説明

超音波式流体計測装置

【課題】超音波式流体計測装置において、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬をより効果的に抑制する。
【解決手段】使用温度範囲の下限温度をLT、上限温度をUTとし、流路管10と、第1取付管を介してまたは直接に流路管に固定され超音波を送波する超音波送波器と、第2取付管を介してまたは直接に流路管に固定され超音波を受波する超音波受波器とを備え、超音波送波器と超音波受波器との間にある、流路管または第1取付管または第2取付管のいずれかに、当該管の軸方向におけるピッチがL1となるように一対の溝12が形成され、超音波の周波数をN、管のうち溝が形成された部分を構成する材料を管材料とし、LTにおける管材料中の周波数Nの音波の波長をλ1とし、UTにおける管材料中の周波数Nの音波の波長をλ2とするとき、L1が、下限長をλ2×(1/4)、上限長をλ1×(1/4)とする所定の長さ範囲に入る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波式流体計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、流体の流れを音波を用いて計測する流量計を開示する。同流量計は、余分な振動伝搬を低減してS/Nよく送受信することで流量計測を高精度に行うことを目的とする。同流量計は、流体を配送する流路と、1対の振動検出手段を用いて振動が流体中を伝搬する伝播時間から流量を計測する流量計測手段と、流路に振動減衰手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−236042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波流量計測装置においては、超音波が送波器から直接流路管を通じて受波器へと振動が伝搬すると計測に支障を来たす。
【0005】
本発明は、かかる課題に対応するものであり、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬をより効果的に抑制することが可能な、超音波式流体計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、超音波式流体計測装置において、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬をより効果的に抑制すべく、鋭意検討を行った。その結果、以下の知見を得た。
【0007】
超音波式流体計測装置において、超音波は、測定対象となる流体のみならず、流路管中をも伝播する。超音波の波長をλとして、流路管の表面(外面でも内面でもよい)にλ/4のピッチで溝を形成することにより、流路管中を伝播する超音波を減衰させることができる。これは、管を構成する固体の内部や表面近傍を伝搬してきた振動が溝を通過する際に、波長λの1/4毎に溝があると特にその波長成分を選択して減衰が大きくなるからである。
【0008】
すなわち本発明の超音波式流体計測装置は、下限温度をLT、上限温度をUTとする所定の温度範囲において使用される超音波式流体計測装置であって、流路管と、第1取付管を介してまたは直接に前記流路管に固定され超音波を送波する超音波送波器と、第2取付管を介してまたは直接に前記流路管に固定され前記超音波を受波する超音波受波器とを備え、前記超音波送波器と前記超音波受波器との間にある、前記流路管または前記第1取付管または前記第2取付管のいずれかに、当該管の軸方向におけるピッチがL1となるように一対の溝が形成され、前記超音波の周波数をN、前記管のうち前記溝が形成された部分を構成する材料を管材料とし、LTにおける前記管材料中の周波数Nの音波の波長をλ1とし、UTにおける前記管材料中の周波数Nの音波の波長をλ2とするとき、L1が、下限長をλ2×(1/4)、上限長をλ1×(1/4)とする所定の長さ範囲に入る。
【0009】
かかる構成では、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬をより効果的に抑制することができる。
【0010】
上記超音波式流体計測装置は、前記軸方向におけるピッチが連続的に変化するように構成されていてもよい。
【0011】
かかる構成では、温度の変化により超音波の波長が変動しても、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬を効果的に抑制することができる。
【0012】
上記超音波式流体計測装置は、L2および前記L1を定数値とするとき、前記超音波送波器と前記超音波受波器との間にある、前記流路管または前記第1取付管または前記第2取付管のいずれかに、当該管の軸方向におけるピッチがL2となるように一対の溝が形成され、L2が、下限長をλ2×(1/4)、上限長をλ1×(1/4)とする所定の長さ範囲に入り、かつ、L1≠L2を満たしてもよい。
【0013】
かかる構成では、複数の異なる温度において、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬を効果的に抑制することができる。
【0014】
上記超音波式流体計測装置において、前記溝の深さをDとするとき、Dが、下限深さをλ2×(1/4)、上限深さをλ1×(1/4)とする所定の深さ範囲に入ってもよい。
【0015】
かかる構成では、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬をさらに効果的に抑制することができる。
【0016】
上記超音波式流体計測装置において、前記溝の一部を覆うように、超音波吸収材料が配設されていてもよい。
【0017】
かかる構成では、溝に捉えられた超音波を、超音波吸収材料で効率よく吸収し、あるいは減衰させることができる。よって、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬をより効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の超音波式流体計測装置によれば、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬をより効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)は第1実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置の概略構成の一例を示す断面図であり、図1(b)は第1実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置において溝が設けられる部位の一例を示す断面図であり、図1(c)は第1実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置において溝が設けられる部位の他の例を示す断面図である。
【図2】図2(a)は第1実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す斜視図であり、図2(b)は第1実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す断面図である。
【図3】図3(a)は第1実施形態の第1変形例にかかる超音波式流体計測装置の概略構成の一例を示す断面図であり、図3(b)は第1実施形態の変形例にかかる超音波式流体計測装置において溝が設けられる部位の一例を示す断面図であり、図3(c)は第1実施形態の変形例にかかる超音波式流体計測装置において溝が設けられる部位の他の例を示す断面図である。
【図4】図4(a)は第1実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す平面図であり、図4(b)は第1実施形態の第2変形例にかかる超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す平面図であり、図4(c)は第1実施形態の第3変形例にかかる超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す平面図である。
【図5】図5は、第2実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す断面図である。
【図6】図6(a)は第3実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す断面図であり、図6(b)は第3実施形態の変形例にかかる超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
図1(a)は第1実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置の概略構成の一例を示す断面図であり、図1(b)は第1実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置において溝が設けられる部位の一例を示す断面図であり、図1(c)は第1実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置において溝が設けられる部位の他の例を示す断面図である。
【0021】
図2(a)は第1実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す斜視図であり、図2(b)は第1実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す断面図である。
【0022】
なお、符号は本実施形態とその実施例との対応関係をあくまで例示するために付したに過ぎず、本実施形態の流体制御弁の構成が図1に限定されるものではない。以下、他の実施形態においても同様である。
【0023】
図1および図2に例示されるように、第1実施形態の超音波式流体計測装置は、下限温度をLT、上限温度をUTとする所定の温度範囲において使用される超音波式流体計測装置であって、流路管10と、第1取付管20を介してまたは直接に流路管10に固定され超音波を送波する超音波送波器30と、第2取付管40を介してまたは直接に流路管10に固定され超音波を受波する超音波受波器50とを備え、超音波送波器30と超音波受波器50との間にある、流路管10または第1取付管20または第2取付管40のいずれかに、当該管の軸方向におけるピッチがL1となるように一対の溝12が形成され、超音波の周波数をN、当該管のうち溝が形成された部分を構成する材料を管材料とし、LTにおける管材料中の周波数Nの音波の波長をλ1とし、UTにおける管材料中の周波数Nの音波の波長をλ2とするとき、L1が、下限長をλ2×(1/4)、上限長をλ1×(1/4)とする所定の長さ範囲に入る。
【0024】
かかる構成では、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬をより効果的に抑制することができる。
【0025】
超音波送波器30は超音波送受波器であってもよい。超音波受波器50は超音波送受波器であってもよい。すなわち、超音波送波器30および超音波受波器50は特定の時点でそれぞれ送波器および受波器の機能を実現できるものであればよい。
【0026】
LTおよびUTは、超音波式流体計測装置(例えば、ガスメータ)が使用される環境によって異なりうる所定の温度範囲の下限値および上限値であり、具体的には例えば、設計上で予め定められる所定の温度範囲の下限値および上限値である。LTおよびUTは、超音波式流体計測装置の法律上の規格等(例えば、ガスメータの法律上の規格等)によって予め定められる使用可能温度範囲の下限値および上限値であってもよい。具体的には例えば、LT=摂氏−30度、UT=摂氏+60度、としうる。あるいは例えば、LT=摂氏−20度、UT=摂氏+50度、としうる。あるいは例えば、LT=摂氏−10度、UT=摂氏+45度、としうる。あるいは例えば、LT=摂氏0度、UT=摂氏+40度、としうる。
【0027】
下限温度がLTであることの技術的意義は、温度がLT以上であることを意味してもよいし、温度がLTより高いことを意味してもよい。上限温度がUTであることの技術的意義は、温度がUT以下であることを意味してもよいし、温度がUT未満であることを意味してもよい。すなわち、所定の温度範囲には、下限温度が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。また、所定の温度範囲には、上限温度が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0028】
下限長がλ2×(1/4)であることの技術的意義は、L1がλ2×(1/4)以上であることを意味してもよいし、L1がλ2×(1/4)より長いことを意味してもよい。上限長がλ1×(1/4)であることの技術的意義は、L1がλ1×(1/4)以下であることを意味してもよいし、L1がλ1×(1/4)より短いことを意味してもよい。すなわち、所定の長さ範囲には、下限長が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。また、所定の長さ範囲には、上限長が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。以上の点は、後述するL2およびDについても同様である。
【0029】
ただし、下限温度がLTであることの技術的意義が、温度がLT以上であることを意味する場合には、原則として、上限長がλ1×(1/4)であることの技術的意義は、L1がλ1×(1/4)以下であることを意味する。下限温度がLTであることの技術的意義が、温度がLTより高いことを意味する場合には、上限長がλ1×(1/4)であることの技術的意義は、原則として、L1がλ1×(1/4)より短いことを意味する。すなわち原則として、下限温度が所定の温度範囲に含まれる場合には、上限長は所定の長さ範囲に含まれ、下限温度が所定の温度範囲に含まれない場合には、上限長は所定の長さ範囲に含まれない。以上の点は、後述するL2およびDについても同様である。
【0030】
また、上限温度がUTであることの技術的意義が、温度がUT以下であることを意味する場合には、下限長がλ2×(1/4)であることの技術的意義は、原則として、L1がλ2×(1/4)以上であることを意味する。上限温度がUTであることの技術的意義が、温度がUT未満であることを意味する場合には、下限長がλ2×(1/4)であることの技術的意義は、原則として、L1がλ2×(1/4)より長いことを意味する。すなわち原則として、上限温度が所定の温度範囲に含まれる場合には、下限長は所定の長さ範囲に含まれ、上限温度が所定の温度範囲に含まれない場合には、下限長は所定の長さ範囲に含まれない。以上の点は、後述するL2およびDについても同様である。
【0031】
溝の軸方向におけるピッチは、1対の溝のいずれかの部位において上記範囲に入っている構成であってもよいが、1対の溝の全部の部位において上記範囲に入っている構成であることが好ましい。
【0032】
超音波送波器30と超音波受波器50との間にある、流路管10または第1取付管20または第2取付管40とは、超音波送波器30から管壁に伝達された超音波が管壁中を伝播して超音波受波器50に到達するまでの経路に存在する管のことを指す。
【0033】
溝12は、例えば、図1(b)に塗りつぶし部分として示すように、第1取付管20および第2取付管40に加え、第1取付管20および第2取付管40の基部のうち、互いに最も遠い端同士を結ぶ流路管10(図中、破線22と破線42との間の流路管10)のいずれかに形成されるのが好ましい。
【0034】
溝12は、例えば、図1(c)に塗りつぶし部分として示すように、第1取付管20および第2取付管40の基部のうち、互いに最も近い端同士を結ぶ流路管10(図中、破線24と破線44との間の流路管10)に形成されるのが最も好ましい。
【0035】
溝12は、流路管10に設けられず、第1取付管20および第2取付管40の両方にのみ、あるいはいずれか少なくとも一方にのみ設けられていてもよい。
【0036】
溝12は、図2(a)に示すように、管の全周を周回するように形成されるのが好ましいが、管の周の一部にのみ形成されていてもよい。
【0037】
溝12は、管の外壁に形成されるのが好適であるが、管の内壁に形成されていてもよい。
【0038】
管の軸方向におけるピッチとは、図2(b)にL1として示すように、管の軸方向(図では左右方向)に沿って、溝の一方の側(図では左側)の端から他の溝の同じ側(図では左側)の端までの長さを指す。
【0039】
超音波の周波数をNとは、超音波式流体計測装置において計測に用いられる超音波の周波数である。具体的には例えば、超音波送波器30が発信し、超音波受波器50が受信する超音波の周波数を指す。
【0040】
流路管10と第1取付管20と第2取付管40とは、全部が単一の材料で構成されていてもよいし、一部分が他の部分と異なる材料で構成されていてもよい。管を構成する材料としては、例えば、ポリスチレンなどが好適に利用できる。
【0041】
また、樹脂の場合は内部に含有するガラス成分により速度は変化するが、LPC(液晶ポリマー)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、エポキシ樹脂、POM(ポリアセタール)、フェノール樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)なども有用である。これらの耐ガス性が高い材料を選定すると用途は広くなる。
【0042】
摂氏−30度における管材料中の周波数Nの音波の波長(λ1)および、摂氏+60度における管材料中の周波数Nの音波の波長(λ2)の具体例としては、例えば、N=1.46MHzzで、管材料がポリスチレンの場合、λ1=1.69mm、λ2=1.51mmである。よって、摂氏−30度以上摂氏+60度以下の温度範囲において使用される超音波式流体計測装置の場合において、一対の溝につき、管の軸方向におけるピッチL1の範囲としては、管材料がポリスチレンの場合、0.38mm≦L1≦0.42mmである。
【0043】
溝12を形成する方法は特に限定されず、例えば、金型成形、エッチングなどの方法が採用しうる。
【0044】
第1取付管20および第2取付管40は設けられなくてもよい。即ち、超音波送波器30および超音波受波器50は流路管10に直接取り付けられてもよい。
【0045】
また、くさびを用いた管外式の計測においても利用できることは明らかである。
【0046】
[実施例]
以下、図1および図2を参照しつつ、第1実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置100について詳細に説明する。
【0047】
超音波式流体計測装置100は、摂氏−30度以上摂氏+60度以下の温度範囲において使用される超音波式流体計測装置であって、略矩形の断面を有する流路管10を備える。流路管10は、図1において左から右へと流体を通流させるように流路を構成する。流路管10のある面には、該流路から分岐するように第1取付管20と第2取付管40とが、流路管10のなす流路の主軸と所定の角度をなして延びるように形成されている。該流路を流れる流体の流れ方向と第1取付管20の主軸とがなす角度は、該流れ方向の逆方向と第2取付管40の主軸とがなす角度と等しくなっている。換言すれば、第1取付管20と第2取付管40とは、流体の流れる方向と垂直な平面に対して面対称となるように形成される。流路管10と第1取付管20および第2取付管40の一端とは、その内部が連通している。第1取付管20の他端の開口部には超音波送波器30が設けられている。第2取付管40の他端の開口部には超音波受波器50が設けられている。
【0048】
超音波送波器30および超音波受波器50はそれぞれ、超音波の送受波面が取付管の内部を向くように取り付けられている。超音波送波器30から発信された超音波は、流路管10が形成する流路の内部を通流する流体中を伝播し、流路管10の内壁のうち、第1取付管20およb第2取付管40が設けられている面と反対側の面で反射して、超音波受波器50に到達する。流体の流速に応じて超音波の到達時間が変化する。該変化に基づいて、流体の流速あるいは流量等が計測される。計測の具体的方法については、周知の方法を採用することができるので、詳細な説明を省略する。
【0049】
流路管10を構成する材料は、ポリスチレンである。本実施例では、L1の好適な例として、摂氏23度における超音波(N=1.46MHz)の波長(1.58mm)に基づいて、L1=0.40mmとされる。
【0050】
本実施例において溝12の幅(0.1mm)およびピッチ(0.4mm)は一定であり、流路管10の外壁において、流路管10の主軸に垂直な平面と平行に、流路管10の全周にわたって形成される。溝12が形成される位置は、図1(c)の塗りつぶし部分である。
【0051】
本実施例においては、2本の溝12の幅および深さは互いに等しく一定である。
【0052】
[第1変形例]
図3(a)は第1実施形態の第1変形例にかかる超音波式流体計測装置の概略構成の一例を示す断面図であり、図3(b)は第1実施形態の変形例にかかる超音波式流体計測装置において溝が設けられる部位の一例を示す断面図であり、図3(c)は第1実施形態の変形例にかかる超音波式流体計測装置において溝が設けられる部位の他の例を示す断面図である。
【0053】
図3に例示されるように、本変形例の超音波式流体計測装置は、摂氏−30度以上摂氏+60度以下の温度範囲において使用される超音波式流体計測装置であって、流路管11と、第1取付管21を介してまたは直接に流路管11に固定され超音波を送波する超音波送波器31と、第2取付管41を介してまたは直接に流路管11に固定され超音波を受波する超音波受波器51とを備え、超音波送波器31と超音波受波器51との間にある、流路管11または第1取付管21または第2取付管41のいずれかに、当該管の軸方向におけるピッチがL1となるように一対の溝が形成され、超音波の周波数をN、当該管のうち溝が形成された部分を構成する材料を管材料とし、摂氏−30度における管材料中の周波数Nの音波の波長をλ1とし、摂氏+60度における管材料中の周波数Nの音波の波長をλ2とするとき、λ2×(1/4)≦L1≦λ1×(1/4)を満たす。
【0054】
かかる構成では、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬をより効果的に抑制することができる。
【0055】
溝は、例えば、図3(b)に塗りつぶし部分として示すように、第1取付管21および第2取付管41に加え、第1取付管21および第2取付管41の基部のうち、互いに最も遠い端同士を結ぶ流路管11(図中、破線23と破線43との間の流路管11)のいずれかに形成されるのが好ましい。
【0056】
溝は、例えば、図1(c)に塗りつぶし部分として示すように、第1取付管21および第2取付管41の両方、あるいはいずれか一方に設けられるのが最も好ましい。
【0057】
図3(a)に示すように、第1変形例の超音波式流体計測装置200は、略矩形の断面を有する流路管11を備える点、および、流路管11が、図3において左から右へと流体の通流させるように流路を構成する点では、超音波式流体計測装置100と共通する。しかし、2つの取付管が、同一の面ではなく、それぞれが互いに異なる、互いに対向する2つの面の一方において、流路管11のなす流路の主軸と所定の角度をなして延びるように形成されている点で異なっている。
【0058】
第1取付管21と第2取付管41とは、流路管11の主軸と所定の鋭角に交差する直線上に、かつ、流路管11がなす流路を挟んで互いに対向するように、設けられる。
【0059】
超音波送波器31および超音波受波器51はそれぞれ、超音波の送受波面が取付管の内部を向くように取り付けられている。超音波送波器31から発信された超音波は、流路管11が形成する流路の内部を通流する流体中を伝播し、対向する超音波受波器51に到達する。流体の流速に応じて超音波の到達時間が変化する。該変化に基づいて、流体の流速あるいは流量等が計測される。計測の具体的方法については、周知の方法を採用することができるので、詳細な説明を省略する。
【0060】
本変形例における、流路管11の大きさ、管壁の厚み、管を構成する材料、溝のピッチや幅、溝の形態等は実施例と同様としうるので詳細な説明は省略する。
【0061】
[第2変形例および第3変形例]
図4(a)は第1実施形態の実施例にかかる実施例の超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す展開図であり、図4(b)は第1実施形態の第2変形例にかかる超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す展開図であり、図4(c)は第1実施形態の第3変形例にかかる超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す展開図である。ここで、展開図とは流路管において主軸に垂直な方向の一端を主軸に平行な面で切って開いた状態を図示するものである。図4のぞれぞれの図において、上端の線と下端の線とは復元された流路管において一致する。
【0062】
図4(a)に例示するように、第1実施形態の実施例の超音波式流体計測装置100では、溝が設けられた管の軸方向における一対の溝のピッチは一定である。
【0063】
図4(b)に例示するように、第2変形例にかかる超音波式流体計測装置においては、溝13が設けられた管の軸方向における溝13のピッチが連続的に変化するように構成されている。
【0064】
溝13のピッチが連続的に変化する態様は、特に限定されない。例えば、図4(b)に例示するように、ピッチが最小値をLmin、最大値をLmaxとして、Lmin以上Lmax以下の間で、連続的に一往復だけ変化するように構成してもよい。変化のパターンは、例えば、周方向に沿って正弦波を描くように設定することができる。
【0065】
第2変形例においては、溝12が、ピッチが連続的に変化する溝13に置換されている点を除けば、第1実施形態およびその実施例について上述したのと同様の構成とすることができる。よって、共通する部分については詳細な説明を省略する。第2変形例を第1変形例に適用することも可能である。
【0066】
第2変形例の構成によれば、所定の温度範囲において連続的に変化する波長に応じて、対応するピッチを有する部分が存在する。よって、所定の温度範囲にわたり、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬を効果的に抑制することができる。
【0067】
図4(c)に例示するように、第3変形例にかかる超音波式流体計測装置においては、溝の一部を覆うように、超音波吸収材料15が配設されている。超音波吸収材料としては、超音波を吸収あるいは減衰させやすい、多孔質材料(発泡系高分子等)が好適に採用される。具体例としては、例えば、発泡ウレタン、発泡ポリイミド、発泡シリコンなどが好適に用いられうる。また、シリコーンを主材料とした振動吸収ゲルなどのやわらかい材質のものでも超音波を吸収することが可能である。
【0068】
第3変形例においては、超音波吸収材料15が設けられている点を除けば、第1実施形態およびその実施例について上述したのと同様の構成とすることができる。よって、共通する部分については詳細な説明を省略する。第3変形例を第1変形例あるいは第2変形例に適用することも可能である。第3変形例を、第1変形例と第2変形例の組み合わせに適用することも可能である。
【0069】
第3変形例の構成によれば、溝に捉えられた超音波を、超音波吸収材料で効率よく吸収し、あるいは減衰させることができる。よって、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬をより効果的に抑制することができる。
【0070】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す断面図である。
【0071】
第2実施形態の超音波式流体計測装置は、流路管10に形成される溝12の深さが所定の値に設定されている点を除けば、第1実施形態の超音波式流体計測装置およびその実施例について上述したのと同様の構成とすることができる。よって、第1実施形態と第2実施形態とで共通する部分については詳細な説明を省略する。また、第1実施形態の変形例についても、それぞれ第2実施形態に適用可能である。
【0072】
図5に例示するように、第2実施形態の超音波式流体計測装置は、下限温度をLT、上限温度をUTとする所定の温度範囲において使用される超音波式流体計測装置であって、超音波の周波数をN、当該管のうち溝が形成された部分を構成する材料を管材料とし、LTにおける管材料中の周波数Nの音波の波長をλ1とし、UTにおける管材料中の周波数Nの音波の波長をλ2とし、溝12の深さをDとするとき、Dが、下限深さをλ2×(1/4)、上限深さをλ1×(1/4)とする所定の深さ範囲に入る。
【0073】
かかる構成では、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬をさらに効果的に抑制することができる。
【0074】
(第3実施形態)
図6(a)は第3実施形態の実施例にかかる超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す断面図であり、図6(b)は第3実施形態の変形例にかかる超音波式流体計測装置において溝が形成される態様の一例を示す断面図である。
【0075】
第3実施形態の超音波式流体計測装置は、流路管10において、溝の構成を除けば、第1実施形態の超音波式流体計測装置およびその実施例について上述したのと同様の構成とすることができる。よって、第1実施形態と第3実施形態とで共通する部分については詳細な説明を省略する。また、第1実施形態の変形例についても、それぞれ第3実施形態に適用可能である。第3実施形態を第2実施形態およびその変形例に適用することも可能である。
【0076】
図6(a)に例示するように、第3実施形態の超音波式流体計測装置では、L2およびL1を定数値とするとき、超音波送波器30と超音波受波器50との間にある、流路管10または第1取付管20または第2取付管40のいずれかに、第1実施形態で述べた溝13に加え、当該管の軸方向におけるピッチがL2となるように一対の溝14が形成され、L2が、下限長をλ2×(1/4)、上限長をλ1×(1/4)とする所定の長さ範囲に入り、かつ、L1≠L2を満たす。
【0077】
かかる構成では、異なるピッチで対をなす溝が形成されているため、複数の異なる温度において、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬を効果的に抑制することができる。
【0078】
図6(a)に例示するように、第3実施形態の実施例の超音波式流体計測装置では、L1のピッチを有する一対の溝12と、L2のピッチを有する一対の溝14とは、それぞれ重複せずに別個に設けられている。
【0079】
一方、図6(b)に例示するように、第3実施形態の変形例の超音波式流体計測装置では、L1のピッチを有する一対の溝12と、L2のピッチを有する一対の溝13とは、一方が重複している。すなわち、図6(b)において、一対の溝12のうち右側の溝と、一対の溝13のうち左側の溝とは同一である。
【0080】
かかる構成でも図6(a)の構成と同様の効果が得られる。
【0081】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の超音波式流体計測装置は、流路管を通じた送波器から受波器への振動の伝搬をより効果的に抑制することができる超音波式流体計測装置として有用である。
【符号の説明】
【0083】
10 流路管
11 流路管
12 溝
13 溝
14 溝
15 超音波吸収材料
20 第1取付管
21 第1取付管
22 破線
23 破線
24 破線
30 超音波送波器
31 超音波送波器
40 第2取付管
41 第2取付管
42 破線
43 破線
44 破線
50 超音波受波器
51 超音波受波器
100 超音波式流体計測装置
200 超音波式流体計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下限温度をLT、上限温度をUTとする所定の温度範囲において使用される超音波式流体計測装置であって、
流路管と、
第1取付管を介してまたは直接に前記流路管に固定され超音波を送波する超音波送波器と、
第2取付管を介してまたは直接に前記流路管に固定され前記超音波を受波する超音波受波器とを備え、
前記超音波送波器と前記超音波受波器との間にある、前記流路管または前記第1取付管または前記第2取付管のいずれかに、当該管の軸方向におけるピッチがL1となるように一対の溝が形成され、
前記超音波の周波数をN、前記管のうち前記溝が形成された部分を構成する材料を管材料とし、LTにおける前記管材料中の周波数Nの音波の波長をλ1とし、UTにおける前記管材料中の周波数Nの音波の波長をλ2とするとき、L1が、下限長をλ2×(1/4)、上限長をλ1×(1/4)とする所定の長さ範囲に入る、超音波式流体計測装置。
【請求項2】
前記軸方向におけるピッチが連続的に変化するように構成されている、請求項1記載の超音波式流体計測装置。
【請求項3】
L2および前記L1を定数値とするとき、
前記超音波送波器と前記超音波受波器との間にある、前記流路管または前記第1取付管または前記第2取付管のいずれかに、当該管の軸方向におけるピッチがL2となるように一対の溝が形成され、
L2が、下限長をλ2×(1/4)、上限長をλ1×(1/4)とする所定の長さ範囲に入り、かつ、L1≠L2を満たす、請求項1または2に記載の超音波式流体計測装置具。
【請求項4】
前記溝の深さをDとするとき、Dが、下限深さをλ2×(1/4)、上限深さをλ1×(1/4)とする所定の深さ範囲に入る、請求項1乃至3のいずれかに記載の超音波式流体計測装置。
【請求項5】
前記溝の一部を覆うように、超音波吸収材料が配設されている、請求項1乃至4のいずれかに記載の超音波式流体計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−127653(P2012−127653A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276499(P2010−276499)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】