説明

超音波モータの予圧解除装置

【課題】
簡素な構成でありながら、超音波モータの予圧解除を行える予圧解除装置を提供する。
【解決手段】
外部のエア供給源SからパイプPを介して、ベローズ組立体14にエアを供給する。すると、ベローズ部14bが伸びるため、アーム15はホルダ13に対して、図で左方に移動することとなる。それにより、爪部15aが超音波モータ12の本体12bを左方へと移動させるので、駆動子12aが固定子5から離隔することになる。従って、駆動子12aと固定子5との間の予圧を解除することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば真空環境下など大気と隔絶された空間内で用いられる超音波モータの予圧解除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程などにおいては、たとえば真空環境下など大気と隔絶された空間内でワークを処理することが行われている。ここで、ワークを支持するステージなどにおいては、超音波モータを用いてワークを移動させる場合がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−344763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、超音波モータは、ステージに取り付けた駆動子を固定子(ハウジングの一部など)に押しつけて(これを予圧という)、所定の高周波振動を与えることで、ステージを所定方向に移動させることができるようになっている。しかるに、超音波モータの駆動制御から独立してステージを移動させることが必要な場合には、超音波モータの駆動子を固定子から離隔させる(すなわち予圧を解除する)ことが必要となる。ところが、ステージが真空環境下にある場合、予圧を解除を手動で行うことができないため、何らかの遠隔操作が必要となる。
【0004】
これに対し、特許文献1に記載の技術によれば、真空環境と大気とを隔絶する壁を貫いてなるレバーを設け、かかるレバーを大気側から押すことで、予圧解除を行うようになっている。しかるに、かかる構成では、壁に対してレバーが軸線方向に移動するため、壁の孔とレバーとの間から漏れ出す空気が真空環境を破壊しないように、強固なシール装置を設けなくてはならず、構成が複雑となる。
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡素な構成でありながら、超音波モータの予圧解除を行える予圧解除装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明の超音波モータの予圧解除装置は、
内部空間を大気から遮蔽されるハウジング内に配置され、固定子を駆動子で駆動することによって前記固定子と前記駆動子との相対移動を行わせる超音波モータの予圧解除装置において、
前記ハウジング内において、前記駆動子と前記固定子とを離隔する方向に付勢する流体圧式アクチュエータと、
前記流体圧式アクチュエータに対して、前記ハウジングの外部より流体を供給する供給源とを有することを特徴とする。
【0007】
第2の本発明の超音波モータの予圧解除装置は、
内部空間を大気から遮蔽されるハウジング内に配置され、固定子を駆動子で駆動することによって前記固定子と前記駆動子との相対移動を行わせる超音波モータの予圧解除装置において、
前記ハウジング内において、前記駆動子と前記固定子とを離隔する方向に付勢する電気式アクチュエータと、
前記電気式アクチュエータに対して、前記ハウジングの外部より電気を供給する供給源とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1の本発明の超音波モータの予圧解除装置によれば、前記ハウジング内に設けた前記流体式アクチュエータに対して、前記ハウジング外に設けた前記供給源から流体を供給することで、前記駆動子と前記固定子とを離隔する方向に付勢することができるので、前記ハウジングに前記流体の配管のみを固定して貫通させればよく、従来技術のような複雑なシール装置は不要となる。
【0009】
第2の本発明の超音波モータの予圧解除装置によれば、前記ハウジング内に設けた前記電気式アクチュエータに対して、前記ハウジング外に設けた前記供給源から電気を供給することで、前記駆動子と前記固定子とを離隔する方向に付勢することができるので、前記ハウジングに前記電気配線のみを固定して貫通させればよく、従来技術のような複雑なシール装置は不要となる。
【0010】
前記電気式アクチュエータの動きを拡大して、前記駆動子と前記固定子の一方に伝達する伝達機構を有すると、たとえば圧電素子など駆動量が比較的小さい電気式アクチュエータにも適用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、第1の実施の形態の予圧解除装置を組み込んだ搬送装置の上面図であり、図2は、図1の構成をII-II線で切断して矢印方向に見た図であり、図3は、図1の矢印IIIで示す部位を拡大して示す図であり、図4は、図3の構成をIV-IV線で切断して矢印方向に見た図であり、図5は、図3の構成を矢印Vで示す方向に見た図であり、図6は、図3の構成をVI-VI線で切断して矢印方向に見た図である。
【0012】
図2において、内部が真空環境に維持された筐体状のハウジングHの底面に設設置されたベース1には、一対のリニアガイド2,2が配置されている。リニアガイド2,2に対向してステージ3が配置されている。ステージ3の下面に取り付けられたスライダ4,4がリニアガイド2,2に滑動可能に係合しており、従ってステージ3は、リニアガイド2,2の長手方向(図1では左右方向)に移動可能に支持されている。ベース1には、リニアガイド2,2に沿って角柱状の固定子5が配置されている。固定子5に対向して超音波モータユニットUMが配置されている。
【0013】
図3において、ステージ3の側面には、モータ取り付け板11がボルト固定されている。モータ取り付け板11に、超音波モータ12がねじ止めされている。図4に示すように、超音波モータ12は、本体12bの端部から駆動子12aを突出させている。駆動子12aは、外部から所定の高周波電力を供給されることにより、公知の態様で高周波振動を生じるようになっている。
【0014】
図3において、U字形状のホルダ13が、超音波モータ12を取り巻くようにして、その端部をモータ取り付け板11の下部にねじ止めされている。ホルダ13は、図6に示すように、中央に開口13aを有している。開口13aに嵌合するようにして、ベローズ組立体14の本体14aが設置されている。
【0015】
ベローズ組立体14は、コネクタCに接続されフランジを有する本体14aと、本体14aに対して一端が取り付けられた伸縮自在なベローズ部14bとからなる。本体14aは中空であって、ベローズ部14bにエアを送出できるようになっている。図1,2に示すように、コネクタCはパイプPを介して外部のエア供給源Sに接続されている。パイプPはハウジングHに対して貫通固定されている。
【0016】
図5,6に示すように、ベローズ部14bの他端には、L字状のアーム15が取り付けられている。アーム15の先端に形成された爪部15aは、超音波モータ12の本体12bと、固定子5の間のスキマに入り込んでいる。通常は、ベローズ部14bにエアは供給されておらず(もしくは低真空としていることで)、アーム15は図5,6に示す位置にある。エア供給源Sと、流体式アクチュエータであるベローズ組立体14と、アーム15とで予圧解除装置を構成する。
【0017】
本実施の形態にかかる搬送装置の動作について説明する。図1〜6において、不図示の制御装置から超音波モータ12に高周波電力が供給されると、超音波モータ12の駆動子12aが高周波振動し、それにより固定子5に対して駆動力を発生するため、ステージ3を所定方向に移動させることができるようになっている。
【0018】
ここで、たとえばステージ3を高速で移動させたい場合、超音波モータ12の駆動子12aと、固定子5との間の予圧を解除する必要がある。かかる場合、本実施の形態の予圧解除装置では、外部のエア供給源SからパイプPを介して、ベローズ組立体14にエアを供給する。すると、ベローズ部14bが伸びて本体14aのフランジがホルダ13に突き当たって突っ張り力を発揮するので、アーム15はホルダ13に対して、図5,6で左方に移動することとなる。それにより、爪部15aが超音波モータ12の本体12bを左方へと移動させるので、駆動子12aが固定子5から離隔することになる。従って、駆動子12aと固定子5との間の予圧を解除することが可能となる。又、ステージのオーバーラン時等の異常発生など通常の駆動系を使用できないときに、ステージを中央側に戻す際にも使用できる。
【0019】
図7は、第2の実施の形態にかかる予圧解除装置を組み込んだ搬送装置の上面図であり、図8は、図7の構成をVIII-VIII線で切断して矢印方向に見た図であり、図9は、図7の矢印IXで示す部位を拡大して示す図であり、図10は、図9の構成をX-X線で切断して矢印方向に見た図である。なお、第1の実施の形態に対して共通する構成については同じ符号を付すことで説明を省略する。
【0020】
図9において、U字形状のホルダ23が、超音波モータ12を取り巻くようにして、その端部をモータ取り付け板11の上部にねじ止めされている。ホルダ23の下面には、一対の脚部25、25が植設されている。脚部25,25の下端近傍において、シャフト26が掛け渡されている。
【0021】
図10において、ホルダ23の下端面において、脚部25,25の間に圧電素子24が配置されている。圧電素子24は、外部の電力供給源S’(図1,2参照)に接続されている。圧電素子24の先端(下端)は、駆動部材27の一端に当接している。駆動部材27は、その開口27aをシャフト26により挿通され、シャフト26の周囲を揺動可能な構成となっている。駆動部材27の他端は、超音波モータ12の本体12bと、固定子5の間のスキマに入り込んでいる。通常は、圧電素子24に電力は供給されておらず、駆動部材27は図10に示す位置にある。電力供給源S’と、電気式アクチュエータである圧電素子24と、駆動部材27とで予圧解除装置を構成する。なお、電力供給源S’と圧電素子24との間の配線は、ハウジングHに対して貫通固定されている。
【0022】
予圧を解除しようとするときには、本実施の形態では、外部の電力供給源S’から圧電素子24に電力を供給する。すると、圧電素子24が伸びるため、駆動部材27の一端が押され、駆動部材27は図10で反時計回りに枢動する。それにより駆動部材27の他端は、図10で左方に移動することとなるため、超音波モータ12の本体12bに係合して、これを左方へと移動させるので、駆動子12aが固定子5から離隔することになる。従って、駆動子12aと固定子5との間の予圧を解除することが可能となる。
【0023】
このとき、シャフト26の軸線から、駆動部材27の一端と圧電素子24の接点P1までの距離よりも、駆動部材27の他端と超音波モータ12の本体12bとの接点P2までの距離を小さくすれば、てこの原理により、接点P1の移動量より接点P2の移動量を大きくすることができる。圧電素子24の伸縮量は一般的には小さいので、かかる構成によって移動量を拡大することで、適切な予圧解除を行うことができる。ここで、駆動部材27が伝達機構を構成する。
【0024】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。たとえば流体式アクチュエータ、電気式アクチュエータに限らず、他のタイプのアクチュエータを用いることもできる。又、ハウジングH内は真空に限らず、大気と異なる雰囲気に維持されていれば足りる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態にかかる搬送装置の上面図である。
【図2】図1の構成をII-II線で切断して矢印方向に見た図である。
【図3】図1の矢印IIIで示す部位を拡大して示す図である。
【図4】図3の構成をIV-IV線で切断して矢印方向に見た図である。
【図5】図3の構成を矢印Vで示す方向に見た図である。
【図6】図3の構成をVI-VI線で切断して矢印方向に見た図である。本発明の一例を示す斜視図である。
【図7】第2の実施の形態にかかる搬送装置の上面図である。
【図8】図7の構成をVIII-VIII線で切断して矢印方向に見た図である。
【図9】図7の矢印IXで示す部位を拡大して示す図である。
【図10】図9の構成をX-X線で切断して矢印方向に見た図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ベース
2,2 リニアガイド
3 ステージ
4,4 スライダ
5 固定子
11 モータ取り付け板
12 超音波モータ
12a 駆動子
12b 本体
13 ホルダ
13a 開口
14 ベローズ組立体
14a 本体
14b ベローズ部
15 アーム
15a 爪部
23 ホルダ
24 圧電素子
25 脚部
26 シャフト
27 駆動部材
27a 開口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を大気から遮蔽されるハウジング内に配置され、固定子を駆動子で駆動することによって前記固定子と前記駆動子との相対移動を行わせる超音波モータの予圧解除装置において、
前記ハウジング内において、前記駆動子と前記固定子とを離隔する方向に付勢する流体圧式アクチュエータと、
前記流体圧式アクチュエータに対して、前記ハウジングの外部より流体を供給する供給源とを有することを特徴とする超音波モータの予圧解除装置。
【請求項2】
内部空間を大気から遮蔽されるハウジング内に配置され、固定子を駆動子で駆動することによって前記固定子と前記駆動子との相対移動を行わせる超音波モータの予圧解除装置において、
前記ハウジング内において、前記駆動子と前記固定子とを離隔する方向に付勢する電気式アクチュエータと、
前記電気式アクチュエータに対して、前記ハウジングの外部より電気を供給する供給源とを有することを特徴とする超音波モータの予圧解除装置。
【請求項3】
前記電気式アクチュエータの動きを拡大して、前記駆動子と前記固定子の一方に伝達する伝達機構を有することを特徴とする請求項2に記載の超音波モータの予圧解除装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−94602(P2006−94602A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275033(P2004−275033)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】