説明

超電導ケーブルの冷却システム

冷媒が超電導ケーブルを絶えず冷却する超電導ケーブル冷却システム。このシステムは、超電導ケーブルのネットワーク内の複数のノード及び超電導ケーブルのネットワークの各ノードに相互接続する複数の超電導ケーブルの脚体を備えて、冷媒が、ノードから脚体内へ、また脚体からノード内へ通る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、超電導の電気的伝送ケーブルに対する冷却又は冷凍の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルを通る電気的伝送は、特に、比較的長距離にわたる電気的伝送の効率を低下させる熱を発生する。これは、電気的伝送ケーブルが超電導ケーブルであるとき、特に顕著である。
【0003】
超電導は、YBCO、REBCO及びBSCCOなどの特定の金属、合金及び化合物が非常に低い温度で電気抵抗を失って無限大の導電率を有する現象である。電気を送るための超電導ケーブルの使用では、ケーブルが超電導の能力を失ったり送電性を損なったりすることのないように、超電導ケーブルに与えられた冷却すなわち冷凍が一定レベルより落ちないことが重要である。超電導ケーブルに必要な冷凍をもたらすことができるシステムは既知であるが、そのようなシステムは高価で、複雑で、且つ故障しやすい。さらに、既知のシステムは、概して明らかに冷媒の使用が非効率である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1のノード、第2のノード、超電導ケーブルの第1の脚体、超電導ケーブルの第2の脚体、第1のノードから超電導ケーブルの第1の脚体まで冷媒を通すための手段、超電導ケーブルの第1の脚体から第2のノードまで冷媒を通すための手段、及び第2のノードから超電導ケーブルの第2の脚体まで冷媒を通すための手段を備える、超電導ケーブルを冷却するための装置。
【0005】
本明細書で使用する用語「超電導ケーブル」は、材料が、一旦ある程度の極低温を達成すると電流の伝導に対する抵抗をすべて失う材料で作られているケーブルを意味する。
【0006】
本明細書で使用する用語「冷凍」は、準周囲温度の対象物から熱を取り除く能力を意味する。
【0007】
本明細書で使用する用語「間接的熱交換」は、対象物を、物理的接触又は対象物が互いに混合することのない熱交換の関係にすることを意味する。
【0008】
本明細書で使用する用語「直接的熱交換」は、対象物の冷却及び対象物の加熱の接触による冷凍の伝達を意味する。
【0009】
本明細書で使用する用語「過冷された」は、現在の圧力に対する飽和温度より低い温度に冷却された液体を意味する。
【0010】
本明細書で使用する用語「冷凍機」は、極低温を実現し維持することができる冷凍機械を意味する。
【0011】
本明細書で使用する用語「冷凍ステーション」は、冷媒を冷凍させる冷凍機を備える装置を意味する。
【0012】
本明細書で使用する用語「冷凍機/ポンプ・ステーション」は、冷媒を受け取り、冷媒を冷凍させ、冷媒の圧力を上昇させ、且つ冷媒を送るための冷凍機及びポンプを備える装置を意味する。
【0013】
本明細書で使用する用語「超電導ケーブルの脚体」は、冷媒が一端から入って他端で出る、超電導ケーブルを包含する連続的な部分を意味する。
【0014】
本明細書で使用する用語「ノード」は、冷媒が、超電導ケーブルの脚体に加えられ得るか又は脚体から除去され得る位置を意味する。ノードの例は、本明細書では、変電所などにおいて電気的終端と呼ばれる、超電導を示すラインと従来の非超電導ラインの間の移行点、及び任意の脚体内の冷媒を別の脚体に送ることができる超電導グリッド内のポイントを含む。それぞれの超電導ケーブルは、電気的終端で終結するか、又は超電導の脚体として継続してよい。冷媒は、液体の起寒剤タンクから送るか又は得ることもでき、逃がすか、そうでなければケーブルのネットワークから取り除くことができる。冷媒が、同一のケーブルに返される前に、デバイスを通って流れるように超電導ケーブルの脚体内に冷凍機、ポンプ又は他の非貯蔵デバイスが配置される位置は、ノードとみなされない。というのは、この位置では、冷媒が供給されるか又はシステムから除去されることがなく、他のいかなるケーブルとも連絡していないからである。
【0015】
一般に、本発明は、好ましくは液体窒素(LN)である起寒剤が、ループ内で効果的に移動し、且つすべてのループ内で液体窒素が超電導ケーブルを積極的に冷却するように超電導ケーブルのネットワークを設定するための装置を含む。冷凍機及びポンプ・ステーションは、ネットワークの各脚体の全長に沿って最適に分布させるか、或いはノードに配置することができる。これによって液体窒素用の戻り配管が不要になり、いくつかの利点がある。第1に、ポンピングの必要性及び送られた電力の1ユニット当りのシステムの冷凍負荷の両方が低減される。液体窒素の戻りループがなく、したがって戻りループに関連した熱リーク及びポンピング・ロスがない。第2に、戻り配管専用のダクトが不要であり、ダクトは、電力を搬送する超電導ケーブルを引き回すために使用することができる。これによって、既存のダクト・ネットワークについて増加した容量を利用することが可能になる。第3に、超電導ケーブルの各脚体が、ネットワークの他の部分から複数の液体窒素の供給源によって供給され得るので、システムの全体的な信頼性が向上する。
【実施例】
【0016】
本発明を、図面を参照しながらより詳細に説明する。次に図1を参照すると、2つの超電導ケーブルが並列になっている超電導ケーブルのネットワーク10が示されている。ケーブルのネットワーク10は、第1のノード11、第2のノード12、超電導ケーブル1の第1の脚体及び超電導ケーブル2の第2の脚体を有する。第1のノード11から第1の脚体1まで冷媒が通される。本発明の実施では、冷媒は、好ましくは液体起寒剤である。本発明の実施において使用される最も好ましい液体起寒剤は、液体窒素である。本発明の実施において使用されてよい他の冷媒には、液体ネオン、液体水素、液体ヘリウム及び液体起寒剤の混合物が含まれる。
【0017】
図1に示す本発明の実施例では、第1の脚体1及び第2の脚体2は、どちらもポンプ及び冷凍機の両方を備える。第1の脚体1は、ポンプ5並びに冷凍機6及び7を備える。第1の脚体1から第2のノード12まで冷媒が通り、第2のノード12から、ポンプ4及び冷凍機3を備える第2の脚体2まで冷媒が通る。第2の脚体2から第1のノード11まで冷媒が通る。
【0018】
本発明によって、図1に示した実施例などの戻り配管が不要になる。冷媒は、超電導ネットワークの脚体を1つだけ冷却したら超電導ケーブルをそれ以上冷却せずに起点に戻るのではなく、起点への途上でさらに冷却され、第1のノードへ戻りながら超電導ケーブルの第2の脚体を冷却する。
【0019】
別の超電導ケーブルのネットワーク50を示す本発明の別の実施例が、図2に示されている。この実施例では、超電導ケーブルのいくつかの脚体及びいくつかのノードがあって、どれか1つの脚体の冷媒が失われた場合には、冷媒の流れ及び継続的な超電導の動作が、他の脚体内で継続することができる。
【0020】
説明の目的のために、図2に示した本発明の実施例を参照すると、ノード20は第1のノードでよく、ノード21は第2のノードでよく、ノード22は第3のノードでよい。脚体23は超電導ケーブルの第1の脚体でよく、脚体24は超電導ケーブルの第2の脚体でよく、脚体25は超電導ケーブルの第3の脚体でよい。他のノードは26及び27と呼ばれ、超電導ケーブルの他の脚体は28、29、30、31及び32で示される。図1に示した実施例と同様に、流れの矢印は冷媒の流れの向きを示す。図2の実例は、ポンプ33及び冷凍機34を備える脚体23、ポンプ35を備える脚体24、ポンプ36を備える脚体28、冷凍機37を備える脚体30、並びに冷凍機38を備える脚体32も示す。
【0021】
図2に示した本発明の実施例では、冷媒は、流れの矢印の方向に、ノード20、21、22、26及び27の間を流れる。冷凍機及びポンプは、ネットワークの各脚体の全長に沿って最適に分配される。例えば、脚体23内には1つのポンプ・ステーション及び1つの冷凍機ステーションがある。各ステーションは、1つ又は複数の冷凍機及びポンプをそれぞれ含んでよい。実際に、各ステーションは、任意数の冷凍機とポンプの組合せを含んでよい。この実施例における脚体23は、ノードとポンプ・ステーション/冷凍機ステーションの間に別個の長さの超電導ケーブルを必要とすることになる。本発明の他の実施例と同様にこのネットワーク配置では、冷媒は、ネットワークの各ノード間に専用の戻り配管を必要としない。各ノードには、他のノードへの接続が少なくとも3つある。どれか1つの脚体を運用から取り除かなければならず、それを通る液体窒素などの冷媒を移送することができないとき、他の脚体はすべて動作し続けることができる。他のすべての脚体の冷却を維持するためには、特定の脚体内の流れを逆にするなど、流れ回路に対するいくつかの変更を必要とすることになるが、このシステムは、残りの脚体のすべてに液体窒素の流れを供給する一方で1つ又は場合によってはより多くの脚体内の停止に対処するための備えつけの能力を有する。
【0022】
図3は、冷凍機とポンプ・ステーションがノードへ一体化され、したがって、単一長の超電導ケーブルが超電導ケーブルの脚体に及ぶことが可能になる本発明の表明を示す。図3に示したノード40などの各ノードは、1つ又は複数のバッファ・タンク41、冷凍機42及び43、低温ポンプ44及び45を組み込んでよい。バッファ・タンクによって、可変要求及び冷凍機停止に対処する点において、ネットワーク内で相当な柔軟性が与えられる。その上、ネットワークの1つの脚体が需要におけるピークを体験するとき、バッファ・タンク内の冷媒を使い始めることができる。冷凍機46をタンク自体に取り付けることにより、バッファ・タンク内の冷媒を最適の過冷温度に保つことができる。このようにして、システムを増強する必要性なしに、ネットワークの各脚体内の需要におけるピーク及び谷に対処することができる。図3に示したシステムでは、ノード40は変電所47も備える。
【0023】
本発明を、特定の好ましい例示の実施例を参照しながら詳細に説明してきたが、当業者なら、特許請求の範囲の趣旨及び範囲の中に本発明の他の実施例があることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】超電導ケーブルの2つのノード及び2つの脚体を有する本発明の一実施例の概略図である。
【図2】超電導ケーブルの2つを上回るノード及び2つを上回る脚体を有する本発明の一実施例の概略図である。
【図3】冷凍機/ポンプ・ステーションがノードへ一体化された本発明の一実施例を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のノード、第2のノード、超電導ケーブルの第1の脚体、超電導ケーブルの第2の脚体、前記第1のノードから超電導ケーブルの前記第1の脚体まで冷媒を通すための手段、超電導ケーブルの前記第1の脚体から前記第2のノードまで冷媒を通すための手段、及び前記第2のノードから超電導ケーブルの前記第2の脚体まで冷媒を通すための手段を備える、超電導ケーブルを冷却するための装置。
【請求項2】
超電導ケーブルの前記第2の脚体から前記第1のノードまで冷媒を通すための手段をさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第3のノード及び超電導ケーブルの前記第2の脚体から前記第3のノードまで冷媒を通すための手段をさらに備える請求項1に記載の装置。
【請求項4】
超電導ケーブルの第3の脚体及び前記第3のノードから超電導ケーブルの前記第3の脚体まで冷媒を通すための手段をさらに備える請求項3に記載の装置。
【請求項5】
超電導ケーブルの前記第3の脚体から前記第1のノードまで冷媒を通すための手段をさらに備える請求項4に記載の装置。
【請求項6】
超電導ケーブルの前記脚体のうち少なくとも1つが冷凍機を備える請求項1に記載の装置。
【請求項7】
超電導ケーブルの前記脚体のうち少なくとも1つがポンプを備える請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記冷媒が液体起寒剤を含む請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記液体起寒剤が液体窒素を含む請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ノードのうち少なくとも1つが冷凍機を備える請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記ノードのうち少なくとも1つがポンプを備える請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記ノードのうち少なくとも1つがバッファ・タンクを備える請求項1に記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−516354(P2009−516354A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541235(P2008−541235)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/043713
【国際公開番号】WO2008/051234
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(392032409)プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】