説明

超音波式流量計測装置

【課題】 流体を介さない間接波が受信側の超音波センサへ伝搬するのをより抑制することができる超音波式流量計測装置を提供する。
【解決手段】 超音波式流量計測装置1は、流路部材20に設けられる一対の超音波振動子33と、超音波振動子33を駆動する回路が実装された基板40と、各超音波振動子33及び基板40の間を接続するリード線Lと、を備え、更に、一方の超音波振動子33に接続されたリード線Lから、基板40を経て、他方の超音波振動子33に接続されたリード線Lに至るまでの経路R2上に、該経路R2を介して伝搬する振動を抑制するための防振手段45を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用してガス等の被測定流体の流量を計測する超音波式流量計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、家庭のガス器具にて消費される燃料ガス等の流体の流量を計測するものとして、シングアラウンド法(伝搬速度差法)を利用した超音波式流量計測装置が知られている。この流量測定装置では、上記流体(被測定流体)を通流させる流路において、その上流位置と下流位置とに超音波振動子を有する超音波センサを設け、パルス状の超音波を交互に送受信させる。これにより、流体の通流方向に対する順方向及び逆方向のそれぞれについて、流体を介した超音波の伝搬時間を取得し、その差から被測定流体の流速を算出する。そして、算出した流速と流路の通流断面積とから、最終的に流体の流量を計測することができる。
【0003】
ところで、受信側の超音波センサに到達する信号には、流体を介して伝搬する所望の信号波(以下、「直接波」とも称する)だけでなく、流路を構成する流路部材の壁部を媒体として伝搬する信号波(以下、「間接波」とも称する)も含まれている場合がある。このような間接波が受信側の超音波センサにて受信されると、所望の直接波から正確な流速を得ることが難しくなり、流量の計測精度上好ましくない。そこで、従来、間接波の伝搬を抑制するための技術が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、超音波の発生源である圧電体を、制振ゴムを介して流路部材にて支持するようにした構成が開示されている。これにより、圧電体が発する振動を流体へのみ伝搬させ、流路部材への伝搬を抑制することができる。また、特許文献2には、流路部材において超音波振動子の近傍に位置する壁面部分に凹凸部を形成した構成が開示されている。これにより、流路部材の特に壁面部分を伝搬する間接波を、凹凸部によって減衰することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−159551号公報
【特許文献2】特開2001−236042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1,2のような構成を採用した場合であっても、未だに間接波が受信側の超音波センサにて受信される場合があることを、本願発明者は知見した。特に、近年の超音波式流量計測装置の小型化に伴って、そのような現象の発生がより顕著になる傾向が見受けられる。
【0007】
そこで本発明は、流体を介さない間接波が受信側の超音波センサへ伝搬するのをより抑制することができる超音波式流量計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る超音波式流量計測装置は、被測定流体が流れる管状の流路部材に設けられる一対の超音波振動子と、この一対の超音波振動子の間で互いに超音波を送受信させるべく、該超音波振動子を駆動する回路が実装された基板と、各超音波振動子及び前記基板の間を接続するリード線と、を備え、更に、一方の超音波振動子に接続されたリード線から、前記基板を経て、他方の超音波振動子に接続されたリード線に至るまでの経路上に、該経路を介して伝搬する振動を抑制するための防振手段が備えられている。
【0009】
本願発明者は、鋭意努力の結果、従来知られていた間接波の媒体である流路部材の他にも、間接波を伝搬する媒体が存在することを突き止めた。詳説すると、超音波式流量計測装置は、流体(被測定流体)が流れる流路部材、及び該流路部材に設けられる一対の超音波振動子に加えて、この超音波振動子を駆動するための回路が実装された基板、及び、各超音波振動子と基板とを接続するリード線を備えている。そして、これらリード線及び基板が、間接波を伝搬する媒体となっていたのである。
【0010】
従って、上述したような構成とすることにより、即ち、一方の超音波振動子に接続されたリード線から基板を経て他方の超音波振動子に接続されたリード線に至るまでの経路上に、該経路を介して伝搬する間接波(振動)を抑制するための防振手段を備えることにより、この種の間接波が受信側の超音波振動子にて受信されるのを抑制することができる。
【0011】
また、前記防振手段は、各超音波振動子に接続されたリード線のうち、何れか一方の超音波振動子に接続されたリード線に対して防振処理を施すものであってもよい。このような構成とすることにより、上記経路上に多数の防振手段を設けずとも、最小数の防振手段によって効果的に間接波の伝搬を抑制することができる。
【0012】
また、前記防振手段として、前記リード線を前記基板に支持させる支持手段を有し、該支持手段は、前記リード線及び前記基板に付着した状態で弾性を有する弾性部材から成るものであってもよい。また、このような弾性部材の典型的な例としては、固化状態で弾性を有する接着剤を採用することができる。このような構成とすることにより、安価で且つ施工が容易な方法により、間接波の伝搬を抑制することができる。
【0013】
また、前記基板を覆う基板カバーを更に備え、前記防振手段は、前記基板カバーの内面と前記基板との間に挟み込まれて前記リード線を押圧支持する弾性押圧部材であってもよい。また、このような弾性押圧部材の典型的な例としては、合成樹脂を発泡成形したスポンジを採用することができる。このような構成とすることにより、容易な方法により間接波の伝搬を効果的に抑制することができる。
【0014】
また、前記基板を覆う基板カバーを更に備え、前記防振手段は、前記リード線をその途中で支持すべく、前記基板カバーの壁部からその内方へ延設されたアームであってもよい。このような構成とすることにより、間接波の伝搬を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る超音波流量計によれば、流体を介さない間接波、特に、リード線及び基板を媒体とする間接波が受信側の超音波センサへ伝搬するのをより抑制することができる超音波式流量計測装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態1に係る超音波式流量計測装置の全体構成を示す正面断面図である。
【図2】実施の形態1に係る流量計測装置の流量計測部を拡大して示す正面断面図(上側)及び平面図(下側)である。
【図3】実施の形態2に係る流量計測部の構成を示す正面断面図である。
【図4】実施の形態3に係る流量計測部の構成を示す正面断面図である。
【図5】実施の形態4に係る流量計測部の構成を示す側面図であり、超音波信号の正規の伝搬ルートが直線状を成す構成を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態に係る超音波式流量計測装置は、燃料ガスの流量を計測する用途のものを例示するが、本発明が適用される対象はこの用途に限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係る超音波式流量計測装置(以下、「流量計測装置」と称する)の全体構成を示す正面断面図である。この図1に示すように、流量計測装置1は、直方体形状を成して所定容量を有するボックス状の筐体2を備えている。該筐体2は、その容量の大半を占めて上部が開口された筐体容器2aと、該筐体容器2aの上部開口を閉塞する筐体蓋部2bとから構成されており、この筐体容器2aの開口縁部と筐体蓋部2bの周縁部とが接続されることで、閉塞空間を形成する筐体2を成している。
【0019】
筐体蓋部2bの上面一側部には、筐体2の内外を連通するガス流入部3が備えられ、上面他側部には、同様に筐体2の内外を連通するガス流出部4が備えられている。更に、ガス流出部4の上流端部には、ガス流入部3を介して筐体2内に流入したガスの流量を計測するための流量計測部5が接続されている。
【0020】
このうちガス流入部3は、上下方向に軸芯を向けた比較的短寸の管状を成して、筐体蓋部2bを貫通して設けられたガス流入管10を備えている。このガス流入管10の上端は、図示しない上流側ガス供給配管が接続されるガス流入口10aを成す一方、下端は閉塞されている。また、ガス流入管10の下部の周壁部分には、該ガス流入管10の内外を連通するガス流出口10bが正面側へ開口するようにして形成されている。このガス流出口10bには、外部からの制御信号に基づいて駆動するバルブ11が設けられており、ガス流出口10bを開閉可能になっている。
【0021】
従って、バルブ11によりガス流出口10bが開放されている場合は、上流側ガス供給配管から供給されたガスが、ガス流入口10aを介してガス流入管10内に入り、ガス流出口10bを介して筐体2内へと導入される。一方、バルブ11によりガス流出口10bが閉塞されている場合は、ガス供給配管から供給されるガスの筐体2内への導入は制限される。
【0022】
ガス流出部4は、上下方向に軸芯を向けた比較的長寸の管状を成して、筐体蓋部2bを貫通して設けられたガス流出管12を備えている。このガス流出管12の上端は、図示しない下流側ガス供給管が接続されるガス流出口12aを成す一方、下端は閉塞されている。また、ガス流出管12の下部の周壁部分には、該ガス流出管12の内外を連通するガス流入口12bが筐体2の中心側へ向けて開口するように形成されている。そして、このガス流入口12bに流量計測部5が接続されている。
【0023】
図2は、本実施の形態に係る流量計測装置1の流量計測部5を拡大して示す正面断面図(上側)及び平面図(下側)である。図2の正面断面図に示すように、主に流量計測部5は、管状(又は筒状)を成してガスが通流する流路部材20と、一対の超音波センサ30と、該超音波センサ30を駆動するための回路が実装された基板40とを備えている。
【0024】
流路部材20は、左右方向に軸芯を向けて配設されており、その一端はガスの導入口21を成し、他端は排出口22を成している。導入口21及び排出口22は何れも開口端へ向かうに従って拡径しており、特に、導入口21は軸芯を含む断面が円弧状を成し、排出口22は軸芯を含む断面が階段状を成している。この排出口22には、上述したガス流出部3のガス流入口12bが接続されるようになっている(図1参照)。また、流路部材20の上側壁部であって、導入口21と排出口22との間の部分には、センサ取付用開口23が形成されている。
【0025】
このセンサ取付用開口23には、センサ取付部材31が装着されるようになっており、該センサ取付部材31には、防振ゴム32を介して超音波センサ30が取り付けられている。センサ取付部材31は、およそ左右対称の構成になっており、左右で一対を成すように超音波センサ30(超音波センサ30A,30B)が取り付けられる。また、この超音波センサ30は、上記の通りセンサ取付部材31及び防振ゴム32を介して流路部材20に取り付けられると、一方から他方への超音波の伝搬経路R1(図2中に一点鎖線で示す、流路部材20内の経路)がV字状を成すようになっている。
【0026】
各超音波センサ30(30A,30B)は、超音波を発する超音波振動子33(33A,33B)を備えている。より詳しく説明すると、超音波センサ30は、防振ゴム32により支持されて容器状を成す導電性の振動ケース34と、該振動ケース34の上部開口を閉塞する導電性の封止蓋35を備えている。そして、振動ケース34内には超音波振動子33が収容されており、且つ、収容された状態で、振動ケース34の内底面が超音波振動子33の下面に当接するようになっている。また、超音波振動子33の上面と封止蓋35の内面との間には導電ゴム36が介装されている。
【0027】
これらの超音波振動子33には、それぞれ2本のリード線Lが接続されている。即ち、超音波振動子33Aについて言えば、一方のリード線L(リード線LA1)の一端が封止蓋35に接続されている。ここで、封止蓋35及びこれに接続された振動ケース34は何れも上述したように導電性を有しているため、結局のところ上記リード線LA1は、振動ケース34に当接する超音波振動子33Aの下面に接続された状態になっている。
【0028】
また、他方のリード線L(リード線LA2)の一端は、封止蓋35に形成された図示しない孔を通じて導電ゴム36に接続されており、該導電ゴム36を介して超音波振動子33Aの上面に接続されている。このように、2本のリード線LA1,LA2は、超音波振動子33Aの下面及び上面に接続されている。なお、超音波振動子33Bについても同じであり、2本のリード線L(リード線LB1,LB2)の一端は、それぞれ超音波振動子33Bの下面及び上面に接続されている。そして、これら4本のリード線Lの他端は、何れも基板40に接続されている。
【0029】
図2の平面図に示すように、基板40は、長方形状の基板部材において一対の対辺部分を矩形に切り欠いた形状になっている。換言すると、基板40は、矩形の切欠部41を有するH字形状を成している。そして、図2の側面断面図に示すように、このような基板40は、センサ取付部材31から立設された基板取付ボス42の上端に固着されている。また、上述したリード線Lが、切欠部41を通じて基板40の下面側から上面側へと引き出されており、基板40上の適宜端子43に対してハンダ付けされている。
【0030】
以上に説明した本実施の形態に係る流量計測装置1の場合、ガス流入部3から筐体2内へ導入されたガスが、流量計測部5の流路部材20を通り、更にガス流出部4を経て外部の配管へと供給される。そして、流量計測部5を通流する間に、ガスの流量が計測される。
【0031】
例えば超音波振動子33Aが送信側になってパルス状の超音波信号を発信し、超音波振動子33Bが受信側になってこの信号を受信する。次に、送受信側を交代し、超音波振動子33Bが送信側になってパルス状の超音波信号を発信し、超音波振動子33Aが受信側になってこの信号を受信する。このようにして、送信側と受信側とを順次交代しつつ、一方からの信号を他方が受信する。そして、この送受信に要する時間差から、流路部材20内を通流するガスの流速を算出し、更に流路部材20の通流断面積に基づいてガスの流量を算出している。
【0032】
ところで、この流量計測装置1の場合、一方の超音波振動子33Aに接続されたリード線L(リード線LA1,LA2)から、基板40を経て、他方の超音波センサ33Bに接続されたリード線L(リード線LB1,LB2)に至る経路R2が、振動を伝搬する経路になる可能性がある。即ち、ガス流量の計測用としては、流路部材20内のガスを媒体とする図2の一点鎖線で示される経路R1が、両方の超音波振動子33間を超音波信号が伝搬する正規のルートとして想定されている。しかしながら、両方の超音波振動子33間は、上述したようにリード線L及び基板40を介した経路R2でも結ばれている。従って、この経路R2を介して、送信側の超音波振動子33が発した超音波信号に由来する振動(間接波)が、受信側の超音波振動子33へ伝搬する可能性がある。
【0033】
そこで、本実施の形態に係る流量計測装置1では、上記経路R2上に防振手段を備えている。より具体的に説明すると、固化状態で弾性を有する接着剤45(支持手段を成す弾性部材の一例)を、リード線Lと基板40との間を結ぶように塗布することにより、基板40に対してリード線Lを支持させている。これにより、リード線Lを介して伝搬する振動は、接着剤45が有する弾性によって減衰され、受信側の超音波振動子33への伝搬を抑制することができる。
【0034】
なお、リード線のどの部分を基板40に対して接着するかは特に限定されないが、本実施の形態では、作業性等の観点から、リード線Lが基板40に接続される基板40上の端子43を含む部分に接着剤45が塗布されている。即ち、端子43とこれに接続されたリード線Lの端部とが埋没するように、接着剤45が塗布されている。
【0035】
また、図2に示す構成の場合、超音波振動子33Aに一端が接続されたリード線LA1,LA2の他端は、比較的近接した端子43に接続されている。従って、本実施の形態においては、これら2本のリード線LA1,LA2の他端を1つの塗布領域内に両方とも含むようにして、接着剤45が塗布されている。超音波振動子33Bに一端が接続されたリード線LB1,LB2の他端も比較的近接した端子43に接続されているため、これら2本のリード線LB1,LB2の他端についても、これらを1つの塗布領域内に両方とも含むようにして、接着剤45が塗布されている。
【0036】
なお、本実施の形態では、作業性等の観点から好適な接着剤45について例示したが、基板40とリード線Lとを結ぶ防振手段はこれに限られない。即ち、リード線L及び基板40の両方に付着することができて基板40に対してリード線Lを支持可能であり、且つリード線Lを伝搬する超音波信号に由来する振動を減衰可能な弾性部材であれば、他のものを採用してもよい。
【0037】
また、本実施の形態では、両方の超音波振動子33A,33Bに接続された計4本のリード線Lに対し、接着剤45による防振処理を施した場合を説明したが、これに限られない。即ち、何れか一方の超音波振動子33に接続された2本のリード線Lに対して防振処理を施せば、他方の超音波振動子33に接続されたリード線Lに対する防振処理は省略してもよい。例えば、リード線LA1,LA2に対して接着剤45により防振処理を施すことにより、リード線LB1,LB2に対する防振処理を省略しても、経路R2を介した振動の伝搬を抑制することができる。
【0038】
(実施の形態2)
図3は、実施の形態2に係る流量計測部5Aの構成を示す正面断面図である。本実施の形態に係る流量計測部5Aは、実施の形態1にて説明したものと実質的に同様の流路部材20、一対の超音波センサ30、及び基板40を備えている。従って、これらについての詳細な説明は省略する。一方、本実施の形態に係る流量計測部5Aは、実施の形態1において防振手段とされた弾性部材たる接着剤45を備えていない。そして、これに換わる防振手段として、弾性押圧部材の一例としてのスポンジ51を備えている。
【0039】
より詳説すると、図3に示すように、本実施の形態に係る流量計測部5Aは、基板40を上方から覆う基板カバー50を備えている。この基板カバー50は、下面が開放された直方体形状を成しており、平面視では基板40より若干大きく、側面視では基板40の全体と各リード線Lとを覆うことができる程度の寸法になっている。また、この基板カバー50は、基板40を上方から覆った状態で、基板40,流路部材20,及びセンサ取付部材31のうち何れかに支持されている。
【0040】
このような本実施の形態に係る流路測定部5Aでは、基板40と基板カバー50との間に直方体形状のスポンジ51を挟み込み、該スポンジ51によってリード線Lを基板40の上面に対して押圧支持させている。このような構成とすることにより、リード線Lを伝搬する振動をスポンジ51によって減衰できるため、経路R2を介した振動の伝搬を抑制することができる。
【0041】
なお、本実施の形態に係る流路測定部5Aでは、4本全てのリード線Lに対し、スポンジ51で基板40に押圧支持することで防振処理することとしているが、これに限られない。即ち、何れか一方の超音波振動子33に接続された2本のリード線Lに対して防振処理を施せば、他方の超音波振動子33に接続されたリード線Lに対する防振処理は省略してもよい。例えば、リード線LA1,LA2に対してスポンジ51で基板40に押圧支持すれば、リード線LB1,LB2に対する防振処理を省略しても、経路R2を介した振動の伝搬を抑制することができる。
【0042】
また、実施の形態1で説明した弾性部材(例:接着剤45)による防振処理と合わせて、本実施の形態2に係る弾性押圧部材(例:スポンジ51)により防振処理を施すこととしてもよい。この場合は、経路R2を介した振動の伝搬をより効果的に抑制することができる。
【0043】
(実施の形態3)
図4は、実施の形態3に係る流量計測部5Bの構成を示す正面断面図である。本実施の形態に係る流量計測部5Bは、実施の形態1にて説明したものと実質的に同様の流路部材20、一対の超音波センサ30、及び基板40を備えている。従って、これらについての詳細な説明は省略する。一方、本実施の形態に係る流量計測部5Bは、実施の形態1において防振手段とされた弾性部材たる接着剤45を備えておらず、これに換わる防振手段を備えている。
【0044】
より詳説すると、図4に示すように、本実施の形態に係る流量計測部5Bでは、実施の形態2において説明したのと同様の基板カバー50が基板40に対して上方から被せられている。また、この基板カバー50の側壁部52の内面からは、該基板カバー50の内方へ向けて、防振手段の一例を成すアーム53が延設されている。図4では、このアーム53の一例として、側壁部52の内面から立設された基部53aと、該基部53aの先端から上方へ延設された係止部53bとから成るL字状の構成態様を示している。そして、この係止部53bと側壁部52の内面との間に挟持されるようにして、リード線Lがアーム53によって係止されている。
【0045】
このような構成により、リード線Lを介する振動の伝搬を、アーム53による係止箇所にて遮断することができる。なお、実施の形態1及び/又は実施の形態2で説明した防振処理と合わせて本実施の形態3に係るアーム53による防振処理を施してもよい。この場合は、経路R2を介した振動の伝搬をより効果的に抑制することができる。
【0046】
(実施の形態4)
ところで、上述した流量計測部5,5A,5Bは、何れも超音波信号の正規の伝搬ルートである経路R1がV字状を成すように構成されてものを例示している。しかしながら、本発明の適用範囲はこのような構成の流路計測部に限られない。例えば、超音波信号の正規の伝搬ルートが直線状を成すように構成された流路計測部に対しても適用することができる。
【0047】
図5は、実施の形態4に係る流量計測部5Cの構成を示す側面図であり、超音波信号の正規の伝搬ルートが直線状を成す構成を示している。即ち、本実施の形態に係る流量計測部5Cは、流路部材20に一対の超音波センサ30が取り付けられているが、これらの超音波センサ30は、流路部材20における上流側及び下流側の各位置において、流路部材20内のガス流路を挟んで互いに対向するようにして配設されている。従って、両方の超音波センサ30を結ぶ超音波信号の伝搬経路R3は、ガスの通流方向に対して所定の角度だけ傾斜した直線状を成している。
【0048】
また、流量計測部5Cは、長方形状の基板60を備えており、互いに対角を成す2つの角部に端子61が設けられている。そして、一方の角部に設けられた端子61に対し、一方の超音波センサ30が備える超音波振動子33から引き出された2本のリード線Lが接続され、他方の角部に設けられた端子61に対し、他方の超音波センサ30が備える超音波振動子33から引き出された2本のリード線Lが接続されている。
【0049】
本実施の形態4では、このような流路計測部Cに対して、実施の形態1と同様の防振処理を施している。即ち、固化状態で弾性を有する接着剤45(支持手段を成す弾性部材の一例)を、リード線Lと基板60との間を結ぶように塗布することにより、基板60に対してリード線Lを支持させている。これにより、リード線Lを介して伝搬する振動は、接着剤45が有する弾性によって減衰され、受信側の超音波振動子33への伝搬を抑制することができる。
【0050】
このように、超音波信号の正規の伝搬経路R3が直線状を成す流路計測部5Cであっても、実施の形態1と同様の防振処理を施すことで、同様の作用効果を奏することができる。なお、実施の形態1の防振処理だけでなく、実施の形態2,3にて説明したのと同様の防振処理を、超音波信号の正規の伝搬経路R3が直線状を成す流路計測部に適用することもできることは言うまでもない。
【0051】
また、リード線Lをその途中で折り曲げて屈曲部を形成することによっても、該屈曲部を設けたリード線Lを介する振動の伝搬を抑制することができる。従って、上述した実施の形態1〜4の構成に合わせて、あるいは単独で、リード線Lに防振手段を成す屈曲部を設けることとしてもよい。なお、この屈曲部は直角以下の鋭角を成すように形成することが、防振効果の上で好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、超音波を利用してガス等の被測定流体の流量を計測する超音波式流量計測装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 超音波式流量計測装置(流量計測装置)
5,5A,5B,5C 流量計測部
20 流路部材
30 超音波センサ
33 超音波振動子
40 基板
45 接着剤(防振手段,支持手段,弾性部材)
51 スポンジ(防振手段,弾性押圧部材)
53 アーム(防振手段)
L リード線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体が流れる管状の流路部材に設けられる一対の超音波振動子と、
この一対の超音波振動子の間で、前記被測定流体を介して互いに超音波を送受信させるべく、該超音波振動子を駆動する回路が実装された基板と、
各超音波振動子及び前記基板の間を接続するリード線と、を備え、
更に、一方の超音波振動子に接続されたリード線から、前記基板を経て、他方の超音波振動子に接続されたリード線に至るまでの経路上に、該経路を介して伝搬する振動を抑制するための防振手段が備えられていることを特徴とする超音波式流量計測装置。
【請求項2】
前記防振手段は、各超音波振動子に接続されたリード線のうち、何れか一方の超音波振動子に接続されたリード線に対して防振処理を施すものであることを特徴とする請求項1に記載の超音波式流量計測装置。
【請求項3】
前記防振手段として、前記リード線を前記基板に支持させる支持手段を有し、該支持手段は、前記リード線及び前記基板に付着した状態で弾性を有する弾性部材から成ることを特徴とする請求項2に記載の超音波式流量計測装置。
【請求項4】
前記基板を覆う基板カバーを更に備え、
前記防振手段は、前記基板カバーの内面と前記基板との間に挟み込まれて前記リード線を押圧支持する弾性押圧部材であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の超音波式流量計測装置。
【請求項5】
前記基板を覆う基板カバーを更に備え、
前記防振手段は、前記リード線をその途中で支持すべく、前記基板カバーの壁部からその内方へ延設されたアームであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の超音波式流量計測装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−163518(P2012−163518A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25853(P2011−25853)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】