説明

超音波式流体計測装置の多層流路部材および超音波式流体計測装置

【課題】平均流速の計測精度を向上できる超音波式流体計測装置の多層流路部材および超音波式流体計測装置を提供する。
【解決手段】超音波式流体計測装置10の角筒状の計測流路14aに配置される多層流路部材30を、流れ方向に沿ったフレーム31に取り付けた仕切板32によって複数の扁平流路14eに区画する際に、計測流路14aの内面15f、17aに仕切板32が対面するように設けた。このため、仕切板32が露出して計測流路14aの内面15f、17aに対面するので、露出した仕切板32と計測流路14aの内面15f、17aとの間が最上段あるいは最下段の扁平流路14eとなる。従って、従来のように、多層流路部材30を構成するフレーム31と計測流路14aの内面15f、17aとの間に流体が流れ込んで、計測精度を低下させるという問題が生じず、これにより計測精度を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層流路部材により計測流路内に複数の扁平流路が形成された超音波式流体計測装置の多層流路部材および超音波式流体計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波式流体計測装置は、計測用流路に流体を流し、計測用流路内に超音波を伝搬させて、超音波の伝搬時間を計測し、計測した情報に基づいて流体の流速を求めるものである。
この計測用流路は、断面長方形の角筒形状で対向する短辺側面にそれぞれ一対の送受波部が設けられている。
【0003】
これら一対の送受波部は、計測用流路の流れ方向に対して所定の角度で交差する線に沿って超音波を送受するように配置されている。
そして、近年では、計測精度を向上させるために、計測用流路に複数の隔壁を並行に配置することにより、計測用流路を多層流路とした超音波式流体計測装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】国際公開第04/074783号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、計測用流路を多層流路とする際に、多層流路を形成するための仕切板の両縁をフレームにより支持した場合、フレームと計測流路の内面との間に流体が流れ込むため計測精度を低下させるという問題があった。
【0005】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、平均流速の計測精度を向上できる超音波式流体計測装置の多層流路部材および超音波式流体計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超音波式流体計測装置の多層流路部材は、超音波式流体計測装置に形成された角筒状の計測流路に配置され、前記計測流路を複数の扁平流路に区画する仕切板と、前記仕切板における流体の流れ方向に沿った縁部を支持するフレームとを有する超音波式流体計測装置の多層流路部材であって、前記計測流路の内面に前記仕切板が対面する構成を有している。
【0007】
この構成により、超音波式流体計測装置の角筒状の計測流路に配置される多層流路部材を、流れ方向に沿ったフレームに取り付けた仕切板によって複数の扁平流路に区画する際に、計測流路の内面に仕切板が対面するように設けた。このため、仕切板が露出して計測流路の内面に対面するので、露出した仕切板と計測流路の内面との間が最上段あるいは最下段の扁平流路となる。従って、従来のように、多層流路部材を構成するフレームと計測流路の内面との間に流体が流れ込んで、計測精度を低下させるという問題が生じず、これにより平均流速の計測精度を向上できる。
【0008】
また、本発明の超音波式流体計測装置の多層流路部材は、前記計測流路における対向する一対の内面に前記仕切板が対面する構成を有している。
【0009】
この構成により、計測流路の一対の内面の両方に仕切板が対面するため、計測精度を更に向上させることができる。
【0010】
さらに、本発明の超音波式流体計測装置の多層流路部材は、前記フレームにおける前記流れ方向に沿った端部に設けられた延長部を有し、前記延長部の内側面が前記フレームの内側面に対して交差している構成を有している。
【0011】
この構成により、傾斜面を有する延長部がフレームに設けられているため、多層流路内に流体を円滑に案内できるとともに、多層流路外に流体を円滑に送出することができる。このため、流体の計測にあたっての流体の流れが一様となり、平均流速の計測精度を向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明の超音波式流体計測装置の多層流路部材は、前記フレームの貫通孔に設けられて超音波を透過させるフィルタ部材に撥水性処理が施されている構成を有している。
【0013】
この構成により、フィルタ部材に撥水性処理が施されているのでフィルタ部材に当たった流体ははじかれ、流体による目詰まりが生じにくいので、計測精度を向上させることができる。
【0014】
さらに、本発明の超音波式流体計測装置は、断面矩形の角筒状に形成された計測流路と、前記計測流路に第1送受波器および第2送受波器が設けられた超音波計測部と、前記第1送受波器および前記第2送受波器を結ぶ超音波伝搬路に対して略平行となるように前記計測流路に収容された仕切板と、前記仕切板における流体の流れ方向に沿った縁部を支持するフレームとを有する多層流路部材とを備え、前記多層流路部材により前記計測流路内に複数の扁平流路が形成された超音波式流体計測装置であって、前記計測流路の内面に連続するとともに、前記フレームの内側面に連続する傾斜面が設けられている構成を有している。
【0015】
この構成により、第1送受波器および第2送受波器を有する超音波計測部が設けられた角筒状の計測流路に、流れ方向に沿ったフレームに取り付けた仕切板によって複数の扁平流路に区画する多層流路部材を設ける際に、計測流路およびフレームの内側面に連続する傾斜面を設けた。このため、多層流路内に流体を円滑に案内できるとともに、多層流路外に流体を円滑に送出できるので、流体の計測にあたっての流体の流れが一様となり、平均流速の計測精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、超音波式流体計測装置の角筒状の計測流路に配置される多層流路部材を、流れ方向に沿ったフレームに取り付けた仕切板によって複数の扁平流路に区画する際に、計測流路の内面に仕切板が対面するように設けた。このため、仕切板が露出して計測流路の内面に対面するので、露出した仕切板と計測流路の内面との間が最上段あるいは最下段の扁平流路となる。従って、従来のように、多層流路部材を構成するフレームと計測流路の内面との間に流体が流れ込んで、計測精度を低下させるという問題が生じず、これにより計測精度を向上できるという効果を有する超音波式流体計測装置の多層流路部材および超音波式流体計測装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態の超音波式流体計測装置の多層流路部材および超音波式流体計測装置について、図面を用いて説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る超音波式流体計測装置および多層流路部材の斜視図、図2は水平流路の断面図、図3は多層流路部材の斜視図、図4は図2中IV−IV位置の断面図である。
【0018】
図1に示すように、第1実施形態に係る超音波式流体計測装置10は、左右の鉛直流路12,13と、この左右の鉛直流路12、13の上端部同士を連結する水平流路14とで略逆U字状に形成された流体路11を有している。水平流路14は流体を計測するための計測流路14aを有しており、この計測流路14aにおける一対の対向する内面15a,15bにはそれぞれ第1送受波器(ここでは送波器)21および第2送受波器(ここでは受波器)22を有する超音波計測部20が設けられている。さらに、計測流路14aには、流体を複数の扁平流路に区画する多層流路部材30と、多層流路部材30を計測流路14aに収容して密閉する蓋17を有している。従って、蓋17を水平流路14に被せると、計測流路14aは断面矩形の角筒状に形成されることになる。
【0019】
なお、第1送受波器21と第2送受波器22を結ぶ計測方向の超音波伝搬路23は、流体の流れる方向に対して斜めに交差するように設けられている。このように、第1,第2送受波器21,22のような流れに対して角度を有し対向して配置している配置パターンは、Zパス(Z−path)またはZ法と呼ばれており、本実施の形態では、このZパス配置について例示する。
【0020】
図1および図2に示すように、水平流路14の側壁16a、16bには、外側へ突出する三角形状の送受波器取付部18、18がそれぞれ設けられている。両送受波器取付部18、18および側壁16a、16bには、両送受波器取付部18、18を結ぶ方向に貫通する例えば円形の貫通穴18aが設けられており、超音波伝播路23が形成されている。なお、一方の送受波器取付部18には第1送受波器21が取り付けられ、他方の送受波器取付部18には第2送受波器22が取り付けられている。
【0021】
水平流路14の計測流路14a内部には多層流路部材取付部14bが設けられており、多層流路部材30を上方からはめ込むための段差14cが設けられている。各段差14cには、多層流路部材30のフレーム31内側面31aと水平流路14の内面15a、15bに滑らかに連続させるための傾斜面14dが各々設けられている。
【0022】
このように、第1送受波器21および第2送受波器22を有する超音波計測部20が設けられた角筒状の計測流路14aに多層流路部材30を設ける際に、計測流路14aおよびフレーム31の内側面31aに連続する傾斜面14dを設けたので、多層流路部材30内部に流体を円滑に案内できるとともに、多層流路部材30から外に流体を円滑に送出できる。これにより、流体の計測にあたっての流体の流れが一様となり、平均流速の計測精度を向上させることができる。
【0023】
図3に示すように、多層流路部材30は、計測流路14aを複数の扁平流路14eに区画するための仕切板32と、仕切板32における流体の流れ方向に沿った縁部を支持するフレーム31とを有している。すなわち、図4に示すように、フレーム31は水平流路14の左右の内面15a、15b沿って配置され、両フレーム31、31間に仕切板32が水平に支持される。このとき、水平流路14における上端部および下端部では、仕切板32が直接、計測流路14aの内面(ここでは上下面)を構成する計測流路14aの底面14fおよび蓋17の下面17aに対面するようにする。
【0024】
仕切板32は、各仕切板32によって仕切られる扁平流路14eの断面積が均一になるように設定するのが望ましい。また、フレーム31の下端面は計測流路14aの底面14fに接するとともに、フレーム31の上端面は蓋17の下面17aに接するようにして、最下段および最上段の扁平流路14eの断面積も均一にするのが望ましい。また、第1送受波器21および第2送受波器22を結ぶ超音波伝搬路23に対して略平行となるように仕切板32を配置するのが望ましい。
【0025】
図2〜図4に示すように、多層流路部材30を計測流路14aの多層流路部材取付部14bに嵌めた状態で、超音波伝搬路23に位置する多層流路部材30のフレーム31には、超音波通過用の貫通孔31bが設けられている。この切欠きに31bには、流体は通過させないが超音波を透過させることができる例えば細かなメッシュ・パンチングメタル等のフィルタ部材33が取り付けられており、このフィルタ部材33は撥水性処理が施されている。このため、フィルタ部材33に当たった流体はじかれ、流体による目詰まりが生じにくいので、計測精度を向上させることができる。
【0026】
ここで、「撥水性」とは、防水のように「水の浸透を防ぐ」のではなく、「水を弾く」という性質を言う。撥水性処理としては、例えば、
1:大気圧下でプラズマを発生させ、材料表面に重合により撥水製のポリマーを生成させる。
2:フッ素の極薄皮膜を材料表面に設ける。
3:有機薄膜処理により素材の表面にナノスケールの機能膜を形成する。等の処理を例示することができる。
【0027】
以上、説明した多層流路部材30によれば、計測流路14aの底面14fや蓋17の下面17aに仕切板32が対面するように設けたので、仕切板32が露出して計測流路14aの底面14fおよび蓋17の下面17aに対面し、露出した仕切板32と計測流路14aの底面14fおよび蓋17の下面17aとの間が最上段あるいは最下段の扁平流路14eとなる。このため、従来のように、多層流路部材30を構成するフレーム31と計測流路14aの底面14fおよび蓋17の下面17aとの間に流体が流れ込んで、計測精度を低下させるという問題が生じず、これにより平均流速の計測精度を向上できる。また、最下段および最上段の仕切板32、32が計測流路14aの底面14fおよび蓋17の下面17aの両方に対面するようにしたので、流体が最上段および最下段の扁平流路14eをスムーズに流れることができ、計測精度を更に向上させることができる。
【0028】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る超音波式流体計測装置の多層流路部材および超音波式流体計測装置について説明する。
図5は第2実施形態に係る多層流路部材の斜視図、図6は第2実施形態に係る多層流路部材の断面図である。なお、前述した第1実施形態に係る超音波式流体計測装置の多層流路部材および超音波式流体計測装置と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0029】
図5および図6に示すように、この第2実施形態に係る多層流路部材30Bでは、フレーム31Bにおける流れ方向に沿った端部に設けられた延長部34を有し、この延長部34の内側面34aがフレーム31の内側面31aに対して交差している。従って、図6に示すように、延長部34を計測流路14aの左右内面15a、15bに対して傾斜させて、フレーム31Bの内面にスムーズに接続することができる。これにより、多層流路部材30B内に流体を円滑に案内できるとともに、多層流路部材30B外に流体を円滑に送出できるので、流体の計測にあたっての流体の流れが一様となり、平均流速の計測精度を向上させることができる。なお、本実施形態にかかる多層流路部材30Bを用いる場合には、前述した第1実施形態における水平流路14の傾斜面14dを設ける必要がなくなり、計測流路14aの構造が簡易なものとなる。
【0030】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る超音波式流体計測装置の多層流路部材および超音波式流体計測装置について説明する。
図7は第3実施形態に係る多層流路部材の斜視図、図8は第3実施形態に係る超音波式流体計測装置の要部分解斜視図である。なお、前述した第1実施形態および第2実施携帯に係る超音波式流体計測装置の多層流路部材および超音波式流体計測装置と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0031】
図7および図8に示すように、この第3実施形態に係る多層流路部材30Cでは、第2実施形態において前述したフレーム31B、31Bの下端部に底部35を設けて、断面U字状に形成した。このため、最下段の仕切板32と底部35との間にも、扁平流路14eが形成されることになる。また、底部35の下面35aに、例えば円柱状の位置決め用の突起36を設けるとともに、流路体11の水平流路14における計測流路14aに突起36が嵌合する位置決め凹部37を設けた。これにより、多層流路部材30Cを所定の位置に確実に配置することができる。
【0032】
なお、本発明の超音波式流体計測装置の多層流路部材および超音波式流体計測装置は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明にかかる超音波式流体計測装置の多層流路部材および超音波式流体計測装置は、超音波式流体計測装置の角筒状の計測流路に配置される多層流路部材を、流れ方向に沿ったフレームに取り付けた仕切板によって複数の扁平流路に区画する際に、計測流路の内面に仕切板が対面するように設けた。このため、仕切板が露出して計測流路の内面に対面するので、露出した仕切板と計測流路の内面との間が最上段あるいは最下段の扁平流路となる。従って、従来のように、多層流路部材を構成するフレームと計測流路の内面との間に流体が流れ込んで、計測精度を低下させるという問題が生じず、これにより計測精度を向上できるという効果を有し、多層流路部材により計測流路内に複数の扁平流路が形成された超音波式流体計測装置の多層流路部材および超音波式流体計測装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る超音波式流体計測装置および多層流路部材の斜視図
【図2】水平流路の断面図
【図3】多層流路部材の斜視図
【図4】図2中IV−IV位置の断面図
【図5】第2実施形態に係る多層流路部材の斜視図
【図6】第2実施形態に係る多層流路部材の断面図
【図7】第3実施形態に係る多層流路部材の斜視図
【図8】第3実施形態に係る超音波式流体計測装置の要部分解斜視図
【符号の説明】
【0035】
10 超音波式流体計測装置
14a 計測流路
14d 傾斜面
14e 扁平流路
14f 底面(計測流路の内面)
17a 下面(計測流路の内面)
20 超音波計測部
21 第1送受波器
22 第2送受波器
23 超音波伝搬路
30 多層流路部材
31 フレーム
31a 内側面
31b 貫通孔
32 仕切板
33 フィルタ部材
34 延長部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波式流体計測装置に形成された角筒状の計測流路に配置され、前記計測流路を複数の扁平流路に区画する仕切板と、
前記仕切板における流体の流れ方向に沿った縁部を支持するフレームとを有する超音波式流体計測装置の多層流路部材であって、
前記計測流路の内面に前記仕切板が対面することを特徴とする超音波式流体計測装置の多層流路部材。
【請求項2】
前記計測流路における対向する一対の内面に前記仕切板が対面することを特徴とする請求項1に記載の超音波式流体計測装置の多層流路部材。
【請求項3】
前記フレームにおける前記流れ方向に沿った端部に設けられた延長部を有し、
前記延長部の内側面が前記フレームの内側面に対して交差していることを特徴とする請求項1に記載の超音波式流体計測装置の多層流路部材。
【請求項4】
前記フレームの貫通孔に設けられて超音波を透過させるフィルタ部材に撥水性処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波式流体計測装置の多層流路部材。
【請求項5】
断面矩形の角筒状に形成された計測流路と、
前記計測流路に第1送受波器および第2送受波器が設けられた超音波計測部と、
前記第1送受波器および前記第2送受波器を結ぶ超音波伝搬路に対して略平行となるように前記計測流路に収容された仕切板と、前記仕切板における流体の流れ方向に沿った縁部を支持するフレームとを有する多層流路部材とを備え、
前記多層流路部材により前記計測流路内に複数の扁平流路が形成された超音波式流体計測装置であって、
前記計測流路の内面に連続するとともに、前記フレームの内側面に連続する傾斜面が設けられていることを特徴とする超音波式流体計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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