説明

超音波モータ

【課題】移動子と固定子との接触面積が摩耗の進行に伴って増大することを抑制し、駆動力の変動を小さくすることを実現した超音波モータを提供することを目的とする。
【解決手段】超音波モータ1のロータ2がステータ3の一対の支持部11、12に加圧接触されている。支持部11、12の上部には、ロータ2の外周面2bの形状に沿って接触面21、22がそれぞれ形成されている。接触面21に段差部23、25が形成されるとともに、接触面22に段差部24、25が形成されることにより、ロータ2とステータ3との接触距離が規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は超音波モータに係り、特に、超音波モータにおける移動子と固定子との接触部の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電素子等を用いてステータ(固定子)に超音波振動を発生させ、ステータに加圧接触されたロータ(移動子)を両部材間の摩擦力によって回転移動または直線移動させる超音波モータが実現されている。例えば特許文献1には、ステータの一端側に形成された凹部に球体状のロータを配置した振動アクチュエータ(超音波モータ)が記載されている。ロータは、ステータの凹部の開口端にある円環状の角部に対して加圧接触されており、この角部とロータとの間の摩擦力によってロータが回転移動される。また、ステータの凹部内にはグリス等の潤滑剤が収容されており、この潤滑剤をステータとロータとの間に供給可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−206251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波モータはロータとステータとの間の摩擦力を利用して駆動力を得るため、これらの部材は経時的に摩耗するものであり、特許文献1に記載の振動アクチュエータはステータに摩耗が生じることが知られている。すなわち、特許文献1に記載の振動アクチュエータの場合、ステータの凹部の角部が球体状のロータに対応した形状に摩耗していくことになる。この場合、ロータとステータとの接触面積は摩耗の進行に伴って増大するため、ステータによるロータの駆動力にも変動が生じる。また、特許文献1に記載の振動アクチュエータはロータとステータとの間に潤滑剤を供給しているが、これらの部材間の面圧も接触面積の増大に伴って変化するため、摩耗が進行すると適切な面圧を維持できなくなり、必要な駆動力を得られなくなる。このように、特許文献1に記載の振動アクチュエータは、ステータの摩耗の進行に伴う駆動力の変動が大きいという問題点を有していた。
【0005】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、移動子と固定子との接触面積が摩耗の進行に伴って増大することを抑制し、駆動力の変動を小さくすることを実現した超音波モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る超音波モータは、回転移動または直線移動をする移動子と、移動子と面接触可能な接触面を有し、移動子を移動させる固定子と、移動子を固定子に対して加圧する予圧手段と、固定子に超音波振動を発生させることにより移動子を移動させる振動手段とを備え、固定子には、移動子との間に隙間を形成する段差部が形成されることを特徴とするものである。
【0007】
段差部は、移動子から離間する底部形成面と、接触面と底部形成面とをつなぐ側部壁面とを有しており、側部壁面は、移動子が固定子に対して加圧される方向に沿って延びるように形成されてもよい。また、側部壁面は、少なくとも固定子における移動子との移動方向の両端に形成されてもよい。
固定子は、接触面及び段差部が形成される支持部を有してもよい。尚、移動子が回転移動し、かつ移動子の外表面が円筒状である場合、固定子は、移動子の軸方向に沿って延びる少なくとも2つの支持部を有してもよい。また、移動子が回転移動し、かつ移動子の外表面が球状である場合、固定子は、略円環状に形成された支持部を有してもよい。さらに、固定子は、接触面に潤滑剤を供給する供給体を有してもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、移動子と固定子との接触面積が摩耗の進行に伴って増大することを抑制し、駆動力の変動を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る超音波モータの構成を示す断面側面図である。
【図2】実施の形態1に係る超音波モータの要部を示す部分拡大断面図である。
【図3】実施の形態1に係る超音波モータの要部を示す部分拡大断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る超音波モータの構成を示す斜視図である。
【図5】この発明に係る実施形態の変形例を示す部分拡大断面図である。
【図6】この発明のその他の実施形態に係る超音波モータの要部を示す部分拡大断面図である。
【図7】この発明のその他の実施形態に係る超音波モータの要部を示す部分拡大断面図である。
【図8】この発明のその他の実施形態に係る超音波モータの要部を示す部分拡大断面図である。
【図9】この発明のその他の実施形態に係る超音波モータの要部を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、この発明の実施の形態について、添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1に、この発明の実施の形態1に係る超音波モータ1を示す。尚、以下の説明の便宜上、超音波モータ1における上下方向を図1等に示す各矢印によって規定する。
超音波モータ1は、超音波振動を利用して略円筒形状を有する移動子としてのロータ2を軸方向周り(矢印R参照)に回転移動させるものであって、ロータ2に接触する固定子としてのステータ3と、ステータ3に超音波振動を発生させる振動手段である圧電素子4とを備えている。尚、本実施形態では、ロータ2の回転方向が移動方向に相当する。
【0011】
ステータ3は、その軸部3aに形成された雄ねじ3bを圧電素子4の内周部に形成された雌ねじ4aに係合させることによって圧電素子4に固定されている。また、ステータ3及び圧電素子4は全体として略円筒状の外形を有しており、ロータ2の軸方向とステータ3及び圧電素子4の軸方向とが直交する配置となっている。尚、圧電素子4は複数の圧電素子板を積層したものであり、これらの圧電素子板に図示しない駆動回路から交流電圧を印加することにより、ステータ3に超音波振動が発生する。
【0012】
ロータ2には、その中央部を軸方向に沿って貫通するシャフト5が設けられており、ロータ2の内部に設けられた軸受6a、6bによってシャフト5が回転可能に支持されている。また、ロータ2の軸方向における中間部には下方側に開口する開口部2aが形成されており、シャフト5の外周部を囲む保持部材7が開口部2aの内部に収容されている。保持部材7は、ステータ3及び圧電素子4を貫通するロッド8をシャフト5に対して連結するための部材である。保持部材7とロッド8とは、ロッド8の外周部に形成された雄ねじ8aを保持部材7に形成された雌ねじ7aに係合させることによって固定されており、ロッド8の上端部がシャフト5の外周面に当接した状態となっている。
【0013】
一方、圧電素子4の下方側に延出するロッド8の下端部には予圧印加用ナット9が取り付けられており、圧電素子4と予圧印加用ナット9との間に予圧バネ10が設けられている。予圧バネ10は、所定の荷重で圧縮された状態で圧電素子4と予圧印加用ナット9との間に保持されており、それにより、ロータ2が下方側に向かって付勢されてステータ3に加圧された状態となっている。つまり、本実施の形態に係るロータ2は、ステータ3に対して摺動しながら回転するものであり、ロータ2の摺動方向と、矢印Rで示される回転方向とが一致している。ここで、保持部材7、ロッド8、予圧印加用ナット9及び予圧バネ10は、超音波モータ1における予圧手段を構成するものである。
【0014】
図2に示すように、ステータ3は、ロータ2と圧電素子4の上部表面4bとの間に配置される円筒状の頭部3cを有している。頭部3cの上部には、図2の奥行き方向、すなわちロータ2の軸方向に沿って直線状に延びる一対の支持部11及び支持部12が上方側に突出するように形成されており、これらの支持部11及び支持部12上にロータ2が配置される。また、支持部11と支持部12との間に形成された凹部13内には潤滑剤の供給体14が設けられている。供給体14は、柔軟性を有する多孔質の樹脂を材料とした略直方体状の部材にオイルやグリス等の潤滑剤を含浸させたものであって、支持部11の側面11a、支持部12の側面12a及びロータ2の外表面である外周面2bに接触するように設けられている。
【0015】
ここで、ロータ2とステータ3との接触部の構成について、ステータ3の一方の支持部11側を示した図3を用いて詳細に説明する。尚、支持部11ともう一方の支持部12とは共通の構成を有しているため、支持部12側の構成要素を括弧付きの符号にて図3に示し、支持部12側の説明を省略する。
図3に示すように、支持部11の上部は、ロータ2の外周面2bに沿った円弧状の断面を有するように形成されており、支持部11の上部表面がロータ2の外周面2bに面接触可能な接触面21を構成している。また、この接触面21において、ステータ3の軸中心に近い側、すなわち内側に位置する部位には、ロータ2の外周面2bとの間に隙間Sを形成する微小な段差部23が設けられている。
【0016】
尚、段差部23は、ステータ3の接触面21周辺の形状が大きく変わらないように、ロータ2の外周面2bから例えば0.1mm程度離間するように設けられている。したがって、段差部23を形成したことによって超音波モータ1の振動モードに影響が生じることがないようになっている。また、段差部23の底部形成面23aと接触面21とをつなぐ側部壁面23bは、ロータ2がステータ3に対して加圧される方向に沿って、すなわち上下方向に沿って延びるように形成されている。
【0017】
この段差部23を設けることにより、ステータ3の接触面21はロータ2の外周面2bに対し、外側(上方側)に位置する縁部Aと内側(下方側)に位置する縁部Bとの間で接触するようになっている。ここで、段差部23を設けない場合、ロータ2の外周面2bとステータ3の接触面21とは、縁部Aと図3に示す仮想の縁部Cとの間で接触する。つまり、接触面21に段差部23を設けることにより、ロータ2の外周面2bとステータ3の接触面21との接触距離が縁部Aと縁部Bとの間の距離に規制された状態となっている。また、接触距離をこのように規制することにより、ロータ2と接触面21との接触角度、すなわちロータ2の中心Oと接触面21の縁部Aとを結んだ直線と、ロータ2の中心Oと縁部Bとを結んだ直線とがなす角度は、段差部23を設けない場合の角度α1より小さい角度α2となっている。
【0018】
また、接触面21において、ステータ3の軸中心から遠い側、すなわち外側に位置する部位には、縁部Aから外方側に位置する部位の一部を切り欠いた段差部25が形成されている。この段差部25を形成する側部壁面25aは、接触面21の縁部Aから下方側に向かう方向に沿って、すなわちロータ2がステータ3に対して加圧される方向に沿って形成されており、側部壁面25aの下端部から外側に向かって延びるように底部形成面25bが形成されている。ここで、ロータ2がステータ3に対して加圧される方向は下方側に向かう方向となっている。したがって、ステータ3の接触面21がロータ2の回転に伴って摩耗する場合、その摩耗は、図3の符号21’で示される一点鎖線のように下方側に向かって進行する。このように摩耗が進行する接触面21において、段差部23の側部壁面23bと段差部25の側部壁面25aとは、縁部A及び縁部Bから下方側に向かって延びるように形成されている。つまり、本実施形態において、側部壁面23bと側部壁面25aとは、ステータ3における、ロータ2との摺動方向の両端に形成されている。よって、ステータ3の接触面21は、ロータ2の回転に伴って摩耗しても表面積が増大することがなく、ロータ2とステータ3とが常に一定の面積で接触可能となっている。
【0019】
次に、この発明の実施の形態1に係る超音波モータ1の動作について説明する。
図1に示すように、まず圧電素子4の複数の圧電素子板に対して図示しない駆動回路から交流電圧が印加される。交流電圧が印加されると、圧電素子4の各電圧素子板は互いに異なる振動方向の超音波振動を発生し、これらの超音波振動が複合されてステータ3に伝達される。このように超音波振動がステータ3に伝達されると、ステータ3の支持部11及び支持部12には、矢印Rで示されるロータ2の軸方向周りの超音波楕円振動が発生する。支持部11及び支持部12に発生した超音波楕円振動は、支持部11の接触面21及び支持部12の接触面22と、ロータ2の外周面2bとの間に作用する摩擦力を介してロータ2に伝達され、それにより、ロータ2が矢印Rで示される方向に回転する。
【0020】
ロータ2が回転すると、ステータ3の凹部13内の供給体14に含浸された潤滑剤がロータ2の外周面2bに付着し、外周面2bと支持部11の接触面21との間、及び外周面2bと支持部12の接触面22との間に供給される。ここで、接触面21の内側及び接触面22の内側には、微小な段差部23及び段差部24がそれぞれ形成されている。これらの段差部23、24は、潤滑剤の供給体14から供給される潤滑剤をロータ2の外周面2bと接触面21、22との間に引き込むための油溝として機能するため、ロータ2とステータ3とに効率よく潤滑剤を供給することが可能になるとともに、これらの部材の摩耗を低減して耐久性を向上することが可能になっている。また、潤滑剤が供給体14によって接触面21、22に供給されることで、ロータ2の摺動が円滑になるとともに、磨耗による駆動力の変動を抑制することができる。
【0021】
以上のように動作する超音波モータ1において、ロータ2はステータ3との間の摩擦力によって回転するため、これらの部材は経時的に摩耗するものであり、この場合にはステータ3側に摩耗が生じる。また、ロータ2及びステータ3を製造する際、これらの部材は所定範囲内の寸法精度で加工されるため、各寸法にはばらつきが生じる。より具体的に説明すると、ステータ3の接触面21及び接触面22は、ロータ2の外周面2bに沿った形状となるように形成されるが、製造時における寸法のばらつきにより、超音波モータ1の組み付け直後におけるロータ2の外周面とステータ3の接触面21及び接触面22との接触状態は異なってくる。
【0022】
すなわち、ロータ2の径がステータ3の接触面21及び接触面22の径より大きい場合、組み付け直後のロータ2は接触面21及び接触面22に対して上部側、すなわち図3に示す縁部A側に接触し、下部側、すなわち縁部B側で浮いた状態となる。逆に、ロータ2の径がステータ3の接触面21及び接触面22の径より小さい場合、組み付け直後のロータ2は接触面21及び接触面22に対して下部側(縁部B側)で接触し、上部側(縁部A側)で浮いた状態となる。このような接触状態の差異を略均一な状態とするため、超音波モータ1を製造する場合、所定時間の慣らし運転を行ってステータ3の接触面21、22を摩耗させ、全面的に接触させるようにすることが一般的である。
【0023】
ここで、図3に示すように、支持部11の接触面21及び支持部12の接触面22において内側(下部側)に位置する部位には段差部23、24が設けられており、接触面21、22とロータ2の外周面2bとの接触距離が、縁部Aと縁部Bとの間の距離に規制された状態となっている。したがって、段差部23を設けない場合と対比すると、ロータ2と接触面21、22とが縁部A、Bの一方側で接触するとともに他方側で浮いた状態から、ロータ2と接触面21、22とが全面的に面接触するまでの時間を短縮できるようになっている。また、接触面21、22とロータ2の外周面2bとの接触距離が規制されることにより、超音波モータ1の組み付け直後からロータ2と接触面21、22とが面接触するまでの間における接触面積や接触角度α2の変化が少ない状態となっているため、慣らし運転の完了後における超音波モータ1の駆動力を所定範囲内に安定させることが可能となっている。
【0024】
さらに、接触面21の段差部23及び段差部25において、これらの側部壁面23b及び側部壁面25aは、ロータ2がステータ3に対して加圧される方向である下方側に沿って延びるように形成されている。したがって、ロータ2の回転に伴って、接触面21が符号21’で示される一点鎖線のように摩耗したとしても、ロータ2と接触面21との接触距離、すなわち縁部Aから縁部Bまでの距離は変わることがないため、接触面積や接触角度α2が大きく変わることもない。したがって、ステータ3によるロータ2の駆動力や、ロータ2とステータ3の接触面21、22との間の面圧に大きな変動が生じることがなく、それにより、接触面21、22の摩耗が進行したとしても、超音波モータ1の駆動力の変動を小さくすることが可能となっている。
【0025】
以上に述べたように、ステータ3の接触面21及び接触面22に段差部23、段差部24、段差部25及び段差部26を設け、ロータ2の外周面2bと接触面21、22との接触距離を規制したので、これらの接触面21、22が摩耗しても、ロータ2との接触面積の増大が抑制される。したがって、超音波モータ1の駆動力の変動が小さくなる。
【0026】
さらに、超音波モータ1のように、段差部23、24の側部壁面23b、24b及び段差部25、26の側部壁面25a、26aを、ロータ2がステータ3に対して加圧される方向に沿って延びるように形成した場合、接触面21、22の摩耗の進行に伴ってロータ2と接触面21、22との接触面積が増大することがない。すなわち、超音波モータ1の駆動力の変動をさらに小さくすることが可能である。
【0027】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る超音波モータ31について図4を用いて説明する。尚、この実施の形態2に係る超音波モータ31は、実施の形態1に係る超音波モータ1に対し、移動子であるロータの形状を変更したものである。また、以下に説明する実施の形態2において、図1〜3に示される符号と同一の符号は同一または同様の構成要素であるため、その詳細な説明は省略する。
【0028】
図4に示すように、超音波モータ31は、球体であるロータ32と、ロータ32が接触する固定子であるステータ33とを備えており、ロータ32の上部に配置された予圧手段34によってロータ32がステータ33に対して加圧されている。ロータ32は、圧電素子4がステータ33に発生させる超音波振動により、多自由度の回転を行うものである。ステータ33は、圧電素子4の上部とロータ32との間に配置される頭部33aを有している。この頭部33aの上部表面には、略円環状に形成された3つの支持部41〜43が上方側に突出するように設けられており、支持部41〜43の上部には、ロータ32の外表面32aに対応する球状の接触面41a〜43aが形成されている。
【0029】
これらの接触面41a〜43aにおいて、ステータ33の軸中心に近い側、すなわち内周側に位置する部位には、実施の形態1における段差部23、24と同様の段差部41b〜43bがそれぞれ形成されている。また、ステータ33の軸中心から遠い側、すなわち外周側に位置する部位にも、実施の形態1における段差部25、26と同様の段差部41c〜43cが形成されている。すなわち、ステータ33における支持部41〜43は、実施の形態1における支持部11、12と同様の断面形状を有する円環状の部位となっている。その他の構成については、実施の形態1と同様である。
以上のように、球体であるロータ32を備えるように超音波モータ31を構成しても、実施の形態1と同様の効果、すなわちステータ33の接触面41a〜43aの摩耗に伴う駆動力の変動を小さくすることができる。
【0030】
実施の形態1、2におけるステータは、接触面の内側と外側とに段差部が設けられるように構成されたが、段差部を設ける位置を限定するものではない。ステータの形状を大きく変えないのであれば他の断面形状とすることも可能であり、例えば図5(a)に示すように接触面21の中間部に段差部23’をさらに設けることができる。
また、実施の形態1、2におけるステータの段差部において、側部壁面はステータに対してロータが加圧される方向、すなわち上下方向に沿って延びるように形成されたが、例えば図5(b)に示される側部壁面23b’や側部壁面25a’のように、上下方向に対して所定の角度をなすように形成することも可能である。この場合においても、ステータの摩耗の進行に伴うロータとステータとの接触面積の増大は低減された状態となるため、実施の形態1、2とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0031】
実施の形態1におけるステータ3について、図6に示すように、接触面21、22は両支持部11、12における外側に形成されてもよい。この場合、側部壁面25a(25b)と支持部11の側面11b(支持部12の側面12b)とが同一線上に形成されてもよい。
【0032】
また、図7に示すように、接触面21、22は両支持部11、12における内側に、凹部13と隣接するように形成されていてもよい。この場合、凹部13を形成する側面11aと、側部壁面23bとが同一線上に形成されてもよい。
【0033】
また、図8に示すように、両支持部11、12自体が接触面21、22を形成し、凹部13が段差部と同一であってもよい。この場合、接触面21、22の接触面積、すなわち図8に示される縁部A’から縁部B’までの領域の面積が、実施形態1(図3に示される縁部Aから縁部Bまでの領域の面積)と同程度である事が望ましい。
【0034】
また、図9に示すように、側部壁面は23bのみが形成され、側部壁面25a(図3参照)を有していなくてもよい。
【0035】
実施の形態1、2において、移動子は回転移動するロータとしたが、直線移動する超音波モータに用いてもよい。
【0036】
実施の形態1において、ロータの形状は円筒状としたが、楕円筒状であってもよい。
【0037】
実施の形態2において、ステータの形状は円環状としたが、楕円環状であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1,31 超音波モータ、2,32 ロータ(移動子)、2b 外周面(外表面)、3,33 ステータ(固定子)、4 圧電素子(振動手段)、7 保持部材(予圧手段)、8 ロッド(予圧手段)、9 予圧印加用ナット(予圧手段)、10 予圧バネ(予圧手段)、11,12,41,42,43 支持部、14 供給体、21,22,41a,41b,41c 接触面、23,24,25,26,41b,41c 段差部、23a,25b 底部形成面、23b,24b,25a,26a 側部壁面、32a 外表面、34 予圧手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転移動または直線移動をする移動子と、
前記移動子と面接触可能な接触面を有し、前記移動子を移動させる固定子と、
前記移動子を前記固定子に対して加圧する予圧手段と、
前記固定子に超音波振動を発生させることにより前記移動子を移動させる振動手段と
を備え、
前記固定子には、前記移動子との間に隙間を形成する段差部が形成されることを特徴とする超音波モータ。
【請求項2】
前記段差部は、前記移動子から離間した底部形成面と、前記接触面と前記底部形成面とをつなぐ側部壁面とを有しており、
前記側部壁面は、前記移動子が前記固定子に対して加圧される方向に沿って延びるように形成される請求項1に記載の超音波モータ。
【請求項3】
前記側部壁面は、少なくとも前記固定子における前記移動子との移動方向の両端に形成されている請求項2に記載の超音波モータ。
【請求項4】
前記固定子は、前記接触面及び前記段差部が形成される支持部を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記移動子は回転移動し、かつ前記移動子の外表面が円筒状であり、
前記固定子は、前記移動子の軸方向に沿って延びる少なくとも2つの支持部を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記移動子は回転移動し、かつ前記移動子の外表面が球状であり、
前記固定子は、略円環状に形成された前記支持部を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波モータ。
【請求項7】
前記固定子は、前記接触面に潤滑剤を供給する供給体を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の超音波モータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate