超音波プローブ及び超音波診断装置
【課題】超音波診断画像中に生じる虚像の発生度合いを低減することができる超音波プローブ及び超音波診断装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る超音波プローブは、複数の振動素子群が配列された振動素子ユニットと、選択手段とを有する。複数の振動素子群のそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群を有する。第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子の放射面は、サブ振動素子群毎に異なる方向に向けて配置されている。選択手段は、外部からの駆動信号に基づいて、第1から第nのサブ振動素子群のうち、所定のサブ振動素子群を選択的に駆動させるために設けられている。
【解決手段】実施形態に係る超音波プローブは、複数の振動素子群が配列された振動素子ユニットと、選択手段とを有する。複数の振動素子群のそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群を有する。第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子の放射面は、サブ振動素子群毎に異なる方向に向けて配置されている。選択手段は、外部からの駆動信号に基づいて、第1から第nのサブ振動素子群のうち、所定のサブ振動素子群を選択的に駆動させるために設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波プローブ及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブを用いて被検体内に超音波を送信してその反射波を受信することにより、被検体の生体情報を取得するものである。
【0003】
超音波の送受信は、超音波プローブに設けられた複数の振動素子によって行われる。各振動素子はその構造により、指向性が予め決まっている。従って、広範囲に超音波を発生させるためには指向性を広く確保できる構造が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−146337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、指向性を広く確保した場合、超音波を発生させたい方向とは異なる方向に音圧の高い領域(以下、「グレーティングローブ」という場合がある)が形成される場合がある。このグレーティングローブにより、超音波診断画像中に虚像が生じるという問題があった。
【0006】
実施形態は、前述の問題点を解決するためになされたものであり、超音波診断画像中に生じる虚像の発生度合いを低減することができる超音波プローブ及び超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この実施形態に係る超音波プローブは、複数の振動素子群が配列された振動素子ユニットと、選択手段とを有する。複数の振動素子群のそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群を有する。第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子の放射面は、サブ振動素子群毎に異なる方向に向けて配置されている。選択手段は、外部からの駆動信号に基づいて、第1から第nのサブ振動素子群のうち、所定のサブ振動素子群を選択的に駆動させるために設けられている。
【0008】
また、この実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブと、送受信手段と、選択制御手段とを有する。超音波プローブは、複数の振動素子群が配列された振動素子ユニットと、選択手段とを有する。複数の振動素子群のそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群を有する。第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子の放射面は、サブ振動素子群毎に異なる方向に向けて配置されている。選択手段は、駆動信号に基づいて、第1から第nのサブ振動素子群のうち、所定のサブ振動素子群を選択的に駆動させるために設けられている。送受信手段は、第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子に対して駆動信号を送ることにより超音波の送受信を行わせる。選択制御手段は、選択手段の動作を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に共通の超音波診断装置の概略を示すブロック図である。
【図2】実施形態に共通の振動素子ユニットの構成の一例を示す図である。
【図3】実施形態に共通の振動素子ユニットの構成の一例を示す図である。
【図4】実施形態に共通の振動素子ユニットの構成の別例を示す図である。
【図5】実施形態に共通の振動素子ユニットの構成の別例を示す図である。
【図6】第1実施形態に係る超音波診断装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図7】第1実施形態に係る超音波診断装置の説明を補足するための図である。
【図8】第1実施形態に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】第2実施形態に係る超音波診断装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図10】第2実施形態に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】第3実施形態に係る超音波診断装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図12】第3実施形態に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図13A】比較例の構成を説明するための図である。
【図13B】比較例を説明するためのグラフである。
【図14A】実施例の構成を説明するための図である。
【図14B】実施例を説明するためのグラフである。
【図15A】実施例の構成を説明するための図である。
【図15B】実施例を説明するためのグラフである。
【図16A】実施例の構成を説明するための図である。
【図16B】実施例を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から図4を参照して、第1から第3実施形態に共通する超音波診断装置の構成について説明する。
【0011】
<超音波診断装置の構成>
図1は、超音波診断装置100のブロック図である。超音波診断装置100は、超音波プローブ1と、本体部2とを含んで構成されている。本体部2は、送受信部3と、信号処理部4と、画像生成部5と、合成部6と、表示制御部7と、ユーザインターフェース(UI)8と、制御部9とを含んで構成されている。超音波プローブ1と本体部2は、超音波プローブ1に設けられたケーブル(図示なし)を介して接続される。
【0012】
(超音波プローブ1)
超音波プローブ1には、所定の個数の振動素子を1つの群とする振動素子群が複数配列された振動素子ユニット10が配置されている。超音波プローブ1は、本体部2と接続されることにより被検体に超音波を送信し、被検体からの反射波をエコー信号として受信することができる。振動素子ユニット10の構成の詳細は後述する。
【0013】
(送受信部3)
送受信部3は、超音波プローブ1に駆動信号を供給して超音波を発生させ、超音波プローブ1が受けたエコー信号を受信する。送受信部3は、受信したエコー信号を信号処理部4に出力する。送受信部3は、送信部31と受信部32とを含んで構成されている。なお、本実施形態では、振動素子の数に対応して送受信部3は複数設けられている。また、送受信部3は超音波プローブ1内に設けられていてもよい。実施形態における送受信部3が「送受信手段」の一例である。
【0014】
(送信部31)
送信部31は、超音波プローブ1に駆動信号を供給して超音波を発生させる。送信部31は、超音波プローブ1に駆動信号を供給して所定の焦点にビームフォームされた超音波を送信させる。所定の焦点に対するビームフォームは、たとえば、図示しない音響レンズとアレイ方向(後述のX方向)との位相整合によりなされる。送信部31は、たとえば図示しないクロック発生器と、送信遅延回路と、パルサ回路とを有する。クロック発生器は、超音波信号の送信タイミングや送信周波数を決めるクロック信号を発生する。送信遅延回路は、超音波を所定の深さに集束させるための集束用遅延時間と、超音波を所定方向に送信するための偏向用遅延時間とに従って、超音波の送信時に遅延をかけて送信フォーカスを実施する。本実施形態では、特に、超音波を所定方向に送信するための偏向用遅延時間制御が重要である。パルサ回路は、超音波振動素子に対応する個別チャンネルの数分のパルサを有する。パルサ回路は、遅延がかけられた送信タイミングで駆動パルス(駆動信号)を生成し、超音波プローブ1の振動素子に駆動パルス(駆動信号)を供給する。
【0015】
(受信部32)
受信部32は、超音波プローブ1が受信したエコー信号を受信する。受信部32は、受信したエコー信号に対して遅延処理を行うことにより、アナログのエコー信号を整相加算されたデジタルのデータに変換する。受信部32は、たとえば図示しないゲイン回路と、A/D変換器と、受信遅延回路と、加算器を有する。ゲイン回路は、超音波プローブ1の振動素子から出力されるエコー信号を受信チャンネルごとに増幅する(ゲインをかける)。A/D変換器は、増幅されたエコー信号をデジタル信号に変換する。受信遅延回路は、デジタル信号に変換されたエコー信号に、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。具体的には、受信遅延回路は、所定の深さからの超音波を集束させるための集束用遅延時間と、所定方向に対して受信指向性を設定するための偏向用遅延時間とを、デジタルのエコー信号に与える。その遅延時間は、必ずしも収束用遅延量と偏向角用遅延量との単純計算ではなく、所定の公式・原理によって計算されるものである。加算器は、遅延時間が与えられたエコー信号を加算する。その加算によって、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。すなわち、受信遅延回路と加算器とによって、所定方向から得られたエコー信号は整相加算される。受信部32は、遅延処理が施されたエコー信号を信号処理部4に出力する。
【0016】
(信号処理部4)
信号処理部4は送受信部3から出力されたエコー信号に対して各種の信号処理を行う。たとえば、信号処理部4はBモード処理部を有する。Bモード処理部はエコー信号を送受信部3から受けて、エコー信号の振幅情報の映像化を行う。具体的には、Bモード処理部は、エコー信号に対してバンドパスフィルタ処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。また、信号処理部4はCFM(Color Flow Mapping)処理部を有していてもよい。CFM処理部は血流情報の映像化を行う。血流情報には、速度、分布、又はパワーなどの情報がある。また、信号処理部4はドプラ処理部を有していてもよい。ドプラ処理部はエコー信号を位相検波することによりドプラ偏移周波数成分を取り出し、FFT処理を施すことにより血流速度を表すドプラ周波数分布を生成する。信号処理部4は、信号処理が施されたエコー信号(超音波ラスタデータ)を画像生成部5に出力する。
【0017】
(画像生成部5)
画像生成部5は、信号処理部4から出力された信号処理後のエコー信号(超音波ラスタデータ)に基づいて超音波画像データを生成する。画像生成部5は、例えばDSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)を有する。画像生成部5は、走査線の信号列で表される信号処理後のエコー信号を、直交座標系で表される画像データに変換する(スキャンコンバージョン処理)。画像生成部5は、Bモード処理部によって信号処理が施されたエコー信号にスキャンコンバージョン処理を施すことにより、被検体の組織の形状を表すBモード画像データを生成する。画像生成部5は、合成部6に超音波画像データを出力する。
【0018】
たとえば、超音波プローブ1及び送受信部3は、被検体内の断面を超音波で走査し、画像生成部5は、断面における組織の形状を2次元的に表すBモード画像データ(断層像データ)を生成する。また、超音波プローブ1及び送受信部3は、3次元領域を超音波で走査することによりボリュームデータを取得してもよい。この場合、画像生成部5は、ボリュームデータにボリュームレンダリングを施すことにより、組織の形状を立体的に表す3次元画像データを生成してもよい。または、画像生成部5は、ボリュームデータにMPR(Multi Planar Reconstruction)処理を施すことにより、任意の断面における画像データ(MPR画像データ)を生成してもよい。
【0019】
この実施形態に係る超音波診断装置は、図示しない画像記憶部を備えていてもよい。画像記憶部は、この実施形態に係る超音波診断装置により得られたデータを記憶する。たとえば画像記憶部は、送受信部3から出力されたエコー信号を記憶する。また、画像記憶部は、信号処理部4から出力された超音波ラスタデータを記憶してもよい。また、画像記憶部は、画像生成部5から出力された断層像データなどの超音波画像データを記憶してもよい。
【0020】
(合成部6)
合成部6は、複数の超音波画像データを合成することにより、合成画像データを生成する。合成部6による画像データの合成は公知の手法により行われる。たとえば複数の超音波画像データそれぞれに対して当該超音波画像データが取得された深度に応じた重みを付け、それらの画像を加算平均することにより、合成画像データを生成することができる。
合成部6は、合成画像データを表示制御部7に出力する。
【0021】
(表示制御部7)
表示制御部7は、合成画像データを合成部6から受けて、合成画像データに基づく合成画像を表示部81に表示させる。
【0022】
(ユーザインターフェース8)
ユーザインターフェース(UI)8は、表示部81と操作部82とを有する。表示部81は、CRTや液晶ディスプレイなどのモニタで構成されている。操作部82は、キーボードやマウスなどの入力装置で構成されている。
【0023】
(制御部9)
制御部9は、超音波診断装置100の各部の動作を制御する。たとえば、制御部9は、送受信部3にディレイ信号を送信し、超音波の送受信を制御する。
【0024】
なお、画像生成部5、合成部6、及び表示制御部7のそれぞれの機能は、プログラムによって実行されてもよい。一例として、画像生成部4、合成部6、及び表示制御部7はそれぞれ、CPU、GPU、又はASICなどの図示しない処理装置と、ROM、RAM、又はHDDなどの図示しない記憶装置とによって構成されていてもよい。記憶装置には、画像生成部5の機能を実行するための画像生成プログラムと、合成部6の機能を実行するための合成プログラムと、表示制御部7の機能を実行するための表示処理プログラムと、が記憶されている。CPUなどの処理装置が、記憶部に記憶されている各プログラムを実行することにより、各部の機能を実行する。
【0025】
<振動素子ユニットの構成>
図2及び図3を用いて実施形態に共通する振動素子ユニット10の構成について詳述する。図2は、振動素子ユニット10の斜視図である。図3は振動素子ユニット10のX−Z断面の拡大図である。なお、図3において振動素子ユニット10の一部は省略されている。
【0026】
図2に示すように、振動素子ユニット10は、台座11、及び複数の振動素子群Lを含んで構成されている。
【0027】
台座11は、石英(SiO2)基板やシリコン(Si)基板等の半導体プロセスに使用可能な材料によって形成されている。台座11の上面には、複数の振動素子群Lが配列される。実施形態では、列状に形成された7つの振動素子群L1〜L7がアレイ状に配置されているが、振動素子群Lの数はこれに限られない。実施形態において、振動素子ユニット10の走査方向をX方向とし、台座11の上面に沿って走査方向と垂直な方向(「エレベーション方向」)をY方向とし、台座11の厚み方向をZ方向とする。
【0028】
図2及び図3に示すように、複数の振動素子群Lはそれぞれ、基部12、サブ振動素子群Tを含んで構成されている。実施形態では、振動素子群Lそれぞれは、3つのサブ振動素子群T1〜T3を含んで構成されている。なお、サブ振動素子群Tの個数は3つに限られない(一般的には、第1から第nのサブ振動素子群(n≧2)まで設けることが可能である)。
【0029】
基部12は、台座11の上面に列状に設けられ、サブ振動素子群Tが配置される面13を有する。実施形態において、基部12は、台形の凸形状で形成されている。また、実施形態において、面13はサブ振動素子群Tの数に合わせ3つ(面13a、13b、13c)形成されている。面13aにはサブ振動素子群T1、面13bにはサブ振動素子群T2、面13cにはサブ振動素子群T3が配置されている。
【0030】
サブ振動素子群Tは、それぞれ複数の振動素子tを有している。実施形態において、複数の振動素子tはエレベーション方向(Y方向)に一列で配列されている。また、実施形態において、サブ振動素子群T1に含まれる振動素子をt1、サブ振動素子群T2に含まれる振動素子をt2、サブ振動素子群T3に含まれる振動素子をt3とする。
【0031】
振動素子tは、送信部31からの信号を受けて放射面から超音波を送信する。また、振動素子tは、被検体からのエコー信号を受信し、受信部32に送る。基部12に複数のサブ振動素子群Tが配置された状態において、各サブ振動素子群Tの振動素子tの放射面は、サブ振動素子群T毎にそれぞれ異なる方向に向けて配置されている。すなわち、実施形態において、振動素子t1、t2、t3の放射面はそれぞれ異なる方向に向けて配置されている。なお、実施形態では、複数の振動素子群Lにおいて、各振動素子tの放射面は同じ方向に向けて配置されている(たとえば振動素子群L1の振動素子t1の放射面と振動素子群L2の振動素子t1の放射面とは同じ方向に向けて配置されている)。
【0032】
振動素子tは、圧電体やMUT(Micromachining Ultrasound Transducer)素子を用いることができる。MUT素子には、cMUT(Capacitive Micromachining Ultrasound Transducer:静電容量型トランスデューサ)や、pMUT(Piezoelectric Micromachining Ultrasound Transducer:圧電型トランスデューサ)が含まれる。
【0033】
実施形態では、基部12の間に溝部14が設けられている。溝部14を設けることにより、各基部12に配置されたサブ振動素子群Tを音響的に分離することが可能となる。
【0034】
<振動素子ユニットの変形例>
振動素子ユニット10の構成は、図2に限られない。図4は振動素子ユニット10´の斜視図である。図5は、振動素子ユニット10´´のX−Z断面の拡大図である。
【0035】
たとえば、図4に示すように、マトリクス状に配置された円柱状の基部12´上に複数の振動素子群L´(図4では16個)が配列されている構成でもよい。この場合、円柱の上面13dと側面13eにサブ振動素子群T´(T1´とT2´)が配置されている。
【0036】
或いは、図5に示すように、基部12´´が3つに分割され、それぞれにサブ振動素子群T1´´〜T3´´が配置される構成でもよい。
【0037】
このように、基部12は複数のサブ振動素子群Tを配置することができる構成であればよい。より具体的には、基部12は、振動素子tの放射面をサブ振動素子群T毎に異なる方向に向けて配置させるような構成であればよい。よって、基部12は凸形状に限らず凹形状であってもよい。また、基部12は台座11と一体に成形されていてもよい。
【0038】
[第1実施形態]
次に、図6から図8を参照して、第1実施形態に係る超音波診断装置について説明する。図6は、本実施形態を説明するための超音波診断装置の概略を示すブロック図である。なお、図6では、1つの振動素子群Lのみを示している。また、一部の構成を省略している。図8は、超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【0039】
<超音波プローブの構成>
本実施形態において、超音波プローブ1内には、複数の振動素子群L(たとえば96個)、複数の振動素子群Lと等しい数の信号線SL、1つの振動素子群Lに含まれるサブ振動素子群Tに対応するサブ信号線sl、複数の振動素子群Lと等しい数の接続部C、スイッチ制御部91が設けられている。なお、図6では、1つの振動素子群L、1つの信号線SL、1つの接続部C及びサブ信号線sl1〜sl3のみを示す。
【0040】
信号線SLは、一端が本体部2内の送受信部3(送信部31及び受信部32)と接続され、他端が接続部Cを介してサブ信号線sl1〜sl3の少なくとも1つと接続可能となっている。なお、信号線SLは、ケーブル(図示なし)内を通って送受信部3と接続されている。
【0041】
サブ信号線sl1〜sl3は、一端が信号線SLの他端と接続可能に設けられ、他端がサブ振動素子群T1〜T3それぞれと接続されている。なお、一般的にサブ信号線slは、サブ振動素子群Tの数に合わせて第1のサブ信号線sl1から第nのサブ信号線sln(n≧2)まで設けられている。
【0042】
接続部Cは、本体部2等の外部からの駆動信号に基づいて、複数のサブ振動素子群Tのうち、所定のサブ振動素子群を選択的に駆動させるために用いられる。具体的には、接続部Cは、サブ信号線slと等しい数のスイッチcを含んで構成されている。本実施形態では、サブ信号線sl1〜sl3それぞれに対応するスイッチc1〜c3の3つが設けられている。スイッチcは、信号線SLに対するサブ信号線slの接続と非接続とを切り替える。なお、接続部Cは、複数の振動素子群Lに対して少なくとも1つ設けられていればよい。本実施形態における接続部Cが「選択手段」の一例である。また、本実施形態におけるスイッチc1〜c3は、「第1切替手段」の一例である。
【0043】
スイッチ制御部91は、接続部Cの動作を制御する。具体的には、スイッチ制御部91は、スイッチcそれぞれの切り替えを行う。たとえば、制御部9からサブ振動素子T1のみを駆動させるようなディレイ信号が送信されると、スイッチ制御部91はディレイ情報に基づいてスイッチc1を動作させ、信号線SLとサブ信号線sl1を連結させる。この状態で、サブ振動素子群T1は、送信部31(第1パルサ31a)からの送信信号(駆動信号)を受け取り、超音波を送信することができる。なお、スイッチ制御部91が動作させるスイッチcは1つに限られない。一つのスイッチ制御部91が、複数のスイッチc(たとえばc1とc2)を同時に動作させることも可能である。その結果、複数のサブ振動素子群(たとえばT1とT2)を同時に駆動させることが可能となる。本実施形態におけるスイッチ制御部91は、「選択制御手段」の一例である。
【0044】
スイッチ制御部91は、複数の振動素子群Lに対して少なくとも1つ設けられていればよい。また、スイッチ制御部91が複数の振動素子群L毎に設けられている場合には、振動素子群Lそれぞれに対して異なる制御を行うことができる。たとえば、振動素子群L1ではサブ振動素子群T1のみを駆動させるようスイッチc1を動作させ、振動素子群L2では、サブ振動素子群T3のみを駆動させるようスイッチc3を動作させることができる。
【0045】
<送信部の構成>
本実施形態における送信部31は、パルサとして、第1パルサ31a、第2パルサ31b及び第3パルサ31cを含んで構成されている。各パルサは異なるパルスを発生させる。
【0046】
制御部9からのディレイ信号に基づき、第1パルサ31a、第2パルサ31b及び第3パルサ31cから一のパルサが選択される。選択されたパルサは、駆動信号を生成し、信号線SL及びサブ信号線slを介してサブ振動素子群Tの振動素子tに駆動信号を供給する。
【0047】
<受信部の構成>
本実施形態における受信部32は、ゲイン回路として、第1ゲイン部32a、第2ゲイン部32b及び第3ゲイン部32cを含んで構成されている。各ゲイン部はエコー信号に対して異なるゲインをかける。
【0048】
制御部9からのディレイ信号に基づき、第1ゲイン部32a、第2ゲイン部32b及び第3ゲイン部32cから一のゲイン部が選択される。選択されたゲイン部は、振動素子tで受信されたエコー信号に対して所定のゲインをかけて信号処理部4等の後処理部に送る。
【0049】
<制御部の構成>
本実施形態における制御部9は、算出部92を含んで構成されている。
【0050】
算出部92は、操作部82等により入力された超音波を送信する方向が基準方向に対してどれだけずれているかを算出する。基準方向とは、振動素子群Lにおける超音波の送信方向に対して任意に設定される方向である。
【0051】
制御部9は、算出部92の算出結果に基づいて駆動させるサブ振動素子群Tを決定し、それに基づくディレイ情報(スイッチ制御のための情報)をスイッチ制御部91に送信する。なお、算出部92及び制御部9による処理は振動素子群L毎に行うことができる。つまり、制御部9は、振動素子群Lそれぞれに対して異なるディレイ信号を送信することができる。
【0052】
算出部92及び制御部9の処理の一例を、図7を用いて具体的に説明する。図7は、1つの振動素子群Lを側面(Y方向)から見た場合のX−Z断面図である。ここでは、超音波を送信する方向を「S」とし、基準方向を「P」とする。また、基準方向に対する角度を「θ」とする。更に、一の振動素子群Lにおける各振動素子tから送信される超音波ビーム間の角度を「γ」であるとする。
【0053】
まず、算出部92は、基準方向Pに対する超音波の送信方向Sの角度θを算出する。制御部9は、角度θと角度γの関係に基づいて、駆動させる振動素子t(サブ振動素子群T)を決定する。角度γと角度θの関係はたとえば表1に示すようなテーブルにより予め定められている。
【0054】
[表1]
【0055】
<動作>
次に、図8を参照して本実施形態に係る超音波診断装置100の動作について説明する。なお、基準方向Pは、予め定められているものとする。
【0056】
まず、操作部82等を介して超音波診断装置100に対して超音波を送信する方向Sを入力する(S10)。
【0057】
算出部92は、基準方向Pに対してS10で入力された超音波を送信する方向Sがどれだけずれているか(角度θ)を算出する(S11)。
【0058】
制御部9は、S11での算出結果に基づいてテーブルデータ等から駆動させる振動素子tを決定する(S12)。ここでは、振動素子t1が決定されたものとする。
【0059】
制御部9は、スイッチ制御部91及び送受信部3に対しS12による決定結果に基づくディレイ信号及びディレイ情報を送信する。スイッチ制御部91は、ディレイ情報に基づいてスイッチc1を駆動させ、信号線SLとサブ信号線sl1を接続させる(S13)。
【0060】
送受信部3の送信部31は、ディレイ信号に基づいて第1パルサ31aを駆動させ、駆動信号を振動素子t1に送信する。駆動信号に基づいて振動素子t1は被検体に対して超音波を送信する(S14)。
【0061】
送受信部3の受信部32は、ディレイ信号に基づいて第1ゲイン部32aを駆動させ、エコー信号に対して所定のゲインをかけて受信する(S15)。
【0062】
S15でゲインがかけられたエコー信号は信号処理部4等(図6では記載を省略している)に送られ、所定の処理がなされた後(S16)、合成部6で画像データを得る(S17)。表示部81は、S17で得られた画像データに基づく画像を表示させる。
【0063】
<作用・効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0064】
本実施形態に係る超音波プローブ1は、複数の振動素子群L(たとえばL1〜L96)が配列された振動素子ユニット10を有する。複数の振動素子群Lのそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)を有する。第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)に含まれる振動素子t(t1〜tn)の放射面は、サブ振動素子群T(T1〜Tn)毎に異なる方向に向けて配置されている。また、超音波プローブ1は、選択手段(接続部C)を有する。選択手段(接続部C)は、外部からの駆動信号に基づいて、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)のうち、所定のサブ振動素子群Tを選択的に駆動させるために設けられている。
【0065】
また、本実施形態に係る超音波診断装置100は、超音波プローブ1と、送受信手段(送受信部3)と、選択制御手段(スイッチ制御部91)とを含んで構成されている。超音波プローブ1は、複数の振動素子群L(たとえばL1〜L96)が配列された振動素子ユニット10を有する。複数の振動素子群Lのそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)を有する。第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)に含まれる振動素子t(t1〜tn)の放射面は、サブ振動素子群T(T1〜Tn)毎にそれぞれ異なる方向に向けて配置されている。また、超音波プローブ1は、選択手段(接続部C)を有する。選択手段(接続部C)は、駆動信号に基づいて、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)のうち、所定のサブ振動素子群Tを選択的に駆動させるために設けられている。送受信手段(送受信部3)は、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)に含まれる振動素子t(t1〜tn)に対して前記駆動信号を送ることにより超音波の送受信を行わせる。選択制御手段(スイッチ制御部91)は、選択手段(接続部C)の動作を制御する。
【0066】
このように構成することで、複数の振動素子群L毎に超音波を送受信したい方向のみの振動素子を駆動させることができるため、グレーティングローブが形成され難い。従って、超音波診断画像中に生じる虚像の発生度合いを低減することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る超音波プローブ1は、信号線SLと、第1から第nのサブ信号線slとを有する。信号線SLは、複数の振動素子群L(たとえばL1〜L96)と等しい数だけ設けられ、一端が装置本体と接続される。第1から第nのサブ信号線sl(sl1〜sln)は、一端が信号線SLの他端と接続可能に設けられ、他端が第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)それぞれと接続される。また、選択手段(接続部C)は、第1切替手段(スイッチc)を第1から第nのサブ信号線sl(sl1〜sln)と等しい数だけ有する。第1切替手段(スイッチc)は、信号線Lに対する第1から第nのサブ信号線sl(sl1〜sln)の接続と非接続とを切り替える。そして、選択手段(接続部C)は、第1切替手段(スイッチc)それぞれの切り替えにより、外部からの駆動信号に基づいて駆動させるサブ振動素子群T(T1〜Tn)を選択する。
【0068】
また、本実施形態に係る超音波診断装置100における超音波プローブ1は、信号線SLと、第1から第nのサブ信号線slとを有する。信号線SLは、複数の振動素子群L(たとえばL1〜L96)と等しい数だけ設けられ、一端が装置本体と接続される。第1から第nのサブ信号線sl(sl1〜sln)は、一端が信号線SLの他端と接続可能に設けられ、他端が第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)それぞれと接続される。また、選択手段(接続部C)は、第1切替手段(スイッチc)を第1から第nのサブ信号線sl(sl1〜sln)と等しい数だけ有する。第1切替手段(スイッチc)は、信号線Lに対する第1から第nのサブ信号線sl(sl1〜sln)の接続と非接続とを切り替える。また、選択制御手段(スイッチ制御部91)は、第1切替手段(スイッチc)それぞれを切り替えることにより、送受信手段(送受信部3)からの駆動信号に基づいて駆動させるサブ振動素子群T(T1〜Tn)を選択する。
【0069】
このように構成することで、複数の振動素子群L毎に超音波を送受信したい方向のみの振動素子tを駆動させることができるため、グレーティングローブが形成され難い。従って、超音波診断画像中に生じる虚像の発生度合いを低減することができる。また、第1切替手段及び第1から第nのサブ信号線slが設けられることで、信号線SLは振動素子群L毎に一本で十分となる。よって、高い空間分解能を得るために振動素子tの数を増やした場合であっても信号線SLの数は変わらないため、ケーブルが太くなることがない。
【0070】
[第2実施形態]
次に、図9及び図10を参照して、第2実施形態に係る超音波診断装置について説明する。図9は、本実施形態を説明するための超音波診断装置の概略を示すブロック図である。なお、図9では、1つの振動素子群Lのみを示している。また、一部の構成を省略している。図10は、超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。第1実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0071】
<超音波プローブの構成>
本実施形態において、超音波プローブ1内には、複数の振動素子群L(たとえば96個)、複数の振動素子群Lと等しい数の信号線SL´、1つの振動素子群Lに含まれるサブ振動素子群Tに対応するサブ信号線sl´、複数の振動素子群Lと等しい数の接続部C´、スイッチ制御部91が設けられている。なお、図9では、1つの振動素子群L、1つの信号線SL´、1つの接続部C´及びサブ信号線sl´1〜sl´3のみを示す。また、本実施形態において用いられる振動素子tは、MUT素子である。
【0072】
信号線SL´は、一端が本体部2内の送受信部3(送信部31及び受信部32)と接続され、他端がサブ信号線sl´1〜sl´3と接続されている。なお、信号線SL´は、ケーブル(図示なし)内を通って送受信部3と接続されている。
【0073】
サブ信号線sl´1〜sl´3は、一端が信号線SL´の他端と接続され、他端がサブ振動素子群T1〜T3それぞれと接続されている。なお、一般的にサブ信号線sl´は、サブ振動素子群Tの数に合わせて第1のサブ信号線sl´1から第nのサブ信号線sl´n(n≧2)まで設けられている。
【0074】
接続部C´は、本体部2等の外部からの駆動信号に基づいて、複数のサブ振動素子群Tのうち、所定のサブ振動素子群を選択的に駆動させるために用いられる。具体的には、接続部C´は、サブ信号線sl´と等しい数のスイッチc´を含んで構成されている。本実施形態では、サブ信号線sl´1〜sl´3それぞれに対応するスイッチc´1〜c´3の3つが設けられている。スイッチc´は、バイアス電源15(後述)からのバイアス電圧を第1から第nのサブ振動素子群に対して選択的に印加させるために設けられている。なお、接続部C´は、複数の振動素子群Lに対して少なくとも1つ設けられていればよい。本実施形態における接続部C´が「選択手段」の一例である。また、本実施形態におけるスイッチc´1〜c´3は、「第2切替手段」の一例である。
【0075】
スイッチ制御部91は、接続部C´の動作を制御する。具体的には、スイッチ制御部91は、スイッチc´それぞれの切り替えを行う。たとえば、制御部9からサブ振動素子T1のみを駆動させるようなディレイ信号が送信されると、スイッチ制御部91はディレイ情報に基づいてスイッチc´1を動作させ、バイアス電源15(後述)とサブ信号線sl´1を連結させる。この状態で、バイアス電源15はサブ信号線sl´1を介してバイアス電圧をサブ振動素子群T1に印加する。これにより、サブ振動素子群T1のみが、送信部31(第1パルサ31a)からの送信信号(駆動信号)を受け取り、超音波を送信することができる。なお、スイッチ制御部91が動作させるスイッチc´は1つに限られない。一つのスイッチ制御部91が、複数のスイッチc´(たとえばc´1とc´2)を同時に動作させることも可能である。その結果、複数のサブ振動素子群(たとえばT1とT2)を同時に駆動させることが可能となる。本実施形態におけるスイッチ制御部91は、「選択制御手段」の一例である。
【0076】
スイッチ制御部91は、複数の振動素子群Lに対して少なくとも1つ設けられていればよい。この場合は、振動素子群L(たとえばL1〜L96)のそれぞれに属するサブ振動素子群T(たとえばT1)は、共通接続されている。また、スイッチ制御部91が複数の振動素子群L毎に設けられている場合には、振動素子群Lそれぞれに対して異なる制御を行うことができる。たとえば、振動素子群L1ではサブ振動素子群T1のみを駆動させるようスイッチc´1を動作させ、振動素子群L2では、サブ振動素子群T3のみを駆動させるようスイッチc´3を動作させることができる。
【0077】
<本体部の構成>
本実施形態では、本体部2内にバイアス電源15が設けられている。バイアス電源15は、制御部9からのディレイ信号に基づき、接続部C´を介してサブ振動素子群T(振動素子t)に印加させるバイアス電圧を発生させる。
【0078】
<動作>
次に、図10を参照して本実施形態に係る超音波診断装置100の動作について説明する。なお、基準方向Pは、予め定められているものとする。
【0079】
まず、操作部82等を介して超音波診断装置100に対して超音波を送信する方向Sを入力する(S20)。
【0080】
算出部92は、基準方向Pに対してS20で入力された超音波を送信する方向Sがどれだけずれているか(角度θ)を算出する(S21)。
【0081】
制御部9は、S21での算出結果に基づいてテーブルデータ等から駆動させる振動素子tを決定する(S22)。ここでは、振動素子t1が決定されたものとする。
【0082】
制御部9は、バイアス電源15、スイッチ制御部91及び送受信部3に対しS22による決定結果に基づくディレイ信号及びディレイ情報を送信する。スイッチ制御部91は、ディレイ情報に基づいてスイッチc´1を駆動させ、バイアス電源15とサブ信号線sl´1を接続させる(S23)。その結果、サブ信号線sl´1を介して振動素子t1にバイアス電圧が印加され、振動素子t1が動作可能となる(S24)。
【0083】
送受信部3の送信部31は、ディレイ信号に基づいて第1パルサ31aを駆動させ、駆動信号を振動素子t1に送信する。駆動信号に基づいて振動素子t1は被検体に対して超音波を送信する(S25)。
【0084】
送受信部3の受信部32は、ディレイ信号に基づいて第1ゲイン部32aを駆動させ、エコー信号に対して所定のゲインをかけて受信する(S26)。
【0085】
S15でゲインがかけられたエコー信号は信号処理部4等(図9では記載を省略している)に送られ、所定の処理がなされた後(S27)、合成部6で画像データを得る(S28)。表示部81は、S28で得られた画像データに基づく画像を表示させる。
【0086】
<作用・効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0087】
本実施形態に係る超音波プローブ1に含まれる振動素子tはMUT素子である。選択手段(接続部C´)は、第2切替手段(スイッチc´)を第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)と等しい数だけ有する。第2切替手段(スイッチc´)は、バイアス電源15からのバイアス電圧を第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)に対して選択的に印加させる。そして、選択手段(接続部C´)は、第2切替手段(スイッチc´)それぞれの切り替えにより、外部からの駆動信号に基づいて駆動させるサブ振動素子群T(T1〜Tn)を選択する。
【0088】
また、本実施形態に係る超音波診断装置100に含まれる振動素子tはMUT素子である。選択手段(接続部C´)は、第2切替手段(スイッチc´)を第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)と等しい数だけ有する。第2切替手段(スイッチc´)は、バイアス電源15からのバイアス電圧を第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)に対して選択的に印加させる。選択制御手段(スイッチ制御部91)は、第2切替手段(スイッチc´)それぞれを切り替えることにより、送受信手段(送受信部3)からの駆動信号に基づいて駆動させるサブ振動素子群T(T1〜Tn)を選択する。
【0089】
このように振動素子に印加するバイアス電圧を選択することにより、複数の振動素子群L毎に超音波を送受信したい方向のみの振動素子tを駆動させることができるため、グレーティングローブが形成され難い。従って、超音波診断画像中に生じる虚像の発生度合いを低減することができる。また、第2切替手段及び第1から第nのサブ信号線sl´が設けられることで、信号線SL´は振動素子群L毎に一本で十分となる。よって、振動素子tの数を増やした場合であっても信号線SL´の数は変わらないため、ケーブルが太くなることがない。
【0090】
[第3実施形態]
次に、図11及び図12を参照して、第3実施形態に係る超音波診断装置について説明する。図11は、本実施形態を説明するための超音波診断装置の概略を示すブロック図である。なお、図11では、1つの振動素子群Lのみを示している。また、一部の構成を省略している。図12は、超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0091】
<超音波プローブの構成>
本実施形態において、超音波プローブ1内には、複数の振動素子群L(たとえば96個)、各振動素子群Lに含まれるサブ振動素子群Tと等しい数の信号線SL´´が設けられている。なお、図11では、1つの振動素子群L(サブ振動素子群T1〜T3)、3つの信号線SL´´1〜SL´´3のみを示す。
【0092】
信号線SL´´は、一端がサブ振動素子群Tと接続され、他端が本体部2内に設けられた接続部C´´(後述)を介して送受信部3(送信部31、受信部32)と接続可能となっている。
【0093】
<本体部の構成>
本実施形態において、本体部2内には、接続部C´´が設けられている。接続部C´´は、送信部31からの駆動信号に基づいて、複数のサブ振動素子群Tのうち、所定のサブ振動素子群を選択的に駆動させる場合に送信部31と接続される。また、接続部C´´は、サブ振動素子群T(振動素子t)で取得したエコー信号を受信する場合に受信部32と接続される。具体的には、接続部C´´は、信号線SL´´と等しい数のスイッチc´´を含んで構成されている。本実施形態では、信号線SL´´1〜SL´´3それぞれに対応するスイッチc´´1〜c´´3の3つが設けられている。スイッチc´´は、信号線SL´´と送信部31及び受信部32との接続を切り替えるために設けられている。本実施形態における接続部C´´が「選択手段」の一例である。
【0094】
本実施形態において、制御部9は、タイミング制御部93を含んで構成されている。
【0095】
タイミング制御部93は、信号線SL´´と送信部31及び受信部32との接続を切り替えるタイミングを制御する。たとえば、タイミング制御部93は、ディレイ信号に基づいて信号線SL´´1と送信部31(第1パルサ31a)とを接続するようスイッチ制御部91にディレイ情報を送信する。また、送信部31から駆動信号が送信されたことを検知すると、タイミング制御部93は、信号線SL´´1と受信部32(第1ゲイン部32a)とを接続するようスイッチ制御部91にディレイ情報を送信する。スイッチ制御部91は、タイミング制御部93からのディレイ情報に基づき、接続部C´´(スイッチc´´)の動作の制御を行う。
【0096】
<動作>
次に、図12を参照して本実施形態に係る超音波診断装置100の動作について説明する。なお、基準方向Pは、予め定められているものとする。
【0097】
まず、操作部82等を介して超音波診断装置100に対して超音波を送信する方向Sを入力する(S30)。
【0098】
算出部92は、基準方向Pに対してS30で入力された超音波を送信する方向Sがどれだけずれているか(角度θ)を算出する(S31)。
【0099】
制御部9は、S31での算出結果に基づいてテーブルデータ等から駆動させる振動素子tを決定する(S32)。ここでは、振動素子t1が決定されたものとする。
【0100】
制御部9は、タイミング制御部93、送信部31及び受信部32に対しS32による決定結果に基づくディレイ信号を送信する。タイミング制御部93は、ディレイ信号に基づいて振動素子t1が接続される信号線SL´´1と送信部31内の第1パルサ31aとを接続するようスイッチ制御部91にディレイ情報を送信する。スイッチ制御部91は、ディレイ情報に基づいてスイッチc´´1を駆動させ、信号線SL´´1と第1パルサ31aとを接続させる(S33)。
【0101】
送信部31は、ディレイ信号に基づいて第1パルサ31aを駆動させ、駆動信号を振動素子t1に送信する。駆動信号に基づいて振動素子t1は被検体に対して超音波を送信する(S34)。
【0102】
その後、第1パルサ31aから駆動信号が送信されたことを検知すると、タイミング制御部93は、信号線SL´´と第1ゲイン部32aとを接続するようスイッチ制御部91に接続信号を送信する。スイッチ制御部91は、接続信号に基づいてスイッチc´´1を切り替え、信号線SL´´1と第1ゲイン部32aとを接続させる(S35)。
【0103】
送受信部3の受信部32は、ディレイ信号に基づいて第1ゲイン部32aを駆動させ、エコー信号に対して所定のゲインをかけて受信する(S36)。
【0104】
S36でゲインがかけられたエコー信号は信号処理部4等(図11では記載を省略している)に送られ、所定の処理がなされた後(S37)、合成部6で画像データを得る(S38)。表示部81は、S38で得られた画像データに基づく画像を表示させる。
【0105】
<作用・効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0106】
本実施形態に係る超音波診断装置100は、超音波プローブ1と、送信手段(送信部31)と、受信手段(受信部32)と、選択手段(接続部C´´)と、タイミング制御手段(タイミング制御部93)と、選択制御手段(スイッチ制御部91)とを有する。超音波プローブ1は、複数の振動素子群L(たとえばL1〜L96)が配列された振動素子ユニットを有する。複数の振動素子群L(たとえばL1〜L96)のそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)を有し、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)に含まれる振動素子tの放射面は、サブ振動素子群T毎に異なる方向に向けて配置されている。送信手段(送信部31)は、第1から第nのサブ振動素子群Tに含まれる振動素子tに対して駆動信号を送ることにより超音波の送信を行わせる。受信手段(受信部32)は、送信された超音波に基づくエコー信号を受信する。選択手段(接続部C´´)は、駆動信号に基づいて、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)のうち、所定のサブ振動素子群Tを選択的に駆動させる場合に送信手段(送信部31)と接続され、エコー信号を受信する場合に受信手段(受信部32)と接続される。タイミング制御手段(タイミング制御部93)は、選択手段(接続部C´´)と送信手段(送信部31)及び受信手段(受信部32)との接続を切り替えるタイミングを制御する。選択制御手段(スイッチ制御部91)は、タイミング制御手段(タイミング制御部93)からの信号に基づき、選択手段(接続部C´´)の動作を制御する。
【0107】
このように構成することで、複数の振動素子群L毎に超音波を送受信したい方向のみの振動素子を駆動させることができるため、グレーティングローブが形成され難い。従って、超音波診断画像中に生じる虚像の発生度合いを低減することができる。
【0108】
[実施例]
次に、図13Aから図16Bを参照して、上述した実施形態の具体的な実施例及び比較例について説明する。
【0109】
<比較例>
比較例は、基部β上に振動素子αが配置された構成である。図13Aは、振動素子αから送信される超音波の指向性を示す図である。なお、図13Aは、振動素子αをX−Z方向から見た場合の指向性を示している。
【0110】
図13Bは、図13Aの構成において、超音波が送信される角度と超音波の圧力(音圧)の関係を示すグラフである。なお、グラフの縦軸は、超音波の圧力(音圧)を示す。グラフの横軸は、超音波を送信する角度を示す。ここでは、横軸の中心(Z方向)を角度0°とし、+X方向を角度が+、−X方向を角度が−であるとしている。
【0111】
図13Aに示す通り、一つの振動素子で、広範囲に超音波を発生させるためには振動素子αの指向性を広く確保する必要がある。よって、図13Bに示すように、超音波を送信する角度が大きくなっても(小さくなっても)ある程度の高い圧力(音圧)で超音波が送信されることとなる。
【0112】
しかしながら、このような場合、超音波を発生させたい方向とは異なる方向にグレーティングローブが形成される場合がある。このグレーティングローブにより、超音波診断画像上に虚像が形成されるという問題が生じる。
<実施例>
【0113】
図14A、図15A及び図16Aは、基部12に設けられた振動素子t(t1〜t3)から送信される超音波の指向性を示す図である。ここでは、振動素子tをX−Z方向から見た場合の指向性を示している。なお、図14A、図15A及び図16Aでは、駆動させる振動素子tのみを記載している。
【0114】
図14B、図15B及び図16Bは、図14A、図15A及び図16Aの構成において、超音波が送信される角度と超音波の圧力(音圧)の関係を示すグラフである。なお、グラフの縦軸は、超音波の圧力(音圧)を示す。グラフの横軸は、超音波を送信する角度を示す。ここでは、横軸の中心(Z方向)を角度0°とし、+X方向を角度が+、−X方向を角度が−であるとしている。
【0115】
図14A及び図14Bに示す通り、振動素子t2を駆動させた場合、振動素子t2の放射面が向く方向(角度0°方向)に送信される超音波の圧力(音圧)が高くなる。なお、比較例と比べ、振動素子t2のサイズが小さいため、振動素子t2の作る音圧の指向性は広くなる。しかし、振動素子t2を駆動して形成するビーム方向は、ほぼZ方向(基準方向P)の近傍であるため、グレーティングは形成され難い。
【0116】
図15Aのように、振動素子t1及び振動素子t2を駆動させた場合にも、振動素子t1及び振動素子t2の放射面が向く方向に送信される超音波の圧力(音圧)が他の方向に比べ高くなることが分かる(図15B参照)。図16Aのように振動素子t1のみを駆動させた場合にも同様に、振動素子t1の放射面が向く方向に送信される超音波の圧力(音圧)が他の方向に比べ高くなっていることが分かる(図16B参照)。よって、超音波を発生させたい方向とは異なる方向にグレーティングローブが形成され難い。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0118】
1 超音波プローブ
2 本体部
3 送受信部
4 信号処理部
5 画像生成部
6 合成部
7 表示制御部
8 ユーザインターフェース(UI)
9 制御部
10 振動素子ユニット
11 台座
12 基部
13 面
14 溝部
31 送信部
31a 第1パルサ
31b 第2パルサ
31c 第3パルサ
32 受信部
32a 第1ゲイン部
32b 第2ゲイン部
32c 第3ゲイン部
81 表示部
82 操作部
91 スイッチ制御部
92 算出部
100 超音波診断装置
C 接続部
L 振動素子群
T サブ振動素子群
c スイッチ
t 振動素子
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波プローブ及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブを用いて被検体内に超音波を送信してその反射波を受信することにより、被検体の生体情報を取得するものである。
【0003】
超音波の送受信は、超音波プローブに設けられた複数の振動素子によって行われる。各振動素子はその構造により、指向性が予め決まっている。従って、広範囲に超音波を発生させるためには指向性を広く確保できる構造が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−146337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、指向性を広く確保した場合、超音波を発生させたい方向とは異なる方向に音圧の高い領域(以下、「グレーティングローブ」という場合がある)が形成される場合がある。このグレーティングローブにより、超音波診断画像中に虚像が生じるという問題があった。
【0006】
実施形態は、前述の問題点を解決するためになされたものであり、超音波診断画像中に生じる虚像の発生度合いを低減することができる超音波プローブ及び超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この実施形態に係る超音波プローブは、複数の振動素子群が配列された振動素子ユニットと、選択手段とを有する。複数の振動素子群のそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群を有する。第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子の放射面は、サブ振動素子群毎に異なる方向に向けて配置されている。選択手段は、外部からの駆動信号に基づいて、第1から第nのサブ振動素子群のうち、所定のサブ振動素子群を選択的に駆動させるために設けられている。
【0008】
また、この実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブと、送受信手段と、選択制御手段とを有する。超音波プローブは、複数の振動素子群が配列された振動素子ユニットと、選択手段とを有する。複数の振動素子群のそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群を有する。第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子の放射面は、サブ振動素子群毎に異なる方向に向けて配置されている。選択手段は、駆動信号に基づいて、第1から第nのサブ振動素子群のうち、所定のサブ振動素子群を選択的に駆動させるために設けられている。送受信手段は、第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子に対して駆動信号を送ることにより超音波の送受信を行わせる。選択制御手段は、選択手段の動作を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に共通の超音波診断装置の概略を示すブロック図である。
【図2】実施形態に共通の振動素子ユニットの構成の一例を示す図である。
【図3】実施形態に共通の振動素子ユニットの構成の一例を示す図である。
【図4】実施形態に共通の振動素子ユニットの構成の別例を示す図である。
【図5】実施形態に共通の振動素子ユニットの構成の別例を示す図である。
【図6】第1実施形態に係る超音波診断装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図7】第1実施形態に係る超音波診断装置の説明を補足するための図である。
【図8】第1実施形態に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】第2実施形態に係る超音波診断装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図10】第2実施形態に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】第3実施形態に係る超音波診断装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図12】第3実施形態に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図13A】比較例の構成を説明するための図である。
【図13B】比較例を説明するためのグラフである。
【図14A】実施例の構成を説明するための図である。
【図14B】実施例を説明するためのグラフである。
【図15A】実施例の構成を説明するための図である。
【図15B】実施例を説明するためのグラフである。
【図16A】実施例の構成を説明するための図である。
【図16B】実施例を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から図4を参照して、第1から第3実施形態に共通する超音波診断装置の構成について説明する。
【0011】
<超音波診断装置の構成>
図1は、超音波診断装置100のブロック図である。超音波診断装置100は、超音波プローブ1と、本体部2とを含んで構成されている。本体部2は、送受信部3と、信号処理部4と、画像生成部5と、合成部6と、表示制御部7と、ユーザインターフェース(UI)8と、制御部9とを含んで構成されている。超音波プローブ1と本体部2は、超音波プローブ1に設けられたケーブル(図示なし)を介して接続される。
【0012】
(超音波プローブ1)
超音波プローブ1には、所定の個数の振動素子を1つの群とする振動素子群が複数配列された振動素子ユニット10が配置されている。超音波プローブ1は、本体部2と接続されることにより被検体に超音波を送信し、被検体からの反射波をエコー信号として受信することができる。振動素子ユニット10の構成の詳細は後述する。
【0013】
(送受信部3)
送受信部3は、超音波プローブ1に駆動信号を供給して超音波を発生させ、超音波プローブ1が受けたエコー信号を受信する。送受信部3は、受信したエコー信号を信号処理部4に出力する。送受信部3は、送信部31と受信部32とを含んで構成されている。なお、本実施形態では、振動素子の数に対応して送受信部3は複数設けられている。また、送受信部3は超音波プローブ1内に設けられていてもよい。実施形態における送受信部3が「送受信手段」の一例である。
【0014】
(送信部31)
送信部31は、超音波プローブ1に駆動信号を供給して超音波を発生させる。送信部31は、超音波プローブ1に駆動信号を供給して所定の焦点にビームフォームされた超音波を送信させる。所定の焦点に対するビームフォームは、たとえば、図示しない音響レンズとアレイ方向(後述のX方向)との位相整合によりなされる。送信部31は、たとえば図示しないクロック発生器と、送信遅延回路と、パルサ回路とを有する。クロック発生器は、超音波信号の送信タイミングや送信周波数を決めるクロック信号を発生する。送信遅延回路は、超音波を所定の深さに集束させるための集束用遅延時間と、超音波を所定方向に送信するための偏向用遅延時間とに従って、超音波の送信時に遅延をかけて送信フォーカスを実施する。本実施形態では、特に、超音波を所定方向に送信するための偏向用遅延時間制御が重要である。パルサ回路は、超音波振動素子に対応する個別チャンネルの数分のパルサを有する。パルサ回路は、遅延がかけられた送信タイミングで駆動パルス(駆動信号)を生成し、超音波プローブ1の振動素子に駆動パルス(駆動信号)を供給する。
【0015】
(受信部32)
受信部32は、超音波プローブ1が受信したエコー信号を受信する。受信部32は、受信したエコー信号に対して遅延処理を行うことにより、アナログのエコー信号を整相加算されたデジタルのデータに変換する。受信部32は、たとえば図示しないゲイン回路と、A/D変換器と、受信遅延回路と、加算器を有する。ゲイン回路は、超音波プローブ1の振動素子から出力されるエコー信号を受信チャンネルごとに増幅する(ゲインをかける)。A/D変換器は、増幅されたエコー信号をデジタル信号に変換する。受信遅延回路は、デジタル信号に変換されたエコー信号に、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。具体的には、受信遅延回路は、所定の深さからの超音波を集束させるための集束用遅延時間と、所定方向に対して受信指向性を設定するための偏向用遅延時間とを、デジタルのエコー信号に与える。その遅延時間は、必ずしも収束用遅延量と偏向角用遅延量との単純計算ではなく、所定の公式・原理によって計算されるものである。加算器は、遅延時間が与えられたエコー信号を加算する。その加算によって、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。すなわち、受信遅延回路と加算器とによって、所定方向から得られたエコー信号は整相加算される。受信部32は、遅延処理が施されたエコー信号を信号処理部4に出力する。
【0016】
(信号処理部4)
信号処理部4は送受信部3から出力されたエコー信号に対して各種の信号処理を行う。たとえば、信号処理部4はBモード処理部を有する。Bモード処理部はエコー信号を送受信部3から受けて、エコー信号の振幅情報の映像化を行う。具体的には、Bモード処理部は、エコー信号に対してバンドパスフィルタ処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。また、信号処理部4はCFM(Color Flow Mapping)処理部を有していてもよい。CFM処理部は血流情報の映像化を行う。血流情報には、速度、分布、又はパワーなどの情報がある。また、信号処理部4はドプラ処理部を有していてもよい。ドプラ処理部はエコー信号を位相検波することによりドプラ偏移周波数成分を取り出し、FFT処理を施すことにより血流速度を表すドプラ周波数分布を生成する。信号処理部4は、信号処理が施されたエコー信号(超音波ラスタデータ)を画像生成部5に出力する。
【0017】
(画像生成部5)
画像生成部5は、信号処理部4から出力された信号処理後のエコー信号(超音波ラスタデータ)に基づいて超音波画像データを生成する。画像生成部5は、例えばDSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)を有する。画像生成部5は、走査線の信号列で表される信号処理後のエコー信号を、直交座標系で表される画像データに変換する(スキャンコンバージョン処理)。画像生成部5は、Bモード処理部によって信号処理が施されたエコー信号にスキャンコンバージョン処理を施すことにより、被検体の組織の形状を表すBモード画像データを生成する。画像生成部5は、合成部6に超音波画像データを出力する。
【0018】
たとえば、超音波プローブ1及び送受信部3は、被検体内の断面を超音波で走査し、画像生成部5は、断面における組織の形状を2次元的に表すBモード画像データ(断層像データ)を生成する。また、超音波プローブ1及び送受信部3は、3次元領域を超音波で走査することによりボリュームデータを取得してもよい。この場合、画像生成部5は、ボリュームデータにボリュームレンダリングを施すことにより、組織の形状を立体的に表す3次元画像データを生成してもよい。または、画像生成部5は、ボリュームデータにMPR(Multi Planar Reconstruction)処理を施すことにより、任意の断面における画像データ(MPR画像データ)を生成してもよい。
【0019】
この実施形態に係る超音波診断装置は、図示しない画像記憶部を備えていてもよい。画像記憶部は、この実施形態に係る超音波診断装置により得られたデータを記憶する。たとえば画像記憶部は、送受信部3から出力されたエコー信号を記憶する。また、画像記憶部は、信号処理部4から出力された超音波ラスタデータを記憶してもよい。また、画像記憶部は、画像生成部5から出力された断層像データなどの超音波画像データを記憶してもよい。
【0020】
(合成部6)
合成部6は、複数の超音波画像データを合成することにより、合成画像データを生成する。合成部6による画像データの合成は公知の手法により行われる。たとえば複数の超音波画像データそれぞれに対して当該超音波画像データが取得された深度に応じた重みを付け、それらの画像を加算平均することにより、合成画像データを生成することができる。
合成部6は、合成画像データを表示制御部7に出力する。
【0021】
(表示制御部7)
表示制御部7は、合成画像データを合成部6から受けて、合成画像データに基づく合成画像を表示部81に表示させる。
【0022】
(ユーザインターフェース8)
ユーザインターフェース(UI)8は、表示部81と操作部82とを有する。表示部81は、CRTや液晶ディスプレイなどのモニタで構成されている。操作部82は、キーボードやマウスなどの入力装置で構成されている。
【0023】
(制御部9)
制御部9は、超音波診断装置100の各部の動作を制御する。たとえば、制御部9は、送受信部3にディレイ信号を送信し、超音波の送受信を制御する。
【0024】
なお、画像生成部5、合成部6、及び表示制御部7のそれぞれの機能は、プログラムによって実行されてもよい。一例として、画像生成部4、合成部6、及び表示制御部7はそれぞれ、CPU、GPU、又はASICなどの図示しない処理装置と、ROM、RAM、又はHDDなどの図示しない記憶装置とによって構成されていてもよい。記憶装置には、画像生成部5の機能を実行するための画像生成プログラムと、合成部6の機能を実行するための合成プログラムと、表示制御部7の機能を実行するための表示処理プログラムと、が記憶されている。CPUなどの処理装置が、記憶部に記憶されている各プログラムを実行することにより、各部の機能を実行する。
【0025】
<振動素子ユニットの構成>
図2及び図3を用いて実施形態に共通する振動素子ユニット10の構成について詳述する。図2は、振動素子ユニット10の斜視図である。図3は振動素子ユニット10のX−Z断面の拡大図である。なお、図3において振動素子ユニット10の一部は省略されている。
【0026】
図2に示すように、振動素子ユニット10は、台座11、及び複数の振動素子群Lを含んで構成されている。
【0027】
台座11は、石英(SiO2)基板やシリコン(Si)基板等の半導体プロセスに使用可能な材料によって形成されている。台座11の上面には、複数の振動素子群Lが配列される。実施形態では、列状に形成された7つの振動素子群L1〜L7がアレイ状に配置されているが、振動素子群Lの数はこれに限られない。実施形態において、振動素子ユニット10の走査方向をX方向とし、台座11の上面に沿って走査方向と垂直な方向(「エレベーション方向」)をY方向とし、台座11の厚み方向をZ方向とする。
【0028】
図2及び図3に示すように、複数の振動素子群Lはそれぞれ、基部12、サブ振動素子群Tを含んで構成されている。実施形態では、振動素子群Lそれぞれは、3つのサブ振動素子群T1〜T3を含んで構成されている。なお、サブ振動素子群Tの個数は3つに限られない(一般的には、第1から第nのサブ振動素子群(n≧2)まで設けることが可能である)。
【0029】
基部12は、台座11の上面に列状に設けられ、サブ振動素子群Tが配置される面13を有する。実施形態において、基部12は、台形の凸形状で形成されている。また、実施形態において、面13はサブ振動素子群Tの数に合わせ3つ(面13a、13b、13c)形成されている。面13aにはサブ振動素子群T1、面13bにはサブ振動素子群T2、面13cにはサブ振動素子群T3が配置されている。
【0030】
サブ振動素子群Tは、それぞれ複数の振動素子tを有している。実施形態において、複数の振動素子tはエレベーション方向(Y方向)に一列で配列されている。また、実施形態において、サブ振動素子群T1に含まれる振動素子をt1、サブ振動素子群T2に含まれる振動素子をt2、サブ振動素子群T3に含まれる振動素子をt3とする。
【0031】
振動素子tは、送信部31からの信号を受けて放射面から超音波を送信する。また、振動素子tは、被検体からのエコー信号を受信し、受信部32に送る。基部12に複数のサブ振動素子群Tが配置された状態において、各サブ振動素子群Tの振動素子tの放射面は、サブ振動素子群T毎にそれぞれ異なる方向に向けて配置されている。すなわち、実施形態において、振動素子t1、t2、t3の放射面はそれぞれ異なる方向に向けて配置されている。なお、実施形態では、複数の振動素子群Lにおいて、各振動素子tの放射面は同じ方向に向けて配置されている(たとえば振動素子群L1の振動素子t1の放射面と振動素子群L2の振動素子t1の放射面とは同じ方向に向けて配置されている)。
【0032】
振動素子tは、圧電体やMUT(Micromachining Ultrasound Transducer)素子を用いることができる。MUT素子には、cMUT(Capacitive Micromachining Ultrasound Transducer:静電容量型トランスデューサ)や、pMUT(Piezoelectric Micromachining Ultrasound Transducer:圧電型トランスデューサ)が含まれる。
【0033】
実施形態では、基部12の間に溝部14が設けられている。溝部14を設けることにより、各基部12に配置されたサブ振動素子群Tを音響的に分離することが可能となる。
【0034】
<振動素子ユニットの変形例>
振動素子ユニット10の構成は、図2に限られない。図4は振動素子ユニット10´の斜視図である。図5は、振動素子ユニット10´´のX−Z断面の拡大図である。
【0035】
たとえば、図4に示すように、マトリクス状に配置された円柱状の基部12´上に複数の振動素子群L´(図4では16個)が配列されている構成でもよい。この場合、円柱の上面13dと側面13eにサブ振動素子群T´(T1´とT2´)が配置されている。
【0036】
或いは、図5に示すように、基部12´´が3つに分割され、それぞれにサブ振動素子群T1´´〜T3´´が配置される構成でもよい。
【0037】
このように、基部12は複数のサブ振動素子群Tを配置することができる構成であればよい。より具体的には、基部12は、振動素子tの放射面をサブ振動素子群T毎に異なる方向に向けて配置させるような構成であればよい。よって、基部12は凸形状に限らず凹形状であってもよい。また、基部12は台座11と一体に成形されていてもよい。
【0038】
[第1実施形態]
次に、図6から図8を参照して、第1実施形態に係る超音波診断装置について説明する。図6は、本実施形態を説明するための超音波診断装置の概略を示すブロック図である。なお、図6では、1つの振動素子群Lのみを示している。また、一部の構成を省略している。図8は、超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【0039】
<超音波プローブの構成>
本実施形態において、超音波プローブ1内には、複数の振動素子群L(たとえば96個)、複数の振動素子群Lと等しい数の信号線SL、1つの振動素子群Lに含まれるサブ振動素子群Tに対応するサブ信号線sl、複数の振動素子群Lと等しい数の接続部C、スイッチ制御部91が設けられている。なお、図6では、1つの振動素子群L、1つの信号線SL、1つの接続部C及びサブ信号線sl1〜sl3のみを示す。
【0040】
信号線SLは、一端が本体部2内の送受信部3(送信部31及び受信部32)と接続され、他端が接続部Cを介してサブ信号線sl1〜sl3の少なくとも1つと接続可能となっている。なお、信号線SLは、ケーブル(図示なし)内を通って送受信部3と接続されている。
【0041】
サブ信号線sl1〜sl3は、一端が信号線SLの他端と接続可能に設けられ、他端がサブ振動素子群T1〜T3それぞれと接続されている。なお、一般的にサブ信号線slは、サブ振動素子群Tの数に合わせて第1のサブ信号線sl1から第nのサブ信号線sln(n≧2)まで設けられている。
【0042】
接続部Cは、本体部2等の外部からの駆動信号に基づいて、複数のサブ振動素子群Tのうち、所定のサブ振動素子群を選択的に駆動させるために用いられる。具体的には、接続部Cは、サブ信号線slと等しい数のスイッチcを含んで構成されている。本実施形態では、サブ信号線sl1〜sl3それぞれに対応するスイッチc1〜c3の3つが設けられている。スイッチcは、信号線SLに対するサブ信号線slの接続と非接続とを切り替える。なお、接続部Cは、複数の振動素子群Lに対して少なくとも1つ設けられていればよい。本実施形態における接続部Cが「選択手段」の一例である。また、本実施形態におけるスイッチc1〜c3は、「第1切替手段」の一例である。
【0043】
スイッチ制御部91は、接続部Cの動作を制御する。具体的には、スイッチ制御部91は、スイッチcそれぞれの切り替えを行う。たとえば、制御部9からサブ振動素子T1のみを駆動させるようなディレイ信号が送信されると、スイッチ制御部91はディレイ情報に基づいてスイッチc1を動作させ、信号線SLとサブ信号線sl1を連結させる。この状態で、サブ振動素子群T1は、送信部31(第1パルサ31a)からの送信信号(駆動信号)を受け取り、超音波を送信することができる。なお、スイッチ制御部91が動作させるスイッチcは1つに限られない。一つのスイッチ制御部91が、複数のスイッチc(たとえばc1とc2)を同時に動作させることも可能である。その結果、複数のサブ振動素子群(たとえばT1とT2)を同時に駆動させることが可能となる。本実施形態におけるスイッチ制御部91は、「選択制御手段」の一例である。
【0044】
スイッチ制御部91は、複数の振動素子群Lに対して少なくとも1つ設けられていればよい。また、スイッチ制御部91が複数の振動素子群L毎に設けられている場合には、振動素子群Lそれぞれに対して異なる制御を行うことができる。たとえば、振動素子群L1ではサブ振動素子群T1のみを駆動させるようスイッチc1を動作させ、振動素子群L2では、サブ振動素子群T3のみを駆動させるようスイッチc3を動作させることができる。
【0045】
<送信部の構成>
本実施形態における送信部31は、パルサとして、第1パルサ31a、第2パルサ31b及び第3パルサ31cを含んで構成されている。各パルサは異なるパルスを発生させる。
【0046】
制御部9からのディレイ信号に基づき、第1パルサ31a、第2パルサ31b及び第3パルサ31cから一のパルサが選択される。選択されたパルサは、駆動信号を生成し、信号線SL及びサブ信号線slを介してサブ振動素子群Tの振動素子tに駆動信号を供給する。
【0047】
<受信部の構成>
本実施形態における受信部32は、ゲイン回路として、第1ゲイン部32a、第2ゲイン部32b及び第3ゲイン部32cを含んで構成されている。各ゲイン部はエコー信号に対して異なるゲインをかける。
【0048】
制御部9からのディレイ信号に基づき、第1ゲイン部32a、第2ゲイン部32b及び第3ゲイン部32cから一のゲイン部が選択される。選択されたゲイン部は、振動素子tで受信されたエコー信号に対して所定のゲインをかけて信号処理部4等の後処理部に送る。
【0049】
<制御部の構成>
本実施形態における制御部9は、算出部92を含んで構成されている。
【0050】
算出部92は、操作部82等により入力された超音波を送信する方向が基準方向に対してどれだけずれているかを算出する。基準方向とは、振動素子群Lにおける超音波の送信方向に対して任意に設定される方向である。
【0051】
制御部9は、算出部92の算出結果に基づいて駆動させるサブ振動素子群Tを決定し、それに基づくディレイ情報(スイッチ制御のための情報)をスイッチ制御部91に送信する。なお、算出部92及び制御部9による処理は振動素子群L毎に行うことができる。つまり、制御部9は、振動素子群Lそれぞれに対して異なるディレイ信号を送信することができる。
【0052】
算出部92及び制御部9の処理の一例を、図7を用いて具体的に説明する。図7は、1つの振動素子群Lを側面(Y方向)から見た場合のX−Z断面図である。ここでは、超音波を送信する方向を「S」とし、基準方向を「P」とする。また、基準方向に対する角度を「θ」とする。更に、一の振動素子群Lにおける各振動素子tから送信される超音波ビーム間の角度を「γ」であるとする。
【0053】
まず、算出部92は、基準方向Pに対する超音波の送信方向Sの角度θを算出する。制御部9は、角度θと角度γの関係に基づいて、駆動させる振動素子t(サブ振動素子群T)を決定する。角度γと角度θの関係はたとえば表1に示すようなテーブルにより予め定められている。
【0054】
[表1]
【0055】
<動作>
次に、図8を参照して本実施形態に係る超音波診断装置100の動作について説明する。なお、基準方向Pは、予め定められているものとする。
【0056】
まず、操作部82等を介して超音波診断装置100に対して超音波を送信する方向Sを入力する(S10)。
【0057】
算出部92は、基準方向Pに対してS10で入力された超音波を送信する方向Sがどれだけずれているか(角度θ)を算出する(S11)。
【0058】
制御部9は、S11での算出結果に基づいてテーブルデータ等から駆動させる振動素子tを決定する(S12)。ここでは、振動素子t1が決定されたものとする。
【0059】
制御部9は、スイッチ制御部91及び送受信部3に対しS12による決定結果に基づくディレイ信号及びディレイ情報を送信する。スイッチ制御部91は、ディレイ情報に基づいてスイッチc1を駆動させ、信号線SLとサブ信号線sl1を接続させる(S13)。
【0060】
送受信部3の送信部31は、ディレイ信号に基づいて第1パルサ31aを駆動させ、駆動信号を振動素子t1に送信する。駆動信号に基づいて振動素子t1は被検体に対して超音波を送信する(S14)。
【0061】
送受信部3の受信部32は、ディレイ信号に基づいて第1ゲイン部32aを駆動させ、エコー信号に対して所定のゲインをかけて受信する(S15)。
【0062】
S15でゲインがかけられたエコー信号は信号処理部4等(図6では記載を省略している)に送られ、所定の処理がなされた後(S16)、合成部6で画像データを得る(S17)。表示部81は、S17で得られた画像データに基づく画像を表示させる。
【0063】
<作用・効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0064】
本実施形態に係る超音波プローブ1は、複数の振動素子群L(たとえばL1〜L96)が配列された振動素子ユニット10を有する。複数の振動素子群Lのそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)を有する。第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)に含まれる振動素子t(t1〜tn)の放射面は、サブ振動素子群T(T1〜Tn)毎に異なる方向に向けて配置されている。また、超音波プローブ1は、選択手段(接続部C)を有する。選択手段(接続部C)は、外部からの駆動信号に基づいて、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)のうち、所定のサブ振動素子群Tを選択的に駆動させるために設けられている。
【0065】
また、本実施形態に係る超音波診断装置100は、超音波プローブ1と、送受信手段(送受信部3)と、選択制御手段(スイッチ制御部91)とを含んで構成されている。超音波プローブ1は、複数の振動素子群L(たとえばL1〜L96)が配列された振動素子ユニット10を有する。複数の振動素子群Lのそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)を有する。第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)に含まれる振動素子t(t1〜tn)の放射面は、サブ振動素子群T(T1〜Tn)毎にそれぞれ異なる方向に向けて配置されている。また、超音波プローブ1は、選択手段(接続部C)を有する。選択手段(接続部C)は、駆動信号に基づいて、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)のうち、所定のサブ振動素子群Tを選択的に駆動させるために設けられている。送受信手段(送受信部3)は、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)に含まれる振動素子t(t1〜tn)に対して前記駆動信号を送ることにより超音波の送受信を行わせる。選択制御手段(スイッチ制御部91)は、選択手段(接続部C)の動作を制御する。
【0066】
このように構成することで、複数の振動素子群L毎に超音波を送受信したい方向のみの振動素子を駆動させることができるため、グレーティングローブが形成され難い。従って、超音波診断画像中に生じる虚像の発生度合いを低減することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る超音波プローブ1は、信号線SLと、第1から第nのサブ信号線slとを有する。信号線SLは、複数の振動素子群L(たとえばL1〜L96)と等しい数だけ設けられ、一端が装置本体と接続される。第1から第nのサブ信号線sl(sl1〜sln)は、一端が信号線SLの他端と接続可能に設けられ、他端が第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)それぞれと接続される。また、選択手段(接続部C)は、第1切替手段(スイッチc)を第1から第nのサブ信号線sl(sl1〜sln)と等しい数だけ有する。第1切替手段(スイッチc)は、信号線Lに対する第1から第nのサブ信号線sl(sl1〜sln)の接続と非接続とを切り替える。そして、選択手段(接続部C)は、第1切替手段(スイッチc)それぞれの切り替えにより、外部からの駆動信号に基づいて駆動させるサブ振動素子群T(T1〜Tn)を選択する。
【0068】
また、本実施形態に係る超音波診断装置100における超音波プローブ1は、信号線SLと、第1から第nのサブ信号線slとを有する。信号線SLは、複数の振動素子群L(たとえばL1〜L96)と等しい数だけ設けられ、一端が装置本体と接続される。第1から第nのサブ信号線sl(sl1〜sln)は、一端が信号線SLの他端と接続可能に設けられ、他端が第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)それぞれと接続される。また、選択手段(接続部C)は、第1切替手段(スイッチc)を第1から第nのサブ信号線sl(sl1〜sln)と等しい数だけ有する。第1切替手段(スイッチc)は、信号線Lに対する第1から第nのサブ信号線sl(sl1〜sln)の接続と非接続とを切り替える。また、選択制御手段(スイッチ制御部91)は、第1切替手段(スイッチc)それぞれを切り替えることにより、送受信手段(送受信部3)からの駆動信号に基づいて駆動させるサブ振動素子群T(T1〜Tn)を選択する。
【0069】
このように構成することで、複数の振動素子群L毎に超音波を送受信したい方向のみの振動素子tを駆動させることができるため、グレーティングローブが形成され難い。従って、超音波診断画像中に生じる虚像の発生度合いを低減することができる。また、第1切替手段及び第1から第nのサブ信号線slが設けられることで、信号線SLは振動素子群L毎に一本で十分となる。よって、高い空間分解能を得るために振動素子tの数を増やした場合であっても信号線SLの数は変わらないため、ケーブルが太くなることがない。
【0070】
[第2実施形態]
次に、図9及び図10を参照して、第2実施形態に係る超音波診断装置について説明する。図9は、本実施形態を説明するための超音波診断装置の概略を示すブロック図である。なお、図9では、1つの振動素子群Lのみを示している。また、一部の構成を省略している。図10は、超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。第1実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0071】
<超音波プローブの構成>
本実施形態において、超音波プローブ1内には、複数の振動素子群L(たとえば96個)、複数の振動素子群Lと等しい数の信号線SL´、1つの振動素子群Lに含まれるサブ振動素子群Tに対応するサブ信号線sl´、複数の振動素子群Lと等しい数の接続部C´、スイッチ制御部91が設けられている。なお、図9では、1つの振動素子群L、1つの信号線SL´、1つの接続部C´及びサブ信号線sl´1〜sl´3のみを示す。また、本実施形態において用いられる振動素子tは、MUT素子である。
【0072】
信号線SL´は、一端が本体部2内の送受信部3(送信部31及び受信部32)と接続され、他端がサブ信号線sl´1〜sl´3と接続されている。なお、信号線SL´は、ケーブル(図示なし)内を通って送受信部3と接続されている。
【0073】
サブ信号線sl´1〜sl´3は、一端が信号線SL´の他端と接続され、他端がサブ振動素子群T1〜T3それぞれと接続されている。なお、一般的にサブ信号線sl´は、サブ振動素子群Tの数に合わせて第1のサブ信号線sl´1から第nのサブ信号線sl´n(n≧2)まで設けられている。
【0074】
接続部C´は、本体部2等の外部からの駆動信号に基づいて、複数のサブ振動素子群Tのうち、所定のサブ振動素子群を選択的に駆動させるために用いられる。具体的には、接続部C´は、サブ信号線sl´と等しい数のスイッチc´を含んで構成されている。本実施形態では、サブ信号線sl´1〜sl´3それぞれに対応するスイッチc´1〜c´3の3つが設けられている。スイッチc´は、バイアス電源15(後述)からのバイアス電圧を第1から第nのサブ振動素子群に対して選択的に印加させるために設けられている。なお、接続部C´は、複数の振動素子群Lに対して少なくとも1つ設けられていればよい。本実施形態における接続部C´が「選択手段」の一例である。また、本実施形態におけるスイッチc´1〜c´3は、「第2切替手段」の一例である。
【0075】
スイッチ制御部91は、接続部C´の動作を制御する。具体的には、スイッチ制御部91は、スイッチc´それぞれの切り替えを行う。たとえば、制御部9からサブ振動素子T1のみを駆動させるようなディレイ信号が送信されると、スイッチ制御部91はディレイ情報に基づいてスイッチc´1を動作させ、バイアス電源15(後述)とサブ信号線sl´1を連結させる。この状態で、バイアス電源15はサブ信号線sl´1を介してバイアス電圧をサブ振動素子群T1に印加する。これにより、サブ振動素子群T1のみが、送信部31(第1パルサ31a)からの送信信号(駆動信号)を受け取り、超音波を送信することができる。なお、スイッチ制御部91が動作させるスイッチc´は1つに限られない。一つのスイッチ制御部91が、複数のスイッチc´(たとえばc´1とc´2)を同時に動作させることも可能である。その結果、複数のサブ振動素子群(たとえばT1とT2)を同時に駆動させることが可能となる。本実施形態におけるスイッチ制御部91は、「選択制御手段」の一例である。
【0076】
スイッチ制御部91は、複数の振動素子群Lに対して少なくとも1つ設けられていればよい。この場合は、振動素子群L(たとえばL1〜L96)のそれぞれに属するサブ振動素子群T(たとえばT1)は、共通接続されている。また、スイッチ制御部91が複数の振動素子群L毎に設けられている場合には、振動素子群Lそれぞれに対して異なる制御を行うことができる。たとえば、振動素子群L1ではサブ振動素子群T1のみを駆動させるようスイッチc´1を動作させ、振動素子群L2では、サブ振動素子群T3のみを駆動させるようスイッチc´3を動作させることができる。
【0077】
<本体部の構成>
本実施形態では、本体部2内にバイアス電源15が設けられている。バイアス電源15は、制御部9からのディレイ信号に基づき、接続部C´を介してサブ振動素子群T(振動素子t)に印加させるバイアス電圧を発生させる。
【0078】
<動作>
次に、図10を参照して本実施形態に係る超音波診断装置100の動作について説明する。なお、基準方向Pは、予め定められているものとする。
【0079】
まず、操作部82等を介して超音波診断装置100に対して超音波を送信する方向Sを入力する(S20)。
【0080】
算出部92は、基準方向Pに対してS20で入力された超音波を送信する方向Sがどれだけずれているか(角度θ)を算出する(S21)。
【0081】
制御部9は、S21での算出結果に基づいてテーブルデータ等から駆動させる振動素子tを決定する(S22)。ここでは、振動素子t1が決定されたものとする。
【0082】
制御部9は、バイアス電源15、スイッチ制御部91及び送受信部3に対しS22による決定結果に基づくディレイ信号及びディレイ情報を送信する。スイッチ制御部91は、ディレイ情報に基づいてスイッチc´1を駆動させ、バイアス電源15とサブ信号線sl´1を接続させる(S23)。その結果、サブ信号線sl´1を介して振動素子t1にバイアス電圧が印加され、振動素子t1が動作可能となる(S24)。
【0083】
送受信部3の送信部31は、ディレイ信号に基づいて第1パルサ31aを駆動させ、駆動信号を振動素子t1に送信する。駆動信号に基づいて振動素子t1は被検体に対して超音波を送信する(S25)。
【0084】
送受信部3の受信部32は、ディレイ信号に基づいて第1ゲイン部32aを駆動させ、エコー信号に対して所定のゲインをかけて受信する(S26)。
【0085】
S15でゲインがかけられたエコー信号は信号処理部4等(図9では記載を省略している)に送られ、所定の処理がなされた後(S27)、合成部6で画像データを得る(S28)。表示部81は、S28で得られた画像データに基づく画像を表示させる。
【0086】
<作用・効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0087】
本実施形態に係る超音波プローブ1に含まれる振動素子tはMUT素子である。選択手段(接続部C´)は、第2切替手段(スイッチc´)を第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)と等しい数だけ有する。第2切替手段(スイッチc´)は、バイアス電源15からのバイアス電圧を第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)に対して選択的に印加させる。そして、選択手段(接続部C´)は、第2切替手段(スイッチc´)それぞれの切り替えにより、外部からの駆動信号に基づいて駆動させるサブ振動素子群T(T1〜Tn)を選択する。
【0088】
また、本実施形態に係る超音波診断装置100に含まれる振動素子tはMUT素子である。選択手段(接続部C´)は、第2切替手段(スイッチc´)を第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)と等しい数だけ有する。第2切替手段(スイッチc´)は、バイアス電源15からのバイアス電圧を第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)に対して選択的に印加させる。選択制御手段(スイッチ制御部91)は、第2切替手段(スイッチc´)それぞれを切り替えることにより、送受信手段(送受信部3)からの駆動信号に基づいて駆動させるサブ振動素子群T(T1〜Tn)を選択する。
【0089】
このように振動素子に印加するバイアス電圧を選択することにより、複数の振動素子群L毎に超音波を送受信したい方向のみの振動素子tを駆動させることができるため、グレーティングローブが形成され難い。従って、超音波診断画像中に生じる虚像の発生度合いを低減することができる。また、第2切替手段及び第1から第nのサブ信号線sl´が設けられることで、信号線SL´は振動素子群L毎に一本で十分となる。よって、振動素子tの数を増やした場合であっても信号線SL´の数は変わらないため、ケーブルが太くなることがない。
【0090】
[第3実施形態]
次に、図11及び図12を参照して、第3実施形態に係る超音波診断装置について説明する。図11は、本実施形態を説明するための超音波診断装置の概略を示すブロック図である。なお、図11では、1つの振動素子群Lのみを示している。また、一部の構成を省略している。図12は、超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0091】
<超音波プローブの構成>
本実施形態において、超音波プローブ1内には、複数の振動素子群L(たとえば96個)、各振動素子群Lに含まれるサブ振動素子群Tと等しい数の信号線SL´´が設けられている。なお、図11では、1つの振動素子群L(サブ振動素子群T1〜T3)、3つの信号線SL´´1〜SL´´3のみを示す。
【0092】
信号線SL´´は、一端がサブ振動素子群Tと接続され、他端が本体部2内に設けられた接続部C´´(後述)を介して送受信部3(送信部31、受信部32)と接続可能となっている。
【0093】
<本体部の構成>
本実施形態において、本体部2内には、接続部C´´が設けられている。接続部C´´は、送信部31からの駆動信号に基づいて、複数のサブ振動素子群Tのうち、所定のサブ振動素子群を選択的に駆動させる場合に送信部31と接続される。また、接続部C´´は、サブ振動素子群T(振動素子t)で取得したエコー信号を受信する場合に受信部32と接続される。具体的には、接続部C´´は、信号線SL´´と等しい数のスイッチc´´を含んで構成されている。本実施形態では、信号線SL´´1〜SL´´3それぞれに対応するスイッチc´´1〜c´´3の3つが設けられている。スイッチc´´は、信号線SL´´と送信部31及び受信部32との接続を切り替えるために設けられている。本実施形態における接続部C´´が「選択手段」の一例である。
【0094】
本実施形態において、制御部9は、タイミング制御部93を含んで構成されている。
【0095】
タイミング制御部93は、信号線SL´´と送信部31及び受信部32との接続を切り替えるタイミングを制御する。たとえば、タイミング制御部93は、ディレイ信号に基づいて信号線SL´´1と送信部31(第1パルサ31a)とを接続するようスイッチ制御部91にディレイ情報を送信する。また、送信部31から駆動信号が送信されたことを検知すると、タイミング制御部93は、信号線SL´´1と受信部32(第1ゲイン部32a)とを接続するようスイッチ制御部91にディレイ情報を送信する。スイッチ制御部91は、タイミング制御部93からのディレイ情報に基づき、接続部C´´(スイッチc´´)の動作の制御を行う。
【0096】
<動作>
次に、図12を参照して本実施形態に係る超音波診断装置100の動作について説明する。なお、基準方向Pは、予め定められているものとする。
【0097】
まず、操作部82等を介して超音波診断装置100に対して超音波を送信する方向Sを入力する(S30)。
【0098】
算出部92は、基準方向Pに対してS30で入力された超音波を送信する方向Sがどれだけずれているか(角度θ)を算出する(S31)。
【0099】
制御部9は、S31での算出結果に基づいてテーブルデータ等から駆動させる振動素子tを決定する(S32)。ここでは、振動素子t1が決定されたものとする。
【0100】
制御部9は、タイミング制御部93、送信部31及び受信部32に対しS32による決定結果に基づくディレイ信号を送信する。タイミング制御部93は、ディレイ信号に基づいて振動素子t1が接続される信号線SL´´1と送信部31内の第1パルサ31aとを接続するようスイッチ制御部91にディレイ情報を送信する。スイッチ制御部91は、ディレイ情報に基づいてスイッチc´´1を駆動させ、信号線SL´´1と第1パルサ31aとを接続させる(S33)。
【0101】
送信部31は、ディレイ信号に基づいて第1パルサ31aを駆動させ、駆動信号を振動素子t1に送信する。駆動信号に基づいて振動素子t1は被検体に対して超音波を送信する(S34)。
【0102】
その後、第1パルサ31aから駆動信号が送信されたことを検知すると、タイミング制御部93は、信号線SL´´と第1ゲイン部32aとを接続するようスイッチ制御部91に接続信号を送信する。スイッチ制御部91は、接続信号に基づいてスイッチc´´1を切り替え、信号線SL´´1と第1ゲイン部32aとを接続させる(S35)。
【0103】
送受信部3の受信部32は、ディレイ信号に基づいて第1ゲイン部32aを駆動させ、エコー信号に対して所定のゲインをかけて受信する(S36)。
【0104】
S36でゲインがかけられたエコー信号は信号処理部4等(図11では記載を省略している)に送られ、所定の処理がなされた後(S37)、合成部6で画像データを得る(S38)。表示部81は、S38で得られた画像データに基づく画像を表示させる。
【0105】
<作用・効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0106】
本実施形態に係る超音波診断装置100は、超音波プローブ1と、送信手段(送信部31)と、受信手段(受信部32)と、選択手段(接続部C´´)と、タイミング制御手段(タイミング制御部93)と、選択制御手段(スイッチ制御部91)とを有する。超音波プローブ1は、複数の振動素子群L(たとえばL1〜L96)が配列された振動素子ユニットを有する。複数の振動素子群L(たとえばL1〜L96)のそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)を有し、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)に含まれる振動素子tの放射面は、サブ振動素子群T毎に異なる方向に向けて配置されている。送信手段(送信部31)は、第1から第nのサブ振動素子群Tに含まれる振動素子tに対して駆動信号を送ることにより超音波の送信を行わせる。受信手段(受信部32)は、送信された超音波に基づくエコー信号を受信する。選択手段(接続部C´´)は、駆動信号に基づいて、第1から第nのサブ振動素子群T(T1〜Tn)のうち、所定のサブ振動素子群Tを選択的に駆動させる場合に送信手段(送信部31)と接続され、エコー信号を受信する場合に受信手段(受信部32)と接続される。タイミング制御手段(タイミング制御部93)は、選択手段(接続部C´´)と送信手段(送信部31)及び受信手段(受信部32)との接続を切り替えるタイミングを制御する。選択制御手段(スイッチ制御部91)は、タイミング制御手段(タイミング制御部93)からの信号に基づき、選択手段(接続部C´´)の動作を制御する。
【0107】
このように構成することで、複数の振動素子群L毎に超音波を送受信したい方向のみの振動素子を駆動させることができるため、グレーティングローブが形成され難い。従って、超音波診断画像中に生じる虚像の発生度合いを低減することができる。
【0108】
[実施例]
次に、図13Aから図16Bを参照して、上述した実施形態の具体的な実施例及び比較例について説明する。
【0109】
<比較例>
比較例は、基部β上に振動素子αが配置された構成である。図13Aは、振動素子αから送信される超音波の指向性を示す図である。なお、図13Aは、振動素子αをX−Z方向から見た場合の指向性を示している。
【0110】
図13Bは、図13Aの構成において、超音波が送信される角度と超音波の圧力(音圧)の関係を示すグラフである。なお、グラフの縦軸は、超音波の圧力(音圧)を示す。グラフの横軸は、超音波を送信する角度を示す。ここでは、横軸の中心(Z方向)を角度0°とし、+X方向を角度が+、−X方向を角度が−であるとしている。
【0111】
図13Aに示す通り、一つの振動素子で、広範囲に超音波を発生させるためには振動素子αの指向性を広く確保する必要がある。よって、図13Bに示すように、超音波を送信する角度が大きくなっても(小さくなっても)ある程度の高い圧力(音圧)で超音波が送信されることとなる。
【0112】
しかしながら、このような場合、超音波を発生させたい方向とは異なる方向にグレーティングローブが形成される場合がある。このグレーティングローブにより、超音波診断画像上に虚像が形成されるという問題が生じる。
<実施例>
【0113】
図14A、図15A及び図16Aは、基部12に設けられた振動素子t(t1〜t3)から送信される超音波の指向性を示す図である。ここでは、振動素子tをX−Z方向から見た場合の指向性を示している。なお、図14A、図15A及び図16Aでは、駆動させる振動素子tのみを記載している。
【0114】
図14B、図15B及び図16Bは、図14A、図15A及び図16Aの構成において、超音波が送信される角度と超音波の圧力(音圧)の関係を示すグラフである。なお、グラフの縦軸は、超音波の圧力(音圧)を示す。グラフの横軸は、超音波を送信する角度を示す。ここでは、横軸の中心(Z方向)を角度0°とし、+X方向を角度が+、−X方向を角度が−であるとしている。
【0115】
図14A及び図14Bに示す通り、振動素子t2を駆動させた場合、振動素子t2の放射面が向く方向(角度0°方向)に送信される超音波の圧力(音圧)が高くなる。なお、比較例と比べ、振動素子t2のサイズが小さいため、振動素子t2の作る音圧の指向性は広くなる。しかし、振動素子t2を駆動して形成するビーム方向は、ほぼZ方向(基準方向P)の近傍であるため、グレーティングは形成され難い。
【0116】
図15Aのように、振動素子t1及び振動素子t2を駆動させた場合にも、振動素子t1及び振動素子t2の放射面が向く方向に送信される超音波の圧力(音圧)が他の方向に比べ高くなることが分かる(図15B参照)。図16Aのように振動素子t1のみを駆動させた場合にも同様に、振動素子t1の放射面が向く方向に送信される超音波の圧力(音圧)が他の方向に比べ高くなっていることが分かる(図16B参照)。よって、超音波を発生させたい方向とは異なる方向にグレーティングローブが形成され難い。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0118】
1 超音波プローブ
2 本体部
3 送受信部
4 信号処理部
5 画像生成部
6 合成部
7 表示制御部
8 ユーザインターフェース(UI)
9 制御部
10 振動素子ユニット
11 台座
12 基部
13 面
14 溝部
31 送信部
31a 第1パルサ
31b 第2パルサ
31c 第3パルサ
32 受信部
32a 第1ゲイン部
32b 第2ゲイン部
32c 第3ゲイン部
81 表示部
82 操作部
91 スイッチ制御部
92 算出部
100 超音波診断装置
C 接続部
L 振動素子群
T サブ振動素子群
c スイッチ
t 振動素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の振動素子群が配列された振動素子ユニットを有する超音波プローブであって、
前記複数の振動素子群のそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群を有し、
前記第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子の放射面は、前記サブ振動素子群毎に異なる方向に向けて配置されており、
外部からの駆動信号に基づいて、前記第1から第nのサブ振動素子群のうち、所定の前記サブ振動素子群を選択的に駆動させるための選択手段を有することを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記複数の振動素子群と等しい数だけ設けられ、一端が装置本体と接続される複数の信号線と、
一端が前記信号線の他端と接続可能に設けられ、他端が前記第1から第nのサブ振動素子群それぞれと接続された第1から第nのサブ信号線とを有し、
前記選択手段は、
前記信号線に対する前記第1から第nのサブ信号線の接続と非接続とを切り替える第1切替手段を前記第1から第nのサブ信号線と等しい数だけ有し、
前記第1切替手段それぞれの切り替えにより、外部からの駆動信号に基づいて駆動させる前記サブ振動素子群を選択することを特徴とする請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記振動素子はMUT素子であり、
前記選択手段は、
バイアス電源からのバイアス電圧を前記第1から第nのサブ振動素子群に対して選択的に印加させるための第2切替手段を前記第1から第nのサブ振動素子群と等しい数だけ有し、
前記第2切替手段それぞれの切り替えにより、外部からの駆動信号に基づいて駆動させる前記サブ振動素子群を選択することを特徴とする請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記複数の振動素子群のそれぞれは、
前記第1から第nのサブ振動素子群が配置される凸状又は凹状の基部を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記基部は、前記振動素子ユニット上で列状又はマトリクス状に配置されていることを特徴とする請求項4記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記振動素子ユニットにおいて、
複数の前記基部の間には溝部が形成されていることを特徴とする請求項4又は5記載の超音波プローブ。
【請求項7】
複数の振動素子群が配列された振動素子ユニットを有し、前記複数の振動素子群のそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群を有し、前記第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子の放射面は、前記サブ振動素子群毎に異なる方向に向けて配置されており、駆動信号に基づいて、前記第1から第nのサブ振動素子群のうち、所定の前記サブ振動素子群を選択的に駆動させるための選択手段を有する超音波プローブと、
前記第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子に対して前記駆動信号を送ることにより超音波の送受信を行わせる送受信手段と、
前記選択手段の動作を制御する選択制御手段と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
前記超音波プローブは、
前記複数の振動素子群と等しい数だけ設けられ、一端が装置本体と接続される複数の信号線と、
一端が前記信号線の他端と接続可能に設けられ、他端が前記第1から第nのサブ振動素子群それぞれと接続された第1から第nのサブ信号線とを有し、
前記選択手段は、
前記信号線に対する前記第1から第nのサブ信号線の接続と非接続とを切り替える第1切替手段を前記第1から第nのサブ信号線と等しい数だけ有し、
前記選択制御手段は、前記第1切替手段それぞれを切り替えることにより、前記送受信手段からの駆動信号に基づいて駆動させる前記サブ振動素子群を選択することを特徴とする請求項7記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記振動素子はMUT素子であり、
前記選択手段は、
バイアス電源からのバイアス電圧を前記第1から第nのサブ振動素子群に対して選択的に印加させるための第2切替手段を前記第1から第nのサブ振動素子群と等しい数だけ有し、
前記選択制御手段は、前記第2切替手段それぞれを切り替えることにより、前記送受信手段からの駆動信号に基づいて駆動させる前記サブ振動素子群を選択することを特徴とする請求項7記載の超音波診断装置。
【請求項10】
複数の振動素子群が配列された振動素子ユニットを有し、前記複数の振動素子群のそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群を有し、前記第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子の放射面は、前記サブ振動素子群毎に異なる方向に向けて配置されている超音波プローブと、
前記第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子に対して駆動信号を送ることにより超音波の送信を行わせる送信手段と、
送信された前記超音波に基づくエコー信号を受信する受信手段と、
前記駆動信号に基づいて、前記第1から第nのサブ振動素子群のうち、所定の前記サブ振動素子群を選択的に駆動させる場合に前記送信手段と接続され、前記エコー信号を受信する場合に前記受信手段と接続される選択手段と、
前記選択手段において前記送信手段と前記受信手段との接続を切り替えるタイミングを制御するタイミング制御手段と、
前記タイミング制御手段からの信号に基づき、前記選択手段の動作を制御する選択制御手段と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項1】
複数の振動素子群が配列された振動素子ユニットを有する超音波プローブであって、
前記複数の振動素子群のそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群を有し、
前記第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子の放射面は、前記サブ振動素子群毎に異なる方向に向けて配置されており、
外部からの駆動信号に基づいて、前記第1から第nのサブ振動素子群のうち、所定の前記サブ振動素子群を選択的に駆動させるための選択手段を有することを特徴とする超音波プローブ。
【請求項2】
前記複数の振動素子群と等しい数だけ設けられ、一端が装置本体と接続される複数の信号線と、
一端が前記信号線の他端と接続可能に設けられ、他端が前記第1から第nのサブ振動素子群それぞれと接続された第1から第nのサブ信号線とを有し、
前記選択手段は、
前記信号線に対する前記第1から第nのサブ信号線の接続と非接続とを切り替える第1切替手段を前記第1から第nのサブ信号線と等しい数だけ有し、
前記第1切替手段それぞれの切り替えにより、外部からの駆動信号に基づいて駆動させる前記サブ振動素子群を選択することを特徴とする請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項3】
前記振動素子はMUT素子であり、
前記選択手段は、
バイアス電源からのバイアス電圧を前記第1から第nのサブ振動素子群に対して選択的に印加させるための第2切替手段を前記第1から第nのサブ振動素子群と等しい数だけ有し、
前記第2切替手段それぞれの切り替えにより、外部からの駆動信号に基づいて駆動させる前記サブ振動素子群を選択することを特徴とする請求項1記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記複数の振動素子群のそれぞれは、
前記第1から第nのサブ振動素子群が配置される凸状又は凹状の基部を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の超音波プローブ。
【請求項5】
前記基部は、前記振動素子ユニット上で列状又はマトリクス状に配置されていることを特徴とする請求項4記載の超音波プローブ。
【請求項6】
前記振動素子ユニットにおいて、
複数の前記基部の間には溝部が形成されていることを特徴とする請求項4又は5記載の超音波プローブ。
【請求項7】
複数の振動素子群が配列された振動素子ユニットを有し、前記複数の振動素子群のそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群を有し、前記第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子の放射面は、前記サブ振動素子群毎に異なる方向に向けて配置されており、駆動信号に基づいて、前記第1から第nのサブ振動素子群のうち、所定の前記サブ振動素子群を選択的に駆動させるための選択手段を有する超音波プローブと、
前記第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子に対して前記駆動信号を送ることにより超音波の送受信を行わせる送受信手段と、
前記選択手段の動作を制御する選択制御手段と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
前記超音波プローブは、
前記複数の振動素子群と等しい数だけ設けられ、一端が装置本体と接続される複数の信号線と、
一端が前記信号線の他端と接続可能に設けられ、他端が前記第1から第nのサブ振動素子群それぞれと接続された第1から第nのサブ信号線とを有し、
前記選択手段は、
前記信号線に対する前記第1から第nのサブ信号線の接続と非接続とを切り替える第1切替手段を前記第1から第nのサブ信号線と等しい数だけ有し、
前記選択制御手段は、前記第1切替手段それぞれを切り替えることにより、前記送受信手段からの駆動信号に基づいて駆動させる前記サブ振動素子群を選択することを特徴とする請求項7記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記振動素子はMUT素子であり、
前記選択手段は、
バイアス電源からのバイアス電圧を前記第1から第nのサブ振動素子群に対して選択的に印加させるための第2切替手段を前記第1から第nのサブ振動素子群と等しい数だけ有し、
前記選択制御手段は、前記第2切替手段それぞれを切り替えることにより、前記送受信手段からの駆動信号に基づいて駆動させる前記サブ振動素子群を選択することを特徴とする請求項7記載の超音波診断装置。
【請求項10】
複数の振動素子群が配列された振動素子ユニットを有し、前記複数の振動素子群のそれぞれは、第1から第nのサブ振動素子群を有し、前記第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子の放射面は、前記サブ振動素子群毎に異なる方向に向けて配置されている超音波プローブと、
前記第1から第nのサブ振動素子群に含まれる振動素子に対して駆動信号を送ることにより超音波の送信を行わせる送信手段と、
送信された前記超音波に基づくエコー信号を受信する受信手段と、
前記駆動信号に基づいて、前記第1から第nのサブ振動素子群のうち、所定の前記サブ振動素子群を選択的に駆動させる場合に前記送信手段と接続され、前記エコー信号を受信する場合に前記受信手段と接続される選択手段と、
前記選択手段において前記送信手段と前記受信手段との接続を切り替えるタイミングを制御するタイミング制御手段と、
前記タイミング制御手段からの信号に基づき、前記選択手段の動作を制御する選択制御手段と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【公開番号】特開2013−42974(P2013−42974A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183216(P2011−183216)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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