説明

超音波流量計

【課題】流速にかかわらず流体の流量を正確に測定することができる超音波流量計を提供すること。
【解決手段】超音波流量計は、第1センサ部11において流体Wの流れの正逆方向に超音波S,Sを伝搬させ、超音波S,Sの伝搬時間差に基づいて流体Wの体積流量を算出する。第2センサ部12において、各袋小路部14,15内の通路14a,15aの流体W中に超音波S,Sを伝搬させ、内壁面14b,14c,15b,15cで反射した反射波S31,S32,S41,S42の信号強度を取得する。各信号強度と袋小路部14,15の音響インピーダンスとに基づいて、流体Wの音響インピーダンスを求め、その音響インピーダンスに基づいて、流体Wの質量流量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波の伝搬時間差により流体の流量を測定する超音波流量計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を利用して流体の体積流量を測定する超音波流量計が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この超音波流量計では、測定用流体が流れる配管の上流側及び下流側に超音波振動子を設け、超音波振動子を用いて超音波を送受信する。そして、上流側から下流側に伝搬する超音波の伝搬時間と下流側から上流側に伝搬する超音波の伝搬時間との時間差に基づいて測定用流体の流速を求め、その流速に配管の断面積を乗算することで流体の体積流量を求めている。
【0003】
また、超音波を利用して流体の密度を計測し、その密度と体積流量とを乗算することで流体の質量流量を求める超音波流量計が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2の超音波流量計では、管路内において流体の流れの直交する方向に超音波を伝搬させて、管路の内壁面で反射した超音波の信号強度を受信する。そして、その反射波の信号強度と、管路を構成する材質の音響インピーダンスとに基づいて、流体の音響インピーダンスを求め、さらに、その音響インピーダンスと流体の音速とに基づいて、流体の密度を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−162269号公報
【特許文献2】特開2008−304283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2の超音波流量計では、管路内において流体の流れの直交する方向に超音波を伝搬させて反射波の信号強度を検出している。その超音波流量計において管路を流れる流体の流速が音速と比較して十分に遅い場合には、測定誤差が少なく質量流量を計測することができる。しかしながら、流体の流速が速くなると、流体中を超音波が伝搬する際にその流体の流れによって超音波が下流側に流されてしまい、超音波の伝搬経路が延伸される。具体的には、特許文献2の超音波流量計において、音響放射の中心軸が流体の流れと直交するように超音波振動子を配置している。ここで、流体の音速をCとし、流速をVとする場合、atan(V/C)で求まる角度だけ、超音波振動子から上流方向に傾いた角度で放射された超音波が、対向する壁面で反射して超音波振動子で受信されることとなる。この場合、超音波の伝搬経路の延伸によって音速Cの計測誤差が生じる。さらに、超音波振動子における音響放射の中心軸からのズレによって、受信される信号強度が変化し、それに伴い音響インピーダンスの測定誤差が生じてしまう。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、流体の流速にかかわらず正確な流量を求めることができる超音波流量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、手段1に記載の発明は、流体を流す流路を構成する管路に設けられ、前記管路内において前記流体の流れの正逆方向に超音波を伝搬させてその正方向に伝搬した超音波と逆方向に伝搬した超音波とを受信してそれらの伝搬時間差を検出するための第1センサ部と、前記管路に接続される袋小路部に設けられ、その袋小路部内において前記流体に超音波を伝搬させ、前記袋小路部の内壁面で反射した超音波を受信してその信号強度と伝搬時間とを検出するための第2センサ部と、前記第1センサ部または第2センサ部で検出した超音波の伝搬時間とその超音波の伝搬距離とに基づいて、前記流体の音速を求める音速算出手段と、前記第1センサ部で検出した超音波の伝搬時間差に基づいて、前記流路を流れる流体の体積流量を算出する流量算出手段と、前記第2センサ部で検出した反射波の信号強度と前記袋小路部を構成する材質の音響インピーダンスとに基づいて、前記流体の音響パラメータを求める音響パラメータ算出手段と、前記流体の音響パラメータと前記音速とに基づいて、前記流体の体積流量を質量流量に変換する演算処理、または前記流体の種類を特定してその種類に応じて体積流量を補正する演算処理を行う演算処理手段とを備えたことを特徴とする超音波流量計をその要旨とする。
【0008】
従って、手段1に記載の発明によると、管路に袋小路部が接続されており、その袋小路部に第2センサ部が設けられている。この場合、管路を流れる流体の流速が速くなったとしても、袋小路部内では、その流体の流れの影響を受けずに超音波の送受信を安定的に行うことができる。従って、第2センサ部では、流体の流速にかかわらず、反射波の信号強度を正確に検出することができる。このため、音響パラメータ算出手段により、反射波の信号強度と袋小路部を構成する材質の音響インピーダンスとに基づいて、流体の音響パラメータを正確に求めることができる。また、第2センサ部で検出された超音波の伝搬時間に基づいて、流体中の音速を正確に求めることができる。そして、演算処理手段により、その音響パラメータや音速に基づいて、流体の質量流量や体積流量をより正確に求めることが可能となる。
【0009】
手段2に記載の発明は、手段1において、前記管路には、前記袋小路部として幅の異なる第1袋小路部と第2袋小路部とが接続され、前記第1センサ部は、前記流路の上流側及び下流側において対向するよう配置された一対の第1超音波振動子を有し、前記第2センサ部は、前記第1袋小路部に配置された第2超音波振動子を有するとともに、前記第2袋小路部に配置された第3超音波振動子を有し、前記音響パラメータ算出手段は、前記第2センサ部における前記第2超音波振動子で受信した反射波の信号強度と前記第3超音波振動子で受信した反射波の信号強度とに基づいて、前記流体の音響パラメータを求めることをその要旨とする。
【0010】
従って、手段2に記載の発明によれば、第1センサ部において、流路の上流側及び下流側において対向するように一対の第1超音波振動子が配置されている。これら一対の第1超音波振動子の間で超音波を送受信することにより、流体の流れの正逆方向に超音波を伝搬させ、それら超音波の伝搬時間差を検出することができる。また、管路には、幅の異なる第1袋小路部と第2袋小路部とが接続されている。そして、その第1袋小路部に第2超音波振動子が配置されており、第2超音波振動子により、第1袋小路部内の流体中に超音波を伝搬させ、第1袋小路部の内壁面で反射した反射波の信号強度が検出される。さらに、第2袋小路部に第3超音波振動子が配置されており、第3超音波振動子により、第2袋小路部内の流体中に超音波を伝搬させ、第2袋小路部の内壁面で反射した反射波の信号強度が検出される。ここで、第2袋小路部と第3袋小路部とでは幅が異なるため、各内壁面での反射波の伝搬距離も異なる。このため、第2超音波振動子で検出される反射波と第3超音波振動子で検出される反射波とでは信号強度が異なり、それら信号強度の差に基づいて、流体の音響パラメータを求めることができる。
【0011】
手段3に記載の発明は、手段1において、前記管路には、断面が長方形状に形成された前記袋小路部が接続され、前記第1センサ部は、前記流路の上流側及び下流側において対向するよう配置された一対の第1超音波振動子を有し、前記第2センサ部は、前記袋小路部の短辺側に配置された第2超音波振動子を有するとともに、前記袋小路部の長辺側に配置された第3超音波振動子を有し、前記音響パラメータ算出手段は、前記第2センサ部における前記第2超音波振動子で受信した反射波の信号強度と前記第3超音波振動子で受信した反射波の信号強度とに基づいて、前記流体の音響パラメータを求めることをその要旨とする。
【0012】
従って、手段3に記載の発明によれば、第1センサ部において、流路の上流側及び下流側において対向するように一対の第1超音波振動子が配置されている。これら一対の第1超音波振動子の間で超音波を送受信することにより、流体の流れの正逆方向に超音波を伝搬させ、それら超音波の伝搬時間差を検出することができる。また、管路には、断面が長方形状に形成された袋小路部が接続されている。そして、その袋小路部の短辺側に第2超音波振動子が配置されており、第2超音波振動子により、袋小路部内の流体中に超音波を伝搬させ、その袋小路部の内壁面で反射した反射波の信号強度が検出される。さらに、袋小路部の長辺側に第3超音波振動子が配置されており、第3超音波振動子により、袋小路部内の流体中に超音波を伝搬させ、その袋小路部の内壁面で反射した反射波の信号強度が検出される。このように構成しても、各反射波の伝搬距離が異なるため、第2超音波振動子で検出される反射波と第3超音波振動子で検出される反射波とでは信号強度が異なり、それら信号強度の差に基づいて、流体の音響パラメータを求めることができる。
【0013】
手段4に記載の発明は、手段1において、前記管路には、断面が四角形状に形成された前記袋小路部が接続されるととともに、その袋小路部の内壁面のうちのいずれか1つの面には前記管路を構成する材質とは異なる音響インピーダンスを有する反射板が設けられ、前記第1センサ部は、前記流路の上流側及び下流側において対向するよう配置された一対の第1超音波振動子を有し、前記第2センサ部は、前記袋小路部における反射板と対向する辺側に配置された第2超音波振動子を有するとともに、前記袋小路部における反射板と直交する辺側に配置された第3超音波振動子を有し、前記音響パラメータ算出手段は、前記第2センサ部における前記第2超音波振動子で受信した反射波の信号強度と前記第3超音波振動子で受信した反射波の信号強度とに基づいて、前記流体の音響パラメータを求めることをその要旨とする。
【0014】
従って、手段4に記載の発明によれば、第1センサ部において、流路の上流側及び下流側において対向するように一対の第1超音波振動子が配置されている。これら一対の第1超音波振動子の間で超音波を送受信することにより、流体の流れの正逆方向に超音波を伝搬させ、それら超音波の伝搬時間差を検出することができる。また、管路には、断面が四角形状に形成された袋小路部が接続されており、袋小路部の内面のうちのいずれか1つの面には管路を構成する材質とは異なる音響インピーダンスを有する反射板が設けられている。そして、袋小路部において反射板と対向する辺側に第2超音波振動子が配置されており、第2超音波振動子により、袋小路部内の流体中に超音波を伝搬させ、その袋小路部の反射板で反射した反射波の信号強度が検出される。さらに、袋小路部において反射板と対向しない辺側に第3超音波振動子が配置されており、第3超音波振動子により、袋小路部内の流体中に超音波を伝搬させ、その袋小路部の内壁面で反射した反射波の信号強度が検出される。このようにすると、各反射波の伝搬距離が等しい場合でも、各反射面の音響インピーダンスが異なるため、第2超音波振動子で検出される反射波と第3超音波振動子で検出される反射波とでは信号強度が異なり、それら信号強度の差に基づいて、流体の音響パラメータを求めることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上詳述したように、請求項1〜4に記載の発明によると、流体の流速にかかわらず正確な流量を求めることができる超音波流量計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態の流体供給システムを示す概略構成図。
【図2】第1の実施の形態における超音波流量計の概略構成を示す断面図。
【図3】超音波流量計の電気的構成を示すブロック図。
【図4】各反射波の伝搬時間を示すタイミングチャート。
【図5】流体の流量を算出するための処理例を示すフローチャート。
【図6】第2の実施の形態の流体供給システムを示す概略構成図。
【図7】第3の実施の形態における超音波流量計の概略構成を示す断面図。
【図8】図7の袋小路部におけるA−A線での断面図。
【図9】第4の実施の形態における超音波流量計の概略構成を示す断面図。
【図10】図9の袋小路部におけるB−B線での断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施の形態の流体供給システム1を示す概略構成である。流体供給システム1は、例えば、半導体製造ラインにおいて、半導体洗浄用の薬液を供給するために用いられる。
【0018】
図1に示されるように、流体供給システム1は、超音波流量計2と、超音波流量計2が設けられる流体供給用管路3と、流体供給用管路3の途中に設けられる流量調整バルブ5と、流量調整バルブ5を制御するコントローラ6とを備える。流体供給システム1において、超音波流量計2で計測された体積流量または質量流量の測定値がコントローラ6に送信され、そのコントローラ6が流量調整バルブ5の開度を制御することにより、流体供給用管路3を流れる流体Wの流量が予め設定された所定の流量となるよう調整される。
【0019】
以下、超音波流量計2の具体的な構成について詳述する。
【0020】
図1及び図2に示されるように、超音波流量計2は、略コ字状に形成された配管10(管路)と、その配管10に設けられる第1センサ部11及び第2センサ部12とを備える。超音波流量計2の配管10は直管状の流量計測管13を備え、その流量計測管13よりも下流側の配管10に、第1袋小路部14と第2袋小路部15とが接続されている。本実施の形態の配管10は、耐薬品性に優れるフッ素樹脂(例えばテフロン(登録商標))を用いて形成されている。
【0021】
配管10において、流量計測管13内に形成される流路13aの長さLは、例えば10cmである。流路13aの断面形状は円形であり、その口径は10mm程度である。また、第1袋小路部14内には、配管10の流路10aから分岐した行き止まりの通路14aが形成され、第2袋小路部15内には、配管10の流路10aから分岐した行き止まりの通路15aが形成されている。第1袋小路部14内に形成された通路14aの幅Lは、第2袋小路部15内に形成された通路15aの幅Lよりも短くなっている。具体的には、第1袋小路部14内の通路14aの幅Lは、例えば1cmであり、第2袋小路部15内の通路15aの幅Lは、例えば2cmである。
【0022】
また、配管10内に形成される流路10aは、第1袋小路部14の接続部よりも下流側で幅が狭くなっており、さらに第2袋小路部15の接続部の下流側でも幅が狭くなっている。このように、各袋小路部14,15の接続部にて流路10aの幅を段階的に狭くすることにより、その接続部にて流路10aの内壁面が突出した状態となる。この構成によって、流体Wが袋小路部14,15内の通路14a,15aに導かれ、各通路14a,15a内において流体Wが長時間にわたって滞留することが防止される。
【0023】
第1センサ部11は、流量計測管13と、その流量計測管13における流路13aの上流側及び下流側において対向するよう配置された一対の第1超音波振動子16,17とを有する。また、第2センサ部12は、第1袋小路部14及び第2袋小路部15と、それら袋小路部14,15に設けられる第2超音波振動子18及び第3超音波振動子19とを有する。
【0024】
各第1超音波振動子16,17は、流量計測管13の各端部内に埋設されている。第2超音波振動子18は、第1袋小路部14の内壁に埋設されており、第3超音波振動子19は、第2袋小路部15の内壁に埋設されている。流量計測管13において、各超音波振動子16,17は、流路13aまでの距離が等しくなる位置に固定されている。また、各袋小路部14,15において、各超音波振動子18,19は、通路14a,15aまでの距離が等しくなる位置に固定されている。
【0025】
第1センサ部11において、上流側の第1超音波振動子16は、流路13aを流れる流体Wの流れの正方向に超音波Sを伝搬させ、その正方向に伝搬した超音波Sを下流側の第1超音波振動子17で受信する。さらに、上流側の第1超音波振動子16は、超音波Sが流路13aに入射する際にその内壁面13bで反射した反射波S11を受信する。また、下流側の第1超音波振動子17は、流路13aを流れる流体Wの流れの逆方向に超音波Sを伝搬させ、その逆方向に伝搬した超音波Sを上流側の第1超音波振動子16で受信する。なお、第1超音波振動子16,17の音響放射の中心軸が流路13aの中心軸と一致するよう第1超音波振動子16,17が配置されており、それら第1超音波振動子16,17から発せられた超音波S,Sは、流路13aの端面となる各内壁面13b,13cに対して垂直に交わる角度で入射するようになっている。
【0026】
第2センサ部12において、第2超音波振動子18は、第1袋小路部14における通路14a内の流体W中に超音波Sを伝搬させる。第2超音波振動子18は、超音波Sが通路14aに入射する際にその内壁面14bで反射した反射波S31を受信するとともに、通路14a中の流体Wを伝搬して対向する内壁面14cで反射した反射波S32を受信する。なお、第2超音波振動子18の音響放射の中心軸が通路14aの各内壁面14b,14cと直交するよう第2超音波振動子18が配置されている。その第2超音波振動子18から発せられた超音波Sは、通路14a各内壁面14b,14cに対して垂直に交わる角度で入射するようになっている。
【0027】
また、第2センサ部12において、第3超音波振動子19は、第2袋小路部15における通路15a内の流体W中に超音波Sを伝搬させる。第3超音波振動子19は、超音波Sが通路15aに入射する際にその内壁面15bで反射した反射波S41を受信するとともに、通路15a中の流体Wを伝搬して対向する内壁面15cで反射した反射波S42を受信する。なお、第3超音波振動子19の音響放射の中心軸が通路15aの各内壁面15b,15cと直交するよう第3超音波振動子19が配置されている。その第3超音波振動子19から発せられた超音波Sは、通路15a各内壁面15b,15cに対して垂直に交わる角度で入射するようになっている。
【0028】
超音波流量計2において、第1センサ部11の各第1超音波振動子16,17、第2センサ部12の第2超音波振動子18及び第3超音波振動子19には、制御装置20が電気的に接続されている。
【0029】
図3は、超音波流量計2の電気的構成を示すブロック図である。図3に示されるように、制御装置20は、CPU21、第1信号処理回路22、第2信号処理回路23、メモリ24、入力装置25、表示装置26、データ出力回路27を備える。
【0030】
第1信号処理回路22は、パルス発生回路、受信回路、検波回路、A/D変換回路、及びタイマ等を備え、第1超音波振動子16,17を駆動するための駆動パルスを出力したり、超音波S,Sの伝搬時間を検出したりする。
【0031】
ここで、第1信号処理回路22から上流側の第1超音波振動子16に駆動パルスが供給されると、その第1超音波振動子16が振動することにより、所定周波数(具体的には、1MHzの周波数)の超音波Sが出力される。第1超音波振動子16から出力された超音波Sは、流量計測管13の内壁を介してその内側の流路13aを流れる流体Wに伝搬する。このとき、超音波Sの一部は、計測管13と流体Wとの界面(流路13aの上流側端面となる内壁面13b)で反射するとともに、一部が流路13aの流体W中をその流体Wの流れの正方向に伝搬して下流側の第1超音波振動子17で受信される。またこのとき、超音波Sが流路13aに入射する際に内壁面13bで反射した反射波S11が上流側の第1超音波振動子16で受信され、電気信号に変換される。また、第1信号処理回路22から下流側の第1超音波振動子17に駆動パルスが供給されると、その第1超音波振動子17が振動することにより、所定周波数(具体的には、1MHzの周波数)の超音波Sが出力される。そして、その超音波Sは、流路13aの流体W中をその流体Wの流れの逆方向に伝搬して上流側の第1超音波振動子16で受信され、電気信号に変換される。
【0032】
第1信号処理回路22は、各第1超音波振動子16,17で受信された超音波S,Sの信号や反射波S11の信号を取り込み、信号増幅処理や検波処理等を行うことで、超音波S,Sや反射波S11に対応する1パルス分の超音波信号を抽出する。そして、第1信号処理回路22は、これら超音波信号に基づいて、流体Wの流れの正方向に伝搬した超音波Sの伝搬時間や逆方向に伝搬した超音波Sの伝搬時間を計測するとともに、流路13aに入射する際にその内壁面13bで反射した反射波S11の伝搬時間を計測する。そして、第1信号処理回路22は、計測した伝搬時間のデータをCPU21に出力し、CPU21は、それらデータを取り込んで、メモリ24に一旦記憶する。
【0033】
また、第2信号処理回路23も同様に、パルス発生回路、受信回路、検波回路、A/D変換回路等を備え、第2超音波振動子18及び第3超音波振動子19を駆動するための駆動信号を出力したり、反射波S31,S32,S41,S42の信号強度を検出したりする。
【0034】
ここで、第2信号処理回路23から第2超音波振動子18に駆動パルスが供給されると、その第2超音波振動子18が振動することにより、所定周波数(具体的には、1MHzの周波数)の超音波Sが出力される。第2超音波振動子18から出力された超音波Sは、第1袋小路部14の内壁を介して通路14a内の流体Wに伝搬する。このとき、超音波Sの一部は、第1袋小路部14と流体Wとの界面(通路14aの内壁面14b)で反射する。また、超音波Sの一部は、通路14aの流体W中を伝搬して、対向する内壁面14cで反射する。そして、これらの反射波S31,S32が第2超音波振動子18で受信され、電気信号に変換される。
【0035】
また、第2信号処理回路23から第3超音波振動子19に駆動パルスが供給されると、その第3超音波振動子19が振動することにより、所定周波数(具体的には、1MHzの周波数)の超音波Sが出力される。第3超音波振動子19から出力された超音波Sは、第2袋小路部15の内壁を介して通路15a内の流体Wに伝搬する。このとき、超音波Sの一部は、第2袋小路部15と流体Wとの界面(通路15aの内壁面15b)で反射する。また、超音波Sの一部は、通路15aの流体W中を伝搬して、対向する内壁面15cで反射する。そして、これらの反射波S41,S42が第3超音波振動子19で受信され、電気信号に変換される。
【0036】
第2信号処理回路23は、第2超音波振動子18や第3超音波振動子19で受信された反射波S31,S32,S41,S42の信号を取り込み、信号増幅処理や検波処理等を行うことで、反射波S31,S32,S41,S42に対応する1パルス分の超音波信号を抽出する。そして、第2信号処理回路23は、その超音波信号に基づいて、各反射波S31,S32,S41,S42の信号強度を検出し、各反射波S31,S32,S41,S42の信号強度のデータをCPU21に出力する。CPU21は、それらデータを取り込んで、メモリ24に一旦記憶する。
【0037】
CPU21は、メモリ24を利用して制御プログラムを実行し、装置全体を統括的に制御する。制御プログラムとしては、音速、密度、及び流量等を算出するためのプログラム、測定値を表示するためのプログラムなどを含む。なお、CPU21が実行するプログラムとしては、メモリカードなどの記憶媒体に記憶されたプログラムや、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよく、その実行時には、メモリ24に読み込んで使用する。
【0038】
表示装置26は、例えば液晶ディスプレイであり、音速、密度、体積流量、及び質量流量の測定値を表示するために用いられる。入力装置25は、各種の操作ボタンを含み、測定の開始・終了、表示モードの設定などを行うために用いられる。データ出力回路27は、データ出力用のインターフェース(例えば、RS232などのポート)を含み、測定した流量に関するデータをコントローラ6に転送する。
【0039】
次に、本実施の形態における流体W中の音速、流速、及び体積流量の具体的な算出方法について説明する。
【0040】
まず、第1センサ部11において、上流側の第1超音波振動子16から超音波Sを送信する。この超音波Sの送信タイミング(図4ではt=0)を基準として、内壁面13bでの反射波S11が第1超音波振動子16で受信されるまでの時間tを計測するとともに、流路13aにおける流体Wの流れの正方向に伝搬した超音波Sが第1超音波振動子17で受信されるまでの時間tを計測する(図4参照)。
【0041】
その後、第1センサ部11において、下流側の第1超音波振動子17から超音波Sを送信する。この超音波Sの送信タイミング(t=0)を基準として、流路13aにおける流体W中の流れの逆方向に伝搬した超音波Sが第1超音波振動子16で受信されるまでの時間tを計測する(図4参照)。
【0042】
本実施の形態の超音波流量計2では、各第1超音波振動子16,17から流路13aまでの距離が等しくなるよう各振動子16,17を固定している。このため、第1超音波振動子17側での流路13aの内壁面13cの反射波の伝搬時間は第1超音波振動子16側と同様に時間tとなる。
【0043】
従って、第1センサ部11の流路13aの流体W中を正方向へ伝搬する超音波Sの伝搬時間Tは、次式(1)で求められる。
【数1】

【0044】
また、流路13aの流体W中を逆方向へ伝搬する超音波Sの伝搬時間Tは、次式(2)で求められる。
【数2】

【0045】
従って、各時間t,t,tの計測値を式(1),(2)に代入することにより、流路13aにおける正方向への超音波Sの伝搬時間Tと逆方向への超音波Sの伝搬時間Tとを求めることができる。
【0046】
ここで、第1センサ部11の流路13aの長さをL、流体W中の音速をC、流速をVとすると、各伝搬時間T,Tは、次式(3),(4)で表すことができる。
【数3】

【数4】

【0047】
これら式(3),(4)により、音速C及び流速Vは次式(5),(6)のように表すことができる。
【数5】

【数6】

【0048】
そして、これら式(5),(6)に、上式(1),(2)で算出した伝搬時間T,Tを代入することにより、流体Wの音速Cと流速Vとを求めることができる。また、流路13aの断面積をAとすると、次式(7)によって流体Wの体積流量Qが求められる。
【数7】

【0049】
なお、実際の流量測定時には、流量計測管13の両端のコーナー部において流体Wの流れが乱れる。また、流量計測管13において中央部の方が側壁側よりも流体Wの流れが速くなる。従って、この流体Wの流速の分布を考慮して補正演算を行うことにより、より正確な体積流量Qが算出される。
【0050】
次に、流体Wの音響インピーダンス、密度、及び質量流量の算出方法について説明する。
【0051】
第2センサ部12において、第1袋小路部14の第2超音波振動子18から発せられた超音波Sの一部は、通路14aに入射する際にその内壁面14bで反射するとともに、一部が通路14aの流体W中を伝搬して内壁面14cでも反射する。また、第2袋小路部15の第3超音波振動子19から発せられた超音波Sの一部は、通路15aに入射する際にその内壁面15bで反射するとともに、一部が通路15aの流体W中を伝搬して下流側の内壁面15cでも反射する。
【0052】
これら内壁面14b,14c,15b,15cでの各反射波S31,S32,S41,S42の信号強度は、次式(8),(9)の関係が成り立つ。
【数8】

【数9】

【0053】
ここで、αは、流体Wの減衰定数であり、Zは、配管10の袋小路部14を構成するフッ素樹脂の音響インピーダンスであり、Zは、流体Wの音響インピーダンスである。
【0054】
式(8)により、各反射波S31,S32,S41,S42の信号強度から、次式(10)のように流体Wの減衰定数αが求められる。
【数10】

【0055】
また、上式(9)により次式(11)の2次方程式の関係が成り立つ。
【数11】

【0056】
そして、各反射波S31,S32の信号強度と音響インピーダンスZと減衰定数αとに基づいて、上式(11)の2次方程式の解を求めることにより、流体Wの音響インピーダンスZを求めることができる。
【0057】
また、流体Wの密度ρは、流体Wの音響インピーダンスZと音速Cとに基づいて次式(12)により求められる。
【数12】

【0058】
さらに、上式(7)で求めた体積流量Qと上式(12)で求めた密度ρとを乗算することにより次式(13)のように流体Wの質量流量Mが求められる。
【数13】

【0059】
次に、本実施の形態において、流体Wの各パラメータを測定するための処理例について図5のフローチャートを用いて説明する。なお、図5の処理は、作業者が入力装置25に設けられている開始ボタンを操作したときに開始される。
【0060】
まず、CPU21は、第1信号処理回路22を動作させ、第1センサ部11における上流側の第1超音波振動子16及び下流側の第1超音波振動子17に対して駆動パルスを順次供給する(ステップ100)。これにより、第1センサ部11の各第1超音波振動子16,17において、流体Wの流れの正方向及び逆方向に超音波S,Sの送受信が行われる。このとき、第1信号処理回路22において、各超音波振動子16,17による超音波S,Sの送信タイミングを基準(図4ではt=0)として、第1超音波振動子16にて反射波S11が受信されるまでの時間t、第1超音波振動子17にて超音波Sが受信されるまでの時間t、及び第1超音波振動子16にて超音波Sが受信されるまでの時間tが計測される(図4参照)。そして、CPU21は、それら計測時間t,t,tのデータを第1信号処理回路22から取り込み、メモリ24に一旦記憶する。
【0061】
また、CPU21は、第1信号処理回路22の動作と並行して、第2信号処理回路23を動作させ、第2センサ部12における第2超音波振動子18及び第3超音波振動子19に対して駆動パルスを供給する。これにより、第2センサ部12において、第2超音波振動子18から通路14aの流体Wに超音波Sが伝搬され、反射波S31,S32が受信される。また、第3超音波振動子19から通路15aの流体Wに超音波Sが伝搬され、反射波S41,S42が受信される。このとき、第2信号処理回路23では、第2超音波振動子18で受信した各反射波S31,S32の信号強度が検出されるとともに第3超音波振動子19で受信した各反射波S41,S42の信号強度が検出される。そして、CPU21は、それら反射波S31,S32,S41,S42の信号強度のデータを第1信号処理回路23から取り込んでメモリ24に一旦記憶する。
【0062】
CPU21は、ステップ100で取得した時間t,t,tのデータに基づいて、上記式(1),(2)に対応した演算を行うことにより、流路13aを正方向に伝搬した超音波Sの伝搬時間Tと逆方向に伝搬した超音波Sの伝搬時間Tとを算出する(ステップ110)。そして、音速算出手段としてのCPU21は、それら伝搬時間T,Tを用い、上式(5),(6)に対応した演算を行うことにより、流体W中の音速Cと流速Vとを算出する(ステップ120)。さらに、流量算出手段としてのCPU21は、上式(7)に示されるように、流体Wの流速Vと流路13aの断面積Aとを乗算することにより、流体Wの体積流量Qを算出する(ステップ130)。
【0063】
その後、CPU21は、第2センサ部12の各超音波振動子18,19を用いて取得した反射波S31,S32,S41,S42の信号強度とをメモリ24から読み出す。そして、音響パラメータ算出手段としてのCPU21は、それら反射波S31,S32,S41,S42の信号強度と袋小路部14,15(フッ素樹脂)の音響インピーダンスZとに基づいて、流体Wの音響インピーダンスZを求める(ステップ140)。さらに、CPU21は、流体Wの音響インピーダンスZを音速Cで除算することにより流体Wの密度ρを求める(ステップ150)。また、演算処理手段としてのCPU21は、体積流量Qと密度ρとを乗算することにより質量流量Mを求める(ステップ160)。
【0064】
その後、CPU21は、質量流量Mの測定値を表示装置26に表示させる(ステップ170)。なお、表示装置26には、質量流量M以外に音速C、密度ρ、音響インピーダンスZなどの測定値を表示させてもよい。そして、CPU21は、流量の測定処理を継続するか否かを判定する(ステップ180)。具体的には、CPU21は、入力装置25の終了ボタンが操作されているか否かを判定し、終了ボタンが操作されていない場合には、ステップ100の処理に戻り、ステップ100〜ステップ180の処理を再度行う。そして、入力装置25の終了ボタンが操作された場合、CPU21は図5の処理を終了する。
【0065】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0066】
(1)本実施の形態の超音波流量計2では、第2センサ部12において、第1袋小路部14及び第2袋小路部15の通路14a,15a内の流体Wに超音波S,Sを伝搬させている。この場合、配管10を流れる流体Wの流速が速くなったとしても、通路14a,15a内では、その流れの影響を受けずに超音波S,Sの送受信を安定的に行うことができる。従って、第2センサ部12では、流体Wの流速Vにかかわらず、反射波S31,S32,S41,S42の信号強度を正確に検出することができる。このため、それら信号強度に基づいて、流体Wの音響インピーダンスZを正確に求めることができる。そして、その音響インピーダンスZに基づいて、流体Wの質量流量Mを正確に求めることができる。また、流体Wの質量流量Mに応じてコントローラ6が調整バルブ5の開度を制御することにより、流体供給用管路3を流れる流体Wの質量流量Mをより正確に調整することができる。
【0067】
(2)本実施の形態の超音波流量計2では、配管10における各袋小路部14,15の接続部にて流路10aの幅を段階的に狭くすることにより流路10aの内壁面を突出させている。この構成によって、各袋小路部14,15の通路14a,15a内に流体Wを効率よく導くことができる。このようにすると、各通路14a,15a内で流体Wが滞留することなく、流路10aから新たな流体Wが継続的に流入する。この結果、流路10aを流れる流体Wの音響インピーダンスZや密度ρなどの音響パラメータが変化しても、その音響パラメータをリアルタイムに測定することができる。
【0068】
(3)本実施の形態の超音波流量計2では、流体Wの体積流量Qや質量流量Mだけではなく、流体Wの音速Cや密度ρを計測できることから、これらの計測情報に基づいて、流体供給システム1の異常を速やかに検知することが可能となる。
[第2の実施の形態]
【0069】
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を図面に基づき説明する。本実施の形態の流体供給システム1は、半導体製造ラインにおいて、シリコン基板(ウェハ)の各種表面処理を行うための複数種類の薬液(例えば、半導体洗浄用薬液)を供給するシステムとして用いられる。
【0070】
図6に示されるように、流体供給システム1は、超音波流量計2と、複数種類の薬液W1〜W4(流体)がそれぞれ供給される複数本の流体供給用管路31〜34と、超音波流量計2が設けられる流体出力用管路35と、流体供給用管路31〜34と流体出力用管路35とが接続される流路切り替え装置36とを備える。
【0071】
流路切り替え装置36は、切り替えバルブ37と、その切り替えバルブ37を駆動制御するコントローラ38とを備え、コントローラ38によって切り替えバルブ37を動作させることで、各流体供給用管路31〜34から供給される複数種類の流体W1〜W4のうちのいずれか1つの流体Wを流体出力用管路35に供給するよう構成されている。なお、本実施の形態の流体供給システム1では、各流体W1〜W4は、一定の温度(例えば、20℃)となるよう温度調節された状態で供給される。
【0072】
超音波流量計2は、第1の実施の形態と同一構成(図2及び図3参照)であり、流量Qを算出するための処理プログラムが上記第1の実施の形態と異なる。この処理プログラムは、予めメモリ24に記憶されている。
【0073】
本実施の形態の流体供給システム1では、複数種類の流体W1〜W4のうちのいずれかの流体Wを供給する構成であり、各流体W1〜W4の種類に応じて流れの特性が異なる。このため、超音波流量計2では、流速Vに基づいて算出した体積流量Qに対して流体W1〜W4の種類に応じた流量補正を行うように構成している。
【0074】
具体的には、超音波流量計2の流量計測管13内における流速分布(流体Wの流れの特性)は、次式(14)で示されるレイノルズ数Reによって決定される。
【数14】

【0075】
ここで、Vは特性流速、Lは特性長さ、 は動粘度係数である。特性長さLは、管の形状によって決まる長さである。所定形状の流量計測管13で流体Wの流量Qを測定する場合、レイノルズ数Reは、流体Wの流速Vに比例し、動粘度係数 に反比例して変化する。従って、流体Wの動粘度係数 によって流量計測管13内での流速分布に違いが生じ、それに応じて誤差が生じて計測値が変化する。
【0076】
表1には、複数種類の薬液の音速C、密度ρ、動粘度係数 に関するデータを示している。なおここでは、20℃における純水、フッ酸、塩酸、アンモニア水溶液、過酸化水素水を薬液の具体例として示している。
【表1】

【0077】
表1に示されるように、純水とフッ酸とは密度ρが1.00g/cmであるため、密度ρだけでは、流体Wが純水であるかフッ酸であるかの特定は困難であるが、音速Cを同時に測定することにより、流体Wの特定が可能となる。また、計測した流体Wの音速Cが1493m/sであったとしても、計測誤差によって流体Wが純水かアンモニア水溶液かの判断が困難となることがあるが、密度ρを同時に測定することによって、流体Wの特定を確実に行うことができる。
【0078】
本実施の形態の超音波流量計2では、表1に示されるような複数種類の薬液に関するデータが流量補正を行うためのデータとしてメモリ24に予め記憶されている。そして、CPU21は、第1の実施の形態と同様の演算処理を行うことで、流体Wの音速Cと密度ρとを算出し、それら流体Wの音速Cと密度ρとに基づいて、メモリ24に記憶されているデータを参照することにより、流体出力用管路35に流れる流体Wの種類を特定する。その後、CPU21は、その特定した種類に応じた動粘度係数 のデータをメモリ24から読み出し、そのデータを使用して流量Qの補正を行う。なおここでは、動粘度係数 と補正前の流量Qとに応じた補正率の関係を示す補正曲線のデータを用いて補正率を求め、その補正率によって補正前の流量Qを補正することで補正後の流量Qを求める。
【0079】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0080】
(1)本実施の形態の超音波流量計2では、流体Wの密度ρを正確に求めることができ、その密度ρに基づいて流体Wの種類を確実に特定することができる。そして、その特定した流体Wの種類に応じた流量補正を行うことができる。このようにすると、複数本の流体供給用管路31〜34毎に流量計を設けなくても、複数種類の流体W1〜W4の流量Qを正確に測定することができるため、流体供給システム1の製造コストを低減することが可能となる。
[第3の実施の形態]
【0081】
次に、本発明を具体化した第3の実施の形態を図面に基づき説明する。本実施の形態では、超音波流量計2における第2センサ部12の構成を変更した点が上記第1の実施の形態と異なる。なお、本実施の形態の超音波流量計2において、第1センサ部11の構成や制御装置20の電気的構成は第1の実施の形態と同様である。
【0082】
具体的には、図7に示されるように、超音波流量計2の配管10は、第1の実施の形態と同様に直管状の流量計測管13を備える。その流量計測管13よりも下流側の配管10に、断面が長方形状に形成された行き止まりの通路41aを有する袋小路部41が接続されている。
【0083】
図8に示されるように、袋小路部41において、短辺側の内壁に第2超音波振動子18が配置されるとともに、長辺側の内壁に第3超音波振動子19が配置されている。本実施の形態では、袋小路部41及び各超音波振動子18,19によって第2センサ部12が構成されている。なお、袋小路部41に形成される通路41aの短辺側の幅Lは1cmであり、長辺側の幅Lは2cmである。
【0084】
袋小路部41において、第2超音波振動子18は、通路41aの短辺側から流体Wに超音波Sを伝搬させる。このとき、第2超音波振動子18は、超音波Sが通路41aに入射する際にその内壁面41bで反射した反射波S31を受信するとともに、通路41aの流体W中を伝搬して対向する内壁面41cで反射した反射波S32を受信する。
【0085】
また、袋小路部41において、第3超音波振動子19は、通路41aの長辺側から流体Wに超音波Sを伝搬させる。このとき、第3超音波振動子19は、超音波Sが通路41aに入射する際にその内壁面41dで反射した反射波S41を受信するとともに、通路41aの流体W中を伝搬して対向する内壁面41eで反射した反射波S42を受信する。
【0086】
このように、超音波流量計2を構成した場合でも、第2超音波振動子18を用いて取得した反射波S31,S32の信号強度と、第3超音波振動子19を用いて取得した反射波S41,S42の信号強度とに基づいて、上記第1の実施の形態と同様の手法で流体Wの音響インピーダンスZを求めることができる。さらに、他のパラメータ(音速C、流速V、密度ρ、体積流量Q及び質量流量M)も第1の実施の形態と同様に求めることができる。また、本実施の形態では、1つの袋小路部41を設ければよいため、超音波流量計2の小型化が可能となる。
[第4の実施の形態]
【0087】
次に、本発明を具体化した第4の実施の形態を説明する。本実施の形態では、超音波流量計2における第2センサ部12の構成を変更した点が上記第1の実施の形態と異なる。
【0088】
具体的には、図9に示されるように、超音波流量計2の配管10は、第1の実施の形態と同様に直管状の流量計測管13を備える。その流量計測管13の上流側端部に、断面が正方形状に形成された行き止まりの通路43aを有する袋小路部43が接続されている。
【0089】
図10に示されるように、袋小路部43における通路43aの内壁面43b,43c,43d,43eのうちの1つの面43c(図10では通路43aの下面)には、配管10を構成する材質とは異なる音響インピーダンスを有する反射板45が設けられている。
【0090】
この袋小路部43において、反射板45と対向する辺側に第2超音波振動子18が配置されるとともに、反射板45と直交する辺側に第3超音波振動子19が配置されている。本実施の形態では、袋小路部43及び各超音波振動子18,19によって第2センサ部12が構成されている。なお、袋小路部43における各内壁面43b〜43eの幅Lは全て等しく、例えば1cmである。
【0091】
袋小路部43において、第2超音波振動子18は、通路43aの流体Wに超音波Sを伝搬させる。このとき、第2超音波振動子18は、超音波Sが通路43aに入射する際にその内壁面43bで反射した反射波S31を受信するとともに、通路43aの流体W中を伝搬して対向する反射板45の内壁面41cで反射した反射波S32を受信する。
【0092】
また、袋小路部43において、第3超音波振動子19は、通路43aの流体Wに超音波Sを伝搬させる。このとき、第3超音波振動子19は、超音波Sが通路43aに入射する際にその内壁面43dで反射した反射波S41を受信するとともに、通路43aの流体W中を伝搬して対向する内壁面43eで反射した反射波S42を受信する。
【0093】
このように、超音波流量計2を構成した場合、第2超音波振動子18で受信する反射波S32と第3超音波振動子19で受信する反射波S42とについて、通路43a内における伝搬距離(=2L)は同じであるが、反射波S32の反射面43cと反射波S42の反射面43eの材質が異なるため、各反射波S32,S42の信号強度が異なる。そして、それら信号強度の差に基づいて、流体Wの音響インピーダンスZを求めることができる。さらに、他のパラメータ(音速C、流速V、密度ρ、体積流量Q及び質量流量M)も第1の実施の形態と同様に求めることができる。また、本実施の形態では、1つの袋小路部43を設ければよいため、超音波流量計2の小型化が可能となる。さらに、本実施の形態の超音波流量計2では、配管10において、流量計測管13の流路13aに流体Wを流入させる流入側の流路10aの延長線上に袋小路部43の通路43aが配置されている。このため、袋小路部43の通路43a内に流体Wを効率よく導くことができ、通路43a内にて流体Wが滞留することがない。この結果、流路10aを流れる流体Wの音響インピーダンスZや密度ρなどの音響パラメータが変化しても、その音響パラメータをリアルタイムに測定することができる。
【0094】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0095】
・上記各実施の形態では、超音波流量計2の第1センサ部11における第1超音波振動子16,17を用いて超音波S,Sの伝搬時間T,Tを取得し、それら伝搬時間T,Tから流体Wの音速Cを求めるものであったが、これに限定されるものではない。例えば、第2センサ部12の第2超音波振動子18や第3超音波振動子19を用いて超音波S,Sの伝搬時間から流体Wの音速Cを求めてもよい。
【0096】
・上記第2の実施の形態では、密度ρ及び音速Cにより流体Wの種類を特定するものであったが、これに限定されるものではない。密度ρに代えて音響インピーダンスZを用いて流体Wの種類を特定するように構成してもよい。ただし、この場合には、複数種類の流体Wの音速C、音響インピーダンスZ、動粘度係数 に関するデータをメモリ24に記憶しておき、そのデータを使用して流体Wの種類を特定する。また、使用する流体Wの種類によっては、密度ρや音響インピーダンスZのみで特定が可能な場合もあるので、その場合には、音速Cを使用しないで、算出した密度ρや音響インピーダンスZにより流体Wの特定を行うようにしてもよい。
【0097】
・上記第2実施の形態では、温度が一定(例えば、20℃)に保たれる流体供給システム1に具体化していたが、これに限定されるものではない。流体Wの温度が変化する場合には、超音波流量計2の配管10の途中にサーミスタなどの温度センサを設け、流体Wの温度を流体Wの密度ρと同時に測定する。また、温度に応じた密度ρや動粘度係数 などのデータをメモリ24に記憶しておく。そして、温度センサで検出した温度に応じたデータを参照し、必要時には補間や直線近似などの演算を行うことにより、密度ρや動粘度係数 を求める。このようにすれば、流体Wの温度が変化した場合でも、流体Wの種類の特定を確実に行うことができ、温度に応じた流量補正を行うことができる。
【0098】
・上記各実施の形態において、超音波流量計2で測定した音響インピーダンスZや密度ρに基づいて流体Wの濃度を求め、その濃度に応じて体積流量Qの補正を行うように構成してもよい。具体的には、例えば、燃料電池に流体Wを供給するシステムに適用する場合、超音波流量計2を用いて、流体Wのメタノール濃度と流量とを同時に測定することができるため、濃度計と流量計とを別々に設ける場合と比較して、部品コストを低減することができる。
【0099】
・上記各実施の形態では、第1センサ部11において、流体Wの流れと平行な方向に超音波S,Sが伝搬するよう一対の超音波振動子16,17を配置するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、流体Wの流れ方向に対して所定の角度(例えば、45°の角度)で超音波S,Sが伝搬するように各超音波振動子16,17を設けてもよい。
【0100】
・上記第1〜第3の実施の形態では、配管10において流量計測管13の下流側に各袋小路部14,15,41を接続するものであったが、流量計測管13の上流側に各袋小路部14,15を接続してもよい。また、第4の実施の形態では、流量計測管13の上流側端部に袋小路部43を接続するものであったが、流量計測管13の下流側端部に袋小路部43を接続してもよい。
【0101】
・上記各実施の形態の超音波流量計2において、配管10に各袋小路部14,15,41,43が一体的に設けられているものであったが、これに限定されるものではない。具体的には、配管10と袋小路部14,15,41,43とを別体で形成し、配管10に対して袋小路部14,15,41,43を着脱可能に装着するように構成してもよい。
【0102】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0103】
(1)手段1において、前記音響パラメータ算出手段は、前記流体の音響インピーダンスを求める手段であり、前記演算処理手段は、前記流体の音響インピーダンスと前記音速とに基づいて、前記流体の密度を求める密度算出手段と、前記流体の体積流量と前記密度とに基づいて、前記流体の質量流量を求める質量流量算出手段とを備えたことを特徴とする超音波流量計。
【0104】
(2)手段1において、前記音響パラメータ算出手段は、前記流体の音響インピーダンスを算出する手段、またはその音響インピーダンスと前記音速とに基づいて前記流体の密度を算出する手段であり、前記演算処理手段は、複数種類の流体の音響インピーダンスまたは密度に関するデータを記憶する記憶手段と、前記データと前記音響パラメータ算出手段が算出した前記流体の音響インピーダンスまたは密度とに基づいて、前記管路を流れる流体の種類を特定する流体特定手段と、前記流体の種類に応じて前記流量算出手段が算出した前記流体の流量を補正する流量補正手段とを備えたことを特徴とする超音波流量計。
【0105】
(3)手段1において、前記管路における袋小路部の接続部には、前記流体を袋小路部内に導くように内壁面が突出していることを特徴とする超音波流量計。
【0106】
(4)手段1において、前記袋小路部は、前記第1センサ部において前記超音波が伝搬される流路の上流側端部または下流側端部に接続されることを特徴とする超音波流量計。
【0107】
(5)手段1乃至4のいずれかにおいて、前記第2センサ部を設けた前記袋小路部が、前記管路に対して着脱可能に装着されることを特徴とする超音波流量計。
【符号の説明】
【0108】
2…超音波流量計
3…流体供給用管路
10…管路を構成する配管
11…第1センサ部
12…第2センサ部
13…管路を構成する流量計測管
13a…流路
14…第1袋小路部
14b,14c…反射面としての内壁面
15…第2袋小路部
15b,15c…反射面としての内壁面
16,17…第1超音波振動子
18…第2超音波振動子
19…第3超音波振動子
21…音速算出手段、流量算出手段、音響パラメータ算出手段、演算手段としてのCPU
41,43…袋小路部
41b〜41e,43b〜43e…反射面としての内壁面
45…反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流す流路を構成する管路に設けられ、前記管路内において前記流体の流れの正逆方向に超音波を伝搬させてその正方向に伝搬した超音波と逆方向に伝搬した超音波とを受信してそれらの伝搬時間差を検出するための第1センサ部と、
前記管路に接続される袋小路部に設けられ、その袋小路部内において前記流体に超音波を伝搬させ、前記袋小路部の内壁面で反射した超音波を受信してその信号強度と伝搬時間とを検出するための第2センサ部と、
前記第1センサ部または第2センサ部で検出した超音波の伝搬時間とその超音波の伝搬距離とに基づいて、前記流体の音速を求める音速算出手段と、
前記第1センサ部で検出した超音波の伝搬時間差に基づいて、前記流路を流れる流体の体積流量を算出する流量算出手段と、
前記第2センサ部で検出した反射波の信号強度と前記袋小路部を構成する材質の音響インピーダンスとに基づいて、前記流体の音響パラメータを求める音響パラメータ算出手段と、
前記流体の音響パラメータと前記音速とに基づいて、前記流体の体積流量を質量流量に変換する演算処理、または前記流体の種類を特定してその種類に応じて体積流量を補正する演算処理を行う演算処理手段と
を備えたことを特徴とする超音波流量計。
【請求項2】
前記管路には、前記袋小路部として幅の異なる第1袋小路部と第2袋小路部とが接続され、
前記第1センサ部は、前記流路の上流側及び下流側において対向するよう配置された一対の第1超音波振動子を有し、
前記第2センサ部は、前記第1袋小路部に配置された第2超音波振動子を有するとともに、前記第2袋小路部に配置された第3超音波振動子を有し、
前記音響パラメータ算出手段は、前記第2センサ部における前記第2超音波振動子で受信した反射波の信号強度と前記第3超音波振動子で受信した反射波の信号強度とに基づいて、前記流体の音響パラメータを求める
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波流量計。
【請求項3】
前記管路には、断面が長方形状に形成された前記袋小路部が接続され、
前記第1センサ部は、前記流路の上流側及び下流側において対向するよう配置された一対の第1超音波振動子を有し、
前記第2センサ部は、前記袋小路部の短辺側に配置された第2超音波振動子を有するとともに、前記袋小路部の長辺側に配置された第3超音波振動子を有し、
前記音響パラメータ算出手段は、前記第2センサ部における前記第2超音波振動子で受信した反射波の信号強度と前記第3超音波振動子で受信した反射波の信号強度とに基づいて、前記流体の音響パラメータを求める
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波流量計。
【請求項4】
前記管路には、断面が四角形状に形成された前記袋小路部が接続されるととともに、その袋小路部の内壁面のうちのいずれか1つの面には前記管路を構成する材質とは異なる音響インピーダンスを有する反射板が設けられ、
前記第1センサ部は、前記流路の上流側及び下流側において対向するよう配置された一対の第1超音波振動子を有し、
前記第2センサ部は、前記袋小路部における反射板と対向する辺側に配置された第2超音波振動子を有するとともに、前記袋小路部における反射板と直交する辺側に配置された第3超音波振動子を有し、
前記音響パラメータ算出手段は、前記第2センサ部における前記第2超音波振動子で受信した反射波の信号強度と前記第3超音波振動子で受信した反射波の信号強度とに基づいて、前記流体の音響パラメータを求める
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−261874(P2010−261874A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114050(P2009−114050)
【出願日】平成21年5月9日(2009.5.9)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】