説明

超音波歯科器具

この発明は、超音波振動により駆動されるチタンおよびアルミニウムを基礎とする合金で作られた歯科器具又は挿入体に関するものである。この発明の歯科器具は、その組成形態において、少なくとも一つの生体適合性を有するベータジェン元素を備え、これは、ニオブおよび/またはモリブデンおよび/またはタンタルで作られ、体心立方構造の結晶相が少なくとも40%であるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波歯科器具、さらに詳しくは歯周療法および歯内治療学の領域に使用される器具に関するものである。
【0002】
予防治療に枠組みに入る歯科医術の分野で一般におこなわれている治療である歯石落としは、人手または機械化された器具、特に超音波により歯の表面に存在する歯石を除去するようにしていることが知られている。
【0003】
また、歯周治療の目的は、歯肉の下にある細菌性歯垢をなくすことであって、細菌性歯垢は、歯垢と毒素からなり、歯周組織の炎症性病変の病原要因の一つになり、長期にわたって作用して歯が抜け落ちるようになってしまう。
【0004】
従来において通常行われていることは、歯肉下の歯根と、グラム(GRAM)陰性菌の細胞壁から分泌されるリポ糖類のような、バクテリアが産生するエンドトキシンで毒性化された象牙質を覆うセメントを除去して歯根面を平滑にするようにしている。実際、これらのリポ糖類は、歯周組織を保持するのに不可欠の歯肉繊維形成体に抑制作用を加えてしまう。しかしながら、最近の研究では、歯根面に弱くついているこれらのエンドトキシンは、セメントに浸透せず、したがって、治療すべき壁に過剰の圧力を加える必要がないことが示されている。さらには、これらの結果、セメントを削り取る必要がないことが確認されている。
【0005】
これが、それ以来医術者が歯周組織のデブリードマン(創面切除)のためにあまりにもきびしすぎると考えられている歯根平滑化をしなくなってしまった理由である。この発明は、歯根面の汚染を効率よく除去することができ、毒性のものを容認し得るようになくしてしまうことを確実に行うものである。効率よく歯根下のデブリードメマンを行うためには、分岐したものの治療、即ち、臼歯又は小臼歯のような多歯根の歯根内壁の治療を伴うことが非常に多い。
【0006】
このような治療を行うためは、グレーシー(Gracey)キューレット式の人の手による器具は、25000から35000Hzの間に含まれる高出力の超音波により振動される機械式器具に徐々に置き換えられている。従来の技術に数多く記載されているこれらの装置は、実質的には、超音波発生器により構成されており、これがエネルギーを磁気ひずみ又はピエゾ電気トランスデューサーへ供給し、挿入具(インサート)と言われている取り外し可能な金属器具を確実に動かす。
【0007】
これらの挿入具を超音波により動作させることで、施術者は、極めて正確に作業できると共にエネルギーの働きで治療をより迅速に効率よく行うことができる。さらに、洗浄液からなる液体内で前記挿入体を動かすことで発病因の歯肉下の圧迫を効果的に減らすクリーニングを行うことができる空洞化作用をなすことができることが判明している。
【0008】
このように、前記挿入体は、いくつかの特定の要求を満足せなければならない器具であることが理解される。実際に、これらはまず第1に施術者がほとんど近づくことが難しい領域で治療作業を行うために非常に多様な形状をもつことができるようになっていなければならない。次に、治療すべき患者の歯の領域に適切な小さな寸法のパーツになっていなければならない。さらに、それらは、それらの後部を介して受け、動作先端部へ送る超音波エネルギーを正確に送れるように制御できなければならない。最後に、それらは、生体適合性を有するようなものでなければならない。
【0009】
これらの条件のもとにあっては、前記挿入体を構成するために使用できる合金は、明らかに特定の機械特性をもつものでなければならない。
【0010】
歯科関係、特に歯周療法学に使用されるのに必要な柔軟性および特に効果的な態様で受けたエネルギーを再発信することに適しているチタンとアルミニウムを基礎とする前記のようなタイプの挿入体は、従来技術においてよく知られているものである。
【0011】
この発明は、歯周療法、歯内治療又は歯石除去掃除における操作に十分適合しならびに超音波エネルギーを最適に伝える柔軟性を兼備した歯科器具を提供することを目的とする。
【0012】
かくして、この発明は、超音波振動で動作し、チタンおよびアルミ合金で構成された歯科器具又は挿入体に関するもので、これは、成分として少なくとも体心立方結晶構造の結晶相をつくるのに適したニオブおよび/またはモリブデンおよび/またはタンタルによって構成される少なくとも一つの生体拒絶反応を起こさないベータジェニック要素を備える。
【0013】
このベータジェニック要素は、ニオブにより構成され、前記合金の質量当たりのパーセンテージは、好ましくは7%である。かくて、この発明は、特には、組成がTiAlNbである合金を作ることができる。
【0014】
この発明によれば、前記合金の結晶構造は、その結晶粒が10マイクロメータよりも小さい寸法であることが好ましい。
【0015】
この発明を添付の図面を参照しながら限定されない実施例により以下記載する。
【0016】
この発明のコンセプトの枠内においてなした種々の研究とテストによって、挿入体が超音波エネルギーを送ることができる能力とこの挿入体を作るために使用した合金の原子構造との間に相関関係をもたせることに成功した。さらに詳しくは、その多数がβ相で結合している結晶構造(又は、例えば、チタン合金、体心立方格子の結晶相が優位なもの)は、超音波エネルギーを効率的に確実に送れるような等方性をこの合金に与える。
【0017】
この発明のフレームワーク内で行われたテストでは、低いパーセンテージのアルミニウム(質量で6%のオーダー)を含むチタンにより構成されているベースと関連している場合に、ニオブ、モリブデンおよびタンタルのような元素(以下“ベータジェニック(betagenic)”元素という)は、前記合金を体心立方格子を多く含む結晶構造とし、この合金が超音波特に効率よく送れるようにする。
【0018】
挿入体は、例えば、Ti AL Nb合金、即ち、質量6%のアルミニウム、質量7%のニオブを備えるチタンをベースとする合金で作られている。インシトーでの作業の間、前記のような挿入体は、形状と寸法が同じ挿入体に較べて適正な順応性の品質を保持しながら十分なパワーを伝える利点をもつことが観察されている。
【0019】
この発明によれば、挿入体は、また、例えば、タンタル、モリブデンおよびニオブなどのようないくつかのベータジエニック元素を用いる合金で作られる。挿入体は、また、つぎの組成:即ち、TiAlNbTa0.8MO、即ち、チタンおよび6%アルミニウムをベースとし、質量割合で、ニオブ2%、タンタル1%およびモリブデン0.8%を有する合金のこれら3つのベータジエニック元素を備える合金で作られる。テストの結果、超音波エネルギーの伝達は、通常のステンレススチールのタイプの挿入体よも上位であったが、前記合金TiAlNbのようなニオブのみで構成されたベータジェニック元素で得られたものよりも下位であったことが示された。
【0020】
この合金は、図1の実施例に示された形状であって、特に歯の治療を行うための挿入体の製造に適している。
【0021】
図1において、この挿入体1の端部寄りは、円筒部2により構成されていて、これに超音波ハンドピース3が接続されるようになっており、該ハンドピースは、挿入体の長さ方向軸xx’に対し120°の角度で曲がっている曲がり部7を形成する径が細身になっているシリンドリカルな部分5における端部につながっており、それに円錐形の領域9がつらなり、該領域の基部は、前記シリンドリカルな部分よりも径が細身になっている。
【0022】
図2は、歯肉下の治療を行うのに使用される歯周への挿入体を示す。この挿入体は、超音波ハンドピース(図示されず)に接続されるようになっているもので、第2のシリンドリカル部分10における径が細くなっている他方の端部に続くシリンドリカルな基部端部2を有し、前記第2の部分には、先端又は先端端部に行きつくまで径が細くなってゆく二つの部分、即ち円錐形の形状であって、第1の帯域12とこの第1の領域の延長であって前記挿入体の主たる長さ方向軸xx’に対し角度約120°で半径内にそって曲がる第2の帯域14が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】超音波ハンドピースに装着の、この発明による歯科器具又は挿入体の図。
【図2】歯肉下治療を行ための、この発明による歯周挿入体の一部断面平面図。
【符号の説明】
【0024】
1 挿入体
2 円筒部
3 超音波ハンドピース
5 円筒部分
7 曲がり部
9 円錐形の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動で動かされる歯科器具又は挿入体で、チタンおよびアルミニウムを基礎とする合金で作られており、構成として、少なくとも一つの生体適合性のあるベータジェニック (betagene) 元素を備え、これは、少なくとも40%の体心立方結晶構造からなる結晶相を生成するに適しているニオブおよび/またはモリブデンおよび/またはタンタルにより構成されることを特徴としているもの。
【請求項2】
ベータジェニック元素が合金における質量比率が約70%であるニオブで構成されていることを特徴とする請求項1による歯科器具。
【請求項3】
TiAlNbの組成をもつ合金でつくられていることを特徴とする請求項2による歯科器具。
【請求項4】
前記合金の結晶構造が該合金粒子の寸法が10μm以下のものであることを特徴とする前記請求項の一つによる歯科器具。
【請求項5】
基部が超音波ハンドピース(3)に接続される円筒状部分(2)により形成され、先端部が小径の円筒状部分(5)になり、この部分がこれにつづく小径の円筒状部分の基部になっている円錐形帯域(9)になる前記挿入体の長さ方向軸(xx’)に対し約120°の角度で曲がっている形状を特徴とする前記請求項の一つによる歯科器具。
【請求項6】
基部(2)が円筒状で、小径の第2の円筒状部分(10)における他方の端部に連なっており、第第2の部分は、先端へ行くにしたがい径が細身になっている部分又は末端部へと続き、この部分は、二つの帯域に分かれ、即ち半径にそって曲がって第1帯域(12)と第1帯域の延長で、円錐形をなし、前記挿入体の長さ方向軸(xx’)に対し約120°の角度をなす長さ方向軸(yy’)をもつ形状を特徴とする前記請求項1から請求項4の一つによる歯科器具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2007−536046(P2007−536046A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512263(P2007−512263)
【出願日】平成17年5月4日(2005.5.4)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001122
【国際公開番号】WO2005/120389
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(505475057)ソシエテ プール ラ コンセプシオン デ アプリカシオン デ テクニク エレクトロニク−サテレク (5)
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE POUR LA CONCEPTION DES APPLICATIONS DES TECHNIQUES ELECTRONIQUES−SATELEC
【住所又は居所原語表記】Zone Industrielle du Phare, Avenue Gustave Eiffel 17, F−33700 Merignac, FRANCE
【Fターム(参考)】