ吸い込まれ易くなる。排気用管178はそのような回収ロスを防ぐ。
【0089】
そして、分配導入孔177の開口から回収バイアル(不図示)の内周面へ円周方向に噴き出されるエアロゾルを含む気体は、回収バイアルの内周面に沿って旋回しつつ下降する間に、液体成分が回収バイアルの内周面に衝突して捕捉されることは上述した他例の場合と同様である。なお、図17においては円弧状の2本の分配導入孔177を設けたが、角度120度の等角度間隔で3本の分配導入孔177を設けてもよく、もちろん3本以上としてもよい。また、中間体172と分配導入孔形成体173とが一体に成形されたものであってもよい。
<バイアルキャップの異なる形状例10>
【0090】
図17においては円弧状の2本の分配導入孔177を水平に設けたバイアルキャップ170を示したが、その異なる形状例として、図18に示すように、2本の分配導入孔187を円錐面上に設けてもよい。図18はそのような分配導入孔187を備えたバイアルキャップ180を示す図であり、図18Aはバイアルキャップ180の縦断面図である。図
18Aに示すように、バイアルキャップ180は本体181、中間体182、および分配導入形成体183を一体に重ねたものである。そして図18Bは図18Aにおける[B]−[B]線方向の図、すなわち、分配導入形成体183の平面図である。なお、図18は図17と同様な図であるが、図18Aにおいて分配導入孔187の全体を示すために、図18Bのバイアルキャップ180は、図17Bに示したバイアルキャップ170を右回りに90度回転させた位置に相当する位置で描いている。従って図18Bに対応する図18Aにおいて、分配導入孔187は破線と一点鎖線で全長が示されている。なお、図18Aでは断面位置の関係でバイアルキャップ180の底面の奥(図18Bにおいて上側)位置する排気用管188、排気孔189のみが示されており、図18Bにおいて下側の排気用管188、排気孔189は図示されていない。
【0091】
図18Aに示すように、バイアルキャップ180は本体181と中間体182と分配導入孔形成体183とを一体に重ねたものであるが、本体181の構成は図17に示したものと同様であるから、その説明は省略する。中間体182には本体181の導入孔184と連通する連通導入孔185が形成されており、上面は本体181の底面に密接する平面であり、下面は分配導入孔形成体183の円錐面に密接する円錐面とされた円柱体である。そして、分配導入孔形成体183は上面を円錐面とされた円柱体であり、その円錐面に連通導入孔185の下端部に対応する中心部186と、その中心部186から分配導入孔形成体183の外周面に至る円弧状の2本の分配導入溝187が形成されている。従って、分配導入孔形成体183の上面に中間体182の下面を重ねた時に分配導入孔187となる。分配導入孔187は中心部186から円錐面に沿って円弧形状に下降する孔である。
【0092】
従って、バイアルキャップ180の導入孔184へ分注されるエアロゾルを含む気体は中間体182の連通導入孔185を経由して、分配導入孔形成体183の円錐面の頂部である中心部186から2本の円弧状の分配導入孔187へ分配され、分配導入孔形成体183の外周面における開口から回収バイアル(不図示)の内周面に沿って水平な円周方向よりは下向きの方向へ噴き出される。このようなバイアルキャップ180も図17に示したバイアルキャップ170と同様にエアロゾルを含む気体の噴き出し状態を安定化させるほか、エアロゾルを含む気体は分配導入孔187の開口から円周方向よりは下向きの方向へ噴き出されるので円周方向に噴き出す図17のバイアルキャップ170と比較して、液体成分は上昇する気体CO2に伴われ難くなる。また分配導入孔187の開口からのエアロゾルを含む気体の噴き出し速度が導入チューブの場合の約半分に減速され、飛散ロスが抑制される。なお、中間体182と分配導入孔形成体183とは一体に成形したものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】気液分離器に接続された回収瓶からなる従来例の試料回収機器を有する超臨 界流体クロマトグラフィの典型的な装置1の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の試料回収容器を備えた試料回収装置を有する超臨界流体クロマトグ フィの装置2の全体構成を概略的に示す図である。
【図3】試料回収装置の全体を示す斜視図である。
【図4】バイアルラックを示す図であり、図4Aは4個のバイアルラックにおける 保持穴の配列の一例を示す平面図であり、図4Bは1個のバイアルラック の斜視図である。
【図5】プローブを含むXYZ移動機構を拡大して示す斜視図である。
【図6】プローブを示す部分破断図である。
【図7】回収バイアルとバイアルキャップとの組み合わせの一例を示す断面図である。
【図8】バイアルキャップの一例を拡大して示す断面図である。
【図9】螺旋状導入チューブを示す断面図である。
【図10】内周面にO−リングを備えた回収バイアルを示す断面図である。
【図11】先端部が円錐台状の面を有するプローブを示す断面図である。
【図12】異なる形状例の回収バイアルと異なる形状例のバイアルキャップとの組 み合わせの一例を示す断面図である。
【図13】回転導入チューブを示す断面図である。
【図14】他の異なる形状例のバイアルキャップを示す断面図である。
【図15】他の異なる形状例のバイアルキャップを示す断面図である。
【図16】他の異なる形状例のバイアルキャップを示す断面図である。
【図17】水平な2本の分配導入孔を設けたバイアルキャップを示す図である。図17 Aはバイアルキャップの三層構成を示す縦断面図であり、図17Bは図17 Aにおける[B]−[B]線方向の図、すなわち下層の平面図である。
【図18】2本の分配導入孔を円錐面上に設けたバイアルキャップを示す図である。 図18Aはバイアルキャップの三層構成を示す縦断面図であり、図18Bは 図18Aにおける[B]−[B]線方向の図、すなわち下層の平面図である。
【図19】気液分離器の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
1・・・従来例の試料回収機器を有する超臨界流体クロマトグラフィの装置、
2・・・本発明の試料回収容器を備えた超臨界流体クロマトグラフィの装置、
40・・・試料回収装置、 41・・・XYZ移動機構、
45・・・バイアルラック、 47・・・保持穴、
52・・・水平アーム、 53・・・垂直アーム、
54・・・ガイド溝、 55・・・スライダー、
60・・・プローブ、 61・・・プローブ先端部、
62・・・注入孔、 63・・・ステンレス・チューブ、
100・・・バイアルキャップ、 101・・・本体、
102・・・底部、 103・・・導入孔、
104・・・内壁面、 105・・・装着用管、
109・・・排気孔、 110・・・バイアルキャップ、
120・・・バイアルキャップ、 126・・・フランジ、
135・・・溝付き装着用管、 136・・・ガイド溝、
140・・・バイアルキャップ、 146・・・フランジ、
147・・・スカート、 150・・・バイアルキャップ、
156・・・フランジ、 157・・・スカート、
160・・・バイアルキャップ、 166・・・フランジ、
162・・・挿入内筒、 167・・・螺旋溝、
170・・・バイアルキャップ、 171・・・本体、
172・・・中間体、 173・・・分配導入孔形成体、
174・・・導入孔、 175・・・連通導入孔、
176・・・中心部、 177・・・分配導入孔(溝)、
178・・・排気用管、 179・・・排気孔、
180・・・バイアルキャップ、 187・・・分配導入孔(溝)、
210・・・導入チューブ、 211・・・先端開口、
220・・・螺旋状導入チューブ、 221・・・先端開口、
230・・・回転導入チューブ、 231・・・穴あき円板、
232・・・穴、 240・・・導入チューブ、
250・・・導入チューブ、 260・・・導入チューブ、
300・・・回収バイアル、 301・・・本体、
302・・・広口首部、 303・・・雄ねじ、
304・・・スクリューキャップ、 305・・・穴あきスクリューキャップ、
306・・・穴、 307・・・雌ねじ、
310・・・O−リング付き回収バイアル、311・・・O−リング、
320・・・直管状回収バイアル、 330・・・広口首部付き回収バイアル、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界流体システムに使用される試料回収容器であって、
分離部から溶出された試料を含む超臨界流体が大気圧に近い圧力に減圧され形成される液体成分のエアロゾルを含む気体を注入して前記試料を回収する円筒状の回収バイアルと
、前記回収バイアルの上端開口に取り付けられるバイアルキャップとを含み、
前記バイアルキャップは、前記回収バイアル内と外気とを連通する排気孔と、前記エアロゾルを含む気体を前記バイアルキャップの外部から前記回収バイアルの内部へ導入する導入路とを有し、
前記導入路の先端部は、前記回収バイアルの内周面に近接した位置において、前記内周面の円周方向、または前記円周方向よりは下向きの方向に開口しており、
大気圧下において前記エアロゾルを含む気体が注入されることを特徴とする試料回収容器。
【請求項2】
請求項1の試料回収容器において、
前記導入路が、前記バイアルキャップに穿設された上下方向の導入孔と、該導入孔に接続された導入チューブとからなることを特徴とする試料回収容器。
【請求項3】
請求項2の試料回収容器において、
前記導入チューブが、前記導入孔に接続された直線部分、および該直線部分に続いて前記回収バイアルの内周面に沿う螺旋状部分を有することを特徴とする試料回収容器。
【請求項4】
請求項2または請求項3の試料回収容器において、
前記バイアルキャップに設けた前記導入チューブが、その先端部を斜めにカットして得られるものであることを特徴とする試料回収容器。
【請求項5】
請求項1の試料回収容器において、
前記導入路が、前記バイアルキャップに穿設された上下方向の導入孔と、前記バイアルキャップから前記回収バイアル内へ延在する円柱状の延在部に穿設された連通導入孔を経由して前記延在部の外周面に至り開口する複数の分配導入孔と、からなることを特徴とする試料回収容器。
【請求項6】
請求項5の試料回収容器において、
前記分配導入孔が円弧状とされて、前記連通導入孔の下端部から水平に、または前記連通導入孔の下端部を頂点とする円錐面に沿って下がり傾斜に形成されていることを特徴とする試料回収容器。
【請求項7】
請求項1の試料回収容器において、
前記バイアルキャップの少なくとも上部が円錐台状とされ、その外周面が前記回収バイアルの上端開口の端部に支持されているか、または前記バイアルキャップの周縁部に設けたフランジが前記回収バイアルの上端開口の端部に載置されていることを特徴とする試料回収容器。
【請求項8】
分離部から溶出された試料を含む超臨界流体を大気圧に近い圧力まで減圧して形成される液体成分のエアロゾルを含む気体を分画し、分画された前記エアロゾルを含む気体を試料回収容器へ分注する超臨界流体システムにおいて、
請求項1から請求項7までの何れかの円筒状の回収バイアルおよびバイアルキャップを含む複数の試料回収容器と、それぞれの前記回収バイアルの上方へ移動可能とされており
、各回収バイアルの上方位置から下降され、分画された前記エアロゾルを含む気体を大気圧下にある前記回収バイアルへ分注するプローブとからなることを特徴とする超臨界流体システムにおける試料回収装置。
【請求項9】
分離部から溶出された試料を含む超臨界流体を大気圧に近い圧力まで減圧して形成される液体成分のエアロゾルを含む気体を分画し、分画された前記エアロゾルを含む気体を試料回収容器へ分注する超臨界流体システムにおいて、
請求項1から請求項7までの何れかの円筒状の回収バイアルおよびバイアルキャップを含む複数の試料回収容器と、それぞれの前記回収バイアルの上方へ移動可能とされており、各回収バイアルの上方位置から下降され、分画された前記エアロゾルを含む気体を大気圧下にある前記回収バイアルへ分注するプローブとを使用する試料回収方法であって、
上方から下降させる前記プローブの先端部を前記バイアルキャップの導入路へ密接させて、分画された前記エアロゾルを含む気体を前記導入路の先端開口から前記回収バイアル内へ分注し、前記試料を含む前記エアロゾルを前記回収バイアル内に回収すると共に、前記気体は前記バイアルキャップの排気孔から外気側へ排出させることを特徴とする超臨界流体システムにおける試料回収方法。
【請求項1】
超臨界流体システムに使用される試料回収容器であって、
分離部から溶出された試料を含む超臨界流体が大気圧に近い圧力に減圧され形成される液体成分のエアロゾルを含む気体を注入して前記試料を回収する円筒状の回収バイアルと
、前記回収バイアルの上端開口に取り付けられるバイアルキャップとを含み、
前記バイアルキャップは、前記回収バイアル内と外気とを連通する排気孔と、前記エアロゾルを含む気体を前記バイアルキャップの外部から前記回収バイアルの内部へ導入する導入路とを有し、
前記導入路の先端部は、前記回収バイアルの内周面に近接した位置において、前記内周面の円周方向、または前記円周方向よりは下向きの方向に開口しており、
大気圧下において前記エアロゾルを含む気体が注入されることを特徴とする試料回収容器。
【請求項2】
請求項1の試料回収容器において、
前記導入路が、前記バイアルキャップに穿設された上下方向の導入孔と、該導入孔に接続された導入チューブとからなることを特徴とする試料回収容器。
【請求項3】
請求項2の試料回収容器において、
前記導入チューブが、前記導入孔に接続された直線部分、および該直線部分に続いて前記回収バイアルの内周面に沿う螺旋状部分を有することを特徴とする試料回収容器。
【請求項4】
請求項2または請求項3の試料回収容器において、
前記バイアルキャップに設けた前記導入チューブが、その先端部を斜めにカットして得られるものであることを特徴とする試料回収容器。
【請求項5】
請求項1の試料回収容器において、
前記導入路が、前記バイアルキャップに穿設された上下方向の導入孔と、前記バイアルキャップから前記回収バイアル内へ延在する円柱状の延在部に穿設された連通導入孔を経由して前記延在部の外周面に至り開口する複数の分配導入孔と、からなることを特徴とする試料回収容器。
【請求項6】
請求項5の試料回収容器において、
前記分配導入孔が円弧状とされて、前記連通導入孔の下端部から水平に、または前記連通導入孔の下端部を頂点とする円錐面に沿って下がり傾斜に形成されていることを特徴とする試料回収容器。
【請求項7】
請求項1の試料回収容器において、
前記バイアルキャップの少なくとも上部が円錐台状とされ、その外周面が前記回収バイアルの上端開口の端部に支持されているか、または前記バイアルキャップの周縁部に設けたフランジが前記回収バイアルの上端開口の端部に載置されていることを特徴とする試料回収容器。
【請求項8】
分離部から溶出された試料を含む超臨界流体を大気圧に近い圧力まで減圧して形成される液体成分のエアロゾルを含む気体を分画し、分画された前記エアロゾルを含む気体を試料回収容器へ分注する超臨界流体システムにおいて、
請求項1から請求項7までの何れかの円筒状の回収バイアルおよびバイアルキャップを含む複数の試料回収容器と、それぞれの前記回収バイアルの上方へ移動可能とされており
、各回収バイアルの上方位置から下降され、分画された前記エアロゾルを含む気体を大気圧下にある前記回収バイアルへ分注するプローブとからなることを特徴とする超臨界流体システムにおける試料回収装置。
【請求項9】
分離部から溶出された試料を含む超臨界流体を大気圧に近い圧力まで減圧して形成される液体成分のエアロゾルを含む気体を分画し、分画された前記エアロゾルを含む気体を試料回収容器へ分注する超臨界流体システムにおいて、
請求項1から請求項7までの何れかの円筒状の回収バイアルおよびバイアルキャップを含む複数の試料回収容器と、それぞれの前記回収バイアルの上方へ移動可能とされており、各回収バイアルの上方位置から下降され、分画された前記エアロゾルを含む気体を大気圧下にある前記回収バイアルへ分注するプローブとを使用する試料回収方法であって、
上方から下降させる前記プローブの先端部を前記バイアルキャップの導入路へ密接させて、分画された前記エアロゾルを含む気体を前記導入路の先端開口から前記回収バイアル内へ分注し、前記試料を含む前記エアロゾルを前記回収バイアル内に回収すると共に、前記気体は前記バイアルキャップの排気孔から外気側へ排出させることを特徴とする超臨界流体システムにおける試料回収方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−78532(P2010−78532A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249460(P2008−249460)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000232689)日本分光株式会社 (87)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000232689)日本分光株式会社 (87)
【Fターム(参考)】
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