説明

超電導線材の線幅加工方法

【課題】幅広の基板を用いて形成された超電導線材を、超電導特性を低下させずに、高い生産効率でスリット加工する超電導線材の線幅加工方法を提供する。
【解決手段】超電導線材Sを準備する工程(S10)と、対向する2つの切断部21〜30を備える加工部31〜35により、超電導線材Sを切断する加工工程(S30)とを備える。加工部31〜35は、2つの切断部21〜30の間に超電導線材Sを挟み込むように、超電導線材Sの幅方向に間隔を隔てて隣接するように少なくとも2組以上配置され、超電導線材Sの一方の表面S2に接触する切断部22,23,26,27,30の接触位置は、超電導線材Sの他方の表面S1に接触する切断部21,24,25,28,29の接触位置より超電導線材Sの幅方向の外側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導線材の線幅加工方法に関し、たとえば薄膜超電導線材を切断部材による加工方式で線幅加工する超電導線材の線幅加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に、酸化物超電導線材、特に薄膜超電導線材において、所望の線幅を有する超電導線材を得るためには、作製の最初に所望の線幅の基板を準備して、その表面上に成膜を行なう。
【0003】
また、既存の基板を用いて作製するために、既存の基板を用いて基板上に中間層と超電導層とを備える超電導線材を作製し、作製した超電導線材を所望の幅に加工する場合もある。加工として、レーザを用いて加工していることが非特許文献1に開示されている。
【非特許文献1】第72回2005年度春季 低温工学・超電導学会 講演概要集 2005年5月31日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、作製の最初に所望の線幅の基板を準備して超電導線材を製造する方法では、所望の線幅を有する超電導線材を得るために既存の基板を用いることができず、基板を所望の線幅に加工する工程が必要である。そのため、線幅の広い基板を用いて超電導線材を作製する場合には、基板の広い面積を利用できないので、効率的に成膜することができず、生産効率が悪く、コストがかかるという問題がある。
【0005】
また、非特許文献1に開示のレーザを用いて加工する方法では、既存の線幅の広い基板を用いることはできるが、加工する際にレーザ照射に伴う発熱により超電導特性を低下させる場合があるという問題がある。また、長尺の基板を用いる場合には、レーザを長時間に渡って連続して使用する必要があるという問題がある。さらに、幅広の基板を用いる場合には、設備としても作業としても非常に複雑になるという問題がある。
【0006】
それゆえ本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、幅広の基板を用いて形成された超電導線材を、超電導特性を低下させずに、高い生産効率で加工する超電導線材の線幅加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にしたがった超電導線材の線幅加工方法は、超電導線材を準備する工程と、対向する2つの切断部を備える加工部により、超電導線材を切断する加工工程とを備える。加工部は、2つの切断部の間に超電導線材を挟み込むように、超電導線材の幅方向に間隔を隔てて隣接するように少なくとも2組以上配置され、超電導線材の一方の表面に接触する切断部の接触位置は、超電導線材の他方の表面に接触する切断部の接触位置より超電導線材の幅方向の外側に位置している。
【0008】
上記超電導線材の線幅加工方法において好ましくは、加工部の間の距離を変更する変更工程をさらに備える。
【0009】
上記超電導線材の線幅加工方法において好ましくは、加工工程は、切断部において互いに対向する面が超電導線材の表面に対して垂直になった状態で超電導線材を切断する。
【0010】
上記超電導線材の線幅加工方法において好ましくは、加工工程において、加工部におけるクリアランスが0μm以上5μm以下である。
【0011】
上記超電導線材の線幅加工方法において好ましくは、加工部における加工工程において、ラップが0mm以上0.3mm以下である。
【0012】
上記超電導線材の線幅加工方法において好ましくは、加工工程において、超電導線材の一方の表面に接触する切断部の間および超電導線材の他方の表面に接触する切断部の間にそれぞれ支持部材が配置され、支持部材と、超電導線材を介して支持部材と対向するように配置されている切断部との距離が、超電導線材の厚みの1.0倍以上2.5倍以下である。
【0013】
上記超電導線材の線幅加工方法において好ましくは、加工工程において、切断部の刃先の角度が45°以上90°以下である。
【0014】
上記超電導線材の線幅加工方法において好ましくは、加工工程において、切断部が超電導線材の幅方向に延びる方向の軸を中心として回転可能であり、切断部を回転させて超電導線材を切断する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の超電導線材の線幅加工方法によれば、超電導線材を切断部に挟み込んで切断するときに、超電導線材と加工部との接触位置から、切断される超電導線材において切断される部分近傍に切断以外の応力が印加されない。そのため、超電導線材を線幅加工しても、超電導線材に大きなひずみがほとんど生じないので特性は低下しない。また、加工部により切断するだけで超電導線材の特性を低下させずに超電導線材を加工することができるので、高い生産効率で加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における超電導線材の線幅加工方法を示すフローチャートである。図2は、本発明の実施の形態1における超電導線材の線幅加工を示す概略模式図である。図3(A)は、本発明の実施の形態1における切断部の刃先の角度を示す概略模式図であり、(B)は、刃先の角度が90°を示す概略模式図である。図1〜図3を参照して、本発明の実施の形態1における超電導線材の線幅加工方法を説明する。実施の形態1における超電導線材の線幅加工方法は、いわゆるギャングカット方式により行なう。
【0018】
本発明の実施の形態1における超電導線材の線材加工方法は、図1に示すように、まず、超電導線材を準備する工程(S10)を実施する。この工程(S10)では、既存の幅広の基板上に中間薄膜層、超電導層、および表面保護層を順次形成してなる超電導線材を準備する。
【0019】
実施の形態1では、たとえばNi(ニッケル)−W(タングステン)などのNi合金材料からなる基板を準備する。そして、基板上に、たとえばCeO2(セリア)およびYSZ(イットリア安定化ジルコニア)の少なくとも一方を含んでいる中間薄膜層を物理蒸着法にて形成する。そして、中間薄膜層上に、たとえばHoBCO(ホルミウム系高温超電導材料:HoBa2Cu3x)からなる超電導層を物理蒸着法にて形成する。そして、超電導層上に、Ag(銀)安定化層からなる表面保護層を形成する。
【0020】
なお、超電導線材の材料は特にこれに限定されないが、上記の材料からなる超電導線材を用いることが、優れた超電導線材の特性を損なわないという観点から好ましい。どのような材料の超電導線材であっても、実施の形態1における超電導線材の線幅加工方法を適用することができる。
【0021】
次に、加工部の間の距離を変更する変更工程(S20)を実施する。この工程(S20)では、図2に示す超電導線材の線幅加工を行なう装置を用いて行なう。
【0022】
超電導線材の線幅加工を行なう装置は、図2に示すように、2つの切断部11,12を備える加工部15と、2つの切断部13,14を備える加工部16とを、上軸17と下軸18にセットしている。また、加工部15,16は、2つの切断部11,12および2の切断部13,14の間に超電導線材Sを挟み込むように、超電導線材Sの幅方向に間隔を隔てて隣接するように少なくとも2組以上配置され、超電導線材Sの一方の表面S2に接触する切断部11,14の接触位置は、超電導線材Sの他方の表面S1に接触する切断部12,13の接触位置より超電導線材Sの幅方向の外側に位置している。
【0023】
実施の形態1では、加工部15,16を構成する切断部11〜14は円形刃であり、円形刃である切断部11〜14を片面に含むカッターバイトを用いて加工部15,16を構成している。カッターバイトは、円柱形状(あるいは円盤状)としている。加工部15,16における対向する2の切断部11〜14は、同一の形状としている。具体的には、加工部15における切断部11と切断部12との形状および、加工部16における切断部13と切断部14との形状は略同一の形状としている。具体的には、切断部11と切断部12とで、刃先の角度、超電導線材Sの表面に対する切断部11,12の角度、切断部11,12が形成されているカッターバイトの平面形状における半径などの切断部11,12を構成する部材(カッターバイト)の形状が実質的に同じになっている。また、ここで加工部15,16においては、図に示すクリアランスCやラップLなどの切断条件設定が同じとなっていても良い。
【0024】
また、超電導線材Sの一方の表面S2に接触する切断部11,14の間、および超電導線材Sの他方の表面S1に接触する切断部12,13の間にそれぞれ支持部材19が配置されている。支持部材19は、隣接する切断部12と切断部13との間隔(より具体的には隣接する加工部15、16をそれぞれ構成するカッターバイトの間の間隔)を設定するものである。実施の形態1では、支持部材19は、多様な線幅と図2中のクリアランスCを決めるため高精度に変更ができる構成とし、たとえば支持部材19は取り外し可能な複数の部材からなっていてもよい。これらの部材は、上軸17または下軸18の延在方向に沿った方向において積層されることにより支持部材19を構成してもよい。これらの部材は、上軸17または下軸18を挿入することが可能な開口部が形成された円盤状の形状を有していても良い。これらの部材は任意の材料により構成することができるが、たとえば当該部材を樹脂により構成してもよい。
【0025】
変更工程(S20)では、具体的には、超電導線材を切断する所望の線幅に切断するために、図2に示すように、たとえば所望の長さになるように複数の部材を着脱することにより支持部材19の長さを変して、加工部15,16の間の距離を所望の距離に変更する。
【0026】
次に、超電導線材を切断する加工工程(S30)を実施する。この工程(S30)では、図2に示すように、2つの切断部11〜14を備える少なくとも2組の加工部15,16により超伝導線材Sを切断する。加工工程(S30)では、具体的には、たとえば以下の工程(S31〜S34)を実施する。
【0027】
まず、加工部15,16を回転させる工程(S31)を実施する。超電導線材を線幅加工する装置は、切断部11〜14が超電導線材Sの幅方向に延びる方向(超電導線材において切断する方向と垂直の方向)の軸を中心として回転可能であり、切断部11〜14を回転させて超電導線材Sを切断する。
【0028】
実施の形態1では、図2に示すように、超電導線材を線幅加工する装置において、切断部12,13は上軸17を、切断部11,14は下軸18を中心として、回転可能としている。つまり、上記切断部11〜14がそれぞれ形成されたカッターバイトが上軸17または下軸18に接続固定されており、この上軸17および/または下軸18を回転させることにより、カッターバイトの切断部11〜14を上軸17または下軸18を中心として回転させることができる。切断部11〜14は、上軸17および/または下軸18に接続された電動モータなどの駆動部材(図示せず)により回転するものとしている。実施の形態1では、この工程(S31)は、たとえば駆動部材により、加工部15,16における切断部11〜14を同時に回転させる。
【0029】
この工程(S31)において、加工部15,16におけるクリアランスCは0μm以上5μm以下としている。クリアランスCの距離の調整は、この工程(S31)で行なってもよいが、特にこれに限定されない。たとえば、変更工程(S20)において支持部材19により加工部15,16の間の距離を変更する際に、クリアランスCを調整することもできる。クリアランスCは、切断動作を円滑に行なうために設けられている。
【0030】
なお、「クリアランスC」とは、1組の加工部を構成する2つの切断部の距離(間隙)を意味する。たとえば、図2に示すように、クリアランスCは、加工部15における切断部11と切断部12との距離である。
【0031】
また、工程(S31)において、加工部15,16におけるラップLは0μmを超えて0.3μm以下としている。なお、「ラップL」とは、加工部15における切断部11,12、および加工部16における切断部13,14の延びる方向に沿った方向において重なる距離を意味する。
【0032】
なお、実施の形態1では、加工部15,16を回転させる工程(S31)を備えているが、特にこれに限定されない。たとえば、加工部15,16を回転させる工程(S31)を備えていなくてもよい。その場合は、切断部11,12の間または切断部13,14の間に超電導線材を噛みこませ、超電導線材を切断部11〜14の出側へ引出すことにより、切断部11〜14が形成されたカッターバイトなどの刃物が停止している状態で、またはカッターバイトを超電導線材の動きに従動させることで当該超電導線材の切断を行なうようにしてもよい。
【0033】
次に、超電導線材を挟み込む工程(S32)を実施する。この工程(S32)は、図2に示すように、超電導線材の線幅加工を行なう装置において、超電導線材Sを切断する方向と垂直な面を加工部に挟むようにして挿入する。実施の形態1では、超電導線材Sの長手方向の端部を挟み込む。
【0034】
この工程(S32)において、支持部材19と、超電導線材Sを介して支持部材19と対向するように配置されている切断部12との距離Dが、超電導線材Sの厚みWの1.0倍以上2.5倍以下としている。
【0035】
次に、超電導線材を切断する工程(S33)を実施する。この工程(S33)では、挿入された超電導線材Sが回転している切断部11〜14を備える加工部15,16により切断される。具体的には、切断部11〜14において互いに対向する面が超電導線材Sの表面S1,S2に対して垂直になるように、切断部11〜14が超電導線材Sの表面に接触し、さらに切断部11,12の組および切断部13,14の組によって超電導線材Sが切断される。
【0036】
実施の形態1では、挟み込まれた超電導線材Sの長手方向の端部から、切断部11〜14により、長手方向に順次切断される。これにより、超電導線材Sの幅方向に所望の幅に加工することができる。
【0037】
また、この工程(S33)において、図3(A)に示すように、切断部11〜14の刃先の角度θは45°以上90°以下として切断している。なお、「刃先の角度θ」とは、超電導線材Sの表面と垂直な方向に延びている切断部11〜14の側面の延びる方向と、超電導線材Sの表面に対向する切断部11〜14の他の側面が延びる方向とのなす角度を意味する。たとえば切断部12の刃先の角度θが90°のときは、図3(B)に示すような形状となる。
【0038】
次に、切断された超電導線材Sを保持する工程(S34)を実施する。この工程(S34)では、加工すべき超電導線材Sにおいて加工し終えたときに、加工された幅の狭くなった超電導線材を保持する。具体的には、加工された超電導線材が、切断部12,13を有するカッターバイトと支持部材19との間に保持される。このとき、上述した距離Dが適切に設定されているため、加工後の超電導線材は幅方向で変形などすることなく、安定した形状の超電導線材を得ることができる。その後、加工された超電導線材は加工部15,16の出側においてたとえばリールなどに巻取ることにより、コイル状にしてもよい。
【0039】
この工程(S34)では、超電導線材Sの一方の表面S2に接触する切断部11,14が他方の表面S1に接触する切断部12,13の外側に位置し、同時に切断するので、曲がるなどの応力がかかることない状態で切断された超電導線材を保持することを目的としている。
【0040】
以上の工程(S10〜S34)を実施することにより、超電導線材Sを線幅加工することができる。
【0041】
実施の形態1では、超電導線材Sの長手方向である幅方向を3分割する線幅加工を行なっている。また、3分割された超電導線材Sの中央部が必要な線幅として加工し、両端部は形状を整えるために(特に超電導線材Sの幅精度を向上させるため)切断している。
【0042】
なお、実施の形態1の超電導線材の線幅加工方法では、超電導線材Sの長手方向である幅方向を分割するべく、超電導線材Sの長手方向に沿って切断しているが、特にこれに限定されない。たとえば、本発明の超電導線材の線幅加工方法は、超電導線材Sにおける短手方向に分割する線幅加工を行なうこともできる。また、本発明の超電導線材の線幅加工方法は、超電導線材Sにおける任意の斜め方向に切断する線幅加工を行なうこともできる。
【0043】
次に、本発明の実施の形態1における変形例について図4を参照して説明する。図4は、本発明の実施の形態1の変形例における超電導線材の線幅加工を示す概略模式図である。変形例における超電導線材の線幅加工方法の構成は、基本的には本発明の実施の形態1における超電導線材の線幅加工方法と同様の構成を備えるが、切断部12,13の形状において、図2に示した超電導線材の線幅加工方法と異なる。
【0044】
具体的には、図4に示すように、変形例における超電導線材を線幅加工する装置において、超電導線材Sの一方の表面S1に接触する切断部12,13は、厚みの調節可能な1つのカッターバイトに形成されている。変形例における超電導線材を線幅加工する装置は、当該カッターバイトの両端面に切断部12,13を有している。なお、加工部15,16は超電導線材Sの幅方向において間隔を隔てて隣接するように少なくとも2組以上配置され、超電導線材Sの一方の表面S2に接触する切断部11,14の接触位置は、超電導線材Sの他方の表面S1に接触する切断部12,13の接触位置より超電導線材Sの幅方向の外側に位置していることは、実施の形態1と同様である。
【0045】
変形例における超電導線材の線幅加工方法は、その他の工程については実施の形態1の超電導線材の線幅加工方法と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0046】
以上説明したように、本発明の実施の形態1における超電導線材の線幅加工方法によれば、超電導線材Sを準備する工程(S10)と、対向する2つの切断部11〜14を備える加工部15,16により、超電導線材Sを切断する加工工程(S30)とを備え、加工部15,16は、2つの切断部11〜14の間に超電導線材Sを挟み込むように、超電導線材Sの幅方向に間隔を隔てて隣接するように少なくとも2組以上配置され、超電導線材Sの一方の表面S2に接触する切断部11,14の接触位置は、超電導線材Sの他方の表面S1に接触する切断部12,13の接触位置より超電導線材Sの幅方向の外側に位置している。これにより、超電導線材Sを切断部11〜14に挟み込んで切断すると、切断される超電導線材Sにおいて、切断される部分近傍に切断部12,13に当たることなどによる切断以外の原因により生じる応力が印加されない。そのため、切断部11と切断部14との間に切断された超電導線材Sが変形されずに形成される。よって、本発明の実施の形態1における超電導線材の線幅加工方法により加工された超電導線材は、ひずみを生じないため、その特性の低下を防止することができる。
【0047】
また、加工部15,16における切断部11,14により超電導線材Sを支持しながら、加工部15,16により加工している。さらに、加工部15,16において超電導線材を、一般的な刃物を用いて切断している。そのため、幅広の基板を用いて超電導線材とした後に、加工を行なうことが容易にできる。よって、高い生産効率で超電導線材を加工することができるので、コストの低減を図ることができる。
【0048】
上記超電導線材の線幅加工方法において好ましくは、加工部15,16の間の距離を変更する変更工程(S20)をさらに備えている。これにより、変更工程(S20)において、幅広の超電導線材を所望の線幅に加工できる。よって、生産効率をさらに向上することができる。
【0049】
上記超電導線材の線幅加工方法において好ましくは、加工工程(S30)は、切断部11〜14において互いに対向する面が超電導線材Sの表面S1,S2に対して垂直になった状態で超電導線材を切断する。これにより、超電導線材Sをより変形させずに加工することができる。そのため、加工工程(S30)において、より超電導線材の変形が生じないので、その特性の低下をより防止することができる。
【0050】
上記超電導線材の線幅加工方法において好ましくは、加工工程(S30)において、加工部15,16におけるクリアランスCが0μmを超えて5.0μm以下である。さらに好ましくは、クリアランスCは、1.0μm以上3.0μm以下である。これにより、超電導線材Sに線幅加工を行なっても、超電導線材Sの変形量が一層小さくなるからである。クリアランスCが0μmよりも小さいと、超電導線材Sを切断することができないからである。また、クリアランスCを1.0μm以上とすることにより、切断をスムーズに行なうことができるからである。一方、クリアランスCを5μm以下とすることにより、超電導線材Sの変形量を極めて小さくすることができるので、ひずみにくくなり、超電導線材Sの特性の低下を一層防止できる。また、クリアランスCを3.0μm以下とすることにより、超電導線材Sの特性の低下をさらに一層防止できる。
【0051】
上記超電線材の線幅加工方法において好ましくは、加工工程(S30)において、加工部15,16におけるラップLが0mm以上0.3mm以下である。さらに好ましくは、ラップLが0.1mm以上0.2mm以下である。これにより、超電導線材Sに線幅加工を行なっても、超電導線材Sの変形量が一層小さくなるからである。なお、ラップLが0mmよりも小さいと、超電導線材Sを切断することができない。また、ラップLを0.1mm以上とすることにより、切断をスムーズに行なうことができるからである。一方、ラップLを0.3mm以下とすることにより、超電導線材Sの変形量を極めて小さくすることができるので、ひずみにくくなり、超電導線材Sの特性の低下を一層防止できる。また、ラップLを0.2mm以下とすることにより、超電導線材Sの特性の低下をさらに一層防止できる。
【0052】
上記超電導線材の線幅加工方法において好ましくは、加工工程(S30)において、超電導線材Sの一方の表面S2に接触する切断部11,14の間および超電導線材Sの他方の表面S1に接触する切断部12,13の間にそれぞれ支持部材19が配置され、支持部材19と、超電導線材Sと対向して配置されている切断部11〜14との距離Dが、超電導線材Sの厚みの1.0倍以上2.5倍以下である。さらに好ましくは、距離Dが超電導線材Sの厚みの1.0倍以上2.0倍以下である。これにより、超電導線材Sに線幅加工を行なっても、超電導線材Sの変形量が一層小さくなるからである。なお、当該距離が1.0倍よりも短いと、超電導線材Sが塑性変形するからである。また、1.0倍とすることにより、切断された超電導線材Sの塑性変形を防止できるからである。一方、2.5倍以下とすることにより、切断する超電導線材Sの動く許容度が適切となるので、切断された超電導線材Sの変形量を極めて小さくすることができる。また、2.0倍以下とすることにより、変形量を一層小さくできるからである。
【0053】
上記超電導線材の線幅加工方法において好ましくは、加工工程(S30)において、切断部11〜14の刃先の角度θが45°以上90°以下である。これにより、加工工程(S30)における超電導線材Sを切断する工程(S33)において超電導線材Sへ切断部が入りやすくなる。そのため、切断部11〜14による超電導線材Sへの切断がよりスムーズに行なわれる。よって、超電導線材Sを線幅加工する生産効率をさらに向上することができる。なお、刃先の角度θを45°以上とすることにより、切断部11〜14の超電導線材Sへの切断部分以外への入り込みをより確実に防止できるからである。また、90°よりも大きいと、超電導線材の切断ができない。
【0054】
上記超電導線材の線幅加工方法において好ましくは、加工工程(S30)において、切断部11〜14が超電導線材Sの幅方向に延びる方向の軸を中心として回転可能であり、切断部11〜14を回転させて超電導線材Sを切断する。切断部11〜14の回転力により、加工工程(S30)における超電導線材Sを切断する工程(S33)において、超電導線材Sへの切断をより短時間で行なうことができる。よって、超電導線材Sを線幅加工する生産効率をさらに向上することができる。
【0055】
上記超電導線材の線幅加工方法において好ましくは、切断部11〜14は、駆動部材により回転する。これにより、加工工程(S30)における超電導線材Sを切断する工程(S33)において、超電導線材Sの変形を一層抑制することができる。そのため、超電導線材の特性の低下を一層防止することができる。
【0056】
(実施の形態2)
図5は、本発明の実施の形態2における超電導線材の線幅加工を示す概略模式図である。図5を参照して、本発明の実施の形態2における超電導線材の線幅加工方法を説明する。本発明の実施の形態2における超電導線材の線幅加工方法の構成は、基本的には本発明の実施の形態1における超電導の線幅加工方法と同様の構成を備えるが、超電導線材を切断する工程(S33)において図1および図2に示した超電導線材の線幅加工方法と異なる。
【0057】
具体的には、加工工程(S30)は、図5に示すような超電導線材を線幅加工する装置を用いて行なう。当該装置は、実施の形態1における超電導線材を線幅加工する装置と基本的には同様であるが、加工部を5組有している点においてのみ異なる。
【0058】
詳細には、当該装置は、図5に示すように、切断部21〜30を2つ備える加工部31〜35を有している。また、加工部31〜35は超電導線材Sの幅方向において間隔を隔てて隣接するように配置されている。2組の加工部31,32において超電導線材Sの一方の表面S1に接触する切断部21,24の接触位置は、超電導線材Sの他方の表面S2に接触する切断部22,23の接触位置より超電導線材Sの幅方向の外側に位置している。同様に、任意の隣接する加工部31〜35において、超電導線材Sの一方の表面S1,S2に接触する切断部21,24、切断部23,26、切断部25,28、切断部27,30の一方の表面S1,S2への接触位置は、それぞれ超電導線材Sの他方の表面S2,S1に接触する切断部22,23、切断部24,25、切断部26,27、切断部28,29の他方の表面S2,S1への接触位置より超電導線材Sの幅方向の外側に位置している。
【0059】
そのため、実施の形態2における超電導線材を切断する工程(S33)では、超電導線材Sを6つに分割するように切断する。
【0060】
なお、超電導線材Sを切断する数は特にこれに限定されない。加工部の配置数を増減することにより、超電導線材Sを任意の数に分割することができる。たとえば、支持部19から独立して切断部11〜14が支持される場合には、超電導線材を切断する工程(S33)では、対向する切断部の位置を接触できない程度に離すことによって、切断しない加工部を有していてもよい。切断しない加工部を有することにより、超電導線材の線幅の数を制御することができる。
【0061】
実施の形態2における超電導線材の線幅加工方法は、その他の工程については実施の形態1の超電導線材の線幅加工方法と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0062】
以上説明したように、本発明の実施の形態2における超電導線材の線幅加工方法によれば、2つの切断部21〜30を備える5組の加工部31〜35により、超電導線材を切断する加工工程(S30)を備えている。加工部を複数組備えることにより、加工工程(S30)において超電導線材Sを一度に複数の線幅に切断することができる。よって、超電導線材の特性を低下させずに、生産効率をさらに向上することができる。
【実施例1】
【0063】
本発明による超電導線材の線幅加工方法の効果を確認するべく、表1に示す加工方法により、以下の実施例1および比較例1,2のような、超電導線材の線幅加工方法を実施した。
【0064】
(実施例1における超電導線材の線幅加工方法)
実施例1では、実施の形態1における線幅加工方法にしたがって、超電導線幅加工を行なった。具体的には、まず、超電導線材を準備する工程(S10)では、Ni−Wからなる基板と、セリアからなる中間層と、HOBCOからなる超電導層と、Ag安定化層とを備える超電導線材を準備した。当該超電導線材の幅は10mm、長手方向の長さは100m、厚みは0.09mmとした。また、当該超電導線材の臨界電流は100Aであった。
【0065】
そして、加工工程(S30)では、2つの切断部を備える3組の加工部により、超電導線材を切断した。加工工程(S30)では、スリット幅を4mm、クリアランスを0μm、セパレータリング隙間(図2における距離D)を0.09mm、刃先の角度を90°とした。なお、スリット幅とは、超電導線材を切断する幅であり後の超電導線材の幅に相当し、3組の加工部の距離により決めることができる幅である。また、スリット数とは、加工工程(S30)において切断した超電導線材のうち両端部を除いた超電導線材の数である。また、セパレータリング隙間とは、支持部材と、超電導線材を介して支持部材と対向するように配置されている切断部との距離である。これにより、実施例1における超電導線材を、両端部を含み4つの超電導線材に線幅加工した。なお、加工部の位置は、幅が10mmの超電導線材を順にそれぞれの幅が1mm、4mm、4mm、1mmとなる4つに切断可能な位置に配置した。
【0066】
そして、加工工程(S30)において切断した超電導線材のうち両端部を除いた2つの超電導線材について、外観の観察と、臨界電流を測定した。その結果を表1に示す。
【0067】
(比較例1における超電導線材の線幅加工方法)
比較例1では、図6に示すようないわゆるシャーカット方法にしたがって、超電導線幅加工を行なった。図6は、比較例1における超電導線材のシャーカット方法を示す概略模式図である。
【0068】
詳細には、まず、実施例1と同様の超電導線材を準備する工程を実施した。次に、図6に示すように、上刃および下刃からなる2つの切断部を備える3組の加工部により、超電導線材を切断する加工工程を実施した。シャーカット方法の加工部は、図6に示すように、下刃と上刃とが超電導線材幅方向において間隔を隔てて隣接するように設置され、下刃と上刃とが交互に超電導線材の表面に接触するように位置している。また、上刃の形状と下刃の形状とは異なっている。
【0069】
具体的には、下刃は固定されており、上刃を移動させて、超電導線材を切断した。上刃は、超電導線材の表面に対して、垂直でなく角度をもたせて、屈折切りを行なった。
【0070】
そして、加工工程において切断した超電導線材のうち両端部を除いた2つの超電導線材について、外観の観察と、臨界電流を測定した。その結果を表1に示す。
【0071】
(比較例2における超電導線材の線幅加工方法)
比較例2では、図7(A)および図7(B)に示すようないわゆるスコアーカット方法にしたがって、超電導線幅加工を行なった。図7は、比較例2における超電導線材のスコアーカット方法を示し、(A)は概略正面図であり、(B)は概略側面図である。
【0072】
詳細には、まず、実施例1と同様の超電導線材を準備する工程を実施した。次に、図6に示すように、上刃と受けローラからなる切断部を備える3組の加工部により、超電導線材を切断する加工工程を実施する。スコアーカット方法の加工工程では、上刃を受けローラに、スプリングにより押し付けて切断した。
【0073】
そして、加工工程において切断した超電導線材のうち両端部を除いた2つの超電導線材について、外観の観察と、臨界電流を測定した。その結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
(測定結果)
表1に示すように、実施例1のギャングカット方法により切断された超電導線材は、切断部近傍において特に変形部なども無く、外観が良好であった。また、臨界電流は、切断前の超電導線材の臨界電流からの低下量が比較例より少なかった。これにより、ギャングカット方法により切断することにより、切断による超電導特性の低下を防止できることがわかった。
【0076】
一方、比較例1のシャーカット方法により切断された超電導線材は、外観は良好であったものの、臨界電流は、切断前の超伝導線材の臨界電流から少し低下した。これにより、シャーカット方法により切断することにより、切断による超電導特性が上述した本発明の実施例1より低下することがわかった。
【0077】
また、比較例2のスコアーカット方法により切断された超電導線材は、外観において極端な変形が認められた。また、臨界電流は流れなかった。スコアーカット方法により切断することにより、切断により超電導線材の特性が劣化することがわかった。
【0078】
これにより、本発明のギャングカット方式による超電導線材の線幅加工によれば、幅広の基板を用いて形成された超電導線材を、超電導特性を低下させずに、高い生産効率で加工できることがわかった。
【実施例2】
【0079】
本発明による超電導線材の線幅加工方法の効果をさらに確認するべく、表2に示す加工方法により、以下の実施例2〜12および比較例3のような、超電導線材の線幅加工方法を実施した。
【0080】
(実施例2〜12における超電導線材の線幅加工方法)
実施例2〜12の超電導線材の線幅加工方法では、基本的には実施例1と同様の線幅加工方法の構成を備えるが、表2に示す条件(クリアランス、ラップ、およびセパレータリング隙間)で線幅加工を行なう点において、実施例1の超電導線材の線幅加工方法と異なる。
【0081】
そして、加工工程において切断した超電導線材のうち両端部を除いた2つの超電導線材について、外観の観察と、臨界電流を測定した。その結果を表2に示す。
【0082】
(比較例3における超電導線材の線幅加工方法)
比較例3の超電導線材の線幅加工方法では、基本的には実施例1と同様の線幅加工方法の構成を備えるが、ラップを−0.2mmとする点において実施例1の超電導線材の線幅加工方法と異なる。
【0083】
【表2】

【0084】
(測定結果)
表2に示すように、実施例2〜12の超電導線材の線幅加工方法により切断された超電導線材は、臨界電流の低下が少なかった。そのため、超電導線材の特定の低下を抑制できることがわかった。
【0085】
また、クリアランスが0μm以上5μm以下であり、ラップが0μm以上0.3μm以下であり、セパレータリング隙間が超電導線材の厚みの1.0倍以上2.5倍以下である0.09mm以上0.225mm以下である実施例2,3,5,6,9〜11は、切断された超電導線材は外観において良好であり、臨界電流はほとんど低下しなかった。そのため、加工工程において当該条件をさらに備えることにより、超電導線材の線幅加工を行なっても超電導特性の低下を一層抑制できることがわかった。
【0086】
クリアランスを好ましい範囲外の10μmとした実施例4、およびラップを好ましい範囲外の0.5mmとした実施例7は、外観において端部は変形したが、ギャングカット方法により線幅加工を行なっているので、臨界電流は低下したものの、表1に示した比較例2のように臨界電流値が0になることはなかった。
【0087】
また、セパレータリング隙間を好ましい範囲外の0.07mm、0.30mmとした実施例8,12はについても、臨界電流は少し低下したものの、比較例1および比較例2などの他の方法での切断と比較して超電導線材の特性の低下を防止することができた。
【0088】
一方、ラップを−0.2mmとした比較例3は、超電導線材を切断することができなかった。
【0089】
これにより、ギャングカット方式による超電導線材の線幅加工方法において、クリアランス、ラップ、およびセパレータリングについて好ましい範囲があることがわかった。
【実施例3】
【0090】
本発明による超電導線材の線幅加工方法の効果をさらに確認するべく、表3に示す加工方法により、以下の実施例13〜15のような、超電導線材の線幅加工方法を実施した。
【0091】
(実施例13〜15における超電導線材の線幅加工方法)
実施例13〜15の超電導線材の線幅加工方法では、基本的には実施例1と同様の線幅加工方法の構成を備えるが、超電導線材を準備する工程および表3に記載の条件(クリアランス、ラップ、セパレータリング隙間)で線幅加工を行なう点において、実施例1の超電導線材の線幅加工方法と異なる。
【0092】
詳細には、超電導線材を準備する工程では、実施例1と基本的に同様であるが、銀安定化層上にさらに表3に記載の厚さの銅メッキを形成した。
【0093】
当該超電導線材の幅は15mm、長さは100m、厚みは実施例13が0.11mmで実施例14,15が0.12mm、臨界電流は150Aであった。
【0094】
そして、実施例2と同様に表3に記載の条件で線幅加工を行なった。なお、実施例13〜15では、スリット数を3としているため、4組の加工部により超電導線材を切断した。なお、加工部の位置は、15mmの幅の超電導線材をそれぞれの幅が1.5mm、4mm、4m、4mm、1.5mmとなる5つに切断可能な位置に配置した。
【0095】
そして、加工工程において切断した超電導線材のうち両端部を除いた3つの超電導線材について、外観の観察と、臨界電流を測定した。その結果を表3に示す。
【0096】
【表3】

【0097】
(測定結果)
表3に示すように、実施例13〜15の超電導線材の線幅加工方法により切断された超電導線材は、臨界電流の低下が少なかった。そのため、銅メッキが形成された超電導線材においても同様に特定の低下を防止できることがわかった。
【実施例4】
【0098】
本発明による超電導線材の線幅加工方法の効果をさらに確認するべく、以下に示す加工方法により、超電導線材の線幅加工方法を実施した。
【0099】
線幅加工する超電導線材を2本用意し、1本は、実施例1の超電導線材加工方法と同様にして線幅加工した。
【0100】
残りの1本は、基本的には実施例1と同様の線幅加工方法の構成を備えるが、加工工程で加工部を回転させない点において、実施例1の超電導線材の線幅加工方法と異なる。すなわち、残りの1本は、実施例1の超電導線材の線幅加工方法において、加工工程では、加工部は回転させずに超電導線材を切断した。
【0101】
なお、線幅加工する前の超電導線材の幅は10mm、長さは50m、厚みは0.09mm、臨界電流は150Aであった。また、加工部の位置は、10mmの幅の超電導線材をそれぞれの幅が1mm、4mm、4mm、1mmとなる4つに切断可能な位置に配置した。
【0102】
そして、加工工程において切断した超電導線材のうち両端部を除いた2つの超電導線材について、加工部を回転させて線幅加工した超電導線材と、加工部を回転させずに線幅加工した超電導線材をそれぞれ、10m切断する度に臨界電流を測定した。
【0103】
(測定結果)
回転させた切断部により両端が切断された超電導線材の臨界電流は、58A〜62Aと非常に良好であった。超電導線材の特性の低下を防止したとともに、切断による超電導特性のばらつきを抑えることもできた。
【0104】
一方、回転させなかった切断部により両端が切断された超電導線材の臨界電流は、40A〜60Aと良好であった。
【0105】
これにより、切断部の回転の有無に関わらず、本発明のギャングカット方法により超電導線材を線幅加工すると、超電導線材の特性の低下を防止することができることがわかった。また、駆動部材により回転させた切断部により切断された超電導線材は、回転させなかった切断部により切断された超電導線材よりも臨界電流のばらつきが少なかったことから、超電導特性の低下の防止、および切断による超電導特性のばらつきの防止に貢献していることがわかった。
【実施例5】
【0106】
本発明による超電導線材の線幅加工方法の効果をさらに確認するべく、表4に示す加工方法により、以下の実施例16〜19のような、超電導線材の線幅加工方法を実施した。
【0107】
(実施例16〜19における超電導線材の線幅加工方法)
実施例16〜19の超電導線材の線幅加工方法では、基本的には実施例1と同様の線幅加工方法の構成を備えるが、刃先の角度θを変更する点において、実施例1の超電導線材の線幅加工方法と異なる。
【0108】
詳細には、超電導線材を準備する工程では、実施例1と基本的に同様であるが、実施例1の条件下において、刃先の角度θを20°から90°まで変更した。
【0109】
なお、線幅加工する前の超電導線材の幅は10mm、長さは50m、厚みは0.09mm、臨界電流は120Aであった。
【0110】
そして、加工工程(S30)において切断した超電導線材のうち両端部を除いた2つの超電導線材について、外観の観察と、臨界電流を測定した。その結果を表4に示す。
【0111】
【表4】

【0112】
(測定結果)
表4に示すように、刃先の角度を45°〜90°とした実施例16〜19の超電導線材の線幅加工方法により切断された超電導線材は、臨界電流の低下が少なかった。そのため、加工工程において刃先の角度について当該条件を備えることにより、超電導線材の線幅加工を行なっても超電導特性の低下を一層防止することができることがわかった。
【0113】
また、刃先の角度を20°とした実施例19は、外観において端部は変形したが、ギャングカット方法により線幅加工を行なっているので、臨界電流は少し低下したものの、比較的低い低下であった。
【0114】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の実施の形態1における超電導線材の線幅加工方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態1における超電導線材の線幅加工を示す概略模式図である。
【図3】(A)は、本発明の実施の形態1における切断部の刃先の角度を示す概略模式図であり、(B)は、刃先の角度が90°を示す概略模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1の変形例における超電導線材の線幅加工を示す概略模式図である。
【図5】本発明の実施の形態2における超電導線材の線幅加工を示す概略模式図である。
【図6】比較例1における超電導線材のシャーカット方法を示す概略模式図である。
【図7】比較例2における超電導線材のスコアーカット方法を示し、(A)は概略正面図であり、(B)は概略側面図である。
【符号の説明】
【0116】
11〜14,21〜30 切断部、15,16,31,32 加工部、17 上軸、18 下軸、19 支持部材、S 超電導線材、S1,S2 表面、C クリアランス、D 距離、L ラップ、θ 刃先の角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導線材を準備する工程と、
対向する2つの切断部を備える加工部により、前記超電導線材を切断する加工工程とを備え、
前記加工部は、前記2つの切断部の間に前記超電導線材を挟み込むように、前記超電導線材の幅方向に間隔を隔てて隣接するように少なくとも2組以上配置され、前記超電導線材の一方の表面に接触する前記切断部の接触位置は、前記超電導線材の他方の表面に接触する前記切断部の接触位置より前記超電導線材の幅方向の外側に位置している、超電導線材の線幅加工方法。
【請求項2】
前記加工部の間の距離を変更する変更工程をさらに備える、請求項1に記載の超電導線材の線幅加工方法。
【請求項3】
前記加工工程は、前記切断部において互いに対向する面が超電導線材の表面に対して垂直になった状態で前記超電導線材を切断する、請求項1または2に記載の超電導線材の線幅加工方法。
【請求項4】
前記加工工程において、前記加工部におけるクリアランスが0μm以上5μm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の超電導線材の線幅加工方法。
【請求項5】
前記加工工程において、前記加工部におけるラップが0mm以上0.3mm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の超電導線材の線幅加工方法。
【請求項6】
前記加工工程において、前記超電導線材の一方の表面に接触する前記切断部の間および前記超電導線材の他方の表面に接触する前記切断部の間にそれぞれ支持部材が配置され、
前記支持部材と、前記超電導線材を介して前記支持部材と対向するように配置されている前記切断部との距離が、前記超電導線材の厚みの1.0倍以上2.5倍以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の超電導線材の線幅加工方法。
【請求項7】
前記加工工程において、前記切断部の刃先の角度が45°以上90°以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の超電導線材の線幅加工方法。
【請求項8】
前記加工工程において、前記切断部が前記超電導線材の幅方向に延びる方向の軸を中心として回転可能であり、
前記切断部を回転させて前記超電導線材を切断する、請求項1〜7のいずれかに記載の超電導線材の線幅加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−287629(P2007−287629A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116773(P2006−116773)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超電導応用基盤技術研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)
【Fターム(参考)】