説明

超音波診断装置、超音波診断装置制御方法及び医用画像診断装置

【課題】所望の画像データを短時間で収集することが可能な超音波診断装置等を提供すること。
【解決手段】少なくとも画像データ収集条件について予め設定された複数のマザープリセット条件と、各マザープリセット条件に含まれる画像データ収集条件の全てあるいはその一部を更新することにより予め設定された各種サブプリセット条件と、を保管するプリセット条件保管ユニットから、選択された前記マザープリセット条件に対応する各種サブプリセット条件を読み出す。当該読み出された各種サブプリセット条件の中から、被検体の超音波検査に好適なサブプリセット条件を選択し、画像データの生成に関与する各ユニットに対し、選択された前記マザープリセット条件に基づいた画像データ収集条件を初期設定し、更に、選択された前記サブプリセット条件を用いて画像データ収集条件を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
予め設定されたプリセット条件に基づいて被検体に対する超音波送受信を行なう超音波診断装置、超音波診断装置制御方法及び医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに内蔵された振動素子から発生する超音波パルスを被検体内に放射し、被検体組織の音響インピーダンスの差異によって生ずる反射波を前記振動素子により電気信号に変換してモニタ上に表示するものである。この診断方法は、超音波プローブを体表に接触させるだけの簡単な操作で各種の画像データを容易に収集することができるため、各種臓器の機能診断や形態診断に広く用いられている。
【0003】
生体内の組織あるいは血球からの反射波により生体情報を得る超音波診断法は、超音波パルス反射法と超音波ドプラ法の2つの大きな技術開発により急速な進歩を遂げ、上記技術を用いて得られるBモード画像データ及びカラードプラ画像データは、今日の超音波診断において不可欠なものとなっている。又、診断対象部位の血流情報を定量的に計測することが可能なスペクトラム画像データを収集するスペクトラムドプラ法も循環器領域や腹部領域等において用いられている。
【0004】
そして、これらの画像データを順次収集することによって被検体に対する超音波検査を行なう場合、各々の画像データの収集に好適な多くの撮影パラメータで構成される画像データ収集条件が検査に先立って設定されるが、超音波検査に用いられる撮影パラメータの各々は、上述の画像データを収集する際の撮影モード(即ち、Bモード、カラードプラモード及びスペクトラムドプラモード)のみならず被検体の体型や年齢等に基づいてその都度設定する必要があった。このため、当該超音波検査に最適な画像データ収集条件を設定するまでに多くの時間を費やし、検査効率を低下させる要因となっていた。
【0005】
このような問題点を解決するために、近年では、予め設定された標準的な画像データ収集条件をプリセット条件(後述のマザープリセット条件)として初期設定し、このプリセット条件に基づいて収集された画像データの観察下で前記プリセット条件を微調整することにより所望の画像データを収集する方法が行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−111439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のプリセット条件を超音波検査に先立って設定することにより、画像データ収集条件の設定を効率よく行なうことが可能となった。しかしながら、既に述べたように、最適な画像データ収集条件は、被検体の体型や年齢等によって異なるため、初期設定されたプリセット条件の一部を検査の途中で変更・更新しなくてはならない場合が高い頻度で発生する。
【0008】
このような場合、従来行なわれてきた上述の方法では、例えば、先行する撮影モードのプリセット条件を更新することによって新たに設定された画像データ収集条件は、前記撮影モードから後続する撮影モードへ移行した場合、初期設定された元の撮影モード、画像データ収集条件へ戻ってしまうため、撮影モードの再起動や新たな撮影モードが選択される度にプリセット条件の各々を再設定しなくてはならないという問題点を有していた。
【0009】
本開示は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、予め設定されたマザープリセット条件を用いて初期設定した画像データ収集条件を、撮影モード等を単位として設定されたサブプリセット条件に基づいて更新し、更新後の画像データ収集条件に基づいて画像データを生成することにより所望の画像データを短時間で収集することが可能な超音波診断装置、超音波診断装置制御方法及び医用画像診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態が開示する超音波診断装置は、被検体に対する超音波送受信によって得られた受信信号に基づいて画像データを生成するものであって、少なくとも画像データ収集条件について予め設定された複数のマザープリセット条件と、前記各マザープリセット条件に含まれる画像データ収集条件の全てあるいはその一部を更新することにより予め設定された各種サブプリセット条件と、を保管するプリセット条件保管ユニットと、選択された前記マザープリセット条件に対応する前記各種サブプリセット条件を前記プリセット条件保管ユニットから読み出し、当該読み出された各種サブプリセット条件の中から、前記被検体の超音波検査に好適なサブプリセット条件を選択するサブプリセット条件選択ユニットと、前記画像データの生成に関与する各ユニットに対し、選択された前記マザープリセット条件に基づいた画像データ収集条件を初期設定し、更に、選択された前記サブプリセット条件を用いて前記画像データ収集条件を更新する収集条件制御ユニットと、更新後の前記画像データ収集条件を用いた超音波送受信の受信信号に基づいて画像データを生成する画像データ生成ユニットと、を備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態における超音波診断装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態の超音波診断装置が備える送受信部の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】本実施形態の超音波診断装置が備える受信信号処理部の具体的な構成を示すブロック図。
【図4】本実施形態におけるマザープリセット及びサブプリセットの構成を説明するための図。
【図5】本実施形態におけるマザープリセット条件の具体例を示す図。
【図6】本実施形態におけるサブプリセット条件の具体例を示す図。
【図7】本実施形態におけるサブプリセット条件の変形例を示す図。
【図8】本実施形態におけるサブプリセット条件の変形例を示す図。
【図9A】本実施形態におけるサブプリセット選択画面の具体例を示す図。
【図9B】本実施形態におけるサブプリセット選択画面の具体例を示す図。
【図9C】本実施形態におけるサブプリセット選択画面の具体例を示す図。
【図9D】本実施形態におけるサブプリセット選択画面の具体例を示す図。
【図10】本実施形態の超音波診断装置が備える表示データ生成部の具体的な構成を示すブロック図。
【図11】本実施形態における画像データ収集条件の設定/更新手順を示すフローチャート。
【図12】本実施形態におけるサブプリセット選択画面の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態が開示する超音波診断装置は、被検体に対する超音波送受信によって得られた受信信号に基づいて画像データを生成するものであって、少なくとも画像データ収集条件について予め設定された複数のマザープリセット条件と、前記各マザープリセット条件に含まれる画像データ収集条件の全てあるいはその一部を更新することにより予め設定された各種サブプリセット条件と、を保管するプリセット条件保管ユニットと、選択された前記マザープリセット条件に対応する前記各種サブプリセット条件を前記プリセット条件保管ユニットから読み出し、当該読み出された各種サブプリセット条件の中から、前記被検体の超音波検査に好適なサブプリセット条件を選択するサブプリセット条件選択ユニットと、前記画像データの生成に関与する各ユニットに対し、選択された前記マザープリセット条件に基づいた画像データ収集条件を初期設定し、更に、選択された前記サブプリセット条件を用いて前記画像データ収集条件を更新する収集条件制御ユニットと、更新後の前記画像データ収集条件を用いた超音波送受信の受信信号に基づいて画像データを生成する画像データ生成ユニットと、を備えるものである。
【0013】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。
【0014】
(実施形態)
以下に述べる本実施形態の超音波診断装置では、超音波検査単位で予め設定されている当該超音波診断装置において設定される複数のパラメータについての条件或いは値(以下「マザープリセット条件」と言う。また、「ユーザプリセット」或いは「イメージングプリセット」と言われることもある。)を用いて画像データ収集条件を初期設定する。そして、撮影モード単位で予め設定された当該超音波診断装置において設定される少なくとも一つのパラメータについての条件或いは値(サブプリセット条件)を用いて、マザープリセット条件にて初期設定された画像データ収集条件に含まれる少なくとも一つのパタメータについての条件或いは値を更新(変更或いは調整)し、更新後の画像データ収集条件に基づいて画像データを生成する。その結果得られた画像データを観察することにより更新後の画像データ収集条件が適当であるか否かを判定し、適当でない場合には、入力部の入力デバイスを用いて当該画像データ収集条件を微調整する。
【0015】
尚、本実施形態では、Bモード画像データ、カラードプラ画像データ及びスペクトラム画像データの収集が可能な超音波診断装置について述べるが、これに限定されるものではなく、例えば、Bモード画像データとカラードプラ画像データあるいはBモード画像データとスペクトラム画像データの収集が可能な超音波診断装置であってもよく、Bモード画像データ、カラードプラ画像データあるいはスペクトラム画像データの何れかを収集することが可能な超音波診断装置であっても構わない。
【0016】
又、被検体に対するセクタ走査によって得られた受信信号に基づいて上述の画像データを生成する超音波診断装置について述べるが、コンベックス走査やリニア走査等の他の超音波走査が可能な超音波診断装置であってもよい。
【0017】
また、本実施形態においては、超音波診断装置を例としてマザープリセット条件、サブプリセット条件を用いたパラメータ設定・更新手法について説明する。しかしながら、当該パラメータ設定・更新手法の適用は、超音波診断装置に拘泥されない。例えば、X線診断装置、X線コンュータ断層撮像装置、磁気共鳴イメージング装置、核医学診断装置等に代表される各種医用画像診断装置におけるパラメータ設定・変更においても適用可能である。
【0018】
(装置の構成)
本開示の実施形態における超音波診断装置の構成と機能につき図1乃至図8を用いて説明する。尚、図1は、本実施形態における超音波診断装置の全体構成を示すブロック図であり、図2、図3及び図8は、この超音波診断装置が備える送受信部、受信信号処理部及び表示データ生成部の具体的な構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示す超音波診断装置100は、超音波プローブ2、送受信部3、受信信号処理部4、プリセット条件保管部5、サブプリセット選択画面生成部6、表示データ生成部7、表示部8、入力部9、フィルタ制御部10、走査制御部11、システム制御部12を具備している。
【0020】
超音波プローブ2には、被検体の体内に超音波パルス(送信超音波)を放射し、この送信超音波によって体内から得られた超音波反射波(受信超音波)を電気信号(受信信号)へ変換する複数個の振動素子が配列さている。送受信部3は、前記被検体の所定方向に対し送信超音波を放射するための駆動信号を前記振動素子へ供給し、これらの振動素子から得られた複数チャンネルの受信信号を整相加算する。受信信号処理部4は、Bモード、カラードプラモード(CDモード)及びスペクトラムドプラモード(SDモード)の各撮影モードにて得られた整相加算後の受信信号を処理してBモードデータ、カラードプラデータ及びドプラスペクトラムデータを生成する。プリセット条件保管部5には、超音波検査単位で予め設定されたマザープリセット条件及び撮影モード単位で予め設定されたサブプリセット条件が保管されている。サブプリセット選択画面生成部6は、プリセット条件保管部5から読み出したサブプリセット条件に基づいて所定フォーマットのサブプリセット選択画面データを生成する。表示データ生成部7は、受信信号処理部4によって生成されたBモードデータ、カラードプラデータ及びドプラスペクトラムデータに基づいて各種の画像データを生成し、これらの画像データに基づいて表示データを生成する。表示部8は、表示データ生成部7において生成された上述の表示データやサブプリセット選択画面生成部6から供給されたサブプリセット選択画面データを表示する。入力部9は、操作者が被検体情報の入力、撮影モードの選択、サブプリセット条件の選択、各種指示信号の入力等を行なうためのデバイスである。フィルタ制御部10は、プリセット条件保管部5からシステム制御部12を介して供給されたマザープリセット条件やサブプリセット条件等に基づいて受信信号処理部4が備えるMTI(moving target indication)フィルタ及びHPF(high-pass filter)のフィルタリング特性を制御する。走査制御部11は、上述のマザープリセット条件やサブプリセット条件等に基づいて被検体に対する超音波送受信方向や超音波集束距離を制御する。システム制御部12は、上述の各ユニットを統括的に制御する。以下、各ユニットの構成、機能についてさらに詳しく説明する。
【0021】
超音波プローブ2は、配列されたN個の図示しない振動素子をその先端部に有し、前記先端部を被検体の体表に接触させて超音波の送受信を行なう。振動素子は電気音響変換素子であり、送信時には電気的な駆動信号を送信超音波に変換し、受信時には受信超音波を電気的な受信信号に変換する機能を有している。そして、これら振動素子の各々は、図示しないNチャンネルの多芯ケーブルを介して送受信部3に接続されている。尚、本実施形態では、N個の振動素子を有するセクタ走査用の超音波プローブ2を用いる場合について述べるが、リニア走査やコンベックス走査等に対応した超音波プローブを用いてもよい。
【0022】
次に、図2に示す送受信部3は、被検体の所定方向に対し各種撮影モード(即ち、Bモード、カラードプラモード及びスペクトラムドプラモード)の超音波パルスを放射するための駆動信号を超音波プローブ2の振動素子へ供給する送信部31と、これらの振動素子から得られた複数チャンネルの受信信号を整相加算する受信部32を備え、送信部31は、レートパルス発生器311、送信遅延回路312及び駆動回路313を有している。
【0023】
レートパルス発生器311は、被検体内に放射する送信超音波の繰り返し周期を決定するレートパルスを、システム制御部12から供給されるマザープリセット条件やサブプリセット条件等に基づいて生成し、得られたレートパルスを送信遅延回路312へ供給する。尚、上述のレートパルス繰り返し周期は、後述するマザープリセット条件あるいはサブプリセット条件の観察深度やレート周波数に基づいて決定される。
【0024】
送信遅延回路312は、例えば、超音波プローブ2に内蔵されたN個の振動素子の中から選択されたNt個の送信用振動素子と同数の独立な遅延回路から構成されている。そして、上述のマザープリセット条件やサブプリセット条件等に基づいて走査制御部11から供給される走査制御信号に従い、送信において細いビーム幅を得るために所定の深さに送信超音波を集束するための集束用遅延時間と所定方向に対して前記送信超音波を放射するための偏向用遅延時間をレートパルス発生器311から出力された上述のレートパルスに与える。
【0025】
駆動回路313は、超音波プローブ2に内蔵されたNt個の送信用振動素子を駆動する機能を有し、送信遅延回路312から供給されるレートパルスに基づいて送信超音波を所定の深さ(距離)に収束するための集束用遅延時間と所定方向へ放射するための偏向用遅延時間を有する駆動パルスを生成する。
【0026】
一方、受信部32は、超音波プローブ2に内蔵されたN個の振動素子の中から選択されたNr個の受信用振動素子に対応するNrチャンネルのプリアンプ321、A/D変換器322及び受信遅延回路323と加算器324を備え、Bモード、カラードプラモード及びスペクトラムドプラモードにおいて受信用振動素子からプリアンプ321を介して供給されたNrチャンネルの受信信号はA/D変換器322にてデジタル信号に変換され、受信遅延回路323へ送られる。
【0027】
受信遅延回路323は、マザープリセット条件やサブプリセット条件等に基づいて走査制御部11から供給される走査制御信号に従い、所定の深さからの受信超音波を集束するための集束用遅延時間と、所定方向に対して強い受信指向性を設定するための偏向用遅延時間をA/D変換器322から出力されたNrチャンネルの受信信号の各々に与える。そして、加算器324は、受信遅延回路323から出力されたNrチャンネルの受信信号を加算合成する。即ち、受信遅延回路323と加算器324により、所定方向からの受信超音波に対応した受信信号は整相加算される。
【0028】
尚、送信遅延回路312及び受信遅延回路323における集束用遅延時間及び偏向用遅延時間は、後述するマザープリセット条件あるいはサブプリセット条件の超音波集束距離及び走査範囲等に基づいて決定される。
【0029】
次に、図3に示す受信信号処理部4は、受信部32の加算器324から出力されたBモードの受信信号を処理してBモードデータを生成するBモードデータ生成部41と、カラードプラモード及びスペクトラムドプラモードの受信信号を直交検波することによりこれらの受信信号に混在しているドプラ信号を検出するドプラ信号検出部42と、カラードプラモードにおいて検出されたドプラ信号に基づいてカラードプラデータを生成するカラードプラデータ生成部43と、スペクトラムドプラモードにおいて検出されたドプラ信号に基づいてドプラスペクトラムデータを生成するドプラスペクトラムデータ生成部44を備えている。
【0030】
Bモードデータ生成部41は、包絡線検波器411と対数変換器412を備え、包絡線検波器411は、受信部32の加算器324から供給された整相加算後の受信信号を包絡線検波し、対数変換器412は、包絡線検波された受信信号の振幅を対数変換してBモードデータを生成する。
【0031】
ドプラ信号検出部42は、π/2移相器421、ミキサ422−1及び422−2、LPF(低域通過フィルタ)423−1及び423−2を備え、受信部32の加算器324から供給された受信信号を直交検波して実部と虚部とからなる複素型のドプラ信号を検出する。
【0032】
一方、カラードプラデータ生成部43は、ドプラ信号記憶回路431、MTIフィルタ432及び自己相関演算器433を備え、同一方向に対する複数回の超音波送受信においてドプラ信号検出部42のLPF423−1及びLPF423−2から出力されたドプラ信号の複素成分、即ち、実成分(I成分)と虚成分(Q成分)はドプラ信号記憶部431に保存される。
【0033】
低域成分除去用のデジタルフィルタであるMTIフィルタ432は、当該被検体の同一部位にて収集された時系列的なドプラ信号をドプラ信号記憶部431から順次読み出す。そして、これらのドプラ信号に含まれている血流に起因した成分(血流成分)を抽出し、臓器の呼吸性移動や拍動性移動等に起因した成分(クラッタ成分)を除去する。具体的には、MTIフィルタ432のカットオフ周波数等を好適な値に設定することにより、上述の血流成分とこの血流成分より低い周波数を有するクラッタ成分とを分離する。
【0034】
自己相関演算器433は、MTIフィルタ432によって抽出されたドプラ信号の血流成分に対し自己相関演算を行なって血流の平均流速値や血流速度の乱れを示す速度分散値、更には、血流成分の大きさを示すパワー値等をカラードプラデータとして算出する。
【0035】
次に、ドプラスペクトラムデータ生成部44は、SH(サンプルホールド回路)441、HPF(高域通過フィルタ)442及びFFT(Fast-Fourier-Transform)分析器443を備え、ドプラ信号検出部42から供給されたスペクトラムドプラモードのドプラ信号を周波数分析してドプラスペクトラムデータを生成する。
【0036】
SH441は、ドプラ信号検出部42のLPF423−1及び423−2から出力されたドプラ信号の実成分及び虚成分と、入力部9において設定された関心領域(レンジゲート)の位置情報を受信する。そして、所定方向に対する複数回の超音波送受信によって時系列的に収集された前記ドプラ信号の各々の中から前記関心領域に対応するドプラ信号を抽出する。一方、HPF442は、SH441から出力された前記関心領域におけるドプラ信号をフィルタリング処理することにより、このドプラ信号に含まれている臓器の呼吸性移動や拍動性移動等に起因したクラッタ成分を除去する。
【0037】
FFT分析器443は、図示しない演算回路と記憶回路を備え、HPF442から出力された関心領域のドプラ信号は記憶回路に一旦保存される。一方、演算回路は、前記記憶回路に保存された所定期間のドプラ信号に対し周波数分析を行なってドプラスペクトラムデータを生成する。
【0038】
尚、カラードプラデータ生成部43が備えるMTIフィルタ432及びドプラスペクトラムデータ生成部44が備えるHPF442の周波数特性を決定するフィルタの次数やカットオフ周波数等は、後述するマザープリセット条件あるいはサブプリセット条件のフィルタ周波数等に基づいて決定され、FFT分析器443によって生成されるドプラスペクトラムデータのベースラインは、ベースラインシフト周波数等に基づいて決定される。
【0039】
次に、図1に示したプリセット条件保管部5は、図示しないマザープリセット条件記憶部とサブプリセット条件記憶部を備え、超音波検査単位で予め設定されたマザープリセット条件及び撮影ボード単位で予め設定されたサブプリセット条件が各々の記憶部に保管されている。
【0040】
図4は、マザープリセット条件とサブプリセット条件の関係を示したものであり、マザープリセット条件及びサブプリセット条件を用いて画像データ収集条件の設定/更新を行なう本実施形態のプリセットは、図4に示すように超音波検査単位で初期設定されるマザープリセット条件と撮影モードの選択時あるいは画像データの観察時等において前記マザープリセット条件の一部を更新するために用いられる複数のサブプリセット条件を組み合わせることによって行なわれる。
【0041】
例えば、図4に示すように、超音波検査Aに対して設定されたマザープリセット条件MPa及び超音波検査Bに対して設定されたマザープリセット条件MPbがマザープリセット条件記憶部に予め保管され、マザープリセット条件MPa及びMPbの一部を更新することにより設定された複数のサブプリセット条件が撮影モード(Bモード、カラードプラモード及びスペクトラムドプラモード)を単位としてサブプリセット条件記憶部に予め保管されている。
【0042】
即ち、上述のサブプリセット条件記憶部には、マザープリセット条件MPaに対応するBモード用サブプリセット条件Ba1乃至Ba4、カラードプラモード用サブプリセット条件Ca1乃至Ca3及びスペクトラムドプラモード用サブプリセット条件Da1乃至Da4が超音波検査Aあるいはマザープリセット条件MPaの識別情報を付帯情報として保存され、更に、マザープリセット条件MPbに対応するBモード用サブプリセット条件Bb1乃至Bb5、カラードプラモード用サブプリセット条件Cb1乃至Cb4及びスペクトラムドプラモード用サブプリセット条件Db1乃至Da4が超音波検査Bあるいはマザープリセット条件MPbの識別情報を付帯情報として保存されている。
【0043】
図5は、プリセット条件保管部5のマザープリセット条件記憶部に保管されている超音波検査Aに対応したマザープリセット条件MPaの具体例を示したものであり、このマザープリセット条件記憶部には、例えば、Bモード用マザープリセット条件として予め設定された、「観察深度Dx」、「超音波集束距離Fx」、「走査範囲Wx」、「超音波周波数fox」及び「受信利得Gx」等が保管され、同様にして、カラードプラモード用マザープリセット条件として予め設定された「レート周波数frx」、「フィルタ周波数fcx」、「超音波周波数fox」及び「受信利得Gx」やスペクトラムドプラモード用マザープリセット条件として予め設定された「レート周波数frx」、「フィルタ周波数fcx」、「超音波周波数fox」、「受信利得Gx」及び「ベースラインシフト周波数fs」等が保管されている。
【0044】
一方、図6は、プリセット条件保管部5のサブプリセット条件記憶部に保管されているマザープリセット条件MPaに対応したBモード用サブプリセット条件Ba1乃至Ba4の具体例を示したものであり、例えば、サブプリセット条件Ba1は、マザープリセット条件MPaの「観察深度Dx」、「超音波集束距離Fx」及び「走査範囲Wx」を「観察深度Da1」、「超音波集束距離Fa1」及び「走査範囲Wa1」へ更新することによって形成され、サブプリセット条件Ba2は、マザープリセット条件MPaの「観察深度Dx」、「走査範囲Wx」及び「受信利得Gx」を「観察深度Da2」、「走査範囲Wa2」及び「受信利得Ga2」へ更新することによって形成される。同様にして、サブプリセット条件Ba3は、マザープリセット条件MPaの「観察深度Dx」及び「走査範囲Wx」を「観察深度Da3」及び「走査範囲Wa3」へ更新することによって形成され、サブプリセット条件Ba4は、マザープリセット条件MPaの「観察深度Dx」を「観察深度Da4」へ更新することによって形成される。
【0045】
次に、図1のサブプリセット選択画面生成部6は、システム制御部12から供給される「超音波検査A」等の検査選択情報と撮影モード選択情報を受信し、これらの選択情報に対応したサブプリセット条件をプリセット条件保管部5のサブプリセット条件記憶部に保管されている各種サブプリセット条件の中から抽出する。そして、得られたサブプリセット条件の名称(サブプリセット名)を示す1つあるいは複数の選択ボタンが配列されたサブプリセット選択画面データを生成する。
【0046】
当然ながら、設定可能なサブプリセット条件は、図6の例に拘泥されない。例えば、まず図7に示すサブプリセット条件Ba1を選択することでマザープリセット条件MPaの「観察深度Dx」、「超音波集束距離Fx」及び「走査範囲Wx」を「観察深度Da1」、「超音波集束距離Fa1」及び「走査範囲Wa1」へ更新する。その後、同一の組み合わせ項目からなるサブプリセット条件Ba2を選択することで、「観察深度Da1」を「観察深度Da2」へ、」「超音波集束距離Fa1」を「超音波集束距離Fa2」へ、「走査範囲Wa1」を「超音波集束距離Fa2」へさらに更新することも可能である。
【0047】
また、図8に示すように、「プローブ種」をサブプリセット条件の項目として設定することも可能である。例えば、下肢についてBモード画層を収集する場合、大腿部領域をリニアプローブで、ひざ関節領域をコンベックスプローブでスキャンする場合がある。係る場合には、最初に大腿部領域をリニアプローブでスキャンした後、使用するプローブをリニアプローブからコンベックスプローブに持ち替え、サブプリセット条件Ba10を選択する。これにより、迅速且つ簡単に、画像データ収集条件をコンベックスプローブに好適な値に変更することが可能となる。
【0048】
なお、所定のサブプリセット条件を選択し対応するパラメータが変更・更新された場合であっても、現状起動している撮影モード(B,Color,Dopplerなど)は変更されず、そのまま維持される。
【0049】
図9A、9B、9C、9Dは、サブプリセット選択画面生成部6によって生成されたサブプリセット選択画面データの具体例を示しており、図9Aは、何れの撮影モードも選択されていない場合のサブプリセット選択画面データ、図9Bは、Bモードが選択された場合のサブプリセット選択画面データ、図9Cは、カラードプラモードが選択された場合のサブプリセット選択画面データ、図9Dは、スペクトラムドプラモードが選択された場合のサブプリセット選択画面データを夫々示している。
【0050】
例えば、撮影モードとしてBモードが選択された場合、図9Bに示すようにサブプリセット選択画面データにはBモード用サブプリセット条件Ba1乃至Ba4の各々に対応した選択ボタンSBa1乃至SBa4が示され、カラードプラモードが選択された場合、図9Cに示すようにカラードプラモード用サブプリセット条件Ca1乃至Ca3の各々に対応した選択ボタンSCa1乃至SCa3が示される。同様にして、スペクトラムドプラモードが選択された場合、図9Dに示すようにサブプリセット選択画面データにはスペクトラムドプラモード用サブプリセット条件Da1乃至Da4の各々に対応した選択ボタンSDa1乃至SDa4が示される。
【0051】
次に、図1に示した表示データ生成部7の具体的な構成につき図10を用いて説明する。図10のブロック図に示すように、表示データ生成部7は、受信信号処理部4において生成されたBモードデータ、カラードプラデータ及びドプラスペクトラムデータに基づいて各種の画像データを生成する画像データ生成部71と、これらの画像データを合成し、更に、システム制御部12から供給される被検体情報や画像データ収集条件等を必要に応じて付加することにより表示データを生成するデータ合成部72を備えている。
【0052】
即ち、画像データ生成部71は、Bモード画像データ生成部711、カラードプラ画像データ生成部712及びスペクトラム画像データ生成部713を有し、Bモード画像データ生成部711は、受信信号処理部4のBモードデータ生成部41から送受信方向単位で順次供給された対数変換後の受信信号(Bモードデータ)を自己の記憶回路に保存してBモード画像データを生成する。
【0053】
カラードプラ画像データ生成部712は、受信信号処理部4のカラードプラデータ生成部43から供給されたカラードプラデータに基づいてカラードプラ画像データを生成する。例えば、血流の平均流速値に対応した明度情報と速度分散値に対応した色相情報を各々の画素値として設定することにより平均流速値と速度分散値の同時観測が可能なカラードプラ画像データを生成する。
【0054】
スペクトラム画像データ生成部713は、受信信号処理部4のドプラスペクトラムデータ生成部44が所定の関心領域(レンジゲート)から得られるドプラ信号に基づいて生成した時系列的なドプラスペクトラムデータを時間軸方向に配列することによりスペクトラム画像データを生成する。
【0055】
一方、データ合成部72は、画像データ生成部71から供給されたBモード画像データ、カラードプラ画像データ及びスペクトラム画像データを所定の表示フォーマットに変換し、変換処理されたこれらの画像データを合成して表示データを生成する。
【0056】
次に、図1の表示部8は、図示しない変換処理部とモニタを備え、変換処理部は、表示データ生成部7から供給された上述の表示データやサブプリセット選択画面生成部6から供給されたサブプリセット選択画面データに対しD/A変換やテレビフォーマット変換等の変換処理を行なってモニタに表示する。
【0057】
一方、入力部9は、操作パネル上に表示パネルやキーボード、トラックボール、マウス、選択ボタン、スライドレバー等の入力デバイスを備え、Bモード、カラードプラモード及びスペクトラムドプラモード等の撮影モードを選択する機能やサブプリセット条件を選択する機能、更には、マザープリセット条件及びサブプリセット条件によって設定/更新された画像データ収集条件を微調整する機能を有している。又、被検体情報の入力、超音波検査の選択、表示データ生成条件の設定、サブプリセット選択画面表示指示信号をはじめとする各種指示信号の入力等も上述の表示パネルや入力デバイスを用いて行なわれる。
【0058】
フィルタ制御部10は、プリセット条件保管部5からシステム制御部12を介して供給されたマザープリセット条件あるいはサブプリセット条件のフィルタ周波数等に基づいて生成したフィルタ制御信号を、受信信号処理部4のカラードプラデータ生成部43が備えるMTIフィルタ432及びドプラスペクトラムデータ生成部44が備えるHPF442へ供給することによりMTIフィルタ432やHPF442のフィルタリング特性を制御する。即ち、上述したフィルタ制御信号の供給により、カラードプラ画像データの生成に好適な周波数特性を有するMTIフィルタ432が形成され、スペクトラム画像データの生成に好適な周波数特性を有するHPF442が形成される。
【0059】
次に、走査制御部11は、プリセット条件保管部5からシステム制御部12を介して供給されたマザープリセット条件あるいはサブプリセット条件の走査範囲及び超音波集束距離に基づき、当該被検体の診断対象部位を含む2次元領域あるいは3次元領域に対して予め設定されたBモード、カラードプラモード及びスペクトラムドプラモードの超音波送受信を行なうための遅延時間制御を送信部31の送信遅延回路312及び受信部32の受信遅延回路323に対して行なう。尚、カラードプラモード及びスペクトラムドプラモードにおける超音波送受信の具体例については特開2004−329609号公報や特開2005−81081号公報等に記載されているため詳細な説明は省略する。
【0060】
システム制御部12は、図示しないCPUと記憶回路を備え、記憶回路には、プリセット条件保管部5から供給された当該超音波検査のマザープリセット条件及びサブプリセット条件や入力部9において入力/選択/設定された各種の入力情報、選択情報及び設定情報が保存される。この場合、表示部8に表示されたサブプリセット選択画面データを用いて入力部9が選択したサブプリセット条件がプリセット条件保管部5のサブプリセット条件記憶部から読み出され上述の記憶回路に保存される。
【0061】
そして、CPUは、上述の記憶回路から読み出したマザープリセット条件及びサブプリセット条件を用いて当該超音波検査における画像データ収集条件の設定や更新を行ない、更に、この画像データ収集条件に基づいて超音波診断装置100の各ユニットを統括的に制御することにより当該超音波検査を実行させる。
【0062】
更に、システム制御部12は、図示しない収集条件記憶部を備え、この収集条件記憶部には、サブプリセット条件によって更新された画像データ収集条件、あるいは、入力部9の入力デバイスによって更に微調整された画像データ収集条件が超音波検査や撮影モードの識別情報を付帯情報として保存される。
【0063】
そして、同一の撮影モードが入力部9によって複数回選択された場合、上述の収集条件記憶部から読み出した画像データ収集条件を用いて当該撮影モードの画像データを生成することにより良好な画像データを効率よく収集することが可能となる。
【0064】
(画像データ収集条件の設定/更新手順)
次に、本実施形態における画像データ収集条件の設定/更新手順を図11のフローチャートに沿って説明する。但し、以下では、最初にBモード画像データを収集し、次いで、カラードプラ画像データあるいはスペクトラム画像データを収集する場合について述べるが、画像データの収集順序は上述に限定されない。又、上述の画像データの何れか1つを収集するような場合であっても構わない。
【0065】
当該被検体に対する超音波検査に先立ち、超音波診断装置100の操作者は、入力部9において被検体情報の入力や表示データ生成条件の設定を行なった後画像データ収集条件の設定指示信号を入力し、この指示信号を受信したシステム制御部12は、プリセット条件保管部5のマザープリセット条件記憶部から読み出した当該超音波検査のマザープリセット条件を上述の表示データ生成条件と共に超音波診断装置100の関連ユニットへ供給することにより各種撮影モード(即ち、Bモード、カラードプラモード及びスペクトラムドプラモード)の画像データ収集条件を初期設定する(図11のステップS1)。
【0066】
上述の初期設定が終了したならば、操作者は、入力部9において画像データ生成開始指示信号を入力し(図11のステップS2)、更に、撮影モードとしてBモードを選択する(図11のステップS3)。
【0067】
一方、システム制御部12を介して画像データ生成開始指示信号と撮影モード選択情報を受信した送受信部3、受信信号処理部4及び表示データ生成部7の各ユニットは、画像データ収集条件として初期設定されたマザープリセット条件の中からBモード用マザープリセット条件を選択し、このマザープリセット条件に基づいて生成したBモード画像データを表示部8のモニタに表示する(図11のステップS4)。
【0068】
そして、表示部8に表示されたBモード画像データを観察した操作者は、サブプリセット条件の選択を目的としたサブプリセット選択画面の表示指示信号を入力部9において入力する(図11のステップS5)。
【0069】
次いで、システム制御部12を介して上述の表示指示信号を受信したサブプリセット選択画面生成部6は、プリセット条件保管部5のサブプリセット条件記憶部に保管されている各種サブプリセット条件の中から上述のBモード用マザープリセット条件に対応したサブプリセット条件を抽出し、得られたサブプリセット条件に対応する1つあるいは複数の選択ボタンが配列されたBモード用サブプリセット選択画面データを生成して表示部8に表示する(図9B参照)(図11のステップS6)。
【0070】
一方、操作者は、表示部8に表示されたBモード用サブプリセット選択画面に示されている各種選択ボタン(例えば、図9Bの選択ボタンBa1乃至Ba4)の中から当該超音波検査に好適な選択ボタンを選択し、その選択情報を受信したシステム制御部12は、選択された選択ボタンに対応するBモード用サブプリセット条件をプリセット条件保管部5のサブプリセット条件記憶部に保管されている各種プリセット条件の中から選択する(図11のステップS7)。
【0071】
そして、得られたBモード用サブプリセット条件を送受信部3や受信信号処理部4等の関連ユニットへ供給することによりマザープリセット条件に基づいて既に設定されている当該超音波検査の画像データ収集条件を更新する。そして、上述の関連ユニットは、Bモード用サブプリセット条件によって更新された画像データ収集条件に基づいてBモード画像データを生成し、得られたBモード画像データを表示部8に表示する(図11のステップS8)。
【0072】
次いで、操作者は、表示部8に表示された上述の画像データを観察することにより更新された画像データ収集条件が適当であるか否かを判定し(図11のステップS9)、不適当な場合には、入力部9に設けられた微調整用スライドレバー等を用いて不適当な画像データ収集条件を微調整する(図11のステップS10)。
【0073】
一方、入力部9からシステム制御部12を介して供給される上述の微調整情報を受信した送受信部3や受信信号処理部4等の関連ユニットは、マザープリセット条件及びBモード用サブプリセット条件に基づいて既に設定されている画像データ収集条件を上述の微調整情報によって更新し、更新後の画像データ収集条件に基づいて生成したBモード画像データを表示部8に表示する(図11のステップS11)。
【0074】
次に、上述のBモード画像データの収集に後続してカラードプラ画像データあるいはスペクトラム画像データの収集を行なう場合、操作者は、入力部9においてカラードプラモードあるいはスペクトラムドプラモードを撮影モードとして選択し(図11のステップS3)、この選択情報を受信したシステム制御部12は、超音波診断装置100が備える各ユニットを制御して上述のステップS4乃至S11を繰り返すことにより夫々の撮影モードに好適な画像データ収集条件の設定及びこの画像データ収集条件に基づくカラードプラ画像データあるいはスペクトラム画像データの生成と表示を行なう(図11のステップS4乃至S11)。
【0075】
以上述べた本実施形態によれば、超音波検査単位で予め設定されたマザープリセット条件を用いて初期設定した画像データ収集条件を撮影モード単位で予め設定されたサブプリセット条件に基づいて更新し、更新後の画像データ収集条件に基づいて画像データを生成することにより所望の画像データを短時間で収集することが可能となる。
【0076】
特に、撮影モード単位で予め設定された各種サブプリセット条件の中から当該超音波検査に好適なサブプリセット条件を選択することにより、マザープリセット条件によって初期設定された画像データ収集条件の更新が容易となり、更に、サブプリセット選択画面上に選択ボタンとして示された上述の各種サブプリセット条件の中から所望のサブプリセット条件を選択することによりサブプリセット条件の選択を容易に行なうことができる。
【0077】
又、サブプリセット条件によって更新された画像データ収集条件を微調整することにより、当該超音波検査に最適な画像データ収集条件を正確に設定することができる。
【0078】
更に、サブプリセット条件によって更新された画像データ収集条件、あるいは、入力部の入力デバイス等を用いて更に微調整された画像データ収集条件を一旦保存し、同一の撮影モードが複数回選択される場合には保存されていた上述の画像データ収集条件を用いて当該撮影モードの画像データを生成することにより良好な画像データを効率よく収集することができる。
【0079】
又、サブプリセット条件による画像データ収集条件の更新は撮影モード単位で行なわれるため、更新が必要な撮影モードにおける画像データ収集条件の更新を選択的に行なうことができ、無駄な更新作業を防止することができる。このため、当該被検体に対する検査効率が改善されるのみならず操作者の負担を大幅に軽減することが可能となる。
【0080】
以上、本開示の実施形態について述べてきたが、本開示は、上述の実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、変形して実施することが可能である。例えば、上述の実施形態では、Bモード画像データ、カラードプラ画像データ及びスペクトラム画像データの収集が可能な超音波診断装置100について述べたが、Bモード画像データとカラードプラ画像データあるいはBモード画像データとスペクトラム画像データの収集が可能な超音波診断装置であってもよく、Bモード画像データ、カラードプラ画像データあるいはスペクトラム画像データの何れかを収集することが可能な超音波診断装置であってもよい。
【0081】
又、被検体に対するセクタ走査によって得られた受信信号に基づいて上述の画像データを生成する超音波診断装置100について述べたが、コンベックス走査やリニア走査等の他の超音波走査が可能な超音波診断装置であっても構わない。
【0082】
更に、サブプリセット選択画面データと各種画像データを同一の表示部において表示する場合について述べたが、これらのデータを異なる表示部において表示してもよい。尚、サブプリセット選択画面データの選択ボタンに示されるサブプリセット名は、検査対象臓器名、操作者名、被検体名、被検体の年齢、体型、疾患状態等に基づいて決定してもよく、ユーザフレンドリな他の名称を用いても構わない。このような名称を上述の選択ボタンに付加することにより、特に、臨床経験が浅い操作者によるサブプリセット条件の選択は更に容易となる。係る場合のサブプリセット選択画面データの選択ボタン表示例を図12に示す。なお、同図における「(6C3)」は、プローブ種のIDを例示したものである。
【0083】
一方、上述の実施形態では、予め設定されたマザープリセット条件を用いて初期設定された画像データ収集条件を撮影モード単位で予め設定されたサブプリセット条件を用いて更新する場合について述べたが、上述のサブプリセット条件を用いて更新した画像データ収集条件を予め設定された他のサブプリセット条件を用いて更に更新しても構わない。
【0084】
又、サブプリセット条件によって更新した画像データ収集条件が不適当な場合、更新後の画像データ収集条件を入力部9の入力デバイスを用いて微調整する場合について述べたが、更新前の画像データ収集条件を撮影モード単位で予め設定された他のサブプリセット条件を用いて再度更新してもよい。
【0085】
更に、サブプリセット条件の選択は、マザープリセット条件を用いて初期設定された画像データ収集条件に基づいて生成される画像データの観察下で行なう場合について述べたが、マザープリセット条件とサブプリセット条件を用いて画像データ収集条件の初期設定を行なってもよい。
【0086】
又、マザープリセット条件及びサブプリセット条件の設定やこれらのプリセット条件に基づく画像データ収集条件の設定/更新は、超音波検査単位で行なう場合について述べたが、被検体単位あるいは操作者単位で行なっても構わない。
【0087】
尚、本実施形態の超音波診断装置100に含まれる各ユニットは、例えば、CPU、RAM、磁気記憶装置、入力装置、表示装置等で構成されるコンピュータをハードウェアとして用いることでも実現することができる。例えば、超音波診断装置100のシステム制御部12は、上記のコンピュータに搭載されたCPU等のプロセッサに所定の制御プログラムを実行させることにより各種機能を実現することができる。この場合、上述の制御プログラムをコンピュータに予めインストールしてもよく、又、コンピュータ読み取りが可能な記憶媒体への保存あるいはネットワークを介して配布された制御プログラムのコンピュータへのインストールであっても構わない。
【0088】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0089】
2…超音波プローブ
3…送受信部
31…送信部
32…受信部
4…受信信号処理部
41…Bモードデータ生成部
42…ドプラ信号検出部
43…カラードプラデータ生成部
44…ドプラスペクトラムデータ生成部
5…プリセット条件保管部
6…サブプリセット選択画面生成部
7…表示データ生成部
71…画像データ生成部
72…データ合成部
8…表示部
9…入力部
10…フィルタ制御部
11…走査制御部
12…システム制御部
100…超音波診断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対する超音波送受信によって得られた受信信号に基づいて画像データを生成する超音波診断装置において、
少なくとも画像データ収集条件について予め設定された複数のマザープリセット条件と、前記各マザープリセット条件に含まれる画像データ収集条件の全てあるいはその一部を更新することにより予め設定された各種サブプリセット条件と、を保管するプリセット条件保管ユニットと、
選択された前記マザープリセット条件に対応する前記各種サブプリセット条件を前記プリセット条件保管ユニットから読み出し、当該読み出された各種サブプリセット条件の中から、前記被検体の超音波検査に好適なサブプリセット条件を選択するサブプリセット条件選択ユニットと、
前記画像データの生成に関与する各ユニットに対し、選択された前記マザープリセット条件に基づいた画像データ収集条件を初期設定し、更に、選択された前記サブプリセット条件を用いて前記画像データ収集条件を更新する収集条件制御ユニットと、
更新後の前記画像データ収集条件を用いた超音波送受信の受信信号に基づいて画像データを生成する画像データ生成ユニットと、
を備えた超音波診断装置。
【請求項2】
前記プリセット条件保管ユニットは、画像データ収集条件を超音波検査単位で分類した前記複数のマザープリセット条件を保管する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記プリセット条件保管ユニットは、前記マザープリセット条件に含まれる画像データ収集条件を撮影モード単位で分類した前記各種サブプリセット条件を保管する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記プリセット条件保管ユニットは、前記マザープリセット条件に含まれる画像データ収集条件を被検体の体型、年齢、疾患名、疾患状態、前記超音波送受信に用いる超音波プローブの種類のうち、少なくとも何れかを基準として更新することにより設定された前記サブプリセット条件を保管する請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記サブプリセット条件選択ユニットは、更新された撮像モードに基づいて、前記各種サブプリセット条件の中から前記被検体の超音波検査に好適なサブプリセット条件を選択する請求項3記載の超音波診断装置。
【請求項6】
選択された前記マザープリセット条件に対応する前記各種サブプリセット条件を表示する表示ユニットをさらに具備し、
前記サブプリセット条件選択ユニットは、前記表示ユニットを介した操作に応答して、前記被検体の超音波検査に好適なサブプリセット条件を選択する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記表示ユニットは、撮影モード単位で分類された選択ボタンとして前記各種サブプリセット条件を表示する請求項6記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記表示ユニットは、被検体の体型、疾患名、疾患状態、被検体名あるいは操作者名のうちの少なくとも何れかを基準として分類された選択ボタンとして前記各種サブプリセット条件を表示する請求項6記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記収集条件制御ユニットは、前記サブプリセット条件によって更新した前記画像データ収集条件を、前記表示ユニットを介して選択された他のサブプリセット条件を用いて更に更新する請求項6記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記サブプリセット条件を用いて更新した前記画像データ収集条件を調整するための条件又は値を入力するための調整ユニットをさらに具備し、
前記収集条件制御ユニットは、前記調整ユニットから入力される前記条件又は値に基づいて、前記サブプリセット条件を用いて更新した前記画像データ収集条件を調整し、
前記画像データ生成ユニットは、調整後の前記画像データ収集条件を用いた超音波送受信の受信信号に基づいて画像データを生成する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項11】
被検体に対する超音波送受信によって得られた受信信号に基づいて画像データを生成する超音波診断装置の制御方法であって、
少なくとも画像データ収集条件について予め設定された複数のマザープリセット条件と、前記各マザープリセット条件に含まれる画像データ収集条件の全てあるいはその一部を更新することにより予め設定された各種サブプリセット条件と、を保管するプリセット条件保管ユニットから、選択された前記マザープリセット条件に対応する前記各種サブプリセット条件を読み出し、
前記読み出された各種サブプリセット条件の中から、前記被検体の超音波検査に好適なサブプリセット条件を選択し、
前記画像データの生成に関与する各ユニットに対し、選択された前記マザープリセット条件に基づいた画像データ収集条件を初期設定し、更に、選択された前記サブプリセット条件を用いて前記画像データ収集条件を更新し、
更新後の前記画像データ収集条件を用いた超音波送受信の受信信号に基づいて画像データを生成すること、
を備えた超音波診断装置制御方法。
【請求項12】
前記複数のマザープリセット条件は、画像データ収集条件を超音波検査単位で分類したものである請求項11記載の超音波診断装置制御方法。
【請求項13】
前記各種サブプリセット条件は、前記マザープリセット条件に含まれる画像データ収集条件を撮影モード単位で分類したものである請求項11記載の超音波診断装置制御方法。
【請求項14】
前記サブプリセット条件は、前記マザープリセット条件に含まれる画像データ収集条件を被検体の体型、年齢、疾患名、疾患状態、前記超音波送受信に用いる超音波プローブの種類のうち、少なくとも何れかを基準として更新したものである請求項13記載の超音波診断装置制御方法。
【請求項15】
前記サブプリセット条件の選択においては、更新された撮像モードに基づいて、前記各種サブプリセット条件の中から前記被検体の超音波検査に好適なサブプリセット条件を選択する請求項13記載の超音波診断装置制御方法。
【請求項16】
選択された前記マザープリセット条件に対応する前記各種サブプリセット条件を表示することをさらに具備し、
前記サブプリセット条件の選択においては、前記表示ユニットを介した操作に応答して、前記被検体の超音波検査に好適なサブプリセット条件を選択する請求項11記載の超音波診断装置制御方法。
【請求項17】
前記表示においては、撮影モード単位で分類された選択ボタンとして前記各種サブプリセット条件を表示する請求項16記載の超音波診断装置制御方法。
【請求項18】
前記表示においては、被検体の体型、疾患名、疾患状態、被検体名あるいは操作者名のうちの少なくとも何れかを基準として分類された選択ボタンとして前記各種サブプリセット条件を表示する請求項16記載の超音波診断装置制御方法。
【請求項19】
前記サブプリセット条件によって更新した前記画像データ収集条件を、前記表示ユニットを介して選択された他のサブプリセット条件を用いて更に更新することを具備する請求項16記載の超音波診断装置制御方法。
【請求項20】
前記サブプリセット条件を用いて更新した前記画像データ収集条件を調整するための条件又は値を入力し、
前記調整ユニットから入力される前記条件又は値に基づいて、前記サブプリセット条件を用いて更新した前記画像データ収集条件を調整し、
調整後の前記画像データ収集条件を用いた超音波送受信の受信信号に基づいて画像データを生成すること、
をさらに具備する請求項11記載の超音波診断装置制御方法。
【請求項21】
被検体を撮像することでデータを収集し画像データを生成する医用画像診断装置において、
少なくとも画像データ収集条件について予め設定された複数のマザープリセット条件と、前記各マザープリセット条件に含まれる画像データ収集条件の全てあるいはその一部を更新することにより予め設定された各種サブプリセット条件と、を保管するプリセット条件保管ユニットと、
選択された前記マザープリセット条件に対応する前記各種サブプリセット条件を前記プリセット条件保管ユニットから読み出し、当該読み出された各種サブプリセット条件の中から、前記被検体の超音波検査に好適なサブプリセット条件を選択するサブプリセット条件選択ユニットと、
前記画像データの生成に関与する各ユニットに対し、選択された前記マザープリセット条件に基づいた画像データ収集条件を初期設定し、更に、選択された前記サブプリセット条件を用いて前記画像データ収集条件を更新する収集条件制御ユニットと、
更新後の前記画像データ収集条件を用いた撮像に基づいて画像データを生成する画像データ生成ユニットと、
を備えた医用画像診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−63264(P2013−63264A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−191624(P2012−191624)
【出願日】平成24年8月31日(2012.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】