超音波流量計用消音器及び消音器付超音波流量計
【課題】ガス中の異物の有無に拘わらず超音波ノイズを減衰させることが可能な超音波流量計用消音器及び消音器付超音波流量計の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の超音波流量計用消音器10は、パイプ90に接続されて内部をガスが通過する筒形ボディ11と、筒形ボディ11の内面から張り出しかつ内側に中央孔14Aを有した環状仕切壁14と、中央孔14Aと同じ又は相似した形状をなしかつ筒形ボディ11の内面との間に環状孔15Aを有した中央仕切壁15とを、筒形ボディ11の軸方向に交互に並べて備えており、中央孔14Aと環状孔15Aとが筒形ボディ11の軸方向で対向しないようにずらして配置されている。
【解決手段】本発明の超音波流量計用消音器10は、パイプ90に接続されて内部をガスが通過する筒形ボディ11と、筒形ボディ11の内面から張り出しかつ内側に中央孔14Aを有した環状仕切壁14と、中央孔14Aと同じ又は相似した形状をなしかつ筒形ボディ11の内面との間に環状孔15Aを有した中央仕切壁15とを、筒形ボディ11の軸方向に交互に並べて備えており、中央孔14Aと環状孔15Aとが筒形ボディ11の軸方向で対向しないようにずらして配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ内を流れるガスを伝搬して超音波流量計に向かう超音波ノイズを減衰させるための超音波流量計用消音器及び消音器付超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の超音波流量計用消音器としては、パイプの内側に遊嵌可能な両端開放の外筒体と、その外筒体の内側に遊嵌された一端開放の内筒体とを備え、内筒体の筒壁に複数の小孔が貫通形成されたものが知られている。この超音波流量計用消音器では、内筒体及び外筒体の内面を覆った不織布によって超音波ノイズを減衰させるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−46817号公報(第7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した従来の超音波流量計用消音器では、不織布に水分や油分や固体粒子等の異物が付着すると超音波ノイズの減衰効果が低下するため、これら異物を含むガスには適さないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ガス中の異物の有無に拘わらず超音波ノイズを減衰させることが可能な超音波流量計用消音器及び消音器付超音波流量計の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る超音波流量計用消音器は、パイプ内を流れるガスの流量を計測可能な超音波流量計に接続されて、ガスを伝搬して超音波流量計へと向かう超音波ノイズを減衰させるための超音波流量計用消音器において、パイプに接続されて内部をガスが通過する筒形ボディと、筒形ボディの内部を軸方向で複数の部屋に仕切る複数の仕切壁と、仕切壁に貫通形成されるか又は仕切壁と筒形ボディの内面との間に形成されて、筒形ボディの軸方向で隣接した部屋同士を連通する複数の連通孔とを備え、筒形ボディの軸方向で隣り合った仕切壁の連通孔を、筒形ボディの軸方向で対向しないようにずらして配置したところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の超音波流量計用消音器において、複数の仕切壁同士の間を支柱で連結してなるインナーユニットを筒形ボディの内部に備えたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の超音波流量計用消音器において、筒形ボディの内面から張り出しかつ内側に連通孔としての中央孔を有した環状仕切壁と、中央孔と同じ又は相似した形状をなしかつ筒形ボディの内面との間に連通孔としての環状孔を有した中央仕切壁とを、筒形ボディの軸方向に交互に並べて複数の仕切壁として備えたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載の超音波流量計用消音器において、筒形ボディは、内側が断面四角形となった角筒構造をなし、その筒形ボディの内部の四角形に対して、一辺が同じ長さでその一辺と交差する二辺が短い四角形の板状に各仕切壁を形成すると共に、隣り合った仕切壁の間で連通孔の位置が反対になるように配置したところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の超音波流量計用消音器において、隣り合った仕切壁同士の間隔と、連通孔を挟んで対向する仕切壁の縁部と筒形ボディの内面との間隔とを同じにしたところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明に係る消音器付超音波流量計は、請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載の超音波流量計用消音器を備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1及び6の発明]
請求項1及び6の発明によれば、ガスが流れる筒形ボディの内部が複数の仕切壁によって軸方向で複数の部屋に仕切られると共に、それら部屋は仕切壁に貫通形成されるか又は仕切壁と筒形ボディの内面との間に形成された連通孔にて連通している。ガスは筒形ボディ内の部屋と連通孔とを交互に通過して流れる。
【0013】
そして、筒形ボディの軸方向で隣り合った仕切壁の連通孔は、筒形ボディの軸方向で対向しないようにずらして配置されているので、超音波ノイズは、各部屋内で仕切壁や筒形ボディの内壁面で反射を繰り返して減衰する。このように、本発明によれば、ガス中の異物の有無に関わらず超音波ノイズを減衰させることができる。なお、本発明は、吸音材の併用を排除するものではなく、仕切壁や筒形ボディの内面を不織布等の吸音材で覆って、さらなる減衰効果の向上を図ってもよい。また、請求項6の発明に係る消音器付超音波流量計は、超音波流量計用消音器と超音波流量計とを接続したものでもよいし、超音波流量計に超音波流量計用消音器(複数の仕切壁)を内蔵したものでもよい。
【0014】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、筒形ボディ内にインナーユニットを挿入するだけで複数の仕切壁を容易に設けることができる。
【0015】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、ガスは、環状仕切壁の内側に形成された中央孔と、中央仕切壁と筒形ボディの内面との間に形成された環状孔とを交互に通過して流れる。そして、中央孔と環状孔とが筒形ボディの軸方向において対向しないように配置されているので、各部屋内において超音波ノイズを、環状仕切壁、中央仕切壁及び筒形ボディの内面で多数回反射させて減衰させることができる。ここで、筒形ボディは、断面円形でも断面四角形でもよい。そして、その筒形ボディに合わせて「環状仕切壁」を円環状にしてもよいし、四角形の環状(枠状)にしてもよい。同様に、「中央仕切壁」を筒形ボディに合わせて、円板状にしてもよいし、四角形の板状にしてもよい。
【0016】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、ガスは筒形ボディの内側を蛇行しながら流れ、筒形ボディの内側に進入した超音波ノイズは、複数の仕切壁及び筒形ボディの内面で多数回反射する。ことで減衰する。
【0017】
[請求項5の発明]
請求項5の発明によれば、筒形ボディ内の蛇行した流路の断面積変化を比較的小さくすることができ、超音波流量計用消音器における圧力損失を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波流量計用消音器の接続状態を示す概念図
【図2】超音波流量計用消音器の側断面図
【図3】インナーユニットの斜視図
【図4】(A)消音器を設けなかった場合の受信波のグラフ、(B)消音器を設けた場合の受信波のグラフ
【図5】第2実施形態に係る超音波流量計用消音器の(A)側断面図、(B)X−X切断面における断面図
【図6】インナーユニットの斜視図
【図7】第3実施形態に係る超音波流量計用消音器の側断面図
【図8】超音波流量計用消音器の断面斜視図
【図9】消音器付超音波流量計の側断面図
【図10】消音器付超音波流量計の側断面図
【図11】消音器付超音波流量計の側断面図
【図12】参考例に係る超音波流量計用消音器の側断面図
【図13】参考例の超音波流量計用消音器におけるインナーユニットの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を、図1〜図4に基づいて説明する。図1における符号90は、ガスを供給するためのパイプであり、そのパイプ90内を、図示しない供給源から供給されたガス(燃焼ガス、冷媒ガス、工場エア等)が流れている。パイプ90の途中には、供給源から供給されたガスを所定の二次圧に減圧して送出する公知な減圧弁91(ガバナ)と、パイプ90内を流れるガスの流量を計測するための超音波流量計80とが備えられている。減圧弁91は超音波ノイズを発生するノイズ発生源であり、その超音波ノイズは、パイプ90内のガスを伝搬媒体とした疎密波(縦波)となってパイプ90内を上流側及び下流側に直進する。そして、ノイズ発生源である減圧弁91と超音波流量計80との間には、本発明に係る超音波流量計用消音器(以下、単に「消音器」という)10が接続されている。なお、減圧弁91だけでなく、バルブやクイックカプラ等もノイズ発生源となり得る。
【0020】
図1に示すように超音波流量計80は計測管81を有し、この計測管81がパイプ90の途中に接続されている。計測管81には、上流側と下流側とに離して1対の超音波センサ82,82が配設されている。これら1対の超音波センサ82,82間で超音波が送受波され、ガスの流れに沿った順方向における超音波の伝搬時間と、流れに逆らった逆方向における超音波の伝搬時間との差に基づいて、ガスの流量が計測可能となっている。なお、超音波流量計80の構成や計測原理は公知であるので詳細な説明は省略する。
【0021】
さて、消音器10は以下のような構成となっている。即ち、図2に示すように、消音器10は円筒形の筒形ボディ11を有している。筒形ボディ11の内径は、パイプ90の内径よりも大径となっている。筒形ボディ11の軸方向の一端部には、円形の小径開口部12が形成され、他端部には小径開口部12よりも大径な大径開口部13が形成されている。小径開口部12の内径は、例えば、パイプ90の内径と同一径となっており、大径開口部13の内径は、例えば、筒形ボディ11の内径と同一径となっている。また、筒形ボディ11の両端部にはフランジ11F,11Fが備えられ、それらフランジ11F,11Fがパイプ90の途中に備えたフランジ90F,90Fに重ねられて連結されている。なお、図2では、筒形ボディ11における小径開口部12をガスの流れの上流側に配置してパイプ90に取り付けているが、逆向きにして取り付けてもよい。
【0022】
筒形ボディ11の内部には、軸方向で一定の間隔を空けて複数の仕切壁14,15が設けられており、それら複数の仕切壁14,15によって筒形ボディ11の内部が複数の部屋16,16,・・・に仕切られている。
【0023】
本実施形態では、複数の仕切壁14,15が、筒形ボディ11の内周面から内側に張り出した円環状の環状仕切壁14と、筒形ボディ11の内周面との間に隙間を空けて配置された円板状の中央仕切壁15との2種類で構成されており、環状仕切壁14と中央仕切壁15とが、筒形ボディ11の軸方向で一定の間隔を空けて交互に配置されている。
【0024】
中央仕切壁15は、筒形ボディ11に備えた小径開口部12及び、環状仕切壁14の径方向中央に形成された円形の中央孔14Aよりも大径となっており、それら中央仕切壁15と中央孔14Aとが筒形ボディ11の軸方向で対向配置されている。また、中央仕切壁15の外周面と筒形ボディ11の内周面との間には環状孔15Aが形成されており、その環状孔15Aと環状仕切壁14とが筒形ボディ11の軸方向で対向配置されている。
【0025】
図3に示すように、中央仕切壁15の外周面からは、径方向外側に向かって複数(例えば4つ)の突出片15H,15Hが突出している。これら突出片15H,15Hは、中央仕切壁15の周方向に均等配置されており、それぞれ筒形ボディ11の内周面に突き当てられている。
【0026】
環状仕切壁14,14と中央仕切壁15,15は、複数の支柱17,17によって連結されてインナーユニット19を構成している。支柱17,17は、環状仕切壁14よりも大径なフランジ板18から起立して筒形ボディ11の軸方向と平行に延びており、環状仕切壁14と中央仕切壁15から突出した突出片15Hとを貫通して、複数の第1と第2の仕切壁14,15とを一定間隔で固定している。このインナーユニット19は、筒形ボディ11の大径開口部13から挿入され、フランジ板18を筒形ボディ11のフランジ11Fとパイプ90のフランジ90Fとの間に挟むことで筒形ボディ11内に位置決めされている。なお、フランジ板18の中央部に貫通形成された円形孔18Aは、例えば、中央孔14A又は小径開口部12と同一径となっている(図2参照)。
【0027】
本実施形態の構成は以上であって、以下作用を説明する。パイプ90内を流れるガスは、小径開口部12から筒形ボディ11内に流入し大径開口部13から流出する。詳細には、ガスは、小径開口部12から最上流の部屋16に流入し、環状孔15Aを通って隣の部屋16に流入し、その部屋16から中央孔14Aを通ってさらに隣の部屋16に流入し、以下、環状孔15Aと中央孔14Aとを交互に通って最後は円形孔18Aから筒形ボディ11の外部に流出する。
【0028】
さて、ガス中を伝搬する超音波ノイズは、ガスと同様に小径開口部12から筒形ボディ11内の最上流の部屋16に進入するが、その部屋16内において中央仕切壁15や筒形ボディ11の内面で反射する。また、環状孔15Aを通って進入した隣の部屋16でも超音波ノイズは反射を繰り返し、中央孔14Aを通って進入したさらに隣の部屋16でも反射を繰り返す。即ち、超音波ノイズは、筒形ボディ11内を通過する間に、筒形ボディ11の内面、環状仕切壁14、中央仕切壁15で多数回反射を繰り返すことになる。そして、反射を繰り返すうちに超音波ノイズは徐々に減衰し、図4(B)に示すように、超音波センサ82の受信波におけるS/N比を、消音器10を設けなかった場合(図4(A)参照)に比べて大きくすることができる。
【0029】
このように、本実施形態によれば、パイプ90を流れるガスを伝搬して超音波流量計80へと向かう超音波ノイズを、筒形ボディ11内で多数回反射させて減衰させることができるから、ガスに含まれる異物(水分、油分、固体粒子等)の有無に拘わらず、超音波ノイズを減衰させることが可能となる。また、インナーユニット19を筒形ボディ11内に挿入するだけで、環状仕切壁14と中央仕切壁15とからなる複数の仕切壁を容易に筒形ボディ11の内部に設けることができる。
【0030】
また、従来の消音器のように、不織布等の吸音材によって超音波ノイズを減衰させるものでは、吸音材の設置面積を大きくするために消音器の軸長が長くなり、その結果、消音器及び超音波流量計の設置に比較的長い直管部が必要となる。これに対し、本実施形態の消音器10は、筒形ボディ11の内部を軸方向で複数の部屋に仕切る複数の仕切壁を設けて、筒形ボディ11の内部で超音波ノイズを多数回反射させて減衰させるようにしたので、従来の消音器に比べて軸長を短縮することが可能となり、その結果、消音器10及び超音波流量計80の設置に必要な直管部を従来よりも短くすることができる。
【0031】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を図5及び図6に基づいて説明する。本実施形態の消音器20は、仕切壁24,24の形状が第1実施形態とは異なっている。即ち、図6に示すように、筒形ボディ11内に備えられた複数の各仕切壁24,24は、全て筒形ボディ11の内径と同一径の円板形をなしている。それら仕切壁24,24の外周面の一部(具体的には、周方向で180度離れた2箇所)には、径方向内側に向かって凹んだ凹部24A,24Aが形成されている。各凹部24Aはそれぞれ「コ」の字形をなしており、それら各凹部24Aと筒形ボディ11の内周面との間で複数の連通孔25,25(図5(B)参照)が形成されている。また、複数の仕切壁24,24の中心部をフランジ板28から起立した支柱17が貫通しており、その支柱17によって複数の仕切壁24,24が一定の間隔で支持されている。これら複数の仕切壁24,24,フランジ板28及び支柱17によってインナーユニット29が構成され(図6参照)、そのインナーユニット29が、上記第1実施形態と同様にして筒形ボディ11内に挿入及び位置決めされている(図5(A)参照)。
【0032】
そして、図5(B)及び図6に示すように、筒形ボディ11の軸方向で隣り合った仕切壁24,24の連通孔25,25(凹部24A,24A)は、筒形ボディ11の軸方向で対向しないように、例えば、筒形ボディ11の周方向で互いに90度ずつずらして配置されている。その他の構成は上記第1実施形態と同一であるので、重複する説明は省略する。本実施形態の構成によっても、上記第1実施形態と同等の作用効果を奏する。
【0033】
[第3実施形態]
本実施形態の消音器30は図7及び図8に示されている。図8に示すように、消音器30の筒形ボディ31は、断面四角形(本実施形態では、例えば、断面長方形)の角筒構造をなしており、その筒形ボディ31の内部に設けられた複数の仕切壁34,34によって、筒形ボディ31の内部に蛇行した流路が形成されている(図7参照)。
【0034】
複数の各仕切壁34,34は、筒形ボディ31の断面の四角形に対して、一辺が同じ長さでその一辺と交差する二辺が短い四角形の板状をなしている。具体的には、仕切壁34,34のうち、向かい合う二辺が、筒形ボディ31の断面の長方形における短辺と同じ長さであり、残り二辺が前記長方形における長辺より短い長方形又は正方形をなしている。そして、各仕切壁34,34と筒形ボディ31の内面との間には、断面四角形(長方形又は正方形)の連通孔34A,34Aが形成されかつ、筒形ボディ31の軸方向で隣り合った仕切壁34,34の間で、連通孔34A,34Aの位置が反対になるように配置されている。換言すれば、筒形ボディ31のうち軸方向と直交する方向で対向した1対の側壁31A,31Aの一方と他方とから交互に仕切壁34,34が突出して、各仕切壁34とその仕切壁34が付き合わされた側壁31A,31Aとの間に断面四角形の連通孔34A,34Aが形成されている。本実施形態の構成でも上記第1実施形態と同等の作用効果を奏する。
【0035】
また、本実施形態では、筒形ボディ31の軸方向で隣り合った仕切壁34,34同士の間隔L1と、連通孔34Aを挟んで対向する仕切壁34の縁部と側壁31Aの内面との間隔L2とが同じとなっている(図7参照)。このような構成としたことで、筒形ボディ31の内部で蛇行した流路の断面積変化を比較的小さくすることができ、消音器30における圧力損失を抑えることが可能になる。
【0036】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0037】
(1)上記第1〜第3実施形態では、超音波流量計80と消音器10,20,30とがパイプ90を間に挟んで間接的に接続されていたが、消音器10,20,30(筒形ボディ11,31)と超音波流量計80(計測管81)とを直接接続してもよい。また、消音器10,20,30は、ノイズ発生源(上記実施形態における減圧弁91)に直接接続してもよい。
【0038】
(2)さらに、消音器10,20,30(筒形ボディ11,31)と超音波流量計80(計測管81)とが一体不可分な構成でもよい。具体的には、例えば、筒形ボディ11,31が計測管81に兼用されていて筒形ボディ11,31内に一対の超音波センサ82,82を内蔵した構成、或いは、計測管81が筒形ボディ11,31に兼用されていて計測管81内に複数の仕切壁(インナーユニット)を内蔵した構成としてもよい。
【0039】
ここで、上記第1〜第3実施形態で説明した消音器10,20,30を備えている本発明の「消音器付超音波流量計100」において、超音波流量計として機能する部分の構成は特に限定するものではない。例えば、上記第1実施形態のように、1対の超音波センサ82,82をガスの流れに対して斜めに交差する方向で対向配置してもよいし、計測管81の内面で超音波を反射させて送受波するように配置してもよいし、図9〜図11に示すように、ガスの流れと平行な方向で対向配置してもよい。なお、図9〜図11に図示された消音器付超音波流量計100において、超音波流量計80は、消音器10,20,30の筒形ボディ11,31に接続されるか又は筒形ボディを兼ねたメーターケース83と、メーターケース83内に収容され、内側にガスが流される計測管81と、その計測管81の両端部の開口に対して離して配置されて計測管81の内側領域を挟んで互いに対向した1対の超音波センサ82,82とを備え(例えば、特開2006−337059号公報を参照)、さらに、各超音波センサ82,82における送受波面の裏側に、ガスの流れを整えるための円錐形又は角錐形の整流部84,84を備えた構成となっている。また、図9〜図12に示した消音器付超音波流量計100では、超音波流量計80の上流側だけに消音器10,20,30を備えているが、超音波流量計80の下流側だけ又は、上流側と下流側の両方に消音器10,20,30を備えていてもよい。
【0040】
(3)上記第1実施形態では、筒形ボディ11が円筒形をなし、環状仕切壁14が円環状をなし、中央仕切壁15が円板状をなしていたが、筒形ボディ11を断面四角形の角筒形とし、環状仕切壁14を四角形の中央孔14Aを有した四角形の環状(枠状)とし、中央仕切壁15を筒形ボディ11の内面との間に四角形の環状孔15Aを有した四角形の板状としてもよい。このような構成でも、上記第1実施形態と同等の作用効果を奏する。
【0041】
(4)上記第1〜第3実施形態において、筒形ボディの内面や複数の仕切壁を、不織布、グラスウール、発泡樹脂等の吸音材で覆った構成としてもよい。
【0042】
(5)上記第1実施形態において、中央仕切壁15及び環状仕切壁14の数は、特に限定するものではなく、中央仕切壁15と環状仕切壁14とを少なくとも1つずつ備えていればよい。
【0043】
(6)上記第2及び第3実施形態において、仕切壁24,34の数は、例えば超音波ノイズの強さに応じてそれぞれ任意の複数に設定すればよい。
【0044】
(7)上記第1〜第3実施形態において、ノイズ発生源が超音波流量計80の上流側及び下流側の両方に存在する場合や、ノイズ発生源が特定できない場合は、超音波流量計80の上流側及び下流側の両方に、消音器10,20,30を配置してもよい。
【0045】
[参考例]
本参考例は前記実施形態を応用したものであって、本発明の技術的範囲には含まれないが本発明と同等の効果を奏する。本参考例の消音器50は、図12に示すように、円筒形の筒形ボディ51と、筒形ボディ51の軸心部に配置された支柱52と、支柱52の外面と筒形ボディ51の内周面との間を連絡しかつ螺旋状に延びた帯壁53とを備えている。また、図13に示すように、支柱52と帯壁53と支柱52を支持する支持ベース54とでインナーユニット55が構成され、そのインナーユニット55が筒形ボディ51の内部に挿入組み付けされている。この消音器50は、筒形ボディ51内に進入した超音波ノイズを、筒形ボディ51の内周面や帯壁53で多数回反射させることで減衰させることができる。さらに、本参考例では、筒形ボディ51の内径及び支柱52の外径を軸方向で均一径にして、筒形ボディ51と支柱52と帯壁53とで囲まれた螺旋状の流路の断面積をその両端間で略一定にすることができ、消音器50における圧力損失を抑えることができる。
【符号の説明】
【0046】
10,20,30 超音波流量計用消音器
11,31 筒形ボディ
14 環状仕切壁
14A 中央孔
15 中央仕切壁
15A 環状孔
16 部屋
17 支柱
19,29 インナーユニット
24,34 仕切壁
25,34A 連通孔
80 超音波流量計
100 消音器付超音波流量計
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ内を流れるガスを伝搬して超音波流量計に向かう超音波ノイズを減衰させるための超音波流量計用消音器及び消音器付超音波流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の超音波流量計用消音器としては、パイプの内側に遊嵌可能な両端開放の外筒体と、その外筒体の内側に遊嵌された一端開放の内筒体とを備え、内筒体の筒壁に複数の小孔が貫通形成されたものが知られている。この超音波流量計用消音器では、内筒体及び外筒体の内面を覆った不織布によって超音波ノイズを減衰させるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−46817号公報(第7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した従来の超音波流量計用消音器では、不織布に水分や油分や固体粒子等の異物が付着すると超音波ノイズの減衰効果が低下するため、これら異物を含むガスには適さないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ガス中の異物の有無に拘わらず超音波ノイズを減衰させることが可能な超音波流量計用消音器及び消音器付超音波流量計の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る超音波流量計用消音器は、パイプ内を流れるガスの流量を計測可能な超音波流量計に接続されて、ガスを伝搬して超音波流量計へと向かう超音波ノイズを減衰させるための超音波流量計用消音器において、パイプに接続されて内部をガスが通過する筒形ボディと、筒形ボディの内部を軸方向で複数の部屋に仕切る複数の仕切壁と、仕切壁に貫通形成されるか又は仕切壁と筒形ボディの内面との間に形成されて、筒形ボディの軸方向で隣接した部屋同士を連通する複数の連通孔とを備え、筒形ボディの軸方向で隣り合った仕切壁の連通孔を、筒形ボディの軸方向で対向しないようにずらして配置したところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の超音波流量計用消音器において、複数の仕切壁同士の間を支柱で連結してなるインナーユニットを筒形ボディの内部に備えたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の超音波流量計用消音器において、筒形ボディの内面から張り出しかつ内側に連通孔としての中央孔を有した環状仕切壁と、中央孔と同じ又は相似した形状をなしかつ筒形ボディの内面との間に連通孔としての環状孔を有した中央仕切壁とを、筒形ボディの軸方向に交互に並べて複数の仕切壁として備えたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載の超音波流量計用消音器において、筒形ボディは、内側が断面四角形となった角筒構造をなし、その筒形ボディの内部の四角形に対して、一辺が同じ長さでその一辺と交差する二辺が短い四角形の板状に各仕切壁を形成すると共に、隣り合った仕切壁の間で連通孔の位置が反対になるように配置したところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の超音波流量計用消音器において、隣り合った仕切壁同士の間隔と、連通孔を挟んで対向する仕切壁の縁部と筒形ボディの内面との間隔とを同じにしたところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明に係る消音器付超音波流量計は、請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載の超音波流量計用消音器を備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
[請求項1及び6の発明]
請求項1及び6の発明によれば、ガスが流れる筒形ボディの内部が複数の仕切壁によって軸方向で複数の部屋に仕切られると共に、それら部屋は仕切壁に貫通形成されるか又は仕切壁と筒形ボディの内面との間に形成された連通孔にて連通している。ガスは筒形ボディ内の部屋と連通孔とを交互に通過して流れる。
【0013】
そして、筒形ボディの軸方向で隣り合った仕切壁の連通孔は、筒形ボディの軸方向で対向しないようにずらして配置されているので、超音波ノイズは、各部屋内で仕切壁や筒形ボディの内壁面で反射を繰り返して減衰する。このように、本発明によれば、ガス中の異物の有無に関わらず超音波ノイズを減衰させることができる。なお、本発明は、吸音材の併用を排除するものではなく、仕切壁や筒形ボディの内面を不織布等の吸音材で覆って、さらなる減衰効果の向上を図ってもよい。また、請求項6の発明に係る消音器付超音波流量計は、超音波流量計用消音器と超音波流量計とを接続したものでもよいし、超音波流量計に超音波流量計用消音器(複数の仕切壁)を内蔵したものでもよい。
【0014】
[請求項2の発明]
請求項2の発明によれば、筒形ボディ内にインナーユニットを挿入するだけで複数の仕切壁を容易に設けることができる。
【0015】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、ガスは、環状仕切壁の内側に形成された中央孔と、中央仕切壁と筒形ボディの内面との間に形成された環状孔とを交互に通過して流れる。そして、中央孔と環状孔とが筒形ボディの軸方向において対向しないように配置されているので、各部屋内において超音波ノイズを、環状仕切壁、中央仕切壁及び筒形ボディの内面で多数回反射させて減衰させることができる。ここで、筒形ボディは、断面円形でも断面四角形でもよい。そして、その筒形ボディに合わせて「環状仕切壁」を円環状にしてもよいし、四角形の環状(枠状)にしてもよい。同様に、「中央仕切壁」を筒形ボディに合わせて、円板状にしてもよいし、四角形の板状にしてもよい。
【0016】
[請求項4の発明]
請求項4の発明によれば、ガスは筒形ボディの内側を蛇行しながら流れ、筒形ボディの内側に進入した超音波ノイズは、複数の仕切壁及び筒形ボディの内面で多数回反射する。ことで減衰する。
【0017】
[請求項5の発明]
請求項5の発明によれば、筒形ボディ内の蛇行した流路の断面積変化を比較的小さくすることができ、超音波流量計用消音器における圧力損失を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波流量計用消音器の接続状態を示す概念図
【図2】超音波流量計用消音器の側断面図
【図3】インナーユニットの斜視図
【図4】(A)消音器を設けなかった場合の受信波のグラフ、(B)消音器を設けた場合の受信波のグラフ
【図5】第2実施形態に係る超音波流量計用消音器の(A)側断面図、(B)X−X切断面における断面図
【図6】インナーユニットの斜視図
【図7】第3実施形態に係る超音波流量計用消音器の側断面図
【図8】超音波流量計用消音器の断面斜視図
【図9】消音器付超音波流量計の側断面図
【図10】消音器付超音波流量計の側断面図
【図11】消音器付超音波流量計の側断面図
【図12】参考例に係る超音波流量計用消音器の側断面図
【図13】参考例の超音波流量計用消音器におけるインナーユニットの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を、図1〜図4に基づいて説明する。図1における符号90は、ガスを供給するためのパイプであり、そのパイプ90内を、図示しない供給源から供給されたガス(燃焼ガス、冷媒ガス、工場エア等)が流れている。パイプ90の途中には、供給源から供給されたガスを所定の二次圧に減圧して送出する公知な減圧弁91(ガバナ)と、パイプ90内を流れるガスの流量を計測するための超音波流量計80とが備えられている。減圧弁91は超音波ノイズを発生するノイズ発生源であり、その超音波ノイズは、パイプ90内のガスを伝搬媒体とした疎密波(縦波)となってパイプ90内を上流側及び下流側に直進する。そして、ノイズ発生源である減圧弁91と超音波流量計80との間には、本発明に係る超音波流量計用消音器(以下、単に「消音器」という)10が接続されている。なお、減圧弁91だけでなく、バルブやクイックカプラ等もノイズ発生源となり得る。
【0020】
図1に示すように超音波流量計80は計測管81を有し、この計測管81がパイプ90の途中に接続されている。計測管81には、上流側と下流側とに離して1対の超音波センサ82,82が配設されている。これら1対の超音波センサ82,82間で超音波が送受波され、ガスの流れに沿った順方向における超音波の伝搬時間と、流れに逆らった逆方向における超音波の伝搬時間との差に基づいて、ガスの流量が計測可能となっている。なお、超音波流量計80の構成や計測原理は公知であるので詳細な説明は省略する。
【0021】
さて、消音器10は以下のような構成となっている。即ち、図2に示すように、消音器10は円筒形の筒形ボディ11を有している。筒形ボディ11の内径は、パイプ90の内径よりも大径となっている。筒形ボディ11の軸方向の一端部には、円形の小径開口部12が形成され、他端部には小径開口部12よりも大径な大径開口部13が形成されている。小径開口部12の内径は、例えば、パイプ90の内径と同一径となっており、大径開口部13の内径は、例えば、筒形ボディ11の内径と同一径となっている。また、筒形ボディ11の両端部にはフランジ11F,11Fが備えられ、それらフランジ11F,11Fがパイプ90の途中に備えたフランジ90F,90Fに重ねられて連結されている。なお、図2では、筒形ボディ11における小径開口部12をガスの流れの上流側に配置してパイプ90に取り付けているが、逆向きにして取り付けてもよい。
【0022】
筒形ボディ11の内部には、軸方向で一定の間隔を空けて複数の仕切壁14,15が設けられており、それら複数の仕切壁14,15によって筒形ボディ11の内部が複数の部屋16,16,・・・に仕切られている。
【0023】
本実施形態では、複数の仕切壁14,15が、筒形ボディ11の内周面から内側に張り出した円環状の環状仕切壁14と、筒形ボディ11の内周面との間に隙間を空けて配置された円板状の中央仕切壁15との2種類で構成されており、環状仕切壁14と中央仕切壁15とが、筒形ボディ11の軸方向で一定の間隔を空けて交互に配置されている。
【0024】
中央仕切壁15は、筒形ボディ11に備えた小径開口部12及び、環状仕切壁14の径方向中央に形成された円形の中央孔14Aよりも大径となっており、それら中央仕切壁15と中央孔14Aとが筒形ボディ11の軸方向で対向配置されている。また、中央仕切壁15の外周面と筒形ボディ11の内周面との間には環状孔15Aが形成されており、その環状孔15Aと環状仕切壁14とが筒形ボディ11の軸方向で対向配置されている。
【0025】
図3に示すように、中央仕切壁15の外周面からは、径方向外側に向かって複数(例えば4つ)の突出片15H,15Hが突出している。これら突出片15H,15Hは、中央仕切壁15の周方向に均等配置されており、それぞれ筒形ボディ11の内周面に突き当てられている。
【0026】
環状仕切壁14,14と中央仕切壁15,15は、複数の支柱17,17によって連結されてインナーユニット19を構成している。支柱17,17は、環状仕切壁14よりも大径なフランジ板18から起立して筒形ボディ11の軸方向と平行に延びており、環状仕切壁14と中央仕切壁15から突出した突出片15Hとを貫通して、複数の第1と第2の仕切壁14,15とを一定間隔で固定している。このインナーユニット19は、筒形ボディ11の大径開口部13から挿入され、フランジ板18を筒形ボディ11のフランジ11Fとパイプ90のフランジ90Fとの間に挟むことで筒形ボディ11内に位置決めされている。なお、フランジ板18の中央部に貫通形成された円形孔18Aは、例えば、中央孔14A又は小径開口部12と同一径となっている(図2参照)。
【0027】
本実施形態の構成は以上であって、以下作用を説明する。パイプ90内を流れるガスは、小径開口部12から筒形ボディ11内に流入し大径開口部13から流出する。詳細には、ガスは、小径開口部12から最上流の部屋16に流入し、環状孔15Aを通って隣の部屋16に流入し、その部屋16から中央孔14Aを通ってさらに隣の部屋16に流入し、以下、環状孔15Aと中央孔14Aとを交互に通って最後は円形孔18Aから筒形ボディ11の外部に流出する。
【0028】
さて、ガス中を伝搬する超音波ノイズは、ガスと同様に小径開口部12から筒形ボディ11内の最上流の部屋16に進入するが、その部屋16内において中央仕切壁15や筒形ボディ11の内面で反射する。また、環状孔15Aを通って進入した隣の部屋16でも超音波ノイズは反射を繰り返し、中央孔14Aを通って進入したさらに隣の部屋16でも反射を繰り返す。即ち、超音波ノイズは、筒形ボディ11内を通過する間に、筒形ボディ11の内面、環状仕切壁14、中央仕切壁15で多数回反射を繰り返すことになる。そして、反射を繰り返すうちに超音波ノイズは徐々に減衰し、図4(B)に示すように、超音波センサ82の受信波におけるS/N比を、消音器10を設けなかった場合(図4(A)参照)に比べて大きくすることができる。
【0029】
このように、本実施形態によれば、パイプ90を流れるガスを伝搬して超音波流量計80へと向かう超音波ノイズを、筒形ボディ11内で多数回反射させて減衰させることができるから、ガスに含まれる異物(水分、油分、固体粒子等)の有無に拘わらず、超音波ノイズを減衰させることが可能となる。また、インナーユニット19を筒形ボディ11内に挿入するだけで、環状仕切壁14と中央仕切壁15とからなる複数の仕切壁を容易に筒形ボディ11の内部に設けることができる。
【0030】
また、従来の消音器のように、不織布等の吸音材によって超音波ノイズを減衰させるものでは、吸音材の設置面積を大きくするために消音器の軸長が長くなり、その結果、消音器及び超音波流量計の設置に比較的長い直管部が必要となる。これに対し、本実施形態の消音器10は、筒形ボディ11の内部を軸方向で複数の部屋に仕切る複数の仕切壁を設けて、筒形ボディ11の内部で超音波ノイズを多数回反射させて減衰させるようにしたので、従来の消音器に比べて軸長を短縮することが可能となり、その結果、消音器10及び超音波流量計80の設置に必要な直管部を従来よりも短くすることができる。
【0031】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を図5及び図6に基づいて説明する。本実施形態の消音器20は、仕切壁24,24の形状が第1実施形態とは異なっている。即ち、図6に示すように、筒形ボディ11内に備えられた複数の各仕切壁24,24は、全て筒形ボディ11の内径と同一径の円板形をなしている。それら仕切壁24,24の外周面の一部(具体的には、周方向で180度離れた2箇所)には、径方向内側に向かって凹んだ凹部24A,24Aが形成されている。各凹部24Aはそれぞれ「コ」の字形をなしており、それら各凹部24Aと筒形ボディ11の内周面との間で複数の連通孔25,25(図5(B)参照)が形成されている。また、複数の仕切壁24,24の中心部をフランジ板28から起立した支柱17が貫通しており、その支柱17によって複数の仕切壁24,24が一定の間隔で支持されている。これら複数の仕切壁24,24,フランジ板28及び支柱17によってインナーユニット29が構成され(図6参照)、そのインナーユニット29が、上記第1実施形態と同様にして筒形ボディ11内に挿入及び位置決めされている(図5(A)参照)。
【0032】
そして、図5(B)及び図6に示すように、筒形ボディ11の軸方向で隣り合った仕切壁24,24の連通孔25,25(凹部24A,24A)は、筒形ボディ11の軸方向で対向しないように、例えば、筒形ボディ11の周方向で互いに90度ずつずらして配置されている。その他の構成は上記第1実施形態と同一であるので、重複する説明は省略する。本実施形態の構成によっても、上記第1実施形態と同等の作用効果を奏する。
【0033】
[第3実施形態]
本実施形態の消音器30は図7及び図8に示されている。図8に示すように、消音器30の筒形ボディ31は、断面四角形(本実施形態では、例えば、断面長方形)の角筒構造をなしており、その筒形ボディ31の内部に設けられた複数の仕切壁34,34によって、筒形ボディ31の内部に蛇行した流路が形成されている(図7参照)。
【0034】
複数の各仕切壁34,34は、筒形ボディ31の断面の四角形に対して、一辺が同じ長さでその一辺と交差する二辺が短い四角形の板状をなしている。具体的には、仕切壁34,34のうち、向かい合う二辺が、筒形ボディ31の断面の長方形における短辺と同じ長さであり、残り二辺が前記長方形における長辺より短い長方形又は正方形をなしている。そして、各仕切壁34,34と筒形ボディ31の内面との間には、断面四角形(長方形又は正方形)の連通孔34A,34Aが形成されかつ、筒形ボディ31の軸方向で隣り合った仕切壁34,34の間で、連通孔34A,34Aの位置が反対になるように配置されている。換言すれば、筒形ボディ31のうち軸方向と直交する方向で対向した1対の側壁31A,31Aの一方と他方とから交互に仕切壁34,34が突出して、各仕切壁34とその仕切壁34が付き合わされた側壁31A,31Aとの間に断面四角形の連通孔34A,34Aが形成されている。本実施形態の構成でも上記第1実施形態と同等の作用効果を奏する。
【0035】
また、本実施形態では、筒形ボディ31の軸方向で隣り合った仕切壁34,34同士の間隔L1と、連通孔34Aを挟んで対向する仕切壁34の縁部と側壁31Aの内面との間隔L2とが同じとなっている(図7参照)。このような構成としたことで、筒形ボディ31の内部で蛇行した流路の断面積変化を比較的小さくすることができ、消音器30における圧力損失を抑えることが可能になる。
【0036】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0037】
(1)上記第1〜第3実施形態では、超音波流量計80と消音器10,20,30とがパイプ90を間に挟んで間接的に接続されていたが、消音器10,20,30(筒形ボディ11,31)と超音波流量計80(計測管81)とを直接接続してもよい。また、消音器10,20,30は、ノイズ発生源(上記実施形態における減圧弁91)に直接接続してもよい。
【0038】
(2)さらに、消音器10,20,30(筒形ボディ11,31)と超音波流量計80(計測管81)とが一体不可分な構成でもよい。具体的には、例えば、筒形ボディ11,31が計測管81に兼用されていて筒形ボディ11,31内に一対の超音波センサ82,82を内蔵した構成、或いは、計測管81が筒形ボディ11,31に兼用されていて計測管81内に複数の仕切壁(インナーユニット)を内蔵した構成としてもよい。
【0039】
ここで、上記第1〜第3実施形態で説明した消音器10,20,30を備えている本発明の「消音器付超音波流量計100」において、超音波流量計として機能する部分の構成は特に限定するものではない。例えば、上記第1実施形態のように、1対の超音波センサ82,82をガスの流れに対して斜めに交差する方向で対向配置してもよいし、計測管81の内面で超音波を反射させて送受波するように配置してもよいし、図9〜図11に示すように、ガスの流れと平行な方向で対向配置してもよい。なお、図9〜図11に図示された消音器付超音波流量計100において、超音波流量計80は、消音器10,20,30の筒形ボディ11,31に接続されるか又は筒形ボディを兼ねたメーターケース83と、メーターケース83内に収容され、内側にガスが流される計測管81と、その計測管81の両端部の開口に対して離して配置されて計測管81の内側領域を挟んで互いに対向した1対の超音波センサ82,82とを備え(例えば、特開2006−337059号公報を参照)、さらに、各超音波センサ82,82における送受波面の裏側に、ガスの流れを整えるための円錐形又は角錐形の整流部84,84を備えた構成となっている。また、図9〜図12に示した消音器付超音波流量計100では、超音波流量計80の上流側だけに消音器10,20,30を備えているが、超音波流量計80の下流側だけ又は、上流側と下流側の両方に消音器10,20,30を備えていてもよい。
【0040】
(3)上記第1実施形態では、筒形ボディ11が円筒形をなし、環状仕切壁14が円環状をなし、中央仕切壁15が円板状をなしていたが、筒形ボディ11を断面四角形の角筒形とし、環状仕切壁14を四角形の中央孔14Aを有した四角形の環状(枠状)とし、中央仕切壁15を筒形ボディ11の内面との間に四角形の環状孔15Aを有した四角形の板状としてもよい。このような構成でも、上記第1実施形態と同等の作用効果を奏する。
【0041】
(4)上記第1〜第3実施形態において、筒形ボディの内面や複数の仕切壁を、不織布、グラスウール、発泡樹脂等の吸音材で覆った構成としてもよい。
【0042】
(5)上記第1実施形態において、中央仕切壁15及び環状仕切壁14の数は、特に限定するものではなく、中央仕切壁15と環状仕切壁14とを少なくとも1つずつ備えていればよい。
【0043】
(6)上記第2及び第3実施形態において、仕切壁24,34の数は、例えば超音波ノイズの強さに応じてそれぞれ任意の複数に設定すればよい。
【0044】
(7)上記第1〜第3実施形態において、ノイズ発生源が超音波流量計80の上流側及び下流側の両方に存在する場合や、ノイズ発生源が特定できない場合は、超音波流量計80の上流側及び下流側の両方に、消音器10,20,30を配置してもよい。
【0045】
[参考例]
本参考例は前記実施形態を応用したものであって、本発明の技術的範囲には含まれないが本発明と同等の効果を奏する。本参考例の消音器50は、図12に示すように、円筒形の筒形ボディ51と、筒形ボディ51の軸心部に配置された支柱52と、支柱52の外面と筒形ボディ51の内周面との間を連絡しかつ螺旋状に延びた帯壁53とを備えている。また、図13に示すように、支柱52と帯壁53と支柱52を支持する支持ベース54とでインナーユニット55が構成され、そのインナーユニット55が筒形ボディ51の内部に挿入組み付けされている。この消音器50は、筒形ボディ51内に進入した超音波ノイズを、筒形ボディ51の内周面や帯壁53で多数回反射させることで減衰させることができる。さらに、本参考例では、筒形ボディ51の内径及び支柱52の外径を軸方向で均一径にして、筒形ボディ51と支柱52と帯壁53とで囲まれた螺旋状の流路の断面積をその両端間で略一定にすることができ、消音器50における圧力損失を抑えることができる。
【符号の説明】
【0046】
10,20,30 超音波流量計用消音器
11,31 筒形ボディ
14 環状仕切壁
14A 中央孔
15 中央仕切壁
15A 環状孔
16 部屋
17 支柱
19,29 インナーユニット
24,34 仕切壁
25,34A 連通孔
80 超音波流量計
100 消音器付超音波流量計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ内を流れるガスの流量を計測可能な超音波流量計に接続されて、前記ガスを伝搬して前記超音波流量計へと向かう超音波ノイズを減衰させるための超音波流量計用消音器において、
前記パイプに接続されて内部を前記ガスが通過する筒形ボディと、
前記筒形ボディの内部を軸方向で複数の部屋に仕切る複数の仕切壁と、
前記仕切壁に貫通形成されるか又は前記仕切壁と前記筒形ボディの内面との間に形成されて、前記筒形ボディの軸方向で隣接した前記部屋同士を連通する複数の連通孔とを備え、
前記筒形ボディの軸方向で隣り合った前記仕切壁の前記連通孔を、前記筒形ボディの軸方向で対向しないようにずらして配置したことを特徴とする超音波流量計用消音器。
【請求項2】
前記複数の仕切壁同士の間を支柱で連結してなるインナーユニットを前記筒形ボディの内部に備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波流量計用消音器。
【請求項3】
前記筒形ボディの内面から張り出しかつ内側に前記連通孔としての中央孔を有した環状仕切壁と、前記中央孔と同じ又は相似した形状をなしかつ前記筒形ボディの内面との間に前記連通孔としての環状孔を有した中央仕切壁とを、前記筒形ボディの軸方向に交互に並べて前記複数の仕切壁として備えたことを特徴とする請求項2に記載の超音波流量計用消音器。
【請求項4】
前記筒形ボディは、内側が断面四角形となった角筒構造をなし、その筒形ボディの内部の四角形に対して、一辺が同じ長さでその一辺と交差する二辺が短い四角形の板状に各前記仕切壁を形成すると共に、隣り合った前記仕切壁の間で前記連通孔の位置が反対になるように配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波流量計用消音器。
【請求項5】
前記隣り合った仕切壁同士の間隔と、前記連通孔を挟んで対向する前記仕切壁の縁部と前記筒形ボディの内面との間隔とを同じにしたことを特徴とする請求項4に記載の超音波流量計用消音器。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載の超音波流量計用消音器を備えたことを特徴とする消音器付超音波流量計。
【請求項1】
パイプ内を流れるガスの流量を計測可能な超音波流量計に接続されて、前記ガスを伝搬して前記超音波流量計へと向かう超音波ノイズを減衰させるための超音波流量計用消音器において、
前記パイプに接続されて内部を前記ガスが通過する筒形ボディと、
前記筒形ボディの内部を軸方向で複数の部屋に仕切る複数の仕切壁と、
前記仕切壁に貫通形成されるか又は前記仕切壁と前記筒形ボディの内面との間に形成されて、前記筒形ボディの軸方向で隣接した前記部屋同士を連通する複数の連通孔とを備え、
前記筒形ボディの軸方向で隣り合った前記仕切壁の前記連通孔を、前記筒形ボディの軸方向で対向しないようにずらして配置したことを特徴とする超音波流量計用消音器。
【請求項2】
前記複数の仕切壁同士の間を支柱で連結してなるインナーユニットを前記筒形ボディの内部に備えたことを特徴とする請求項1に記載の超音波流量計用消音器。
【請求項3】
前記筒形ボディの内面から張り出しかつ内側に前記連通孔としての中央孔を有した環状仕切壁と、前記中央孔と同じ又は相似した形状をなしかつ前記筒形ボディの内面との間に前記連通孔としての環状孔を有した中央仕切壁とを、前記筒形ボディの軸方向に交互に並べて前記複数の仕切壁として備えたことを特徴とする請求項2に記載の超音波流量計用消音器。
【請求項4】
前記筒形ボディは、内側が断面四角形となった角筒構造をなし、その筒形ボディの内部の四角形に対して、一辺が同じ長さでその一辺と交差する二辺が短い四角形の板状に各前記仕切壁を形成すると共に、隣り合った前記仕切壁の間で前記連通孔の位置が反対になるように配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波流量計用消音器。
【請求項5】
前記隣り合った仕切壁同士の間隔と、前記連通孔を挟んで対向する前記仕切壁の縁部と前記筒形ボディの内面との間隔とを同じにしたことを特徴とする請求項4に記載の超音波流量計用消音器。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1の請求項に記載の超音波流量計用消音器を備えたことを特徴とする消音器付超音波流量計。
【図1】
【図2】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図6】
【図12】
【図13】
【図2】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図6】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−220428(P2012−220428A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88788(P2011−88788)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)
【Fターム(参考)】
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