説明

超音波を用いた経皮浸透具

【課題】 安全な超音波の出力で充分な経皮浸透力を発揮することができるとともに、更に、機械的な振動により経皮浸透を促進させるとともに使用者に超音波が発生している実感を与えることを可能とする経皮浸透具を提供する。
【解決手段】 握り部11を兼ねるケース本体1の内部にケース本体1の内面に沿って超音波発振体14が配置されているとともに、ケース本体1の外側における超音波発振体14の対向位置に皮膚に接触させて超音波を発振するための超音波振動部15が備えられ、且つケース本体1の内部における超音波発振体14の近傍に出力軸21に偏心錘22を取り付けた回転電動機2が出力軸21を超音波発振体14における超音波発振方向に交差するように配置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波振動を用いて経皮に薬剤や美容液などの有効成分を含む溶剤を皮膚、脂肪組織、筋肉などに浸透させるための経皮浸透具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薬剤などに含まれている有効成分を経皮的に浸透させる手段としてイオンフォーレンス法などが知られており、その後、例えば特開平4−295362号公報、特表平8−502424号公報、特開平11−9701号公報などに提示されている。
【0003】
ところで、前記経皮的な薬剤などの浸透に際して、患者へ浸透させる度合いは超音波の発生する出力に委ねられるが、安全性も確保しなければならない。そこで、使用される超音波は例えば再表03/061753号公報に提示されているように1W/cm2以下であった。
【0004】
そのため、使用する薬剤、美容液の種類や使用者の個人的資質を含めた使用環境によっては充分な浸透効果が得られない場合があった。また、経皮浸透具の持ち手および仕様箇所を含めて、超音波の振動が経皮浸透具の使用者には伝わらないので浸透が実感として把握できない、という問題がある。
【特許文献1】特開平4−295362号公報
【特許文献2】特表平8−502424号公報
【特許文献3】特開平11−9701号公報
【特許文献4】再表03/061753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記のような従来の超音波を用いた経皮浸透具が有している問題点を解決するためになされたものであり、安全な超音波の出力で充分な経皮浸透力を発揮することができるとともに、更に、機械的な振動により経皮浸透を促進させるとともに使用者に超音波が発生している実感を与えることを可能とする経皮浸透具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するためになされた本発明である超音波を用いた経皮浸透具は、握り部を兼ねるケース本体の内部に前記ケース本体の内面に沿って超音波発振体が配置されているとともに、前記ケース本体の外側における超音波発振体の対向位置に皮膚に接触させて超音波を発振するための超音波振動部が備えられ、且つ前記前記ケース本体の内部における前記超音波発振体の近傍に出力軸に偏心錘を取り付けた回転電動機が前記出力軸を前記超音波発振体における超音波発振方向に交差するようにして配置されていることを特徴とする。
【0007】
前記ケース本体に配置された超音波振動部が超音波発振体により振動して所定の超音波を放射すると同時に出力軸が回転して偏心錘によって回転電動機が振動し、その機械的振動が前記ケース本体に伝達するので前記ケース本体に配置された超音波振動部が大きく振動して優れた経皮浸透効果を発揮させることができ、同時に、前記ケース本体が機械的振動をするので、ケース本体を握っている使用者にも超音波が発生している実感が伝えられる。
【0008】
また、本発明において、前記超音波振動部に弾性材により形成される平滑な当接部材を付設することにより超音波振動部と頭皮や皮膚とを密着させて超音波振動の伝達効率を上昇させることができ、前記当接部材に加熱部材を埋設することにより適用する箇所に所謂、温熱効果を併有させることができ、一層の浸透効果の向上を図ることができる。
【0009】
更に、前記前記当接部材の表面に多数の突起が突設されている場合や前記超音波振動部の表面にローラ部材が備えらている場合には、突起やローラが浸透箇所を刺激して皮膚や頭皮を拡大し、血行を良好にしたりすることにより浸透効果の向上が図れる。
【0010】
更にまた、本発明において、前記ケース本体の一部に前記超音波振動体が作動しているときに点灯する表示灯が付設されている場合には、超音波が発生していることを視覚により確認することも可能である。
【発明の効果】
【0011】
以上、本発明によれば、安全な範囲での超音波の出力を用いても機械的な振動を加えることにより充分な浸透力を発揮することができ、また、使用者は振動が手に伝わるので超音波により浸透させているという実感を体感することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に本発明における実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の好ましい実施の形態を示すものであり、全体が中空棒状で下部が握り部11を兼ねた例えば適宜硬質の合成樹脂材により形成されたケース本体1の内部にバッテリ12、超音波発生回路(図示せず)などを備えた電気回路基板13を内蔵するとともに、頂部側面の内面に沿って前記超音波発生回路からの印可される電圧により所定周波数の超音波を発する超音波発振体14が配置されている。
【0014】
また、ケース本体1における前記超音波発振体14の配置部分は円形の超音波振動部15を形成しており、その表面には例えばゴム材などの弾性材により形成された当接部材16が付設されている。
【0015】
更に、前記ケース本体1内部における前記超音波発振体14の近傍には出力軸21に偏心錘22を取り付けた前記電気回路基板13により回転制御される回転電動機2が前記出力軸21を前記超音波発振体14における超音波発振方向に直交するようにして配置されている。
【0016】
尚、図面中、符号17は前記電気回路基板13に配置した電源スイッチ18を操作するスイッチ釦、符号19は前記電気回路基板13に付設した発光ダイオードなどからなる表示灯、符号20はケース本体1に形成した前記表示灯19の透窓である。
【0017】
本実施の形態を使用するには、ケース本体1の握り部11を握って、スイッチ釦17をオン操作する。スイッチ釦17がオン操作されると電源スイッチ18がオン状態となり、前記バッテリ12から電源が前記電気回路基板13に供給され、電気回路基板13から前記回転電動機2に駆動電源が供給されて回転を始めるとともに、電気回路基板13に配置された表示灯19が点灯する。同時に電気回路基板13に配置された超音波発振回路(図示せず)から印可される電圧により超音波発振体14が所定周波数の超音波を発し、この振動が前記超音波伝達部15を介して当節部材16に伝達される。
【0018】
また、前記回転電動機2が回転して出力軸21に取り付けた偏心錘22が回転電動機2を振動させ、この機械振動が前記ケース本体1に形成した超音波伝達部15に伝達する。
【0019】
従って、使用者はそのままの状態で浸透させる頭皮や皮膚の部分に薬剤や美容液などの浸透させるゲル状体などを直接付着し、或いは、前記超音波伝達部15の表面に付設した当接部材16に付着させて頭皮や皮膚に密着させることにより超音波を介して前記ゲル状体などを浸透させる。
【0020】
このとき、本実施の形態では、前記超音波発振体14による安全な出力により発生している超音波振動と前記回転電動機2による機械的振動とが相俟って加わるので安全で充分な振動により経皮浸透が行われる。
【0021】
また、ケース本体1には前記回転電動機2の機械的な振動が加わるので、ケース本体1を握っている使用者は恰も超音波振動が発生しているような実感を得ることができ、加えて、表示灯19が点灯しているのでより視覚を通じても作動状態を実感することができる。
【0022】
図2乃至図4は本発明の異なる実施の形態における要部を示すものであり、図2に示した実施の形態は、前記超音波伝達部15の表面に付設した当接部材16に前記電気回路基板13に接続した加熱ヒータからなる加熱部材3を埋設したものであり、使用時に前記加熱部材3が発熱して当接部材16を介して当接する頭皮や皮膚を加熱することにより、頭皮や皮膚、更には脂肪や筋肉を暖めて活性化させることにより更に浸透効果を高めるという効果を発揮させるものである。
【0023】
本実施の形態は、単に加熱部材3を設けたというだけでなく当接部材16に直接、埋設したことにより、きわめて熱効率が良く、スイッチ釦17をオン操作したときに即座に発熱するとともに熱効率もよく無駄な放熱がなく、経済的であり、また、ケース本体1の外部に配置したことにより保守や交換もきわめて容易である等の利点を有している。
【0024】
また、図3に示した実施の形態は、前記超音波伝達部15の表面に付設した当接部材16の表面に多数の突起4を突設させたものであり、これらの突起4により当接部材16からの振動圧力が集中的に大きな圧力が作用するので安全な出力であってもと頭皮や皮膚に充分な浸透効果が働くことになる。また、これらの突起4が振動することによりマッサージ効果も期待でき、この点においても浸透効果の向上が期待できる。
【0025】
更に、図4に示した実施の形態は、前記超音波伝達部15の表面にローラ部材5が設置されているものであり、使用時には握っているケース本体1を図に示す上下方向へ往復動させて前記ローラ部材5の回転ローラ51を頭皮や皮膚の表面において転がしながら使用する。
【0026】
本実施の形態によれば、前記他の実施例と同様に超音波伝達部15からの超音波振動と、前記回転電動機2からの機械的振動と、前記回転ローラ51の押圧刺激との3つの刺激が相俟って頭皮や皮膚が活性化し、きわめて良好な経皮浸透効果を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の好ましい実施形態を示すもので、(a)は正面図、(b)は縦断面図である。
【図2】本発明の異なる実施形態の要部を示すもので、(a)は正面図、(b)は縦断面図である。
【図3】本発明の異なる実施形態の要部を示すもので、(a)は正面図、(b)は縦断面図である。
【図4】本発明の異なる実施形態の要部を示すもので、(a)は正面図、(b)は縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ケース本体、2 回転電動機、3 加熱部材、4 突起、5 ローラ部材、11 握り部、14 超音波発振体、15 超音波伝達部、16 当接部材、19 表示灯、21 出力軸、22 偏心錘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
握り部を兼ねるケース本体の内部に前記ケース本体の内面に沿って超音波発振体が配置されているとともに、前記ケース本体の超音波発振体の配置位置の外側部を皮膚に接触させて超音波を発振するための超音波伝達部とし、且つ前記ケース本体の内部における前記超音波発振体の近傍に出力軸に偏心錘を取り付けた回転電動機が前記出力軸を前記超音波発振体における超音波発振方向に交差するようにして配置されていることを特徴とする超音波を用いた経皮浸透具。
【請求項2】
前記超音波伝達部に弾性体からなる平滑な当接部材が付設されていることを特徴とする請求項1記載の超音波を用いた経皮浸透具。
【請求項3】
前記当接部材に加熱部材が埋設されていることを特徴とする請求項2記載の超音波を用いた経皮浸透具。
【請求項4】
前記当接部材の表面に多数の突起が突設されていることを特徴とする請求項2または3記載の超音波を用いた経皮浸透具。
【請求項5】
前記超音波伝達部の表面にローラ部材が備えられていることを特徴とする請求項1,2,3または4記載の超音波を用いた経皮浸透具。
【請求項6】
前記ケース本体の一部に前記超音波振動体が作動しているときに点灯する表示灯が付設されていることを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の超音波を用いた経皮浸透具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−247811(P2009−247811A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102845(P2008−102845)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000213817)朝日医理科株式会社 (13)
【Fターム(参考)】