説明

超音波診断システム、超音波診断装置用ロボット、及びプログラム

【課題】 超音波プローブの配置状態を把握して超音波プローブの動作制御を行うことで、WIの計測に最適となる状態で超音波プローブを自動的にセット可能にすること。
【解決手段】 超音波診断システム10は、超音波プローブ15を有する超音波診断装置11と、超音波プローブ15を動作させる超音波診断装置用ロボット12とを備えている。超音波診断装置11は、超音波画像に基づく画像処理により、超音波画像が得られた時の超音波プローブ15の血管に対する配置状態を検出するプローブ状態検出機能23を備えている。超音波診断装置用ロボット12は、超音波プローブ15が保持されるロボットアーム53の動作を制御する制御装置54を備えている。制御装置54は、超音波診断装置11で検出された超音波プローブ15の配置状態に基づき、超音波診断装置11でのデータ計測時に最適な状態で超音波プローブ13を配置するように動作制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管の状態を計測する超音波診断システム、超音波診断装置用ロボット、及びプログラムに係り、更に詳しくは、血管計測に最適となる状態で超音波プローブを血管上に配置するための超音波診断システム、超音波診断装置用ロボット、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の頸動脈上の皮膚部位に超音波プローブを当てることで得られた血管断面の超音波画像に基づき、疾患の早期発見に寄与する指標を求める超音波診断装置が知られている。この超音波診断装置としては、受信信号から、経時的に変化する血圧及び血流速等の各種データを検出し、当該データから血管の性状や心臓の機能等を評価する指標であるWI(Wave Intensity)を求めるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記超音波診断装置では、図20に示されるように、頸動脈Bの延出方向に沿う向きで超音波プローブPを配置することにより、頸動脈Bの長軸断面による超音波画像が取得され、当該受信信号に基づき、ドプラ効果を利用して血流速が求められる。
【0004】
ここで、頸動脈Bの長軸断面による超音波画像を得る際には、当該超音波画像上の最適位置を探索するために、検査者の手による超音波プローブPの位置合わせが必要となる。この位置合わせは、検査者が超音波画像を見ながら、図21に示されるように、超音波プローブPを頸動脈Bの横断方向(同図中左右方向)に移動することで行われる。このとき、超音波プローブPを移動すると頸動脈Bの断面位置が変わるが、例えば、超音波プローブPが図21中実線の位置にある場合、すなわち、頸動脈Bの中心軸である血管軸Cに沿って超音波プローブPの接触面が配置される場合には、血管軸Cを通る同図中A−A線に沿う断面Aにおける超音波画像が取得される。一方、超音波プローブPが同図中破線の位置にあるときには、血管軸Cからずれた同図中B−B線に沿う断面Bにおける超音波画像が取得される。この際、前述した各種データを正確に導出し、且つ、経時的に変化する各データの対比を正確に行うためには、長軸断面の取得位置を常に一定にしておく必要があり、計測の度に、頸動脈B内の幅が最大となる前記断面Aによる超音波画像を常に取得することが要請される。
【0005】
ところで、血管壁Wは、図20に示されるように、血管内腔側から内膜W1、中膜W2、外膜W3の順で膜体が積層された構造となっており、長軸断面の超音波画像内に内膜W1が検出されると、その超音波画像がほぼ前記断面Aにおける画像であり、超音波プローブPが最適状態で配置されていると判断できる。つまり、超音波の反射の関係で、内膜W1は、前記断面A近傍の狭い範囲の長軸断面しか超音波画像中に現れず、内膜W1を超音波画像中で検出できれば、そこが前記断面A付近の最適位置といえる。
【0006】
しかしながら、前記内膜W1は、非常に薄膜であるため、前記長軸断面上では一本の細線状に現れるが、超音波画像は種々のノイズの影響が加わっていて、必ずしも鮮明な画像でないことから、目視上の判断が行い難い。しかも、血管軸C付近の狭い範囲の長軸断面しか内膜W1を検出できないため、超音波プローブPの位置及び姿勢の調整には、細かい移動操作が必要で、多大な時間がかかるばかりか、操作者の経験や勘に依存するところも大きい。
【0007】
ところで、超音波診断装置の超音波プローブをロボットアームで保持し、超音波プローブの動作を自動制御する血管内皮機能自動測定システムが開示されている(特許文献2参照)。このシステムは、血管の短軸断面が得られるように超音波プローブを手動配置した後、ロボットアームの動作によって、超音波プローブを並進回転移動させる。この際、超音波プローブから得られた超音波画像を画像処理することにより、超音波プローブの移動時における超音波画像中の血管径が算出され、当該血管径が最大のときの超音波プローブの状態が最適であると判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−299752号公報
【特許文献2】特開2003−245280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記血管内皮機能自動測定システムにあっては、WIの計測において、超音波プローブを必ずしも最適な位置や姿勢にセットできないという不都合がある。すなわち、WIの計測においては、頸動脈の超音波画像を取得する必要があり、頸動脈は、心臓の拍動に伴って血管径が拡大縮小するため、血管径が最大と判断されたときに、超音波プローブが、前述の最適な位置姿勢にセットさせているとは限らない。換言すれば、前記システムでは、心臓の拍動周期をも考慮し、当該拍動周期中の一定タイミングで血管径を測定するものではないため、WIの計測時における超音波プローブの位置姿勢制御には不向きである。また、超音波プローブが、頸動脈の近傍に存在する頸静脈上に誤って配置されると、WIを計測することができないが、前記システムでは、超音波プローブが頸動脈若しくは頸静脈の何れかの上方に存在するかを判定できない。従って、被検者が僅かに動くなどの理由で、頸静脈上に超音波プローブがセットされてしまうと、WIを計測できなくなるという不都合もある。
【0010】
本発明は、このような課題に着目して案出されたものであり、その目的は、超音波プローブの配置状態を把握し、当該配置状態に基づいて超音波プローブの動作制御を行うことで、WIの計測に最適となる状態で超音波プローブを自動的にセットすることができる超音波診断システム、超音波診断装置用ロボット、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、被検者の皮膚に超音波プローブの接触面を接触させることにより、皮下の血管断面の超音波画像を取得して当該超音波画像から前記血管に関するデータを求める超音波診断装置と、前記超音波プローブを所定の空間内で動作させる超音波診断装置用ロボットとを備えた超音波診断システムにおいて、
前記超音波診断装置は、前記超音波画像に基づく画像処理により、前記超音波画像が得られた時の前記超音波プローブの血管に対する配置状態を検出するプローブ状態検出機能を備え、
前記超音波診断装置用ロボットは、前記超音波プローブを保持して動作させるロボットアームと、当該ロボットアームの動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記超音波診断装置で検出された前記超音波プローブの配置状態に基づき、前記超音波診断装置でのデータ計測時に最適な状態で前記超音波プローブが配置されるように、前記ロボットアームの動作を制御する、という構成を採っている。
【0012】
なお、本明細書及び本特許請求の範囲において、血管の説明に用いられる「長軸」とは、血管軸に沿う方向を意味し、「長軸断面」とは、血管軸に沿う方向の断面を意味する。また、同「短軸」とは、血管軸に直交する方向を意味し、「短軸断面」とは、血管軸に直交する方向の断面を意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、得られた超音波画像から、血管に対する超音波プローブの配置状態を常に把握した状態で超音波プローブの動作制御を行うことができ、超音波プローブが被検者の皮膚に接触していない状態からでも、WIの計測に最適となる状態で超音波プローブを自動的にセットすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る超音波診断システムの概略構成図。
【図2】血管に対する超音波プローブの姿勢等について説明するための概念図。
【図3】超音波診断装置の処理部と超音波診断装置用ロボットの制御装置の各システム構成を示すブロック図。
【図4】接触判定手段で行われる画像処理を説明するための画面の概略図。
【図5】接触判定手段での判定に用いられるテーブルを示す表。
【図6】画像処理の説明のための超音波画像。
【図7】平行配置判定手段での処理手順を示すフローチャート。
【図8】図6の画像に対して、走査線が設定された状態を模式的に示す概念図。
【図9】図6の画像に対して、特定暗区間線が抽出された状態を模式的に示す概念図。
【図10】図6の画像に対して、グループ化処理が行われた状態を模式的に示す概念図。
【図11】図6の画像に対して、血管内壁輪郭が生成された状態を模式的に示す概念図。
【図12】(A)は、不完全断面が現れた超音波画像に対し、特定暗区間線が抽出された状態を模式的に示す概念図であり、(B)は、(A)の画像がグループ化された状態を模式的に示す概念図である。
【図13】超音波画像中の血管の長軸断面の傾斜状態を説明するための概念図。
【図14】最適状態検出手段での処理手順を示すフローチャート。
【図15】図6の画像に対して、ROIが設定された状態を模式的に示す概念図。
【図16】平行配置動作制御手段での処理手順を示すフローチャート。
【図17】平行配置動作制御手段での超音波プローブの移動を説明するための概念図。
【図18】(A)は、内膜探索動作制御手段での超音波プローブの並進動作を説明するための概念図であり、(B)は、同回転動作を説明するための概念図である。
【図19】超音波プローブの動作制御手順を示すフローチャート。
【図20】血管の長軸断面の概念図。
【図21】血管の短軸断面の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1には、本発明が適用される超音波診断システムの概略構成図が示されている。この図において、超音波診断システム10は、被検者(図示省略)の頸動脈断面の超音波受信信号から動脈硬化の指標となるWI(Wave Intensity)を計測するためのシステムである。この超音波診断システム10は、超音波画像を取得して種々の画像演算処理を行いながらWIを計測する超音波診断装置11と、超音波診断装置11に隣接して設けられ、超音波診断装置11の画像演算処理に対応して動作可能な超音波診断装置用ロボット12(以下、単に「ロボット12」と称する)とを備えて構成されている。
【0017】
前記超音波診断装置11は、ロボット12に保持された超音波プローブ15と、超音波プローブ15からの信号により、超音波画像の生成や画像演算処理等の各種処理を行う処理部16と、処理部16における各種処理に際して、図示しない操作者が各種指令を入力するためのキーボード及びマウス等の入力部17と、処理部16で生成された超音波画像等の各種情報を表示するディスプレイ等の表示部18を備えて構成されている。
【0018】
前記超音波プローブ15は、先端面となる平面視ほぼ長方形状の接触面20によって超音波パルスの送波及びエコーの受波を行う公知の構成となっている。なお、以下では、接触面20に関する説明において、特に明記しない限り、接触面20の長手方向における一端側を左側とし、他端側を右側とする。
【0019】
前記処理部16は、ハードウェア及びソフトウェアによって構成され、CPU等の演算処理装置、メモリやハードディスク等の記憶装置、及びこれら各装置を機能させるプログラムモジュール等から成り立っており、以下の各機能をコンピュータに実現させるためのプログラムがインストールされている。
【0020】
すなわち、前記処理部16は、超音波プローブ15からの信号により超音波画像を生成する超音波画像生成機能22と、超音波画像生成機能22で生成された超音波画像に対して所定の画像処理を行うことで、当該超音波画像が得られた時における超音波プローブ15の血管に対する配置状態を検出するプローブ状態検出機能23と、超音波画像の経時的変化から前記WIを求める指標演算機能24とを備えて構成されている。
【0021】
前記超音波画像生成機能22は、被検者の表皮表面に超音波プローブ15の接触面20が接触すると、当該接触面20の直下となる皮下断面の超音波画像を生成するようになっている。
【0022】
前記指標演算機能24は、被検者の頸動脈に対して超音波プローブ15が最適状態で配置されているときに得られる超音波画像すなわち内膜が明瞭に現れている頸動脈の長軸断面の超音波受信信号と、頸動脈の短軸断面の超音波受信信号とを使って、頸動脈の血流、血圧及び前記WIが求められるようになっている。
【0023】
なお、これら超音波画像生成機能22及び指標演算機能24は、公知の超音波診断装置における構造をほぼそのまま適用しており、本発明の要旨ではないため、ここでは、それらの構成等、詳細な説明を省略する。
【0024】
前記プローブ状態検出機能23では、ロボット12の動作により、超音波プローブ15が被検者の頸部の表皮表面を移動する過程でそれぞれ得られた超音波画像に対し、以下の各手段による各種処理を行うことにより、前記WIを求める際に最適となる超音波画像が得られる超音波プローブ15の配置状態か否かが判定される。
【0025】
なお、以下の説明において、血管に対する超音波プローブ15の配置態様として、図2(a)に示されるように、平面視で、血管Bの延出方向すなわち長軸方向に沿って前記接触面20が配置される場合に、当該配置態様を「平行配置」と称する。一方、図2(b)〜(e)に示されるように、平面視で、血管Bの延出方向に交差するように接触面20が配置される場合に、当該配置態様を「交差配置」と称する。
【0026】
前記プローブ状態検出機能23は、図3に示されるように、前記超音波画像生成機能22で作成された超音波画像について、超音波プローブ15の接触面20の全面が皮膚に接触する正常接触状態か否かを判定する接触判定手段27と、接触判定手段27で正常接触状態であると判定された超音波画像から、超音波プローブ15が平行配置されているか否かを判定する平行配置判定手段28と、平行配置判定手段28で超音波プローブ15が平行配置されていないと判定された場合に、超音波プローブ15の交差配置の状態を検出する交差状態検出手段29と、平行配置判定手段28で超音波プローブ15が平行配置されていると判定された場合に、得られた超音波画像の血管が頸動脈か頸静脈かを判定する頸動脈判定手段30と、頸動脈判定手段30で頸動脈と判定された超音波画像に対して、その画面中の頸動脈の延出方向の角度が適切か否かを判定する傾斜角度判定手段31と、傾斜角度判定手段31で頸動脈の延出方向の角度が適切であると判定された各超音波画像の中から、頸動脈の内膜が明瞭に現れる超音波画像を特定することで、超音波プローブ15の最適配置状態を検出する最適状態検出手段32とを備えている。
【0027】
前記接触判定手段27は、超音波プローブ15の接触面20の少なくとも一部が皮膚に接触した状態か否かを検出する接触検出部34と、接触面20の左右の各端部が皮膚から浮いた状態か否かを検出する端部非接触検出部35とを備えて構成されている。
【0028】
前記接触検出部34は、被検者の体外側から頸部の表皮表面に超音波プローブ15を接触させる過程で、その接触面20の少なくとも一部分が皮膚に接触したか否かを検出可能になっている。すなわち、移動している超音波プローブ15により逐次取得した各超音波画像を以下のように処理することで、超音波プローブ15の接触状態が検出される。
【0029】
ここでの処理は、超音波プローブ15が皮膚に非接触である場合、各フレーム間での超音波画像にあまり差が生じないことに着目し、前後のフレーム間における輝度の差分に基づいて超音波プローブ15の接触状態を検出するようになっている。具体的に、現在のフレームにおける各ピクセルの輝度と、一つ前のフレームで対応する各ピクセルの輝度との差の絶対値を画面上の全てのピクセルについて求める。そして、前記絶対値を合計し、当該合計値が予め設定された閾値よりも小さければ、超音波プローブ15は、接触面20の全領域が皮膚に接触せずに、宙に浮いている状態であると検出される。一方、前記合計値が前記閾値以上であれば、超音波プローブ15の少なくとも一部が皮膚に接触している状態であると検出される。
【0030】
なお、接触面20に図示しないゼリーを塗布した当初は、当該ゼリーの弾性により、超音波プローブ15の移動に伴ってゼリーが揺れる場合があり、当該揺れによってフレーム間の超音波画像に差を生じさせることがある。このため、前記閾値は、ゼリーの揺れによる誤検出を考慮して設定される。
【0031】
前記端部非接触検出部35は、被検者の皮膚上での超音波プローブ15の位置決めの際、若しくは、WIの計測中に、接触面20の左右何れかの端部が皮膚から離れた場合に、その状態を検出するようになっている。このような場合、得られた超音波画像における画面は、接触面20が皮膚から離れた左右何れかの部分が黒く写る。従って、得られた超音波画像を次のように処理することで、当該超音波画像が得られたときに、接触面20が皮膚に完全に接触しているか否かが検出される。
【0032】
先ず、図4に示されるように、得られた超音波画像における画面Pを縦4分割、横9分割し、上から2段目の左端、中央、右端の三つの区画L、C、Rを注目区画とする。そして、注目区画毎に、各注目区画を構成する全ピクセルの輝度平均を求め、当該輝度平均が予め設定した閾値以上であれば、その注目区画側に対応する接触面20の左右若しくは中央の領域は、皮膚に接触している状態と判定される。一方、前記輝度平均が閾値未満であれば、その注目区画側に対応する接触面20の領域は、皮膚から浮いている状態と判定される。具体的には、予め記憶された図5の対応表によって判定される。
【0033】
なお、本実施形態では、注目区画を上記のように設定しているが、接触面20の左右若しくは中央の領域が皮膚に接触しているか否かを正確に判定できる限り、画面Pの分割数や注目区画の設定等を適宜変更することができる。但し、超音波画像における画面の最上段は、超音波プローブ15の接触、非接触に関係なく超音波プローブ15の端面の反射が表示されることがあるため、注目区画として設定しない。また、超音波プローブ15が喉仏等の甲状組織に当たると、画面の下半分が黒くなることから、この際、超音波プローブ15が皮膚に非接触であると誤検出しないように、画面の下半分も注目区画として設定しない。また、本実施形態では、画面Pを縦に3分割でなく、9分割しているが、これは、接触面20の左右何れかが少しでも浮いていれば、画面の左右両端側の僅かな部分が黒くなる(欠ける)からである。
【0034】
前記平行配置判定手段28では、位置決めの際における超音波プローブ15の移動時、若しくは、WIの測定時において、前記接触判定手段27で接触面20が皮膚に完全に接触していると判定された超音波画像から、超音波プローブ15が血管に対して平行配置されているか否かが、超音波画像毎に判定される。すなわち、超音波プローブ15が平行配置されていれば、その際に取得された超音波画像は、図6に示されるように、血管B部分が画面の左右両端間で管状に延びるように現れる。従って、平行配置判定手段28では、超音波画像中で血管に相当する部分が、画面中の左右両端間の広範囲に亘って管状に現れているか否かが判断される。
【0035】
この平行配置判定手段28は、図3に示されるように、得られた超音波画像から、血管内壁に沿う線状の血管内壁輪郭を生成する血管輪郭生成部37と、血管輪郭生成部37で生成された血管内壁輪郭に基づいて、超音波プローブ15が血管に対して平行配置されているか否かを判定する平行配置判定部38とを備えている。
【0036】
前記血管輪郭生成部37では、得られた超音波画像について、図7のフローチャートに示される手順で画像処理が行われることにより、血管内壁輪郭が得られる。なお、画像処理に関する以下の説明においては、図6に示された超音波画像を例示的に用いる。ここで、当該超音波画像中、画面左右方向をx軸方向とし、画面上下方向をy軸方向とする。
【0037】
先ず、取得した超音波画像の画面全体に対して、平滑化処理を行う(ステップS101)。この際に適用される平滑化フィルタは、画面の上から下に向かって、画面の各ピクセルの輝度を上下各5ピクセル(合計10ピクセル)の平均輝度に置換するようになっている。
【0038】
次に、図8に示されるように、超音波画像に対して、画面の上下両端間で、垂直方向すなわちy軸方向に沿って延びる走査線Aを一定間隔で設定する(ステップS102)。ここでの走査線Aの間隔は、特に限定されるものではないが、10ピクセルとする。
【0039】
そして、各走査線A上で、低輝度範囲を示す暗区間線を生成する(ステップS103)。すなわち、ここでは、各走査線A上に存在するピクセルの輝度を画面の上端から下端に向かって順に調べ、予め設定した第1の閾値以下となる輝度を有する点が出現したら、その点を暗区間線の上端とする。なお、第1の閾値は、各走査線Aそれぞれについて設定され、ここでは、同一の走査線Aに存在する各ピクセルの輝度平均が、当該走査線Aにおける第1の閾値となる。
引き続き、各走査線Aの下方に向かって輝度を調べ、輝度が前記第1の閾値よりも高い点が出現したら、その点を暗区間線の下端とする。従って、暗区間線は、走査線A毎に、0、1又は複数本抽出されることになる。
【0040】
次に、抽出された各暗区間線から、図9に示される特定暗区間線A1のみを抽出する(ステップS104)。ここでは、先ず、各暗区間線の長さを求め、当該長さが、予め設定された第2の閾値以下となる暗区間線を除外する。第2の閾値は、存在し得る最小の血管径に基づいて予め決定される。また、画面下方は暗いことが多く、利用しない部分になることから、画面の下端まで延びている暗区間線についても除外される。そして、残った暗区間線が特定暗区間線A1となる。
【0041】
次に、抽出された各特定暗区間線A1について、以下のグループ化処理を行う(ステップS105)。すなわち、図9に示されるように、左端の走査線A上に、予め定めた一定間隔でグループ開始点Gを設ける。当該グループ開始点Gの間隔は、最小の血管径を考慮して設定された前記第2の閾値と同一値とする。
そこで、画面の最も上端側に存在する第1グループ開始点のy座標と、その右隣の走査線A上に存在する全ての特定暗区間線A1の下端のy座標とを比較し、その差の絶対値が予め設定された第3の閾値以下となる特定暗区間線A1については、同一グループに含める。ここで、第3の閾値は、前記第2の閾値の1/2に設定される。そして、当該同一グループに含められた特定暗区間線A1の下端のy座標と、その右隣の走査線A上に存在する全ての特定暗区間線A1の下端のy座標とを比較し、その差の絶対値が前記第3の閾値以下となる特定暗区間線A1については、同一グループに含める。この作業を画面右に向かって全ての走査線Aについて行う。この際、右隣の走査線A上に、前述の第3の閾値以下となる特定暗区間線A1が存在しない場合には、前回の開始点のy座標を保持し、後述する処理に用いるペナルティーとして、数「1」をその都度当該グループに加算する。従って、同一グループ中に特定暗区間線A1が多く存在する程、当該グループでカウントされるペナルティーの総数が少なくなる。そして、以上のグループ化処理を全てのグループ開始点について行う。前述の図6の超音波画像においては、図10に示されるように、4つのグループ1〜4が生成される。
ここで、各グループに属する特定暗区間線A1の上端のy座標が、予め設定された第4の閾値以下であれば、当該グループのペナルティーを無限大とする。これは、超音波画像では、皮膚の直下に黒い均質な領域が現れ易いことから、この領域を血管と誤検出されることを排除するためである。従って、前記第4の閾値としては、あり得る最小の頸動脈の深度から決定される。
【0042】
次に、各グループで付加された前記ペナルティーの総数を比較し、当該総数が最小となるグループに属する前記特定暗区間線A1を血管内腔線A2として抽出する(ステップS106)。
【0043】
そして、抽出された各血管内腔線A2について、上下両端における相互の凹凸を調整する処理を行う(ステップS107)。すなわち、ここでは、各血管内腔線A2それぞれの上端のy座標について、当該y座標と、隣り合う左右各2本の血管内腔線A2の上端のy座標との平均値で置き換える。そして、各血管内腔線A2の下端の各y座標についても平均値の置換を同様に行う。
【0044】
その後、各血管内腔線A2の上端同士、下端同士を線で結ぶことにより、図11に示されるように、血管の長軸断面における血管内壁輪郭B1を生成する(ステップS108)。
【0045】
その後、前記平行配置判定部38では、次のようにして、超音波プローブ15が血管に対して平行配置されているか否かが判定される。
【0046】
先ず、以下の式により、血管の明瞭度Mを算出し(ステップS109)、当該明瞭度Mに基づいて、超音波プローブ15が血管に対して平行配置されているか否かを判定する(ステップS110)。
M=1−(TP/TA)
ここで、TPは、ペナルティーの総和、すなわち、血管内腔線A2の属するグループにおけるペナルティーの総数であり、TAは、最初に設定した走査線Aの総本数である。
【0047】
血管の明瞭度Mが80%以上であれば、図2中(a)に示されるように、超音波プローブ15が平行配置されていると判定される。なお、血管の明瞭度Mが80%未満となる場合、図2中(b)〜(e)の何れかのように、超音波プローブ15が交差配置されているか、超音波プローブ15が血管上に殆ど存在しないと判定される。
【0048】
また、後述するロボット12の制御動作において、画面の左右それぞれ1/3の領域の明瞭度を求める必要もあり、この場合は、画面の左右それぞれ1/3の領域におけるTP及びTAを使って明瞭度Mが計算される。
【0049】
前記交差状態検出手段29では、超音波プローブ15が血管上に存在しているものの、前記明瞭度Mが80%未満の場合、得られた超音波画像に基づき、そのときの超音波プローブ15が、図2中(b)〜(e)の何れかの配置状態であるかを自動判別するようになっている。これにより、超音波プローブ15を交差配置から平行配置に修正するための姿勢変更動作の方向が特定できることになる。
【0050】
ところで、図2中(a)に示されるように、超音波プローブ15が平行配置のままで血管B上を横断するように移動すると、当該移動の過程で得られる超音波画像の血管部分は、図6に示されるように、常に、画面の左右両端間に延びる管状の断面形状として現れる。しかしながら、図2中(b)〜(e)に示されるように、超音波プローブ15が交差配置のままで血管上を横断するように移動すると、当該移動の過程で得られる超音波画像の血管部分は、図12(A)の囲み部分に示されるように、楕円状の不完全断面として現れる。当該不完全断面は、同図(A)中でほぼ左右方向に延びる白線で表した軌跡として示されるように、経時的に画面中の左右方向に移動することになる。
【0051】
従って、前記交差状態検出手段29では、超音波プローブ15の移動過程で得られた超音波画像から、各超音波画像中における血管部分の不完全断面を特定し、当該不完全断面の移動方向を検出することで、血管に対して交差配置された超音波プローブ15の向きを特定するようになっている。
【0052】
具体的に、前記交差状態検出手段29は、図3に示されるように、各超音波画像中における血管部分の不完全断面を検出する不完全断面検出部40と、不完全断面の経時的な変位から血管に対する超音波プローブ15の姿勢を特定する姿勢特定部41とを備えている。
【0053】
前記不完全断面検出部40では、以下の手順により、得られた超音波画像について画像処理が行われ、前記不完全断面が特定される。
【0054】
先ず、経時的に順次得られた超音波画像のフレームそれぞれについて、前記平行配置判定手段28の血管輪郭生成部37での画像処理と同様の手順により(図7中ステップS101〜ステップS104)、前記特定暗区間線A1が抽出される(図12(A)参照)。
【0055】
次に、特定暗区間線A1のグループ化を行う。ここでは、隣り合う走査線上に存在する各特定暗区間線A1の下端のy座標同士を対比し、当該y座標の差の絶対値が、存在し得る最小の血管径の1/2程度となる前記第3の閾値以下となるものをグループ化する(図12(B)参照)。
【0056】
更に、各グループの中心座標C(図12(A)、(B)参照)を求める。すなわち、中心座標Cにおけるx座標は、同一グループ内の特定暗区間線A1の左端及び右端の各x座標の平均とする。一方、中心座標Cにおけるy座標は、同一グループ内で、画面の左右方向中央に位置する特定暗区間線A1の上端及び下端の各y座標の平均とする。
【0057】
そして、超音波画像の各フレームに含まれる全てのグループの中心座標Cを記憶する。ここで、あるフレームに記憶された各グループの中心座標Cと、次のフレームで新たに記憶された各グループの中心座標Cとの全ての組み合わせについて、直線距離を算出し、当該直線距離が、フレームレートに応じて定められる閾値以下であれば同一領域とみなされる。なお、同一領域とみなされている間は、フレーム毎の中心座標Cが一定時間(例えば、50フレーム分の時間)記憶される。
【0058】
ここで、前記一定時間前の中心座標Cと現在の中心座標Cとの前記各x座標の差となる移動量の絶対値が、予め定められた閾値以上となれば、当該中心座標Cに係るグループは、血管Bの不完全断面である判断される。
【0059】
前記姿勢特定部41では、前記不完全断面の移動方向すなわち移動量の正負と、超音波プローブ15の移動方向との関係から、図2に示されるように、血管Bに対する超音波プローブ15の姿勢が特定される。なお、不完全断面の移動量の正負は、当該不完全断面が画面内を右方に移動すれば、「正」とし、同左方に移動すれば「負」としている。
【0060】
前記頸動脈判定手段30では、皮膚を通じてその下方の血管が所定の外力で押圧されたときに、当該押圧前後における超音波画像の変化に基づいて、押圧された血管が頸動脈か否かが判定される。ここでの処理は、頸静脈よりも頸動脈の方の内圧が高いため、一定の外力で血管を押圧したときに、その前後での血管の内径の変化が、頸動脈よりも頸静脈の方が大きくなることに基づいている。なお、本実施形態では、頸動脈判定手段30での判定時に、ロボット12の後述の動作により、接触面20で被検者の頸部の表皮表面が一定の力で押圧されるようになっている。
【0061】
この頸動脈判定手段30は、図3に示されるように、前記平行配置判定手段28で抽出した血管内壁輪郭に基づき血管の平均内径を求める平均径算出部43と、血管に外力を付加した前後の平均内径の変化から、当該血管が頸動脈か否かを判定する頸動脈判定部44とを備えている。
【0062】
前記平均径算出部43では、超音波画像に基づき平行配置判定手段28で抽出された各血管内腔線A2の長さの平均となる平均内径が、血管に外力を付加した前後でそれぞれ求められ、記憶される。
【0063】
前記頸動脈判定部44では、平均径算出部43で算出された血管内径、すなわち、血管に外力を付加した前後の血管内径から、外力付加前の血管内径に対し、外力付加後の血管内径が70%を超える場合、当該血管は、頸動脈として判定される。従って、それ以外の場合は、押圧した血管が頸静脈であると判断される。
【0064】
前記傾斜角度判定手段31では、図13に示されるように、WIの計測に際し、取得した超音波画像中の頸動脈Bの延出方向が水平状態から角度約5度程度傾いているか否かが判定される。これは次のことに基づく。WIの計測時において、血管径を測定するエコートラッキングは、超音波画像中、血管ができるだけ水平状態になっている方が良いのに対し、血流速を測定するカラードプラは、超音波画像中、水平状態に対する血管の傾きができるだけ大きい方が、血流速度が大きく計測されるため良いとされている。従って、これら相反する測定条件となる血管径の測定及び血流速の測定を効率良く行うために、超音波画像中の頸動脈の水平状態に対する傾斜角度を約5度程度としている。
【0065】
この傾斜角度判定手段31は、図3に示されるように、取得した超音波画像から当該超音波画像中の血管の延出方向を求め、当該延出方向と超音波画像中の水平線とのなす傾斜角度を求める傾斜角度算出部46と、傾斜角度算出部46で求めた傾斜角度が、5度を中心とする所定範囲(例えば、プラスマイナス10%)内であるか否かを判定する傾き判定部47とを備えている。
【0066】
前記傾斜角度算出部46では、前記平行配置判定手段28で抽出した血管内壁輪郭B1(図11参照)のうち、超音波画像の画面下側すなわち体内側となる後壁部分の近似直線を最小二乗法で求め、当該近似直線と前記水平線との間の角度となる傾斜角度が求められる。
【0067】
なお、前記近似直線は、血管内壁輪郭のうち、超音波画像の画面上側すなわち体表側となる前壁部分と、前記後壁部分との平均値によって生成することもできる。
【0068】
前記最適状態検出手段32は、図3に示されるように、超音波画像中の頸動脈の内膜の検出状態を表す内膜検出スコアを求める内膜探索部49と、求めた内膜検出スコアに基づいて、超音波画像中に内膜が明瞭に現れる超音波プローブ15の最適状態を特定する最適状態特定部50とを備えて構成されている。
【0069】
前記内膜探索部49では、図14のフローチャートに示される手順により、超音波プローブ15の移動に伴って逐次得られた超音波画像それぞれについて、後述するように内膜検出スコアが求められる。
【0070】
先ず、得られた超音波画像から、前記平行配置判定手段28での画像処理のときと同様の手順(図7中ステップS101〜S108)で、超音波画像中の頸動脈部分における前記血管内壁輪郭(図11中B1)を生成する(ステップS121)。
【0071】
そして、求めた血管内壁輪郭B1に基づいて血管壁の周辺の平均輝度を計算する(ステップS122)。ここでは、血管内壁輪郭B1の内側に存在する各血管内腔線(図11中A2)の上端位置のピクセルから、同一走査線上を画面上方に向かって所定数分のピクセルの平均輝度を計算し、これを血管の前壁周辺の平均輝度とする。ここで、平均輝度の計算対象とするピクセル数は、経験的データに基づき予め定められる。同様に、各血管内壁輪郭B1の下端側のピクセルについても血管壁周辺の平均輝度を計算する。なお、各血管内壁輪郭B1の下端側については、前記平均輝度を求めなくても良く、この場合、当該下端側についての平均輝度は、各血管内壁輪郭B1の上端側の平均輝度と同一とされる。
【0072】
次に、前記平行配置判定手段28で最初の暗区間線を抽出するために用いた前記第1の閾値を、先のステップS122で求めた血管壁周辺の平均輝度に置き換えて更新する(ステップS123)。その上で、前記平行配置判定手段28と同様の手順(図7中ステップS103〜S108)により、血管内壁輪郭B1を新たに求める(ステップS124)。つまり、ここでは、暗区間線の上端開始点の判定時に、前記上端側の平均輝度が適用される一方、暗区間の下端終了点の判定時に、前記下端側の平均輝度が適用される。
【0073】
この結果、第1の閾値は、超音波画像中で高輝度部分の多い血管壁周辺の平均輝度に置換されることため、全体の平均輝度を適用した置換前に比べて上がり、抽出される暗区間線の長さは、置換前よりも長くなる。このため、新たに求めた血管内壁輪郭B1は、置換前よりも外側に僅かに広がることになる。
【0074】
次に、以上の手順で求めた血管内壁輪郭について、以下の処理時の判断に必要となる中間スコアを算出する(ステップS125)。すなわち、ここでは、先ず、血管内壁輪郭B1の内側の各血管内腔線A2の長さの平均となる平均内径を求める。そして、前記平行配置判定手段28での前記ペナルティーの算出手順と同様にして、画面上側すなわち血管前壁側の血管内壁輪郭B1についてのペナルティーを求めた上で、次式により中間スコアを求める。
(中間スコア)=(平均内径)−α×(ペナルティー)
ここで、αは、予め設定された定数であり、平均内径の変化による中間スコアの変化率よりも、ペナルティーの変化による中間スコアの変化率の方が高くなるように設定されている。
【0075】
そして、以上の手順を繰り返し行う(ステップS127)。すなわち、新たに求めた血管内壁輪郭に対し、前述と同様の手順により、血管壁の周辺の平均輝度を求め(前記ステップS122)、当該平均輝度に1を加えた値を前記第1の閾値として再更新する(前記ステップS123、ステップS126)。更に、前述と同様の手順により、血管内壁輪郭B1を再生成し(前記ステップS123、ステップS124)、このときの中間スコアを算出する(前記ステップS125)。この際、前述したように、更新の度に血管内壁輪郭B1が次第に外側に広がる。なお、特に限定されるものではないが、ここでの繰り返し回数は、30回となっており、繰り返しの度に、前記第1の閾値が1ずつ増大する。
【0076】
前述の繰り返し処理が終了した後、中間スコアが最も大きいときの前記第1の閾値を使って、前述した手順により、血管内壁輪郭B1を最終的に生成する(ステップS128)。
【0077】
図15に示されるように、最終的に生成された血管内壁輪郭B1について、血管内側にrピクセル平行移動した内輪郭線B2と、血管外側にtピクセル平行移動させた外輪郭線B3とを設定する(ステップS129)。なお、ここでのr、tは、血管壁抽出の精度、血管壁の通常の厚みから予め定められている。また、最終的な血管内壁輪郭B1から求めた平均内径の値に応じ、当該平均内径をパラメータとする所定の数式から、r及びtを都度求めることもできる。
【0078】
設定した内輪郭線B2と外輪郭線B3との間を内膜探索領域(以下、「ROI」と称する。)とし、当該ROIに、画面に垂直なROI用走査線(図示省略)を設定する(ステップS130)。このROI用走査線は、血管(頸動脈)の内側端から外側端に向かうように、血管の前壁部分及び後壁部分のそれぞれに設定され、特に限定されるものではないが、画面左右方向に1ピクセル間隔で設定される。
【0079】
次に、ROI用走査線毎に、当該走査線上の全てのピクセルの輝度の勾配(以下、「輝度勾配」と称する。)を次式により求める(ステップS131)。
(輝度勾配)=(対象ピクセルの輝度)−(対象ピクセルの一つ前のピクセルの輝度)
ここで、一つ前のピクセルは、ROI用走査線上を走査させた際における一つ前のピクセルであり、画面上のx座標が同一で、画面上のy座標が血管の一つ内側に位置するピクセルである。
【0080】
そして、ROI用走査線毎に、輝度勾配の極大値のうち上位2点を抽出する(ステップS132)。これら2点のうち、血管の内側に位置する点を内膜候補点とし、血管の外側に位置する点を外膜候補点とする。
【0081】
更に、ROI用走査線毎に抽出された内膜候補点及び外膜候補点について、それぞれグループ化する(ステップS133)。すなわち、ここでは、内膜候補点が、隣り合うROI用走査線上での内膜候補点との間で、画面上のy座標における差の絶対値が1ピクセル以下であるものを同一グループとする。外膜候補点についても同様にグループ化する。
【0082】
なお、輝度勾配の極大値のうち上位3点を抽出し、第3位の点を考慮してもよく、このようにすると、画面左右方向へのグループの連続化が促進されることになる。
【0083】
内膜候補点及び外膜候補点の各グループについて、画面左右方向に所定ピクセル(本実施形態では20ピクセル)以上連続しているグループを抽出する(ステップS134)。
【0084】
そして、抽出されたグループのうち、同一のROI用走査線に、内膜候補点及び外膜候補点が共に存在するものを残し、そのときの各内膜候補点を含むピクセルが、内膜として抽出される(ステップS135)。
【0085】
最後に、前壁部分及び後壁部分それぞれについて、次式により内膜検出スコアが求められる(ステップS136)。
(内膜検出スコア)=(内膜として抽出されたピクセル数)/(画面x軸方向の総ピクセル数)
【0086】
前記最適状態特定部50では、以上で求めた内膜検出スコアに基づいて、次のように、内膜がより明瞭に現れる超音波プローブ15の配置状態が特定される。
【0087】
超音波プローブ15が血管上を移動している最中に取得した超音波画像それぞれについて、前記内膜検出スコアが算出される。ここで、算出された内膜検出スコアは、心臓の拍動による周期的な値の低下の影響を低減するために、過去1秒間の最大値を保持するサンプルホールドフィルタに通される。
【0088】
そして、サンプルホールドフィルタに通された各内膜検出スコアのうち、最大値の80%以上となる内膜検出スコアが得られた超音波プローブ15の配置状態が、WIの計測に最適な状態であると特定される。
【0089】
前記ロボット12は、図1に示されるように、超音波プローブ15を保持して動作させるロボットアーム53と、当該ロボットアーム53の動作を制御する制御装置54とを備えて構成されている。
【0090】
前記ロボットアーム53は、図示省略したモータを含む各種部材によって6自由度の動作が可能となっており、超音波プローブ15が所定空間内で移動可能となるように動作する。なお、このロボットアーム53は、公知の機構により構成されており、本発明の要旨ではないため、詳細な説明を省略する。
【0091】
前記制御装置54は、前記超音波診断装置11による各種の判定、検出結果に基づき、WI計測時に超音波プローブ15が最適な状態で配置されるように、ロボットアーム53の動作を制御する。
【0092】
この制御装置54は、CPU等の演算処理装置及びメモリやハードディスク等の記憶装置等からなるコンピュータによって構成され、当該コンピュータを以下の各手段として機能させるためのプログラムがインストールされている。
【0093】
前記制御装置54は、図3に示されるように、超音波プローブ15を血管上に平行配置させる平行配置動作制御手段56と、超音波プローブ15を平行配置した血管が頸動脈か頸静脈かを判別するために超音波プローブ15を動作させる血管判別用動作制御手段57と、超音波プローブ15の動作中に超音波画像中の頸動脈が消失したときに、超音波画像中に頸動脈が再度現れるように超音波プローブ15を動作させる頸動脈再探索動作制御手段58と、超音波プローブ15の接触面20が皮膚から浮いたときに、当該接触面20を再度皮膚に接触させるように超音波プローブ15を動作させる皮膚接触動作制御手段59と、得られた超音波画像中の血管の延出方向の角度を調整するために超音波プローブ15を動作させる角度調整動作制御手段60と、超音波画像中に頸動脈の内膜がより明瞭に現れる超音波プローブ15の最適配置状態を探索する内膜探索動作制御手段61と、超音波プローブ15が最適配置状態から外れたときに、当該最適配置状態に再度復元させるために超音波プローブ15を動作させる復元動作制御手段62とを備えている。
【0094】
前記平行配置動作制御手段56では、図16のフローチャートに示される手順で超音波プローブ15が動作するように、ロボットアーム53の動作制御が行われる。
【0095】
この平行配置動作制御手段56は、血管の探索時における超音波プローブ15の移動経路を求めるための経路算出用制御部64と、超音波プローブ15が血管に対して平行配置されるように、移動経路上で血管を探索するための血管探索用制御部65とを備えている。
【0096】
前記経路算出用制御部64では、超音波画像による超音波診断装置11での前述の判定や検出に基づき、被検者の頸部表皮形状に応じて超音波プローブ15の移動経路を決定するようになっており、超音波プローブ15を以下のように動作させる。
【0097】
すなわち、操作者によって、被検者の頸部の横の所定位置に、当該頸部に非接触となる状態で超音波プローブ15が初期セットされる。そして、この状態から、入力部17(図1参照)を通じて所定の動作指令がなされると、図17に示されるように、超音波プローブ15を被検者の頸部Nに向かって移動させ、超音波プローブ15の接触面20の全面を頸部Nの表皮表面Fに接触させる。ここで、超音波プローブ15の初期セット時においては、超音波プローブ15が動作して表皮表面Fに接触した際、当該表皮表面Fと接触面20が相互に平行に配置されるように、超音波プローブ15が表皮表面Fに対してほぼ垂直に起立する姿勢でセットされる。
【0098】
先ず、超音波診断装置11の接触判定手段27で接触面20の少なくとも一部が表皮表面Fに接触したと判定されるまで、超音波画像を取得しながら超音波プローブ15を被検者の頸部に向かって移動させる(ステップS201)。そして、接触判定手段27で接触面20の少なくとも一部が表皮表面Fと接触したことが検知されたら、超音波プローブ15を一旦停止する。
【0099】
その後、接触判定手段27での検出に基づき、接触面20の全面が表皮表面Fに接触するように超音波プローブ15を動作させる(ステップS202)。
【0100】
すなわち、接触判定手段27の前記端部非接触検出部35で、図8に基づき、接触面20の右側が表皮表面Fから浮いていると判定された場合には、接触面20の右側が表皮表面Fに接触する方向に超音波プローブ15を回転動作させることで超音波プローブ15の姿勢を変える。一方、接触面20の左側が表皮表面Fから浮いていると判定された場合には、前述と逆方向に超音波プローブ15を回転動作させる。また、端部非接触検出部35で、接触面20の全面が表皮表面Fに十分に接触していないと判定された場合には、接触面20の全面を表皮表面Fに向かって押し付けるように、超音波プローブ15を移動させる。そして、端部非接触検出部35で接触面20が全面接触していると判定されるまでは、以上の動作を繰り返し行う。
【0101】
ここで、接触面20の全面が表皮表面Fに接触したときの頸部N上の位置を第1の位置P1とし、当該第1の位置P1での接触時における超音波プローブ15の6軸座標、すなわち、直交3軸座標における位置及び姿勢を記憶する(ステップS203、S204)。第1の位置P1での前記6軸座標は、第1の座標として記憶される。
【0102】
次に、超音波プローブ15の姿勢を保持したまま、超音波プローブ15を頸部Nの他の位置に移動させる(ステップS205、S206)。すなわち、ここでは、表皮表面Fから離間する方向(図17中z軸正方向)に、超音波プローブ15を所定距離(以下、「離間距離h1」とする)分、移動(上昇)させるとともに、頸部Nの周方向(同図中y軸正方向)に、超音波プローブ15を所定距離移動させる。そして、移動後の超音波プローブ15が再度、被検者の表皮表面Fに接触するように、超音波プローブ15を動作させる。ここでの動作は、接触面20の全面を第1の位置P1の表皮表面Fに接触させた際の手順(ステップS201、ステップS202)と同様の手順で行われる。このときに接触面20が接触した表皮表面F上の位置を第2の位置P2とする。
【0103】
このとき、第2の位置P2で接触面20が表皮表面Fに垂直に接触するように、超音波プローブ15の姿勢が調整される(ステップS207)。すなわち、先の超音波プローブ15の移動過程で、第1の位置P1の表皮表面Fから離間する際の前記離間距離h1と、第2の位置P2の表皮表面Fに向かって接近するように同z軸方向に移動した接近距離h2との差を求め、当該差に予め定めたゲインを乗じ、回転角度を求める。そして、第2の位置P2に接触した状態の超音波プローブ15を前記回転角度分だけ回転させる。ここでの回転は、接触面20の中央を回転中心として、超音波プローブ15を表皮表面Fに対して起立倒伏させる方向、すなわち、図17中x軸回り(同図中矢印参照)の回転となる。
【0104】
以上の姿勢調整動作の終了後、第2の位置P2での接触時における超音波プローブ15の6軸座標を第2の座標として記憶する(ステップS204)。
【0105】
そして、第1の位置P1から第2の位置P2に超音波プローブ15を移動した際と同様の手順で、超音波プローブ15の姿勢を保持したまま、第2の位置P2から次の第3の位置P3に超音波プローブ15を移動させる(ステップS205、S206)。そして、前述と同様、第3の位置P3での姿勢調整後の超音波プローブ15の6軸座標を第3の座標として記憶する(ステップS204)。
【0106】
同様に、超音波プローブ15を第3の位置P3から次の第4の位置P4に移動させ、第4の位置P4での姿勢調整後の超音波プローブ15の6軸座標を第4の座標として記憶する(ステップS204)。
【0107】
その後、以上の手順で記憶された第1〜第4の座標を線形補間した曲線を求め、当該曲線が、血管の探索時における超音波プローブ15の移動経路となる(ステップS208)。
【0108】
前記血管探索用制御部65では、次のようにして移動経路上で超音波プローブ15を動作させて血管を探索する。
【0109】
先ず、前記第4の位置P4から第1の位置P1まで、頸部の表皮表面F上の移動経路に沿って超音波プローブ15を移動させる(図17中一点鎖線参照)(ステップS209)。当該移動の間は、接触面20の全面が表皮表面Fに接触するように前述の動作(前記ステップS202)を行う。
【0110】
移動経路に沿って超音波プローブ15が移動する間は、超音波画像が取得され、以下の血管探索動作が行われる。
【0111】
すなわち、超音波プローブ15の移動時において、超音波画像毎に、超音波画像診断装置11の平行配置判定手段28で超音波プローブ15が平行配置されているか否かが判定される(ステップS210)。ここでは、前述したように、超音波画像中の血管の明瞭度Mが80%以上あって、平行配置判定手段28で超音波プローブ15が平行配置されていると判定された場合は、当該判定時の超音波画像が得られた頸部上の位置で、超音波プローブ15を停止させる(ステップS211)。
【0112】
一方、超音波プローブ15の移動時において、前記交差状態検出手段29により、超音波プローブ15が血管に対して交差配置していると判定された場合には(ステップS212)、交差状態検出手段29で特定された超音波プローブ15の姿勢に基づき、超音波プローブ15を平行配置に変える方向に回転動作させる(ステップS213)。その後、当該回転動作の過程で、平行配置判定手段28により超音波プローブ15が平行配置されていると判定された場合には、当該判定時の超音波画像が得られた頸部上の位置で、超音波プローブ15を停止させる。
【0113】
また、超音波プローブ15の移動時において、超音波プローブ15の平行配置と交差配置の何れも検出されない場合は、超音波プローブ15を現在の姿勢から、図17中z軸回りに所定角度、回転させることで姿勢変更した上で(ステップS214)、再度、前記第4の位置P4から第1の位置P1まで移動経路に沿って超音波プローブ15を移動させ、前述の血管探索動作が再度行われる。
【0114】
以上の血管探索動作は、平行配置判定手段28で超音波プローブ15が平行配置されていると判定されるまで、繰り返し行われる。
【0115】
前記血管判別用動作制御手段57では、次の手順に従って超音波プローブ15を動作させる。
【0116】
前記平行配置動作制御手段56で、超音波プローブ15が血管に対し平行配置されて一旦停止した状態から、その際の超音波プローブ15の姿勢を保持しながら、接触面20で表皮表面Fを押圧する方向(図17中z軸負方向)に、超音波プローブ15を所定量移動させる。
【0117】
そして、この際に得られた超音波画像から、前記頸動脈判定手段30で頸動脈でないと判定された場合には、超音波プローブ15が頸静脈上に存在することになるため、超音波プローブ15が頸静脈の上から外れるまで、超音波プローブ15を頸部Nの周方向(図17中y軸方向)に移動させる。ここで、超音波プローブ15が頸静脈の上から外れたか否かの判断は、超音波診断装置11の平行配置判定手段28で求められる血管の明瞭度に基づいて行われ、当該明瞭度が予め定めた閾値以下になった場合、超音波プローブ15が頸静脈の上から外れたと判断される。その後、その位置から更に、超音波プローブ15を頸部Nの周方向に移動させ、前述の血管探索動作を再度行うことで、超音波プローブ15を頸動脈B上に平行配置させる。
【0118】
前記頸動脈再探索動作制御手段58では、前記平行配置判定手段28での判定結果に応じて、以下の手順で超音波プローブ15を動作させる。
【0119】
すなわち、前記平行配置判定手段28により、得られた超音波画像について、画面の左右1/3それぞれについての血管の明瞭度が求められ、左右何れかの明瞭度が予め設定した閾値を下回った場合、計測対象の頸動脈が超音波画像から消失したとして、次のように超音波プローブ15を動作させる。
【0120】
先ず、画面右側の明瞭度が、予め設定した閾値を上回るまで、超音波プローブ15を頸部の周方向(図17中y軸方向)に沿って一定の距離範囲(例えば、10mm)の間で往復させる。
【0121】
次に、画面左側の明瞭度が、予め設定した閾値を上回るまで、頸部Nの表皮表面Fに沿うように超音波プローブ15を回転させる。つまり、図17中z軸回りに超音波プローブ15を一定の角度範囲(例えば、14度)で回転させる。この際の回転は、超音波プローブ15の右端を回転中心とする。
【0122】
以上の動作は、画面左右における血管の明瞭度が共に前記閾値を上回るまで繰り返し行われる。
【0123】
前記皮膚接触動作制御手段59では、前記平行配置動作制御手段56の経路算出用制御部64で、接触面20の全面を表皮表面Fに接触させた動作(図16のステップS202)の場合と、同一の手順で超音波プローブ15を動作させる。
【0124】
前記角度調整動作制御手段60では、超音波画像診断装置11の傾斜角度判定手段31で、傾斜角度が所定範囲内(例えば、5度プラスマイナス10%以内)にないと判定されたときに、傾斜角度判定手段31で求めた傾斜角度より5度引いた角度分、接触面20の左右両側を上下に揺動させる方向(図17中y軸回り)に超音波プローブ15を回転動作させる。
【0125】
そして、当該回転動作により前記傾斜角度が所定範囲内になったときは、ここでの回転動作を停止する。
【0126】
前記内膜探索動作制御手段61では、前述の各動作制御による超音波プローブ15の動作によって、当該超音波プローブ15が頸動脈に対して平行配置された後、以下のように超音波プローブ15を動作させる。
【0127】
先ず、超音波プローブ15が頸動脈B上を横断するように、頸部Nの周方向(図17中y軸方向)に超音波プローブ15を移動させる。この際、図18(A)に示されるように、平行配置されたときの現在位置を中心とする一定範囲、例えば、現在位置から3mmの幅、合計6mmの範囲内で超音波プローブ15を直線往復移動させる。その間、超音波画像を取得し、前記最適状態検出手段32により、往路における内膜検出スコアの最大値を記憶しておき、復路にて内膜検出スコアが前記最大値の80%以上となる地点で、超音波プローブ15の動作を停止する。
【0128】
次に、超音波プローブ15が頸部Nの表皮表面Fに沿って頸動脈B上で回転するように、超音波プローブ15を図17中z軸回りに回転させる。この際、図18(B)に示されるように、前記現在位置を中心とする一定範囲、例えば、現在位置から2度の幅、合計4度の範囲内で超音波プローブ15を回転させる。その間も、先の直線移動のときと同様、内膜検出スコアが最大値の80%以上となった地点で、超音波プローブ15の動作を停止する。
【0129】
前記復元動作制御手段62では、WIの計測時のときに最適状態検出手段32で継続して求められる内膜検出スコアが最大値の50%未満になった場合、前述の内膜探索動作制御手段61での制御により、超音波プローブ15を再び動作させる。
【0130】
以上のように構成された制御装置54により、図19のフローチャートに示される手順で、超音波プローブ15がWI計測に最適となる状態で被検者の頸部上に自動的にセットされる。
【0131】
事前に、超音波プローブ15が被検者の頸部の横の所定位置にセットされ、操作者により所定の動作指令がなされると(ステップS220)、先ず、平行配置動作制御手段56での動作制御により、血管に対して超音波プローブ15が平行配置される(ステップS221)。次に、血管判別用動作制御手段57での動作制御により、超音波プローブ15を平行配置した血管が頸動脈か否かが判別される(ステップS222)。その後、角度調整動作制御手段60での動作制御により、頸部Nの表皮表面Fに対する超音波プローブ15の傾き角度が調整される(ステップS223)。そして、内膜探索動作制御手段61での動作制御により、超音波画像中に頸動脈の内膜がより明瞭に現れるように、超音波プローブ15が最適な状態で配置される(ステップS224)。その後、超音波診断装置11によりWIの計測が開始される。
【0132】
なお、頸動脈再探索動作制御手段58、皮膚接触動作制御手段59及び復元動作制御手段62による動作制御は、超音波診断装置11のプローブ状態検出機能23からの各種の検出結果や判定結果に基づき、超音波画像から対象の頸動脈や内膜が不意に消失したと判断されたときに行われる。
【0133】
従って、このような実施形態によれば、被検者の頸部形状に沿った移動経路を自動的に生成し、超音波プローブ15を最適な状態で配置する際の探索を自動的に行うことができ、操作者は、超音波画像を見ながらの超音波プローブ15の操作が不要となり、超音波診断装置11の入力部17への操作に集中することができるという効果を得る。
【0134】
なお、超音波診断装置11からプローブ状態検出機能23を除き、同機能を有するプローブ状態検出装置を新たに設けて超音波診断装置11に併設することもできる。
【0135】
前記制御装置54でのロボット12の制御は、超音波診断装置11でのプローブ状態検出機能23での画像処理手法による検出結果、判定結果を用いているが、本発明はこれに限らず、同様の検出や判定が可能となる他の手法が適用された画像処理装置による処理結果に基づいて行うことも可能である。
【0136】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0137】
10 超音波診断システム
11 超音波診断装置
12 超音波診断用ロボット
15 超音波プローブ
20 接触面
23 プローブ状態検出機能(プローブ状態検出装置)
27 接触判定手段
28 平行配置判定手段
29 交差状態検出手段
30 頸動脈判定手段
31 傾斜角度判定手段
32 最適状態検出手段
34 接触検出部
35 端部非接触検出部
37 血管輪郭生成部
38 平行配置判定部
40 不完全断面検出部
41 姿勢特定部
43 平均径算出部
44 頸動脈判定部
46 傾斜角度算出部
47 傾き判定部
49 内膜探索部
50 最適状態特定部
53 ロボットアーム
54 制御装置
56 平行配置用動作制御手段
57 血管判別用動作制御手段
58 頸動脈再探索動作制御手段
59 皮膚接触動作制御手段
60 角度調整動作制御手段
61 内膜探索動作制御手段
62 復元動作制御手段
64 経路算出用制御部
65 血管探索用制御部
A 走査線
A2 血管内腔線
B 血管(頸動脈)
B1 血管内壁輪郭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の皮膚に超音波プローブの接触面を接触させることにより、皮下の血管断面の超音波画像を取得して当該超音波画像から前記血管に関するデータを求める超音波診断装置と、前記超音波プローブを所定の空間内で動作させる超音波診断装置用ロボットとを備えた超音波診断システムにおいて、
前記超音波診断装置は、前記超音波画像に基づく画像処理により、前記超音波画像が得られた時の前記超音波プローブの血管に対する配置状態を検出するプローブ状態検出機能を備え、
前記超音波診断装置用ロボットは、前記超音波プローブを保持して動作させるロボットアームと、当該ロボットアームの動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記超音波診断装置で検出された前記超音波プローブの配置状態に基づき、前記超音波診断装置でのデータ計測時に最適な状態で前記超音波プローブが配置されるように、前記ロボットアームの動作を制御することを特徴とする超音波診断システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記超音波プローブを血管上に平行配置させる平行配置動作制御手段と、前記超音波プローブを平行配置した血管が頸動脈か否かを判別するために前記超音波プローブを前記皮膚に押し付けるように動作させる血管判別用動作制御手段と、前記超音波プローブの動作中に超音波画像中の頸動脈が消失したときに、当該超音波画像中に頸動脈が再度現れるように前記超音波プローブを所定範囲内で動作させる頸動脈再探索動作制御手段と、前記接触面が皮膚から浮いたときに、当該接触面を再度皮膚に接触させるように前記超音波プローブを動作させる皮膚接触動作制御手段と、得られた超音波画像中の血管の延出方向の角度を調整するために前記超音波プローブを動作させる角度調整動作制御手段と、前記超音波画像中で頸動脈の内膜がより明瞭に現れる前記超音波プローブの配置状態を探索する内膜探索動作制御手段と、前記超音波プローブが最適となる配置状態から外れたときに、当該最適配置状態に再度復元させるために前記超音波プローブを所定範囲内で動作させる復元動作制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の超音波診断システム。
【請求項3】
前記平行配置動作制御手段は、皮下に存在する血管の探索時における前記超音波プローブの移動経路を求めるための経路算出用制御部と、前記超音波プローブが前記血管に対して平行配置されるように、前記移動経路上で前記血管を探索するための血管探索用制御部とを備え、
前記経路算出用制御部では、前記超音波プローブの配置状態を前記超音波診断装置で検出しながら、所定間隔毎の皮膚上の複数位置で前記超音波プローブを接触させるように前記ロボットアームの動作制御をし、皮膚接触時の前記超音波プローブの位置及び姿勢を前記位置毎に記憶し、これら各位置の位置及び姿勢を線形補間することで、前記被検者の皮膚表面形状に応じた前記移動経路が生成され、
前記血管探索用制御部では、前記移動経路に沿って前記超音波プローブを移動させ、当該超音波プローブの移動過程で、前記超音波診断装置により検出された前記超音波プローブの配置状態に応じ、前記超音波プローブが前記血管に対して平行配置されるように前記ロボットアームの動作制御を行うことを特徴とする請求項2記載の超音波診断システム。
【請求項4】
前記経路算出用制御部では、前の位置から次の位置に前記超音波プローブが移動したときに、前の位置で皮膚上から離間した距離と後の位置で皮膚上から離間した距離との差に応じて、次の位置での前記超音波プローブの姿勢を変化させ、前後各位置での前記超音波プローブの接触時の皮膚表面に対する姿勢を同一に維持するように、前記ロボットアームの動作制御を行うことを特徴とする請求項3記載の超音波診断システム。
【請求項5】
前記内膜探索動作制御手段では、前記超音波プローブを所定範囲内で動作させ、前記超音波診断装置で、超音波画像中の内膜が所定以上現れていると判断されたときに、当該超音波画像が得られた前記超音波プローブの配置状態にするように、前記ロボットアームの動作制御を行うことを特徴とする請求項2記載の超音波診断システム。
【請求項6】
超音波診断装置の超音波プローブを動作させるロボットアームと、当該ロボットアームの動作を制御する制御装置とを備えた超音波装置用ロボットにおいて、
前記制御装置は、前記超音波プローブの配置状態に関する情報に基づき、前記超音波診断装置でのデータ計測時に最適な状態で前記超音波プローブが配置されるように、前記ロボットアームの動作を制御することを特徴とする超音波診断装置用ロボット。
【請求項7】
請求項1又は請求項6に記載された超音波診断装置用ロボットに設けられたコンピュータに所定の手順を実行させるためのプログラムであって、
血管の長軸方向に沿って前記超音波プローブを平行配置させるステップと、前記超音波プローブが平行配置された血管について、頸動脈か否かを判別するために前記超音波プローブで皮膚を押圧するステップと、皮膚に対する前記超音波プローブの傾きを調整するために前記超音波プローブを動作させるステップと、超音波画像中に頸動脈の内膜がより明瞭に現れるように前記超音波プローブを最適な状態で配置するステップとを順に前記コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−104191(P2011−104191A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263757(P2009−263757)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】