説明

超音波診断装置の作動方法及び超音波診断装置

【課題】経験や熟練度にかかわらず、弾性画像に基づいて客観的あるいは確定的な診断を行えるようにする。
【解決手段】超音波探触子100によって被検体10の断層部位を計測し、変位計測部109にて断層部位における組織の変位を求め、該変位に基づいて歪み及び弾性率演算部111にて断層部位における組織の弾性情報を求め、弾性情報に基づいて弾性データ処理部112及びカラースキャンコンバータ113にて断層部位における弾性画像を生成して画像表示器107に表示するとともに、圧迫状態評価部115にて、超音波探触子の長軸方向に配置された複数の圧力センサーの出力に基づいて、弾性画像206の位置に対応させた圧迫状態画像データ10Aを生成して表示装置に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断における診断部位の生体組織の硬さ又は軟らかさを表す超音波診断装置の作動方法及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波探触子により被検体内部に超音波を送信し、被検体内部から生体組織の構造に応じた超音波の反射エコー信号を受信し、例えばBモード像等の断層像を構成して診断用に表示する。
【0003】
最近は、用手法又は機械的な方法により被検体に圧迫力を加えて超音波画像データを計測し、計測時間が異なる2つの超音波画像データに基づいて圧迫により生じた生体各部の変位を求め、生体各部の変位データに基づいて生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像を生成することが提案されている。これによれば、超音波探触子の振動子素子部の背後に圧力センサーを設け、被検体を圧迫することにより超音波探触子に加えられる圧力を求め、ヤング率を求めて弾性画像を表示させる。また、或る圧力の閾値を超えた際に、探触子に備え付けられている発光ダイオードを発光させる。このような計測法については、特許文献JP2003−225239Aに記載されている。
【0004】
しかし、この特許文献では、超音波探触子に加えられる圧力を求めて、ヤング率を算出しているのみであり、圧迫状態情報を画面上に表示することは言及していない。
【0005】
一方、生体組織の硬さは非線形性を有し、生体組織を圧迫した時の圧迫条件により組織の硬さが変化することが報告されている(例えば、Krouskop TA, et al. Elastic
Moduli of Breast and Prostate Tissue Under Compression. Ultrasonic Imaging. 1998;20:260-274.)。ここで、圧迫条件とは、生体組織に加えている圧力の時間変化、圧迫量(圧縮ゼロの状態からの生体組織の圧縮量)の変化、圧迫速度などである。
【0006】
すなわち、圧迫条件に依存して生体組織の硬さが変化することから、計測される弾性画像も圧迫条件によって異なる。このことを、図1(A)〜(C)を参照して説明する。図1(A)は、圧迫が適切な場合の画像例を示しており、硬い組織の領域が黒円で表示され、それ以外の軟らかい組織の領域は白色で表示される。図1(B)は、圧迫が過大な場合の画像例を示しており、硬い組織の領域である黒円内にも歪みが生じ、周囲の軟らかい組織の領域との境界が不明瞭となり、画像のコントラストも低下する。図1(C)は、圧迫が不足の場合の画像例を示しており、生体組織に十分な応力が作用しないことから、均一に軟らかい組織の領域にも歪みゼロの点(硬いと認識される部分)が散在し、不均質な画像となる。
【0007】
しかし、従来は、圧迫条件を検出すること、及び、圧迫条件の情報を弾性画像に対応付けて表示することについて配慮されていないことから、検者は注目する部位の弾性画像から認識する弾性情報が、圧迫条件によって異なるか否かを客観的に判断することが困難である。そのため、検者は、主観に基づいた圧迫条件(適切圧迫、不足圧迫、過大圧迫)の下に計測された弾性画像により診断を行わざるを得ないので、経験や熟練度に応じて診断結果に相違が生じてしまう不都合がある。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、上述の点に鑑みなされたものであり、経験や熟練度にかかわらず、弾性画像に基づいて客観的あるいは確定的な診断を行えるようにすることを課題とする。
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の第1の態様の超音波診断装置の作動方法は、超音波探触子によって被検体に圧力を加えて前記被検体の断層部位の超音波断層データを計測し、計測時間が異なる2つの超音波断層データに基づいて前記断層部位における組織の変位を求め、該変位に基づいて前記断層部位における組織の弾性情報を求め、該弾性情報に基づいて前記断層部位における弾性画像を生成して表示装置に表示し、前記被検体に圧力が加えられていない状態を基準として前記被検体に加えられる絶対的な圧迫状態と、該圧迫状態の時間的変化と、該圧迫状態の傾きの少なくとも1つの圧迫状態データを求め、該圧迫状態データに基づいて前記断層部位における組織に加わる圧迫状態情報を評価し、該圧迫状態情報を前記弾性画像とともに前記表示装置に表示することを特徴とする。この場合において、前記圧迫状態データは、前記被検体に加えられる絶対的な圧力値と、該圧力値の時間的変化と、圧力値の傾きの少なくとも1つの圧力データ、又は前記断層部位における組織の前記変位の平均データと、前記変位を時間的に積算した積算変位データの少なくとも1つの変位データとすることができる。
【0010】
ここで、弾性に相関する物理量は、組織の歪みと弾性率のいずれか一つとし、これに合わせて、弾性画像は、歪み画像と弾性率画像のいずれか一つとすることができる。また、被検体に加える圧力は、被検体に当接して用いられる超音波探触子に設けられた圧迫部材により加えることができる。この場合の圧力は、圧迫部材に設けられた圧力センサと参照変形体のいずれか一方の圧力検出手段により計測することができる。あるいは、異なる時間に計測された2つの超音波断層データに基づいて断層部位における組織の変位を求め、該変位データに基づいて被検体に加えられた圧力を求めることができる。
【0011】
このように、本発明の第1の態様の超音波診断装置の作動方法によれば、検者に弾性画像と圧迫状態を同時に提供することができる。つまり、被検体に加えられる絶対的な圧力値に相関する圧迫状態情報が弾性画像とともに表示されるから、検者は画像表示された圧迫状態情報に基づいて圧迫条件(適切圧迫、不足圧迫、過大圧迫)を判断し、適切圧迫の下に計測された弾性画像により診断を行うことができる。その結果、経験や熟練度にかかわらず、客観的あるいは確定的な診断を行うことが可能になる。
【0012】
また、弾性画像は、被検体に加える圧力を周期的に変化させて計測することが望ましい。したがって、表示装置に表示される圧迫状態情報は、被検体に加える圧力値の時間的な変化に応じて変化する。
【0013】
また、被検体に加える圧力は、被検体に当接して用いられる超音波探触子を介して加えることができる。この場合、圧迫状態情報に基づいて被検体に加えられる圧力値が設定範囲に入っているか否かを判断し、その圧力値が設定範囲を外れたときに、その旨の警報を音声と画像表示の少なくとも一つにより出力することが好ましい。これにより、検者は用手法により超音波探触子を介して加える圧迫量を調整して、適正な範囲に合わせることが可能になる。この画像表示としては、下向き矢印又は上向き矢印などの図形を用いたり、適切な圧迫の場合を青色、圧迫過大の場合を赤色、圧迫不足の場合を黄色などの色相を用いたり、音声としては「圧迫を弱くしてください」や「圧迫を強くしてください」を用いたりすることができる。
【0014】
上記の場合において、圧迫状態情報は、超音波探触子を構成する複数の振動子の配列方向である長軸方向に対応付けて求められた圧力値の分布データとし、この圧力値の分布データを弾性画像の超音波探触子の長軸方向に対応する座標方向に合わせて棒グラフ又は線図により表示装置に表示することができる。この場合、圧力値の分布データの基準圧力値に対する偏差を求め、その偏差を弾性画像の超音波探触子の長軸方向に対応する座標方向に合わせて線図により表示装置に表示することができる。これによれば、検者は用手法により超音波探触子を介して加える圧迫量に偏りがあることを認識できるから、圧迫量を均一に調整することが可能になる。
【0015】
また、圧力値の分布により圧迫状態情報を表示することに代えて、圧力値の分布の平均値、分散値、中央値、最大値、最小値の少なくとも一つの圧迫状態情報とし、その圧迫状態情報を弾性画像に並べて表示装置に表示することができる。この場合、圧迫状態情報は、数値、該数値に対応する長さを有する棒グラフ、前記数値に対応する輝度又は色相を付した図形、前記数値に対応する長さを有しかつ前記数値に対応する輝度又は色相を付した棒グラフ、前記数値を針の回転角で表す模擬メータ、前記数値の直径を有する円図形、前記数値を前記断層部位の圧縮変形の状態を模擬表示した図形の少なくとも一つで表示することができる。また、棒グラフ、模擬メータ、円図形により表示する場合は、圧迫状態情報の数値目盛を合わせて表示することにより、圧迫量を客観的に認識しやすくなる。診察部位によっては、圧迫状態の変化が大きい場合があるから、数値目盛として対数目盛を採用することができる。また、輝度又は色相を付した図形で表示する場合も、輝度又は色相に対応付けて圧迫状態情報の数値目盛を表示することができる。
【0016】
また、本発明の第2の態様の超音波診断装置の作動方法は、被検体に繰り返し圧力を加えながら前記被検体の断層部位の超音波断層データを計測し、該超音波断層データに基づいて前記断層部位における組織の弾性情報を求め、該弾性情報に基づいて前記断層部位における弾性画像を生成して表示装置に表示し、前記断層部位に加わる圧力値の時間変化を求め、該圧力変化線図を前記圧迫状態情報として前記弾性画像とともに前記表示装置に表示するようにすることができる。
【0017】
これによれば、圧迫状態情報である圧力変化線図を見て、被検体に繰り返し加える圧力の最大値及び最小値、さらには繰返し周期の速さが適切か否を判断することができる。この場合の圧力変化線図は、超音波探触子を構成する複数の振動子の配列方向である長軸方向に対応付けて求めた圧力値分布の平均値、分散値、中央値、最大値、最小値の少なくとも一つを用いることができる。特に、断層部位に加わる圧力の時間変化の手本となる参考線図を、圧力変化線図に重ねて表示装置に表示することが好ましい。これによれば、検者は用手法により超音波探触子を介して加える圧迫操作を、適正な状態に調整することが可能になる。
【0018】
また、圧力変化線図と弾性画像とをシネメモリに保存しておき、シネメモリから読み出した圧力変化線図と弾性画像とを表示する際に、圧力変化線図の時間軸にマークを表示し、該マークを時間軸に沿って移動させると、そのマークの時間に対応する弾性画像を表示させるようにすることができる。
【0019】
また、圧力変化線図と弾性画像とをフリーズさせ、圧力変化線図に圧力変化の1周期の始点と終点を設定し、その設定された1周期分の圧力変化線図と弾性画像とを記録保存することにより、適切な圧迫条件における弾性画像を繰り返し観察して、確定的な診断を行うことが可能になる。この場合、圧力変化の1周期の始点と終点を自動で設定することができる。
【0020】
また、本発明の超音波診断装置は、被検体に当接され、且つ前記被検体に圧力を加える超音波探触子によって前記被検体の断層部位の超音波断層データを計測し、計測時間が異なる2つの超音波断層データに基づいて前記断層部位における組織の変位を求め、該変位に基づいて前記断層部位における組織の弾性情報を求めて弾性画像を生成する信号処理手段と、前記被検体に圧力が加えられていない状態を基準として前記被検体に加えられた圧力により前記断層部位における組織に加わる絶対的な圧力値を検出する圧力検出手段と、該圧力検出手段により検出された前記圧力値と、該圧力値の時間的変化と、圧力値の傾きの少なくとも1つの圧力データ、又は前記断層部位における組織の変位の平均データと、前記変位を時間的に積算した積算変位データの少なくとも1つの変位データを求め、該圧力データ又は変位データに基づいて前記被検体の圧迫状態情報を評価する圧迫状態評価手段と、該圧迫状態評価手段により評価された圧迫状態情報を前記弾性画像に対応付けて表示する表示手段とを備えて構成することができる。
【0021】
また、前記圧力変化線図と前記弾性画像とを保存するシネメモリと、該シネメモリを制御する制御手段とを備え、該制御手段は、前記シネメモリから読み出した前記圧力変化線図と前記弾性画像とを前記表示手段に表示する際に、前記圧力変化線図の時間軸にマークを表示し、該マークが時間軸に沿って移動されたとき、該マークの時間に対応する弾性画像を前記シネメモリから読み出して表示するようにすることができる。これにより、シネメモリに記憶されている圧力変化線図の中から適切な圧迫操作によって取得されたものを客観的に選別し、それを用いて適切な診断を行なえる。
【0022】
この場合において、制御手段は、圧力変化線図と弾性画像とをフリーズさせ、圧力変化線図に圧力変化の1周期の始点と終点を設定し、該設定された1周期分の圧力変化線図と弾性画像とを記録媒体に保存するようにすることができる。これにより、圧力データの大きさの時間変化を反映した情報を確認しながら、シネメモリに記憶されている弾性画像の中から適切な圧迫操作の弾性画像を任意に選択し、診断に最適な圧迫状態の範囲を人為的に選択して保存できる。
【0023】
また、前記制御手段は、圧力変化の1周期の始点と終点を自動で設定することができる。これによれば、適切に圧迫された期間の最初と最後、すなわち適切な圧迫操作の1周期分を自動で検出選択し、この1周期分の弾性画像群を保存して、後で確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】弾性画像が圧迫の程度に依存することを説明する図である。
【図2】本発明による超音波診断装置の実施例を示すブロック図である。
【図3】圧迫板を装着した超音波探触子の実施例を示す図である。
【図4】圧力検出手段を備えた超音波探触子の実施例を示す図である。
【図5】本発明の特徴部に係る圧迫状態評価部の実施例を示すブロック図である。
【図6】圧迫板に圧力センサーが多数配設された圧力センサー群を示す図である。
【図7】棒グラフとして画像化された圧迫状態情報を示す図である。
【図8】圧迫している強さに応じて現時刻の圧迫状態情報を示す棒グラフの長さが変化することを示す図である
【図9】棒グラフ画像の圧迫状態情報と弾性画像とが同時に表示された表示画像の例を示す図である。
【図10】超音波探触子の長軸方向の圧力分布を弾性画像に対応付けて表示した例を示す図である。
【図11】圧迫状態情報を被検体の圧縮変形の状態を模擬表示した図形により表示した例を示す図である。
【図12】圧迫状態情報の圧力データの様々な表示法の例を示す図である。
【図13】圧迫状態情報の表示画像の変形例を示す図である。
【図14】圧迫状態情報の圧力データを棒グラフを用いて表示した場合の変形例を示す図である。
【図15】過去から現在までの圧迫状態の時間変化を圧力変化線図により表示した例を示す図である。
【図16】図15の圧迫状態の圧力変化線図に圧迫操作の手本を表示する例を示す図である。
【図17】不適切な圧迫を検出して検者にフィードバックする例を示す図である。
【図18】圧力範囲が適切な圧迫範囲にある場合の他の表示例を示す図である。
【図19】圧力変化線図上で任意の時間を指定することにより、その時間に対応する弾性画像が連動して表示される例を示す図でる。
【図20】圧力変化線図上で任意の2点の時間を指定することにより、その時間範囲に対応する弾性画像群を抽出する例を示す図である。
【図21】適切な圧迫状態の1周期分を自動で検出し、その1周期分の弾性画像群を保存範囲とする場合の一例を示す図である。
【図22】適切な圧迫状態の期間を圧力範囲で設定し、その範囲の弾性画像群を保存範囲とする場合の一例を示す図である。
【図23】適切な圧迫状態の一周期を自動検出する場合の検出方法の一例を示す図である。
【図24】圧力範囲が適切、不足、過大の場合の他の表示例を示す図である。
【図25】超音波探触子の長軸方向の圧力分布の基準圧力に対する偏差を弾性画像の対応する座標方向に合わせて線図により表示する例を示す図である。
【図26】超音波探触子の長軸方向の絶対的圧力分布と圧力の大きさの変化分の圧力変化分布を、弾性画像に対応させて棒グラフにより表示する例を示す図である。
【図27】画像上に設定した応力関心ラインにおける超音波探触子の長軸方向の応力分布と圧力変化分布を、弾性画像に対応させて棒グラフにより表示する例を示す図である。
【図28】関心領域における歪みの積算値と弾性率との関係を表示するとともに、歪みの積算値を棒グラフにより表示する例を示す図である。
【図29(a)】cMUT振動子の断面図である。
【図29(b)】cMUT振動子を複数配置してなる振動子の平面図である。
【図29(c)】cMUT振動子を超音波送受面の両サイドに配置してなる超音波振動子の構成図である。
【図30】cMUT振動子の圧力計測手段を適用した体内用超音波探触子の一例を示す図である。
【図31(a)】cMUT振動子の圧力計測手段を適用した体内用超音波探触子の他の一例を示す図である。
【図31(b)】図31(a)の体内用超音波探触子の動作を説明する図である。
【図32】参照変形体の固定具及び固定方法を説明する図である。
【図33】参照変形体の固定方法の他の例を示す図である。
【図34】凹型形状の参照変形体の一例を示す図である。
【図35】参照変形体とその固定具を一体型で形成した一例の外観図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。図2は、本発明の超音波診断装置の実施例を示すブロック図である。この超音波診断装置は、超音波を利用して被検体10の診断部位について断層像を得ると共に、被検体10の生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像を表示するものである。この超音波診断装置は、図に示すように、探触子100と、超音波送受信制御回路101と、送信回路102と、受信回路103と、整相加算回路104と、信号処理部105と、白黒スキャンコンバータ106と、画像表示器107と、装置制御インターフェイス部116を有し、さらにRF信号フレームデータ選択部108と、変位計測部109と、圧力計測部110と、歪み及び弾性率演算部111と、弾性データ処理部112と、カラースキャンコンバータ113と、切替加算器114と、圧迫状態評価部115と、シネメモリ部117を備えている。
【0026】
探触子100は、機械式または電子的にビーム走査を行って被検体10に超音波を送信及び受信するものである。探触子100の超音波送受信面には超音波の発生源であると共に反射エコーを受信する振動子の素子群が整列して配置されている。一般に、超音波を用いた弾性の画像化における被検体の圧迫動作は、図3(A)、(B)に示すような形状の超音波探触子で行なう。特に、被検体10の診断部位に効果的に応力分布を与える目的で、同図(B)に示すように、超音波探触子100の超音波送受信面1001に面を合わせて圧迫板21を装着した構成のものが用いられる。そして、超音波探触子100の超音波送受信面1001と圧迫板21の両方にて構成される圧迫面を被検体10の体表に接触させ、圧迫面を用手的に上下動させて被検体10を圧迫するという方法をとっている。
【0027】
超音波送受信制御回路101は、超音波を送信及び受信するタイミングを制御するものである。送信回路102は、探触子100を駆動して超音波を発生させるための送波パルスを生成する。このとき、送信する超音波の収束点を内蔵された送波遅延回路によってある深さに設定するようになっている。受信回路103は、探触子100で受信した反射エコーの信号を所定のゲインで増幅するものである。整相加算回路104は、受信回路103で増幅された受波信号を入力して位相制御し、一点又は複数の収束点からの受信信号を整相して加算するものである。信号処理部105は、整相加算回路104からの受波信号を入力してゲイン補正、ログ圧縮、検波、輪郭強調、フィルタ処理等の信号処理を行うものである。そして、これらの探触子100と送信回路102と受信回路103と整相加算回路104と信号処理部105との全体で超音波送受信手段を構成しており、探触子100で超音波ビームを被検体10の体内の断層部位に一定方向に走査させることにより、一枚の断層像を得るようになっている。なお、信号処理部105は断層像を生成する信号処理手段を構成するものである。
【0028】
白黒スキャンコンバータ106は、信号処理部105から出力される超音波断層像データである反射エコー信号をディジタル信号に変換するA/D変換器と、このA/D変換器でディジタル化された断層像データを時系列に記憶する複数枚のフレームメモリと、これらの動作を制御するコントローラなどから成る。つまり、信号処理部105から出力される反射エコー信号を取り込んで、断層部位のRF信号フレームデータを超音波周期で取得する。そして、RF信号フレームデータをテレビ同期で読み出すための断層走査手段及びシステムの制御を行うための手段を備えている。
【0029】
画像表示器107は、白黒スキャンコンバータ106によって得られた時系列の断層像データを表示する手段である。つまり、白黒スキャンコンバータ106から切替加算器114を介して画像データを取り込み、取り込んだ画像データをアナログ信号に変換するD/A変換器と、このD/A変換器からのアナログビデオ信号を入力して画像として表示するカラーテレビモニタとからなる。
【0030】
RF信号フレームデータ選択部108及び変位計測部109は、整相加算回路104の出力側から分岐して設けられている。圧力計測部110は、RF信号フレームデータ選択部108及び変位計測部109と並列に設けられている。歪み及び弾性率演算部111は、圧力計測部110と変位計測部109の後段に設けられている。歪み及び弾性率演算部111の出力は弾性データ処理部112に入力され、弾性画像データが生成されるようになっている。つまり、歪み及び弾性率演算部111と弾性データ処理部112によって、弾性画像を生成する信号処理手段が構成されている。圧迫状態評価部115は、圧力計測部110の出力側から分岐して設けられている。弾性データ処理部112は、歪み及び弾性率演算部111の後段に設けられている。カラースキャンコンバータ113は、弾性データ処理部112の後段に設けられている。圧迫状態評価部115とカラースキャンコンバータ113と白黒スキャンコンバータ106の出力側には切替加算器114が設けられている。
【0031】
RF信号フレームデータ選択部108は、整相加算回路104から超音波診断装置のフレームレートで経時的に次々と出力されるRF信号フレームデータをRF信号フレームデータ選択部108に備えられたフレームメモリ内に順次確保する。RF信号フレームデータ選択部108に現在確保されているRF信号フレームデータをRF信号フレームデータNとし、時間的に過去のRF信号フレームデータN−1、N−2、N−3・・・N−Mとする。RF信号フレームデータ選択部108は、超音波診断装置の制御命令に従って時間的に過去のRF信号フレームデータN−1、N−2、N−3・・・N−Mの中から1つのRF信号フレームデータを選択し、これをRF信号フレームデータXとして、RF信号フレームデータNと共に変位計測部109に出力する。すなわち、RF信号フレームデータ選択部108は、1組のRF信号フレームデータ(N、X)を出力する。整相加算回路104からの出力信号をRF信号フレームデータと記述したが、これは例えば、RF信号を複合復調したI,Q信号の形式になった信号であっても良い。
【0032】
変位計測部109は、RF信号フレームデータ選択部108において選択された1組のRF信号フレームデータから1次元もしくは2次元相関処理により、断層像上の各計測点の変位もしくは移動ベクトル(変位の方向と大きさ)を計測し、変位フレームデータを生成するようになっている。この移動ベクトルの検出法としては、例えば、JP5−317313Aに記載のブロック・マッチング法とグラジェント法とがある。ブロックマッチング法は、画像を例えばN×N画素からなるブロックに分け、現フレーム中の着目しているブロックに最も近似しているブロックを前フレームから探索し、これを参照して予測符号化を行うものである。
【0033】
圧力計測部110は、図4(A)に示すような圧迫板21などに装着された圧力センサー31〜36や図4(B)に示すような圧迫板21などに装着された参照変形体37などを用いて、被検体10の体表面などに加えられた圧力を計測する。その計測結果は、圧力データとして歪み及び弾性率演算部111と、圧迫状態評価部115に送出される。この圧力データの取得方法に関しては、本願の出願人が先に出願した特願2003−178685号(JP2005−13283A)及び特願2003−300325号(JP2005−66041)に詳細が記載されている。
【0034】
歪み及び弾性率演算部111は、変位計測部109及び圧力計測部110によってそれぞれ求められた変位フレームデータ(移動量)及び圧力データに基づいて、断層像上の各計測点の歪み及び弾性率を演算し、歪みもしくは弾性率の数値データ(弾性フレームデータ)を生成し、それを弾性データ処理部112に弾性フレームデータとして出力する。歪みの演算は、例えば、変位を空間微分することによって計算でき、圧力データは必要としない。また、弾性率の内の一つである、例えばヤング率Ymの演算は、以下の式に示したように、各演算点における応力(圧力)を各演算点における歪み量で除することにより求められる。
【0035】
Ymi,j =圧力(応力)i,j/(歪み量i,j )
(i,j =1,2,3,・・・)
ここで、i,jの指標は、フレームデータの座標を表す。
【0036】
弾性データ処理部112は、歪み及び弾性率演算部111から入力される弾性フレームデータに座標平面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理や、フレーム間における時間軸方向のスムージング処理などの様々な画像処理を施し、処理後の弾性フレームデータをカラースキャンコンバータ113に送出する。この弾性データ処理部112に関しては、本願の出願人が先に出願した特願2003−006932号(JP2004−261198A)に詳細が記載されている。
【0037】
カラースキャンコンバータ113は、色相情報変換手段を構成し、弾性データ処理部112から出力される弾性フレームデータと、超音波診断装置制御部からの命令もしくは弾性データ処理部112からの弾性フレームデータの中の階調化選択範囲とする上限値及び下限値を入力する。そして、弾性フレームデータから弾性画像データとして赤、緑、青などの色相情報を付与する。例えば、弾性データ処理部112から出力される弾性フレームデータにおいて、歪みが大きく計測された領域は、弾性画像データ内で赤色コードに変換され、逆に歪みが小さく計測された領域は、弾性画像データ内で青色コードに変換されるようになっている。
【0038】
また、カラースキャンコンバータ113は白黒スキャンコンバータで構成されていても良く、歪みが大きく計測された領域は、弾性画像データ内で輝度を明るく表示させ、逆に歪みが小さく計測された領域は、弾性画像データ内で輝度を暗く表示させるようにしても良い。
【0039】
切替加算器114は、白黒スキャンコンバータ106からの白黒の断層像データとカラースキャンコンバータ113からのカラーの弾性画像データとを入力し、両画像を加算又は切り替えて画像表示器107に出力するものである。この場合、白黒の断層像データだけ又はカラーの弾性画像データだけを出力したり、あるいは両画像データを加算合成して出力したりするように切り替えられるようになっている。この場合、例えば、特許文献JP2000−60853Aに示されているように、2画面表示において白黒断層像とカラーもしくは白黒スキャンコンバータ106による白黒弾性画像を同時に表示しても良い。また、例えば、本願の出願人に係る特許文献JP2004−135929Aに記載されているように、白黒断層像にカラーの弾性画像を半透明的に重畳して表示するようになっていても良い。そして、この切替加算器114からはシネメモリ部117と画像表示器107へ表示画像データが出力されるようになっている。
【0040】
この実施例に係る圧迫状態評価部115は、圧力計測部110から出力される圧力データを利用して、現時刻における関心部位の圧迫状態を評価するとともに、その圧迫状態を反映した圧迫状態情報を生成するようになっている。生成した圧迫状態情報はカラースキャンコンバータ113において画像化され、切替加算器114を介して画像表示器107に出力される。これにより、画像表示器107に、現時刻における関心部位の圧迫状態情報が画像化されて表示され、検者にフィードバック可能になっている。
【0041】
すなわち、この実施例の弾性画像の表示方法は、超音波探触子100により被検体10に圧力を加えながら、被検体の断層部位の超音波断層データであるRF信号フレームデータを計測し、そのRF信号フレームデータに基づいて断層部位における組織の弾性に相関する物理量である歪み又は弾性率を求め、その歪み又は弾性率に基づいて断層部位における弾性画像を生成して画像表示器107に表示する。これと同時に、被検体10に加えられる圧力に基づいて、圧迫状態評価部115において断層部位の圧迫状態に関する圧迫状態情報を求め、その圧迫状態情報を弾性画像とともに画像表示器107に表示するようになっている。
【0042】
以下に、圧迫状態評価部115において生成される圧迫状態情報、及び圧迫状態画像と弾性画像の表示方法の実施例について説明する。
【0043】
(実施例1)
図5は、この実施例に係る圧迫状態評価部115が行なう一連の処理の流れを示すブロック図である。圧迫状態評価部115は、メモリ回路1151と圧迫状態評価回路1152と画像構築回路1153とを備えて構成されている。メモリ回路1151は、圧力計測部110から出力される計測結果の圧力データを確保し、圧迫状態評価回路1152に出力する。圧迫状態評価回路1152は、メモリ回路1151から出力される圧力データを入力し、圧迫状態を表示する際に、最適な画像となるように、その圧力データに対してオーバーフロー処理や平均値算出などの統計処理などを施し、その結果である数値データを圧迫状態評価データとして次段の画像構築回路1153に出力する。画像構築回路1153は、圧迫状態評価回路1152から出力される圧迫状態評価データを入力し、その圧迫状態評価データを反映した画像を圧迫状態画像データとして構築し、切替加算器114に出力する。
【0044】
次に、この圧迫状態評価部115の動作例を説明する。複数のセンサーを用いて計測した圧力データを統計的特徴として表示する場合について説明する。図6は、複数のセンサーを用いて圧力を計測する場合の探触子の変形例を示す図である。図4(A)では、円形状の圧迫板21の周縁に沿って圧力センサー31〜36が装着された場合を示したが、図6の探触子は、圧力計測部における圧力センサー群51〜5f,61〜6fが長方形状の超音波送受信面1001の長軸方向に沿った両側の圧迫板21上に複数個配置されている。これらの圧力センサー群51〜5f,61〜6fからの圧力データ群を用いて圧迫状態情報を作成する場合を説明する。
【0045】
圧力センサー群51〜5f,61〜6fから出力される時刻tの圧力データ群を、
Pi,j(t)
(i=1,2,3,・・・,N;j=1,2,3,・・・,M)
として示す。ここで、指標iは探触子の超音波送受信面の長軸方向の座標を、指標jは短軸方向の座標を示し、すべての圧力データ群を指標にて参照する。これら圧力データ群Pi,j(t)は、計測結果データ群
Ri,j(t)
(i=1,2,3,・・・,N;j=1,2,3,・・・,M)
としてメモリ回路1151に記憶される。
【0046】
圧迫状態評価回路1152は、例えば、計測結果データ群Ri,j(t)を母集団とした統計処理を行い、その統計的特徴量として、その平均値<Ri,j(t)>を次の式によって演算する。
【0047】
<Ri,j(t)>={Σ(計測結果データRi,j(t))}/(N×M)
この平均値<Ri,j(t)>が圧迫状態評価データとして設定される。
【0048】
画像構築回路1153は、例えば、図7に示すように、計測結果データ群の平均値<Ri,j(t)>の値をそれに応じた長さの棒グラフ201として画像表示する圧迫状態画像データを構築する。また、平均値の数値と単位とを付したゲージ202を画像表示する圧迫状態画像データを構築するようになっている。
【0049】
圧迫状態画像データは、現時刻における圧迫の状態により時々刻々と変化し、例えば、図8に模式的に示したように、対象組織204を圧迫している強さに応じて現時刻の圧迫状態画像データを示す棒グラフ203の長さが時々刻々と変化するようになっている。
【0050】
図9は、この実施例に係る切替加算器114の動作例を示す図である。上述のように、圧迫状態画像データが構築され、それが切替加算器114に出力された場合、圧迫状態評価部115から出力される圧迫状態画像205と、カラースキャンコンバータ113から出力された弾性画像206と、白黒スキャンコンバータ106から出力された断層像207とが組み合わされて、例えば、図9に示すような1つの表示画像データが構築され、この表示画像データが画像表示器107へ送られて検者が観察できるようになっている。
【0051】
上述の実施例では、圧力計測部110において、特に図4(A)に示すような圧力センサーを用いた例を説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、図4(B)に示すような参照変形体37を圧力センサーの代用品として用い、同様の動作を実現してもよい。つまり、超音波探触子10の超音波送受信面1001を覆うように、参照変形体37を設け、信号処理にて、診断部位を圧迫した際に体表に与えられた圧力を計測するようにする。超音波探触子10の超音波送受信面1001には超音波の発生源であると共に反射エコーを受信する振動子の素子群が整列して配置されている。画像表示器107に表示される圧力の分布が参照変形体37と被検体との境界線が表される。
【0052】
境界検出回路(図示しない。)は、RF信号フレームデータを用いて、被検体10の表皮と参照変形体37との境界を検出し、検出されたRF信号フレームデータにおける境界の座標を境界座標データとして圧力演算回路(図示しない。)に出力する。圧力演算回路は、境界検出回路によって検出された境界座標データを用いてRF信号フレームデータにおける参照変形体37からのRF信号を抽出し、被検体1の表皮と参照変形体37の境界に与えられた圧力を演算により求める。参照変形体37の弾性率は既知であるため、これをYm(例えばヤング率)とすると、
圧力(応力)pi=Ym×(歪み量δdi)
(i=1,2,3・・・n)………(1)
の関係があり、データ領域d1,d2,d3・・・dnの内部における圧力分布をそれぞれ圧力分布p1,p2,p3・・・pnとして求めることができる。これらの圧力分布pd1,pd2,pd3・・・pdnを解析することにより、被検体10の表皮と参照変形体37の境界における圧力をそれぞれ圧力p1,p2,3・・・pnとして、個々の振動子v1,v2,v3・・・vnの垂直下の圧力を求めることができる。
【0053】
参照変形体37としては、音響結合材料や音響レンズ素材などの超音波減衰が小さく、且つ、音速、音響インピーダンスが生体内のものに近いなど、生体との音響結合特性に優れ、同時に、形状復元性及び保形性にも優れた素材にて構成された材料を用いることが好ましい。通常、音響結合材料は、超音波画像診断において一般的に使用されている音響媒体を構成する材料である。この音響媒体は、生体面のように凹凸のある部分に超音波探触子10の超音波送受信面1001を接触させた場合に隙間を生じさせないようにするものである。すなわち、超音波送受信面1001と生体面との間に隙間が生じると、超音波探触子10から照射された超音波がその隙間の空気と超音波探触子10との境界で跳ね返されてしまい、表示画像に支障をきたす。そこで、超音波探触子10のヘッド部と生体との接触面に超音波を伝播する音響媒体を介在させることでこのような問題を解決している。
【0054】
参照変形体は、オイル系のゲル素材やアクリルアミドなどの水をベースとしたゲル素材、シリコンなどをベースとして生成されたものでもよい。粘性の低いアクリルアミドなど素材によって構成されていれば、圧迫操作に俊敏に応答するため圧力計測に適している。
【0055】
このような参照変形体を用いることにより、振動子直下の圧力を測定することができ、画像と対応した圧力を測定することができる。また、圧力センサーや信号処理系を用いることなく、圧力情報を取得することができる。
【0056】
図32〜図35に示すように、探触子に参照変形体を装着するための参照変形体固定具を用いる。参照変形体37と固定具でひとつの圧力計測ユニットを構築するようになっており、この圧力計測ユニットが探触子にワンタッチで着脱する。
【0057】
図32に固定具500の詳細を示す。参照変形体37は、固定具500の内枠に接着や溶着などの方法により固定される。また、固定具500の内枠に参照変形体37を嵌め込む形態でもよく、参照変形体37を取り付けたり外したりすることができる。固定具500は、探触子100の側部の溝に挟まるよう突起部(図示しない。)が設けられ、ワンタッチで嵌め込み可能となっている。また、従来の探触子に備えられている超音波走査方向を認識するための突起部を把握できるよう、固定具500には窪み部(図示しない。)が設けられている。固定具500には手で掴むための滑り止めグリップ(図示しない。)が設けられており、検者は滑り止めグリップを掴み被検体10を圧迫する。滑り止めグリップを握りやすくするため、滑り止めグリップは指に対応した形状になっている。
【0058】
図33では、例えば薄いベルト501で参照変形体37を固定具500に固定する例を示す。このように参照変形体37の両端を2つのベルト501で固定具500に回して固定している。このベルト501は粘着テープ等で取り外し可能となっている。また、固定具500に超音波が透過する袋(図示しない。)が備えられており、参照変形体37をその袋から出し入れできるようになっていてもよい。また、その袋には超音波が通る窓が備えられており、超音波の送受信信号が袋によって遮断されないようになっていてもよい。
【0059】
また、それ以外に参照変形体37を固定する方法として、例えば、固定具500の溝の壁に針を出し入れする機構を備えており、参照変形体37を溝に固定した後、参照変形体37を刺して固定するようになっていてもよい。
【0060】
上記圧力計測ユニットは、形状、硬さ、音響特性が様々に異なった参照変形体の中から、対象組織の計測に適したものを選択し、固定具500に組み合わせることができるようになっている。例えば、対象組織全体が比較的硬い場合や、関心病変部位が深部にある場合などは、硬い参照変形体を用いた方が、対象組織に効果的に圧力を加えることが可能となり、高画質な弾性画像が得られやすくなる。
【0061】
甲状腺評価に適用する場合などは、図34に示すように、頚部が凸型形状を有しているため、表皮からの均一な圧迫を行うことが困難となる。そこで、頚部の凸型形状を反映した凹型形状の参照変形体502を用いることにより、生体表皮への圧迫が均一に行われるような圧力計測ユニットを構成するようになっている。
【0062】
上記においては、参照変形体と参照変形体固定具を組み合わせて圧力計測ユニットを構成する例を示したが、本発明はこれに限らず、図35に示すように、参照変形体と参照変形体固定具が一体型(例えば全体がシリコン製)で構成されているようになっていてもよく、例えば、キャップ状に加工されており、探触子に被せる形式で容易に装着できるようになっている。
【0063】
また、上述の実施例では、図4(A)に示すように、圧力計測部110において、特に複数の圧力センサーを用いた例を説明したが、本発明はこれに限らず、圧力計測部110に備えられた圧迫板に1個の圧力センサーだけを装着し、この1個の圧力センサーから出力される圧力データの大きさに応じて、圧迫状態評価部115において圧迫状態画像データを構築するようにしてもよい。
【0064】
上述の実施例では、圧迫状態評価部115において、特に複数の圧力センサーから出力される圧力データ群を用いて、その統計処理として平均値を演算し、圧迫状態画像を提示する場合について説明したが、これに限らず、例えば、圧力データ群を母集団とした統計の分散値、中央値、最大値、最小値などを用いてもよく、圧力データ群の統計的特徴を示す圧迫状態情報を提示してもよい。また、ひとつの統計的特徴のみを提示するのみならず、複数の統計情報を同時に提示するようにしてもよい。
【0065】
(実施例2)
実施例1では、圧迫状態評価部115において、特に複数の圧力センサーから出力される圧力データ群を用いて、圧迫状態情報としてその統計的特徴を提示する場合について説明したが、これに限らず、各圧力センサーの各圧力データを用いて、それぞれ圧迫状態画像データを構築し、それぞれ独立して表示するようにしてもよい。すなわち、各圧力センサーが図6に示すような超音波送受信面の長軸方向に沿って複数個配置されているような場合、例えば、図10に示すようにそれぞれの圧力センサーの配置箇所と、弾性画像及び断層像の該当箇所とがそれぞれ一致するように対応付けて、それぞれの圧力データを独立した形で構築した圧迫状態画像データ10Aを表示してもよい。図10において、圧迫状態画像データ10Aの各棒グラフの高さは、図6の各圧力センサー群51〜5f,61〜6fに対応するものである。なお、図6の圧力センサー群51〜5f,61〜6fは、短軸方向に2個配置されているので、短軸方向の2個の圧力センサーの平均値と図10の圧迫状態画像データ10Aのグラフの高さとが対応するようになっている。従って、図10の圧迫状態画像データ10Aを視認することによって、検者は探触子の長軸方向に渡る圧迫の状態を正確に把握することができる。
【0066】
つまり、図10に示すように、超音波探触子を構成する複数の振動子の配列方向である長軸方向に対応付けて求められた圧力分布を、超音波探触子の長軸方向に対応する弾性画像の座標方向に合わせて棒グラフにより表示するようにする。 また、圧迫状態画像データ10Aの棒グラフに代えて、線図により表示することができる。
【0067】
(実施例3)
図11は、図9の表示画像における棒グラフの部分を、図8の上段に示す探触子によって圧迫される断層部位の圧縮変形の状態を模擬表示した図形208に置き換えた場合の一例を示す図である。このように、探触子が被対象組織を圧迫している状態が示されることによって、検者は直感的に圧迫状態を認識することができる。なお、図11では、探触子と被対象組織の模式図の下側に圧力データ値209を表示している。
【0068】
(実施例4)
実施例1では、圧迫状態評価部115において、圧迫状態情報を、特に、棒グラフで提示するように圧迫状態画像データを構築する場合について説明した。本発明はこれに限らず、圧力データの大きさを反映した情報が提示されるようになっていればどのような方法を用いてもよい。例えば、図12(A)のように、圧力データを圧力の次元で数値データとして直接表示してもよい。また、図12(B)のように圧力データを色相情報に変換して色相表示してもよい。さらには、図12(C)のように圧力データを輝度情報に変換して輝度表示してもよい。このように、それぞれの表示によって圧力データの大きさが判別可能になっていればよい。
【0069】
また、図13(A)に示すように、圧迫状態情報である圧力データを半円形状の目盛りを回転式の針で示すメータ式で表示することもできる。さらに、図13(B)に示すように、圧迫状態情報である圧力データを円の大きさで表示することもできる。このように、圧迫状態が瞬時に把握できる形態で表示する方法であれば、これ以外の表示方法でもよい。また、表示される圧力の単位は、[kPa]に限らず、[mbar]、[Torr]、[arm]、[kgf/cm2 ]、[psi]など、いずれの単位でもよい。これらの設定は、超音波診断装置側で切り替えられるようになっている。また、数値、単位の表示をしないように設定を切り替えられるようにしてもよい。
【0070】
なお、圧力データを色相又は輝度で表示する場合は、数値で表示する場合よりも視認性が向上するが、圧力データに対応した目盛りを設け、圧力データの大きさをその目盛り上に表示することによって、圧力の大きさをより分かりやすくできる。
【0071】
(実施例5)
図14は、圧迫状態情報を示す圧迫状態画像として棒グラフを用いた場合の変形例を示す図である。実施例1等の実施例では、ゲージの部分を線型に設定した例であるが、図14の場合は、ゲージ202の目盛りを対数表示にしている。なお、対数表示には図示以外の目盛りを用いてもよい。
【0072】
(実施例6)
図15は、圧迫状態情報である圧力の時間的な変化が分かるような表示法の一例を示す図である。上述の各実施例では、圧迫状態評価部115において、特に現時刻の圧迫状態の情報が提示されるように圧力変化線図210を構築する場合について説明した。しかし、これに限らず、例えば、図15に示すように、過去から現在までの圧迫状態の時間変化が観測できるように圧迫状態画像データを構築し、最終的に画像表示器107で検者が観察できるように表示してもよい。例えば、オシロスコープで電圧の時間変化を観測するように、時間的にグラフがスクロールして表示されるようにする。これは、特に線グラフで表示する方法に限らず、圧力データの大きさの時間変化を反映した情報が提示されるようになっていればどのような方法で表示してもよい。また、圧迫状態の時間変化を示す圧迫状態画像データ内に、例えば、図16に示すように、圧迫操作の手本となるような曲線(図では点線曲線)を表示し、検者がその曲線に従って圧迫できるようにガイドの役割を行なえるようにしてもよい。
【0073】
(実施例7)
図17は、圧迫状態が不適切であることをフィードバック(警告)する場合の一例を示す図である。上述の各実施例では、圧迫状態評価部115において、特に圧力センサーから出力される圧力データを用いて、圧迫状態情報をグラフで提示するように圧迫状態画像データを構築する場合について説明した。しかし、本発明はこれに限らず、弾性画像診断における圧迫操作において、圧力データに基づいて現在の圧迫状態が圧迫過大であったり、圧迫不足であったりというような、不適切な圧迫状態を検出する機能を圧迫状態評価部115に持たせことができる。この場合、例えば、図17(B)に示すように、圧迫が強すぎるようであれば圧迫を弱くするように、図17(C)に示すように、圧迫が不足していれば圧迫を強くするように、検者に注意を促すようなフィードバック情報として、下向き矢印131又は上向き矢印132を表示するようにすることができる。図17では、特に10〜20kPaの圧力範囲を適切な圧迫範囲とし、それ以上であれば圧迫過大、それ以下であれば圧迫不足としている。この適切な圧迫範囲は一例であり、これに限定されるものではない。また、この圧迫範囲は適宜設定及び変更できるようになっている。特に画像で検者にフィードバックする方法に限らず、例えば、同図に示すように、「圧迫を弱くしてください」や「圧迫を強くしてください」のような音声発音によって同様の目的を達成するようにしてもよい。なお、これは、過大で危険な状態だけではなく、高画質化に向けて適切な圧迫方法に導くことも目的とするものである。
【0074】
つまり、本実施例は、圧迫力が設定範囲に入っているか否かを判断し、圧迫力が設定範囲を外れたときに、その旨の警報を音声と画像表示の少なくとも一方により出力するようにしている。
【0075】
(実施例8)
図18は、圧力範囲が適切な圧迫範囲にある場合の表示の変形例を示す図である。図17では、約10〜20kPaの圧力範囲を適切な圧迫範囲とし、それ以上であれば圧迫過大、それ以下であれば圧迫不足として、下向き矢印131又は上向き矢印132を表示する場合について説明した。図18では、棒グラフの棒自体の色を、適切な圧迫の場合を青色(図18(A))、圧迫過大の場合を赤色(図18(B))、圧迫不足の場合を黄色(図18(C))などのように、色で表現するようにしている。また、色で表示する場合に、色を段階的に変化させるようにしてもよい。また、図8の上段に示すような探触子によって圧迫される断層部位の圧縮変形の状態を模擬表示した図形の色を、適切な圧迫の場合を青色、圧迫過大の場合を赤色、圧迫不足の場合を黄色などのように表示してもよい。これによって直感的に圧迫状態を認識することができる。
【0076】
以上説明したように、実施例1〜8によれば、圧迫状態評価部115により、現時刻における例えば関心部位の圧迫状態を評価し、その圧迫状態を反映した画像情報を生成して、画像表示器107に弾性画像に関連付けて表示することができる。その結果、検者に圧迫状態をフィードバックすることができ、任意の時刻において、検者は表示された弾性画像の圧迫状態を客観的に評価することができる。また、同時に、所望の圧迫状態を一意的に生成したり、再現したりすることができる。これにより、診断に適用すべく決定された一定の圧迫状態を実現することができ、その所定の圧迫条件下において取得された弾性画像を選択し、確定的に画像診断を行うことができる。また同時に、検者の主観に依存した圧迫条件下での画像診断により、検者間で異なる診断結果が下されるような事象は回避され、客観的、普遍的な診断が確立され、臨床上有用な超音波診断装置を提供することができる。
【0077】
(実施例9)
また、従来の方法によるシネメモリ部117は、表示画像データをメモリに確保し、装置制御インターフェイス部116による制御信号に従って、過去の表示画像データを呼び出して画像表示器107に表示したり、選択された表示画像データをMOなどの記録メディアへ転送記録したりする役割を担っている。これに対し、この実施例に係るシネメモリ部117は、その内部に備えられたメモリに時系列的に並んで確保された表示画像データ内の圧迫状態画像データ部の情報を利用して、弾性画像データを参照したり、抽出したりする機能を備えている。以下、この実施例に係るシネメモリ部117の詳細について説明する。
【0078】
図19は、この実施例に係るシネメモリ部の動作の一例を示す図である。まず、検者は、圧迫状態評価部115の中の画像構築回路1153の圧迫状態画像データを参照して、同時刻の表示画像データを画像表示器107に表示させる。例えば、図19に示すように、装置制御インターフェイス部116からの制御信号により、超音波診断装置をフリーズし、シネメモリ部117に確保されている表示画像データの中から画像表示器107の三角形状のボタン141によって指定される時刻の弾性画像データが画像表示器107に順次表示されるようになっている。このボタン141のスライド制御は、装置制御インターフェイス部116を介してマウスなどによって行なわれる。ボタン141によって所望の圧迫状態における時刻が指定されると、その時刻に対応した弾性画像データがシネメモリ部117から選択され、図19に示すように画像表示器107に順次表示されるようになる。
【0079】
(実施例10)
図20は、検者が圧迫状態を示すグラフに基づいて最適な圧迫状態を選択し、それを保存する場合の一例を示す図である。例えば、図20に示すように、装置制御インターフェイス部116からの制御信号によって、超音波診断装置をフリーズし、シネメモリ部117に確保されている、ある時刻における表示画像データを画像表示器107に選択的に表示する。この表示画像データ内に含まれる圧迫状態の時間的変化を示す圧迫状態画像データを表示し、図20に示すように、適切に圧迫された期間の最初の時刻t1のフレームと最後の時刻t2のフレームを検者が三角形状のボタン151,152をスライドさせて指定する。これによって、その時刻t1−t2間に存在する時系列的な表示画像データ群(フレーム群)がシネメモリ部117から抽出され、保存される。
【0080】
(実施例11)
図21は、適切な圧迫状態の1周期分を自動で検出し、それを保存範囲とする場合の一例を示す図である。図20では、シネメモリ部117において、特に検者が圧迫状態画像を参照して、指定した範囲の連続した表示画像データを抽出する場合について説明したが、ここでは、適切に圧迫された期間の最初と最後を自動的に検出(抽出)する。例えば、図21に示すように、適切な圧迫操作の1周期分を自動で検出し、この1周期分の表示画像データ群を保存する。
【0081】
図21では、シネメモリ部117において、圧迫状態画像データ部の情報を利用して、適切に圧迫された状態において取得された表示画像データを抽出する場合について説明したが、これに限らず、圧迫状態評価部115の圧迫状態評価回路1152から出力される圧迫状態評価データを利用して同様の動作を実現してもよい。
【0082】
また、図21では、シネメモリ部117において範囲を決定されて抽出された表示画像データ群は、装置制御インターフェイス部116からの制御信号に応じて画像表示器107に表示されるが、これに限らず、連続的に繰り返しループで再生表示したり、MOなどの記録メディアに転送記録したりしてもよい。
【0083】
(実施例12)
図22は、適切な圧迫状態の期間を圧力軸の大きさでその範囲を設定し、それを保存範囲とする場合の一例を示す図である。図21では、適切に圧迫された期間の最初と最後を自動的に検出(抽出)し、それを1周期分の表示画像データ群として保存する場合について説明したが、ここでは、圧力軸方向に適切な圧迫データP1及びP2を設定し、この範囲を通過して圧迫された期間pa〜pgを抽出するようにした。なお、この検出は自動で行なっても手動で行なってもよい。
【0084】
(実施例13)
図23は、適切な一周期を自動検出する場合の検出方法の一例を示す図である。まず、実際の圧迫状態の曲線(図では実線で示す)から、図に示すような各範囲(範囲1、範囲2・・・)を切り出すことができる。次に、図に示すように各サンプリング点において、実際の圧迫状態の曲線と見本の圧迫曲線(図では点線で示す)との差分を演算する。各範囲において各サンプリング点における差分の加算を取り、最も小さい加算和を計上した範囲を、最も最適な1周期分として抽出することができる。図23では範囲3が最も最適な範囲として選択される。特に、最も見本の曲線にマッチングした範囲を適切な1周期分として抽出するようになっていれば良く、これ以外の最小自乗法や、相関係数の演算を用いて実現してもよい。また、特に1周期分に限らず、半周期でも、複数周期でも適当な節目で自動で抽出するようになっていればよい。
【0085】
この実施例によれば、圧迫状態評価部115と切替加算器114とシネメモリ部117を用いて、所定の圧迫条件下において取得された弾性画像を客観的基準に基づいて抽出し、主観に依存しない確定的な画像診断を効率的に行うことができる。
【0086】
(実施例14)
上述の各実施例では、圧迫状態評価部115と切替加算器114とシネメモリ部117は、圧迫状態を示す様々な情報の内、特に圧力センサーから出力される絶対的な圧力値のデータを例に説明したが、これに限らず、例えば、圧力データの時間変化(圧迫前後フレーム間での圧力変化)、一連の圧迫過程における現時刻の圧力変化(圧力値の傾き)データを利用して、圧迫状態画像データを生成し、画像表示器107に表示するようにしてもよい。
【0087】
例えば、図25に示すように、基準圧力に対する圧力分布の偏差を求め、その偏差を超音波探触子の長軸方向に対応する弾性画像の座標方向に合わせて線図212により表示することができる。この場合は、超音波探触子の長軸方向における圧迫力の偏りを画像によって直ちに認識することができる。
【0088】
また、圧迫状態評価部115における計測結果データとして、例えば、超音波探触子100に磁気センサーを設けて、この磁気センサーから出力される位置座標データを利用して、圧迫状態画像データを生成し、それを画像表示器107に表示するようにしてもよい。さらに、位置座標データから派生する、圧迫速度データや変位(ベクトル)データなどを合わせて表示してもよい。
【0089】
さらに、圧迫状態評価部115で用いる計測結果データとして、変位計測部109からの変位情報を利用してもよい。すなわち、圧迫状態評価部115における計測結果データとして、変位計測部109から出力される変位フレームデータを利用して、圧迫状態画像データを生成するようにしてもよい。この時、画像表示器107に表示されるデータは、変位の平均データ、統計処理が施されたデータ、またはその変位データを基に演算された圧迫速度データ、変位データを時間的に積算した積算変位データなどでもよい。
【0090】
また、複数の圧迫状態情報の画像を同時に画像表示器に表示するようにしてもよい。この超音波診断装置は、圧迫状態を示す変位、圧迫速度などの複数の情報の内、圧迫状態画像データを構築する情報を装置制御インターフェイス部116を介して、検者が自由に選択設定することができるようになっている。ここで選択される情報は、単一の情報に限らず、複数の情報が同時に選択可能となっており、複数の情報が選択された場合には、その選択された複数の圧迫状態画像データが表示画像データとして構築され、画像表示器107に同時に表示される。
【0091】
また、上述の実施例では、圧迫状態画像の表示の採否の選択や、圧迫状態画像における表示範囲の設定も、装置制御インターフェイス部116を用いて検者が自由に制御できるようになっている。
【0092】
以上の各実施例で説明したとおり、本発明によれば、弾性画像診断において、圧迫状態情報を弾性画像に関連付けて検者に提供することにより、客観性の高い弾性画像診断を可能とする。
【0093】
次に、この各実施例に共通の超音波診断装置の動作例について説明する。まず、超音波送受信制御に従い、被検体の体表面に接触された探触子100に送信回路102により高電圧電気パルスを印加して超音波を打出し、診断部位からの反射エコー信号を探触子100で受信する。次に、この受波信号は、受信回路103へ入力され、前置増幅された後、整相加算回路104へ入力される。この整相加算回路104により位相が揃えられた受波信号は、次の信号処理部105で圧縮、検波などの信号処理を受けた後、白黒スキャンコンバータ106へ入力される。この白黒スキャンコンバータ106は、受波信号をA/D変換すると共に、それを時系列的に連続する複数の断層像データとして内部の複数枚のフレームメモリに記憶する。
【0094】
整相加算回路104からはRF信号フレームデータが連続的に出力されるので、RF信号フレームデータ選択部108には、そのRF信号フレームデータが順次取り込まれる。RF信号フレームデータ選択部108に記憶されたRF信号フレームデータの内、時系列的に連続する複数枚のRF信号フレームデータがRF信号フレームデータ選択部108によって選択され、変位計測部109に取り込まれる。そして、変位計測初109では、1次元又は2次元変位分布(ΔLi,j)が求められる。変位分布の算出は、前述の移動ベクトルの検出法として、例えばブロック・マッチング法によって行うが、特にこの方法によらなくても良く、一般的に用いられる2画像データの同一領域における自己相関を計算して変位を算出しても良い。
【0095】
一方、圧力計測部110では、圧力センサーによって体表面に加えられた圧力が計測され、その圧力データが圧力計測部110から歪み及び弾性率演算部111及び圧迫状態評価部115に送出される。
【0096】
変位計測部109及び圧力計測部110から出力された変位(ΔLi,j)及び圧力(ΔPi,j)のそれぞれの計測信号は、歪み及び弾性率演算部111に入力され、歪み量分布(εi,j)が求められる。歪み量分布(εi,j)は変位分布(ΔLi,j)を空間微分(ΔLi,j/ΔX)することによって計算され、また、特に弾性率の内、ヤング率Ymi,jは次式によって計算される。
Ymi,j=(ΔPi,j)/(ΔLi,j/ΔX)
このようにして求められた弾性率Ymi,jにより、各計測点の弾性率が求められ、弾性フレームデータが生成される。
【0097】
弾性フレームデータを入力した弾性データ処理部112は、座標平面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理、フレーム間における時間軸方向のスムージング処理などの様々な画像処理を施される。圧迫状態評価部115は、現時刻における対象組織の圧迫状態を評価し、その圧迫状態を情報とした圧迫状態画像データを構築し、その圧迫状態画像データを切替加算器114に送出する。切替加算器114では、白黒の断層像とカラーの弾性画像と同時に、圧迫状態画像を表示し、両者の対応関係が同時に観察できるようになっている。
【0098】
なお、上述の弾性画像の形成については、生体組織の歪みもしくはヤング率Ymを求めて弾性画像データを生成する例を説明したが、本発明はこれに限らず、例えばスティフネスパラメータβ、圧弾性係数Ep、増分弾性係数Eincなどの他のパラメータを用いて弾性率を演算しても良い(JP5−317313A)。
【0099】
また、図1に示した実施例では、被検体10の体表面に探触子100を接触させる場合について説明したが、本発明はこれに限らず、経直腸探触子、経食道探触子、術中用探触子、血管内探触子など、任意の超音波探触子にて同様に適用できる。
【0100】
このような構成により、本発明の超音波診断装置による弾性画像診断において、弾性画像に圧迫状態情報を関連付けて表示することにより、客観性の高い弾性画像診断を可能とする超音波診断装置を提供することができる。
【0101】
図8では、対象組織を圧迫している強さに応じて現時刻の圧迫状態画像データを示す棒グラフの長さが時々刻々と変化するように表示したり、探触子によって圧迫される被対象組織の状態を模式的に表示する場合を示した。しかし、図24に示すように、被対象組織に目と口を模式的に表示し、適切な圧迫状態の場合と、圧迫不足の場合と、圧迫過大の場合とで、その表情が変化するようにしてもよい。図では、圧迫不足の場合には口を開いて、圧迫が不足していることを示し、圧迫が過大な場合には、口をへの字にして目をつぶった表情にしてある。また、表情の変化と共に被対象組織の部分に図18に示したような適切な圧迫の場合を青色、圧迫過大の場合を赤色、圧迫不足の場合を黄色などのように、色も合わせて表現するようにしてもよい。
【0102】
(実施例15)
上記の各実施例では、現時刻における絶対的な圧迫の強さを示す圧力データを圧迫状態データとして顕在化する方法を説明したが、本発明はこれに限らず、圧力変化分の分布を表示できるようにもなっている。
【0103】
変位計測部109は、RF信号フレームデータ選択部108において選択された1組のRF信号フレームデータから断層像上の各計測点の変位を計測し、変位フレームデータを生成するようにしているが、生体に付与した圧力の大きさを変化させることによって上記変位は生成される。生体を圧縮したのであれば圧力変化は正方向、弛緩したのであれば圧力変化は負方向である。
【0104】
この実施例では、1フレーム間の圧力の大きさの変化分を圧力変化分布10Bとして表示する。この圧力変化分布10Bは、例えば図26に示すように、絶対的圧力分布10Aと同時にリアルタイム表示する。1フレーム間の圧力の大きさの変化は微量であるため、圧力変化分布10Bのグラフは絶対的圧力分布10Aより拡大して表示される。装置制御インターフェイス部116のキーを用いて、表示する圧力分布を絶対的圧力分布と圧力変化分布のいずれかに切替えることができるようになっていてもよい。
【0105】
圧力変化分布10Bを画像で表示することにより、現時刻において表示された弾性画像が適切な圧迫操作によって生成されたものかどうか、容易に確認することができる。
【0106】
(実施例16)
上述したように生体組織の硬さは非線形性を有し、圧迫条件により組織の硬さは変化する。図27に示すように、画像上に任意の応力関心ライン305を設け、そのライン305に沿った応力分布300や応力変化分布301を表示する。
この応力分布300、応力変化分布301に表示するための応力関心ライン305上の応力は、表面圧、物質特性、歪み、表面からの距離a等の情報による有限要素法によって求める。
【0107】
有限要素法とは数値計算手法の公知技術である。計算対象の構造に探触子による外力が加わって変形する場合に解析する際、被検体内部に値する対象の構造をメッシュで区切る。そして、小さな各要素内の連立一次方程式を作成する。本実施例の場合、ライン上の応力が未知数として設定され、表面圧、物質特性、歪み、表面からの距離a等の情報による方程式を立てる。そして、各要素の方程式を足し合わせ、連立一次方程式を作り、解である応力を求める。具体的な求め方に関しては、非特許文献である有限要素法入門:三好
俊郎 (著)等の出版物に記載されているため、ここでの説明は省略する。
【0108】
有限要素法によって求められた応力情報に基づいて、応力関心ライン305上の応力をそれぞれ求め、応力分布300を表示する。また、1フレーム間の応力の大きさの変化分を応力変化分布301として表示する。この応力変化分布301は、例えば図27に示すように、応力分布300と同時にリアルタイム表示する。
【0109】
また、画像上に任意の応力関心領域306を設け、その関心領域内の応力分布や応力変化を測定してもよい。上述した有限要素法により、応力関心領域内部の応力の大きさや圧迫前後での応力変化を計測し、例えば棒グラフ302で表示する。
【0110】
これらの表示方法により、関心病変領域に付与されている応力を直接的に観察することができ、異なる検者間においても、病変組織の歪み、弾性率を共通の大きさの応力条件下において計測することが可能となり、非線形な応答を示す生体組織の弾性率をより確定的、客観的に計測することができるようになる。
【0111】
上記説明においては、応力の大きさに基づいて計測条件を共通化することを示したが、本発明は、これに限らず、歪みデータの積算値を計測、表示するようになっていてもよい。歪みの積算値をリアルタイム表示する形態を図28に示す。病変領域に歪み関心領域を設定し、歪みの積算値を圧力ゼロの状態から積算して計測して、例えば棒グラフ304に表示する。歪みの積算値は、圧縮ゼロの状態からどれだけの量だけ圧縮されたかどうか分かる値である。これによれば、病変領域における歪みの積算値の大きさとその条件で計測された弾性率の間の関係を把握することができる。
【0112】
ここで、歪みの積算値が4パーセント前後において、弾性率が一定の値を保たれている線形領域と弾性率がばらついてしまう非線形領域とが分かれるとされている。この非線形領域は、被検体10を押し過ぎてしまうと、被検体自体10が歪まなくなる(硬くなる)現象により生じてしまうものである。非線形領域においては、弾性率に信用性が無いと考えられている。
【0113】
さらに、歪み関心領域で計測された歪み積算値と、同領域で計測された弾性率の間の関係をグラフ303で経時的に示す。非線形領域に入ると、弾性率が確定しなくなったことが容易に認識できる。このとき同図に示すように、歪み関心領域の歪み積算値が例えば4%を超えて非線形領域に入ったら、検者に画像や音声などでフィードバック(警告)されるようになっていてもよい。
【0114】
上述では、歪みの積算値を基準に非線形応答を識別する方法を示したが、歪み積算値に限らず、上記応力の大きさなどに基づく方法を用いてもよく、圧迫の状態を示す適切な情報を基準とすればよい。
【0115】
(実施例17)
MEMS技術を用いたcMUT振動子や、液晶のタッチバネルを応用したデバイスなどを圧力センサーとして利用する。図29(a)に示すように、cMUT振動子は、大概、真空ギャップ403を挟むシリコン部材404と、シリコン部材404を挟んでバイアス電圧を印加する電極405とから成っている。
【0116】
ここでcMUT振動子を表面に備えた超音波探触子を被検体10に接触させ、圧力を加えると、その圧力に応じて真空ギャップ403が圧迫される。この現象を用いて圧力を計測する。具体的には、真空ギャップ403の撓みと電圧、電圧と圧力の関係を予め記憶させておく。例えば、真空ギャップ403の撓みが10μmであれば、電圧が5V変化する。圧力が5V変化したのであれば、圧力は10kPaである。このような方法にて、cMUT振動子の表面圧力は、真空ギャップ403の撓みを介して測定することができる。
【0117】
図29(b)は、cMUT振動子400を配置した図である。各cMUT振動子400において圧力を計算することができる。またcMUT振動子400が配置されている領域での圧力も同時に測定することができる。
【0118】
図29(c)は、超音波振動子401の両サイドにcMUT振動子を配置させた形態である。図6の例と同様にして、圧力を計測することができる。なお、タッチパネルを超音波探触子100のヘッド周辺に固定してもよい。
【0119】
また、cMUT振動子のみを被検体接触面に配列させてもよい。超音波送受信と圧力計測を兼ねたMEMS技術によるcMUT振動子によれば、通常の超音波診断と同時に圧力を計測することができる。
【0120】
(実施例18)
cMUT振動子やタッチパネルは薄型デバイスとして構成できるので、通常のリニア探触子やコンベックス探触子のみならず、図30に示すように、前立腺等の体内に挿入する形式の超音波探触子402においても患者の負担が小さい方法で圧力分布を検出することができる。
【0121】
体内用超音波探触子402は、リニア状の振動子403と曲面状の振動子404が2箇所に配置されている。それぞれの振動子を挟んだ両側にcMUT振動子400を配列させる。リニア状の振動子403の周辺であれば直線状に配列され、曲面状の振動子404の周辺であれば曲面状に配列される。cMUT振動子400は超音波信号の走査方向と同方向に位置づけられる。このような形態でcMUT振動子400を配列することにより、適切に圧力を測定することができる。なお、cMUT振動子400の配列は、この形態に限らず、振動子を取り囲むように取り付けられていてもよい。そして、実施例17の手法と同様にして、圧力を測定する。つまり、体内用超音波探触子402においても、圧力の値に応じた棒グラフ201や圧力変化線図210の圧迫状態画像を表示することができる。
【0122】
なお、cMUT振動子400のみを圧迫面に配列させてもよく、上述したように通常の超音波診断と同時に圧力を計測することができる。
【0123】
(実施例19)
体内用超音波探触子では、柄の部分に「伸び」や「撓り」を検出するセンサーを装着して圧力センサーとして利用することができる。図31に示すように、タッチパネル技術、MEMS技術(cMUT振動子)、ひずみゲージなど、「伸び」や「撓り」を検出するセンサー410を探触子の柄の部分に装着する。装着箇所はヘッドから遠くてもよい。また歪みゲージは電気式のものでも光学式のものでもよい。
【0124】
前立腺を圧迫することにより、体内用超音波探触子402の柄の部分が撓る。この撓り具合を柄に設けた圧力センサーで計測するのである。具体的には、曲面状の振動子404の全方向がカバーするように圧力センサ410を配置させる。そして、この柄の領域の膨張(撓り)或いはcMUT振動子の歪みによるバイアス電圧の変位と、体内用超音波探触子の先端部の圧力との関係を予め記憶させておき、領域の膨張に対応させて圧力を計測する。図31(b)で示す形態では、圧迫方向と同方向の領域411が長軸方向に膨張する。この現象を上記の圧力センサーで測定し、圧力及び圧迫方向を算出し、画面上に圧力及び圧迫方向を表示させる。
【0125】
よって、アレイ式の上記センサーにより得られた圧力分布を解析することにより、圧力と圧迫方向を求めることができる。また、複数の歪みゲージを円弧状に配置しても実現することができる。
【0126】
上記センサーはユニットとして、容易に着脱することができるような構造を実現している。経直腸、経膣、経食道、内視鏡プローブなど体内挿入型の探触子に容易に適用可能であり、このしなりを検出する方法によれば体内にセンサーを挿入する必要がなく患者負担なく安全に計測することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波探触子によって被検体に圧力を加えて前記被検体の断層部位の超音波断層データを計測し、計測時間が異なる2つの超音波断層データに基づいて前記断層部位における組織の変位を求め、該変位に基づいて前記断層部位における組織の弾性情報を求め、該弾性情報に基づいて前記断層部位における弾性画像を生成して表示装置に表示し、前記被検体に圧力が加えられていない状態を基準として前記被検体に加えられる絶対的な圧迫状態と、該圧迫状態の時間的変化と、該圧迫状態の傾きの少なくとも1つの圧迫状態データを求め、該圧迫状態データに基づいて前記断層部位における組織に加わる圧迫状態情報を評価し、該圧迫状態情報を前記弾性画像とともに前記表示装置に表示することを特徴とする超音波診断装置の作動方法。
【請求項2】
前記圧迫状態データは、前記被検体に加えられる絶対的な圧力値と、該圧力値の時間的変化と、圧力値の傾きの少なくとも1つの圧力データ、又は前記断層部位における組織の前記変位の平均データと、前記変位を時間的に積算した積算変位データの少なくとも1つの変位データであることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項3】
前記圧迫状態情報が設定範囲内か否かを判断し、前記圧迫状態情報が前記設定範囲を外れたときに、その旨の警報を音声と画像表示の少なくとも一方により出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項4】
前記被検体に加えられる圧力は、前記被検体に当接して用いられる超音波探触子を介して加えられ、
前記圧迫状態情報は、前記超音波探触子を構成する複数の振動子の配列方向である長軸方向に対応付けて求められた前記圧迫状態データの分布データであり、該圧迫状態データの分布データを前記弾性画像の前記長軸方向に対応する座標方向に合わせて棒グラフ又は線図により前記表示装置に表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項5】
前記圧迫状態データの分布データの基準圧力値に対する偏差を求め、該偏差を前記弾性画像の前記長軸方向に対応する座標方向に合わせて線図により前記表示装置に表示することを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項6】
前記被検体に加えられる圧力は、前記被検体に当接して用いられる超音波探触子を介して加えられ、
前記圧迫状態情報は、前記超音波探触子を構成する複数の振動子の配列方向である長軸方向に対応付けて求められた前記圧迫状態データの分布の平均値、分散値、中央値、最大値、最小値の少なくとも一つであり、該圧迫状態情報を前記弾性画像に並べて前記表示装置に表示することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項7】
前記圧迫状態情報は、前記圧迫状態データの数値、該数値に対応する長さを有する棒グラフ、前記数値に対応する輝度又は色相を付した図形、前記数値に対応する長さを有しかつ前記数値に対応する輝度又は色相を付した棒グラフ、前記数値を針の回転角で表す模擬メータ、前記数値の直径を有する円図形、前記数値を前記断層部位の圧縮変形の状態を模擬表示した図形の少なくとも一つであることを特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項8】
前記圧迫状態情報は、繰り返し変化される前記被検体に加える圧力による前記断層部位に加わる前記圧迫状態データの時間変化を示す圧迫状態変化線図であり、該圧迫状態変化線図を前記弾性画像とともに前記表示装置に表示することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項9】
前記断層部位に加わる圧迫状態データの時間変化の手本となる参考線図を、前記圧迫状態変化線図に重ねて前記表示装置に表示することを特徴とする請求項8に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項10】
前記圧迫状態変化線図と前記弾性画像とをシネメモリに保存しておき、該シネメモリから読み出した前記圧迫状態変化線図と前記弾性画像とを前記表示装置に表示する際に、前記圧迫状態変化線図の時間軸にマークを表示し、該マークを時間軸に沿って移動させると、該マークの時間に対応する弾性画像を前記シネメモリから読み出して表示することを特徴とする請求項8に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項11】
前記圧迫状態の時間変化を示す圧迫状態変化線図と前記弾性画像とをフリーズさせ、前記圧迫状態変化線図に圧迫状態変化の1周期の始点と終点を設定し、該設定された1周期分の前記圧迫状態変化線図と前記弾性画像とを保存することを特徴とする請求項8に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項12】
前記圧力変化の1周期の始点と終点を自動で設定することを特徴とする請求項11に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項13】
被検体に当接され、且つ前記被検体に圧力を加える超音波探触子によって前記被検体の断層部位の超音波断層データを計測し、計測時間が異なる2つの超音波断層データに基づいて前記断層部位における組織の変位を求め、該変位に基づいて前記断層部位における組織の弾性情報を求めて弾性画像を生成する信号処理手段と、前記弾性画像を表示する表示手段とを備えてなる超音波診断装置において、
前記被検体に圧力が加えられていない状態を基準として前記被検体に加えられる絶対的な圧迫状態と、該圧迫状態の時間的変化と、該圧迫状態の傾きの少なくとも1つの圧迫状態データを求め、該圧迫状態データに基づいて前記断層部位における組織に加わる圧迫状態情報を評価し、該圧迫状態情報を前記弾性画像とともに前記表示手段に表示する圧迫状態評価手段を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項14】
さらに、前記被検体に圧力が加えられていない状態を基準として前記被検体に加えられた圧力により前記断層部位における組織に加わる絶対的な圧力値を検出する圧力検出手段を備え、
前記圧迫状態評価手段は、前記圧力検出手段により検出された前記圧力値と、該圧力値の時間的変化と、圧力値の傾きの少なくとも1つの圧力データ、又は前記信号処理手段により求められた前記断層部位における組織の前記変位の平均データと、前記変位を時間的に積算した積算変位データの少なくとも1つの変位データに基づいて、前記被検体の圧迫状態情報を評価することを特徴とする請求項13に記載の超音波診断装置。
【請求項15】
前記圧迫状態情報は、前記圧力値に対応した数値と圧力の単位との組み合わせであることを特徴とする請求項14に記載の超音波診断装置。
【請求項16】
前記圧力検出手段は、前記超音波探触子の被検体との接触面近傍に配置された少なくとも一個の圧力センサーを備え、
前記圧迫状態評価手段は、前記圧力センサーにより検出された圧力値に基づいて求めた前記圧力データに統計処理を施して前記圧迫状態情報を生成することを特徴とする請求項14に記載の超音波診断装置。
【請求項17】
前記圧力センサーは、超音波送受信の長軸方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項16に記載の超音波診断装置。
【請求項18】
前記圧力センサーは、体表に加えられた圧力を計測する参照変形体であることを特徴とする請求項16に記載の超音波診断装置。
【請求項19】
前記圧力センサーは、超音波送受信面の短軸方向に複数個の群として配置されていることを特徴とする請求項16に記載の超音波診断装置。
【請求項20】
前記圧迫状態情報は、前記超音波探触子を構成する複数の振動子の配列方向である長軸方向に対応付けて求められた前記圧迫状態データの分布の平均値、分散値、中央値、最大値、最小値の少なくとも一つであり、該圧迫状態情報を前記弾性画像に並べて前記表示手段に表示することを特徴とする請求項13に記載の超音波診断装置。
【請求項21】
前記圧迫状態情報は、数値、該数値に対応する長さを有する棒グラフ、前記数値に対応する輝度又は色相を付した図形、前記数値に対応する長さを有しかつ前記数値に対応する輝度又は色相を付した棒グラフ、前記数値を針の回転角で表す模擬メータ、前記数値の直径を有する円図形、前記数値を前記断層部位の圧縮変形の状態を模擬表示した図形の少なくとも一つであることを特徴とする請求項13に記載の超音波診断装置。
【請求項22】
前記圧迫状態情報は、前記圧力値の時間変化を示す圧力変化線図であることを特徴とする請求項13に記載の超音波診断装置。
【請求項23】
前記圧迫状態評価手段は、前記被検体に加わる圧力値の時間変化の手本となる参考線図を、前記圧力変化線図に重ねて前記表示手段に表示することを特徴とする請求項13に記載の超音波診断装置。
【請求項24】
或る任意の区間を設定し、該設定された前記圧力変化線図と前記弾性画像とを記憶媒体に保存することを特徴とする請求項22に記載の超音波診断装置。
【請求項25】
圧迫された区間を抽出することを特徴とする請求項22に記載の超音波診断装置。
【請求項26】
前記圧力変化線図と前記弾性画像とを保存するシネメモリと、該シネメモリを制御する制御手段とを備え、該制御手段は、前記シネメモリから読み出した前記圧力変化線図と前記弾性画像とを前記表示手段に表示する際に、前記圧力変化線図の時間軸にマークを表示し、該マークが時間軸に沿って移動されたとき、該マークの時間に対応する弾性画像を前記シネメモリから読み出して表示することを特徴とする請求項22に記載の超音波診断装置。
【請求項27】
前記マークは、時間軸方向にスライド制御されることを特徴とする請求項26に記載の超音波診断装置。
【請求項28】
前記制御手段は、前記圧力変化線図と前記弾性画像とをフリーズさせ、前記圧力変化線図に前記圧力変化の1周期の始点と終点を設定し、該設定された1周期分の前記圧力変化線図と前記弾性画像とを記録媒体に保存することを特徴とする請求項22に記載の超音波診断装置。
【請求項29】
前記保存された画像データは、設定された区間において再生されることを特徴とする請求項26又は27に記載の超音波診断装置。
【請求項30】
前記制御手段は、前記圧力変化の1周期の始点と終点を自動で設定することを特徴とする請求項29に記載の超音波診断装置。
【請求項31】
前記圧迫状態評価手段は、前記被検体に加えられる圧迫状態データが設定範囲に入っているか否かを判断し、前記圧迫状態データが前記設定範囲を外れたときに、その旨の警報を音声と図形と色相の少なくとも一つを出力することを特徴とする請求項13に記載の超音波診断装置。
【請求項32】
前記圧迫状態情報は、前記被検体に加えられる前記圧力の1フレーム間の変化分の圧力変化分布を含むことを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項33】
前記表示装置に表示された前記弾性画像上に応力関心ライン又は関心領域のいずれか一方を設定し、
前記圧迫状態情報は、前記被検体に加えられる圧力値の1フレーム間の変化分の前記応力関心ラインに沿った応力変化分布と、前記関心領域内の応力変化分布を含むことを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項34】
前記被検体に加えられる前記圧力は、前記被検体に当接して用いられる超音波探触子を介して加えられ、
前記圧力値は、前記超音波探触子に備えたcMUT振動子により計測することを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項35】
前記被検体に加えられる前記圧力は、前記被検体内に挿入して用いられる超音波探触子を介して加えられ、
前記圧力値は、前記超音波探触子に備えた圧力センサーにより計測することを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置の作動方法。
【請求項36】
前記圧迫状態情報は、前記被検体に加えられる前記圧力の1フレーム間の変化分の圧力値の変化分布を含むことを特徴とする請求項13に記載の超音波診断装置。
【請求項37】
前記表示装置に表示された前記弾性画像上に応力関心ライン又は関心領域のいずれか一方を設定する入力手段を備え、
前記圧迫状態評価手段は、前記圧迫状態情報として、前記被検体に加えられる圧力の1フレーム間の変化分の前記応力関心ラインに沿った応力変化分布と、前記関心領域内の応力変化分布を求めることを特徴とする請求項13に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29(a)】
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【図29(b)】
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【図29(c)】
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【図30】
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【図31(a)】
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【図31(b)】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2012−135679(P2012−135679A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97750(P2012−97750)
【出願日】平成24年4月23日(2012.4.23)
【分割の表示】特願2009−245911(P2009−245911)の分割
【原出願日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】