説明

超音波センサシステム

【課題】コストを抑えつつ検知エリア内における対象物の位置を検出することのできる超音波センサシステムを提供する。
【解決手段】対象物に向けて所定の周期で超音波を送波し且つ反射波を受波するマイクロホン10と、マイクロホン10で送受波する超音波を電気信号に変換する信号処理部11とを有する超音波センサ1と、超音波センサ1で得られた電気信号に基づいて対象物の位置を検出する制御装置2とを備え、制御装置2は、超音波センサ1での超音波の送受波に基づいて対象物との間の距離である検出距離を所定の周期で演算する演算部20と、少なくとも1周期前の検出距離の情報を記憶する記憶部21とを有し、演算部20は、対象物と並行に移動している状態において、現在の超音波センサ1と対象物との間の現在の検出距離X2の情報と、1周期前の超音波センサ1と対象物との間の過去の検出距離X1の情報とから対象物の位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサを用いて対象物の位置を検出する超音波センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、駐車車両間に形成された駐車スペース(駐車領域)の側方を車両が通過した後に、該車両の停止位置から該駐車スペースまで該車両の駐車運転を支援する駐車支援装置が知られており、例えば特許文献1に開示されている。この駐車支援装置は、車両の駐車支援を制御する駐車支援ECUと、車両周囲の物体を検出する複数の距離センサである超音波センサとを備える。超音波センサは、既に駐車された2台の車両間に形成された駐車スペース前を通過する際に、当該駐車スペースへ超音波を放射することで、当該駐車スペースの奥行き及び幅を検出する。
【0003】
より具体的には、超音波センサは、2台の車両のうち、走行方向手前に駐車された車両の前方コーナー部と、奥側に駐車された車両の前方コーナー部とを検出することで、駐車スペースの幅を検出する。また、超音波センサは、駐車スペースの輪止めを検出することで、駐車スペースの奥行きを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2009/060663
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例では、超音波センサにより駐車車両のコーナー部を検出しているが、実際には超音波センサから対象物である駐車車両までの距離しか把握できない。このため、駐車車両のコーナー部が超音波センサの検知エリア内に存在するか否かは検出できるものの、駐車車両のコーナー部が検知エリア内のどの位置に存在するかまでは検出することができないという問題があった。
【0006】
このため、駐車領域を挟んだ2台の車両の位置を把握できず、本来であれば駐車可能な程度の十分な駐車領域が存在するにも関わらず、超音波センサの検出誤差によって駐車領域を実際よりも狭いものとして検出し、駐車不可能と判定する虞があった。この問題点を解消するために、マイクロホンを2つ並べて超音波センサを構成することで対象物の位置を検出することも可能ではあるが、マイクロホン及び信号処理部を新たに設ける必要があるため、コストが増大するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、コストを抑えつつ検知エリア内における対象物の位置を検出することのできる超音波センサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の超音波センサシステムは、対象物に向けて所定の周期で超音波を送波し且つ前記対象物からの反射波を受波するマイクロホンと、前記マイクロホンで送受波する超音波を電気信号に変換する信号処理部とを有する超音波センサと、前記超音波センサで得られた前記電気信号に基づいて前記対象物の位置を検出する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記超音波センサでの超音波の送受波に基づいて前記対象物との間の距離である検出距離を前記所定の周期で演算する演算部と、少なくとも1周期前の前記検出距離の情報を記憶する記憶部とを有し、前記演算部は、前記対象物と並行に移動している状態において、前記演算部で測定された現在の前記超音波センサと前記対象物との間の現在の検出距離の情報と、前記記憶部に記憶された1周期前の前記超音波センサと前記対象物との間の過去の検出距離の情報とから前記対象物の位置を検出することを特徴とする。
【0009】
この超音波センサシステムにおいて、前記演算部は、前記現在の距離情報と前記過去の距離情報との差分の絶対値が第1の閾値を上回ると、前記対象物が駐車車両のコーナー部であって且つ前記コーナー部を平面視で円弧と推定し、前記超音波センサの前記1周期における移動距離の情報と、前記現在の検出距離の情報と、前記過去の検出距離の情報とに基づいて、前記コーナー部の半径、及び前記コーナー部の中心と現在の前記超音波センサとを結ぶ直線が前記超音波センサの軌道との間で為す検出角度を演算し、前記コーナー部の半径及び前記検出角度に基づいて前記コーナー部の位置を検出することが好ましい。
【0010】
この超音波センサシステムにおいて、前記演算部は、前記現在の距離情報と前記過去の距離情報との差分の絶対値が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を上回ると、前記対象物が壁の角部であると推定し、前記1周期前の前記超音波センサの位置を前記壁の角部の位置として検出することが好ましい。
【0011】
この超音波センサシステムにおいて、前記演算部は、前記対象物の位置の情報に基づいて駐車スペースを推定し、且つ前記駐車スペースに駐車可能であるか否かを判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、コストを抑えつつ検知エリア内における対象物の位置を検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る超音波センサシステムの実施形態を示す図で、(a)はシステム概略図で、(b)は対象物が駐車車両である場合の検出方法の説明図である。
【図2】同上の超音波センサシステムにおいて、対象物が壁である場合の検出方法の説明図である。
【図3】(a)は同上の超音波センサシステムにおける駐車スペースの検出範囲を示す図で、(b)は従来の超音波センサシステムにおける駐車スペースの検出範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る超音波センサシステムの実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態は、図1(a)に示すように、利用者が運転する運転車両5(図3参照)の側方に設けられる超音波センサ1と、超音波センサ1で得られた電気信号に基づいて対象物の位置を検出する制御装置2とで構成される。
【0015】
超音波センサ1は、図1(a)に示すように、対象物に向けて超音波を送波するとともに、対象物で反射した超音波を受波するマイクロホン10を備える。また、超音波センサ1は、マイクロホン10を介して超音波を所定の周期で送波させるとともに、マイクロホン10を介して反射波を電気信号に変換して後述の制御装置2に出力する信号処理部11を備える。なお、マイクロホン10は、自身の正面に向けての音波の指向性が鋭いものを用いるのが望ましい。超音波センサ1は、マイクロホン10と、信号処理部11を実装した基板(図示せず)とをハウジング12に収納して構成され、運転車両5の例えば前側部に取り付けられる。そして、超音波センサ1は、図3(a)に示すように、自身の前方、すなわち、運転車両5の軌道と垂直な向きに超音波を送波する。
【0016】
制御装置2は、例えばマイクロコンピュータから成り、演算部20と、記憶部21とを有する。演算部20は、超音波センサ1において超音波を送波してから受波するまでの時間に基づいて、超音波センサ1から対象物までの最短距離(以下、「検出距離」と呼ぶ)を所定の周期で演算する。そして、演算部20は、得られた検出距離の情報を記憶部21に記憶させる。ここで、記憶部21では、演算部20での演算時において1周期前の過去の検出距離の情報が少なくとも記憶されていればよく、それ以前に演算された検出距離の情報を消去するようにしてもよい。
【0017】
なお、演算部20には、運転車両5に搭載された車速センサ(図示せず)で測定された運転車両5の車速情報(運転車両の時速など)が入力されている。演算部20は、超音波センサ1から超音波を送波させる所定の周期と、車速センサより得られた運転車両5の車速情報とに基づいて、1周期における超音波センサ1の移動距離X0を演算する。すなわち、演算部20は、図1(b)に示すように、1周期前の過去の超音波センサ1の位置から現在の超音波センサ1の位置までの移動距離X0を演算する。
【0018】
以下、対象物が駐車車両3である場合の本実施形態の動作について図面を用いて説明する。なお、以下の説明では、図3(a)に示すように2台の駐車車両3が駐車スペースA1を挟んで駐車されており、駐車車両3と並行する形で運転車両5が一定速度で移動することを前提とする。図1(b)に示すように、超音波センサ1は、所定の周期で超音波を前方へと送波し、検知エリア内に駐車車両3が存在する場合には、その反射波を受波する。そして、制御装置2の演算部20では、超音波センサ1の超音波の送受波に要する時間に基づいて検出距離を演算し、記憶部21に記憶させる。
【0019】
また、演算部20では、今回の演算で得られた現在の検出距離X2と、記憶部21に記憶された1周期前の過去の検出距離X1との差分の絶対値を演算する。ここで、超音波センサ1が駐車車両3のコーナー部30の正面に差し掛かるまでは、駐車車両3と超音波センサ1との間の距離はほぼ一定となるため、上記の差分の絶対値はほぼ零となる。一方、超音波センサ1が駐車車両3のコーナー部30の正面に差し掛かると、駐車車両3と超音波センサ1との間の距離が長くなるため、過去の検出距離X1よりも現在の検出距離X2の方が長くなる。演算部20では、上記の差分の絶対値が第1の閾値C1を超える(すなわち、X2−X1>C1)と、超音波センサ1が駐車車両3のコーナー部30に差し掛かったと判定する。
【0020】
そして、演算部20では、駐車車両3のコーナー部30を平面視で半径r1の円の円弧と推定し、且つその半径r1を演算する。また、演算部20は、コーナー部30の中心と現在の超音波センサ1とを結ぶ直線が運転車両5の直線軌道(超音波センサ1の軌道)との間で為す角度θ1(以下、「検出角度θ1」と呼ぶ)を演算する。具体的には、半径r1及び検出角度θ1は、移動距離X0と、過去の検出距離X1と、現在の検出距離X2とを用いて次式のように表される。なお、次式は、過去の超音波センサ1の位置と、現在の超音波センサ1の位置と、上記円の中心とが為す直角三角形において、三平方の定理及び三角関数を用いることにより導出することができる。
【0021】
【数1】

【0022】
上式で求めた半径r1及び検出角度θ1、並びに現在の検出距離X2を用いることにより、演算部20では、現在の超音波センサ1に対する駐車車両3のコーナー部30の位置を検出することができる。以下、上記の動作を繰り返すことにより、図3(a)の白抜きの丸で示すように、駐車車両3のコーナー部30の位置を検出することができる。勿論、駐車スペースA1を挟んだ他方の駐車車両3においても、上記と同様に、移動距離X0と、過去の検出距離X1と、現在の検出距離X2とを用いて駐車車両3のコーナー部30の位置を検出することができる。そして、演算部20は、各駐車車両3のコーナー部30の位置情報に基づいて駐車スペースA1を推定し、予め記憶してある運転車両5の長さと比較することで、当該駐車スペースA1に駐車可能であるか否かを判定する。
【0023】
上述のように、本実施形態では、過去の超音波センサ1の検出距離X1と、現在の超音波センサ1の検出距離X2と、移動距離X0とを用いることで駐車車両3のコーナー部30の位置(検知エリア内における対象物の位置)を検出することができる。このため、図3(a)に示すように、従来と比較して2台の駐車車両3の間の駐車スペースA1を正確に検出することができる。したがって、本実施形態では、図3(b)に示すように、本来駐車可能な十分なスペースがあるにも関わらず、駐車スペースを狭い領域A2であると誤って判定する可能性を小さくすることができる。また、本実施形態では、従来のようにマイクロホンを2つ用いることなく駐車車両3のコーナー部30の位置を検出することができるため、従来と比較してコストを抑えることができる。
【0024】
次に、対象物が壁4である場合の本実施形態の動作について図面を用いて説明する。図2に示すように、対象物が壁4の場合、超音波センサ1が壁4の角部40の正面に差し掛かるまでは、壁4と超音波センサ1との間の距離はほぼ一定となるため、上記の差分の絶対値はほぼ零となる。一方、超音波センサ1が壁4の角部40を越えた位置の正面に差し掛かると、壁4と超音波センサ1との間の距離が長くなるため、前回の検出距離X1よりも今回の検出距離X2の方が長くなる。
【0025】
演算部20では、上記の差分の絶対値が第2の閾値C2(C2>C1)を超えると、超音波センサ1が壁4の角部40に差し掛かったと判定し、現在の1周期前の過去の超音波センサ1の位置を壁4の角部40の位置として検出する。勿論、駐車スペースを挟んだ他方の壁4の角部40においても、上記と同様に、過去の検出距離X1と、現在の検出距離X2とを用いて、壁4の角部40の位置を検出することができる。そして、演算部20は、各壁4の角部40の位置情報に基づいて駐車スペースを推定し、予め記憶してある運転車両5の長さと比較することで、当該駐車スペースに駐車可能であるか否かを判定する。
【0026】
なお、上記の差分の絶対値が閾値C1よりも大きく且つ閾値C2よりも小さい場合には、演算部20は対象物が駐車車両3であって、駐車車両3のコーナー部30に差し掛かったと判定し、既に述べた動作により駐車車両3のコーナー部30の位置を検出する。
【0027】
上述のように、本実施形態では、過去の超音波センサ1の検出距離X1と、現在の超音波センサ1の検出距離X2とを用いることで、壁4の角部40の位置を検出することができる。このため、壁4の角部40に挟まれた駐車スペースを正確に検出することができる。したがって、本実施形態では、本来駐車可能な十分なスペースがあるにも関わらず、駐車スペースを狭い領域であると誤って判定する可能性を小さくすることができる。また、本実施形態では、従来のようにマイクロホンを2つ用いることなく壁4の角部40の位置を検出することができるため、従来と比較してコストを抑えることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 超音波センサ
10 マイクロホン
11 信号処理部
2 制御装置
20 演算部
21 記憶部
3 駐車車両(対象物)
30 コーナー部
X0 移動距離
X1 過去の検出距離
X2 現在の検出距離
r1 コーナー部の半径
θ1 検出角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向けて所定の周期で超音波を送波し且つ前記対象物からの反射波を受波するマイクロホンと、前記マイクロホンで送受波する超音波を電気信号に変換する信号処理部とを有する超音波センサと、前記超音波センサで得られた前記電気信号に基づいて前記対象物の位置を検出する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記超音波センサでの超音波の送受波に基づいて前記対象物との間の距離である検出距離を前記所定の周期で演算する演算部と、少なくとも1周期前の前記検出距離の情報を記憶する記憶部とを有し、前記演算部は、前記対象物と並行に移動している状態において、前記演算部で測定された現在の前記超音波センサと前記対象物との間の現在の検出距離の情報と、前記記憶部に記憶された1周期前の前記超音波センサと前記対象物との間の過去の検出距離の情報とから前記対象物の位置を検出することを特徴とする超音波センサシステム。
【請求項2】
前記演算部は、前記現在の距離情報と前記過去の距離情報との差分の絶対値が第1の閾値を上回ると、前記対象物が駐車車両のコーナー部であって且つ前記コーナー部を平面視で円弧と推定し、前記超音波センサの前記1周期における移動距離の情報と、前記現在の検出距離の情報と、前記過去の検出距離の情報とに基づいて、前記コーナー部の半径、及び前記コーナー部の中心と現在の前記超音波センサとを結ぶ直線が前記超音波センサの軌道との間で為す検出角度を演算し、前記コーナー部の半径及び前記検出角度に基づいて前記コーナー部の位置を検出することを特徴とする請求項1記載の超音波センサシステム。
【請求項3】
前記演算部は、前記現在の距離情報と前記過去の距離情報との差分の絶対値が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値を上回ると、前記対象物が壁の角部であると推定し、前記1周期前の前記超音波センサの位置を前記壁の角部の位置として検出することを特徴とする請求項1記載の超音波センサシステム。
【請求項4】
前記演算部は、前記対象物の位置の情報に基づいて駐車スペースを推定し、且つ前記駐車スペースに駐車可能であるか否かを判定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の超音波センサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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