説明

超音波センサ及びその製造方法ならびにその最適設計装置

【課題】構造や構成部品の材料が限定されずに、製造時に各構成部品及び部品界面に発生する応力を緩和できる超音波センサを提供することにある。
【解決手段】圧電素子2と、この圧電素子2に接合させて形成された音響整合層1と、圧電素子2の少なくとも一部を覆い、圧電素子2と該圧電素子2に隣接する部材との熱膨張差により発生する応力を緩和させるための緩衝部材7と、圧電素子2を封止するための封止部材3,4と、封止部材3,4の少なくとも一部と接し、圧電素子2を補強するための補強部材8と、補強部材8を覆うケース5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を用いた超音波センサ及びその製造方法ならびにその最適設計装置に関し、特に精度や信頼性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体の流量を計測する流量計に適用される超音波センサが知られている。この超音波センサは、例えば、流体の流れの方向に対し斜めに対向して配置された2つの超音波センサ(超音波振動子)間を伝搬する超音波の伝搬時間を計測することにより流体の流量を求めるものであり、ns(ナノ秒)オーダの高精度が要求されている。また、流量計の耐用年数は約10年であるため、超音波センサの長期信頼性が求められている。
【0003】
しかし、超音波センサは製造時における各構成部品の熱膨張差に起因する内部残留応力や変形などにより、精度や信頼性が低下する。
【0004】
このため、超音波センサを構成する圧電素子とケースとを圧電素子やケースよりも軟質で可とう性を有し、硬化ひずみが所定値以下の接着剤により接着し、この接着剤を緩衝材として圧電素子とケースとの間の熱膨張差を緩和させる超音波センサが開示されている(特許文献1)。
【0005】
また、音響整合層とケースとの間、及びケースと圧電素子との間をそれぞれ異なる特性(硬さ、熱膨張係数、有機溶剤への反応、吸水性、熱劣化性、硫黄化合物への反応等)の接着剤により接着し、複数の部品間の接続劣化を防止させた構造の超音波センサが開示されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−270013号公報
【特許文献2】特開2004−48241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の超音波センサは、圧電素子とケース、ケースと圧電素子との間を接着する接着剤により部品界面の熱膨張差により発生する応力を緩和させるものである。即ち、特定のセンサ構造や構成部品材料をベースに検討されたものであり、適用できるセンサ構造や構成部品の材料が限定されている。このため、センサ構造や構成部品の材料が異なると十分な精度や信頼性を得ることが困難である。
【0007】
また、従来の超音波センサの構造改良等の設計は、経験により繰り返し試行されることにより行なわれていたので、簡易的に最適な構造を得ることが困難である。そこで、多様化するセンサ構造や構成部品の材料に対応した設計装置が必要であるが、このような設計装置は存在しない。
【0008】
本発明の課題は、構造や構成部品の材料が限定されずに、製造時に各構成部品及び部品界面に発生する応力を緩和できる超音波センサ及びその製造方法ならびにその最適設計装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記課題を解決するために以下の手段を採用した。請求項1の発明は、圧電素子と、この圧電素子に接合させて形成された音響整合層と、前記圧電素子の少なくとも一部を覆い、前記圧電素子と該圧電素子に隣接する部材との熱膨張差により発生する応力を緩和させるための緩衝部材と、前記圧電素子を封止するための封止部材と、前記封止部材の少なくとも一部と接し、前記圧電素子を補強するための補強部材と、前記補強部材を覆うケースとを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の超音波センサにおいて、前記緩衝部材は、前記音響整合層または前記圧電素子または前記補強部材よりも軟質な高分子材料からなることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2記載の超音波センサにおいて、前記緩衝部材は、シリコン樹脂からなることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の超音波センサにおいて、前記緩衝部材は、10〜100μmの厚さを有することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の超音波センサにおいて、前記緩衝部材は、0.001〜0.01GPaの縦弾性係数を有することを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1記載の超音波センサにおいて、前記補強部材は、前記封止部材または前記ケースよりも硬質な高分子材料からなることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1記載の超音波センサにおいて、前記補強部材は、前記封止部材または前記ケースよりも硬質な金属材料からなることを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は、圧電素子と該圧電素子に隣接する部材との熱膨張差により発生する応力を緩和させるための緩衝部材を、前記圧電素子の少なくとも一部を覆うように形成する工程と、前記圧電素子を補強するための補強部材に前記圧電素子を取り付ける工程と、前記圧電素子と接合させて音響整合層を形成する工程と、前記圧電素子を封止するための封止部材を前記補強材料の少なくとも一部と接するように形成する工程と、前記補強部材を覆うようにケースを取り付ける工程とを有することを特徴とする。
【0017】
請求項9の発明は、圧電素子及び音響整合層を備える超音波センサを、前記圧電素子と該圧電素子に隣接する部材との熱膨張差により発生する応力を緩和するように最適化設計する最適設計装置であって、前記超音波センサのセンサ構造データ、前記超音波センサを構成する各構成部品の材料特性データ及び製造条件データ、前記超音波センサを最適化する際の制約条件を示す制約条件データ及び超音波センサに要求される応力の許容範囲を示す要求値データを入力する入力手段と、前記入力手段により入力された前記センサ構造データ、前記材料特性データ及び前記製造条件データと前記応力との関係を示す第1関係データを記憶する記憶手段と、前記入力手段により入力された前記センサ構造データ、前記材料特性データ及び前記製造条件データと前記記憶手段に記憶された前記第1関係データとに基づいて前記応力を求め、該応力が前記要求値データを満たしていない場合は、前記制約条件データにより与えられる制約条件の範囲内で且つ前記第1関係データに基づいて、前記センサ構造データ、前記材料特性データ及び前記製造条件データを変更して、該応力が前記要求値データを満たすように前記センサ構造データ、前記材料特性データ及び前記製造条件データを最適化する最適化手段と、前記最適化手段により最適化された結果を出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
請求項10の発明は、請求項9記載の最適設計装置において、前記記憶手段は、前記第1関係データを記憶するとともに前記応力を緩和するために前記圧電素子と該圧電素子に隣接する部材との界面に挿入される緩衝部材の材料、形状、寸法、位置と前記応力との関係を示す第2関係データを記憶し、前記最適化手段は、前記入力手段により入力された前記センサ構造データ、前記材料特性データ及び前記製造条件データと前記記憶手段に記憶された前記第1関係データとに基づいて前記応力を求め、該応力が前記要求値データを満たしていない場合で且つ前記制約条件データとして、前記緩衝部材を前記圧電素子と該圧電素子に隣接する部材との界面に挿入可とする旨のデータが前記入力手段により入力された場合は、前記制約条件データにより与えられる制約条件の範囲内で且つ前記第2関係データに基づいて、前記緩衝部材の材料、形状、寸法、位置を変更して、該応力が前記要求値データを満たすように前記緩衝部材を最適化することを特徴とする。
【0019】
請求項11の発明は、請求項9記載の最適設計装置において、前記超音波センサのセンサ構造データは、前記各構成部品の形状、寸法及び位置を示すデータを有することを特徴とする。
【0020】
請求項12の発明は、請求項9記載の最適設計装置において、前記各構成部品の材料特性データは、化学成分、質量密度、硬さ、溶剤耐性、可とう性、流動性を示す材質データ、縦弾性係数、ポアソン比、引張強さ、靭性を示す機械的特性データ、線膨張係数、熱伝導率、熱伝達率、比熱、キュリー温度、ガラス転移温度、熱分解温度を示す熱的特性データ、導電率、静電容量を示す電気的特性データ、比誘電率、圧電ひずみ定数、圧電応力定数、電気機械結合定数、音響インピーダンスを示す圧電特性データ、構成部品が予め加工されている場合に該加工時の残留応力及び残留ひずみデータを有することを特徴とする。
【0021】
請求項13の発明は、請求項9記載の最適設計装置において、前記製造条件データは、前記各構成部品を接合する際の拘束荷重、拘束変位を示す加圧条件データ、製造時に加熱する際の加熱前温度、加熱速度、加熱温度、加熱保持時間、冷却速度、冷却後温度を示す温度条件データの少なくとも1つを有することを特徴とする。
【0022】
請求項14の発明は、請求項9記載の最適設計装置において、前記制約条件データは、前記各構成部品の適用材料の制約または裕度を示すデータ、超音波センサ全体、前記各構成部品の形状・寸法・位置の制約または裕度を示すデータ、製造条件の制約または裕度を示すデータの少なくとも1つを有することを特徴とする。
【0023】
請求項15の発明は、請求項9記載の最適設計装置において、前記要求値データは、前記超音波センサ全体、前記各構成部品、前記各構成部品の界面の少なくとも1つに発生する許容最大応力及び許容最小応力を示すデータを有することを特徴とする。
【0024】
請求項16の発明は、請求項9記載の最適設計装置において、前記記憶手段に記憶された関係データは、試験、検査、観察、解析の少なくとも1つによって得られたものであることを特徴とする。
【0025】
請求項17の発明は、請求項9記載の最適設計装置において、前記最適化手段は、前記超音波センサに含まれている構成部品を変更することなく前記制約条件データまたは前記要求値データを満たすことができない場合は、前記超音波センサに含まれていない部品を追加または前記超音波センサに含まれている部品を削除することを特徴とする。
【0026】
請求項18の発明は、請求項9記載の最適設計装置において、前記出力手段から出力される最適化された結果は、前記超音波センサのセンサ構造データ、前記各構成部品の材料特性データ、前記製造条件データの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0027】
請求項19の発明は、請求項9記載の最適設計装置において、前記出力手段から出力される最適化された結果は、前記超音波センサの応力分布、ひずみ分布または変形分布の少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の超音波センサによれば、圧電素子の少なくとも一部を緩衝部材で覆うことにより、圧電素子と該圧電素子に隣接する部材との熱膨張差により発生する応力を緩和させたので、構造や構成部品の材料が限定されずに、製造時に各構成部品及び部品界面に発生する応力を緩和できる。
【0029】
また、圧電素子を封止するための封止部材の少なくとも一部を補強部材で覆い、圧電素子を補強したので、圧電素子に発生する応力がさらに低減し、変形が抑制され、精度及び信頼性を向上させることができる。
【0030】
また、本発明の最適設計装置によれば、入力手段により最適化前の超音波センサのセンサ構造データ、各構成部品の材料特性データ、製造条件データ、制約条件データ及び要求値データを入力し、最適化手段はセンサ構造データ、材料特性データ及び製造条件データと記憶手段に構築された第1関係データに基づいて応力を求め、該応力が要求値データを満たしていない場合は、制約条件データにより与えられる制約条件の範囲内で且つ第1関係データに基づいて、センサ構造データ、材料特性データ及び製造条件データを変更して、該応力が要求値データを満たすようにセンサ構造データ、材料特性データ及び製造条件データを最適化するので、センサ構造や構成部品の材料が限定されずに、製造時に各構成部品及び部品界面に発生する応力が緩和された超音波センサの最適化設計を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施例に係る超音波センサ及びその製造方法ならびにその最適設計装置を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0032】
図1は本発明の実施例1に係る超音波センサの断面図である。図1に示すように、本発明の実施例1に係る超音波センサは、音響整合層1、圧電素子2、シリコン樹脂3、エポキシ樹脂4、ケース5、接着剤6、緩衝材料7、補強材料8を備えて構成されている。
【0033】
圧電素子2は、上面(超音波送受信面2a)が音響整合層1と接着剤6により接合され、音響整合層1に覆われている。圧電素子2の側面及び下面の一部には、圧電素子2と該圧電素子2に隣接する部品との熱膨張差により発生する応力を緩和させるための緩衝材料7が形成されており、圧電素子2の側面と音響整合層1及び圧電素子2の下面の一部と補強材料8は緩衝材料7を介して接合されている。また、圧電素子2と音響整合層1とは接着剤6を用いずに加圧することにより接合させてもよい。
【0034】
緩衝材料7は、音響整合層1、圧電素子2、補強材料8の中で最も軟質な構成部品よりも軟質な材料であればよく、圧電素子2の少なくとも一部を覆うことにより、超音波センサを構成する各構成部品及び部品界面に発生する応力が緩和されるが、厚さが10〜100μm、縦弾性係数が0.001〜0.01GPaであることが好ましい。緩衝材料7は、例えば80μmの厚さのシリコン樹脂(縦弾性係数:0.0025GPa)からなる。また、緩衝材料7は圧電素子2と音響整合層1とを接合させるための接着剤6と同一の材料を使用してもよい。
【0035】
図2は緩衝材料7の厚さと、圧電素子2及びケース5に発生する応力との関係を示した図である。図2に示すように、緩衝材料7の厚さが厚くなるにしたがって、圧電素子2及びケース5に発生する応力が小さくなることが分かる。従って、圧電素子2の少なくとも一部を緩衝材料7で覆うことにより圧電素子2に発生する応力は低減する。
【0036】
補強材料8は、例えば図1に示すように、上部が内側に突起した側壁を有する中空の部材であり、補強材料8の上面8aは音響整合層1と接合されるとともに緩衝材料7を介して圧電素子2と接合されている。補強材料8は、例えば、10mmの厚さのガラス繊維強化プラスチックや、ステンレス鋼等の金属材料からなる。この補強材料8は、エポキシ樹脂4またはケース5より硬質な材料であればよく、形状、寸法の制限はない。
【0037】
シリコン樹脂3は、圧電素子2の下面2b及び補強材料8の内側面8bと接するように形成され、エポキシ樹脂4は、シリコン樹脂3及び補強材料8の内側面8cと接するように形成されている。このエポキシ樹脂4とシリコン樹脂3は圧電素子2を封止するためのポッティング材(封止材)である。ケース5は、補強材料8の外側面8dを覆い、ケース5とポッティング材(シリコン樹脂3及びエポキシ樹脂4)との間に補強材料8が設けられている。
【0038】
超音波センサは、ポッティング材の少なくとも一部を補強材料8で覆うことにより圧電素子2が補強されて、従来圧電素子2に発生していた応力が補強材料8に分散されて圧電素子2に発生する応力が低減し、センサ全体の変形が抑制される。
【0039】
図3は補強材料8の厚さと、センサの変形の度合(センサ全体の最大変位)との関係を示した図である。図3に示すように、補強材料8の厚さが厚くなるにしたがって、部品界面に発生する応力が小さくなり、センサ全体の変形の度合が小さくなることが分かる。また、補強材料8の剛性を高くするにしたがって、部品界面に発生する応力が小さくなることも確認されている。従って、ポッティング材の少なくとも一部を補強材料8で覆うことにより圧電素子2に発生する応力は低減する。
【0040】
次に、本発明の実施例1に係る超音波センサの製造方法を示す。図4は実施例1に係る超音波センサの製造方法の一例を示す工程図である。図4に示すように、まず、圧電素子2に緩衝材料7をコーティングする(図4(a))。次に、緩衝材料7がコーティングされた圧電素子2を補強材料8に取り付ける(図4(b))。次に、補強材料8の内側面8b及び圧電素子2の下面2bと接するようにシリコン樹脂3を充填する(図4(c))。次に、圧電素子2及び緩衝材料7を覆うように音響整合層1を取り付ける(図4(d))。このとき音響整合層1と圧電素子2の超音波送受信面2aとは接着剤6により接合される。次に、補強材料8の内側面8c及びシリコン樹脂3に接するようにエポキシ樹脂4を充填して加熱し、加熱後冷却させることでエポキシ樹脂4を硬化させる(図4(e))。次に、ケース5を取り付ける(図4(f))。
【0041】
上記の工程において、緩衝材料7は、圧電素子2を補強材料8に取り付ける前に圧電素子2にコーティングしたが、圧電素子2を補強材料8に取り付け、音響整合層1を取り付けた後に緩衝材料7を充填するものとしてもよい。
【0042】
また、補強材料8は、補強材料8及びエポキシ樹脂4以外の部品を取り付けた後で補強材料8を取り付け、その後エポキシ樹脂4を充填するものとしても、予め補強材料8を挿入する隙間を残した状態で他の部品を取り付け、エポキシ樹脂4を充填した後で、補強材料8を挿入するものとしてもよい。
【0043】
このように、実施例1に係る超音波センサは、圧電素子2の少なくとも一部を緩衝材料7で覆うことにより、圧電素子2と圧電素子2に隣接する部品との熱膨張差により発生する応力を緩和させたので、センサ構造や構成部品の材料が限定されずに、製造時に各構成部品及び部品界面に発生する応力を緩和できる。
【0044】
また、実施例1に係る超音波センサは、圧電素子2を封止するためポッティング材の少なくとも一部を補強材料8で覆い、圧電素子2を補強したので、圧電素子2に発生する応力がさらに低減し、センサ全体の変形が抑制され、精度及び信頼性を向上させることができる。
【実施例2】
【0045】
本発明の実施例2に係る最適設計装置は、超音波センサのセンサ構造(各部の寸法や形状や位置)、各構成部品の材料、製造条件等を最適化する装置である。
【0046】
図5は本発明の実施例2に係る超音波センサの最適設計装置の機能構成を示した図である。図5に示すように、本発明の実施例2に係る最適設計装置は、入力部10、記憶部11、最適化計算部12及び出力部13を備えて構成されている。
【0047】
入力部10は、最適化前の超音波センサ(以下、試作センサという)の構造を示すデータ(以下、センサ構造データという)、試作センサを構成する各構成部品の材料特性を示すデータ(以下、材料特性データという)、試作センサを製造する際の製造条件を示すデータ(以下、製造条件データという)の各設計データと、最適化する際の制約条件を示すデータ(以下、制約条件データという)と、超音波センサに要求される応力の許容範囲(要求値)を示すデータ(以下、要求値データという)とを入力する。
【0048】
センサ構造データは、各構成部品の形状、寸法、位置を示すデータであり、センサ構造データが入力される試作センサは、圧電素子と音響整合層を備えていればよい。図6は試作センサの構造の一例を示した断面図である。図6に示す試作センサは、音響整合層14、圧電素子15、シリコン樹脂16、エポキシ樹脂17、基板18、ケース19を備えて構成されている。センサ構造データは、例えば図6に示す試作センサの構造を図7に示すように座標化したときの座標情報であり、入力部10には、この座標情報がセンサ構造データとして入力される。
【0049】
このセンサ構造データは、試作センサの構造を示す図面等をスキャナ等で読み込み、座標値を取得した後で各構成部品の形状、寸法、位置が明確になるように手入力しても、試作センサの構造を示すCADデータ等のデジタルデータを入力してもよい。
【0050】
材料特性データは、試作センサを構成する各構成部品の材質(化学成分、質量密度、硬さ、溶剤耐性、可とう性、流動性等)、機械的特性(縦弾性係数、ポアソン比、引張強さ、靭性等)、熱的特性(線膨張係数、熱伝導率、熱伝達率、比熱、キュリー温度、ガラス転移温度、熱分解温度等)、電気的特性(導電率、静電容量等)、圧電特性(比誘電率、圧電ひずみ定数、圧電応力定数、電気機械結合定数、音響インピーダンス)を示すデータである。
【0051】
この材料特性データとしては、例えば図8に示すように、音響整合層14、圧電素子15、ケース19の縦弾性係数、ポアソン比、線膨張係数を入力する。また、予め加工した構成部品の影響を加味したい場合は、該加工時の残留応力、残留ひずみ等を入力してもよい。なお、シリコン樹脂16、エポキシ樹脂17、基板18の材料特性データは、記憶部11に記憶されている材料データテーブル(後述)から読み出される。また、音響整合層14、圧電素子15、ケース19の材料特性データも材料データテーブルから読み出すものとしてもよい。この場合、入力部10には、各構成部品の材料が何であるかを入力するだけでよい。
【0052】
製造条件データは、試作センサ製造時の各工程における温度条件、加圧条件等であり、各構成部品を接合する際の拘束荷重または拘束変位を示すデータ、製造時に加熱する際の加熱前温度、加熱速度、加熱保持時間、冷却速度、冷却後温度を示すデータの少なくとも1つを有する。
【0053】
この製造条件データは、例えばエポキシ樹脂17を充填して加熱硬化させる工程の温度条件として、図9に示すように、加熱前温度を25℃、加熱速度を10℃/分、加熱温度を150℃、加熱保持時間を1時間、冷却速度を10℃/分、冷却後温度を25℃と入力する。また、この製造条件データは、加圧条件として、例えば図10に示すように、センサ拘束荷重を0kg、拘束変位を0mmと入力する。この製造条件データは、エポキシ樹脂17の替わりに加熱を必要としない常温硬化樹脂や接着剤を使用する場合、温度条件を未入力とし、加圧条件として、拘束荷重及び拘束変位(各構成部品間を接着させる際に加圧する力及び変位)を入力してもよい。
【0054】
制約条件データは、超音波センサを最適化設計する際に与える制約条件を示すデータである。即ち、試作センサを最適化する際に、超音波センサの各構成部品として適用可能な材料の制約または裕度を示すデータ、超音波センサ全体及び各構成部品の形状・寸法・位置の制約または裕度を示すデータ、超音波センサを製造する際の製造条件の制約または裕度を示すデータの少なくとも1つを有する。
【0055】
この制約条件データは、試作センサの各構成部品の材料、寸法、形状、位置及び製造条件の変更可否、部品界面に部材(緩衝材料、補強材料等)挿入の可否及び挿入する部材の材料、寸法、形状、位置及び製造条件の制約または裕度を入力する。この制約条件データは、例えば図11に示すように、(1)音響整合層14及び圧電素子15の寸法、形状、位置は変更しない、(2)部品界面に部材を挿入しない、(3)各構成部品の材料及び製造条件は変更しないこと等を示すデータを入力する。
【0056】
要求値データは、超音波センサに要求される性能(要求値)を示すデータであり、対象部位に発生する許容最大応力及び許容最小応力を示すデータまたは超音波センサに発生する応力による変形変位量の許容値を示すデータである。
【0057】
この要求値データは、例えば図12に示すように、圧電素子15に発生する許容最大応力を0MPa、許容最小応力を−120MPaと入力する。要求値データの対象部位は、センサ全体、センサを構成する各構成部品、各構成部品の界面のいずれにしてもよい。
【0058】
記憶部11は、入力部10で入力されたセンサ構造データ、材料特性データ及び製造条件データの各設計データと応力との関係を示すデータテーブル等の複数のデータテーブルが記憶されたデータベースである。この複数のデータテーブルは、例えば各構成部品の材料毎の特性(線膨張係数等)を示す材料データテーブル、各構成部品間の線膨脹係数差と応力との関係を示す線膨脹係数差データテーブル、圧電素子15と該圧電素子15に隣接する部品との界面に形成される緩衝材料の厚さと応力変動値との関係を示す緩衝材膜厚データテーブル等である。記憶部11は、最適化計算部12からの要求により、これらのデータテーブルを最適化計算部12に出力する。
【0059】
図13は圧電素子15とケース19との線膨脹係数差と、圧電素子15及びケース19に発生する応力との関係を示した図である。図14は圧電素子15とケース19との線膨脹係数差と、圧電素子15とケース19との部品界面に発生する応力との関係を示した図である。図13及び図14に示すように一般に隣接する2つの部品間の線膨脹係数差が大きいと発生する応力も大きくなる。これらの関係は、試験、検査、観察、解析等によって得られたものであり、記憶部11に構築されたデータベースは、試験、検査、観察、解析等によって得られたデータが蓄積されたものである。
【0060】
最適化計算部12は、入力部10でセンサ構造データ、材料特性データ、製造条件データ、制約条件データ、要求値データの各入力データが入力されると、入力された各入力データに関連したデータテーブルを記憶部11に構築されたデータベースから検索して、各入力データに関連した複数のデータテーブルを抽出する。最適化計算部12は、抽出された複数のデータテーブルに基づき、入力部10で入力された要求値データを満たすように試作センサのセンサ構造データ、材料特性データ、製造条件データを最適化する。
【0061】
また、最適化計算部12は、試作センサに含まれている構成部品を変更することなく要求値を満たすことができない場合は、試作センサに含まれていない部品を追加または試作センサに含まれている部品を削除して、試作センサを最適化する。例えば、図6に示す試作センサには緩衝材料が含まれていないが、該試作センサに含まれている構成部品を変更することなく要求値を満たすことができない場合は、緩衝材料を追加することにより要求値を満たすように最適化する。
【0062】
出力部13は、最適化計算部12により最適化されたセンサ構造データ、材料特性データ及び製造条件データの各設計データと、最適化された超音波センサに発生する応力を示す応力データまたは該応力による変形変位を示す変形データとを出力する。この応力データ、変形データはそれぞれ応力分布、変形分布を示すデータを有するものとしてもよい。
【0063】
次に、本発明の実施例2に係る超音波センサの最適設計装置を用いて超音波センサを最適化設計する方法を、図15に示すフローチャートを用いて説明する。なお、ここでは、一例として、図6に示した超音波センサを最適化設計する場合を説明する。
【0064】
まず、最適化前の超音波センサ(試作センサ)のセンサ構造データ、構成部品の材料特性データ及び製造条件データの各設計データを、入力部10により入力する(ステップS1)。最適化計算部12は、記憶部11に構築されたデータベースを検索して、各設計データに関連したデータテーブルを抽出し、抽出されたデータテーブルに基づいて試作センサに発生する応力を求める(ステップS2)。
【0065】
例えば、図16に示すように、圧電素子15の材料がA2であり、ケース19の材料がB1である旨が入力部10により入力された場合、最適化計算部12は、圧電素子15を構成する材料及びケース19を構成する材料の線膨張係数を示す材料データテーブル100a及び100bを記憶部11から抽出する。次に、最適化計算部12は、抽出された材料データテーブル100aから圧電素子15を構成する材料A2の線膨張係数K2を取得し、材料データテーブル100bからケース19を構成する材料B1の線膨張係数L1を取得する。次に、最適化計算部12は圧電素子15の線膨張係数K2とケース19の線膨張係数L1との差分(線膨脹係数差)を求める。次に、最適化計算部12は、線膨脹係数差と応力との関係を示す線膨張係数差データテーブル101を抽出して、求められた線膨脹係数差と線膨張係数差データテーブル101とに基づいて試作センサに発生する応力を求める。この場合、圧電素子15とケース19との線膨脹係数差はα2であるとすれば、最適化計算部12は、線膨脹係数差データテーブル101に基づいて、試作センサに発生する応力F2を求めることができる。
【0066】
次に、入力部10に要求値データを入力する(ステップS3)。最適化計算部12は、試作センサの応力が要求値を満たしているかどうかを判定し(ステップS4)、要求値を満たしている場合は、その旨を出力部13に出力する(ステップS10)。要求値を満たしていない場合は、入力部10により制約条件データを入力する(ステップS5)。
【0067】
次に、最適化計算部12は、制約条件データとして緩衝材料を挿入可とする旨が入力されたかどうかを判定する(ステップS6)。緩衝材料を挿入可とする旨が入力された場合、緩衝材料の最適化が行われる(ステップS7)。
【0068】
緩衝材料の最適化は、与えられた制約条件の範囲内で緩衝材の材料、寸法、形状、位置等を変化させていき、応力が要求値を満たすような緩衝材の材料、寸法、形状、位置等を求める。
【0069】
例えば、入力部10により、緩衝材料の制約条件として、材料をシリコン樹脂とし、形状を厚さが均一な薄膜状とし、挿入位置を圧電素子15とケース19との界面とする旨が入力された場合、即ち緩衝材料の寸法(厚さ)のみを変更可とする制約条件が入力された場合、最適化計算部12は、図16に示すように、緩衝材料の厚さと応力補正量との関係を示す緩衝材膜厚データテーブル102を抽出する。最適化計算部12は、緩衝材膜厚データテーブル102に基づいて、緩衝材料の厚さを変化させていき、このときの応力補正量を求める。また、最適化計算部12は、求められた応力補正量と試作センサの応力とに基づいて、緩衝材料を挿入後の応力を求める。最適化計算部12は求められた緩衝材料挿入後の応力と要求値とを比較して、緩衝材料挿入後の応力が要求値を満たす緩衝材厚さを探す。この場合、応力補正量がFx3のときに緩衝材料を挿入後の応力が要求値を満たすものとすると、最適化計算部12は、緩衝材膜厚データテーブル102に基づいて、緩衝材厚さの最適値D3を求めることができる。
【0070】
なお、緩衝材料の最適化は、与えられた制約条件の範囲内で緩衝材の材料、寸法、形状、位置等を変化させても応力が要求値を満たすことができない場合、応力が要求値に最も近い値になったときの緩衝材の材料、寸法、形状、位置等を最適値とする。
【0071】
次に、最適化計算部12は、ステップS7で求められた最適値を有する緩衝材料を挿入後の応力が要求値を満たしているかどうかを判定する(ステップS8)。要求値を満たしている場合は、応力が要求値を満たす緩衝材の材料、寸法、形状、位置等を示すデータと、このときの応力を示すデータを出力部13に出力する(ステップS10)。要求値を満たしていない場合は、試作センサの各設計データを最適化する(ステップS9)。
【0072】
各設計データの最適化は、与えられた制約条件の範囲内で試作センサの各構成部品の材料、寸法、形状、位置、製造条件を変化させていき、応力が要求値を満たすような各構成部品の材料、寸法、形状、位置、製造条件を求める。
【0073】
例えば、入力部10により、各設計データの制約条件として、圧電素子15及びケース19の材料のみを変更可とする制約条件が入力された場合、最適化計算部12は、図17に示す材料データテーブル100a及び100bに基づいて、圧電素子15の材料をA1、A2、・・・と変化させていき、ケース19の材料をB1、B2、・・・と変化させていき、圧電素子15とケース19との線膨脹係数差を求める。最適化計算部12は、求められた線膨脹係数差と線膨張係数差データテーブル101とに基づいて応力を求める。最適化計算部12は求められた応力と要求値とを比較して、応力が要求値を満たす圧電素子15及びケース19の材料を探す。この場合、応力F3が要求値を満たすものとし、このときの線膨脹係数差α3は圧電素子15の材料をA1、ケース19の材料をB2としたときに得られるものとすれば、最適化計算部12は、圧電素子15の材料をA1、ケース19の材料をB2に最適化する。
【0074】
なお、各設定データの最適化は、与えられた制約条件の範囲内で試作センサの各構成部品の材料、寸法、形状、位置、製造条件を変化させても応力が要求値を満たすことができない場合、応力が要求値に最も近い値になったときの各構成部品の材料、寸法、形状、位置、製造条件を最適値とする。
【0075】
ステップS5で入力部10により制約条件データとして緩衝材料を挿入不可とする旨が入力された場合は、ステップS6で緩衝材料挿入不可と判断してステップS9に進み、各設計データの最適化のみが行われる。
【0076】
図18はステップS5で制約条件データとして、緩衝材料を挿入可とする旨が入力され且つ緩衝材料はシリコン樹脂を用い、緩衝材料の形状は薄膜状、緩衝材料の挿入位置は圧電素子15とケース19との界面とする旨が入力された場合の最適化後の超音波センサを示す断面図である。この場合、ステップS7で上記したように緩衝材料の最適化が行われ、最適化計算部12は緩衝材料の厚さの最適値を50μm以上とすることで要求値を満たすことができると求めたため、図18に示すように、最適化後の超音波センサは圧電素子15とケース19との界面に厚さ50μmの緩衝材料20が挿入された構造になっている。
【0077】
このように、本発明の実施例2に係る最適設計装置は、入力部10に最適化前の超音波センサのセンサ構造データ、各構成部品の材料特性データ、製造条件データの各設計データと、制約条件データと、要求値データとを入力し、最適化計算部12は各設計データと記憶部11に構築されたデータベースとに基づいて応力を求め、該応力が要求値データを満たしていない場合は、制約条件データにより与えられる制約条件の範囲内で且つデータベースに基づいて、各設計データを変更して、該応力が要求値データを満たすように設計データを最適化する。
【0078】
また、最適化計算部12は、圧電素子15と該圧電素子15に隣接する部品の界面に緩衝材料を挿入可とする制約条件データが入力部10により入力された場合、制約条件データにより与えられる制約条件の範囲内で且つデータベースに基づいて、緩衝材の材料、形状、寸法、位置を変更して、該応力が要求値データを満たすように緩衝材料を最適化する。出力部13は最適化された結果を出力するので、センサ構造や構成部品の材料が限定されずに、製造時に各構成部品及び部品界面に発生する応力が緩和された超音波センサの最適化設計を容易に行うことができる。
【0079】
なお、本発明の最適設計装置は、超音波センサ以外のセンサの最適設計装置として使用してもよい。
【0080】
また、実施例2に係る最適設計装置を用いて、実施例1に係る超音波センサの設計ができるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、流量計用、欠陥検出用、距離測定用等の種々の超音波センサ及びその製造方法ならびにその最適設計装置として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施例1に係る超音波センサの断面図である。
【図2】緩衝材料の厚さと圧電素子またはケースに発生する応力との関係を示す図である。
【図3】補強材料の厚さとセンサ変形の変位との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施例1に係る超音波センサの製造工程を示す工程図である。
【図5】本発明の実施例2に係る超音波センサの最適設計装置の機能構成を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係る超音波センサの最適設計装置による最適化を行う前のセンサ構造を示す図である。
【図7】本発明の実施例2に係る超音波センサの最適設計装置に最適化前のセンサ構造データを入力する方法を示す図である。
【図8】本発明の実施例2に係る超音波センサの最適設計装置に構成部品の材料特性データを入力する方法を示す図である。
【図9】本発明の実施例2に係る超音波センサの最適設計装置に製造条件データを入力する方法を示す図である。
【図10】本発明の実施例2に係る超音波センサの最適設計装置に製造条件データを入力する方法を示す図である。
【図11】本発明の実施例2に係る超音波センサの最適設計装置に制約条件データを入力する方法を示す図である。
【図12】本発明の実施例2に係る超音波センサの最適設計装置に要求値データを入力する方法を示す図である。
【図13】線膨脹係数差と、圧電素子またはケースに発生する応力との関係を示す図である。
【図14】線膨張係数差と部品界面の応力との関係を示す図である。
【図15】本発明の実施例2に係る最適設計装置を用いて超音波センサを最適化設計する方法を示すフローチャートである。
【図16】本発明の実施例2に係る最適設計装置を用いて緩衝材料を最適化する方法の一例を示す図である。
【図17】本発明の実施例2に係る最適設計装置を用いて圧電素子及びケースの材料を最適化する方法の一例を示す図である。
【図18】本発明の実施例2に係る超音波センサの最適設計装置により最適化されたセンサ構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1、14 音響整合層
2、15 圧電素子
3、16 シリコン樹脂
4、17 エポキシ樹脂
5、19 ケース
6 接着剤
7 緩衝材料
8 補強材料
9 超音波送受信方向
10 入力部
11 記憶部
12 最適化計算部
13 出力部
18 基板
20 緩衝材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子と、
この圧電素子に接合させて形成された音響整合層と、
前記圧電素子の少なくとも一部を覆い、前記圧電素子と該圧電素子に隣接する部材との熱膨張差により発生する応力を緩和させるための緩衝部材と、
前記圧電素子を封止するための封止部材と、
前記封止部材の少なくとも一部と接し、前記圧電素子を補強するための補強部材と、
前記補強部材を覆うケースと、
を備えることを特徴とする超音波センサ。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記音響整合層または前記圧電素子または前記補強部材よりも軟質な高分子材料からなることを特徴とする請求項1記載の超音波センサ。
【請求項3】
前記緩衝部材は、シリコン樹脂からなることを特徴とする請求項2記載の超音波センサ。
【請求項4】
前記緩衝部材は、10〜100μmの厚さを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の超音波センサ。
【請求項5】
前記緩衝部材は、0.001〜0.01GPaの縦弾性係数を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の超音波センサ。
【請求項6】
前記補強部材は、前記封止部材または前記ケースよりも硬質な高分子材料からなることを特徴とする請求項1記載の超音波センサ。
【請求項7】
前記補強部材は、前記封止部材または前記ケースよりも硬質な金属材料からなることを特徴とする請求項1記載の超音波センサ。
【請求項8】
圧電素子と該圧電素子に隣接する部材との熱膨張差により発生する応力を緩和させるための緩衝部材を、前記圧電素子の少なくとも一部を覆うように形成する工程と、
前記圧電素子を補強するための補強部材に前記圧電素子を取り付ける工程と、
前記圧電素子と接合させて音響整合層を形成する工程と、
前記圧電素子を封止するための封止部材を前記補強材料の少なくとも一部と接するように形成する工程と、
前記補強部材を覆うようにケースを取り付ける工程と、
を有することを特徴とする超音波センサの製造方法。
【請求項9】
圧電素子及び音響整合層を備える超音波センサを、前記圧電素子と該圧電素子に隣接する部材との熱膨張差により発生する応力を緩和するように最適化設計する最適設計装置であって、
前記超音波センサのセンサ構造データ、前記超音波センサを構成する各構成部品の材料特性データ及び製造条件データ、前記超音波センサを最適化する際の制約条件を示す制約条件データ及び超音波センサに要求される応力の許容範囲を示す要求値データを入力する入力手段と、
前記入力手段により入力された前記センサ構造データ、前記材料特性データ及び前記製造条件データと前記応力との関係を示す第1関係データを記憶する記憶手段と、
前記入力手段により入力された前記センサ構造データ、前記材料特性データ及び前記製造条件データと前記記憶手段に記憶された前記第1関係データとに基づいて前記応力を求め、該応力が前記要求値データを満たしていない場合は、前記制約条件データにより与えられる制約条件の範囲内で且つ前記第1関係データに基づいて、前記センサ構造データ、前記材料特性データ及び前記製造条件データを変更して、該応力が前記要求値データを満たすように前記センサ構造データ、前記材料特性データ及び前記製造条件データを最適化する最適化手段と、
前記最適化手段により最適化された結果を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする最適設計装置。
【請求項10】
前記記憶手段は、
前記第1関係データを記憶するとともに前記応力を緩和するために前記圧電素子と該圧電素子に隣接する部材との界面に挿入される緩衝部材の材料、形状、寸法、位置と前記応力との関係を示す第2関係データを記憶し、
前記最適化手段は、
前記入力手段により入力された前記センサ構造データ、前記材料特性データ及び前記製造条件データと前記記憶手段に記憶された前記第1関係データとに基づいて前記応力を求め、該応力が前記要求値データを満たしていない場合で且つ前記制約条件データとして、前記緩衝部材を前記圧電素子と該圧電素子に隣接する部材との界面に挿入可とする旨のデータが前記入力手段により入力された場合は、前記制約条件データにより与えられる制約条件の範囲内で且つ前記第2関係データに基づいて、前記緩衝部材の材料、形状、寸法、位置を変更して、該応力が前記要求値データを満たすように前記緩衝部材を最適化することを特徴とする請求項9記載の最適設計装置。
【請求項11】
前記超音波センサのセンサ構造データは、前記各構成部品の形状、寸法及び位置を示すデータを有することを特徴とする請求項9記載の最適設計装置。
【請求項12】
前記各構成部品の材料特性データは、化学成分、質量密度、硬さ、溶剤耐性、可とう性、流動性を示す材質データ、縦弾性係数、ポアソン比、引張強さ、靭性を示す機械的特性データ、線膨張係数、熱伝導率、熱伝達率、比熱、キュリー温度、ガラス転移温度、熱分解温度を示す熱的特性データ、導電率、静電容量を示す電気的特性データ、比誘電率、圧電ひずみ定数、圧電応力定数、電気機械結合定数、音響インピーダンスを示す圧電特性データ、構成部品が予め加工されている場合に該加工時の残留応力及び残留ひずみデータを有することを特徴とする請求項9記載の最適設計装置。
【請求項13】
前記製造条件データは、前記各構成部品を接合する際の拘束荷重、拘束変位を示す加圧条件データ、製造時に加熱する際の加熱前温度、加熱速度、加熱温度、加熱保持時間、冷却速度、冷却後温度を示す温度条件データの少なくとも1つを有することを特徴とする請求項9記載の最適設計装置。
【請求項14】
前記制約条件データは、前記各構成部品の適用材料の制約または裕度を示すデータ、超音波センサ全体、前記各構成部品の形状・寸法・位置の制約または裕度を示すデータ、製造条件の制約または裕度を示すデータの少なくとも1つを有することを特徴とする請求項9記載の最適設計装置。
【請求項15】
前記要求値データは、前記超音波センサ全体、前記各構成部品、前記各構成部品の界面の少なくとも1つに発生する許容最大応力及び許容最小応力を示すデータを有することを特徴とする請求項9記載の最適設計装置。
【請求項16】
前記記憶手段に記憶された関係データは、試験、検査、観察、解析の少なくとも1つによって得られたものであることを特徴とする請求項9記載の最適設計装置。
【請求項17】
前記最適化手段は、前記超音波センサに含まれている構成部品を変更することなく前記制約条件データまたは前記要求値データを満たすことができない場合は、前記超音波センサに含まれていない部品を追加または前記超音波センサに含まれている部品を削除することを特徴とする請求項9記載の最適設計装置。
【請求項18】
前記出力手段から出力される最適化された結果は、前記超音波センサのセンサ構造データ、前記各構成部品の材料特性データ、前記製造条件データの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項9記載の最適設計装置。
【請求項19】
前記出力手段から出力される最適化された結果は、前記超音波センサの応力分布、ひずみ分布または変形分布の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項9記載の最適設計
装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−104318(P2007−104318A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−291487(P2005−291487)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】