説明

超音波技術を用いるワクチン開発の装置と方法

超音波を生成するための超音波発生装置とトランスデューサとからなる超音波を用いたワクチンの生成用の方法とデバイスが開示される。トランスデューサは利用される送達方法の型に依存し、ウイルス、細菌、又はその他の感染病原体の溶液を含むバイアルの形状に依存する特定の超音波チップを有している。装置は、溶液への超音波チップの挿入を通じて、バイアルに隣接する、又はバイアルの近くの結合媒体を通じて、あるいは、空気又は気体媒体を通じて、直接的に超音波を液体に送達する。超音波は生存ウイルス、細菌又はその他の感染病原体を破壊し、最適な抗原を放出する効果を有し、このようにして、そのウイルス、細菌又はその他の感染病原体用のワクチンとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクチンの開発に関する。特に、本発明は超音波技術を用いたワクチンを開発するための装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンの探求及び開発は、生体防御主導の近年の開発で特に、活動レベルの増加を示してきた。組換え型の遺伝子操作プロセスは、病気治療用の新しい改良ワクチンを生成する潜在的な新しいアプローチを提供してきた。これまでのところ、このアプローチは様々な理由で限定的な成功を得ており、従って、多くのワクチンが従来の方法論を介して今でも製造されている。
【0003】
最も古典的なワクチンは、不活性化(死菌)ワクチン製品、または弱毒化(生)ワクチン製品のいずれかを生成する2つの製造方法のうちの1つによって、製造される。
【0004】
不活性化ワクチン(インフルエンザ、コレラ、A型肝炎)は病気を引き起こす微生物を死滅させることによって生成される。薬品、照射、あるいは加熱を含む、多数の異なる不活性化の方法を用いることができる。これらのワクチンは病原性(病気を引き起こす)形式に戻ることができないので、安定であり比較的安全であると見なされる。この製品は、遠隔地にいる、あるいは、高い移動活動に関与する(軍隊のメンバのような)人にワクチン接種するのに対し実用的となるので、たいていは冷蔵、つまり、国内の健康管理職員並びに発展途上国の人々にとって利用しやすく望ましい質を要求しない。しかしながら、最も不活性化したワクチンは比較的弱い免疫反応で製造されるので、一回以上与えなければならない。複数回投与(ブースタ)を必要とするワクチンは、特に人々が定期健康管理へのアクセスを制限した領域では、制限された有用性を有することができる。
【0005】
ワクチン製造に対する第2の古典的アプローチは、弱毒化あるいは生ワクチン(麻疹、流行性耳下腺炎、風疹)である。病気を引き起こす生物は、病原性の、又は病気を引き起こす特性をそれに放たせる特定の実験室条件下で成長させる。この方法で準備された製品は、それらの効力を維持するために特別な取り扱いと保管を必要とする。これらの製品は抗体性及び細胞性免疫の双方を製造し、一般的に1のブースタ投与を要求するのみである。
【0006】
生ワクチンはいくつかのより高い免疫反応の利点を有しているが、この製造方法は1つの大きな欠点を有している。生物はまだ生きているので、それらの性質は変化又は変異し、これらの製品に生物が病原性の形態に戻り病気を潜在的に引き起こすわずかな可能性を持たせうる、従って感染が、ワクチンを取り扱う/処理する間の曝露の結果として、又はワクチンの投与後に生じうる。従って、これらのワクチンは注意深く試験しモニタしなければならない。免疫系を損なった患者は、通常に生ワクチンを投与されるわけではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ワクチン開発及び製品に対する、これらの2の古典的なアプローチは今日用いられている大多数のワクチンを作り上げるだけではなく、これらのアプローチは、HIV/AIDS、新しく同定された肝炎の変異株等のためのワクチン開発を含む、現在のワクチン開発プログラムで使用され続けている。
【0008】
Alligerは、米国特許第5,582,829号(Alliger)及び第6,309,129号(Alliger)において、超音波技術を用いてワクチンを生成することを論じている。Alligerは、利用可能な抗原を免疫原性の、及び/又は治療上の反応を誘発することができるようにするために、超音波で生細胞、微生物又はウイルス(すなわち、無処置であり、機能することができるもの)を処理している。特に、超音波を用いた細胞とウイルスの処理は、潜在的に有害な細胞又はウイルスを不活性化し、更なる処理なく、ワクチンとして用いるために存在する抗原を分散するように意図されている。
【0009】
Alligerは、処置を室温で行う一方、ワクチンが開発される微生物を含むサンプルの温度を0℃と5℃の間に維持することを推奨している。加熱の最小化は抗原の変性を防ぐことができる。これらの抗原を変性することは、特定の免疫反応を生成する能力を限定し、ワクチンの潜在的な免疫原性作用を減少する。Alligerの方法は、キャビテーションを通じてサンプル内のウイルス及び細菌を破裂及び破壊し、利用可能な抗原を分散し、抗原を変性するレベルまでウイルス又は細菌の温度を上げることなくそれを行うために、特定の周波数、強度、及び期間で超音波を送達することができる。
【0010】
Alligerは、時間はウイルス又は細胞を破壊するのに十分にして、病原性細胞構造が残らないようにしなければならないと更に述べており、このようにするために、Alligerは1グラムの培養された細胞が一般的には約3分の超音波処理を必要とすると述べている。
【0011】
ウイルス及び細胞を超音波処理する事に関しては、Alligerは約20kHz乃至約40kHzの周波数で、液体媒体を通じて微生物サンプルに超音波を送達した。彼はこの周波数範囲上では、高い入力時でさえキャビテーション強度は相当に低減し、細胞又はウイルスは十分に分解することができないと述べた。Alligerは特に、音波の最小強度は約1ワット/cmにすべきであり、約20kHzでの好ましい強度レベルは50乃至175ワット/cmにすべきと述べた。
【0012】
Alligerは異なる超音波パラメータと、微生物を含むサンプル/溶液の量や、超音波ワクチン開発で最も有効な結果を得るのに用いられる、超音波チップ及びバイアル/コンテナの幾何学的形状のような更なるファクタと、を用いる役割に言及できなかった。古典的なアプローチとAlligerのアプローチの欠点のために、より強い免疫反応を生成でき、病原性株に戻ることのできないワクチン開発用の弱毒化微生物を生成できる不活性化されたワクチンを生成できる装置と方法に対するニーズはまだ存在している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は1980年代のこの発明の著者によって過去に探求又は試験された超音波を用いたワクチン生成のための装置と方法の改善が焦点となっている。本発明による装置や方法は上述のニーズに合致し、本開示の再検討で当該技術分野の当業者によって認識される更なる利点及び改善を更に提供することができる。
【0014】
本発明は超音波発生装置、超音波トランスデューサ、超音波チップ、及び超音波処理して、ワクチンを生成できる溶液のバイアル又はコンテナを具えている。バイアルに含まれる溶液はウイルス、細菌、又はその他の感染病原体の集まりである。溶液は超音波で超音波処理され、生存可能な感染性ウイルス、細菌又は感染病原体を破壊する一方で、更に最適な抗原を放出し、このようにしてそのウイルス、細菌又はその他の感染病原体用のワクチンになる。
【0015】
超音波は、溶液への超音波チップの挿入を通じて、結合媒体を通じて、あるいは空気/気体媒体を通じて、直接的に溶液に送達できる。用いられる超音波チップは選ばれる送達法によって変えることができる。
【0016】
溶液自体への超音波チップの挿入によって溶液を超音波処理するための、3つの異なる型の推奨方法がある。第1の方法は超音波チップが超音波エネルギの送達中、同一の位置のままである特定形状のバイアルを用い、後の2つの方法は超音波処理中の超音波チップの動作を利用している。
【0017】
結合媒体を通じて溶液を超音波処理するための、異なる型の推奨方法がある。チップとバイアルとの間に配置される媒体にすることができ、超音波を送達するのに通る液体媒体にすることができ、あるいはチップがバイアル/コンテナに対して押し付けられる場合、バイアル/コンテナ自体を媒体として用いることができる。
【0018】
利用される超音波強度に基づき、溶液の超音波処理時間は変化できる。しかしながら、超音波の強度は周波数、振幅及び処理時間のような超音波パラメータの変化を通じて制御されうる。この処理はワクチンを生成するのに用いられる特定の型のウイルス、細菌又はその他の感染病原体に基づいて、及び、超音波処理された微生物を含む溶液の体積に基づいて、異なる強度レベルと超音波パラメータを要求することができる。
【0019】
本発明はウイルス、細菌又は感染病原体を処理するワクチンを製造するために、超音波エネルギをウイルス、細菌、又はその他の感染病原体に送達する装置と方法に関する。
【0020】
本発明の一態様は、異なるワクチン製造用の方法とデバイスを提供することにすることができる。
【0021】
本発明の別の態様は、他の化学的及び温度生成方法で生じる毒性の危険なく、ワクチン製造のための方法及びデバイスを提供することにすることができる。
【0022】
本発明の別の態様は、高質のワクチン製造のための方法及びデバイスを提供することにすることができる。
【0023】
本発明の別の態様は、温度及び化学的な作用を用いることなく、ワクチン製造法の改良のための方法及びデバイスを提供することにすることができる。
【0024】
本発明の別の態様は、低減した生成時間でのワクチン製造のための方法及びデバイスを提供することにすることができる。
【0025】
本発明の別の態様は、ワクチンの連続製造のための方法及びデバイスを提供することにすることができる。
【0026】
本発明の別の態様は、ワクチンの大量製造のための方法及びデバイスを提供することにすることができる。
【0027】
本発明のこれらの及びその他の態様は、以下の記載された詳細な説明と図でより明白となる。
【0028】
本発明は好ましい実施例の図によって示し、述べられ、詳細がはっきりと理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は超音波技術を用いたワクチン開発のための装置と方法である。装置と方法のコンテキストにおける本発明の好ましい実施例は、図示され以下に詳述される。
【0030】
図1は超音波発生装置1と、超音波トランスデューサ2と、超音波処理チップ3と、溶液が配置されるバイアル4又はその他のコンテナとを有するワクチン生成装置を示している。バイアル又はコンテナ内の溶液はウイルス、細菌又はその他の感染病原体の集まりである。溶液は超音波を用いて超音波処理されて、生存する感染性ウイルス、細菌、又はその他の感染病原体を破壊する一方、最適な抗原を放出し、このようにしてそのウイルス、細菌、その他の感染病原体に対するワクチンとなる。結果物としてのワクチンは即時使用で利用可能であり、この方法を通じて開発されるワクチンの製造時間は、上述した古典的な方法を通じて開発されるワクチンの製造時間より少ない。
【0031】
超音波は、溶液内への超音波チップの挿入を通じて(図1)、バイアルに隣接した結合媒体を通じて(図2)、バイアルの近くで(図3)、又は空気又は気体媒体を通じて(図4)、直接的に溶液に送達できる。
【0032】
図5は送達方法のタイプに依存して用いることができる推奨される超音波チップの例を示している。図5aは球状の超音波チップ13であり、図5bは中心開口部15を含む球状の超音波チップ14である。図5c/5d/5e/5fは平面放射面を有する超音波チップを示している。図5cと5eは平面放射面を有する超音波チップ16と17であり、図5dと5fは平面放射面と中心開口部18及び21とを有する超音波チップ17と20である。図5gと5hは曲線放射面を有する超音波チップ22と23を示し、図5eは曲線放射面と中心開口部24とを有する超音波チップ23を示している。図5に示された超音波チップの中心開口部を用いて、バイアル又はコンテナに溶液を送達でき、溶液の送達中又は後に超音波処理を提供できる。
【0033】
図1は超音波チップ3がバイアル4と溶液に挿入される直接的な超音波処理を示し、使用するのに推奨されるチップ3は、球面(図5a/5b)、平面放射面(図5c/5d/5e/5f)、矩形プリズム(図示せず)、別の同様の形状又は形状の組合せ、のいずれかであり、好ましいチップとしては球面(図5a/5b)である。最も好ましいチップは中心開口部15を含む球状のチップ14であり、これは最も好ましい処理方法は、溶液が中心開口部を通じてバイアル又はコンテナに送達される場合、球状の超音波処理チップの使用を含むからである。
【0034】
図2は液体、ゲル、又はガラス/プラスチックバイアル7のような結合媒体6を通じて超音波チップ5からの超音波エネルギの送達を示し、ここではチップ5はバイアル7又はコンテナに対して押し付けられ、チップ5の推奨される構造はチップ5の形状がバイアル7又はコンテナの幾何学的形状と合致するものである。例えば、球状のバイアルが超音波処理される場合、推奨されるチップは曲線形状のチップ(図示せず)であり、チップがバイアルの形状の周りにフィットするようにする。
【0035】
図3は、超音波チップ8がバイアル10からある間隔を置いて配置される場合の液体媒体9を通じての超音波チップ8からの超音波エネルギの送達を示し、使用するのに推奨されるチップは平面形状のチップ図5c/5dであり、好ましいチップは図5cに示すような中心開口部のない平面形状のチップである。この方法について、超音波チップ8は液体媒体9に配置され、超音波エネルギを液体媒体9を通じてバイアル10に送達している。
【0036】
図4は空気又は気体媒体を通じての、超音波チップ11からバイアル12までの超音波エネルギの送達を示し、使用するのに推奨されるチップは平面形状のチップ図5c/5d/5e/5fであり、好ましいチップは図5cか5eのいずれかである。この送達方法については、超音波チップ11はバイアル12に挿入されるが、チップ11はバイアル12内の溶液と接触しない。
【0037】
図1は超音波チップ3がバイアル4内に及び溶液内に挿入される場合の超音波エネルギの送達を示し、この直接的な超音波処理用の3つの異なるタイプの推奨される方法がある。図6は超音波チップが超音波エネルギの送達中に同一位置のままである特定形状のバイアルを用いる第1の方法を示す一方で、図7は超音波処理中に超音波チップの動作を利用する後の2つの方法を示している。
【0038】
図6は、特定形状のバイアル26、28、又は30と、バイアル26、28、又は30の形状を反映する、対応する超音波チップ25、27、29の双方を用いる直接的な超音波処理の第1の方法を示している。対応する超音波チップ25、27、又は29で用いるための、バイアル26、28又は30という3つの異なる推奨される形状があり、3つの形状が図6aの球形のバイアル26、図6bの矩形のバイアル28及び図6cの曲線のバイアル30である。図6aに示した球形のバイアル26と共に、球体形状の超音波チップがバイアル26の底に挿入される。超音波チップ25はバイアル26の形状を反映するので、超音波チップ25とバイアル26との間に等距離の空間があり、これが、溶液が等しく超音波処理されるのを許容し、このようにして効果的なワクチン生成をもたらす。均一な超音波処理についてのこの同一概念は、図6bに示される矩形形状のバイアル28にも当てはまる。バイアル28の形状を反映する矩形形状の超音波チップ27は溶液に挿入され、従って溶液を均等に超音波処理させる。最後に、図6cに示される曲線形状の超音波チップ29は、曲線形状のバイアル30に挿入することができ、従って、バイアル30に含まれる溶液の均一な超音波処理を可能にする。図6に含まれるバイアル26、28又は30の形状は推奨される形状であり、好ましい形状は球状のバイアル26であり、その他の同様の形状又はバイアルの形状の組合せを利用することもできる。
【0039】
図7は、超音波チップ31が溶液を含むバイアル32の底に挿入され、チップが超音波エネルギを送達する時に連続動作33内で上昇する、直接的な超音波処理の第2のあり得る方法を示している。超音波処理が始まった後に、超音波チップ31は徐々に溶液の頂部まで上昇する一方、超音波エネルギを送達する。超音波チップ31は頂部に到達し、溶液全体が超音波処理された後、動作を停止し、超音波エネルギを送達するのを停止する。超音波エネルギの送達の間の動作は溶液全体の均一な超音波処理を可能にし、有害な細胞及びウイルスが破壊されて毒性を防ぎ、抗原が放出されるのを確実にするので効率的である。これはレギュラー形式の底にチップを挿入すること、及び、1つの位置から溶液全体を超音波処理しようとすることよりもより効率的であり、超音波チップに対する溶液の距離は、バイアルを通じて変化するので、1つの位置からの送達は異なる超音波処理をもたらす。
【0040】
図7は更に、超音波チップ31が溶液を含むバイアル32の底に挿入され、チップ31がステップモード動作34で上昇する、直接的な超音波処理の第3のあり得る方法を示している。超音波処理は短い時間で生じ、その後停止する。超音波チップ31はからり高く動かされるので、超音波処理が再び生じる。このステップ送達動作34は、チップ31が頂部まで動いて、溶液全体が超音波処理されるまで繰り返される。連続動作送達と同様に、この方法は溶液全体の均一の超音波処理を可能にする。このステップモード送達方法における送達ステップ間のこの距離は、等しいか、異なる距離にすることができる。
【0041】
図8は超音波ワクチン開発システムで用いる、工程線の超音波処理法の断面図を示している。バイアル38は工程線を下り、超音波チップ35に向けて動かす。チップ35に届いた際に、チップ35はバイアル36内に下降して(37)、バイアル36に含まれる溶液を超音波処理する。超音波処理後に、超音波チップ35は元に上昇し(37)、別のバイアル38が超音波チップ37まで動くまで待機する。このプロセスが繰り返されて、複数のバイアル38を超音波処理する。溶液をバイアル38に挿入できる複数の選択がある。事前充填されたバイアル38はライン上に配置でき、超音波チップ37は、超音波チップ37内の中心開口部(図示せず)を通じて溶液でバイアル36を充填でき、あるいは、これらが工程線を下り、超音波チップ35方向へ動く時に、バイアル38を満たすことができる別個の送達メカニズム/ソース又は複数のソース(図示せず)にすることができる。用いることができる複数バージョンのシステムが更にあり、溶液でバイアルを充填する異なる方法を用いる他、1又はそれ以上の超音波チップは超音波エネルギを同時に1又はそれ以上のバイアルに送達できる。更に、超音波チップが溶液に挿入される場合の直接的な超音波処理の異なる方法は、上述のように用いることもできる。
【0042】
図9は、超音波ワクチン開発システムと共に用いる、回転ラックの超音波処理方法の断面図である。バイアル42は回転ラックシステムに配置され、超音波チップ39に到達するまで回転ラックの周りを回転する。バイアル40が超音波チップ39に到達すると、チップ39はバイアル40内に下降(41)して、バイアル40内に含まれる溶液を超音波処理する。超音波処理後、超音波チップ39は元に上昇(41)し、別のバイアル42が超音波チップ39に動くまで待機する。このプロセスが繰り返されて、複数のバイアル38を超音波処理する。溶液をバイアル38に挿入できる複数の選択がある。事前充填されたバイアル42は回転ラックに配置でき、超音波チップ39は、超音波チップ39内の中心開口部(図示せず)を通じて溶液でバイアル40を充填でき、あるいは、これらが回転ラックの周りを回転し、超音波チップ39方向へ動く時に、バイアル42を満たすことができる別個の送達メカニズム/ソース又は複数のソース(図示せず)にすることができる。更に、超音波チップが溶液に挿入される場合の直接的な超音波処理の異なる方法は、上述のように用いることもできる。工程線の方法及び回転ラックの方法は、溶液のバイアルを超音波処理するのにだけ推奨される方法である。更なる方法及びシステムは同様に効果的である。
【0043】
利用される超音波強度に基づいて、溶液の超音波処理時間は、パルス波と連続波の両方のモード送達について、ほんの一瞬又はそれ以上にすることができる。しかしながら、超音波の強度は周波数、振幅、及び処理時間のような超音波パラメータの変化を通じて、制御することができる。超音波について推奨される周波数範囲は、16kHz乃至20MHzであり、好ましい周波数範囲は30kHz乃至120kHz、最も好ましい周波数の値は50kHzである。超音波の振幅は2ミクロン以上にすることができ、推奨される振幅は、3ミクロン乃至250ミクロンの範囲であり、最も好ましい新婦口は80ミクロンである。推奨される超音波処理時間は5乃至10秒である。バイアル中の溶液量は少なくとも0.1グラム、好ましい溶液量は5乃至10グラムである。
【0044】
プロセスはワクチンを生成するのに用いられる特定の型のウイルス、細菌、その他の感染病原体に基づき、及び、超音波処理される溶液量に基づき、異なる強度レベルと超音波パラメータを要求できる。例えば5mlの溶液は、50kHzの超音波周波数、50ミクロンの振幅、約100ワット/cmの強度で超音波処理することができ、超音波処理時間はウイルス、細菌等の溶液の型に基づき10秒までかかる。溶液の超音波処理時間が長くなると、要求される強度のレベルが低くなり、溶液の超音波処理時間が短くなると、要求される強度のレベルが高くなる。溶液の超音波処理は、異なる温度環境において処理できるが、好ましい方法は室温を用いることである。
【0045】
使用した特定の実施例及び方法がここに例示して述べられてきたが、同一目的を得るように計算されるいかなる変更も、示した特定の実施例及び方法に置換することができることは、当該技術分野の当業者によって分かるであろう。上述の詳細な説明は例示的であり、限定的であることを意図していないことは理解すべきである。上述の実施例及びその他の実施例の組合せ、並びに、上述の使用方法及びその他の使用方法の組合せは、本開示の再検討で当該技術分野の当業者に明らかとなるであろう。本発明の範囲は添付した請求項により、このような請求項が与える等価物の全範囲に沿って決定すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、超音波チップが溶液に挿入された超音波ワクチン開発システムの斜視図である。
【図2】図2は、結合媒体を介してバイアルに接続される超音波チップの断面図である。
【図3】図3は、液体を通じてバイアルに超音波エネルギを送達するために槽に挿入されたバイアルと共に、液体槽に挿入された超音波チップの断面図である。
【図4】図4は、バイアルに挿入されるが、バイアル内の溶液からある間隔を置いて配置される超音波チップの断面図である。
【図5】図5は、超音波ワクチン開発システムで用いるための、例示的な超音波チップの断面図である。
【図6】図6は、チップが液体内へ直接挿入され、一定位置から溶液を超音波処理する、超音波ワクチン開発システムで用いるための例示的な異なる形状のバイアルの断面図である。
【図7】図7は、チップが液体内へ直接挿入され、超音波処理中ずっと動作する、超音波ワクチン開発システムで用いるための推奨される超音波処理方法の断面図である。
【図8】図8は、超音波ワクチン開発システムで用いるための工程線法の断面図である。
【図9】図9は、超音波ワクチン開発システムで用いるための回転ラック法の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波技術を用いることによってウイルス、細菌、又はその他の感染病原体用のワクチンを生成する方法が:
a)超音波エネルギを、ウイルス、細菌又はその他の感染病原体の集まりである溶液のバイアル又はコンテナに送達するステップを具える方法であって、
b)超音波エネルギの前記送達ステップが、前記溶液への超音波チップの直接的な挿入を通じてか、あるいは空気又は気体媒体を通じてか、あるいは液体、ゲル又はガラス/プラスチックのバイアルのような結合媒体を通じてか、のいずれかであり;
i)前記超音波エネルギが前記溶液内の生存ウイルス、細菌又はその他の感染病原体を十分に破壊できる強度を有し;
ii)前記超音波エネルギが前記溶液内の前記生存ウイルス、細菌又はその他の感染病原体を部分的に破壊できる強度を有し;
iii)前記超音波エネルギが適切な抗原を放出し、結果的に前記ウイルス、細菌又はその他の感染病原体用のワクチンとなることのできる強度を有し、;あるいは
iv)前記超音波エネルギがワクチンの生存時間を低減できる;
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法が、ワクチンを生成できる強度を示す特定の超音波パラメータを有する前記超音波エネルギを生成するステップを更に含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、特定の振幅が少なくとも2ミクロンであることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、好ましい特定の振幅が3ミクロン乃至250ミクロンの範囲にあることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、最も好ましい特定の振幅値が80ミクロンであることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、周波数が16kHz乃至20MHzの範囲内にあることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、好ましい周波数が30kHz乃至120kHzの範囲内にあることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、最も好ましい周波数の値が50kHzであることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記超音波エネルギがほんの一瞬又はそれ以上の期間で送達されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記超音波エネルギが5乃至10秒の好ましい期間に送達されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記バイアルに含まれる溶液量が少なくとも0.1グラムであることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記バイアルに含まれる好ましい溶液量が5乃至10グラムであることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、超音波エネルギを送達する好ましいステップが、前記超音波チップを溶液内へ挿入することによって、前記超音波エネルギを送達するための手段を提供するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法において、前記超音波を送達するステップが前記溶液中の前記超音波チップの連続的な動きによって得られ、それによって、前記超音波チップは前記溶液の底部に挿入され、超音波処理が始まり、前記超音波チップが超音波エネルギを送達する間に頂部に上がり、前記超音波チップは超音波が前記頂部に届いた後に、及び、前記超音波チップが溶液全体を超音波処理した後に、動作と、超音波エネルギを前記溶液に送達するのを両方停止することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法において、前記超音波を送達するステップが、前記超音波チップのステップモード送達により得られ、これにより、前記超音波チップは超音波エネルギを送達し、停止し、次いで上昇して再び超音波エネルギを送達し、ステップモード送達のこの処理は、溶液全体が超音波処理されるまで繰り返されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法において、前記超音波エネルギを送達するステップが、前記超音波チップが一定の位置に保持されることによって得られることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法において、前記超音波チップの形状が、このチップが挿入される前記バイアルの形状を反映することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法において、前記超音波エネルギを送達するステップが、空気又は気体媒体を通じて、前記超音波エネルギを送達する手段を提供するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法において、前記超音波エネルギを送達するステップが、液体、ゲル、ガラス/プラスチックのバイアル等のような結合媒体を通じて、前記超音波エネルギを送達する手段を提供するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法において、前記超音波チップの形状が、このチップが接触して、このチップ全体が直接的に、あるいは、結合媒体を通じて、前記バイアルに接触する、前記バイアルの外側形状を反映することを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法において、前記超音波エネルギが前記溶液中の生存するウイルス、細菌又はその他の感染病原体を破壊し、前記溶液中の前記生存ウイルス、細菌又はその他の感染病原体の抗原を放出して、低減した製造時間でのワクチンの生成となることを特徴とする方法。
【請求項22】
超音波技術を用いることによってウイルス、細菌、又はその他の感染病原体用のワクチンを生成する装置が:
a)超音波エネルギを生成する発生装置とトランスデューサとを具える装置であって、
b)前記トランスデューサ/チップが前記超音波エネルギを前記溶液に送達し;
i)前記超音波エネルギが前記溶液内の生存ウイルス、細菌又はその他の感染病原体を十分に破壊できる強度を有し;
ii)前記超音波エネルギが前記溶液内の前記生存ウイルス、細菌又はその他の感染病原体を部分的に破壊できる強度を有し;
iii)前記超音波エネルギが適切な抗原を放出し、結果的に前記ウイルス、細菌又はその他の感染病原体用のワクチンとなることのできる強度を有し、;あるいは
iv)前記超音波エネルギが、前記ワクチンが使用できるまで前記溶液が超音波処理される期間を低減できる;
ことを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項22に記載の装置において、回転ラックが溶液のバイアルを保持して、超音波処理されることを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項23に記載の装置において、事前に充填された溶液のバイアルが前記回転ラック内に配置されることを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項23に記載の装置において、溶液が前記超音波チップの開口部を通じて、前記バイアルに挿入されることを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項23に記載の装置において、溶液が前記回転ラックの別個の送達メカニズム/ソース又は複数のソースを通じて、前記バイアルに挿入されることを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項23に記載の装置において、超音波チップ又は複数のチップが超音波エネルギを同時に1又はそれ以上の溶液のバイアルに送達し、前記回転ラックは各々の超音波エネルギの送達後に回転して、総てのバイアルが超音波処理されることを特徴とする装置。
【請求項28】
請求項22に記載の装置において、前記バイアルが工程線上に配置されることを特徴とする装置。
【請求項29】
請求項28に記載の装置において、事前に充填された溶液のバイアルが前記工程線上に配置されることを特徴とする装置。
【請求項30】
請求項28に記載の装置において、溶液が前記超音波チップの開口部を通じて、前記バイアルに挿入されることを特徴とする装置。
【請求項31】
請求項28に記載の装置において、溶液が前記工程線の別個の送達メカニズム/ソース又は複数のソースを通じて、前記バイアルに挿入されることを特徴とする装置。
【請求項32】
請求項28に記載の装置において、超音波チップ又は複数のチップが超音波エネルギを同時に1又はそれ以上の溶液のバイアルに送達し、前記工程線は各々の超音波エネルギの送達後に動作して、総てのバイアルが超音波処理されることを特徴とする装置。
【請求項33】
請求項22に記載の装置において、前記発生装置及びトランスデューサが、ワクチンを生成することができる強度を示す、特定の超音波パラメータを有する音響エネルギを生成することを特徴とする装置。
【請求項34】
請求項22に記載の装置において、特定の振幅が少なくとも2ミクロンであることを特徴とする装置。
【請求項35】
請求項22に記載の装置において、好ましい特定の振幅が3ミクロン乃至250ミクロンの範囲にあることを特徴とする装置。
【請求項36】
請求項22に記載の装置において、最も好ましい特定の振幅値が80ミクロンであることを特徴とする装置。
【請求項37】
請求項22に記載の装置において、周波数が16kHz乃至20MHzの範囲内にあることを特徴とする装置。
【請求項38】
請求項22に記載の装置において、好ましい周波数が30kHz乃至120kHzの範囲内にあることを特徴とする装置。
【請求項39】
請求項22に記載の装置において、最も好ましい周波数の値が50kHzであることを特徴とする装置。
【請求項40】
請求項22に記載の装置において、前記超音波エネルギがほんの一瞬又はそれ以上の期間で送達されることを特徴とする装置。
【請求項41】
請求項22に記載の装置において、前記超音波エネルギが5乃至10秒の好ましい期間に送達されることを特徴とする装置。
【請求項42】
請求項22に記載の装置において、前記バイアルに含まれる溶液量が少なくとも0.1グラムであることを特徴とする装置。
【請求項43】
請求項22に記載の装置において、前記バイアルに含まれる好ましい溶液量が5乃至10グラムであることを特徴とする装置。
【請求項44】
請求項22に記載の装置において、前記トランスデューサが、ワクチンを生成できる強度を伴って前記溶液への前記超音波エネルギの送達を得るように測られた/構成された表面積を有する放射面を含むことを特徴とする装置。
【請求項45】
請求項22に記載の装置において、前記トランスデューサが、前記放射面の形状が球面、矩形プリズム、平面、曲線面、別の同等の形状、又は形状の組合せのいずれかである放射面を含むことを特徴とする装置。
【請求項46】
請求項22に記載の装置において、前記トランスデューサが、ワクチンを生成できる強度を伴って前記溶液への前記超音波エネルギの送達を得るように意図された表面積を有する放射面を含むことを特徴とする装置。
【請求項47】
請求項22に記載の装置において、前記放射面の外周境界の形状が、円形、多角形、又は別の同等の形状、又は形状の組合せのいずれかであることを特徴とする装置。
【請求項48】
請求項22に記載の装置において、前記放射面の外周境界の形状が、ワクチンを生成できる強度を伴って前記溶液への前記超音波エネルギの送達を得るように意図されることを特徴とする装置。
【請求項49】
請求項22に記載の装置において、前記トランスデューサが放射面と;当該放射面のサイズ及び表面積と、円形、多角形、又は別の同等の形状、又は形状の組合せである前記放射面の外周境界の形状と、球面、矩形プリズム、平面、曲線面、又は別の同等の形状、又は形状の組合せのいずれかである前記放射面の形状から作られる選択範囲と;ワクチンを生成できる強度を伴って前記溶液への超音波エネルギの送達を得るように生成された超音波エネルギの特定の超音波パラメータと;を含むことを特徴とする装置。
【請求項50】
請求項22に記載の装置において、前記超音波チップの形状が、挿入される前記バイアルの形状を反映することを特徴とする装置。
【請求項51】
請求項22に記載の装置において、前記トランスデューサが連続、パルス、又は変調周波数によって駆動されることを特徴とする装置。
【請求項52】
請求項22に記載の装置において、前記トランスデューサの駆動波形が、正弦、矩形、台形及び三角波形からなる群から選択されることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−531454(P2009−531454A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503185(P2009−503185)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/064842
【国際公開番号】WO2007/117964
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(508043475)
【Fターム(参考)】