超電導コイル装置
【課題】荷電粒子加速器のビームラインを長くすることなく、ビームラインの直線部から放射光を発生することができること。
【解決手段】荷電粒子加速器のビームラインに設置される2極以上の超電導電磁石に用いられる超電導コイル装置20において、主磁場コイル12の周囲に独立して、荷電粒子のビームから放射光を発生させるための磁場を形成可能な放射光発生用磁場コイル21が配置されたものであり、この放射光発生用磁場コイルは、双極交番磁場コイル22またはヘリカルダイポールコイル23である。
【解決手段】荷電粒子加速器のビームラインに設置される2極以上の超電導電磁石に用いられる超電導コイル装置20において、主磁場コイル12の周囲に独立して、荷電粒子のビームから放射光を発生させるための磁場を形成可能な放射光発生用磁場コイル21が配置されたものであり、この放射光発生用磁場コイルは、双極交番磁場コイル22またはヘリカルダイポールコイル23である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子加速器のビームラインに設置される超電導電磁石に用いられる超電導コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子加速器は、図13に示すように、イオン源や電子銃から放出された陽子や電子などの荷電粒子を、ビームラインとなる平面視円形状の真空ダクト1に導き、この真空ダクト1の外側に適宜配置された高周波加速空洞2、双極電磁石3及び4極電磁石4を用いて、荷電粒子を周回させながら加速するものである。高周波加速空洞2は、真空ダクト1内を流れる荷電粒子を加速し、双極電磁石3は、真空ダクト1内を流れる荷電粒子の軌道を偏向させ、4極電磁石4は、真空ダクト1内を流れる荷電粒子を真空ダクト1の中心領域に収束して、荷電粒子ビームの発散を防止している。真空ダクト1内を流れる荷電粒子のビームは、双極電磁石3により偏向される際に放射光を発生する。
【0003】
上述の双極電磁石3や4極電磁石4が超電導電磁石により構成されたものが、特許文献1及び2等に記載されている。
【0004】
また、製作の容易化を図るために、ヘリカル回転角が180度以下の複数の双極磁場生成磁石を、その長軸方向に直列に連結して、360度ヘリカル回転双極磁場生成電磁石を構成するものが特許文献3に提案されている。そして、この電磁石では、隣接する電磁石間に、端部磁場補正用の補正コイルが配置されている。
【0005】
また、荷電粒子加速器において、放射光の発生は、前述の如く、一般にビームの偏向部分においてなされるが、ビームの直線部において放射光を発生させるために、ウィグラー電磁石やヘリカル電磁石などの専用の電磁石をビームラインに配置した加速器がある。このように放射光を放出させることで、荷電粒子のビームのエミッタンスを小さくすることが可能となる。
【0006】
上記ウィグラー電磁石は、図14に示すように、荷電粒子のビームの流れ方向5に沿って双極電磁石6を複数配置することでビームの軌道を偏向させ、これにより、ビームの流れ方向Cと同一の方向に放射光Pを発生させるものである。
【特許文献1】特開平8−148327号公報
【特許文献2】特開平10−154615号公報
【特許文献3】特開平10−144521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、荷電粒子加速器に用いられて、荷電粒子のビームを収束させる4極電磁石4などの多極電磁石では、磁場の中心を真空ダクト1の中心に一致して据え付けないと、真空ダクト1の中心領域に誤差磁場が生じ、真空ダクト1の中心領域を流れる荷電粒子のビームが発散してしまう恐れがある。このような電磁石の据付誤差により生ずる誤差磁場の発生を防止するために、電磁石のアライメントが慎重に、長時間をかけて実施されている。
【0008】
また、電磁石自体の個体差によっても上述と同様な誤差磁場が生じ、荷電粒子のビームが発散してしまう恐れがある。このため、高い磁場精度を確保すべく、電磁石を高精度に設計し、製作しなければならない。
【0009】
また、特許文献3に記載の補正コイルは、設計段階で予測可能な端部磁場を除去するにすぎず、電磁石の全体に生ずる誤差磁場を解消するものではない。
【0010】
更に、荷電粒子加速器において、ビームの直線部に放射光を発生させるための専用の電磁石(ウィグラー電磁石など)を配置する場合には、その分、加速器のビームラインが長くなってしまう。
【0011】
本発明の目的は、荷電粒子加速器のビームラインを長くすることなく、ビームラインの直線部から放射光を発生することができる超電導コイル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、荷電粒子加速器のビームラインに設置される2極以上の超電導電磁石に用いられる超電導コイル装置において、主磁場コイルの周囲に独立して、荷電粒子のビームから放射光を発生させるための磁場を形成可能な放射光発生用磁場コイルが配置されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、荷電粒子加速器のビームラインの直線部に、荷電粒子のビームから放射光を発生させるための専用の電磁石を設置する必要がないので、荷電粒子加速器のビームラインを長くすることなく、ビームラインの直線部から放射光を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る超電導コイル装置の第1の実施の形態を示す斜視図。
【図2】図1のII−II線に沿う横断面図。
【図3】図1の主磁場コイルを示す斜視図。
【図4】図1の補正磁場コイルが回転による誤差磁場補正用である場合の超電導コイル装置を示す概略横断面図。
【図5】(A)は、図4の主磁場コイルを含む電磁石に回転による誤差磁場が発生した場合の磁場の強さを、x軸およびy軸上において示す磁場分布図、(B)は、図5(A)の回転による誤差磁場が解消されたときの磁場の強さの変化を、x軸およびy軸上において示す磁場分布図。
【図6】図1の補正磁場コイルが軸ずれによる誤差磁場補正用である場合の超電導コイル装置を示す概略横断面図。
【図7】(A)は、図4の主磁場コイルを含む電磁石に軸ずれによる誤差磁場が生じた場合の磁場の強さを、x軸およびy軸上において示す磁場分布図、(B)は、図7(A)の軸ずれによる誤差磁場が解消されたときの磁場の強さの変化を、x軸およびy軸上において示す磁場分布図。
【図8】(A)は、図1の補正磁場コイルが磁場有効長の長さずれによる誤差磁場補正用である場合の超電導コイル装置を示す概略縦断面図、(B)は、図8(A)の主磁場コイルを含む電磁石に磁場有効長の長さずれが生じた場合の磁場の強さを、超電導コイル装置の軸に沿った平面内で示す磁場分布図。
【図9】(A)は、図1の主磁場コイルを示す概略縦断面図、(B)は、図9(A)の主磁場コイルを含む電磁石に8極の高次成分磁場による誤差磁場が生じた場合の説明図、(C)は、図9(A)の主磁場コイルを含む電磁石に6極の高次成分磁場による誤差磁場が生じた場合の説明図。
【図10】本発明に係る超電導コイル装置の第2の実施の形態を示す横断面図。
【図11】(A)は、図10の放射光発生用磁場コイルとしての双極交番磁場コイルを概略して示す斜視図、(B)は、図11(A)の双極交番磁場コイルにより発生する磁場を示す説明図。
【図12】(A)は、図10の放射光発生用磁場コイルとしてのヘリカルダイポールコイルを概略して示す斜視図、(B)は、図12(A)のヘリカルダイポールコイルにより発生する磁場を示す説明図。
【図13】一般の荷電粒子加速器の一部を概略して示す平面図。
【図14】通常のウィグラー電磁石による放射光発生状況を示す説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。但し、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
[A]第1の実施の形態(図1〜図9)
図1は、本発明に係る超電導コイル装置の第1の実施の形態を示す斜視図である。図2は、図1のII−II線に沿う横断面図である。図3は、図1の主磁場コイルを示す斜視図である。
【0017】
この超電導コイル装置10は、荷電粒子加速器(図13参照)のビームラインに設置される2極以上の多極の超電導電磁石、本実施の形態では4極の超電導電磁石に用いられるものである。この4極の超電導電磁石は、陽子や電子などの荷電粒子のビームが流れる前記ビームラインとしての真空ダクト11の中心Oの領域に、荷電粒子のビームを収束させて、ビームの発散を防止する機能を有する。
【0018】
本実施の形態の超電導コイル装置10は、主磁場コイル12と補正磁場コイル13とを有してなる。主磁場コイル12は、図2及び図3に示すように、真空ダクト11の外側周囲に、導体が長円形の渦巻状に巻き線されてなる鞍型コイル14が4個配置されたものであり、隣接する各鞍型コイル14に発生する磁極N、Sが互いに異なるように設けられている。図2の矢印は、主磁場コイル12にて発生する磁場Bの向きを示す。この磁場Bは、真空ダクト11の中心Oにおいて0(ゼロ)になり、中心Oから離れるに従って大きくなる。従って、この磁場Bによって、真空ダクト11内を流れる荷電粒子のビームを、真空ダクト11の中心Oの領域に収束させることが可能となる。
【0019】
補正磁場コイル13は、主磁場コイル12の外側周囲に重畳して巻き線されて配置され、主磁場コイル12と独立して設けられたものであり、主磁場コイル12により生じた誤差磁場を打ち消すための磁場を形成可能とする。この誤差磁場は、主磁場コイル12を含む電磁石の据付誤差や、主磁場コイル12を含む電磁石自体の個体差により生ずるものである。例えば、主磁場コイル12を含む電磁石の回転や軸ずれ等の据付により生ずる誤差磁場や、主磁場コイル12を含む電磁石の磁場有効長の長さずれや磁場のねじれ、高次成分磁場の発生など、主磁場コイル12を含む電磁石自体の個体差により生ずる誤差磁場などがある。
【0020】
補正磁場コイル13は、主磁場コイル12の鞍型コイル14と同様な複数の鞍型コイル15からなるが、上述のような主磁場コイル12を含む電磁石に発生した誤差磁場の種類に対応して、その極数や形状、ターン数、設置位置などの少なくとも一つが設定される。
【0021】
具体的には、図5(A)に示すように、主磁場コイル12を含む電磁石が正規の位置から角度αだけ回転して据え付けられたことにより誤差磁場が生じた場合には、その誤差磁場を解消して、図5(B)に示す正規の磁場分布とするために、図4に示すように、主磁場コイル12の外側周囲に補正磁場コイル13が配置される。この補正磁場コイル13は、主磁場コイル12と同じ極数であって、それぞれの鞍型コイル15は、主磁場コイル12に対してある角度回転させた位置に配置される。この補正磁場コイル13により発生する磁場によって、主磁場コイル12を含む電磁石に生じた回転による誤差磁場が打ち消されて解消される。
【0022】
また、図7(A)に示すように、主磁場コイル12を含む電磁石の軸心Qが真空ダクト11の中心Oから距離tだけ位置ずれして据え付けられたことにより誤差磁場が生じた場合には、この誤差磁場を解消して、図7(B)に示す正規の磁場分布とするために、図6に示すように、主磁場コイル12の外側周囲に補正磁場コイル13が配置される。この補正磁場コイル13は、例えば、主磁場コイル12を含む電磁石の軸心Qと真空ダクト11の中心Oとを結ぶ直線A上に2極の鞍型コイル15を対向して配置し、これらの鞍型コイル15により軸心Qから中心Oへ向かう向きの磁場Eを、主磁場コイル12を含む電磁石に作用する。これにより、主磁場コイル12を含む電磁石に生じた軸ずれによる誤差磁場が打ち消されて解消される。
【0023】
また、図8(B)に示すように、主磁場コイル12を含む電磁石自体の磁場有効長Lに長さずれΔLが生じたことにより誤差磁場が生じた場合には、その誤差磁場を解消するために、図8(A)に示すように、主磁場コイル12の外側周囲に補正磁場コイル13を配置する。この補正磁場コイル13は、主磁場コイル12と同じ極数であって、それぞれの鞍型コイル15を、主磁場コイル12の各鞍型コイル14の直上に配置し、各鞍型コイル15の長さやターン数が調整されたものである。この補正磁場コイル13により発生する磁場によって、主磁場コイル12を含む電磁石に生じた磁場有効長Lの長さずれΔLにより生ずる誤差磁場が打ち消されて解消される。
【0024】
更に、主磁場コイル12の鞍型コイル14が真空ダクト11の長手方向に対して捩られてヘリカル配置され、この結果、主磁場コイル12を含む電磁石自体に誤差磁場が生じた場合には、この誤差磁場を解消する補正磁場コイル13を主磁場コイル12の外側周囲に配置する。この補正磁場コイル13は、図示しないが、例えば主磁場コイル12と同じ極数であって、それぞれの鞍型コイル15が、主磁場コイル12の各鞍型コイル14の捩れと反対向きに同程度捩られて配置されたものである。この補正磁場コイル13により発生する磁場によって、主磁場コイル12を含む電磁石に生じた磁場の捩れにより生ずる誤差磁場が打ち消されて解消される。
【0025】
また、図9(A)に示す主磁場コイル12の各鞍型コイル14が、例えばその寸法が互いに異なることで非対称となって、この主磁場コイル12を含む電磁石に、図9(B)に示す8極の高次成分磁場が生じたり、図9(C)に示す6極の高次成分磁場が生じ、これにより誤差磁場が生じた場合には、この誤差磁場を解消するために、主磁場コイル12の周囲に補正磁場コイル13が配置される。
【0026】
この場合には、図9(B)、(C)などの高次成分磁場を生じさせるコイルの配置位置に補正磁場コイル13の各鞍型コイル15を配置し、これらの各鞍型コイル15によって、高次成分磁場とは逆の磁場を発生させることで、高次成分磁場のみを打ち消す。このような補正磁場コイル13によって、高次成分磁場による誤差磁場を解消することが可能となる。
【0027】
上述の補正磁場コイル13は、主磁場コイル12を含む電磁石に生ずる磁場を高精度に測定して、この測定結果から誤差磁場が生じている場合に、この誤差磁場を打ち消すように、補正磁場コイル13の極数、形状、ターン数、設置位置などが決定されて設計される。その際に、補正磁場コイル13へ流す電流値を主磁場コイル12と同一に設計する。これにより、補正磁場コイル13を主磁場コイル12と直列に電気的に接続して、主磁場コイル12と共通の電源から電力を供給させる構成とすることが可能となる。
【0028】
従って、本実施の形態によれば、次の効果(1)〜(3)を奏する。
【0029】
(1)主磁場コイル12の外側周囲に独立して、この主磁場コイル12を含む電磁石により生じた誤差磁場を打ち消すための磁場を形成可能な補正磁場コイル13が配置されている。このことから、主磁場コイル12を含む電磁石の据付誤差により生ずる誤差磁場、または主磁場コイル12を含む電磁石自体の個体差等により生ずる誤差磁場を解消することができる。この結果、荷電粒子加速器のビームラインである真空ダクト11内を流れる荷電粒子のビームを、超電導コイル装置10を備えた超電導電磁石によって、真空ダクト11の中心O領域に収束させることができるので、上記ビームの発散を確実に防止できる。
【0030】
(2)補正磁場コイル13は、主磁場コイル12を含む電磁石に生じた磁場の測定結果から、発生した誤差磁場を打ち消すように設計されることから、発生した誤差磁場を確実に解消させることができる。
【0031】
(3)補正磁場コイル13は、主磁場コイル12と直列に電気的に接続され、この主磁場コイル12と共通の電源から電力が供給されることから、補正磁場コイル13と主磁場コイル12とにおいて個別の電源を独立してそれぞれ設置する必要がない。この結果、 超電導コイル装置10を備えた超電導電磁石のコンパクト化及びコストの低減を実現できる。
【0032】
[B]第2の実施の形態(図10〜図12)
図10は、本発明に係る超電導コイル装置の第2の実施の形態を示す横断面図である。
図11(A)は、図10の放射光発生用磁場コイルとしての双極交番磁場コイルを概略して示す斜視図であり、図11(B)は、図11(A)の双極交番磁場コイルにより発生する磁場を示す説明図である。本実施の形態において、前記第1の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付して説明を簡略化し、または省略する。
【0033】
本実施の形態の超電導コイル装置は、荷電粒子加速器(図13参照)のビームラインに設置される2極以上の多極の超電導電磁石、本実施の形態では4極の超電導電磁石に用いられるものであり、主磁場コイル12と、この主磁場コイル12の外側周囲に重畳して配置された放射光発生用磁場コイル21とを有してなる。
【0034】
主磁場コイル12は、前記第1の実施の形態と同様に、荷電粒子のビームを真空ダクト11の中心O領域に収束させて、その発散を防止するものである。また、放射光発生用磁場コイル21は、主磁場コイル12により収束して真空ダクト11内を流れる荷電粒子のビームから放射光を発生させるための磁場を形成する双極交番磁場コイル22、またはヘリカルダイポールコイル23である。これらの双極交番磁場コイル22及びヘリカルダイポールコイル23は、主磁場コイル12とは独立して配置されている。
【0035】
ここで、荷電粒子のビームからの放射光の発生は、荷電粒子そのものを物性や分子生物学などの研究に利用する場合のほか、荷電粒子のビームのエミッタンスを小さくして、ビームにおける荷電粒子の密度を高め、特にビーム衝突型加速器におけるビーム衝突頻度の向上を図るためである。尚、エミッタンスとは、ビームの実効的な大きさを表す物理量であり、運動量位相空間でのビーム全体が占める面積をいう。
【0036】
双極交番磁場コイル22は、図11(A)、(B)では1本または複数本の導体24を用いて、真空ダクト11内に、荷電粒子のビームの流れ方向Cに沿って交互に磁場の向きBが変化する双極交番磁場(つまりウィグラー磁場)を形成する。荷電粒子のビームは、上記双極交番磁場内を流れる間にその軌道が偏向されて、ビームの流れ方向Cと同一の方向に放射光P(図14参照)を放出する。
【0037】
また、ヘリカルダイポールコイル23は、図12(A)に示すように、ダイポールコイルが荷電粒子の流れ方向Cに沿って螺旋状に捩られて配置されたものである。従って、このヘリカルダイポールコイル23により真空ダクト11内に発生する磁場の向きBも、図12(B)に示すようにビームの流れ方向Cに沿って螺旋状に移動する。このため、真空ダクト11内を流れる荷電粒子のビームは、螺旋状に捩られながらその軌道が偏向されることになるので、放射光が発生する。尚、双極交番磁場コイル22及びヘリカルダイポールコイル23の電源は、主磁場コイル12と共通であっても、別電源であってもよい。
【0038】
従って、本実施の形態によれば、次の効果(4)を奏する。
【0039】
(4)荷電粒子のビームを収束してビームの発散を防止する主磁場コイル12の外側周囲に、荷電粒子のビームから放射光を発生させるための磁場を形成可能な放射光発生用磁場コイル(双極交番磁場コイル22、ヘリカルダイポールコイル23等)が配置されている。このため、荷電粒子加速器のビームラインの直線部に、荷電粒子のビームから放射光発生させるための専用の電磁石(ウィグラー電磁石やヘリカル電磁石等)を設置する必要がない。この結果、荷電粒子加速器のビームラインを長くすることをなく、ビームラインの直線部からの放射光を発生することができ、ビームのエミッタンスを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 超電導コイル装置
11 真空ダクト(ビームライン)
12 主磁場コイル
13 補正磁場コイル
20 超電導コイル装置
21 放射光発生用磁場コイル
22 双極交番磁場コイル
23 ヘリカルダイポールコイル
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子加速器のビームラインに設置される超電導電磁石に用いられる超電導コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子加速器は、図13に示すように、イオン源や電子銃から放出された陽子や電子などの荷電粒子を、ビームラインとなる平面視円形状の真空ダクト1に導き、この真空ダクト1の外側に適宜配置された高周波加速空洞2、双極電磁石3及び4極電磁石4を用いて、荷電粒子を周回させながら加速するものである。高周波加速空洞2は、真空ダクト1内を流れる荷電粒子を加速し、双極電磁石3は、真空ダクト1内を流れる荷電粒子の軌道を偏向させ、4極電磁石4は、真空ダクト1内を流れる荷電粒子を真空ダクト1の中心領域に収束して、荷電粒子ビームの発散を防止している。真空ダクト1内を流れる荷電粒子のビームは、双極電磁石3により偏向される際に放射光を発生する。
【0003】
上述の双極電磁石3や4極電磁石4が超電導電磁石により構成されたものが、特許文献1及び2等に記載されている。
【0004】
また、製作の容易化を図るために、ヘリカル回転角が180度以下の複数の双極磁場生成磁石を、その長軸方向に直列に連結して、360度ヘリカル回転双極磁場生成電磁石を構成するものが特許文献3に提案されている。そして、この電磁石では、隣接する電磁石間に、端部磁場補正用の補正コイルが配置されている。
【0005】
また、荷電粒子加速器において、放射光の発生は、前述の如く、一般にビームの偏向部分においてなされるが、ビームの直線部において放射光を発生させるために、ウィグラー電磁石やヘリカル電磁石などの専用の電磁石をビームラインに配置した加速器がある。このように放射光を放出させることで、荷電粒子のビームのエミッタンスを小さくすることが可能となる。
【0006】
上記ウィグラー電磁石は、図14に示すように、荷電粒子のビームの流れ方向5に沿って双極電磁石6を複数配置することでビームの軌道を偏向させ、これにより、ビームの流れ方向Cと同一の方向に放射光Pを発生させるものである。
【特許文献1】特開平8−148327号公報
【特許文献2】特開平10−154615号公報
【特許文献3】特開平10−144521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、荷電粒子加速器に用いられて、荷電粒子のビームを収束させる4極電磁石4などの多極電磁石では、磁場の中心を真空ダクト1の中心に一致して据え付けないと、真空ダクト1の中心領域に誤差磁場が生じ、真空ダクト1の中心領域を流れる荷電粒子のビームが発散してしまう恐れがある。このような電磁石の据付誤差により生ずる誤差磁場の発生を防止するために、電磁石のアライメントが慎重に、長時間をかけて実施されている。
【0008】
また、電磁石自体の個体差によっても上述と同様な誤差磁場が生じ、荷電粒子のビームが発散してしまう恐れがある。このため、高い磁場精度を確保すべく、電磁石を高精度に設計し、製作しなければならない。
【0009】
また、特許文献3に記載の補正コイルは、設計段階で予測可能な端部磁場を除去するにすぎず、電磁石の全体に生ずる誤差磁場を解消するものではない。
【0010】
更に、荷電粒子加速器において、ビームの直線部に放射光を発生させるための専用の電磁石(ウィグラー電磁石など)を配置する場合には、その分、加速器のビームラインが長くなってしまう。
【0011】
本発明の目的は、荷電粒子加速器のビームラインを長くすることなく、ビームラインの直線部から放射光を発生することができる超電導コイル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、荷電粒子加速器のビームラインに設置される2極以上の超電導電磁石に用いられる超電導コイル装置において、主磁場コイルの周囲に独立して、荷電粒子のビームから放射光を発生させるための磁場を形成可能な放射光発生用磁場コイルが配置されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、荷電粒子加速器のビームラインの直線部に、荷電粒子のビームから放射光を発生させるための専用の電磁石を設置する必要がないので、荷電粒子加速器のビームラインを長くすることなく、ビームラインの直線部から放射光を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る超電導コイル装置の第1の実施の形態を示す斜視図。
【図2】図1のII−II線に沿う横断面図。
【図3】図1の主磁場コイルを示す斜視図。
【図4】図1の補正磁場コイルが回転による誤差磁場補正用である場合の超電導コイル装置を示す概略横断面図。
【図5】(A)は、図4の主磁場コイルを含む電磁石に回転による誤差磁場が発生した場合の磁場の強さを、x軸およびy軸上において示す磁場分布図、(B)は、図5(A)の回転による誤差磁場が解消されたときの磁場の強さの変化を、x軸およびy軸上において示す磁場分布図。
【図6】図1の補正磁場コイルが軸ずれによる誤差磁場補正用である場合の超電導コイル装置を示す概略横断面図。
【図7】(A)は、図4の主磁場コイルを含む電磁石に軸ずれによる誤差磁場が生じた場合の磁場の強さを、x軸およびy軸上において示す磁場分布図、(B)は、図7(A)の軸ずれによる誤差磁場が解消されたときの磁場の強さの変化を、x軸およびy軸上において示す磁場分布図。
【図8】(A)は、図1の補正磁場コイルが磁場有効長の長さずれによる誤差磁場補正用である場合の超電導コイル装置を示す概略縦断面図、(B)は、図8(A)の主磁場コイルを含む電磁石に磁場有効長の長さずれが生じた場合の磁場の強さを、超電導コイル装置の軸に沿った平面内で示す磁場分布図。
【図9】(A)は、図1の主磁場コイルを示す概略縦断面図、(B)は、図9(A)の主磁場コイルを含む電磁石に8極の高次成分磁場による誤差磁場が生じた場合の説明図、(C)は、図9(A)の主磁場コイルを含む電磁石に6極の高次成分磁場による誤差磁場が生じた場合の説明図。
【図10】本発明に係る超電導コイル装置の第2の実施の形態を示す横断面図。
【図11】(A)は、図10の放射光発生用磁場コイルとしての双極交番磁場コイルを概略して示す斜視図、(B)は、図11(A)の双極交番磁場コイルにより発生する磁場を示す説明図。
【図12】(A)は、図10の放射光発生用磁場コイルとしてのヘリカルダイポールコイルを概略して示す斜視図、(B)は、図12(A)のヘリカルダイポールコイルにより発生する磁場を示す説明図。
【図13】一般の荷電粒子加速器の一部を概略して示す平面図。
【図14】通常のウィグラー電磁石による放射光発生状況を示す説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。但し、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
[A]第1の実施の形態(図1〜図9)
図1は、本発明に係る超電導コイル装置の第1の実施の形態を示す斜視図である。図2は、図1のII−II線に沿う横断面図である。図3は、図1の主磁場コイルを示す斜視図である。
【0017】
この超電導コイル装置10は、荷電粒子加速器(図13参照)のビームラインに設置される2極以上の多極の超電導電磁石、本実施の形態では4極の超電導電磁石に用いられるものである。この4極の超電導電磁石は、陽子や電子などの荷電粒子のビームが流れる前記ビームラインとしての真空ダクト11の中心Oの領域に、荷電粒子のビームを収束させて、ビームの発散を防止する機能を有する。
【0018】
本実施の形態の超電導コイル装置10は、主磁場コイル12と補正磁場コイル13とを有してなる。主磁場コイル12は、図2及び図3に示すように、真空ダクト11の外側周囲に、導体が長円形の渦巻状に巻き線されてなる鞍型コイル14が4個配置されたものであり、隣接する各鞍型コイル14に発生する磁極N、Sが互いに異なるように設けられている。図2の矢印は、主磁場コイル12にて発生する磁場Bの向きを示す。この磁場Bは、真空ダクト11の中心Oにおいて0(ゼロ)になり、中心Oから離れるに従って大きくなる。従って、この磁場Bによって、真空ダクト11内を流れる荷電粒子のビームを、真空ダクト11の中心Oの領域に収束させることが可能となる。
【0019】
補正磁場コイル13は、主磁場コイル12の外側周囲に重畳して巻き線されて配置され、主磁場コイル12と独立して設けられたものであり、主磁場コイル12により生じた誤差磁場を打ち消すための磁場を形成可能とする。この誤差磁場は、主磁場コイル12を含む電磁石の据付誤差や、主磁場コイル12を含む電磁石自体の個体差により生ずるものである。例えば、主磁場コイル12を含む電磁石の回転や軸ずれ等の据付により生ずる誤差磁場や、主磁場コイル12を含む電磁石の磁場有効長の長さずれや磁場のねじれ、高次成分磁場の発生など、主磁場コイル12を含む電磁石自体の個体差により生ずる誤差磁場などがある。
【0020】
補正磁場コイル13は、主磁場コイル12の鞍型コイル14と同様な複数の鞍型コイル15からなるが、上述のような主磁場コイル12を含む電磁石に発生した誤差磁場の種類に対応して、その極数や形状、ターン数、設置位置などの少なくとも一つが設定される。
【0021】
具体的には、図5(A)に示すように、主磁場コイル12を含む電磁石が正規の位置から角度αだけ回転して据え付けられたことにより誤差磁場が生じた場合には、その誤差磁場を解消して、図5(B)に示す正規の磁場分布とするために、図4に示すように、主磁場コイル12の外側周囲に補正磁場コイル13が配置される。この補正磁場コイル13は、主磁場コイル12と同じ極数であって、それぞれの鞍型コイル15は、主磁場コイル12に対してある角度回転させた位置に配置される。この補正磁場コイル13により発生する磁場によって、主磁場コイル12を含む電磁石に生じた回転による誤差磁場が打ち消されて解消される。
【0022】
また、図7(A)に示すように、主磁場コイル12を含む電磁石の軸心Qが真空ダクト11の中心Oから距離tだけ位置ずれして据え付けられたことにより誤差磁場が生じた場合には、この誤差磁場を解消して、図7(B)に示す正規の磁場分布とするために、図6に示すように、主磁場コイル12の外側周囲に補正磁場コイル13が配置される。この補正磁場コイル13は、例えば、主磁場コイル12を含む電磁石の軸心Qと真空ダクト11の中心Oとを結ぶ直線A上に2極の鞍型コイル15を対向して配置し、これらの鞍型コイル15により軸心Qから中心Oへ向かう向きの磁場Eを、主磁場コイル12を含む電磁石に作用する。これにより、主磁場コイル12を含む電磁石に生じた軸ずれによる誤差磁場が打ち消されて解消される。
【0023】
また、図8(B)に示すように、主磁場コイル12を含む電磁石自体の磁場有効長Lに長さずれΔLが生じたことにより誤差磁場が生じた場合には、その誤差磁場を解消するために、図8(A)に示すように、主磁場コイル12の外側周囲に補正磁場コイル13を配置する。この補正磁場コイル13は、主磁場コイル12と同じ極数であって、それぞれの鞍型コイル15を、主磁場コイル12の各鞍型コイル14の直上に配置し、各鞍型コイル15の長さやターン数が調整されたものである。この補正磁場コイル13により発生する磁場によって、主磁場コイル12を含む電磁石に生じた磁場有効長Lの長さずれΔLにより生ずる誤差磁場が打ち消されて解消される。
【0024】
更に、主磁場コイル12の鞍型コイル14が真空ダクト11の長手方向に対して捩られてヘリカル配置され、この結果、主磁場コイル12を含む電磁石自体に誤差磁場が生じた場合には、この誤差磁場を解消する補正磁場コイル13を主磁場コイル12の外側周囲に配置する。この補正磁場コイル13は、図示しないが、例えば主磁場コイル12と同じ極数であって、それぞれの鞍型コイル15が、主磁場コイル12の各鞍型コイル14の捩れと反対向きに同程度捩られて配置されたものである。この補正磁場コイル13により発生する磁場によって、主磁場コイル12を含む電磁石に生じた磁場の捩れにより生ずる誤差磁場が打ち消されて解消される。
【0025】
また、図9(A)に示す主磁場コイル12の各鞍型コイル14が、例えばその寸法が互いに異なることで非対称となって、この主磁場コイル12を含む電磁石に、図9(B)に示す8極の高次成分磁場が生じたり、図9(C)に示す6極の高次成分磁場が生じ、これにより誤差磁場が生じた場合には、この誤差磁場を解消するために、主磁場コイル12の周囲に補正磁場コイル13が配置される。
【0026】
この場合には、図9(B)、(C)などの高次成分磁場を生じさせるコイルの配置位置に補正磁場コイル13の各鞍型コイル15を配置し、これらの各鞍型コイル15によって、高次成分磁場とは逆の磁場を発生させることで、高次成分磁場のみを打ち消す。このような補正磁場コイル13によって、高次成分磁場による誤差磁場を解消することが可能となる。
【0027】
上述の補正磁場コイル13は、主磁場コイル12を含む電磁石に生ずる磁場を高精度に測定して、この測定結果から誤差磁場が生じている場合に、この誤差磁場を打ち消すように、補正磁場コイル13の極数、形状、ターン数、設置位置などが決定されて設計される。その際に、補正磁場コイル13へ流す電流値を主磁場コイル12と同一に設計する。これにより、補正磁場コイル13を主磁場コイル12と直列に電気的に接続して、主磁場コイル12と共通の電源から電力を供給させる構成とすることが可能となる。
【0028】
従って、本実施の形態によれば、次の効果(1)〜(3)を奏する。
【0029】
(1)主磁場コイル12の外側周囲に独立して、この主磁場コイル12を含む電磁石により生じた誤差磁場を打ち消すための磁場を形成可能な補正磁場コイル13が配置されている。このことから、主磁場コイル12を含む電磁石の据付誤差により生ずる誤差磁場、または主磁場コイル12を含む電磁石自体の個体差等により生ずる誤差磁場を解消することができる。この結果、荷電粒子加速器のビームラインである真空ダクト11内を流れる荷電粒子のビームを、超電導コイル装置10を備えた超電導電磁石によって、真空ダクト11の中心O領域に収束させることができるので、上記ビームの発散を確実に防止できる。
【0030】
(2)補正磁場コイル13は、主磁場コイル12を含む電磁石に生じた磁場の測定結果から、発生した誤差磁場を打ち消すように設計されることから、発生した誤差磁場を確実に解消させることができる。
【0031】
(3)補正磁場コイル13は、主磁場コイル12と直列に電気的に接続され、この主磁場コイル12と共通の電源から電力が供給されることから、補正磁場コイル13と主磁場コイル12とにおいて個別の電源を独立してそれぞれ設置する必要がない。この結果、 超電導コイル装置10を備えた超電導電磁石のコンパクト化及びコストの低減を実現できる。
【0032】
[B]第2の実施の形態(図10〜図12)
図10は、本発明に係る超電導コイル装置の第2の実施の形態を示す横断面図である。
図11(A)は、図10の放射光発生用磁場コイルとしての双極交番磁場コイルを概略して示す斜視図であり、図11(B)は、図11(A)の双極交番磁場コイルにより発生する磁場を示す説明図である。本実施の形態において、前記第1の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付して説明を簡略化し、または省略する。
【0033】
本実施の形態の超電導コイル装置は、荷電粒子加速器(図13参照)のビームラインに設置される2極以上の多極の超電導電磁石、本実施の形態では4極の超電導電磁石に用いられるものであり、主磁場コイル12と、この主磁場コイル12の外側周囲に重畳して配置された放射光発生用磁場コイル21とを有してなる。
【0034】
主磁場コイル12は、前記第1の実施の形態と同様に、荷電粒子のビームを真空ダクト11の中心O領域に収束させて、その発散を防止するものである。また、放射光発生用磁場コイル21は、主磁場コイル12により収束して真空ダクト11内を流れる荷電粒子のビームから放射光を発生させるための磁場を形成する双極交番磁場コイル22、またはヘリカルダイポールコイル23である。これらの双極交番磁場コイル22及びヘリカルダイポールコイル23は、主磁場コイル12とは独立して配置されている。
【0035】
ここで、荷電粒子のビームからの放射光の発生は、荷電粒子そのものを物性や分子生物学などの研究に利用する場合のほか、荷電粒子のビームのエミッタンスを小さくして、ビームにおける荷電粒子の密度を高め、特にビーム衝突型加速器におけるビーム衝突頻度の向上を図るためである。尚、エミッタンスとは、ビームの実効的な大きさを表す物理量であり、運動量位相空間でのビーム全体が占める面積をいう。
【0036】
双極交番磁場コイル22は、図11(A)、(B)では1本または複数本の導体24を用いて、真空ダクト11内に、荷電粒子のビームの流れ方向Cに沿って交互に磁場の向きBが変化する双極交番磁場(つまりウィグラー磁場)を形成する。荷電粒子のビームは、上記双極交番磁場内を流れる間にその軌道が偏向されて、ビームの流れ方向Cと同一の方向に放射光P(図14参照)を放出する。
【0037】
また、ヘリカルダイポールコイル23は、図12(A)に示すように、ダイポールコイルが荷電粒子の流れ方向Cに沿って螺旋状に捩られて配置されたものである。従って、このヘリカルダイポールコイル23により真空ダクト11内に発生する磁場の向きBも、図12(B)に示すようにビームの流れ方向Cに沿って螺旋状に移動する。このため、真空ダクト11内を流れる荷電粒子のビームは、螺旋状に捩られながらその軌道が偏向されることになるので、放射光が発生する。尚、双極交番磁場コイル22及びヘリカルダイポールコイル23の電源は、主磁場コイル12と共通であっても、別電源であってもよい。
【0038】
従って、本実施の形態によれば、次の効果(4)を奏する。
【0039】
(4)荷電粒子のビームを収束してビームの発散を防止する主磁場コイル12の外側周囲に、荷電粒子のビームから放射光を発生させるための磁場を形成可能な放射光発生用磁場コイル(双極交番磁場コイル22、ヘリカルダイポールコイル23等)が配置されている。このため、荷電粒子加速器のビームラインの直線部に、荷電粒子のビームから放射光発生させるための専用の電磁石(ウィグラー電磁石やヘリカル電磁石等)を設置する必要がない。この結果、荷電粒子加速器のビームラインを長くすることをなく、ビームラインの直線部からの放射光を発生することができ、ビームのエミッタンスを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 超電導コイル装置
11 真空ダクト(ビームライン)
12 主磁場コイル
13 補正磁場コイル
20 超電導コイル装置
21 放射光発生用磁場コイル
22 双極交番磁場コイル
23 ヘリカルダイポールコイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子加速器のビームラインに設置される2極以上の超電導電磁石に用いられる超電導コイル装置において、
主磁場コイルの周囲に独立して、荷電粒子のビームから放射光を発生させるための磁場を形成可能な放射光発生用磁場コイルが配置されたことを特徴とする超電導コイル装置。
【請求項2】
前記放射光発生用磁場コイルは、ウィグラー磁場を形成する双極交番磁場コイルであることを特徴とする請求項1に記載の超電導コイル装置。
【請求項3】
前記放射光発生用磁場コイルは、ヘリカルダイポールコイルであることを特徴とする請求項1に記載の超電導コイル装置。
【請求項1】
荷電粒子加速器のビームラインに設置される2極以上の超電導電磁石に用いられる超電導コイル装置において、
主磁場コイルの周囲に独立して、荷電粒子のビームから放射光を発生させるための磁場を形成可能な放射光発生用磁場コイルが配置されたことを特徴とする超電導コイル装置。
【請求項2】
前記放射光発生用磁場コイルは、ウィグラー磁場を形成する双極交番磁場コイルであることを特徴とする請求項1に記載の超電導コイル装置。
【請求項3】
前記放射光発生用磁場コイルは、ヘリカルダイポールコイルであることを特徴とする請求項1に記載の超電導コイル装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−109258(P2012−109258A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−2523(P2012−2523)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【分割の表示】特願2008−157819(P2008−157819)の分割
【原出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【分割の表示】特願2008−157819(P2008−157819)の分割
【原出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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