説明

超音波診断装置および超音波画像生成方法

【課題】高画質の画像を得ながらも省電力化を図ることができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】マルチプレクサ5が一対の入力端子aおよびbを所定のサンプリング周期で交互に出力端子cに接続することにより、入力端子aおよびbに接続されている2チャンネル分の受信信号が1つの受信信号処理部6で順次処理されてそれぞれ受信データが生成され、データ格納部7に格納される。整相加算部8により、これらの時間差のある受信データに対してビームフォーミングが行われ、音線信号が生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波診断装置および超音波画像生成方法に係り、特に、超音波プローブの振動子アレイから超音波を送受信することにより生成された超音波画像に基づいて診断を行う超音波診断装置の省電力化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
近年、ベッドサイドや救急医療現場等に搬送して使用することができるポータブル型の超音波診断装置が開発されているが、このような超音波診断装置では、その電源にバッテリが用いられており、装置の消費電力が連続使用時間に大きな影響を及ぼすこととなる。また、消費電力が大きいと、装置内の発熱量も大きくなるので、放熱対策のために装置サイズの大型化を余儀なくされ、ポータブル型という利便性が損なわれてしまう。
【0004】
特に、超音波プローブと装置本体とを無線接続するワイヤレスプローブ等では、振動子からの超音波の送信および超音波エコーの受信に関わる送受信回路を小さなプローブ内に配置する必要があるため、これらの回路の大幅な省電力化が要求される。
送受信回路の実装個数を削減すれば、それだけ省電力化を図ることができるが、送受信回路の数に伴って同時開口数が減少すると、高画質の画像を得ることができなくなってしまう。
【0005】
特許文献1には、微小角の偏向を行う場合でも広い開口での受信を可能にする目的で、隣接する複数の振動子の信号を不均等に加算して受信信号数を減少させた後にデジタル変換してビームフォーマで整相遅延加算を行うようにした超音波診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−139912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の装置では、受信信号数を減少させても、その減少した受信信号数に対応する数の受信信号処理部が必要となり、プローブ内の省電力化を図ることは困難である。
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、高画質の画像を得ながらも省電力化を図ることができる超音波診断装置および超音波画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る超音波診断装置は、超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した超音波プローブの振動子アレイから出力された受信信号を処理し、処理された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置であって、超音波プローブの振動子アレイから出力された複数チャンネルの受信信号のうちNチャンネルの受信信号毎に1チャンネルの受信信号を順次選択するマルチプレクサと、それぞれマルチプレクサで選択されたNチャンネル分の受信信号を順次処理して受信データを生成する複数の受信信号処理部と、複数の受信信号処理部で順次生成された時間差のある受信データに対してビームフォーミングを行うビームフォーマとを備えたものである。
【0009】
好ましくは、ビームフォーマは、各チャンネルの受信データを時間的に補間して時間差を解消した上でビームフォーミングを行う。この場合、ビームフォーマは、各受信信号処理部で順次生成されたNチャンネル分の受信データのうち基本チャンネルの受信データ以外の受信データを時間的に補間する、あるいは、各受信信号処理部で順次生成されたNチャンネル分の受信データをすべて時間的に補間することができる。
また、マルチプレクサで選択されたNチャンネル分の受信信号のうち基本チャンネルの受信信号以外の受信信号を遅延させて各受信信号の時間差を解消する遅延回路をさらに備えてもよい。
【0010】
この発明に係る超音波画像生成方法は、超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した超音波プローブの振動子アレイから出力された受信信号を処理し、処理された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波画像生成方法であって、超音波プローブの振動子アレイから出力された複数チャンネルの受信信号のうちNチャンネルの受信信号毎に1チャンネルの受信信号を順次選択し、選択されたNチャンネル分の受信信号を順次処理して受信データを生成し、順次生成された時間差のある受信データに対してビームフォーミングを行う方法である。
【0011】
各チャンネルの受信データを時間的に補間して時間差を解消した上でビームフォーミングを行うことが好ましい。この場合、各受信信号処理部で順次生成されたNチャンネル分の受信データのうち基本チャンネルの受信データ以外の受信データを時間的に補間する、あるいは、各受信信号処理部で順次生成されたNチャンネル分の受信データをすべて時間的に補間することができる。
また、Nチャンネル分の受信信号のうち基本チャンネルの受信信号以外の受信信号を遅延させて各受信信号の時間差を解消してもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、超音波プローブの振動子アレイから出力された複数チャンネルの受信信号のうちNチャンネルの受信信号毎に1チャンネルの受信信号をマルチプレクサで順次選択し、選択されたNチャンネル分の受信信号を複数の受信信号処理部で順次処理して受信データを生成し、順次生成された時間差のある受信データに対してビームフォーマがビームフォーミングを行うので、高画質の画像を得ながらも省電力化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1における信号処理の様子を示すタイミングチャートである。
【図3】実施の形態2における信号処理の様子を示すタイミングチャートである。
【図4】実施の形態3に係る超音波診断装置の超音波プローブの構成を示すブロック図である。
【図5】実施の形態3における信号処理の様子を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示す。超音波診断装置は、超音波プローブ1と、この超音波プローブ1と無線通信により接続された診断装置本体2とを備えている。
【0015】
超音波プローブ1は、1次元又は2次元の振動子アレイの複数チャンネルを構成する複数の超音波トランスデューサ3を有し、これらトランスデューサ3に受信信号接続部4およびマルチプレクサ5を介して複数の受信信号処理部6が接続されている。これら複数の受信信号処理部6にデータ格納部7が接続され、さらにデータ格納部7に整相加算部8および信号処理部9を順次介して無線通信部10が接続されている。また、複数のトランスデューサ4に送信駆動部11を介して送信制御部12が接続され、複数の受信信号処理部6に受信制御部13が接続され、無線通信部10に通信制御部14が接続されている。そして、送信制御部12、受信制御部13および通信制御部14にプローブ制御部15が接続されている。
【0016】
複数のトランスデューサ3は、それぞれ送信駆動部11から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各トランスデューサ3は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
そのような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0017】
送信駆動部11は、例えば、複数のパルサを含んでおり、送信制御部12によって選択された送信遅延パターンに基づいて、複数のトランスデューサ3から送信される超音波が被検体内の組織のエリアをカバーする幅広の超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数のトランスデューサ3に供給する。
【0018】
受信信号接続部4は、それぞれ対応するトランスデューサ3とマルチプレクサ5の入力端子との間を接続/遮断する複数のスイッチからなり、プローブ制御部15からの指令に基づいて、超音波の送信時はオフされ、受信時はオンされて各トランスデューサ3をマルチプレクサ5の対応する入力端子に接続する。
マルチプレクサ5は、一対の入力端子aおよびbに対して1つの出力端子cを有する2:1マルチプレクサであり、プローブ制御部15からの指令に基づき、予め設定された所定のサンプリング周期Tsで入力端子aおよびbを交互に出力端子cに接続する。
すなわち、超音波の受信時にオン状態にされた受信信号接続部4の各スイッチを介して、複数チャンネルの受信信号のうち、互いに隣接する2つのトランスデューサ3からの2チャンネルの受信信号が所定のサンプリング周期Tsで交互に各受信信号処理部6に接続される。
【0019】
受信信号処理部6は、受信制御部13の制御の下で、受信信号接続部4およびマルチプレクサ5を介して接続されたトランスデューサ3から出力される受信信号に対して直交検波処理又は直交サンプリング処理を施すことにより複素ベースバンド信号を生成し、複素ベースバンド信号をサンプリングすることにより、組織のエリアの情報を含む受信データを生成する。受信信号処理部6は、複素ベースバンド信号をサンプリングして得られるデータに高能率符号化のためのデータ圧縮処理を施すことにより受信データを生成してもよい。
データ格納部7は、メモリ等によって構成され、複数の受信信号処理部6で生成された少なくとも1フレーム分の受信データを格納する。
【0020】
整相加算部8は、この発明におけるビームフォーマを構成するもので、プローブ制御部15において設定された受信方向に応じて、予め記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つの受信遅延パターンを選択し、選択された受信遅延パターンに基づいて、受信データによって表される複数の複素ベースバンド信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、複数の受信信号処理部6で生成された時間差のある受信データに対してビームフォーミングを行う。このビームフォーミングにより、超音波エコーの焦点が絞り込まれたベースバンド信号(音線信号)が生成される。
信号処理部9は、整相加算部8により生成された音線信号に対し、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)することにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。
【0021】
無線通信部10は、信号処理部9で生成されたBモード画像信号に基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、伝送信号をアンテナに供給してアンテナから電波を送信することにより、Bモード画像信号を送信する。変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)等が用いられる。
無線通信部10は、診断装置本体2との間で無線通信を行うことにより、Bモード画像信号を診断装置本体2に送信すると共に、診断装置本体2から各種の制御信号を受信して、受信された制御信号を通信制御部14に出力する。通信制御部14は、プローブ制御部15によって設定された送信電波強度でBモード画像信号の送信が行われるように無線通信部10を制御すると共に、無線通信部10が受信した各種の制御信号をプローブ制御部15に出力する。
【0022】
プローブ制御部15は、診断装置本体2から送信される各種の制御信号に基づいて、超音波プローブ1の各部の制御を行う。
超音波プローブ1には、図示しないバッテリが内蔵され、このバッテリから超音波プローブ1内の各回路に電源供給が行われる。
なお、超音波プローブ1は、リニアスキャン方式、コンベックススキャン方式、セクタスキャン方式等の体外式プローブでもよいし、ラジアルスキャン方式等の超音波内視鏡用プローブでもよい。
【0023】
一方、診断装置本体2は、無線通信部21を有し、この無線通信部21に画像処理部22が接続され、画像処理部22に表示制御部23と画像格納部24がそれぞれ接続され、表示制御部23に表示部25が接続されている。また、無線通信部21に通信制御部26が接続され、表示制御部23および通信制御部26に本体制御部27が接続されている。さらに、本体制御部27には、オペレータが入力操作を行うための操作部28と、動作プログラム等を格納する格納部29がそれぞれ接続されている。
【0024】
無線通信部21は、超音波プローブ1との間で無線通信を行うことにより、各種の制御信号を超音波プローブ1に送信する。また、無線通信部21は、アンテナによって受信される信号を復調することにより、Bモード画像信号を出力する。
通信制御部26は、本体制御部27によって設定された送信電波強度で各種の制御信号の送信が行われるように無線通信部21を制御する。
画像処理部22は、通信制御部26から入力されるBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、Bモード画像信号を表示制御部23に出力する、あるいは画像格納部24に格納する。
【0025】
表示制御部23は、画像処理部22によって画像処理が施されたBモード画像信号に基づいて、表示部25に超音波診断画像を表示させる。表示部25は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部23の制御の下で、超音波診断画像を表示する。
【0026】
このような診断装置本体2において、画像処理部22、表示制御部23、通信制御部26および本体制御部27は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。上記の動作プログラムは、格納部29に格納される。格納部29における記録媒体としては、内蔵のハードディスクの他に、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROMまたはDVD−ROM等を用いることができる。
【0027】
次に、実施の形態1の動作について説明する。
超音波診断が開始されると、まず、プローブ制御部15により受信信号接続部4の各スイッチがオフ状態にされ、この状態で超音波プローブ1の送信駆動部11から供給される駆動信号に従って振動子アレイを構成する複数のトランスデューサ3から超音波が送信される。
【0028】
複数のトランスデューサ3からの超音波の送信が終わると、直ちにプローブ制御部15により受信信号接続部4の各スイッチがオン状態にされ、各トランスデューサ3をマルチプレクサ5の対応する入力端子に接続する。このとき、マルチプレクサ5は、プローブ制御部15からの指令に基づき、予め設定された所定のサンプリング周期Tsで一対の入力端子aおよびbを交互に1つの出力端子cに接続する。これにより、マルチプレクサ5の入力端子aに接続されているチャンネルのトランスデューサ3からの受信信号が受信信号処理部6に供給されて受信データAが生成された後、マルチプレクサ5の入力端子bに接続されているチャンネルのトランスデューサ3からの受信信号が受信信号処理部6に供給されて受信データBが生成され、以降受信データAと受信データBが交互に生成されて、データ格納部7に順次格納される。
【0029】
例えば、図2に示されるように、マルチプレクサ5の入力端子aに接続されたチャンネルのトランスデューサ3からの受信信号が対応する受信信号処理部6で時刻t1にサンプリングされて1番目の受信データA1が生成された後、所定のサンプリング周期Tsだけ後の時刻t2にはマルチプレクサ5の入力端子bに接続されたチャンネルのトランスデューサ3からの受信信号が同一の受信信号処理部6でサンプリングされて1番目の受信データB1’が生成され、さらに所定のサンプリング周期Tsだけ後の時刻t3に再び入力端子aに接続されたチャンネルのトランスデューサ3からの受信信号が同一の受信信号処理部6でサンプリングされて2番目の受信データA2が生成される。
このように、1つの受信信号処理部6において、2チャンネルのトランスデューサ3からの受信信号が交互に処理される。
【0030】
ここで、マルチプレクサ5の入力端子bに接続されたチャンネルのトランスデューサ3からの受信信号による受信データは、入力端子aに接続されたチャンネルのトランスデューサ3からの受信信号による受信データに対して所定のサンプリング周期Tsだけ遅れたタイミングでサンプリングされたものであるので、便宜上「B1’」のように「’」を付けて表示されている。
このようにして、所定のサンプリング周期Tsの間隔で生成された受信データA1、B1’、A2、B2’、A3、B3’・・・がデータ格納部7に格納される。
【0031】
整相加算部8は、まず、マルチプレクサ5の入力端子aに接続されたチャンネルのトランスデューサ3からの受信信号による受信データA1、A2、A3・・・と、マルチプレクサ5の入力端子bに接続されたチャンネルのトランスデューサ3からの受信信号による受信データB1’、B2’、B3’・・・の時間調整を行うことにより、これら受信データA1、A2、A3・・・と受信データB1’、B2’、B3’・・・の時間差を解消する。
例えば、マルチプレクサ5の入力端子aおよびbにそれぞれ接続された2チャンネルのうち、入力端子aに接続されたチャンネルを基本チャンネルとすると、この基本チャンネルにおける受信データA1、A2、A3・・・は、2周期(2・Ts)に1回の割合でサンプリングされているため、2周期(2・Ts)分にわたるデータであるとして調整後の受信データAを形成する。
【0032】
一方、基本チャンネル以外のチャンネル、すなわちマルチプレクサ5の入力端子bに接続されたチャンネルにおける受信データBについては、例えば、受信データB1’は基本チャンネルの受信データA2よりも1サンプリング周期Tsだけ早くサンプリングされ、受信データB2’は基本チャンネルの受信データA2よりも1サンプリング周期Tsだけ遅くサンプリングされたものであるので、受信データB1’とB2’の時間的な2点補間値(B1’+B2’)/2を演算して、これを受信データA2と同一タイミングでサンプリングされた2周期(2・Ts)分にわたるデータであるとみなす。同様にして、受信データA3,A4,A5・・・と同一タイミングでサンプリングされたデータであるとみなすことができる2点補間値(B2’+B3’)/2、(B3’+B4’)/2、(B4’+B5’)/2・・・を演算して、これらを調整後の受信データBとする。
【0033】
その後、整相加算部8は、プローブ制御部15において設定された受信方向に対応する遅延を加えて受信データAと受信データBを加算する。図2では、例えば受信データBを2周期(2・Ts)分だけ遅延させて受信データAに加算した結果が示されている。
同様にして、複数の受信信号処理部6でそれぞれ2つのトランスデューサ3からの受信信号を交互に処理し、複数のトランスデューサ3からの受信信号をすべて処理することにより、整相加算部8でビームフォーミングがなされ、音線信号が生成される。
【0034】
さらに、整相加算部8で生成された音線信号に基づいて信号処理部9でBモード画像信号が生成され、無線通信部10から診断装置本体2へ無線伝送される。診断装置本体2の無線通信部21で受信されたBモード画像信号は、画像処理部22で階調処理等の画像処理が施された後、このBモード画像信号に基づいて表示制御部23により超音波診断画像が表示部25に表示される。
【0035】
この実施の形態1においては、2:1のマルチプレクサ5を用いて、2つのトランスデューサ3からの受信信号を1つの受信信号処理部6で処理するように構成されているので、複数のトランスデューサ3のチャンネル数に対して半数の受信信号処理部6を実装すればよく、大幅に省電力化を図りながらも高画質の画像を得ることが可能となる。
【0036】
なお、サンプリング周期Tsは適宜選択することができる。ただし、2つのトランスデューサ3からの受信信号を1つの受信信号処理部6で処理するため、整相加算により形成されるデータの周波数に対して2倍の周波数でマルチプレクサ5を動作させる必要がある。例えば、整相加算により形成されるデータを40MHzの周波数で得るためには、2倍のサンプリング周波数80MHzに対応して、サンプリング周期Tsを1.25nsとすればよい。
【0037】
なお、2:1のマルチプレクサ5の代わりにN:1(N≧3)のマルチプレクサを用いてNチャンネルの受信信号毎に1チャンネルの受信信号を順次選択し、Nチャンネル分の受信信号を1つの受信信号処理部で順次処理して受信データを生成することもできる。この場合、Nチャンネル分の受信信号のうち、基本チャンネルの受信信号以外の(N−1)チャンネル分の受信信号をそれぞれ時間的に補間して時間調整をすればよい。
【0038】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、各受信信号処理部6で生成される受信データAおよびBのうち、受信データBのみを2点補間して時間調整を行ったが、2チャンネル分の受信データAおよびBの双方をそれぞれ2点補間して時間調整を行うこともできる。
図3に示されるように、受信データA1、A2、A3・・・は、2周期(2・Ts)に1回の割合でサンプリングされているため、これら受信データA1、A2、A3・・・を順次2点補間することにより、サンプリング周期Ts毎の受信データAを形成すると共に、同様にして、2周期(2・Ts)に1回の割合でサンプリングされた受信データB1’、B2’、B3’・・・を順次2点補間することにより、サンプリング周期Ts毎の受信データBを形成する。
【0039】
そして、プローブ制御部15において設定された受信方向に対応する遅延を加えて受信データAと受信データBを加算すればよい。図3では、例えば受信データBを2周期(2・Ts)分だけ遅延させて受信データAに加算した結果が示されている。
このようにすれば、サンプリング周期Ts毎の受信データAおよびBを形成するため、受信信号処理部6の実装数を削減して省電力化を図りながらも、さらに高画質の画像を得ることが可能となる。
【0040】
この実施の形態2においても、2:1のマルチプレクサ5の代わりにN:1(N≧3)のマルチプレクサを用いてNチャンネルの受信信号毎に1チャンネルの受信信号を順次選択し、Nチャンネル分の受信信号を1つの受信信号処理部で順次処理して受信データを生成することができる。この場合、Nチャンネル分の受信信号をすべて時間的に補間することで時間調整がなされる。
【0041】
実施の形態3
図4に実施の形態3に係る超音波診断装置に用いられる超音波プローブ31の内部構成を示す。この超音波プローブ31は、図1に示した実施の形態1における超音波プローブ1において、マルチプレクサ5の一対の入力端子aおよびbのうち一方の入力端子aと受信信号接続部4の対応するスイッチとの間にそれぞれ遅延回路16を挿入したものであり、その他の構成部材は、実施の形態1における超音波プローブ1と同様である。
【0042】
遅延回路16は、サンプリング周期Tsと同一の長さの遅延時間Tdを有し、マルチプレクサ5の入力端子aに接続されたチャンネルのトランスデューサ3からの受信信号を、入力端子bに接続されたチャンネルのトランスデューサ3からの受信信号に対して遅延時間Tdだけ遅延させる。
この実施の形態3では、マルチプレクサ5の入力端子aおよびbにそれぞれ接続された2チャンネルのうち、入力端子bに接続されたチャンネルを基本チャンネルとし、基本チャンネル以外のチャンネル、すなわちマルチプレクサ5の入力端子aに接続されたチャンネルにおける受信信号が、基本チャンネルにおける受信信号に対して遅延時間Tdだけ遅延される。
【0043】
マルチプレクサ5の動作により、基本チャンネルにおける受信データBは、基本チャンネル以外のチャンネルにおける受信データAよりもサンプリング周期Tsだけ遅れてサンプリングされるため、基本チャンネル以外のチャンネルの受信信号を遅延回路16でサンプリング周期Tsと同一長さの遅延時間Tdだけ遅延させることで、双方のチャンネルに対して実質的に同一タイミングでサンプリングされたものと同じ受信データAおよびBが得られることとなる。
【0044】
そこで、図5に示されるように、整相加算部8は、受信データAおよびBをそれぞれ2周期(2・Ts)分にわたると共に互いに同一タイミングのデータとなるように時間調整した後、プローブ制御部15において設定された受信方向に対応する遅延を加えて受信データAと受信データBを加算する。図5では、例えば受信データBを2周期(2・Ts)分だけ遅延させて受信データAに加算した結果が示されている。
このようにすれば、上述した実施の形態1および2におけるような補間処理を施すことなく、受信信号処理部6の実装数を削減して省電力化を図りながら高画質の画像を得ることが可能となる。
【0045】
この実施の形態3においても、2:1のマルチプレクサ5の代わりにN:1(N≧3)のマルチプレクサを用いてNチャンネルの受信信号毎に1チャンネルの受信信号を順次選択し、Nチャンネル分の受信信号を1つの受信信号処理部で順次処理して受信データを生成することができる。この場合、Nチャンネル分の受信信号のうち、基本チャンネルの受信信号以外の(N−1)チャンネル分の受信信号をそれぞれのチャンネルに対応した遅延時間だけ遅延させることで、各受信信号の時間差を解消することができる。
【0046】
また、上述した実施の形態1〜3では、超音波プローブ1または31と診断装置本体2とが互いに無線通信により接続されていたが、これに限るものではなく、接続ケーブルを介して超音波プローブ1または31が診断装置本体2に接続されていてもよい。この場合には、超音波プローブ1または31の無線通信部10および通信制御部14、診断装置本体2の無線通信部21および通信制御部26等は不要となる。
【符号の説明】
【0047】
1 超音波プローブ、2 診断装置本体、3 トランスデューサ、4 受信信号接続部、5 マルチプレクサ、6 受信信号処理部、7 データ格納部、8 整相加算部、9 信号処理部、10 無線通信部、11 送信駆動部、12 送信制御部、13 受信制御部、14 通信制御部、15 プローブ制御部、16 遅延回路、21 無線通信部、22 画像処理部、23 表示制御部、24 画像格納部、25 表示部、26 通信制御部、27 本体制御部、28 操作部、29 格納部、a,b 入力端子、c 出力端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記超音波プローブの振動子アレイから出力された受信信号を処理し、処理された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置であって、
前記超音波プローブの振動子アレイから出力された複数チャンネルの受信信号のうちNチャンネルの受信信号毎に1チャンネルの受信信号を順次選択するマルチプレクサと、
それぞれ前記マルチプレクサで選択されたNチャンネル分の受信信号を順次処理して受信データを生成する複数の受信信号処理部と、
前記複数の受信信号処理部で順次生成された時間差のある受信データに対してビームフォーミングを行うビームフォーマと
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記ビームフォーマは、各チャンネルの受信データを時間的に補間して時間差を解消した上でビームフォーミングを行う請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記ビームフォーマは、各受信信号処理部で順次生成されたNチャンネル分の受信データのうち基本チャンネルの受信データ以外の受信データを時間的に補間する請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記ビームフォーマは、各受信信号処理部で順次生成されたNチャンネル分の受信データをすべて時間的に補間する請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記マルチプレクサで選択されたNチャンネル分の受信信号のうち基本チャンネルの受信信号以外の受信信号を遅延させて各受信信号の時間差を解消する遅延回路をさらに備えた請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームが送信されると共に被検体による超音波エコーを受信した前記超音波プローブの振動子アレイから出力された受信信号を処理し、処理された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波画像生成方法であって、
前記超音波プローブの振動子アレイから出力された複数チャンネルの受信信号のうちNチャンネルの受信信号毎に1チャンネルの受信信号を順次選択し、
選択されたNチャンネル分の受信信号を順次処理して受信データを生成し、
順次生成された時間差のある受信データに対してビームフォーミングを行う
ことを特徴とする超音波画像生成方法。
【請求項7】
各チャンネルの受信データを時間的に補間して時間差を解消した上でビームフォーミングを行う請求項6に記載の超音波画像生成方法。
【請求項8】
各受信信号処理部で順次生成されたNチャンネル分の受信データのうち基本チャンネルの受信データ以外の受信データを時間的に補間する請求項7に記載の超音波画像生成方法。
【請求項9】
各受信信号処理部で順次生成されたNチャンネル分の受信データをすべて時間的に補間する請求項7に記載の超音波画像生成方法。
【請求項10】
Nチャンネル分の受信信号のうち基本チャンネルの受信信号以外の受信信号を遅延させて各受信信号の時間差を解消する請求項6に記載の超音波画像生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−157567(P2012−157567A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19630(P2011−19630)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】