説明

超音波モータ

【課題】簡略な構成で、駆動効率を向上させた超音波モータを提供することができる。
【解決手段】略棒状の移動体を摩擦駆動する超音波モータを次のように構成する。すなわち、一つの当該振動子で前記移動体を第1の方向と第2の方向とに駆動する振動子2-1,2-1と、振動子2-1,2-2に対して接触しており、振動子2-1,2-2の振動により、前記第1の方向と前記第2の方向とに摩擦駆動される移動体8と、振動子2-1,2-2を移動体8に向かって押圧する付勢部材10A,10Bと、前記第1の方向に沿って配設され、移動体8が挿通される2個のリテーナ6A,6Bと、振動子2-1,2-2とリテーナ6A,6Bとを所定の収納態様で収納するハウジング4と、を具備させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば圧電素子等の振動子を用いた超音波モータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁型モータに代わる新しいモータとして、圧電素子等の振動子の振動を利用した超音波モータが注目されている。この超音波モータは、従来の電磁型モータと比較して、ギア無しで低速高推力が得られる点、保持力が高い点、高分解能である点、静粛性に富む点、及び磁気的ノイズを発生させない点等の利点を有している。
【0003】
このような超音波モータに関連する技術としては、例えば特許文献1に次のような技術が開示されている。
【0004】
すなわち、特許文献1に開示されている超音波操作装置では、被駆動体であるシャフト状の作動子が挿通された振動子であるステータが、作動子の直進運動に係る軸受けと回転運動に係る軸受けとを兼務する構成を採っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−261494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されている技術では、作動子が、ステータの長さに対して非常に長い場合等には、作動子の移動時に作動子自体の重量がステータに対して不均一に掛かってしまいがちである。特に、作動子自体の重量が或る程度以上である場合には、そのことによる弊害は大きくなる。
【0007】
例えば、作動子がステータに対して或る一方向に直進移動した場合に、当該作動子の重量分だけ、ステータの当該一方向側の部位に掛かる重量が大きくなり、結果としてステータに掛かる作動子の重量が部位毎に異なってしまう(バランスが悪化してしまう)。そして、このことに起因して、作動子の駆動効率や駆動特性が悪化してしまう。このような事情から、現在、ステータと作動子との位置関係が、駆動効率や駆動特性を悪化させることのない技術が望まれている。
【0008】
本発明は、前記の事情に鑑みて為されたものであり、簡略な構成で、駆動効率を向上させた超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の一態様による超音波モータは、
略棒状の移動体を摩擦駆動する超音波モータであって、
一つの当該振動子で前記移動体を第1の方向と第2の方向とに駆動する振動子と、
前記振動子に対して接触しており、前記振動子の振動により、前記第1の方向と前記第2の方向とに摩擦駆動される移動体と、
前記振動子を前記移動体に向かって押圧する押圧部材と、
前記第1の方向に沿って配設され、前記移動体が挿通される2個の軸受け部材と、
前記振動子と前記軸受け部材とを所定の収納態様で収納するハウジング部材と、
を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡略な構成で、駆動効率を向上させた超音波モータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波モータの一構成例を示す斜視図。
【図2】図1に示す超音波モータのA−A線での断面斜視図。
【図3】図1に示す超音波モータの分解斜視図。
【図4】図1に示す超音波モータが具備するリテーナの斜視図。
【図5】図1に示す超音波モータのB−B線/C−C線での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波モータの一構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示す超音波モータのA−A線での断面斜視図である。図3は、図1に示す超音波モータの分解斜視図である。図4は、図1に示す超音波モータが具備するリテーナの斜視図である。図5は、図1に示す超音波モータのB−B線/C−C線での断面図である。
【0014】
なお、図1に示す超音波モータのB−B線での断面図とC−C線での断面図とは同じ断面図となるので、図5においては一つの断面図に、B−B線での断面図における符号及びC−C線での断面図における符号を付して示している。また、後述する第1のリテーナ6Aと第2のリテーナ6Bとは、それら自体の構造は同一であるので、図4においては一つの斜視図に両者の符号を付して示している。
【0015】
図1乃至図3に示すように、本一実施形態に係る超音波モータは、第1の振動子2−1と、第2の振動子2−2と、ハウジング4と、第1のリテーナ6Aと、第2のリテーナ6Bと、移動体8と、第1の付勢部材10Aと、第2の付勢部材10Bと、位置決め部材12−1,12−2と、を具備する。
【0016】
前記第1の振動子2−1は、例えば圧電素子等から成り、略直方体形状を呈する振動子である。第1の振動子2−1には、移動体8に対向する面に、複数個(本例では2個)の摩擦接触子2−1dが設けられている。これら摩擦接触子2−1dを介して、第1の振動子2−1は、後述する第1の付勢部材10Aによって、移動体8に対して押圧されて加圧接触した状態で保持されている。
【0017】
同様に、前記第2の振動子2−2は、例えば圧電素子等から成り、略直方体形状を呈する振動子である。第2の振動子2−2には、移動体8に対向する面に、複数個(本例では2個)の摩擦接触子2−2dが設けられている。これら摩擦接触子2−2dを介して、第2の振動子2−2は、後述する第2の付勢部材10Bによって、移動体8に対して押圧されて加圧接触した状態で保持されている。
【0018】
ここで、第1の振動子2−1の外形面には、駆動信号を印加する為の電極(不図示)が設けられている。それら電極(不図示)に所定の駆動信号を印加することで、第1の振動子2−1を振動させ、移動体8を回転運動(移動体8の周方向への運動;図1において矢印Rで示す方向)及び直進運動(移動体8の軸方向への運動;図1において矢印Tで示す方向)させる。同様に、第2の振動子2−2の外形面には、駆動信号を印加する為の電極(不図示)が設けられている。それら電極(不図示)に所定の駆動信号を印加することで、第2の振動子2−2を振動させ、移動体8を回転運動及び直進運動させる。
【0019】
なお、本例では振動子を2個設ける構成としているが、少なくとも一つの振動子を設ければ、移動体8を2方向(上述の直進方向及び回転方向)に駆動することができる。
【0020】
前記ハウジング4は、本一実施形態に係る超音波モータの筐体であり、各構成部材が当該ハウジング4内に収容される。詳細には、ハウジング4は、略直方体形状を呈し、当該ハウジング4の長手方向に貫通する貫通孔4Hと、第1のリテーナ6A及び第2のリテーナ6Bを収容する為に当該ハウジング4の長手方向における両端部にそれぞれ設けられたリテーナ収容空間4A−R,4B−Rと、長手方向における中央部位には第1の振動子2−1及び第2の振動子2−2を収容する為の振動子収容空間4Sと、が設けられている。
【0021】
前記振動子収容空間4Sは、図3に示すようにハウジング4の長手方向における略中央部位の近傍に形成されている。詳細には、振動子収容空間4Sは、ハウジング4の正置時に上下方向に開口となる略直方体形状の空間である。換言すれば、振動子収容空間4Sは、ハウジング4の長手方向における略中央部位近傍が略直方体形状に刳り貫かれた態様となるように形成された空間である。
【0022】
そして、この振動子収容空間4Sを構成する壁面のうち、第1の振動子2−1、第2の振動子2−2に対して、移動体8の軸方向に垂直な方向において対向する2面には、位置決め部材12の突起部12−t1,12−t2(詳細は後述)と嵌合して第1の振動子2−1及び第2の振動子2−2を位置決めする嵌合溝部4c−A,4c−Bが、後述する各付勢部材10A,10Bの付勢力の方向(各振動子2−1,2−2から移動体8に向かう方向)に沿ってそれぞれ形成されている(図3参照)。
【0023】
さらに、前記振動子収容空間4Sを構成する壁面のうち、前記嵌合溝部4c−A,4c−Bが形成されている2面の逆側の2面(当該ハウジング4の外部側の2面)には、後述する第1の付勢部材10Aを配設する為の凹み部位である配設溝部4r−A,4r−Bが、振動子収容空間4Sの内部側に凹にそれぞれ形成されている(図3参照)。
【0024】
さらに、前記リテーナ収容空間4A−Rには、第1のリテーナ6Aを、ハウジング4の長手方向(移動体8の軸方向)における端部の位置で保持する為に、それらの移動を規制する為の突き当て面4A−stが設けられている。同様に、前記リテーナ収容空間4B−Rには、第2のリテーナ6Bを、ハウジング4の長手方向における端部の位置で保持する為に、それらの移動を規制する為の突き当て面4B−stが設けられている。
【0025】
前記第1のリテーナ6A、前記第2のリテーナ6Bは、ハウジング4の長手方向(移動体8の軸方向)における両端部に形成されたリテーナ収容空間4A−R,4B−Rにそれぞれ収容されるリテーナである。これら第1のリテーナ6A及び第2のリテーナ6Bは、外形略円筒形状を呈し、その中心軸方向に沿って且つ当該中心軸を含む部位には、移動体8が挿通される貫通孔6Hが形成されている。
【0026】
詳細には、図4及び図5に示すように第1のリテーナ6Aには、略球体形状を呈する転動部材6A−bを転動可能に保持する有限溝部6A−cが、当該第1のリテーナ6Aの側周面において、軸方向の一方側(ハウジング4の内部へ向かう側)のみが開口となるように(他方側が有限溝となるように)形成されている。これら有限溝部6A−cは、図5に示すように転動部材6A−bを回転可能に保持する為に、断面において転動部材6A−bの直径より僅かに大きい径(或いは略同径)の円形状の一部を呈するように、第1のリテーナ6Aの側周面において軸方向に沿って形成されている。このような形状に形成されている為、有限溝部6A−cに対して転動部材6A−bを挿入する際には、上述の開口側から他方側に向かって当該溝の長手方向に沿って挿入する(上述の形状の為、転動部材6A−bを、有限溝部6A−cに対して、第1のリテーナ6Aの側周面側から出し入れすることはできない)。
【0027】
同様に、図4及び図5に示すように第2のリテーナ6Bには、略球体形状を呈する転動部材6B−bを転動可能に保持する有限溝部6B−cが、当該第2のリテーナ6Bの側周面において、軸方向の一方側(ハウジング4の内部へ向かう側)のみが開口となるように(他方側が有限溝となるように)形成されている。これら有限溝部6B−cは、図5に示すように転動部材6B−bを回転可能に保持する為に、断面において転動部材6B−bの直径より僅かに大きい径(或いは略同径)の円形状の一部を呈するように、第2のリテーナ6Bの側周面において軸方向に沿って形成されている。このような形状に形成されている為、有限溝部6B−cに対して転動部材6B−bを挿入する際には、上述の開口側から他方側に向かって当該溝の長手方向に沿って挿入する(上述の形状の為、転動部材6B−bを、有限溝部6B−cに対して、第2のリテーナ6Bの側周面側から出し入れすることはできない)。
【0028】
なお、各有限溝部6A−c,6B−cにそれぞれ配設する転動部材6A−b,6B−bの個数としては(配設態様としては)、例えば一つの溝部に対して一つの転動部材を配設すればよい。また、本一実施形態においては、有限溝部6A−cは、前記第1のリテーナ6Aの周方向に等間隔で4つ形成されているが、必ずしも4つ必要はなく、少なくとも3つの有限溝部6A−cを例えば等間隔に形成して各々に一つずつ転動部材6A−bを配設すれば足りる。同様に、有限溝部6B−cは、前記第2のリテーナ6Bの周方向に等間隔で4つ形成されているが、必ずしも4つ必要はなく、少なくとも3つの有限溝部6B−cを形成して各々に一つずつ転動部材6B−bを配設すれば足りる。
【0029】
ところで、前記転動部材6A−bは、図5に示すように有限溝部6A−cから一部が露出する態様で、有限溝部6A−cによって保持されている。これにより、転動部材6A−bのうち有限溝部6A−cから露出している部位が、移動体8の外周面と、ハウジング4のリテーナ収容空間4A−Rの内壁面と、に対して適宜接触して当該転動部材6A−bの転動を可能とし、移動体8の直進運動及び/または回転運動を可能としている。
【0030】
同様に、前記転動部材6B−bは、図5に示すように有限溝部6B−cから一部が露出する態様で、有限溝部6B−cによって保持されている。これにより、転動部材6B−bのうち有限溝部6B−cから露出している部位が、移動体8の外周面と、ハウジング4のリテーナ収容空間4B−Rの内壁面と、に対して適宜接触して当該転動部材6B−bの転動を可能とし、移動体8の直進運動及び/または回転運動を可能としている。
【0031】
前記リテーナ収容空間4A−R,4B−Rにそれぞれ挿入された第1のリテーナ6A、第2のリテーナ6Bは、それぞれリテーナ収容空間4A−R,4B−Rのうち振動子収容空間4Sとの境界面でもある突き当て面4A−st,4B−stに対して、図2に示すように突き当たる。これにより、第1のリテーナ6A、第2のリテーナ6Bは、それぞれリテーナ収容空間4A−R,4B−R内で、移動体8の軸方向において位置規制される(当該ハウジング4の長手方向端部の位置で保持される)。
【0032】
上述したように第1のリテーナ6Aと第2のリテーナ6Bとで構成される2つのTR軸受け機構により、第1の振動子2−1及び第2の振動子2−2に対して掛かる移動体8の荷重が偏らないように(略均一になるように)移動体8が支持される。従って、第1の振動子2−1及び第2の振動子2−2の振動が、移動体8の直進運動によって妨げられることがない。また、移動体8の回転運動と直進運動とが互いの動きを妨げることもない。
【0033】
前記移動体8は、略棒状(所謂シャフト状)の被駆動体であり、ハウジング4の長手方向に貫通している貫通孔4H及び略円筒形状を呈する第1のリテーナ6A、第2のリテーナ6Bの貫通孔6Hに挿通されている。そして、移動体8は、ハウジング4の長手方向両端部位においては、リテーナ収容空間4A−Rに配設された第1のリテーナ6Aと、リテーナ収容空間4B−Rに配設された第2のリテーナ6Bと、によって支持されている。
【0034】
前記第1の付勢部材10Aは、上述したハウジング4の配設空間4r−Aに配設され、第1の振動子2−1及び第2の振動子2−2を移動体8に対して付勢させる付勢力を有する部材である。換言すれば、第1の付勢部材10Aは、第1の振動子2−1及び第2の振動子2−2を移動体8に対して押圧する。これにより、第1の振動子2−1及び第2の振動子2−2は、それぞれ摩擦接触子2−1d,2−2dを介して移動体8に押圧接触した状態で保持される。
【0035】
前記第2の付勢部材10Bは、第1の付勢部材10Aと全く同じ構造の部材であり、上述したハウジング4の配設空間4r−Bに配設さている。上述の第1の付勢部材10Aと第2の付勢部材10Bとによって、当該ハウジング4の短手方向における両側壁側から対称的に、第1の振動子2−1及び第2の振動子2−2を押圧することで、第1の振動子2−1、第2の振動子2−2を、それぞれ摩擦接触子2−1d,2−2dを介して移動体8により確実に押圧接触させた状態で保持することができる。
【0036】
具体的には、前記第1の付勢部材10A,第2の付勢部材10Bとしては、例えば図3に示すような板バネや、コイルバネ等を挙げることができる。
【0037】
前記位置決め部材12−1は、第1の振動子2−1を位置決めする為に、第1の振動子2−1のうち移動体8に対向する面とは逆側の面に設けられた部材である。同様に、前記位置決め部材12−2は、第2の振動子2−2を位置決めする為に、第2の振動子2−2のうち移動体8に対向する面とは逆側の面に設けられた部材である。
【0038】
詳細には、位置決め部材12−1及び位置決め部材12−2には、ハウジング4の振動子収容空間4Sの内壁面に形成された嵌合溝部4c−A,4c−Bにそれぞれ嵌る突起部12−t1,12−t2が設けられている。これら嵌合溝部4c−A,4c−Bと、突起部12−t1,12−t2と、が嵌合することで、位置決め部材12−1,12−2の位置が固定される(第1の振動子2−1及び第2の振動子2−2が位置決めされる)。
【0039】
以下、本一実施形態に係る超音波モータの組立手順の一例を説明する。なお、本一実施形態に係る超音波モータの詳細な構造については上述した通りであるので、ここでは省略する。
【0040】
まず、第1のリテーナ6Aの各有限溝部6A−c内に、転動部材6A−bを一つずつ各有限溝部6A−cの開口部位から挿入して配設する。続いて、この第1のリテーナ6Aを、ハウジング4のリテーナ収容空間4A−Rに、有限溝部6A−cの開口部位側から挿入する。このようにしてハウジング4内に挿入された第1のリテーナ6Aは、ハウジング4の前記突き当て面4st−Aと係合することで、ハウジング4の長手方向において位置決めされる。
【0041】
同様に、第2のリテーナ6Bの各有限溝部6B−c内に、転動部材6B−bを一つずつ各有限溝部6B−cの開口部位から挿入して配設する。続いて、この第2のリテーナ6Bを、ハウジング4のリテーナ収容空間4B−Rに、有限溝部6B−cの開口部位側から挿入する。このようにしてハウジング4内に挿入された第2のリテーナ6Bは、ハウジング4の突き当て面4st−Bと係合することで、ハウジング4の長手方向において位置決めされる。
【0042】
上述したように第1のリテーナ6A、第2のリテーナ6Bを、それぞれハウジング4のリテーナ収容空間4A−R,4B−Rに配設した後、移動体8を、第1のリテーナ6A及び第2のリテーナ6Bに形成された貫通孔6Hに挿入する(換言すれば、ハウジング4の貫通孔4Hと、第1のリテーナ6A及び第2のリテーナ6Bの貫通孔6Hと、に移動体8を挿通させる)。
【0043】
さらに、ハウジング4の振動子収容空間4Sに、摩擦接触子2−1と位置決め部材12−1とが設けられた第1の振動子2−1を配設する。具体的には、位置決め部材12−1に設けられた突起部12t−1,12−t2と、ハウジング4の嵌合溝部4c−A,4c−Bと、が勘合するように、第1の振動子2−1を振動子収容空間4Sに配設する。
【0044】
同様に、ハウジング4の振動子収容空間4Sに、摩擦接触子2−2と位置決め部材12−2とが設けられた第2の振動子2−2を配設する。具体的には、位置決め部材12−2に設けられた突起部12t−1,12−t2と、ハウジング4の嵌合溝部4c−A,4c−Bと、が勘合するように、第2の振動子2−2を振動子収容空間4Sに配設する。
【0045】
その後、第1の付勢部材10A,第2の付勢部材10Bを、それぞれ配設空間4r−A,4r−Bに配設し、それら第1の付勢部材10A,第2の付勢部材10Bによって、位置決め部材12−1,12−2を介して、第1の振動子2−1、第2の振動子2−2を移動体8に向かって押圧する。
【0046】
以上説明したように組み立て、第1の振動子2−1、第2の振動子2−2に設けられた電極(不図示)に、移動体8を直進運動及び/または回転運動させる為の周波数及び位相差の電圧信号を印加することにより、移動体8は、第1の振動子2−1、第2の振動子2−2、及びハウジング4に対して直進運動及び/または回転運動する。
【0047】
以下、移動体8の回転運動時及び直進運動時における、第1のリテーナ6A及び第2のリテーナ6Bの作用について詳細に説明する。
【0048】
すなわち、移動体8の回転運動時には、第1の振動子2−1と第2の振動子2−2とハウジング4とに対して、第1のリテーナ6A及び第2のリテーナ6Bが回転運動する。このとき、第1のリテーナ6Aに配設されている転動部材6A−b、及び第2のリテーナ6Bに配設されている転動部材6B−bは、移動体8の外周面、有限溝部6A−c,6B−c、及び貫通孔6Hの内周面に接触して転動する。
【0049】
換言すれば、移動体8の回転運動時には、第1の振動子2−1と第2の振動子2−2とハウジング4とに対して、第1のリテーナ6A及び第2のリテーナ6Bが各々“リテーナごと”回転する。
【0050】
他方、移動体8の直進運動時には、第1の振動子2−1と第2の振動子2−2とハウジング4とに対して、第1のリテーナ6Aに配設されている“転動部材6A−b”、及び第2のリテーナ6Bに配設されている“転動部材6B−b”が、それぞれ移動体8の軸方向に沿って(各々配設されている有限溝部に沿って)直進移動する。
【0051】
詳細には、第1のリテーナ6Aに配設されている転動部材6A−b、及び第2のリテーナ6Bに配設されている転動部材6B−bは、それぞれ移動体8の外周面、有限溝部6A−c,6B−c、及び貫通孔6Hの内周面に接触して転動する。
【0052】
換言すれば、移動体8の直進運動時には、第1のリテーナ6A及び第2のリテーナ6B自体は移動せず、“転動部材6A−b,6B−bのみ”が移動する。このとき、転動部材6A−b,6B−bが直進移動可能な範囲は、有限溝部6A−c,6B−cの長さ分である。
【0053】
なお、各有限溝部6A−c,6B−cに配設された各転動部材6A−b,6B−bが、それら有限溝部6A−c,6B−cと、移動体8の外周面と、各リテーナ収容空間4A−R,4B−Rの内周面と、に対して隙間無く且つ圧接すること無く接触する構成が最も駆動効率が良い構成である。しかしながら、そのように構成せずとも、少なくとも転動部材6A−b,6B−bが上述したように転動することが可能なように構成されていればよい。
【0054】
以上説明したように、本一実施形態によれば、簡略な構成で、駆動効率を向上させた超音波モータを提供することができる。具体的には、本一実施形態に係る超音波モータによれば下記の効果を得ることができる。
【0055】
まず、従来の技術によれば、移動体が直進運動した際に、振動子に掛かる荷重が部位毎に偏ってしまうことで(バランスが悪化してしまうことで)、移動体と軸受けとの接触状態の変動に伴って駆動効率及び駆動特性が悪化することがある。
【0056】
一方、本一実施形態に係る超音波モータによれば、移動体8の軸方向(直進移動方向)におけるハウジング4の両端部位に、第1のリテーナ6A、第2のリテーナ6Bを配置し、且つ、それらリテーナ間に、第1の振動子2−1及び第2の振動子2−2を配置した構成を採ることで、第1の振動子2−1、第2の振動子2−2に掛かる加重を部位毎に偏りのない状態にすることでできる。換言すれば、移動体8の移動により生じ得る当該移動体8の支持に係るバランスの崩れを克服することができる。
【0057】
従って、第1のリテーナ6A及び第2のリテーナ6Bが、移動体8の移動時においても、第1の振動子2−1及び第2の振動子2−2の振動を妨げることなく、移動体8を支持する。つまり、第1のリテーナ6A及び第2のリテーナ6Bが、従来のTR軸受けに比べて、駆動効率及び駆動特性を格段に向上させたTR軸受けとして機能する。従って、移動体8が直進運動した際にも、駆動効率及び駆動特性が悪化しない(駆動効率及び駆動特性が格段に改善される)。
【0058】
つまり、当該超音波モータにおける駆動力の伝達効率が改善され、移動体8の回転運動における回転軸精度及び回転特性、直進運動における直進精度及び直進特性が向上する。
【0059】
さらには、ハウジング4内に、当該超音波モータの全ての構成部品を収納することができる為、各構成部品の位置決めが自動的に為され、高度な調整を必要とせずに精度良く組立てることができる。つまり、組立容易性及び組立精度が格段に向上する。
【0060】
なお、ハウジング4、転動部材6A−b,6B−b、及び移動体8の材料の一例としては、例えば金属を挙げることができる。また、第1のリテーナ6A,第2のリテーナ6Bについては、例えば樹脂を材料とすることも可能である。
【0061】
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示した複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示す全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0062】
2−1…第1の振動子、 2−2…第2の振動子、 2−1d,2−2d…摩擦接触子、 4…ハウジング、 4H…貫通孔、 4A…リテーナ収容空間、 4S…振動子収容空間、 4c−A,4c−B…嵌合溝部、 4r−A,4r−B…配設溝部、 4A−st,4B−st…突き当て面、 4A−R,4B−R…リテーナ収容空間、 6A…第1のリテーナ、 6B…第2のリテーナ、 6H…貫通孔、 6A−b,6B−b…転動部材、 6A−c,6B−c…有限溝部、 8…移動体、 10A…第1の付勢部材、 10B…第2の付勢部材、 12−1,12−2…位置決め部材、 12−t1,12−t2…突起部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略棒状の移動体を摩擦駆動する超音波モータであって、
一つの当該振動子で前記移動体を第1の方向と第2の方向とに駆動する振動子と、
前記振動子に対して接触しており、前記振動子の振動により、前記第1の方向と前記第2の方向とに摩擦駆動される移動体と、
前記振動子を前記移動体に向かって押圧する押圧部材と、
前記第1の方向に沿って配設され、前記移動体が挿通される複数の軸受け部材と、
前記振動子と前記軸受け部材とを所定の収納態様で収納するハウジング部材と、
を具備することを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記振動子のうち前記移動体に対向する部位には、前記移動体との間の摩擦力により前記移動体を駆動する為の摩擦接触子が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記第1の方向は、前記移動体の軸方向であり、
前記第2の方向は、前記移動体の周方向であり、
前記振動子は、前記第1の方向に沿って前記ハウジング部材に配設された2個の前記軸受け部材に挟まれて前記ハウジング部材に収納されている
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記ハウジング部材には、前記振動子を収納する振動子収納空間と、該振動子収納空間に前記振動子を収納する為の開口部と、が設けられており、
前記押圧部材は、前記開口部から前記振動子収納空間に収納された前記振動子を、前記開口部側から前記移動体に向かって押圧する部材である
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記ハウジング部材のうち前記振動子収納空間の内壁面には、前記振動子から前記移動体に向かう方向に沿って溝部が形成されており、
前記振動子には、前記振動子収納空間に形成された前記溝部と嵌合する突起部が形成された位置決め部材が設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記ハウジング部材のうち前記第1の方向における両端部位には、それぞれ前記第1の方向に沿って前記軸受け部材が収納される軸受け部材収納空間が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項7】
前記軸受け部材収納空間には、前記軸受け部材収納空間に収納された前記軸受け部材と係合することで、前記第1の方向における前記軸受け部材の移動を規制する突き当て面が設けられている
ことを特徴とする請求項6に記載の超音波モータ。
【請求項8】
前記軸受け部材は、略円筒形状を呈し、その側周面には、前記第1の方向に沿って複数の溝部が、一方端側が開口且つ他方端側が有限に形成されており、
前記溝部は、略球体形状を呈する転動部材を、当該溝部に沿って移動可能且つ転動可能に保持している
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波モータ。
【請求項9】
前記溝部は、当該軸受け部材の周方向において略等間隔で少なくとも3つ設けられている
ことを特徴とする請求項8に記載の超音波モータ。
【請求項10】
前記振動子は、前記第1の方向に対して垂直な方向から、前記移動体を挟み込むように複数設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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