説明

超音波イオン歯ブラシ

【課題】イオン作用を確実に得つつ、ブラシ部を常に効果的に超音波振動させる。
【解決手段】本体部10に、超音波発信器62と手元側電極15とが装備される。本体部10から伸びる取付脚部20の先端部に、互いに一体化された超音波振動子21と金属製の発振板22とが装備される。取付脚部20の外周に、ブラシ側電極兼受振体31を有するブラシ部30が着脱自在に取付けられ、取付状態では、ブラシ側電極兼受振体31と発振板22とが接触される。超音波発信器62のマイナス側出力端子が、超音波振動子21のうち発振板22側に接続され、超音波発信器62のプラス側出力端子が、超音波振動子21のうち発振板22とは反対側に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波とイオン作用とを利用した超音波イオン歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯ブラシの中には、特許文献1に示すように、超音波によるキャビテーション効果とイオン作用による歯垢分解効果とによって、歯磨き効果を高めるようにしたものがある。この特許文献1のものでは、超音波振動をブラシ部に与えるために、手指にて把持される本体部に、超音波信号発生手段と、超音波信号発生手段からの信号を受けて振動される超音波振動子とを装備させる一方、超音波振動子に連結された金属製の細長いホーンを、本体部の先端部より突出するように保持させて、このホーンを取り巻くようにしてブラシ部を本体部に対して着脱自在に嵌合させたものとなっている。つまり、本体部内の超音波振動子の振動を、ホーンを介してブラシ部に伝達するようにしてある。
【0003】
上記特許文献1に記載のものでは、イオン作用を得るために、本体部内にイオン電流の発生と電流の大きさ調整とを行うイオン電流制御部を設けて、上記本体部に対しては、外部に露出される手元側電極(プラス側電極)を設ける一方、ブラシ部に対しては、ホーンに対して取付けられたときにホーンに接触すると共に外部に露出するようにしてブラシ側電極(マイナス側電極)を装備したものとなっている。そして、イオン電流制御部のプラス側出力端子を上記手元側電極に接続する一方、イオン電流制御部のマイナス側出力端子を、上記ホーンを介してブラシ側電極に接続するようにしてある。このようにして、ホーンは、超音波の振動伝達機能とイオン電流供給用経路としての機能とを兼用したものとなっている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−41684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述の特許文献1に記載のものでは、超音波振動子からブラシ部への超音波振動の伝達を、細長いホーンを介して行うために、次のような種々の問題を生じる。すなわち、ブラシ部への超音波振動の伝達効果を十分確保するためには、ホーンの本体部への取付けをがたつきのないようにしっかりと行なう必要があるが、ホーンを十分に振動させようとすると、超音波振動子で発生させる振動の強度を高める必要があり、この分、超音波振動子や超音波信号発生手段の大型化をまねくことになる(本体部の大型化にもつながる)。また、ブラシ部を着脱する毎に、ブラシ部がホーンに対してその径方向から接触、離間されるために、長期の使用によってどうしてもホーンのがたつきを生じやすくなり、超音波振動の効果的な伝達という問題がより顕著になり易いものとなる。
【0006】
さらに、ブラシ部をホーンを取り巻くように取付けたときに、ホーンが、ブラシ側電極の接触によって曲げ方向の外力を少なからず受けることになるが、この外力の大きさはブラシ部の取付を変更する毎に微妙に変化するため、常に所望強さの超音波振動をブラシ部に与えることが難しいものとなる。このような問題回避のために、ブラシ側電極がホーンに対して極めて軽く接触されるように設定することも考えられるが、この場合は、ホーンがイオン電流の供給回路を兼用しているために、ブラシ側電極を確実にマイナス電極として機能させることが難しくなってしまうという別の問題を引き起こすことにもなりかねない。
【0007】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、イオン作用を確実に得つつ、ブラシ部を常に効果的に超音波振動させることのできるようにした超音波イオン歯ブラシおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明における超音波イオン歯ブラシにあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
内部に超音波信号発生手段が装備されると共に、手元側電極が外部に露出された状態で装備された本体部と、
前記本体部の先端部から細長く伸び、先端部に超音波振動子と金属製の発振板とが接触状態で装備された取付脚部と、
前記取付脚部の外周に着脱自在に嵌合され、外部に露出された状態でブラシ側電極兼受振体が設けられたブラシ部と、
を備え、
前記発振板は、前記超音波振動子を覆うようにして前記取付脚部の外部に露出しており、
前記ブラシ側電極兼受振体と発振板とは、前記ブラシ部を前記取付脚部に嵌合させたときに互いに接触されるように位置設定されており、
前記超音波振動子のうち前記発振板との接触面となる一面側が、前記超音波信号発生手段のマイナス側出力端子に接続され、
前記超音波振動子の他面側および前記手元側電極が、前記超音波信号発生手段のプラス側出力端子に接続されている、
ようにしてある。
【0009】
上記解決手法によれば、超音波振動子は、超音波信号発生手段からの超音波信号の入力によって振動されることになり、この超音波振動子の振動は、発振板によって共振されて、ブラシ側電極兼受振体つまりブラシ部に効果的に伝達されることになる。とりわけ、超音波振動子と発振板とブラシ側電極兼受振体とが極めて近い位置にあるので、ブラシ部を効果的に超音波振動させることができる。また、イオン電流(イオン作用を得るための電流)は、発振板を介してブラシ側電極兼受振体に確実に伝達されることになる。なお、イオン作用を得るための電流は、超音波信号発生手段によって発生されるので、別途独立してイオン電流発生手段を設ける場合に比して、コストや本体部の小型化の上でも好ましいものとなる。なお、超音波振動子を超音波信号発生手段のマイナス側出力端子に接続するには、超音波信号発生手段のマイナス側出力端子に接続されるマイナス側の接続コードを、直接超音波振動子に接続してもよいが、発振板に接続することもできる。
【0010】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2〜請求項7に記載のとおりである。すなわち、
前記ブラシ側電極兼受振体に、ブラシ毛が取付けられ、
前記ブラシ部を前記取付脚部に取付けた状態で、前記ブラシ側電極兼受振体と前記超音波振動子とで前記発振板を挟む状態となるように設定されている、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、ブラシ側電極兼受振体をブラシ毛の取付部として機能させつつ、このブラシ毛の極めて近くにおいて、共振される発振板を挟んで超音波振動子とブラシ側電極兼受振体とが位置する接近構造として、超音波振動を極めて効果的にブラシ毛に伝達することができる。
【0011】
前記取付脚部が、前記本体部内に連通された内孔を有するように構成されており、
前記超音波信号発生手段と前記超音波振動子とを接続するプラス側コードおよびマイナス側コードとが、それぞれ前記取付脚部の前記内孔を通して配設されている、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、各コードを、取付脚部内の内孔を有効に利用して簡単に配設することができる。
【0012】
前記取付脚部が、前記本体部とは別体に形成されて、該本体部に一体化されており、
前記取付脚部と前記本体部とは、それぞれ、その径方向に2つ割り構造とされた分割部材同士を接合することによって構成されている、
ようにしてある(請求項4対応)。この場合、取付脚部および本体部がそれぞれ径方向に2つ割り構造とされているので、取付脚部および本体部共に、組み込む部品をあらかじめ一方の分割部材に組み込んだ後、他方の分割部材を一方の分割部材に対して一体化すればよく、取付脚部や本体部への部品組付性向上の上で極めて効果的となる。また、取付脚部や本体部の製造そのものも、分割構造とすることなく一挙に形成する場合に比して容易となり、そのための金型の構造も簡単となって安価に製造する上で好ましいものとなる。
【0013】
前記ブラシ部は、その径方向に2分割された分割部材同士を接合することにより構成され、
前記ブラシ側電極兼受振体は、前記2つの分割部材のうち、ブラシ毛が設けられる側の一方の分割部材に対して一体的に設けられている、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、一方の分割部材に対してあらかじめブラシ側電極兼受振体を組み付けた後、他方の分割部材を一方の分割部材に対して一体化することができ、ブラシ部の製造を容易に行う上で好ましいものとなる。
【0014】
前記手元側電極と前記超音波信号発生手段のプラス側出力端子との間に、電流制御部が接続されている、ようにしてある(請求項6対応)。この場合、電流制御部によって、流れるイオン電流の大きさを所望の大きさ範囲に設定することができる。なお、電流制御部は、イオン電流の発生そのものを行う機能までは必要ないので、イオン電流発生機能を有する場合に比して小型化かつ安価なものとなる。
【0015】
前記超音波振動子が、前記発振板を介して前記超音波信号発生手段のマイナス側出力端子に接続されている、ようにしてある(請求項7対応)。この場合、発振板を超音波振動子の一面側における電極として有効に機能させることができ、また超音波信号発生手段のマイナス側出力端子と接続するためのマイナス側コードの接続作業の容易化等の上でも好ましいものとなる。
【0016】
前記目的を達成するため、本発明における超音波イオン歯ブラシの製造方法にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項8に記載のように、
請求項1に記載の超音波イオン歯ブラシを製造する方法であって、
前記本体部とは別体に形成されると共に径方向に2分割構成とされた前記取付脚部を構成するための第1取付脚部分割部材に対して、前記超音波振動子と前記発振板とを取付けると共に、該超音波振動子にプラス側コードおよびマイナス側コードが接続された状態を得る第1行程と、
前記第1行程の後に、前記取付脚部を構成するための第2取付脚部分割部材を前記第1取付脚部分割部材に対して接合して、前記各コードがそれぞれ基端部から外部に露出した状態の取付脚部を構成する第2行程と、
径方向に2分割構成とされた前記本体部を構成するための第1本体部分割部材に対して、前記超音波信号発生手段を組み込んで、該超音波信号発生手段のプラス側出力端子に前記プラス側コードを接続すると共に、該超音波信号発生手段のマイナス側出力端子に前記マイナス側コードを接続した状態を得る第3行程と、
前記第3行程の後に、該本体部を構成するための第2本体部分割部材を前記第1本体部分割部材に対して接合する第4行程と、
前記第4行程の後に、前記取付脚部を前記本体部に接合する第5行程と、
を備えているようにしてある。
【0017】
上記解決手法によれば、請求項1および請求項3に記載の超音波イオン歯ブラシの好ましい製造方法が提供される。
【0018】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項9に記載のとおりである。すなわち、
前記本体部内には、充電池および人体に感知させるための擬似振動を与えるためのモータが組み込まれており、
前記第3行程において、第1本体部分割部材に対して、前記充電池および前記モータが組み込まれる、
ようにしてある(請求項9対応)。この場合、本体部内に装備される充電池やモータという大型部材を、第2本体部分割部材が一体化される前にあらかじめ第1本体部分割部材に組み付けるので、本体部の製造をより容易にする等の上で好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ブラシ部へ確実にイオン電流を供給できるようにしつつ、長期に渡ってブラシ部へ効果的に超音波振動を与えることができる。また、超音波信号発生手段によってイオン電流発生手段としての機能を兼用させて、コストや小型化等の上でも好ましいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1、図2において、10は本体部、20は取付脚部、30はブラシ部である。本体部10と取付脚部20とは互いに一体化されていて、本体部10の先端部から取付脚部20が細長く伸びている。ブラシ部30は、本体部10および取付脚部20とは別体に形成されて、取付脚部20の外周に着脱自在に嵌合されるようになっており、嵌合された取付状態が図1に示され、嵌合解除された取外し状態が図2に示される。なお、後述するように、本体部10と取付脚部20とは別々に組み立てられた後に、取付脚部20の基端部を本体部10の先端部内に挿入した状態で互いに一体化されている(例えば、接着材、加熱融着やねじ等の固定具による一体化)。
【0021】
本体部10は、その基端部側が閉じられた有底筒状とされて、その内部には、大別して、充電池11,充電池11へ間接的に充電電流を供給するための充電用コイル12,制御基板13、モータ17,イオン電流制御のための電流制御基板18が内蔵されている。モータ17は、本体部10を把持した使用者(人体)に対して振動を体感させるための擬似振動(超音波振動よりも周波数が十分に小さい振動)を与えるためのもので、例えばその回転軸に偏心して重りが取付けられた構成とされている。また、本体部10には、それぞれその外部に露出するように、ON、OFF用のスイッチ14と、プラス側電極となる手元側電極15と、LEDからなる作動確認用ランプ16とが取付けられている。手元側電極15は、本体部10を歯磨きのために手指で把持したときに、手指に接触されるように位置設定されている。ランプ16は、スイッチ14がONされることにより、超音波振動が発生された状態でかつイオン電流が供給される状態となっているときに点灯され、スイッチ14がOFFされることにより消灯される。
【0022】
本体部10(本体ケーシング)は、特に図9に示すように、合成樹脂によって形成されると共に径方向に2分割構造とされて、断面略半円弧状の第1本体部分割部材10Aと第2本体部分割部材10Bとを互いに接着、加熱融着あるいはねじ等の固定具によって一体化されている。このような本体部10は、例えば、次のようにして製造することができる。すなわち、図9に示すように、第2本体部分割部材10Bに対して一体化される前の第1本体部分割部材10Aに対して、あらかじめ充電池11,充電用コイル12,制御基板13、手元側電極15、モータ17,電流制御基板18が組み込まれる。一方、第2本体部分割部材10Bには、あらかじめスイッチ14、ランプ16が組み込まれる。この後、第1本体部分割部材10Aに対して第2本体部分割部材10Bを一体化することにより、図1,図2に示すような本体部10が得られる。なお、後述する取付脚部20との一体化のための組立作業を容易にする等の観点から、制御基板13に構成される後述する超音波信号発生手段のプラス側出力端子に対しては、第2プラス側コード45の一端部が接続され、そのマイナス側出力端子に対しては第2マイナス側コード46の一端部が接続され、各コード45,46の他端部は、取付脚部20から伸びるコード41,42への接続のために、本体部10の先端部付近に位置するようにされる。
【0023】
ブラシ部30の詳細が、図3,図4に示される。実施形態では、ブラシ部30は、合成樹脂によって形成されると共に径方向の2分割された分割構造とされて、第1ブラシ部分割部材30Aと第2ブラシ部分割部材30Bとを互いに接着あるいは加熱融着することによって構成されている。このブラシ部30は、先端部(図3左方端部)が閉じられると共に基端部が開口された筒状に形成されて、取付脚部20への嵌合時(取付時)には、その内孔30a内に取付脚部側20が挿入されることになる。
【0024】
ブラシ部30の先端部に構成されたヘッド部30bには、ブラシ側電極兼受振体31が一体化されている。このブラシ側電極兼受振体31は、例えばステンレスやジュラルミン等の金属製とされて、その一面側が上記内孔30aに露出される一方、その他面側が外部に露出されている。このブラシ側電極兼受振体31には、外部に向けて開口するように複数の取付孔32が形成されている。また、ヘッド部30bのうちブラシ側電極兼受振体31の周囲にも、外部に向けて開口するように多数の取付孔33が形成されている。そして、各取付孔32,33には、それぞれブラシ毛34が植毛されている。上記ブラシ側電極兼受振体31や取付孔33,34は、第1ブラシ部分割部材30Aにのみ設けられている。なお、図4には、ブラシ側電極兼受振体31と共に、ブラシ毛34が除去された状態での各取付孔33,34の配置例が示される。
【0025】
ブラシ部30を製造するには、まず、各ブラシ部分割部材30Aと30Bとを一体化する前の状態において、あらかじめ、第1ブラシ部分割部材30Aに対して、ブラシ側電極兼受振体31を取付ける(一体化する)と共に、その各取付孔33,34にブラシ毛34を植毛した状態を得る。この後、2つのブラシ部分割部材30Aと30Bとが一体化されて、図1,図2に示す状態のブラシ部30が得られることになる。なお、ブラシ部30を、30Aと30Bとの2分割構成とすることなく一体成形することもできる。
【0026】
図5〜図7は、本体部10に対して一体化される前の状態での取付脚部20が示され、特に図7にはその分解構造が示される。取付脚部20は、合成樹脂によって形成されると共に径方向に2分割構造とされて、第1取付脚部分割部材20Aと第2取付脚部分割部材20Bとを互いに接着材による接着、加熱融着することによって一体化されている。このような取付脚部20は、先端部が閉じられると共に基端部が開口された筒状に形成されて、内孔20aを有している。そして、取付脚部20を本体部10に対して一体化した状態では、図11に示すように、内孔20aが本体部10内に連通されるようになっている。
【0027】
取付脚部20の先端部には、超音波振動子21と発振板22とが組み込まれている。超音波振動子21は、既知の適宜の部材(例えば圧電セラミックス)によって構成されて、両面間に電圧を印可することによって超音波振動される。発振板22は、ステンレスやジュラルミン等の金属製とされて、超音波振動子21が振動されたときに共振されるもので、その一面側が外部に露出した状態で取付脚部20に固定されている。この発振板22の他面側、つまり内孔20a側の面に対して、超音波振動子21が導電性および誘電性を有する接着材によって一体化されている(ハンダ付けや、金属製のねじ等の固定具を用いた一体化等、一体化の手法としては適宜選択できる)。発振板22は、超音波振動子21を外部から覆って、超音波振動子21を外部と遮断するようになっている(発振板22が、取付脚部20の外表面の一部を構成して、水分に弱い超音波振動子21を液密に覆っている)。
【0028】
超音波振動子21には、第1プラス側コード41の一端部が接続され、この第1プラス側コード41を介して、超音波振動子21が後述する超音波信号発生手段のプラス側出力端子に接続される。また、発振板22には、第1マイナス側コード42の一端部が接続されて、この第1マイナス側コード42を介して、発振板22が後述する超音波信号発生手段のマイナス側出力端子に接続される。つまり、超音波振動子21のうち発振板22が接触される側の一面側がマイナス側電極となり、超音波振動子21の他面側がプラス側電極とされて、発振板22が超音波振動子21のマイナス側電極を兼用したものとなっている。なお、マイナス側コード42を、発振板22を介することなく、超音波振動子21に直接接続してもよい。
【0029】
上述のような超音波振動子21および発振板22を有する取付脚部20は、例えば、次のようにして製造することができる。すなわち、図7に示すように、第2ブラシ部分割部材20Bに対して一体化される前の第1取付脚部分割部材20Aに対して、あらかじめセット体として一体化された超音波振動子21と発振板22とが例えば接着により一体化される。この後、第1ブラシ部分割部材20Aに対して第2取付脚部分割部材20Bを一体化することにより、図1,図2、図5に示すような超音波振動子21と発振板22とが組み込まれた取付脚部20が得られる。なお、上記各コード41,42は、超音波振動子21や発振板22を第1取付脚部分割部材20Aに対して組み付ける前にあらかじめ、超音波振動子21、発振板22に対して接続しておくのが好ましい。なお、取付脚部20が本体部10に一体化される前の状態では、図9,図10に示すように、上記各コード41,42は、取付脚部20の基端部側から外部に延出された状態とされる。なお、取付脚部20は、分割部材20Aと20Bとを接合した状態(あるいは一体成形された直後の状態)ではその先端が開口された形状とされて、この先端開口を別途シリコン等によって塞いだ構成とすることもできる。
【0030】
図12には、各部品の電気的接続関係が示される。この図12において、制御基板13には、各種機能を果たす機能部61〜64が構成される。61は、充電制御部であり、充電制御部61は、充電用コイル12を介しての商用電源から充電池11への充電の制御と、充電池11からの消費電力供給の制御とを行う。62は、超音波信号発生手段となる超音波発振器であり、この超音波発振器62のプラス側出力端子が、超音波振動子21に接続されると共に、手元側電極15に接続される。
【0031】
64は、メインの制御部であり、メイン制御部64は、スイッチ14がONされると、超音波信号発生手段62を作動させ、イオン電流制御部としての電流制御基板18を作動させ、しかもランプ16を点灯させる。また、63は、タイマ部であって、このタイマ部63は、スイッチ14がONとなった後、所定時間(例えば10分)をカウントして、所定時間がカウントされた時点で、メイン制御部64は、各制御部62,18の作動を停止させると共に、ランプ16を消灯させる(スイッチ14がOFFされたときも同じ)。勿論、上記イオン電流制御部としての電流制御基板18は、超音波発振器62から手元側電極15へ流れる電流の大きさを制御する(イオン作用を得るための電流発生そのものは、超音波発振器62を利用している)。
【0032】
前述した第1プラス側コード41と第2プラス側コード45とを接続することにより、超音波発振器62のプラス側出力端子が超音波振動子21に接続されることになる。また、前述した第1マイナス側コード42と第2マイナス側コード46とを接続することにより、超音波発振器62のマイナス側出力端子が発振板22に接続されることになる。超音波発振器62からの超音波周波数の駆動電流が超音波振動子21に印可されることにより、超音波振動子21が超音波振動され、この振動が発振板22によって共振されることになる。
【0033】
本体部10に対して取付脚部20を、電気的接続関係を含めて結合するための好ましい例について、図9を参照しつつ説明する。まず、取付脚部20は、前述した製造方法によって製造して、その各コード41,42が基端部から延出された状態で準備される。また、本体部10における第1本体部分割部材10Aに対して、充電池11,充電コイル12,制御基板13、手元側電極15、モータ17,電流制御基板18を組み込んだ状態とし、この状態で、制御基板13(のうち超音波発振器62)からコード45,46が伸びた状態とする。
【0034】
以上の準備段階後に、まず、手順1として示すように、コード41と45とが接続されると共に、コード42と46とが接続される(超音波発振器62に対する超音波振動子21と発振板22との電気的接続関係の完了)。このコード同士の接続作業は、第2本体部分割部材10Bに邪魔されることなく、周囲が大きく開けた広い作業空間を利用して容易に行うことができる。
【0035】
次いで、手順2として示すように、第2本体部分割部材10Bを、第1本体部分割部材10Aに対して一体化する。その後、手順3として示すように、取付脚部20の基端部を本体部10の先端部内に挿入した状態で、取付脚部20と本体部10とを一体化(例えば接着材による接着や、加熱融着)する。これにより、図12に示す電気的接続関係を満足した状態でもって、図1,図2に示す本体部10と取付脚部20とが一体化された状態が得られる。なお、取付脚部20の基端部を本体部10に所定深さ挿入したときに、凹凸嵌合により係止されてそれ以上の挿入が規制されるようになっており、これにより、取付脚部20が本体部10に対して所定の挿入深さ位置でもってきちんと位置決めされた状態で、本体部10と取付脚部20とが一体化される。また、本体部10に対する取付脚部20の周方向の位置決めは、図10に示すように、取付脚部20の基端部に形成された舌片状の突起部20cが本体部10の先端部に形成された切欠部10aに挿入されることによって達成される。なお、ブラシ部30の取付脚部20への取付けも、凹凸嵌合を利用することにより、ブラシ部30を取付脚部20に対して所定深さまで嵌合、挿入した状態で係止されて位置決めされる。
【0036】
以上のような構成の超音波イオン歯ブラシの使用方法については、特許文献1に記載の場合と同様であるので、簡単に説明する。まず、使用に際しては、個人毎に用意されるブラシ部30を取付脚部20に嵌合させた状態とする。次いで、スイッチ14をONにし、手指が手元側電極15に触れるようにして本体部10を把持した状態で、ブラシ毛が歯や歯ぐきに接触するようにして、歯磨きを行えばよい。歯磨きを行っているとき、超音波振動子21の振動が、発振板22で共振されて、ブラシ部30(特にブラシ側電極兼受振体31やブラシ毛34)に効果的に伝達されることになる。また、歯磨き中に、口腔内の唾液を介して手元側電極15とブラシ側電極兼受振体31との間に電流が流れて、歯垢のイオン結合が緩和、分解されることになる。
【0037】
図13は、超音波振動子21と発振板22との変形例を示すものである。本例では、発振板22が、超音波振動子21よりも小面積とされた第1発振板22Aと、超音波振動子21よりも大面積とされた第2発振板22Bとの分割構成とされている。そして、第1発振板22Aを超音波振動子21と第2発振板22Bとで挟むようにして、この3つの部材21,22A、22Bが一体化されている。そして、マイナス側コード42が、超音波振動子21に直接接続されている。本実施形態では、各コード41,42がそれぞれ直接超音波照射装置21に接続されているので、発振板22(22A)と超音波振動子21とが剥離された場合であっても超音波振動を確実に発生させることができる(超音波振動子21のうち第1発振板22Aによって被覆されない部分に対してマイナス側コード42を接続することが可能となる)。なお、第1発振板22Aと第2発振板22Bとを一体成形してもよい(この場合は、超音波振動子21に対してマイナス側コード42を接続した後に、発振板22(22Aと22Bとの一体成形品)を超音波振動子21に一体化すればよい。
【0038】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。本体部10と取付脚部20とを一体成形するようにしてもよく、この場合、例えば本体部10をその長手方向での分割構造として、内部への各種部品の組込み等を行うこともできる。取付脚部20は、その径方向に分割構造とすることなく一体成形してもよく、この場合は、例えば、取付脚部20の先端部に開口部を形成して、この開口部を通して、あらかじめ一体化されると共にコード41,42が接続されている超音波振動子21と発振板22とのセット体を組み込むようにすることもできる。ブラシ側電極兼受振体31を、ブラシ毛34の取付位置とは相違する位置に設けるようにしてもよく、例えば、ブラシ部30におけるヘッド部30bの側面や背面に露出するように位置設定してもよく、この他、ヘッド部30bではなくてその近傍部分(ただし口腔内に挿入される部分)に位置設定してもよい。
【0039】
マイナス側コード42を、直接超音波振動子21に接続すると共に、発振板22にも直接接続するようにしてもよい(図13の場合は22Bに接続するのが好ましい)。プラス側コードを、41と45との長手方向の分割構成とすることなく、第1コード41のみによって構成してもよい(第1コード41が製造工程において直接超音波発信器62のプラス側端子に接続される)。同様に、マイナス側コードを、42と46との長手方向の分割構成とすることなく、第1コード42のみによって構成してもよい(第1コード42が製造工程において直接超音波発信器62のマイナス側端子に接続される)。制御基板13と18とを1枚の基板にまとめて構成するようにしてもよく、あるいは全体として3以上の基板に分割した構成としてもよい。手元側電極15に供給される電流は、直流、交流のいずれであってもよい。また、超音波発信器62から供給される電流も直流あるいは交流のいずれであってもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明が適用された歯ブラシの一例を示すもので、ブラシ部を取付脚部に取付けた状態での側面図。
【図2】図1の状態からブラシ部を取付脚部から取外した状態を示す側面図。
【図3】2分割構造とされたブラシ部の分解側面断面図。
【図4】ブラシ側電極兼受振体およびブラシ毛の取付孔の配置例を示すもので、図3の矢印A方向から見た図。
【図5】取付脚部の先端部の状態を示す側面図。
【図6】取付脚部の先端部を発振板側から見た図。
【図7】取付脚部の先端部の詳細を示す側面断面図。
【図8】取付脚部にブラシ部を取付けた状態での超音波振動子と発振板とブラシ側電極兼受振体との配置関係を示す拡大側面断面図。
【図9】2分割構造とされた本体部を分解して示すと共に、本体部に対して取付脚部を一体化するまでの手順を示す側面断面図。
【図10】取付脚部と本体部とを一体化する直前の状態を示す平面図。
【図11】本体部と取付脚部との結合部分を示す拡大側面断面図。
【図12】電気的な接続関係を模式的に示す回路図。
【図13】超音波振動子部分の変形例を示す要部断面図。
【符号の説明】
【0041】
10:本体部
10A:第1本体部分割部材
10B:第2本体部分割部材
11:充電池
13:制御基板
17:モータ
18:電流制御基板(イオン電流制御部)
20:取付脚部
20a:内孔
21:超音波振動子
22:発振板
30:ブラシ部
31:ブラシ側電極兼受振体
41:第1プラス側コード
42:第1マイナス側コード
45:第2プラス側コード
46:第2マイナス側コード
62:超音波発振器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に超音波信号発生手段が装備されると共に、手元側電極が外部に露出された状態で装備された本体部と、
前記本体部の先端部から細長く伸び、先端部に超音波振動子と金属製の発振板とが接触状態で装備された取付脚部と、
前記取付脚部の外周に着脱自在に嵌合され、外部に露出された状態でブラシ側電極兼受振体が設けられたブラシ部と、
を備え、
前記発振板は、前記超音波振動子を覆うようにして前記取付脚部の外部に露出しており、
前記ブラシ側電極兼受振体と発振板とは、前記ブラシ部を前記取付脚部に嵌合させたときに互いに接触されるように位置設定されており、
前記超音波振動子のうち前記発振板との接触面となる一面側が、前記超音波信号発生手段のマイナス側出力端子に接続され、
前記超音波振動子の他面側および前記手元側電極が、前記超音波信号発生手段のプラス側出力端子に接続されている、
ことを特徴とする超音波イオン歯ブラシ。
【請求項2】
請求項1において、
前記ブラシ側電極兼受振体に、ブラシ毛が取付けられ、
前記ブラシ部を前記取付脚部に取付けた状態で、前記ブラシ側電極兼受振体と前記超音波振動子とで前記発振板を挟む状態となるように設定されている、
ことを特徴とする超音波イオン歯ブラシ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記取付脚部が、前記本体部内に連通された内孔を有するように構成されており、
前記超音波信号発生手段と前記超音波振動子とを接続するプラス側コードおよびマイナス側コードとが、それぞれ前記取付脚部の前記内孔を通して配設されている、
ことを特徴とする超音波イオン歯ブラシ。
【請求項4】
請求項3において、
前記取付脚部が、前記本体部とは別体に形成されて、該本体部に一体化されており、
前記取付脚部と前記本体部とは、それぞれ、その径方向に2つ割り構造とされた分割部材同士を接合することによって構成されている、
ことを特徴とする超音波イオン歯ブラシ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記ブラシ部は、その径方向に2分割された分割部材同士を接合することにより構成され、
前記ブラシ側電極兼受振体は、前記2つの分割部材のうち、ブラシ毛が設けられる側の一方の分割部材に対して一体的に設けられている、
ことを特徴とする超音波イオン歯ブラシ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
前記手元側電極と前記超音波信号発生手段のプラス側出力端子との間に、電流制御部が接続されている、ことを特徴とする超音波イオン歯ブラシ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
前記超音波振動子が、前記発振板を介して前記超音波信号発生手段のマイナス側出力端子に接続されている、ことを特徴とする超音波イオン歯ブラシ。
【請求項8】
請求項1に記載の超音波イオン歯ブラシを製造する方法であって、
前記本体部とは別体に形成されると共に径方向に2分割構成とされた前記取付脚部を構成するための第1取付脚部分割部材に対して、前記超音波振動子と前記発振板とを取付けると共に、該超音波振動子にプラス側コードおよびマイナス側コードが接続された状態を得る第1行程と、
前記第1行程の後に、前記取付脚部を構成するための第2取付脚部分割部材を前記第1取付脚部分割部材に対して接合して、前記各コードがそれぞれ基端部から外部に露出した状態の取付脚部を構成する第2行程と、
径方向に2分割構成とされた前記本体部を構成するための第1本体部分割部材に対して、前記超音波信号発生手段を組み込んで、該超音波信号発生手段のプラス側出力端子に前記プラス側コードを接続すると共に、該超音波信号発生手段のマイナス側出力端子に前記マイナス側コードを接続した状態を得る第3行程と、
前記第3行程の後に、該本体部を構成するための第2本体部分割部材を前記第1本体部分割部材に対して接合する第4行程と、
前記第4行程の後に、前記取付脚部を前記本体部に接合する第5行程と、
を備えていることを特徴とする超音波イオン歯ブラシの製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記本体部内には、充電池および人体に感知させるための擬似振動を与えるためのモータが組み込まれており、
前記第3行程において、第1本体部分割部材に対して、前記充電池および前記モータが組み込まれる、
ことを特徴とする超音波イオン歯ブラシの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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