説明

超音波整合層および振動子

【課題】超音波整合層および振動子を提供すること。
【解決手段】一態様において、複数のミクロンサイズおよびナノサイズ粒子が投入されたマトリクス材料を含む整合層を有する超音波振動子スタックのための整合層が提供される。他の態様において、マトリクス材料には、複数の重粒子および軽粒子が投入される。他の態様において、超音波振動子スタックは、圧電層と、少なくとも1つの整合層とを備える。一態様において、整合層は、複数のミクロンサイズおよびナノサイズ粒子が投入されたマトリクス材料を含む複合材料を含む。さらなる態様において、複合材料は、複数の重粒子および軽粒子が投入されたマトリクス材料も含む。さらなる態様において、整合層はまた、シアノアクリレートを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
小動物の造影は、臨床前の医薬開発、発生生物学、心臓研究、および分子生物学を含む多くの領域における重要な研究分野である。これらの分野では、いくつかの動物モデルが広く用いられており、最も一般的なのはマウスおよびラットである。マウスモデルの造影には、約20メガヘルツ(MHz)から60MHz以上の高周波数超音波が広く用いられている。しかし、ラットは、高い減衰とエコー発生を示す表皮組織、皮膚組織、および皮下組織を有するため、ラットモデルはマウスモデルと比較して高周波数での造影が困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
一態様において、複数の層を有する超音波振動子スタックのための整合層が提供される。整合層は、複数のミクロンサイズおよびナノサイズ粒子が投入されたマトリクス材料を含む複合材料を含むことができる。別の態様において、複合材料は、複数の重粒子および軽粒子が投入されたマトリクス材料も含む。さらなる態様において、整合層はまた、シアノアクリレートを含むことができる。
【0003】
また、各層が頂面および反対側の底面を有する複数の層を備える超音波振動子スタックが提供され、該複数の層は圧電層および少なくとも1つの整合層を含む。整合層は、圧電層の頂面を覆うようにスタックに位置することができる。例示的なスタックは、複数のナノサイズおよびミクロンサイズ粒子が投入された複合材料を含む整合層と、複数の重粒子および軽粒子を含む整合層と、シアノアクリレートを含む整合層とを備えることができる。
【0004】
本発明のその他のシステム、方法、ならびに態様および利点について、図面および詳細な説明を参照しながら述べる。
【0005】
本明細書に組み入れられてその一部を成す添付の図面は、本発明の特定の態様を示し、説明と併せて、制限することなく本発明の原理を解説する役目を果たす。図面で使用される同様の参照文字は、いくつかの図面にわたり同様の部分を示す。
例えば、本発明は、以下を提供する。
(項目1)
複数の層を有する超音波振動子スタックの整合層であって、複数のミクロンサイズおよびナノサイズ粒子が投入されたマトリクス材料を含む複合材料を含み、該複合材料が該超音波振動子スタックの整合層を形成する、整合層。
(項目2)
上記整合層は、1/4音波長整合層である、項目1に記載の整合層。
(項目3)
上記投入された粒子は、上記整合層の厚さ未満の最長寸法を有する、項目1に記載の整合層。
(項目4)
上記ナノサイズ粒子は、約800nm以下の最長寸法を有する、項目1に記載の整合層。
(項目5)
上記ミクロンサイズおよびナノサイズ粒子は、高密度金属を含む、項目1に記載の整合層。
(項目6)
上記高密度金属は、タングステン、金、または白金より成る群から選択される、項目5に記載の整合層。
(項目7)
上記ミクロンサイズおよびナノサイズ粒子は、タングステン、金、白金、またはそれらの混合物を含む、項目1に記載の整合層。
(項目8)
上記ミクロンサイズおよびナノサイズ粒子は、高密度セラミックを含む、項目1に記載の整合層。
(項目9)
上記マトリクスはポリマーである、項目1に記載の整合層。
(項目10)
上記ポリマーはエポキシである、項目9に記載の整合層。
(項目11)
上記エポキシは、Tgが上記振動子の最高使用温度を超える低粘度の室温硬化エポキシである、項目10に記載の整合層。
(項目12)
上記ミクロンサイズおよびナノサイズ粒子は、ミクロンサイズ粒子対ナノサイズ粒子の重量部換算で約5:1から約1:5の数値比率でマトリクス材料に投入される、項目1に記載の整合層。
(項目13)
上記ミクロンサイズおよびナノサイズ粒子は、ミクロンサイズ粒子対ナノサイズ粒子の重量換算で約1:1の数値比率でマトリクス材料に投入される、項目12に記載の整合層。
(項目14)
上記ナノサイズおよびミクロンサイズ粒子は、体積換算で複合材料の約10%から約35%を構成する、項目1に記載の整合層。
(項目15)
上記ナノサイズおよびミクロンサイズ粒子は、体積換算で複合材料の約25%から約30%を構成する、項目14に記載の整合層。
(項目16)
上記ナノサイズおよびミクロンサイズ粒子は、体積換算で複合材料の約25%を構成する、項目14に記載の整合層。
(項目17)
上記整合層の音響インピーダンスは、約7.0メガレイルから約14.0メガレイルの間である、項目1に記載の整合層。
(項目18)
上記整合層の音響インピーダンスは約10メガレイルである、項目17に記載の整合層。
(項目19)
上記整合層の厚さは、上記超音波振動子スタックの高さ寸法において、約4ミクロンから30ミクロンの間である、項目1に記載の整合層。
(項目20)
上記整合層における音速は、約1000メートル/秒から約3000メートル/秒の間である、項目1に記載の整合層。
(項目21)
上記整合層における音速は、約1200メートル/秒から約2100メートル/秒の間である、項目20に記載の整合層。
(項目22)
上記整合層の音速は約1600メートル/秒である、項目20に記載の整合層。
(項目23)
複数の層を備える超音波振動子スタックであって、各層が頂面および反対側の底面を有し、該複数の層は、
圧電層と、
複数のミクロンサイズおよびナノサイズ粒子が投入されたマトリクス材料を含む複合材料を含む整合層と
を備えており、
該整合層の底面は、該圧電層の頂面を覆う、超音波振動子スタック。
(項目24)
上記圧電層は、上記整合層を透過するために、少なくとも約20メガヘルツ(MHz)の中心周波数の超音波を生成するように構成される、項目23に記載の超音波振動子スタック。
(項目25)
上記圧電層は、上記整合層を透過するために、少なくとも約25MHz、30MHz、35MHz、40MHz、45MHz、50MHz、55MHz、60MHz、65MHz、70MHzまたはそれ以上の中心周波数の超音波を生成するように構成される、項目24に記載の超音波振動子スタック。
(項目26)
上記整合層は、1/4音波長整合層である、項目23に記載の超音波振動子スタック。
(項目27)
上記整合層における音速は、約1000メートル/秒から約3000メートル/秒の間である、項目23に記載の超音波振動子スタック。
(項目28)
上記圧電層はニオブ酸リチウムを含む、項目23に記載の超音波振動子スタック。
(項目29)
上記圧電層はPZTを含む、項目23に記載の超音波振動子スタック。
(項目30)
上記圧電層は、少なくとも20メガレイルの音響インピーダンスを有する、項目23に記載の超音波振動子スタック。
(項目31)
複数の層を有する超音波振動子スタックの整合層であって、複数の第1の重粒子および複数の第2の軽粒子が投入されたマトリクス材料を含む複合材料を含む整合層。
(項目32)
上記整合層は、1/4音波長整合層である、項目31に記載の整合層。
(項目33)
上記整合層における音速は、約1500メートル/秒から約4500メートル/秒の間である、項目32に記載の整合層。
(項目34)
上記整合層における音速は、約1800メートル/秒から約2500メートル/秒の間である、項目33に記載の整合層。
(項目35)
上記第1の重粒子は、タングステン粒子およびチタン酸ジルコン酸鉛粒子、またはそれらの混合物より成る群から選択される粒子を含み、上記第2の軽粒子は、炭化ケイ素粒子およびアルミナ粒子、またはそれらの混合物より成る群から選択される粒子を含む、項目31に記載の整合層。
(項目36)
上記第1の重粒子は、少なくとも約10.0グラム/立方センチメートルの密度を有し、上記第2の軽粒子は、約4.0グラム/立方センチメートル未満の密度を有する、項目31に記載の整合層。
(項目37)
上記第2の軽粒子は、約4.0グラム/立方センチメートル以下の密度を有する、項目31に記載の整合層。
(項目38)
上記第2の軽粒子は、約2.5グラム/立方センチメートルから約4.0グラム/立方センチメートルの間の密度を有する、項目31に記載の整合層。
(項目39)
上記第1の重粒子は、約10.0グラム/立方センチメートル以上の密度を有する、項目31に記載の整合層。
(項目40)
上記第1の重粒子は、約4.0グラム/立方センチメートル以上の密度を有する、項目31に記載の整合層。
(項目41)
上記投入された粒子は、上記整合層の幅未満の最長寸法を有する、項目31に記載の整合層。
(項目42)
上記マトリクス材料はポリマーである、項目31に記載の整合層。
(項目43)
上記ポリマーはエポキシである、項目42に記載の整合層。
(項目44)
上記複数の粒子は、上記複合材料の少なくとも約11体積%を構成する、項目31に記載の整合層。
(項目45)
上記複数の粒子は、上記複合材料の約11体積%から約20体積%を構成する、項目44に記載の整合層。
(項目46)
上記複合材料の約5.5体積%は、複数のナノサイズの第1の重粒子を含み、上記複合材料の約5.5体積%は、複数のナノサイズの第2の軽粒子を含む、項目44に記載の整合層。
(項目47)
上記第1の重粒子は、タングステン粒子、PZT粒子、またはそれらの混合物より成る群から選択され、上記第2の軽粒子は、炭化ケイ素粒子、アルミナ粒子、またはそれらの混合物より成る群から選択される、項目46に記載の整合層。
(項目48)
上記第1の重粒子および第2の軽粒子のサイズは、1ミクロン未満である、項目31に記載の整合層。
(項目49)
上記整合層の音響インピーダンスは、約3.0メガレイルから約7.0メガレイルの間である、項目31に記載の整合層。
(項目50)
上記整合層の音響インピーダンスは約4.5メガレイルである、項目49に記載の整合層。
(項目51)
上記整合層の厚さは、上記超音波振動子スタックの高さ寸法において、約4ミクロンから約30.0ミクロンの間である、項目31に記載の整合層。
(項目52)
複数の層を備える超音波振動子スタックであって、各層が頂面および反対側の底面を有し、該複数の層は、
圧電層と、
複数の第1の重粒子および複数の第2の軽粒子が投入されたマトリクス材料を含む複合材料を含む第1の整合層と
を備えており、該第1の整合層の底面は、該圧電層の頂面を覆う、超音波振動子スタック。
(項目53)
上記圧電層は、上記第1の整合層を透過するために、少なくとも約20メガヘルツ(MHz)の中心周波数の超音波を生成するように構成される、項目52に記載の超音波振動子スタック。
(項目54)
上記圧電層は、上記第1の整合層を透過するために、少なくとも約25MHz、30MHz、35MHz、40MHz、45MHz、50MHz、55MHz、60MHz、65MHz、70MHzまたはそれ以上の中心周波数の超音波を生成するように構成される、項目53に記載の超音波振動子スタック。
(項目55)
上記圧電層は、ニオブ酸リチウム、PZT、またはそれらの混合物より成る群から選択される、項目52に記載の超音波振動子スタック。
(項目56)
上記スタックは、上記第1の整合層のインピーダンスより高いインピーダンスを有する第2の整合層をさらに備え、該第2の整合層は、上記圧電層の頂面と該第1の整合層の底面との間に位置する、項目52に記載の超音波振動子スタック。
(項目57)
上記圧電層は、上記第2の整合層を透過し、次いで上記第1の整合層を透過するために、少なくとも約20メガヘルツ(MHz)の中心周波数を有する超音波を生成するように構成される、項目56に記載の超音波振動子スタック。
(項目58)
上記第2の整合層は、上記第1の整合層と同一である、項目56に記載の超音波振動子スタック。
(項目59)
上記圧電層は、上記第2の整合層を透過し、次いで上記第1の整合層を透過するために、少なくとも約25MHz、30MHz、35MHz、40MHz、45MHz、50MHz、55MHz、60MHz、65MHz、70MHzまたはそれ以上の中心周波数の超音波を生成することができる、項目58に記載の超音波振動子スタック。
(項目60)
複数の層を有する超音波振動子スタックの裏打ち層であって、
複数のミクロンサイズおよびナノサイズ粒子が投入されたマトリクス材料を含む複合材料であって、該複合材料が該超音波振動子スタックの裏打ち層を形成する、複合材料を含む、裏打ち層。
(項目61)
複数の層を有する超音波振動子スタックの裏打ち層であって、
複数の第1の重粒子および複数の第2の軽粒子が投入されたマトリクス材料を含む複合材料であって、該複合材料が該超音波振動子スタックの裏打ち層を形成する、複合材料を含む、裏打ち層。
(項目62)
複数の層を有する超音波振動子スタックのための整合層を生成する方法であって、
マトリクス材料を提供することと、
複数のミクロンサイズ粒子を提供することと、
複数のナノサイズ粒子を提供することと、
複合材料を形成するために該マトリクス材料に該複数のミクロンサイズ粒子および該複数のナノサイズ粒子を投入することと
を含み、該複合材料は、該超音波振動子スタックの該整合層を生成するために使用される、方法。
(項目63)
上記ミクロンサイズ粒子およびナノサイズ粒子は、同じ基材より成る、項目62に記載の方法。
(項目64)
上記ミクロンサイズ粒子および上記ナノサイズ粒子は、異なる基材より成る、項目62に記載の方法。
(項目65)
複数の層を有する超音波振動子スタックのための整合層を生成する方法であって、
マトリクス材料を提供することと、
複数の第1の重粒子を提供することと、
複数の第2の軽粒子を提供することと、
複合材料を形成するために該マトリクス材料に該複数の第1の重粒子および該複数の第2の軽粒子を投入することと
を含み、該複合材料は、該超音波振動子スタックの該整合層を生成するために使用される、方法。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、複数の層を有する例示的な振動子スタックを図示し、また複数の整合層を示す概略図である。
【図2】図2は、例示的な振動子スタックの高さ寸法における断面を示す概略図である。
【図3】図3は、電気接続された例示的な振動子スタックのブロック略図である。
【図4】図4は、例示的な縮尺寸法で示された、図3の例示的な振動子スタックの層を示す拡大概略図である。
【図5A】図5A〜5Cは、例示的な振動子スタックの例示的な製造方法を示すブロック図である。
【図5B】図5A〜5Cは、例示的な振動子スタックの例示的な製造方法を示すブロック図である。
【図5C】図5A〜5Cは、例示的な振動子スタックの例示的な製造方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、以下の詳細な説明、実施例、図面、および請求項、ならびに上述および後述の説明を参照することによって、より容易に理解することができる。しかし、本デバイス、システム、および/または方法が開示および説明される前に、別段に指定されていない限り、本発明は開示される特定のデバイス、システム、および/または方法に限定されず、当然ながらそれに従い変化し得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様のみを説明することを目的としており、限定は意図してないことも理解されるべきである。
【0008】
本発明の以下の説明は、現在知られている最善の実施形態において本発明を可能とする教示として提供される。この目的のために、関連技術の当業者は、本明細書で説明される本発明の様々な態様に多くの変更を行っても、本発明の有益な結果を得ることができることを認識し理解するだろう。また、本発明の望ましい便益のいくつかは、本発明の特徴のいくつかを、他の特徴を利用することなく選択することにより得られることが明らかであろう。したがって、当業者は、本発明に対する多くの修正および適応が可能であり、またある状況においては望ましくさえある可能性があり、それらも本発明の一部であることを認識するだろう。このように、以下の説明は、本発明の原理の例示として提供されるがそれを限定するものではない。
【0009】
本明細書で使用される場合、文脈上異なる定義が明示されていない限り、単数形は複数形の指示対象を含む。したがって、例えば、「層」という呼称は、文脈上異なる定義が明示されていない限り、2つ以上の当該層を有する態様を含む。
【0010】
本明細書では、範囲は、「約」1つの具体的値から、および/または「約」別の具体的値までというように表現される。そのような範囲が表現されている場合、別の態様は、当該1つの具体的値から、および/または他の具体的値までを含む。同様に、値が近似値として表現されている場合、「約」という先行詞を使用することにより、具体的値が別の態様を形成することが理解される。さらに、範囲のそれぞれの端点は、他の端点と関連して、および他の端点とは独立して有効である。
【0011】
本明細書で使用される場合、「任意選択の」または「任意選択で」は、次いで説明される事象または状況が生じても生じなくてもよいことを意味し、またその説明が、事象または状況が生じる場合および生じない場合を含有することを意味する。
【0012】
「対象」は個体を意味する。対象という用語は、小動物または実験動物だけでなく、ヒトを含む霊長類を含む。実験動物は、マウスまたはラット等の齧歯類を含むが、これらに限定されない。また、実験動物という用語は、マウス、ラット、ネコ、イヌ、魚、ウサギ、モルモット、齧歯類等を含む動物、小動物、実験用小動物、または対象と交換可能に使用される。実験動物という用語は、特定の年齢または性別を示すものではない。したがって、成獣および新生動物、ならびに胎児(胚を含む)が、オスまたはメスを問わず含まれる。
【0013】
本発明は、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明およびそれに含まれる実施例、図面、ならびに上述および後述の説明を参照することによって、より容易に理解することができる。
【0014】
一実施形態において、本発明は、複数の層を有する超音波振動子スタックのための整合層を対象とする。造影に使用される超音波振動子、または振動子スタックは、振動子の圧電層とレンズ層またはフェース層との間に位置する音響整合層を利用する。圧電層は、典型的には高音響インピーダンス(Z)を有する。造影されている対象の音響インピーダンスは、典型的にはそれよりずっと低い。圧電層が対象に直接押し付けられると、圧電層と対象との間のインピーダンス不整合に起因してかなりの音響エネルギーが失われる。超音波造影技術では、圧電層とレンズ層またはフェース層との間の音響インピーダンスの整合層が振動子スタックに導入され、より高いインピーダンスの圧電層からより低いインピーダンスの対象への遷移を提供する。
【0015】
このように、本明細書において提供される整合層は、圧電層からレンズ層またはフェース層へのインピーダンスの遷移を達成するために、超音波振動子スタックに使用することができる。例示的な整合層は、様々な音響インピーダンスを有することができる。1つの例示的な整合層は、約7.0メガレイル(MegaRayle)から約14.0メガレイルの間の音響インピーダンスを有することができる。他の例示的な整合層は、約3.0メガレイルから約7.0メガレイルの間の音響インピーダンスを有することができる。さらに他の例示的な整合層は、約2.5メガレイルから約2.8メガレイルの間の音響インピーダンスを有することができる。当業者は、それぞれの例示的な整合層が、1/4波長整合層であってもよいことを理解するだろう。
【0016】
超音波振動子スタックは、高周波数(20メガヘルツ以上)の超音波を生成、発振、および受信するために使用することができる。例示的な超音波振動子スタックは、少なくとも1つの開示される整合層を備える。
【0017】
そのような例示的な振動子スタックの概略図を図1に示す。図1は、ニオブ酸リチウム圧電層102を有する振動子スタック100を示す。圧電層の底面は、裏打ち層104の頂面を覆っている。圧電層の頂面の上には、電極層106、3層の例示的な整合層(108、110および112)、エポキシ接着層114、ならびにレンズ層116がある。
【0018】
この態様において、整合層108は約7.0メガレイルから約14.0メガレイルの間の音響インピーダンスを有することができる、より高いインピーダンスの整合層である。他の態様において、整合層108は、後述するように、ナノサイズおよびミクロンサイズ粒子を含むことができる。
【0019】
整合層108の上面の上には、整合層108よりも低いインピーダンスを有する整合層110がある。整合層110は、約3.0メガレイルから約7.0メガレイルの間の音響インピーダンスを有することができる。他の態様において、整合層110は、後述するように、軽粒子および重粒子を含むことができる。
【0020】
整合層112は、整合層110よりも低いインピーダンスを有する。整合層112は、約2.5メガレイルから約2.8メガレイルの間の音響インピーダンスを有する。整合層112は、後述するようにシアノアクリレートを含むことができる。整合層112は、エポキシ層114を用いてその下の整合層110と接着されることが可能である。
【0021】
例示的な振動子スタック100のフェース層は、レンズ層116を含む。レンズ層は、後述するようにTPXを含むことができる。レンズ層116は、整合層112に直接接着されることが可能である。このように、この例示的な振動子スタック100では、整合層(108、110、および112)は、圧電層102からレンズ層116へのインピーダンスの遷移を達成する。
【0022】
本明細書で例示される振動子スタックは、高周波数超音波を使用して、対象またはその解剖学的部位の造影に使用することができる。生成される画像は高い解像度を有することができる。一態様において、超音波振動子スタックは、複数の層を備え、各層は頂面および反対側の底面を有する。他の態様において、複数の層は、圧電層と、少なくとも1つの整合層とを備える。振動子スタックの中に配置されると、所定の整合層の底面は圧電層の頂面を覆う。
【0023】
整合層は複合材料を含むことができる。一態様において、複合材料は、複数のミクロンサイズおよびナノサイズ粒子が投入されたマトリクス材料を含むことができる。他の態様では、複合材料は、複数の第1の重粒子および複数の第2の軽粒子が投入されたマトリクス材料を含むこともできる。さらなる態様において、整合層はまた、シアノアクリレート(CA)を含むことができる。
【0024】
例示的な振動子スタックを用いた超音波データの取得は、超音波の生成、対象への超音波の発振、および対象から反射された超音波の受信を含む。広範な周波数の超音波を使用して超音波データを獲得することができる。例えば、臨床用の周波数(20MHz未満)の超音波または高周波数(20MHz以上)の超音波を使用することができる。当業者は、例えば、画像の深度、または所望の解像度等を含む(ただしこれらに限定されない)要素に基づき、使用すべき周波数を容易に決定することができる。
【0025】
高解像度画像が望ましく、また対象内の造影される構造の深度が大きすぎない場合には、高周波数超音波が望ましい場合がある。したがって、超音波データの取得は、少なくとも20MHzの周波数を有する超音波を対象に発振するステップと、対象により反射された発振超音波の一部を受信するステップとを含むことができる。例えば、約20MHz、30MHz、40MHz、50MHz、60MHzまたはそれ以上の中心周波数を有する振動子を使用することができる。1つの例示的な好ましい実施形態では、振動子は、約20MHz(本明細書で後述する周波数の一般的な例に従い、25MHzの設計周波数に対する)の中心周波数を有することができる。
【0026】
小動物の造影には高周波数超音波の発振が望ましい場合が多く、その場合許容される侵入深度で高い解像度を達成することができる。したがって、当該方法は、小動物対象に対し臨床用周波数または高周波数で使用することができる。任意選択で、上述のように、小動物はラットまたはマウスであってもよい。
【0027】
開示される振動子は、超音波データの生成、発信、受信、および処理のための超音波造影システムと動作可能に接続することができる。例えば、超音波データは、少なくとも約20MHzから最大実用周波数までの超音波信号を供給することができる、超音波走査デバイスを使用して発信、受信、および処理することができる。20MHz以上で動作可能ないかなる超音波システムまたはデバイスでも使用することができる。
【0028】
本明細書において説明される整合層は、所望の周波数で超音波を発振および受信可能な他のデバイスと共に使用することができる。例えば、アレイ振動子を使用した超音波システムが使用可能である。
【0029】
小動物対象を造影する場合、例示的には、麻酔設備を利用できるプラットフォーム上に位置することができる。したがって、当該方法は、操作可能な探針ホルダ装置を有する「レールガイド」型プラットフォームを含む、小動物の造影に使用されるプラットフォームおよび装置とともに使用することができる。例えば、説明されるシステムは、米国特許出願第10/683,168号、名称「Integrated Multi−Rail Imaging System」、米国特許出願第10/053,748号、名称「Integrated Multi−Rail Imaging System」、米国特許出願第10/683,870号、現在では米国特許第6,851,392号(2005年2月8日発行)、名称「Small Animal Mount Assembly」、および米国特許出願第11/053,653号、名称「Small Animal Mount Assembly」(これらは参照することにより本明細書に組み入れられる)に記載の、マルチレール造影システムおよび小動物保定組立体とともに使用することができる。
【0030】
造影中小動物に麻酔をかけることができ、心拍数や体温等の生体生理学的パラメータを監視することができる。このように、システムは、処理および表示のためにECGおよび温度信号を収集する手段を含むことができる。また、システムは、ECG、呼吸、または血圧波形等の生理学的波形を表示することもできる。
【0031】
また、高いフレームレートが望ましい場合における、ラインベースの画像再構成を使用した超音波画像生成システムでの説明される振動子または整合層の使用が提供される。そのようなシステムの一例は、米国特許出願第10/736,232号、米国特許出願公開第2004/0236219号(参照することにより本明細書に組み入れられる)に記載の以下のコンポーネントを有することができる。ラインベースの画像再構成を使用した、開示される超音波画像生成システムは、1秒あたり200フレームを超える有効フレームレートを有する超音波画像を提供することができる。システムは、超音波を使用して、高い時間分解能を可能にし、マウス、ラット、ウサギ、または他の小動物等、小動物における心臓等のすばやく動く構造の正確な描写を可能にするECGベースの技術を備える。
【0032】
内腔を有する動的器官を含む、多くの異なる対象器官を造影することができる。例えば、本明細書で説明される方法およびシステムを使用して、心臓またはその一部を造影することができる。しかし、当該方法およびシステムは、心臓の造影に限定されず、心臓血管系の他の部分を含む、他の器官またはその一部を造影することができることが企図される。
【0033】
研究においていくつかの動物モデルが広く用いられており、最も一般的なのはマウスおよびラットである。マウスモデルの造影には、約20MHzから60MHzを超える高周波超音波が広く用いられ、高い効果が得られている。しかし、ラットは、2つの主要な造影上の障害を生む高い減衰とエコー発生を示す表皮組織、皮膚組織、および皮下組織を有するため、ラットモデルはマウスモデルと比較して高周波数での造影が困難であることが証明されている。第1の障害は、高周波数超音波エネルギーの高い減衰である。第2の障害は、残響による造影上のアーチファクトをもたらす複数の反射の生成である。これらの障害は共に、ラットの造影に使用される振動子の動作特性を変えることにより軽減することができる。
【0034】
これらの造影上の障害を克服する例示的な動作特性には、減衰を克服する高感度、残響を克服する組みレンズシステム、および/または、複数の反射を減衰するための振動子と組織との間の整合減衰層が含まれる。さらに、ラットの造影のために述べられる振動子は、距離分解能に悪影響を与えないように、幅広い帯域幅を有することができる。
【0035】
これらの3つの特性は、多くの場合、互いに相殺し合い、一般に技術上のトレードオフとみなされている。一実施例では、感度をより高くすると、一般に帯域幅が犠牲となる。同様に、整合性をより良くすると、多くの場合損失の多いレンズ材料となって感度に悪影響を与え、設計周波数で1/4波整合となるよう設計されると、帯域幅が削減される。また、整合減衰層を追加しても、1次シグナルレベルの感度が低減される。
【0036】
水への音響整合、感度、および広い帯域幅の応答を組み込んだ振動子が本明細書で説明され、対象動物モデルの造影に有用である。振動子は、ラットおよび他の小動物モデルに対する高周波数超音波造影を改善する。
【0037】
一態様において、減衰が大きいというラット組織の性質を克服するために、非常に感度が良好な、より効率の高い振動子が本明細書で説明される。さらなる態様において、振動子は、例えば約80%以上の−6dB帯域幅等、比較的広帯域である。
【0038】
他の実施形態において、複数の層を有する超音波振動子スタックのための整合層が提供される。一態様において、説明される整合層は、圧電層を含む超音波振動子スタックであってもよい。代替の態様において、スタックは、例えば、これらに限定されないが、裏打ち層、他の整合層、レンズ層、信号電極層、接地電極層、接着層、および/または当業者には既知のその他の層等の、他の層を備えることもできる。
【0039】
本発明の一実施形態では、整合層は複合材料を含む。この態様において、複合材料は、複数のミクロンサイズおよびナノサイズ粒子が投入されたマトリクス材料を含むことができる。代替の態様において、複合材料は、複数の重粒子および軽粒子が投入されたマトリクス材料も含む。他の態様において、整合層はまた、硬化シアノアクリレートを含むことができる。
【0040】
本明細書では、複数の層を備える超音波振動子スタックが例示され、各層は頂面および反対側の底面を有する。一態様において、複数の層は、圧電層と、少なくとも1つの整合層とを備える。この態様では、整合層は、圧電層の頂面を実質的に覆うようにスタックに位置することができる。例示的なスタックは、複数のナノサイズおよびミクロンサイズ粒子が投入された複合材料を含む整合層と、複数の重粒子および軽粒子を含む整合層と、シアノアクリレートを含む整合層とを備えることができる。
【0041】
使用可能な圧電材料には、例えばセラミック、複合セラミック材料、および単結晶等が含まれるが、これらに限定することは意図されない。例えば、例示的な単結晶機械走査振動子にニオブ酸リチウム(LiNb)を使用することができる。他の実施例においては、36度Y回転ニオブ酸リチウムが、圧電層のための例示的材料である。LiNbは、高効率機械的結合特性(Ktが約50%)、および非常に低い誘電率(ε=34)を有し、追加の電気的整合ネットワークが不要となることができる効率的な単一要素の振動子を得ることができる。さらに、ニオブ酸リチウム(LiNb)は高いQ値(10,000の領域において)を有し、狭帯域振動子となることが可能である。高いQ値は、広帯域整合構造と、振動子のQ値を低下させるよう作用するダンピング裏打ちシステムとにより相殺されることが企図される。
【0042】
さらなる態様において、裏打ちシステムは振動子スタックとともに使用することができ、底面側の圧電層に接続および/または該圧電層の下に存在することができる。使用されると、裏打ち層はいくつかの点を達成する。第1に、振動子に所望の帯域幅で共振させる音響インピーダンスを有する。第2に、振動子自身の内部反射が低減されるかまたは存在しないほど高い減衰性を有する。最後に、裏打ち層は、圧電要素と接触して動作することができる。
【0043】
1つの例示的な態様において、裏打ち層の音響インピーダンスは、良好な帯域幅を確保しながら高感度を達成するために、LiNbのZに比べできる限り低くなるように選ばれる。例えば、約5MRから7MRの間の幅の音響インピーダンスは、感度と帯域幅との間の望ましいトレードオフを提供する。例えば、より高い帯域幅が望ましい場合、約25MRから40MRの裏打ちインピーダンスを使用することができる。
【0044】
裏打ち層の減衰に関しては、減衰が高いほど、内部反射を排除するために必要となる裏打ちの厚さはより薄い。また、裏打ち層が薄いほど、振動子の重量および体積がより少なくなる。
【0045】
代替の態様では、裏打ち層は導電性であってもよく、または絶縁体であってもよい。しかし、導電体が使用されても絶縁体が使用されても、裏打ち層は圧電層に動作可能に接続される。導電性裏打ち層の結果、非常に狭い範囲の可能な減衰および利用可能な音響インピーダンスで製造プロセスを高速化することができる。非導電性裏打ち層は、非常に広範囲のダンピングおよび減衰の可能性を提供する。
【0046】
1つの例示的な裏打ち層は、Ablebond 16−1導電性エポキシから形成される。この裏打ち層材料は、約6.7MRの音響インピーダンス、30MHzで約100dB/mmを超える減衰を有する。さらに、この例示的な導電性エポキシは、接着ラインでの優れた導電性を示し、圧電層との完全な接続を成す。
【0047】
代替の態様では、より低い感度が望ましい超高帯域幅設計を成すために、例えば、インジウム、スズ、およびインジウム合金等(ただしこれらに限定することは意図されない)の材料を使用して裏打ち層を形成することができる。
【0048】
他の態様において、レンズ層を使用することができる。例えば、音響的に水と実質的に整合したレンズを使用することができる。そのようなレンズは、水の音速より高いまたは低い音速を有することができるが、望ましい焦点量を達成するために実際の曲率が実現するように水とは十分異なる音速を有する。使用可能な例示的レンズ材料は、ポリメチルペンテンまたはTPXである。この熱可塑性樹脂は、1.8MRの音響インピーダンスおよび2200m/sの縦波伝播速度を有する。凸レンズ(水よりも低い音速を有する)を使用することもできる。
【0049】
TPXは他のいくつかの代替物と比較して損失が大きい(30MHzで5.7dB/mm)が、水および組織との音響整合が極めて良好である。TPXの使用における主な課題は、超音波振動子スタックの他の層との接着が非常に困難であることである。例えば、Rexolite(熱硬化性架橋ポリスチレン)はTPXよりも損失が低く、30MHzで約1.1dB/mmのみであるが、音響インピーダンスが2.6MRである。Rexoliteは、感度が重視される場合に使用することができ、多重反射に耐えることができる。レンズを薄く保ち、Fナンバーを通常の範囲の高い側(典型的には約2.5〜3の間)に保つことにより、損失を軽減することができる。
【0050】
様々な態様において、少なくとも1層の例示的な1/4波長波整合層が超音波振動子スタックに使用される。従来的に、そのような1/4波長整合層は、単に「整合層」としても知られている。「整合層」という用語は、本発明の説明全体にわたり使用されて1/4波または波長整合層と同じ意味を有することに留意されたい。1/4波整合層は、感度と帯域幅の両方に影響する。
【0051】
高周波数では、整合層は、約5.0μmから50.0μmを超えるオーダーの厚さとなることができ、典型的には中間接着層に対する許容値が低い。例えば、500nmを超える層は設計に弊害をもたらす可能性があり、また1500nmを超えるものはスタックの効果を実質的に打ち消す可能性がある。当業者には明らかなように、1/4波長層では、厚さは所望の発振周波数および層中の音速に依存する。したがって、当業者ならば、複合体の音速に関する通常の試験、および所望の設計周波数に関する知識により、重粒子および軽粒子を含む整合層の1/4波長のための適切な厚さを決定することができる。
【0052】
本発明の一実施形態では、例示的なレンズ層は、約3MRの音響インピーダンスを有するシアノアクリレート整合層に接続されたTPXを含む。本明細書で説明されるように、シアノアクリレート整合層は、TPXレンズ層に接着されてスタックの他の層とつながっている。
【0053】
例示的な一実施形態において、帯域幅を向上させ優れた感度を維持するために、約10MRの整合層が、約4.5〜5MRの間のインピーダンスを有する整合層を覆っている。これは、例示的には、バキュームサンダーを用いて所望の厚さまで研磨されたタングステンドープエポキシの2つの層を使用して達成される。さらなる態様において、硬化中にタングステン粉末が沈降するのを防ぐために、低インピーダンス層にはSiCナノ粒子がドープされていてもよい。
【0054】
上述のように、他の整合層が、TPXレンズに積層したシアノアクリレート(CA)層であってもよい。レンズ層に接着されたCA整合層は、エポキシの層により、CA層の底面の下のスタックに位置するより低いインピーダンスの整合層に接着することができる。一態様では、エポキシ層の高さ方向の厚さは約5μm以下の厚さである。エポキシのCAに対する音響的類似性により、数ミクロンの厚さ(20MHzで<5μm)では、この層はスタックの性能に対して大きな影響を与えない。一態様では、エポキシは、例えばEpotek 301エポキシであってもよいが、これに限定することは意図されない。他の態様において、やや低い音響インピーダンスを有することができるゴム強化CA(Loctite Black Max等)を使用することができる。
【0055】
本発明の代替の実施形態において、複数の層を備える超音波振動子スタックのための整合層は、複数のミクロンサイズおよびナノサイズ粒子が投入されたマトリクス材料を有する複合材料を含むことができる。一態様において、複合材料は超音波振動子スタックの整合層を形成する。整合層は、1/4音響波長整合層であってもよい。
【0056】
粒子は、ナノサイズおよびミクロンサイズそれぞれの領域内で、様々な寸法のものであってもよい。好ましい一実施形態では、投入された粒子は、整合層の厚さ未満の最大縦方向寸法または最長寸法を有する。例えば、ミクロンサイズ粒子は、約5μmの最大縦方向寸法を有し、ナノサイズ粒子は、約800nmの最大縦方向寸法を有し、整合層の厚さは5μmより大きい。当業者は、所望の音響インピーダンスを達成することが不可能とならないよう可能な限り小さい粒子が選択されることを理解するだろう。名目上、整合層において、減衰は最小限に維持されるべきであり、粒子サイズは波長よりもずっと小さい。例えば、16.5μmの4分の1波長層中の5μm粒子は、1波長の約1/13である。
【0057】
一態様において、ミクロンサイズおよびナノサイズ粒子は、高密度金属を含むことができる。例えば、ミクロンサイズおよびナノサイズ粒子は、タングステン、金、白金、またはそれらの混合物を含むことができる。あるいは、非導電性層が望ましい場合は、例えばPZT等の高密度セラミックを使用することができる。
【0058】
さらなる態様において、マトリクス材料はポリマーであってもよい。1つの限定されない実施例では、マトリクスを形成するポリマーはエポキシである。例えば、エポキシは、Tgが振動子の最高使用温度を超える低粘度室温硬化エポキシであってもよい。いくつかの限定されないエポキシの例としては、Epotek(登録商標)301および302(Epotek社、マサチューセッツ州ビレリカ)、Cotronics Duralco(登録商標)4461(Cotronics社、ニューヨーク州ブルックリン)、West Systems Epoxies(West Systems社、ミシガン州ベイシティ)、および各種Araldite(登録商標)Epoxyの組合せが挙げられる。あるいは、整合層は、例えばアクリル、プレキシグラス、ルーサイト等のポリメチルメタクリレート(PMMA)、または例えばレキサン等のポリカーボネート(PC)等、熱可塑性樹脂であってもよい。
【0059】
例示的な一態様において、ミクロンサイズおよびナノサイズ粒子は、ミクロンサイズ粒子対ナノサイズ粒子の重量部換算で約5:1から約1:5の比率でマトリクス材料に投入されてもよい。例えば、ミクロンサイズおよびナノサイズ粒子は、ミクロンサイズ粒子対ナノサイズ粒子の重量部換算で約1:1の比率でマトリクス材料に投入されてもよい。他の態様では、所望の音響インピーダンスが増加するほど、大粒子の所望の割合が増加することができる。例えば、10MR整合層が望ましい場合、1:1の比率を使用することができる。他の実施例では、12MR層に対して、2:1または3:1のミクロンサイズ粒子:ナノ粒子比率を使用することができる。
【0060】
ある例示的な態様において、整合層のナノサイズ粒子およびミクロンサイズ粒子は、体積換算で複合材料の約10%から約35%を構成する。他の実施例では、ナノサイズ粒子およびミクロンサイズ粒子は、体積換算で複合材料の約25%から約30%を構成することができる。好ましい一実施形態では、ナノサイズ粒子およびミクロンサイズ粒子は、体積換算で複合材料の約25%を構成する。
【0061】
ナノ粒子およびミクロン粒子を有する整合層は、所望の音響インピーダンスを持つように設計することができる。例えば、整合層の音響インピーダンスは、約7.0メガレイル(MR)と14.0メガレイル(MR)の間となるように形成することができる。好ましい一態様では、整合層の音響インピーダンスは約10MRである。
【0062】
様々な態様において、整合層はまた、厚さにおいても多様となることができる。当業者には理解されるように、1/4波長整合層を達成するための厚さは、整合層中の音速、および整合層を通過する超音波の周波数とともに変化する。したがって、当業者は、本明細書における教示に基づき、整合層の適切な厚さとともに、20MHz以上の周波数を含むいかなる所望の超音波発振周波数をも容易に決定することができる。他の例示的な態様において、整合層中の音速は、約1000メートル/秒(m/s)と3000m/sの間となることができる。さらに、整合層の高さ方向の厚さは、約4μmと30μmの間となることができる。
【0063】
一実施形態において、ナノ粒子/ミクロン粒子整合層を生成する方法は、マトリクス材料、複数のミクロンサイズ粒子、および複数のナノサイズ粒子を提供するステップを含む。複合材料を形成するために、マトリクス材料には複数のミクロンサイズ粒子および複数のナノサイズ粒子が投入され、形成された複合材料は、超音波振動子スタックの整合層を生成するために使用される。一態様において、ミクロンサイズおよびナノサイズ粒子は、同じ基材を含むことができる。当然ながら、ミクロンサイズ粒子およびナノサイズ粒子は、異なる基材より成ることも企図される。
【0064】
図1に示されるように、ナノ粒子/ミクロン粒子整合層は、複数の層を有する、例示される超音波振動子スタック100における整合層として使用することができる。図示されるように、例示的な超音波スタック100は複数の層を備え、各層は頂面および反対側の底面を有する。複数の層は、圧電層102と、少なくとも1つの整合層とを含む。当然ながら、複数の整合層(108、110、および112)を振動子スタック100において使用することができる。整合層108は、上述の1/4波長音響整合層を備える。
【0065】
ある例示的実施形態において、圧電層は、第1の整合層を透過するために、少なくとも約20メガヘルツ(MHz)の中心周波数の超音波を生成することができる。そのような高い発振中心周波数は、ラットを含む小動物の造影には特に望ましいものとなり得る。このように、例示的な一態様において、圧電層は、第1の整合層を透過するために、少なくとも約20MHz、25MHz、30MHz、35MHz、40MHz、45MHz、50MHz、55MHz、60MHz、65MHz、70MHzまたはそれ以上の中心周波数の超音波を生成することができる。
【0066】
他の態様において、圧電層は、20MR以上の音響インピーダンスを有することができる。上述のように、使用可能な圧電層の1つの例示的な種類には、約34MRのインピーダンスを有するニオブ酸リチウムが含まれる。他の実施例では、圧電層は、約33〜35MRのインピーダンスを有するPZTを含むことができる。
【0067】
当然ながら、本明細書で説明されるナノ粒子/ミクロン粒子整合層に加え、他の整合層も使用することができる。複数の層を有する超音波振動子スタックの1つの例示的な整合層は、複数の第1の重粒子および複数の第2の軽粒子が投入されたマトリクス材料を含む複合材料を含む。しかし、本実施形態では、軽粒子および重粒子のサイズに制限はないことに注意すべきである。したがって、軽粒子および重粒子を含む整合層は、ナノ粒子およびミクロン粒子の混合物を含むことができる。例えば、軽粒子はミクロンサイズでもナノサイズでもよく、重粒子はミクロンサイズでもナノサイズでもよく、これらのいかなる組合せもマトリクス材料に加えることができる。
【0068】
重粒子および軽粒子を有する整合層は、1/4音響波長整合層を含むことができる。ある限定されない実施例では、軽粒子は約4.0グラム/立方センチメートル(g/cc)以下の密度を有し、重粒子は約4.0g/ccを超える密度を有する。例えば、軽粒子は約2.5g/ccと約4.0g/ccの間の密度を有することができる。重粒子は、例えば、10.0g/cc以上の密度を有することができる。
【0069】
例えば、第1の重粒子は、タングステン粒子およびチタン酸ジルコン酸鉛粒子より成る群またはそれらの混合物から選択されるミクロンサイズまたはナノサイズ粒子を含むことができる。さらなる実施例では、第2の軽粒子は、炭化ケイ素粒子およびアルミナ粒子より成る群またはそれらの混合物から選択されるミクロンサイズまたはナノサイズ粒子を含む。さらに、第2の軽粒子の密度は、重粒子およびマトリクスの最終複合体の密度の約100%〜200%の間となることができる。
【0070】
上述のように、重粒子および軽粒子のサイズが異なってもよい。様々な態様において、重粒子または軽粒子は、1ミクロン未満となることができる。好ましい一実施形態では、投入された粒子は、それらが含まれる整合層における波長の1/50未満の最大縦方向寸法または最長寸法を有する。重粒子および軽粒子は、例えばエポキシ等のポリマーを含むことができるマトリクス材料中に投入することができる。一実施例において、投入される複数の粒子は、複合材料の少なくとも約11.0体積%を構成することができる。例えば、複数の粒子は、複合材料の約11.0体積%と約20.0体積%の間を構成することができる。好ましい実施形態において、複合材料の約5.5体積%は、複数のナノサイズの重粒子を含み、複合材料の約5.5体積%は、複数のナノサイズの軽粒子を含む。この好ましい実施形態では、他の例示的実施形態のように、重粒子は、タングステン粒子、PZT粒子、金粒子、または白金粒子であってもよく、軽粒子は、炭化ケイ素粒子またはアルミナ粒子であってもよい。
【0071】
重粒子および軽粒子を含む整合層の音響インピーダンスは多様となることができる。例えば、この層の音響インピーダンスは、約3.0メガレイルと7.0メガレイルの間となることができる。例示的な一実施形態では、音響インピーダンスは約4.5MRである。
【0072】
整合層の厚さも多様となることができる。したがって、当業者ならば、音速に関する通常の試験、および所望の発振周波数に関する知識により、重粒子および軽粒子を含む整合層の1/4波長のための適切な厚さを決定することができる。一実施例において、整合層は、約1500m/sと約4500m/sの間の音速を有することができる。他の実施例では、整合層中の音速は、約1800m/sと約2500m/sの間である。好ましい一実施形態では、整合層中の音速は約2100m/sである。様々な態様において、重粒子および軽粒子を含む例示された整合層の厚さは、約4.0ミクロンと30ミクロンの間となることができることが企図される。例えば、複合材料の約5.5体積%のナノサイズの第1重粒子と、複合材料の約5.5体積%のナノサイズの第2軽粒子の例示的な混合を含む、25MHzの設計周波数に対し中心周波が20MHzである例示的な振動子において、整合層は、超音波振動子スタックの高さ寸法において、約22.0ミクロンの厚さである。
【0073】
本発明の一実施形態において、軽粒子/重粒子整合層を生成する方法は、マトリクス材料、複数の第1の重粒子、および複数の第2の軽粒子を提供するステップを含む。この態様において、超音波振動子スタックの整合層として使用される複合材料を形成するために、マトリクス材料には複数の第1の重粒子および複数の第2の軽粒子が投入される。
【0074】
超音波振動子スタックは、上述のような軽粒子および重粒子を含む整合層を備えることができる。この整合層は、より高いインピーダンスの整合層をも備える振動子スタックのより低いインピーダンスの整合層を含む。この点で、より高いインピーダンスの整合層は、同様の重量のナノ粒子およびミクロン粒子、および/またはより低いインピーダンスの整合層としての材料とを含む。
【0075】
このように、例示的なスタック100は、各層が頂面および反対側の底面を有する複数の層を備えることができる。複数の層は、圧電層102と、少なくとも1つの整合層とを含むことができる。整合層110は、複数の第1の重粒子および複数の第2の軽粒子が投入されたマトリクス材料を含む複合材料を含むことができ、整合層110の底面は、圧電層102の頂面を覆う。超音波振動子スタック100は、整合層110のインピーダンスより高いインピーダンスを有する整合層108をさらに備えることができ、整合層108は、圧電層102の頂面と整合層110の底面との間に位置する。
【0076】
圧電層は、1つ以上の整合層を透過するために、少なくとも約20メガヘルツ(MHz)の中心周波数の超音波を生成することができる。例えば、圧電層は、1つ以上の整合層を透過するために、少なくとも約25MHz、30MHz、35MHz、40MHz、45MHz、50MHz、55MHz、60MHz、65MHz、70MHzまたはそれ以上の中心周波数の超音波を生成することができる。超音波は、整合層108を、ついで整合層110を透過することができる。
【0077】
本明細書では、複数の層を有する超音波振動子スタック100の裏打ち層104も提供される。裏打ち層は、複数のミクロンサイズおよびナノサイズ粒子が投入されたマトリクス材料を有する複合材料を含むことができる。また、複数の第1の重粒子および複数の第2の軽粒子が投入されたマトリクス材料を有する複合材料を含む、超音波振動子スタック100の裏打ち層104も提供される。
【実施例】
【0078】
(実験)
以下の実施例は、本明細書で請求される化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法がどのように評価されるかについての完全な開示および説明を当業者に提供するために提示され、純粋に本発明の例であることを意図し、本発明者らが自らの発明とみなすものの範囲を制限することを意図しない。数字(量、温度等)に関しては正確性を確保するよう努力したが、ある程度の誤差および偏差も考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部、温度は℃表示、または周囲温度であり、圧力は大気圧またはそれに近い圧力である。
【0079】
(実施例1:TPXレンズを備えた例示的なLiNbの20〜25MHz振動子スタックの製造)
図5は、TPXレンズを備えた例示的なLiNbの20〜25MHz振動子の製造方法を示したブロック図である。製造プロセスは、以下の3つの例示的セクションで説明される。まず、スタックを形成するための整合層および圧電層の製造が説明される。次に、レンズ層およびシアノアクリレート整合層の製造が説明される。最後に、レンズとシアノアクリレート層の振動子スタックへの接着が説明される。
【0080】
(整合層および圧電層の製造)
ブロック504に示されるように、圧電層のためのLiNb結晶を調製する。質量負荷を相殺するために、36度Y−カットLiNb結晶を所望の中心周波数の0.4ラムダの厚さまでラッピングする。Eビーム蒸着またはスパッタリング等の適した手段を使用して、結晶に3000Aの金をめっきする。当業者には理解されるように、典型的には、金層の接着性を向上させるために、CrまたはNiの薄層を使用することができる。LiNb結晶の金側をアセトンで洗浄する。洗浄後、さらなる操作まで結晶を清浄な場所に置く。
【0081】
1/4波整合層のために、ナノ粒子およびミクロン粒子投入エポキシを調製する。ブロック506で、約8MRを超えるインピーダンスを有する高インピーダンス整合層を調製する。8MRを超える音響インピーダンスを持つ投入エポキシ複合体の形成は、典型的には、エポキシに濡れることができる粉末の最大体積比により制限される。25MHz設計に適合するのに十分小さい粒子で20%を超える体積比を達成するのは、微粉末の体積比に対する大きな表面積のため難しい。20%体積比の制限により、またタングステン粉末を使用すると、約8〜9MRを超える音響インピーダンスを持つ複合体を形成するのは困難である。例えば、Martha G.Grewe、T.R.Gururaha、Thomas R Shrout,and Robert E Newnham、「Acoustic Properties of Particle/Polymer Composites for Ultrasonic Transducer Backing Applications」 IEEE Trans.on Ultrasonics、Ferroelectrics and Frequency Control、Vol.37、No.6,November 1990を参照されたい。
【0082】
低粘度エポキシ(1000cps未満が好ましい)を使用すると、混合物が使用するには乾燥しすぎてしまう前に、エポキシに添加される粉末の体積比を最も大きくすることができる。当技術分野で知られたそのようなエポキシの例は、Epotek301である。例えば、Haifeng Wang、Tim Ritter、Wenwu Cao、およびK.Kirk Shung、「Passive Materials for High Frequency Ultrasound Transducers」 SPIE
Conf.on Ultrasonic Transducer Engineering、San Diego、California、February 1999、SPIE Vol.3664を参照されたい。粉末を加える前に、エポキシは完全に混合される。
【0083】
例示的な10メガレイルの整合層を形成するために、エポキシマトリクス中の粉末25%体積比を使用する。この体積比を達成するためには、比較的大きい5μm粒子を使用する。しかし、そのような大きな粒子は、整合層の厚さ方向に3粒子しか許容されないため、振動子の周波数に適合しない。1:1の比率まで5μm粉末を混合したサブミクロンのタングステン(W)粉末も使用される。これは、重量比で少なくとも1:6から2:1の範囲にわたり有効である。粉末投入エポキシにおいて達成することができる密度の上限は、すべての粉末粒子の表面を濡らす能力により制限される。粒子サイズが増加すると、表面積に対する粉末状材料の体積比が直線的に増加する。したがって、粉末粒子の寸法が増加すると、十分に濡れて空隙のない混合物となることができるエポキシに対する粉末の体積比が増加する。しかし、粒子サイズが増加すると、沈降して個々の粒子と超音波エネルギーの波長との相互作用が急激に大きくなるという問題が生じる。
【0084】
整合層における減衰を低減するために、また配合材料としてのマトリクスおよび粉末の予測可能な音響インピーダンスのために、粒径はマトリクス(エポキシ)の波長に比べ小さくすることができる。1/4波整合層を作製するために、複合体がその厚さ方向に少なくとも15個以上の粒子を含むように粒子サイズを十分小さくすることができる。
【0085】
ナノ粒子とそれより大きい粒子との混合物の例示された使用は、投入粒子の高い体積割合と沈降に対する優れた制御の両方を備えた高密度投入粒子を可能にする。沈降は、ナノ粒子の量を調節して、得られるペーストの粘度およびチクソ性指数を制御することにより制御される。達成可能な体積割合に対する上限、および比較的大きい粒子の沈降の低減において得られる利点に加え、ナノ粒子により、1/4波層(例えば、25MHzで16.5μmの厚さ)が、任意の断面においてより多くの粒子、さらには粉末粒子の空間的分布(すなわち、大粒子のみの場合のようには大粒子間の大きなエポキシ領域が存在しない)を有することができるようになる。
【0086】
大粒子と小粒子の混合が好ましい。ナノ粒子のみの使用では、得られる可能な上限は20体積%未満であるが、5.0μm粒子のみ、またはさらに2.0μmもしくは3.0μm粒子のみの使用では、波長に比べ広い粒子間の空間に起因して、音響インピーダンスが不明確な高い減衰性を有する整合層が得られる。例示的なWドープエポキシの調製は、Epotek 301エポキシ対タングステン粉末(5μm:1μm未満が50%:50%)の3:1体積比の混合バッチを含む。これはチクソ性の高いペーストであり、密度が5.7g/ccでタングステンの体積割合が25%である85重量%のタングステン混合物である。ナノサイズ粒子の小さいサイズに起因して、その厚さ方向に50個までの粒子を有する。例えば、混合物は、混合301エポキシ0.5g(硬化剤0.1g、樹脂0.4g)、1μm未満W粉末1.5g、5μmW粉末1.5gのように秤量することができる。
【0087】
約3.5MRから6MRの間の中間音響インピーダンス整合層は、ブロック514に示されるように、軽粒子を重粒子と混合することにより製造される。中間音響インピーダンス整合層の形成は、単一の軽粒子の高い体積割合を使用して、この範囲の中間から上のインピーダンスを達成することができる。しかし、中間音響インピーダンスを形成するのに十分小さい粒子サイズを持つ単一の材料を使用するには、典型的には、適した粉末粒度で利用可能な適切な密度の材料を探し出すという困難な作業が必要である。高い体積割合は、高粘度および高チクソ性のペーストが形成されることから、混合、脱ガス、および展着/塗布を非常に困難とし、製造上の問題へとつながる。しかし、粉末の体積割合は、減衰を低く抑えるために典型的には11%より高く維持されるため、多くの場合、理想的な音響インピーダンスの達成と理想的な物性との間で妥協され、さもなければ新たな材料を探求してプロセスを再び始める必要がある。
【0088】
このように、軽粒子および重粒子を併用することにより、所望の音響インピーダンスを達成する問題を、粘度、濡れ性、およびチクソ性指数の問題から分離する解決策が可能である。重い材料を体積割合に混合して所望の音響インピーダンスを得、次いで所望の粘度およびチクソ性指数が達成されるまで(すなわち、容易に濡れるが流動したり沈降したりしない)軽いナノ粒子を加える。一実施例では、軽量の粒子として、市販のSiC軽量ナノ粒子を使用することができる。濡れ性、粘度、およびチクソ性指数の問題を、所定の音響インピーダンス達成の問題から分離するために、SiCp=3.2g/ccおよびアルミナp=3.9g/cc等(ただしそれらに限定されない)のいくつかの粒子が使用可能である。
【0089】
このようにして、整合層の音響インピーダンスは、ほぼ重粒子の体積割合(これはその割合において大きな沈降問題を有する)によってのみ制御される。しかし、複合体混合物の粘度および一様性、ならびに沈降は、ほぼ軽量粒子によってのみ制御される。この点で、軽量粒子は、密度が重粒子−エポキシ混合物の所望の複合体密度の約100%から200%の間の密度となるように選択される。
【0090】
例えば、例示的な25MHz4.5MR整合層において、約4.5MR〜5MRの間の音響インピーダンスを達成するために、5.5%の体積割合のタングステン粉末ナノ粒子が適した室温硬化低粘度エポキシ中に使用される。次いで、例示的な11%体積割合を達成するためにSiCナノ粒子が加えられる。
【0091】
この例示された混合物は操作しやすく、濡れ性が非常に良好で、エポキシが硬化する24時間の硬化期間の間、認め得るほど沈降しない。SiC粒子の添加前は、混合物は数秒で完全に沈降するが、SiCを添加すると混合物はチクソ性となり沈降しない。SiC粒子の添加による音響インピーダンスの変化はわずかであるが、粘度は大きく変化し、混合物は沈降しなくなる。いかなる所望の音響インピーダンスでも、中間の範囲で達成することができるとともに、2つの容易に入手可能な粉末状材料を使用して、沈降することなく、また極めて高い体積割合を必要とせずに望ましい動作特性が維持される。また、ナノ粒子のサイズにより、減衰および散乱が最小限に抑えられ、優れた整合層となる。
【0092】
ブロック508に示されるように、Wドープエポキシをスタックに加えることができる。整合層中の空洞は、一般に不良のスタックを発生させる可能性があるため、整合層の適用には慎重な配慮が必要である。圧電性結晶と粉末投入エポキシとの間の界面近くの空洞は有害となり得る。
【0093】
空洞を防ぐために、投入エポキシは均一に広げられ、空洞が混合物表面に押し出される。一般に、整合層を作製するために使用されるチクソ性ペーストは、ある部分に「流出」することが困難であり、液体のように流動するためには通常撹拌が必要である。したがって、表面全体に流れ濡れるように、振動マニピュレータ(例えば、22ゲージワイヤの一部が取り付けられた彫刻器)を使用して、結晶表面上にペーストを広げることができる。さらに、振動は、空洞がペーストの表面に浮上するのを促進し、それを研磨で取り除くことができる。これにより、希望通りに広げられた後に沈降しない高いチクソ性ペーストを使用することができる。
【0094】
一実施例において、良好な濡れ性、および空洞の表面上への浮上の促進のために、22ゲージの硬質焼き戻し銅ワイヤL形状チップに変更した彫刻器チップを顕微鏡下で使用して、表面上に滑らかにチクソ性ペーストを移動させる。典型的には、彫刻器チップは、開口の表面全体に使用され、低振幅高周波数設定(約7,200spm)に設定される。一態様では、後に接地に使用することができるように端部の周りの縁の小さい部分(約0.25mm)は被覆せずにLiNb結晶表面を被覆する。エポキシが縁に付いていると、振動子の面からバッチ全体を除去しない限り効果的に洗浄することができない。
【0095】
ブロック510に示されるように、エポキシを室温で硬化させ、次いで温度を上げて後硬化を行う。室温硬化エポキシは、圧電性結晶の歪みを発生させる層の著しい収縮が起こらないようにするために使用することができる。高いTgが好ましいため、炉中での高温後硬化に適合するエポキシが選択される。エポキシは室温で約18時間以上(24時間が好ましい)硬化させる。さらに、硬化エポキシに対し、インキュベータ中で約3時間以上、65℃での後硬化を施す。
【0096】
ブロック510に示されるように、第1の整合層の研磨および/またはラッピングを行う。1/4波整合層を達成するために余分な材料を除去する。余分な材料を除去して1/4波長の厚さの整合層を得るにはいくつかの方法(ラッピングまたは研磨等)を使用することができる。研磨システムを使用して、第1の整合層をλ/4(c=1600m/s)の厚さまで研磨する(これは25MHzでは16〜17μmの厚さである)。約25MHzの設計周波数に対し20MHzの例示的なデバイスの許容値は2〜3μmの範囲、すなわち16.5μm+2μm/−1μmであるため、サンプルの取り付けと測定には注意が必要である。
【0097】
ブロック514に示されるように、比較的低いインピーダンスの第2の層を製造および塗布する。第1の整合層が完成したら、中間音響インピーダンスの第2のペーストを第1の層に塗布し、展着、硬化、および材料除去のプロセスを繰り返して第2の1/4波層を形成する。バッチを以下のように混合する:Epotek301および1μm未満タングステン粉末の17:1体積比または(51重量%W)混合物を使用したW粉末ドープエポキシ。1μm未満SiC粉末中の混合物の質量の50%を加え、滑らかなペーストが得られるまで混合する。ペースト内のいかなる塊も、乳鉢と乳棒で軽く混錬することにより除去することができる。混合物は、混合301エポキシ0.5g、1μm未満W粉末0.52g、1μm未満SiC粉末0.2gのように秤量することができる。ペーストの均一な展着と良好な濡れ性のためにL形状チップ付彫刻器を使用して第2の層を第1の層のように塗布する。混合物を室温で約18〜24時間硬化させ、次いで65℃で約3時間以上後硬化を行う。
【0098】
ブロック516に示されるように、第2の整合層の研磨および/またはラッピングを行う。c=2100m/sを使用してλ/4の厚さまで材料を研磨する(25MHz設計周波数の例では、この厚さは約18〜19μm厚+/−1μmである)。
【0099】
ブロック518および520に示されるように、スタックの支持構造を調製し、結晶を支持構造に接着する。一態様では、スタックは筐体内に配置される。インサートの上部がTi筐体の縁の約1.5mm下となるように、所望の振動子開口および高さに一致するIDと、所望のTi振動子筐体の仕様に一致するODとを有する、Ultem1000(ポリエーテルイミド)インサートを使用することができる。インサートの前面を洗浄し、清浄でバリや凹凸がないか検査する。例えば、インサートを超音波洗浄器および洗剤でまず洗浄し、さらに使用直前にイソプロピルアルコールで洗浄することができる。
【0100】
少量の適した低温硬化中粘度エポキシ(Loctite E−20HP等)を調製し、先端がスポンジの綿棒を使用して、洗浄したインサートの前面に非常に薄い被膜状に塗布する。エポキシは、インサートの壁の厚さにわたりメニスカスを形成するほど厚く塗布しない。実際には、スタック側を上にして結晶をインサートのエポキシ被覆面に設置し、インサートの中心に位置付ける。一実施例では、真空吸着ツールを使用して、ニオブ酸リチウム結晶をインサートに塗布する。小さな力を加えて結晶をインサートの面に押し付けるが、これによりエポキシがその下のインサートの端部まで流動する。中心に合わせた結晶をインキュベータに入れ、約40℃で約3時間硬化させる。
【0101】
硬化後、インサート/結晶組立体を検査し、結晶が中心にあり完全にインサートに接着されていることを確認する。次に、インサート/結晶組立体の縁辺部を洗浄する。この部品を例示的な筐体にスライドさせることにより、Ultemインサートの直径が増加していないことをチェックする。
【0102】
この段階で、当業者は、音響スタックを適した支持構造に設置することができ、ブロック522および524に示されるように後部電極および適した減衰性を有する裏打ち材料を塗布することができることを理解するだろう。これらの機能は、裏打ち層として導電性エポキシを使用することにより組み合わせることができる。
【0103】
一実施例では、例示されるインサート/結晶組立体は、結晶層を下にして清浄な円滑加工表面に正常に設置することができる。背面の空隙はAblebond 16−1銀導電性エポキシで充填する。空隙は、まずエポキシシリンジおよびアプリケータチップを使用して空洞の中心にエポキシを滴下することにより充填する。裏打ち材料にいかなる空洞もトラップされないよう確認しながら、結晶の背面全体にエポキシを塗布する。エポキシシリンジを使用し、充填中にエポキシ内に空洞が形成されないようにアプリケータのチップがエポキシ表面の下になるようにして充填を続ける。導電性エポキシがインサートの縁の約0.5mm下となるまで空隙を充填する。
【0104】
ここで、「ピル」と呼ばれる裏打ちされたスタックは、デバイスが意図される用途に依存して、想定重量、温度、およびRF遮蔽等を考慮して、適した筐体に収納されることが可能であり、ブロック526および528に示されるように密着される。
【0105】
ピルは、硬化していないエポキシを上にして筐体の固定具に設置される。少量のLoctite E−20 HPを、それぞれ合流しないようにピルの背面に数箇所塗布する。次に、完成された筐体を、ピルが筐体の背面に接触するまでピルの上に被せる。続いて、固定具クランプを筐体の上に設置して適所に保持し、室温で約18時間以上硬化させる。次いで組立体をインキュベータ内に入れ、65℃で約3時間後硬化を行う。典型的には、筐体内で裏打ち層が流れないようにするのを補助するために、ピルの面は床と平行となるように、かつ下を向くようにする。
【0106】
次に、密着層を塗布することができる。この実施例では、エポキシが完全に硬化したら、結晶とTi筐体との間に連続した円滑表面が存在するように、エポキシのビーズを結晶の外周に塗布する。ここで、ごく少量のEpotek301エポキシをLiNb結晶の外周と筐体の内径にわたり塗布する。結晶表面は、望ましくは結晶とTi筐体との間のエポキシの負のメニスカスを得るために、Ti筐体上の面取り面の約1.25mm下にある。結晶およびTiは、両方の表面上に金をスパッタリングすることができるように、両方とも表面が清浄でエポキシが存在しない。実際には、エポキシビーズを塗布するために高倍率(20倍、好ましくはそれ以上)を使用する。一実施例では、エポキシは外周の3箇所に塗布し、重力と毛管現象を利用して外周にわたり流れさせることができる。さらなる実施例では、接着剤が外周全体にわたり流れるのを補助するための制御を向上させるために、微細ゲージワイヤ(26ゲージあたり)を鋭いQ−チップの端部に取り付けることができる。得られる構造体を室温で約12〜18時間硬化させる。密着手順を繰り返してもよく、構造体を室温で約18時間硬化させ、次いで65℃で約3時間インキュベートし後硬化を行う。エポキシが硬化した後、Ti筐体の縁をエポキシがないか検査する。縁で発見されたエポキシは除去する。
【0107】
理解されるように、ブロック530に示されるように、信号のリターンパスへの接地接続を、音響スタックの露出した金の縁に設ける。ここでも、当業者は、導電性インクおよびエポキシのスパッタリング、良導体との直接的な機械的接触等、そのような電極を取り付けるいくつかの方法を認識するだろう。
【0108】
超音波スタックの一実施例において、上述のように形成されたスタックは、次いで第3の低インピーダンス整合層およびレンズに接着することができる。整合性のよいレンズが選択される。上述のように、好ましい一実施形態において、レンズは音響インピーダンスに関して水とよく整合し、反響アーチファクトを低減することができる。さらに、レンズ材料は減衰性が低くてもよく、また極端な曲率なしに焦点効果を形成することができるように水とは十分異なる音速を有してもよい。超音波振動子用のレンズを形成するのに使用されている例示的材料は数多くある。さらに、多くの振動子設計は、レンズの代替として硬化圧電素子、またはアレイ構造を利用している。
【0109】
ラットを造影する目的では、残響アーチファクトがレンズ設計における大きな問題である。高周波数でより損失の低い、あるいはより屈折率の高い他の材料が存在するが、TPXは水との音響整合性を有する好ましいレンズ材料として認められている。TPXは、ポリオレフィン系の1つであり、ほとんどの樹脂と比較して水および組織に近接した音響インピーダンスの整合性を有する。TPXは約1.78MRから1.85MRの間の音響インピーダンスを有する。例えば、Alan R.Selfridge、「Approximate Material Properties in Isotropic Materials」 IEEE Trans.Sonics and Ultrasonics、Vol.SU−32、No.3、May 1985を参照されたい。水のインピーダンスはZ=1.5MRである。
【0110】
TPXはエポキシおよび他のほとんどの接着剤で接着するのが困難であることがよく知られている。産業において最もTPXが使用されるのは、剥離フィルムとしてである。つまり、TPXは、ほとんどの物質が粘着しない材料として認められている。いくつかの表面処理技術を使用して接着強さを高めることができるが、実際は、接着促進剤やプライマー、あるいはコロナエッチングを用いてさえも、TPXは、要求の厳しい用途において接着不可能であることが多く、機械的手段か、ヒートシールか、または溶接により結合されなければならない。Timothy Ritter、K.Kirk Shung、Xuecang Geng、Pat Lopath、Richard Tutwiler、およびThomas Shrout、「Proceedings of SPIE-Volu
me 3664 Medical Imaging 1999」 Ultrasonic
Transducer Engineering、K.Kirk Shung、Editor、June 1999、pp.67−75を参照されたい。
【0111】
造影振動子におけるレンズと音響スタックとの間の接着ラインは、使用中定期的に、数分での40℃を超える温度の揺れと急速な冷却を経験する。さらに、絶えず超音波エネルギーに曝される。接着が弱いと、一般に剥離および振動子中のデッドスポットが生じる。このため、振動子の組立には高品質の接着ラインが望ましい。
【0112】
例示的な高周波数超音波振動子では、レンズは常にスタックと接触したままである。わずかな剥離でも振動子のデッドスポットを生じる可能性がある。
【0113】
例示的な一実施例では、シアノアクリレート(CA)系接着剤がTPXレンズに接着される。例えばVerik AC77、いくつかのトルエン系プライマー等(ただしこれに限定することは意図されない)の適したプライマーを使用することにより、CAはTPXへの強固な接着を形成する。しかし、シアノアクリレートの硬化特性は非常に突発的であり、基板および環境条件に依存するため、CAは振動子スタックには使用されていない。高周波数超音波スタックの作製に使用される非常に薄い接着ラインで、接着剤の即座の硬化が突如生じる可能性がある。接着ラインスペーサの追加は、広い表面積に起因して材料の即時的な硬化を生じさせるため、CA接着剤に対しては使用されない場合が多い。同じ理由により、CAには粉末を投入することはできず、これによりさらに振動子製造の候補とはなりにくいものとなっている。さらに、この材料は標準的試験のための十分厚い断片では硬化できないため、CAの音響特性は文献に見つけることができない。加えて、音響的にCAのモデルとして使用可能な材料特性も、同様の理由により利用することができない。
【0114】
技術不足と当技術で知られた欠点にも関わらず、CAは狭い範囲の厚さにわたって硬化することができる。CAの硬化可能な範囲は、5MHzから60MHz以上にわたる周波数に対し、1/4波整合層の形成に使用することができる。CAの音響特性は、それを整合層として使用することで決定され、Sonic Concepts(米国ワシントン州ウッジンビル)から入手可能なKLMモデルに基づきPiezoCADソフトウェアを使用してモデルに関連付けられた。結果は、約2.5MR〜2.8MRの間の音響インピーダンスを有する整合層としてCAが使用可能であることを示した。
【0115】
TPXを1/4波整合システムに接着する1つの例示的方法は、CAを利用する。TPX層とCA層との間の接着を試験した結果、CA層とTPX層との間の界面は、少なくともTPX単体と同じ程度強力であった。しかし、上述の理由により、接着の厚さを制御することができず、空隙と不整合が起こりやすく、これにより組立の最終段階でほぼ完成されたトランスポンダスタックを台無しにする可能性があるため、スタックに直接接着するのは適していない。
【0116】
1つの例示的なプロセスにおいて、1/4波長の厚さの硬化CA層がTPXレンズ層の背面(平坦側)に設けられ、次いで形成された構造体が事前に形成されたスタックの上面に従来のエポキシで接着される。エポキシは、CA層に容易に接着し、したがってCA層がTPXレンズ層に接着される。このようにCA層は、スタックの上面からTPXレンズ層まで1/4波整合層を形成する。例示的なスタックの場合、スタックの上面は4.5MRの音響インピーダンスを有し、CAはZ=2.5〜2.8であり、TPXレンズ層はZ=1.8である。これにより、85%〜90%の−6dB帯域幅と、25MHz re1V/Vで約−41dBから−42dBの間の双方向挿入損失を有する振動子が得られる。
【0117】
一実施例において、ブロック534および536に示されるように、例えばVerik
PR40等のCA接着剤の若干量が、アルミ箔剥離層およびワイヤスペーサを使用してTPXレンズの背面に被覆される。実際には、剥離フィルムは平坦表面上(好ましくは箔が平坦となるよう真空プレート上)に置かれる。一態様では、アルミ箔は清浄で油分および水分が存在しない。ワイヤは剥離フィルム上にあるパターンで配置される。一態様では、ワイヤは、ワイヤが共通の頂点で交わらないように放射パターンに配置される。これらのワイヤは、CAの層のためのスペーサとして使用される。例示的な25MHzスタックでは、約25μm径のワイヤを使用して、得られる厚さが約23μm〜25μmであるCA層を形成する。これは、25MHz設計周波数振動子において約21μmから23μmの間であるCAの望ましい1/4波長の厚さより若干厚い。この点で、CA中での縦波伝播速度は約2100m/sから2200m/sの間と推定される。CA層が接着されたレンズ層をその下のスタックに貼り付けるために使用されたエポキシの接着性を向上させるためにCA層の表面を処理する役割も果たす後の研削プロセス中に、1〜3μmの余剰材料が除去される。
【0118】
実際には、TPXレンズ層の背面は、ブロック532に示されるように、表面の接着性を向上させるために適した粒度のSiC紙やすりで研削され、例えばVerik AC77、トルエン系プライマー等の適したCAポリオレフィンプライマーで処理される。次いでレンズの背面は、ブロック536に示されるように、実質的に表面全体が濡れるように大量のCAで被覆される。CAは、レンズの背面に比較的厚いメニスカスを形成させた場合は急速に硬化することはないため、大量のCAによって、処理された剥離フィルム/ワイヤ構成上にレンズを設置するために十分な時間が得られる。
【0119】
続いて、CAが塗布されたレンズ層は剥離フィルム上に設置され、ブロック538に示されるように、レンズがその下の剥離フィルムとレンズ層との間でワイヤを「挟み込む」ように軽く圧迫される。約2時間硬化した後、レンズおよび付着した剥離フィルムは真空プレートから取り外され、ブロック542に示されるように剥離フィルムがレンズ層から剥がされる。次に、ブロック540に示されるようにCA層を約24時間硬化させ、ステップ544に示されるように、その後SiC紙やすりで1〜3μmのCAを除去し、新たに形成されたCA層の表面を研削してスタックへの接着に備える。
【0120】
ブロック548、550および552に示されるように、レンズ層/CA層を形成した複合体を振動子スタックに接着する。一実施例では、CA層の音響インピーダンスに近い音響インピーダンスの値を有するEpotek301等の適した低粘度室温硬化エポキシを使用して、レンズ層/CA層複合体をその下のスタックに接着する。一態様では、エポキシの硬化中に少なくとも約100kPaの圧力を維持するために、固定具を使用してレンズを適所に保持する。エポキシを上記のような薄い接着ラインで硬化させるために、外部熱源を使用した高温でのさらなる後硬化を行い、これにより5μm未満、好ましくは1μm〜3μmの接着ラインの生成が確実となる。エポキシの音響インピーダンスはCAの音響インピーダンスと類似しているため、この接着層によるスタックへの寄与は、あるとしてもごくわずかであることが理解されるだろう。
【0121】
上述の例示的方法は、圧電層の中心周波数の範囲が約5MHzから約60MHz以上である振動子スタックを形成するために使用することができる。そのような振動子は、高い発振周波数(20MHz以上)を使用して、ラットを含む小動物の造影に使用することができる。
【0122】
(実施例2:例示的な広帯域幅(85〜95%−6dB帯域幅)のTPXレンズ付LiNb振動子の一般的な高周波数設計)
表1は、例示的な振動子スタックを構成する異なる層を示す。このスタック設計は、中心周波数が約20MHzから60MHzを超える振動子に使用することができる。
【0123】
設計中心周波数fは、デバイスの中心周波数を低減させる質量負荷を相殺するために、デバイスの所望の動作中心周波数fよりも高くなるように選ばれる。fは、レンズや空気の裏打ちがない状態で、空気中でデバイスが動作する周波数である。この例示的な設計においては、fは、最終的な振動子の所望の中心周波数の約1.15から1.25倍となるよう選ばれる。例えば、20MHzデバイスでは、以下の表1に示される関係のためにf=約23〜25MHzが選ばれる。
【0124】
【表1】

本出願を通して、様々な出版物を参照した。本発明が関連する最新技術をより十分に説明するために、これらの出版物の開示は参照することによりその全体が本願に組み入れられる。
【0125】
添付の請求項の範囲およびそれらの等価物から逸脱しない範囲での修正は当業者には明らかであるため、上述の詳細な説明は、本発明の例示的な実践を理解するためだけに提供され、不必要な限定として理解されるべきではない。
【0126】
本発明の上記説明は、現在知られている最善の実施形態において本発明を可能とする教示として提供される。この目的のために、関連技術の当業者は、本明細書で説明される本発明の様々な態様に多くの変更を行っても、本発明の有益な結果を得ることができることを認識し理解するだろう。また、本発明の望ましい便益のいくつかは、本発明の特徴のいくつかを、他の特徴を利用することなく選択することにより得られることが明らかであろう。以下の請求項における対応する構造、材料、行為、ならびにすべての手段またはステップおよび機能要素の等価物は、具体的に請求されるような他の請求される要素と組み合わせて機能を実行するための構造、材料、または行為を含むことを意図する。
【0127】
別段に明示されていない限り、本明細書に記載されるいかなる方法についても、特定の順番でステップが実行されなければならないと解釈されることは全く意図されない。したがって、方法クレームが実際にそのステップが従うべき順番を列挙しておらず、あるいはステップが特定の順番に限定されるべきであることが請求項または明細書において具体的に述べられていない場合、いかなる点でも順番を暗示する意図は全くない。これは、例えば、ステップの配置または動作フローに関する論理的問題、文法構成または句読点から導かれる単純な意味、および明細書中に記載された実施形態の種類の数等、可能ないかなる非明示的解釈基準に対しても成り立つ。
【0128】
したがって、当業者は、本発明に対する多くの修正および適応が可能であり、またある状況においては望ましくさえある可能性があり、それらも本発明の一部であることを認識するだろう。本明細書で開示される本発明の仕様および実践を考慮して、本発明の他の実施形態も当業者には明らかとなるだろう。このように、上記の説明は、本発明の原理の例示として提供されるがそれを限定するものではない。明細書および実施例は例示のみとしてみなされ、本発明の真の範囲および精神は、以下の請求項によって示されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公開番号】特開2013−81241(P2013−81241A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−279660(P2012−279660)
【出願日】平成24年12月21日(2012.12.21)
【分割の表示】特願2008−557386(P2008−557386)の分割
【原出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(504461529)ビジュアルソニックス インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】