説明

超音波検査装置

【課題】超音波探傷検査時において高精度な走査経路情報を用いることができる超音波検査装置を提供する。
【解決手段】スキャナ機構の走査台に設置された前記被検査物の表面までの距離を光学的手段を用いて計測した点群からなる計測データを取得する光学的計測部4と、点群からなる計測データを用いて、スキャナ機構の座標系で表された位置情報を持った点群からなる形状データを生成する形状データ生成部36と、形状データを用いて、超音波トランスデューサの走査経路を構成する通過点を求め、この通過点から通過点の法線ベクトルと超音波トランスデューサの開口面が直交し、かつ通過点と超音波トランスデューサの開口面中心との距離が一定となる超音波トランスデューサの走査経路情報を生成する経路情報生成部37とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波検査装置に係り、特に超音波探傷検査時において高精度な走査経路情報を用いることができる超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物や部品内の欠陥、ボイドや接合部の剥がれ等の状態の検査を行うため、これら状態の可視化が可能な超音波検査装置が用いられる。この超音波検査装置は、マトリクス状やリニア状などのアレイ型に形成された圧電変換部から構成される超音波トランスデューサを用いて被検査物の走査を行い、欠陥などの検査を行う。
【0003】
超音波検査装置は、超音波トランスデューサを駆動させるスキャナ機構を備えている。このスキャナ機構は、X軸、Y軸、Z軸、およびA軸(X軸方向の回転軸)、B軸(Y軸方向の回転軸)、C軸(Z軸方向の回転軸)などの所要の軸を備えた直交ロボットや、アーム機構を基本に構成された産業用ロボットなどで構成される。スキャナ機構は制御機構などの制御に基づき駆動することで、スキャナ機構に取り付けられた超音波トランスデューサが被検査物表面上の所定範囲を自動的に探傷する。
【0004】
超音波トランスデューサによって自動的に所定範囲を探傷するためには、スキャナ機構の走査経路情報を事前に生成しておく必要がある。走査経路情報は、被検査物の表面形状に基づいて、例えば超音波トランスデューサの開口幅を1回の走査幅として生成される。
【0005】
走査経路情報の生成方法として、被検査物の形状設計データに基づいて、計算機ソフトウエアを用いて事前に生成する方法がある。この方法は、比較的容易に走査経路情報を作成することができるが、作成された走査経路情報は理想的な形状設計データに基づく走査経路情報であるため、被検査物の製造時における工作精度に起因して、実際の被検査物の形状と形状設計データ上の被検査物との不一致が発生する可能性がある。また、超音波探傷検査時においては、スキャナ機構内の所定位置に被検査物を設置して行うが、被検査物が複雑な形状である場合、高い精度の再現性で所定位置に設置することは困難であった。
【0006】
また、他の走査経路情報の生成方法として、被検査物の表面上でスキャナ機構によって超音波トランスデューサを駆動させることにより、実際の走査経路上の通過点を一点ごと教示・登録し、このスキャナ機構の通過点を走査経路としてつなげたものを走査経路情報として生成する方法がある。この方法は、スキャナ機構を走査経路上の通過点ごとに駆動させることで、スキャナ機構の走査経路を教示・登録するため、膨大な時間および作業が必要であった。また、特にスキャナ機構に設けられた駆動部の構成が複雑である場合には、非常に複雑な手順および操作を要する方法であった。
【0007】
ここで、高精度な超音波検査を行うためには、超音波トランスデューサが発信する超音波を被検査物の表面に略垂直に入射させる必要がある。また、開口合成法で探傷を行う超音波検査装置については、超音波トランスデューサと被検査物の表面との距離を一定に保つことが必要である。
【0008】
そこで、被検査物と超音波トランスデューサとを一定距離に保持しつつ、被検査物に対し一定角度で超音波を入射することができる超音波探傷装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0009】
この超音波探傷装置は、スキャナ機構の走査台に対し略垂直方向の駆動軸の下端に距離センサを設け、被検査物の上部で距離センサをスキャンさせる。スキャンにより得られた被検査物と距離センサとの距離の測定データに基づき、スキャナ機構の座標データである被検査物の形状データを求め、メモリに記憶する。また走査時においては被検査物の形状データの各点上を通過点とした走査経路情報を作成し、駆動機構をオープンループ制御するものであった。
【0010】
また、被検査物の形状データをスプライン関数を用いて補間を行うことで取得し、超音波トランスデューサの姿勢制御を行う自動超音波探傷方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0011】
この自動超音波探傷方法は、取得した距離データに対しスプライン関数を用いて補間を行うことで、形状データの作成に要する時間、手間を低減するものであった。
【特許文献1】特開昭63−309852号公報
【特許文献2】特開平5−45347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に示す超音波探傷装置は、被検査物の形状データを得るためには、あらかじめ被検査物上の走査経路の通過点を含む形状データを取得する必要があるため、多大な時間がかかるという問題点があった。また、走査経路情報を生成した後に走査経路を変更したい場合には、再度形状データを取得する必要があった。
【0013】
また、特許文献2に示す自動超音波探傷方法は、スプライン関数による補間を用いて行うことで少ない点数の距離データで形状データを作成することができたが、より高精度な走査経路情報を生成するためには、なるべく補間の必要性が生じないように距離データの点数を多くとることが必須となっていた。
【0014】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、被検査物の表面上の多数の点群である形状データに基づき高精度かつ効率よく走査経路情報を生成することで、高精度な超音波探傷検査の実施が可能な超音波検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る超音波検査装置は、上述した課題を解決するために、前記スキャナ機構の走査台に設置された前記被検査物の表面上までの距離を光学的手段を用いて計測して点群からなる計測データを取得する光学的計測部と、前記光学的計測部で取得された前記点群からなる計測データを用いて、前記スキャナ機構の座標系で表された位置情報を持った点の点群からなる前記被検査物の表面の形状データを生成する形状データ生成部と、前記形状データ生成部で生成された前記形状データを用いて、前記超音波トランスデューサの走査経路を構成する前記被検査物の表面上の通過点を求め、前記被検査物の表面上の通過点の法線ベクトルと前記超音波トランスデューサの開口面が直交し、かつ前記通過点と前記超音波トランスデューサの開口面中心との距離が一定である前記超音波トランスデューサの走査経路情報を生成する経路情報生成部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る超音波検査装置は、被検査物の表面の形状データを生成し、この形状データに基づき高精度かつ効率よく走査経路情報を生成することにより高精度な超音波探傷検査の実施が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る超音波検査装置の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本実施形態における超音波検査装置1の一例である概略的な全体構成図である。
【0019】
この超音波検査装置1は、マトリクス状やリニア状などのアレイ型に形成された圧電変換部23から構成される超音波トランスデューサ2を、スキャナ機構3を用いて被検査物の表面を走査することにより、被検査物の内部欠陥やボイド、剥離を開口合成法を用いて可視化することができる。
【0020】
超音波検査装置1は、超音波トランスデューサ2、スキャナ機構3、光学的計測装置4、および探傷処理装置6とスキャナ機構駆動装置7と経路情報生成装置8とから構成される装置本体5から構成される。
【0021】
また、装置本体5には超音波探傷検査により得られた2次元または3次元探傷画像などを表示する表示装置9、および各種指示の入力を受け付ける入力装置10が構成される。表示装置9は、表示部、演算部、記憶部等で構成されており液晶ディスプレイ、LED(発光ダイオード)、EL(Electro Luminescence)、VFD(蛍光表示管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)などのフラットパネルディスプレイを使用することができる。また、入力装置10は、キーボードやマウスなどで構成される。
【0022】
図2は、超音波トランスデューサ2および装置本体5に設けられる探傷処理装置6を説明する機能構成図である。
【0023】
探傷処理装置6は、駆動信号を発生する信号発生部15、駆動素子選択部16、信号検出回路17、信号処理部18、制御回路19を備える。
【0024】
信号発生部15は、超音波トランスデューサ2を駆動させる駆動信号を発生する。
【0025】
駆動素子選択部16は、信号発生部15からの駆動信号を選択し、超音波トランスデューサ2の圧電振動子(圧電変換素子)20を選択的に駆動させる。
【0026】
信号検出回路17は、超音波トランスデューサ2から発振される超音波が被検査物21の検査領域22(ターゲット領域)に照射され、この検査領域22からの反射エコーを電気信号として超音波トランスデューサ2を介して検出する。
【0027】
信号処理部18は、信号検出回路17で検出された反射エコーの電気信号を増幅、A/D変換、可視化などの一連の処理を行い超音波画像情報を生成する。
【0028】
表示装置9は、表示部、演算部、記憶部等で構成されており、信号処理部18で処理された超音波画像情報をもとに必要に応じた2次元または3次元探傷画像を生成して表示する。
【0029】
制御回路19は、信号発生部15と駆動素子選択部16と信号検出回路17と信号処理部18と表示装置9との動作を制御し、超音波の発信、受信、画像化、表示等の一連の動作を制御する。
【0030】
制御回路19は、入力装置10から検査開始の指示入力を受け付けると、被検査物21の検査領域22における超音波画像情報を生成するために、先ず信号発生部15に超音波トランスデューサ2の駆動信号の発生を指示する。また、制御回路19は、超音波トランスデューサ2を構成する複数の圧電振動子20から駆動信号を供給する圧電振動子20を選択するため、駆動素子選択部16に駆動信号を供給する圧電振動子20を選択して指示する。
【0031】
圧電振動子20が駆動されると被検査物21の検査領域22に超音波が発信され、この超音波に基づく反射エコーが圧電振動子20で受信されて電気信号に変換される。この反射エコーは複数の圧電振動子20により同時に受信されるが、制御回路19が信号検出回路17に指示して圧電振動子20を選択することにより、超音波画像情報を生成するために必要な反射エコーを選択する。
【0032】
また、制御回路19は、超音波画像情報化(可視化)をするため、信号処理部18に反射エコーの電気信号の増幅、A/D変換、可視化などの一連の処理を指示する。さらに、制御回路19は、可視化した情報を表示装置9に表示するための制御指令を送る。
【0033】
入力装置10は、制御回路19に検査の開始、終了、画像切り替え等の指示入力、あるいは検査条件の設定入力を行い超音波検査装置1の操作を実行させる。
【0034】
つぎに、超音波トランスデューサ2について説明する。
【0035】
超音波トランスデューサ2は、圧電変換素子としての多数の圧電振動子20をm行n列のマトリクス状に整列配置された圧電変換部23を有し、この圧電変換部23はマトリクスセンサである超音波センサを構成している。圧電変換部23は圧電振動子20をマトリクス状に配設する代りに、一列にあるいは十字のライン状(アレイ状)にアレイ配列し、アレイセンサを構成してもよい。
【0036】
超音波トランスデューサ2の各圧電振動子20には、信号発生部15で発生した駆動信号が駆動素子選択部16により選択されて加えられる。駆動素子選択部16の選択により各圧電振動子20の駆動順序が1個ずつあるいは複数個ずつ決定され、各圧電振動子20は所要の駆動タイミングで駆動されて超音波を発振させる。
【0037】
また、各圧電振動子20から発振された超音波は、被検査物21の検査領域22に照射され、検査領域22の密度的境界層から一部が反射して反射エコーとなる。この反射エコーは、超音波センサである超音波トランスデューサ2(マトリクスセンサ)で受信される。
【0038】
超音波トランスデューサ2は超音波センサ面である発受信面側、具体的には、被検査物21側に液体あるいは固体の音響伝播媒体であるシュー部材24が密着される。シュー部材24と被検査物21との間には超音波の音響的整合をとるカップラント25が設けられる。カップラント25は、揮発性の低いゲル状の液体で形成される。音響伝播媒体であるシュー部材24が水などの液体の場合には、カップラント25は不要となる。
【0039】
超音波トランスデューサ2の各圧電振動子20から順次発振された超音波は、音響伝播媒体としてのシュー部材24を通り、カップラント25を経て被検査物21の検査領域22内部に入射され、検査領域22の各境界層で反射する。
【0040】
被検査物21の表面21a、境界面、底面21b、内部欠陥26等の各境界層で反射された超音波の反射エコーUは、被検査物21からシュー部材24を経て超音波トランスデューサ2の各圧電振動子20に時間差をもってそれぞれ受信され、各圧電振動子20を振動させて電気信号(電気エコー信号)に変換される。この電気エコー信号は、続いて信号ケーブル27を介して信号検出回路17に入力されて圧電振動子20毎に検出される。
【0041】
信号検出回路17は信号ケーブル27を介して超音波トランスデューサ(超音波センサ)16の各圧電振動子20に整列状態で接続され、圧電変換部23の各圧電振動子20で発生する電気エコー信号は、信号ケーブル27を介して信号検出回路17に導かれる。また、この信号ケーブル27を利用して信号発生部15からの駆動信号が駆動素子選択部16を介して圧電変換部23の各圧電振動子20に導かれる。
【0042】
この超音波検査装置1の探傷処理装置の作用について説明する。
【0043】
超音波トランスデューサ2の各圧電振動子20のうち、m行n列目の圧電振動子20に駆動信号が加えられると、この圧電振動子20が作動して圧電体としての超音波が発生し、この超音波を発振させる。発振された超音波はシュー部材24やカップラント25を経て被検査物21の検査領域22に照射される。
【0044】
被検査物21の検査領域22に照射された超音波は、検査領域22の密度的境界層から一部が反射して反射エコーとなる。この反射エコーUは、カップラント25、シュー部材24を通って超音波トランスデューサ2に戻され、各圧電振動子20に時間差を持ってそれぞれ受信される。各圧電振動子20による圧電変換により、反射エコーUは電気信号(電気エコー信号)となって信号検出回路17に信号ケーブル27を介して送られ、検出される。
【0045】
信号検出回路17で検出された電気エコー信号のうち、検査に必要な複数の電気エコー信号は、信号処理部18に導かれる。信号処理部18は、導かれた電気エコー信号を増幅、A/D変換、可視化などの一連の処理を行い、超音波画像情報を生成する。生成された超音波画像情報は、表示装置9に導かれ、画像化処理され2次元または3次元探傷画像が表示される。
【0046】
図3はスキャナ機構3および光学的計測装置4を説明する構成図である。
【0047】
スキャナ機構3は、被検査物21を設置する走査台3aと、走査台3aの一辺に略垂直に固定される固定部3bと、固定部3b上をX軸方向に駆動するX軸駆動部3cと、Y軸方向およびZ軸方向に駆動するYZ軸駆動部3dから構成される。また、YZ軸駆動部3dの下端には、X軸方向の回転軸であるA軸周りに回動するA軸回動部3e、および超音波トランスデューサ2が順次構成される。なお、X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交する軸である。
【0048】
スキャナ機構3のX軸駆動部3c、YZ軸駆動部3dおよびA軸回動部3eは、装置本体5のスキャナ機構駆動装置7から送信された制御信号に基づき、X軸、Y軸、Z軸およびA軸方向に駆動する。スキャナ機構駆動装置7からスキャナ機構3に送信される制御信号は、装置本体5の経路情報生成装置8から取得される走査経路情報や、入力装置10から入力された情報に基づき生成される。
【0049】
また、スキャナ機構3の走査台3aには被検査物21が設置され、X軸駆動部3c、YZ軸駆動部3dおよびA軸回動部3eの駆動に応じて、超音波トランスデューサ2が被検査物21の表面上の走査を行う。超音波トランスデューサ2が被検査物21の表面上の走査を行うには、あらかじめ走査経路情報を作成する必要がある。
【0050】
走査経路情報30とは、図3における被検査物21上に示されたX軸方向およびY軸方向に示す矢印によって示されるものであり、スキャナ機構のYZ軸駆動部3dの下端に固定された超音波トランスデューサ2が被検査物21の走査を行う際に移動する経路に関する情報である。スキャナ機構駆動装置7は、この走査経路情報30に基づきX軸駆動部3c、YZ軸駆動部3dおよびA軸回動部3eを駆動させることで、超音波トランスデューサ2は被検査物21を自動的に走査する。
【0051】
ここで、従来の走査経路情報は被検査物の形状設計データに基づいて、計算機ソフトウエアにより作成する方法、あるいは実際にスキャナ機構3を駆動させることで走査経路上の通過点の一点一点を教示・登録する方法を用いて生成することが一般的であった。また、走査経路情報は、被検査物21の表面に対し超音波を垂直に入射でき、かつ超音波トランスデューサ2の開口面中心と被検査物21の表面との距離が一定となるように作成する必要があるが、上記いずれの方法を用いても、高精度な走査経路情報を生成することは困難であった。
【0052】
本発明の超音波検査装置1では、被検査物21がスキャナ機構3に設置された状態で、光学的計測装置4により被検査物21の表面の形状を計測し、形状データの点群を微細間隔で求めることで、高精度な走査経路情報を作成することができる。このため、走査経路情報に基づきスキャナ機構3を制御することにより、図3に示すような円筒面を表面とする被検査物21の表面に対して、超音波トランスデューサ2から発信される超音波を垂直に入射でき、かつ超音波トランスデューサ2の開口面中心と被検査物21の表面との距離が一定となるように走査することが可能となる。
【0053】
光学的計測装置4は、スキャナ機構3の固定部3bにZ軸方向に設けられた軸31に設置され、スキャナ機構3の2次元面上である走査台3a上にレーザ光Lを照射可能なように構成される。光学的計測装置4は、たとえば3次元レーザスキャナなどの一定面積を高速に走査可能な装置で構成される。
【0054】
図4は、光学的計測装置4、および装置本体5の経路情報生成装置8を説明する機能構成図である。
【0055】
光学的計測装置4は、経路情報生成装置8の駆動制御部35に対し入力装置10から入力された指示に基づきレーザ光Lを2次元面上に照射し、走査台3aに設置された被検査物21の表面上の照射点までの距離を非接触で計測し、計測データを取得する。計測データは、以後に行う走査経路情報の生成処理において高精度な走査経路情報を生成するため、被検査物21の表面上に多数かつ微細な間隔の点群からなる計測データを取得することが望ましい。計測データは、X軸方向にM点、Y軸方向にN点の計測データを取得し、各点を(Pi,j)(i=1,2,・・・,M、j=1,2,・・・,N)とする。光学的計測装置4から取得された各点(Pi,j)の計測データは、経路情報生成装置8に送信され計測データ記憶部40に格納される。
【0056】
図4に示すように、装置本体5の経路情報生成装置8は、形状データ生成部36、経路情報生成部37、駆動制御部35、補正処理部38および記憶部39から構成される。また、記憶部39は、計測データ記憶部40、形状データ記憶部41および経路情報記憶部42から構成される。なお、補正処理部38の詳しい説明については、後述する。
【0057】
形状データ生成部36は、光学的計測装置4から送信され、計測データ記憶部40に記憶された点群である計測データ(Pi,j)を読み出し、被検査物21の表面の形状データを生成する。
【0058】
図5(A)は、形状データ45の点群を表した図である。
【0059】
形状データ生成部36による形状データ45の生成は、光学的計測装置4から被検査物21の表面上の照射点までの距離に関する計測データを、スキャナ機構3の座標系、つまり互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸から構成される座標値(X,Y,Z)へ変換処理を行うことにより実現される。スキャナ機構3の座標系で表された被検査物21の表面の形状データ45の点群の位置情報は、形状データ記憶部41に格納される。
【0060】
経路情報生成部37は、形状データ生成部36で生成され形状データ記憶部41に格納された形状データ45を読み出し、スキャナ機構3が被検査物21上を駆動するための走査経路情報を生成する。走査経路情報は、超音波トランスデューサの開口幅に直行するX軸方向に向かって必要な長さを走査し、その後超音波トランスデューサの開口幅分Y軸方向にシフトして逆向きのX軸方向に向かって必要な長さを走査する動きの組み合わせで形成される。走査経路情報は、図5(A)に示す形状データ45の点群上、または点群上の間を通過するように生成され、走査経路30が点群上を通過する場合には、通過する点群に与えられている座標値(X,Y,Z)を走査経路上の通過点とする。
【0061】
一方、走査経路30が点群上の間を通過する場合、形状データ45の点群中のうち走査経路30に隣接する点の間で補間演算を行い、走査経路情報を生成するために必要な通過点の位置情報である座標値(X,Y,Z)を走査経路の通過点として取得する。
【0062】
図5(B)は、図5(A)に示した形状データ45の点群の一部を抜き出して拡大した図である。
【0063】
具体的には、走査経路30に隣接する三つの点群間(例えば、(Pi,j+1)、(Pi+1,j)、(Pi+1,j+1))で形成される三角形の辺と走査経路30とが交わる点((PPm,n+1)、(PPm,n+2))の座標値(X,Y,Z)を、この点群間の線形補間により求める。また、他の通過点である(PPm,n)の座標値(X,Y,Z)についても同様に、三角形を構成する三つの点群間((Pi,j)(Pi,j+1)、(Pi+1,j))の線形補間により求める。経路情報生成部37は、このような線形補間を、走査経路と三つの点群間で形成される三角形の辺とが交わる各通過点について行い、得られた各通過点を走査経路順につなげることで、走査経路情報を得ることができる。
【0064】
なお、通過点の補間演算は、3点間のみならず2点間または3点間以上で行ってもよい。
【0065】
また、被検査物21の表面に対して超音波トランスデューサ2から発信される超音波を略垂直に入射し、かつ超音波トランスデューサ2の開口面中心との距離を常に一定に保つため、走査経路30を形成する各通過点の法線ベクトル46を求める。走査経路30を形成する各通過点の法線ベクトル46には、上述した三つの点群間で形成される三角形の法線ベクトル47を求め、この法線ベクトル47を三角形の辺と走査経路30とが交わる点、つまり走査経路を形成する各通過点の法線ベクトル46とみなして適用する。なお、計測データの点群を微細間隔で取得することで、三角形の法線ベクトル47を各通過点の法線ベクトル46とみなしても、大きな誤差の発生を回避することができる。
【0066】
経路情報生成部37は、このようにして求められた各通過点の法線ベクトル46を用いて、走査経路30上の各通過点の法線ベクトル46と超音波トランスデューサ2の開口面が常に直交するようなA軸回動部3eの回転量を求める。また、超音波トランスデューサ2の開口面中心と各通過点の距離が常に一定となるように通過点の位置情報を決定する。
【0067】
よって、被検査物21の表面に対して超音波トランスデューサ2から発信される超音波を垂直に入射することができ、かつ超音波トランスデューサ2の開口面中心と被検査物21の表面との距離が常に一定となるような走査経路情報を生成することができる。
【0068】
このように生成された走査経路情報は、スキャナ機構3の座標系における座標値(X,Y,Z)およびA軸回動部3eの回転量で与えられ、経路情報生成装置8の経路情報記憶部42に格納される。装置本体5のスキャナ機構駆動装置7はこの経路情報記憶部42に格納された走査経路情報を読み込むことで、スキャナ機構3を制御する。
【0069】
次に、図6を用いて本実施形態における超音波検査装置1を用いた超音波探傷検査について説明する。
【0070】
超音波検査装置1による超音波探傷検査は、被検査物21がスキャナ機構3の走査台3aに設置され、入力装置10から入力された検査開始の指示に基づき開始される。
【0071】
ステップS1において、光学的計測装置4は、走査台3aに設置された被検査物21に対しレーザ光Lを照射し、被検査物21の表面上の照射点までの距離を非接触で計測した点群を取得し、計測データとして計測データ記憶部40に格納する。計測データの点群は、高精度な走査経路情報を生成するために微細な間隔で取得することが望ましい。
【0072】
ステップS2において、形状データ生成部36は、計測データ取得ステップS1において取得され、計測データ記憶部40に格納された計測データを読み込み、被検査物21表面のスキャナ機構3の座標系における座標値(X,Y,Z)に変換された位置情報を持った形状データ45を生成する。生成された形状データ45は、形状データ記憶部41に格納される。
【0073】
ステップS3において、経路情報生成装置8の経路情報生成部37は、形状データ生成ステップS2において形状データ記憶部41に記憶された形状データを読み込み、超音波トランスデューサ2が被検査物21の走査を行う走査経路情報を生成し、記憶部39の経路情報記憶部42に格納する。走査経路情報の生成は、形状データ45の点群を用いて補間演算を行い、通過点の位置情報および法線ベクトル46を求めた後、各通過点の法線ベクトル46と超音波トランスデューサ2の開口面が直交し、かつ超音波トランスデューサ2の開口面中心と被検査物21の表面との距離が常に一定となるような通過点の座標(X,Y,Z)およびA軸回動部3eの回転量を求め、これを走査経路順につなぐことで、走査経路情報が生成される。
【0074】
ステップS4において、スキャナ機構駆動装置7は入力装置10などからの入力に基づき、経路情報生成ステップS3において経路情報記憶部42に格納された走査経路情報30を読み込み、この走査経路情報30に基づきスキャナ機構3のX軸駆動部3c、YZ軸駆動部3dおよびA軸回動部3eを駆動させる。
【0075】
ステップS5において、超音波トランスデューサ2は、スキャナ機構3のX軸駆動部3c、YZ軸駆動部3dおよびA軸回動部3eの駆動に応じて、被検査物21の表面上の走査を行う。超音波トランスデューサ2は、装置本体5の探傷処理装置6の制御により被検査物21の表面上を移動して走査する。
【0076】
ステップS6において、走査ステップS5で行われた走査により得られた被検査物21の2次元または3次元の探傷画像を表示装置9に表示し、超音波探傷検査は終了する。
【0077】
この超音波検査装置1によれば、光学的計測装置4を用いることで、実際に超音波探傷検査を行うスキャナ機構3の走査台3a上に被検査物21が設置された状態で、被検査物21の表面上の微細な間隔の点群を形状データ45として生成することができる。このようにして得られた形状データ45からは、従来のように被検査物21の製作誤差、設置誤差等を含まない、極めて精度の高い走査経路情報を生成することができる。
【0078】
また、光学的計測装置4を用いて得られた形状データ45が、超音波トランスデューサ2の走査経路30上に存在しない場合であっても、微細な間隔の点群が形状データ45として生成されるため、走査経路上に隣接する形状データ45の点群を簡易な方法で補間することで走査経路30上の座標値を大きな誤差を発生することなく求めることができ、高精度な走査経路情報を生成することができる。
【0079】
さらに、高精度な走査経路情報に基づき、被検査物21の表面に対して超音波トランスデューサ2から発信される超音波を垂直に入射することができ、かつ超音波トランスデューサ2の開口面中心と被検査物21の表面との距離を一定に保つことができるため、さらに高精度な超音波探傷検査を実施することができる。
【0080】
さらにまた、2次元面上でレーザなどの光学的計測装置4を用いて計測データを取得することで、従来被検査物21の表面上の計測データの取得に必要であった膨大な時間を費やすことを回避でき、効率よく超音波探傷検査を行うことができる。
【0081】
つまり、本実施形態における超音波検査装置1は、高精度な走査経路情報に基づきスキャナ機構3を精度よく駆動させることができ、超音波探傷検査による欠陥26などの2次元または3次元探傷画像の精度を向上させることができる。
【0082】
次に、光学的計測装置4から得られた計測データに基づいて生成された走査経路情報を補正データとして用い、あらかじめ他の方法で生成された走査経路情報の補正処理を行い、超音波探傷検査に用いられる高精度な走査経路情報を生成する場合について説明する。
【0083】
あらかじめ走査経路情報を生成する他の方法としては、実際にスキャナ機構を被検査物上で駆動させながら走査経路上の通過点の一点一点を教示・登録することで走査経路情報を生成する方法、あるいは被検査物の形状設計データに基づいて、計算機ソフトウエアにより走査経路情報を生成する方法があった。
【0084】
また、走査経路情報は、被検査物21の表面に対し超音波を垂直に入射でき、かつ超音波トランスデューサ2の開口面中心と被検査物21の表面との距離が一定となるように生成する必要がある。しかし、上記いずれの方法で生成された走査経路情報を用いても、走査を高精度に実現することは困難であった。
【0085】
そこで、このような方法で得られた走査経路情報に対し、本実施形態における超音波検査装置1を用いて補正処理を行うことで、不十分であった走査経路情報の精度を向上させることができる。
【0086】
走査経路生成装置8の補正処理部38は、光学的計測装置4を用いて被検査物21の一部に対して走査経路情報を生成したものを補正データとし、あらかじめ生成された他の走査経路情報の補正処理を行う。
【0087】
本実施形態における補正処理では、被検査物21の一部の一例として、被検査物21の対向する両端部の走査経路情報をそれぞれ求める。また、あらかじめ生成された他の走査経路情報の一例として、被検査物の形状設計データに基づいて計算機ソフトウエアにより生成された走査経路情報を適用する。
【0088】
図7は、補正処理におけるデータの流れを説明する図である。
【0089】
光学的計測装置4および経路情報生成装置8は、図6で説明した超音波探傷検査と同様に、計測データ取得ステップS1〜走査経路情報生成処理S3までの各種処理を、走査台3aに設置された被検査物21の一部に対して行い、補正データとしての走査経路情報51(以下、補正データ51という。)を生成する。補正データ51は、補正処理部38に送信され、補正処理部38は補正データ51を受け付ける。
【0090】
一方、補正処理部38は、入力装置10などから入力された、あらかじめ他の方法で生成された走査経路情報50(以下、走査経路情報50という。)を受け付ける。
【0091】
図8は、補正データ51と走査経路情報50を受け付けた補正処理部38で行われる走査経路情報の補正処理を説明するフローチャートである。
【0092】
ステップS11において、補正処理部38は、補正データ51と、これに対応する走査経路情報50中の走査経路情報を比較する。具体的には、補正処理部38は、被検査物の対向する両端部の走査経路情報を比較する。
【0093】
ステップS12において、補正処理部38は、比較ステップS11において行った比較に基づいて、補正データ51と走査経路情報50との差分を求める。
【0094】
ステップS13において、補正処理部38は、差分取得ステップS12において取得した差分に基づき、走査経路情報50全体の走査経路について補間処理を行い、補正された走査経路情報を生成する。補正された走査経路情報は、経路情報生成装置8の経路情報記憶部42に格納されることで、補正処理は終了する。
【0095】
この超音波検査装置1によれば、あらかじめ他の方法で生成された走査経路情報であっても、実際の超音波探傷検査に合致した走査経路情報に基づく補正データを生成することができる。これにより、被検査物に対して高精度な走査を実現することができなかった走査経路情報に対しても、補正データにより補正処理を行うことにより高精度な走査経路情報に補正を行うことができる。
【0096】
また、あらかじめ形状設計データなどに基づき生成された走査経路情報は、製造時における工作精度に起因して、実際の被検査物の形状と形状設計データ上の被検査物との不一致が発生することが考えられるが、補正処理を行うことで製作誤差や設置誤差などを含まない精度の高い走査経路情報を生成することができる。
【0097】
つまり、本実施形態における超音波検査装置1は、補正処理によって補正された高精度な走査経路情報に基づき、スキャナ機構3を精度よく駆動させることができ、超音波探傷検査による欠陥26などの2次元または3次元探傷画像の精度を向上させることができる。
【0098】
次に、超音波探傷検査に必要な走査経路情報を生成するために用いられる形状設計データを補正する補正データ取得処理について説明する。
【0099】
上述したように、従来、走査経路情報は被検査物の製造時の形状設計データに基づいて、計算機ソフトウエアにより走査経路情報を生成する方法を用いて行われていた。
【0100】
この形状設計データに基づき走査経路情報を生成する場合、被検査物の製造時における工作精度に起因して、実際の被検査物の形状と形状設計データ上の被検査物との不一致が発生することが考えられる。このような不一致が発生している形状設計データを用いて生成された走査経路情報により、精度の良い超音波探傷検査を実現することはできなかった。
【0101】
そこで、本実施形態における超音波検査装置1を用いて、正確な被検査物の形状データを生成し、この形状データを用いて形状設計データを補正し補正後の形状設計データに基づいて走査経路情報を生成することで、計算機ソフトウエアにより走査経路情報を生成するという従来から存在した走査経路情報の生成方法を用いても、精度の高い走査経路情報を生成することができる。
【0102】
図9は、形状設計データの補正処理におけるデータの流れを説明するフローチャートである。
【0103】
図6で説明した超音波探傷検査と同様に、計測データ取得ステップS1〜形状データ生成処理S2までの各種処理を走査台3aに設置された被検査物21に対して行い得られた点群の形状データ55(以下、補正データ55という。)を生成する。
【0104】
生成された補正データ55、および入力装置10などから入力を受け付けた被検査物21の形状設計データ56は、補正処理部38に送信され、補正処理部38は補正データ55および被検査物21の形状設計データ56を受け付ける。
【0105】
補正データ55および被検査物21の形状設計データ56を受け付けた補正処理部38は、形状設計データ56に対し補正処理を行う。補正処理部38は、補正データ55の形状データと、形状設計データの差分に基づき、被検査物21の形状データ全体について補間処理を行い、補正された形状設計データ57を生成する(ステップS21)。
【0106】
生成された補正された形状設計データ57は、形状データ記憶部40に格納された後、表示部、演算部、記憶部などで構成された表示装置9などに出力され、計算機ソフトウエアにより走査経路情報58が生成される(ステップS22)。以上で形状設計データ56の補正処理は終了する。
【0107】
この超音波検査装置1によれば、製造時における工作精度に起因した実際の被検査物の形状と形状設計データ上の被検査物との不一致が存在する形状設計データ56を、高精度な形状データ55を用いて補正処理を行うことで、製作誤差や設置誤差などを含まない形状設計データ57を生成することができ、その結果、高精度な走査経路情報58を生成することができる。
【0108】
また、この超音波検査装置1は、光学的計測装置4および経路情報生成装置8を用いて生成された形状データを補正データとして用い、既存の走査経路情報や形状データに対して補正を行うことができる点においても有効である。
【0109】
つまり、本実施形態における超音波検査装置1は、補正処理を行うことによって生成された高精度な走査経路情報に基づき、スキャナ機構3を精度よく駆動させることができ、超音波探傷検査による欠陥26などの2次元または3次元探傷画像の精度を向上させることができる。
【0110】
なお、光学的計測装置4は、光学的手段の一例としてレーザ光Lを用いて被検査物21の3次元形状を計測した計測データを取得したが、これに限らずCCD(Charge―Coupled Devices)や、モアレ縞の縞形の形状を用いるなど、他の光学的手段を用いて計測データを取得してもよい。
【0111】
また、被検査物の一例として、円筒形状の表面を有する被検査物21を適用して説明したが、これに限らず球形や平板など他の形状であってもよい。
【0112】
さらに、スキャナ機構3の回動部はX軸方向の回転軸であるA軸周りのA軸回動部3eのみを設けたが、Y軸方向およびZ軸方向の回転軸をそれぞれ設けてもよい。
【0113】
さらにまた、形状データ45に基づいて走査経路情報を生成する場合、隣接する3点の形状データを用いて通過点を求めたが、これに限らず例えば4点の形状データを用いて通過点および走査経路情報を生成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明に係る超音波検査装置の概略的な全体構成図。
【図2】超音波トランスデューサおよび装置本体に設けられた探傷処理装置を説明する機能構成図。
【図3】スキャナ機構および光学的計測装置を説明する構成図。
【図4】光学的計測装置、および装置本体に設けられた経路情報生成装置を説明する機能構成図。
【図5】(A)は形状データの点群を表した図、(B)は形状データの点群の一部を抜き出して拡大した図。
【図6】本実施形態における超音波検査装置を用いた超音波探傷検査について説明するフローチャート。
【図7】補正処理におけるデータの流れを説明する図。
【図8】走査経路情報の補正処理を説明するフローチャート。
【図9】形状設計データの補正処理におけるデータの流れを説明するフローチャート。
【符号の説明】
【0115】
1 超音波検査装置
2 超音波トランスデューサ
3 スキャナ機構
3a 走査台
3b 固定部
3c X軸駆動部
3d YZ軸駆動部
3e A軸回動部
4 光学的計測装置
5 装置本体
6 探傷処理装置
7 スキャナ駆動装置
8 経路情報生成装置
9 表示装置
10 入力装置
21 被検査物
30 走査経路
35 駆動制御部
36 形状データ生成部
37 経路情報生成部
38 補正処理部
39 記憶部
40 計測データ記憶部
41 形状データ記憶部
42 経路情報記憶部
45 形状データ
46,47 法線ベクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧電振動子からなる超音波トランスデューサと、前記超音波トランスデューサの複数の圧電振動子に接続され、信号発生部からの駆動信号により、所要の圧電振動子を選択する駆動素子選択部と、前記駆動素子選択部に選択された圧電振動子から発振される超音波を音響伝播媒体を介して被検査物に入射させ、その反射エコーを受信し、前記反射エコーの電気信号を検出する信号検出回路と、検出された前記反射エコーの電気信号を演算処理し、前記被検査物の内部の画像情報を生成する信号処理部とを備えた探傷処理装置と、
前記被検査物が設置される走査台と、前記走査台上で互いに直交する三軸方向に前記超音波トランスデューサを移動させる駆動部、および前記三軸方向のうち少なくとも一軸方向の回転軸回りに前記超音波トランスデューサを回動させる回動部とを少なくとも備えたスキャナ機構とを備えた超音波検査装置において、
前記スキャナ機構の走査台に設置された前記被検査物の表面上までの距離を光学的手段を用いて計測して点群からなる計測データを取得する光学的計測部と、
前記光学的計測部で取得された前記点群からなる計測データを用いて、前記スキャナ機構の座標系で表された位置情報を持った点の点群からなる前記被検査物の表面の形状データを生成する形状データ生成部と、
前記形状データ生成部で生成された前記形状データを用いて、前記超音波トランスデューサの走査経路を構成する前記被検査物の表面上の通過点を求め、前記被検査物の表面上の通過点の法線ベクトルと前記超音波トランスデューサの開口面が直交し、かつ前記通過点と前記超音波トランスデューサの開口面中心との距離が一定である前記超音波トランスデューサの走査経路情報を生成する経路情報生成部とを備えたことを特徴とする超音波検査装置。
【請求項2】
前記経路情報生成部は、前記被検査物の表面上の通過点が前記形状データを構成する点群に含まれない点である場合、
前記形状データを構成する点群を用いて補間することにより前記通過点を求めることを特徴とする請求項1記載の超音波検査装置。
【請求項3】
前記経路情報生成部は、前記被検査物の表面上の通過点が前記形状データを構成する点群に含まれない点である場合、
前記超音波トランスデューサの走査経路に隣接する少なくとも2点以上の前記形状データを構成する点を用いて補間することにより前記通過点を求めることを特徴とする請求項1記載の超音波検査装置。
【請求項4】
前記経路情報生成部は、前記被検査物の表面上の通過点に隣接する3点の前記形状データを構成する点で形成された三角形の法線ベクトルを求め、前記三角形の法線ベクトルを前記通過点の法線ベクトルとするとともに、
前記通過点の法線ベクトルと前記超音波トランスデューサの開口面が直交し、かつ前記通過点と前記超音波トランスデューサの開口面中心との距離が一定となるように前記走査経路情報を生成することを特徴とする請求項1、2または3記載の超音波検査装置。
【請求項5】
前記経路情報生成部で生成された前記走査経路情報の少なくとも一部を補正データとし、
前記補正データと、あらかじめ生成された他の走査経路情報との差分を取得し、この差分に基づき前記あらかじめ生成された他の走査経路情報に対し補正処理を行う補正処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の超音波検査装置。
【請求項6】
前記形状データ生成部で生成された形状データを補正データとし、
前記補正データと、前記被検査物の形状設計データとの差分を取得し、この差分に基づき前記形状設計データに対し補正処理を行う補正処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の超音波検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−204328(P2009−204328A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44308(P2008−44308)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】