説明

超音波診断装置及びその制御方法

【課題】穿刺術において三次元画像を用いて治療部位及び穿刺針をモニタリングする場合において、穿刺針と治療部位との位置関係の視認を容易ならしめる超音波診断装置及びその制御方法を提供すること。
【解決手段】予め、穿刺針と治療部位との位置関係を良好に観察可能な角度を登録する。所定の動作をトリガとして、現在の観察角度から登録された観察角度に自動的に切り替え、これに関する三次元画像を生成し表示する。また、検出された穿刺針の位置に基づいて穿刺針位置画像(例えば、穿刺針を含む直交二断面)を生成し、これを三次元超音波画像と共に表示する。さらに、検出された穿刺針を含むクリッピング面によりクリッピング処理を実行し、穿刺針より手前に存在する部分を取り除いたボリュームデータによる三次元画像を生成し表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺治療において三次元画像を用いて治療部位をモニタリングする場合に、穿刺針位置の視認を容易ならしめる表示機能を有する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は超音波パルス反射法により、体表から生体内の軟組織の断層像を無侵襲に得る医療用画像機器である。この超音波診断装置は、他の医療用画像機器に比べ、小型で安価、X線などの被爆がなく安全性が高い、血流イメージングが可能等の特長を有し、心臓、腹部、泌尿器、および産婦人科などで広く利用されている。
【0003】
また、超音波診断装置は、画像診断のみばかりでなく、例えば肝細胞癌の局所治療法としてラジオ波焼灼療法(RFA)や肝細胞組織を検査する生検等においても用いられる。これらの治療、検査においては、穿刺針を用いて、腫瘍などの関心部位に正確に穿刺を行わなければならない。そのため、穿刺針が生体内のどの場所まで侵入しているかを明確に把握するために、リアルタイムで関心領域及び穿刺針をモニタリング可能な超音波診断装置が利用される。特に、近年では、コンピュータの高速化により、リアルタイム3次元超音波画像を用いる場合もある。係る場合において、穿刺治療中に3次元画像上に穿刺針位置を表示したり、穿刺針の方向をガイド表示する方法がいくつか提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−205776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の超音波診断装置を穿刺術に用いる場合、例えば次に様な問題が存在する。
【0005】
まず、穿刺針挿入時において、穿刺針と治療部位とを良好に視認できる観察角度から三次元画像を表示できるとは限らない。すなわち、通常の穿刺術においては、穿刺前に3次元超音波画像を回転させながら観察して部位を特定し、穿刺中にはある観察角度の三次元画像によりモニタリングしながら治療部位に向けて穿刺針を挿入していく。しかしながら、穿刺中のモニタリング前に画像を回転している場合などには、3次元超音波画像の組織像に穿刺針が隠れて,穿刺針の位置が見え難くなる状態が発生する場合がある。
【0006】
また、穿刺針の挿入方向が操作者の位置に対して向かって来る方向または遠ざかるような方向のように、モニタリングに用いる画像では穿刺針と穿刺対象部位の表示位置関係が適切に観察できない場合には,穿刺中に3次元超音波画像を回転させる必要があり、操作者の負担になっている。
【0007】
さらに、三次元画像中の穿刺針は線として表示されるため、そのままでは当該穿刺針の奥や手前にある組織等との位置関係を把握困難な場合がある。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、穿刺術において三次元画像を用いて治療部位及び穿刺針をモニタリングする場合において、穿刺針と治療部位との位置関係の視認を容易ならしめる超音波診断装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0010】
本発明の第1の視点は、被検体の三次元領域を超音波によって走査することで得られるエコー信号に基づいて、所定の観察角度に関する三次元画像を生成する画像生成手段と、前記三次元画像を表示する表示手段と、前記三次元画像の観察角度を登録する登録手段と、登録された前記観察角度に関する三次元画像が生成されるように、所定のトリガに応答して前記画像生成手段を制御する制御手段と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0011】
本発明の第2の視点は、被検体の三次元領域を超音波によって走査することでエコー信号を取得する超音波走査手段と、前記被検体に挿入される穿刺針の位置を検出する検出手段と、前記エコー信号に基づいて三次元画像を生成し、且つ検出された前記穿刺針の位置に基づいて当該穿刺針の位置を示すための穿刺針位置画像を生成する画像生成手段と、前記三次元画像と前記穿刺針位置画像とを合成して表示する表示手段と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0012】
本発明の第3の視点は、被検体の三次元領域を超音波によって走査することで得られるエコー信号に基づいて、所定の観察角度に関する三次元画像を生成する画像生成手段と、前記被検体に挿入される穿刺針の位置を検出する検出手段と、検出される前記穿刺針の位置及び前記エコー信号に基づいて、前記穿刺針を含むクリッピング面によってクリッピング処理された三次元画像を生成するように、前記画像生成手段を制御する制御手段と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0013】
本発明の第4の視点は、被検体の三次元領域を超音波によって走査することで得られるエコー信号に基づいて、画像生成手段に所定の観察角度に関する三次元画像を生成させる画像生成過程と、表示手段に前記三次元画像を表示させる表示過程と、登録手段に前記三次元画像の観察角度を登録させる登録過程と、制御手段に、登録された前記観察角度に関する三次元画像が生成されるように、所定のトリガに応答して前記画像生成手段を制御させる制御過程と、を具備することを特徴とする超音波診断装置制御方法である。
【0014】
本発明の第4の視点は、超音波走査手段に、被検体の三次元領域を超音波によって走査させエコー信号を取得させる超音波走査過程と、検出手段に前記被検体に挿入される穿刺針の位置を検出させる検出過程と、画像生成手段に、前記エコー信号に基づいて三次元画像を生成させ、且つ検出された前記穿刺針の位置に基づいて当該穿刺針の位置を示すための穿刺針位置画像を生成させる画像生成過程と、表示手段に、前記三次元画像と前記穿刺針位置画像とを合成して表示させる表示過程と、を具備することを特徴とする超音波診断装置制御方法である。
【0015】
本発明の第4の視点は、画像生成手段に、被検体の三次元領域を超音波によって走査することで得られるエコー信号に基づいて、所定の観察角度に関する三次元画像を生成させる画像生成過程と、検出手段に前記被検体に挿入される穿刺針の位置を検出させる検出過程と、制御手段に、検出される前記穿刺針の位置及び前記エコー信号に基づいて、前記穿刺針を含むクリッピング面によってクリッピング処理された三次元画像を生成するように前記画像生成手段を制御させる制御過程と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置制御方法である。
【発明の効果】
【0016】
以上本発明によれば、穿刺術において三次元画像を用いて治療部位及び穿刺針をモニタリングする場合において、穿刺針と治療部位との位置関係の視認を容易ならしめる超音波診断装置及びその制御方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0018】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10のブロック構成を示した図である。同図に示すように、本超音波診断装置10は、穿刺針アダプタ11、超音波プローブ12、操作パネル13、表示部14、送受信部21、二次元画像構成22、三次元画像構成部23、表示画像合成部25、システム制御部27、記憶部28、穿刺針位置検出部30、穿刺針位置画像(直交二断面)構成部32を具備している。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0019】
穿刺針アダプタ11は、超音波プローブ12に設けられ、穿刺針を装着することで当該針を所定の角度に固定するための補助具である。
【0020】
超音波プローブ12は、超音波送受信部21からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0021】
操作パネル13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種パラメータ条件の設定及び変更指示、関心領域(ROI)の設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ・ボタン、トラックボール、マウス、キーボード、TCS(Touch Command Screen)等を有している。
【0022】
表示部14は、表示画像合成部25からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。
【0023】
送受信部21は、図示しない超音波パルストリガ発生回路、送信遅延回路およびパルサ回路等を有している。超音波パルストリガ発生回路では、所定の送信周波数f0Hzで、超音波送信パルストリガ信号がチャンネル毎に発生される。また、送信遅延回路では、チャンネル毎に超音波送信ビームを集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、チャンネル毎の超音波送信パルストリガ信号に与えられる。パルサ回路は、この超音波送信パルストリガ信号に基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
【0024】
また、送受信部21は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、受信遅延加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたエコー信号をチャンネル毎にアナログ信号からデジタル信号に変換する。受信遅延加算器ではデジタル信号に変換されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間をチャンネル毎に与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0025】
二次元画像構成部22は、二次元メモリ22a、二次元画像生成部22bを有している。二次元メモリ22aは、送受信部21から受け取った走査線毎のエコー信号を記録する。二次元画像生成部22bは、送受信部21からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるBモード情報を構成する。また、二次元画像生成部22bは、送受信部21から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を構成する。この二次元画像構成部22によって構成されたBモード情報、血流情報は、表示画像合成部25に送られ所定の形態にて表示部14に表示される。
【0026】
三次元画像構成部23は、三次元メモリ23a、三次元画像生成部23bを有している。三次元メモリ23aは、二次元画像構成部22によって構成された複数の二次元画像を受け取り、これを空間的に(厚さ方向に沿って)配列し必要に応じて補間処理を施すことで、三次元画像データ(ボリュームデータ)を構成する。三次元画像生成部23bは、構成された三次元画像データを用いて、初期設定された観察角度(視線方向)、操作パネル13を介して指定された観察角度に関する三次元画像を生成する。この三次元画像構成部23によって生成された三次元画像は、表示画像合成部25に送られ、例えば後述する直交二断面と合成された形態にて表示部14に表示される。
【0027】
表示画像合成部25は、二次元画像構成部22、三次元画像構成部23のそれぞれから受け取った超音波画像と後述する穿刺針位置画像とを合成して表示画像を生成する。この合成は、穿刺針位置検出部30によって検出された位置とボリュームデータにおける座標系(ボリューム座標系)との対応を取ることで実現することができる。生成された表示画像は、種々の設定パラメータの文字情報、目盛等と共に合成され、ビデオ信号として表示部14に出力される。
【0028】
システム制御部27は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を静的又は動的に制御する。
【0029】
記憶部28は、当該超音波診断装置によって取得した画像データ、図示していない送受信部によりネットワークを介して取得した画像データ、各種診断プロトコルや超音波送受信条件等の各種データ群を記憶する。
【0030】
穿刺針位置検出部30は、穿刺針先端の位置を検出する。この穿刺針位置検出部30は、穿刺針先端の位置を検出しうるものであれば、どの様なものであってもよい。例えば、穿刺針アダプタ13の基準位置からの挿入距離を検出することで、穿刺針先端の位置を検出することができる。また、穿刺針の基準位置からの挿入距離が所定の値に達していなければ、穿刺針の挿入無と判定することもできる。
【0031】
穿刺針位置画像構成部32は、穿刺針位置検出部30によって検出された穿刺針の位置及び穿刺アダプタ13の穿刺針装着方向に基づいて、穿刺針位置画像を生成する。ここで、穿刺針位置画像とは、三次元画像上で映像化された穿刺針の位置をより視認し易いようにするための画像である。この穿刺針位置画像の生成・表示については、後で詳しく説明する。
【0032】
(観察角度切替機能)
次に、本超音波診断装置10が有する観察角度切替機能について説明する。この機能は、所定の動作をトリガとして、三次元画像の観察角度(すなわち、三次元画像生成における視線方向)を予め登録された角度に自動的に切り替えるものである。当該機能により、術者は、好適な観察角度を予め登録しておくことで、穿刺術中において特別な操作をすることなく穿刺針と治療部位との位置関係を容易に視認することができる。
【0033】
図2、図3は、観察角度切替機能を説明するための概念図である。例えば治療部位Dが図2に示すように表示される観察角度を、穿刺術に先立って予め登録しておく。この登録は、操作パネル13からの観察角度の入力に応答して、システム制御部27が自身のメモリ領域や記憶部28の所定領域に当該観察角度を書き込むことで実現される。
【0034】
登録後の任意のタイミングにおいて所定の動作(操作パネル13からの切替指示入力等)が実行されると、当該動作に応答して三次元画像は登録された観察角度からのものに切り替えられる。すなわち、三次元画像構成部23は、システム制御部27の制御のもと、所定の動作に応答して登録された観察角度に関する三次元画像を生成する。生成された画像は、表示画像合成部25において処理を受け表示部14に表示される。従って、例えば、図3に示す観察角度に関する画像の表示中においてトリガとしての所定の動作が実行された場合には、三次元画像は、図3に示す観察角度のものから図2に示す観察角度のものに切り替わることになる。
【0035】
なお、この観察角度の切替を実行するためのトリガは、操作パネル13を介する所定動作に拘泥されない。例えば、穿刺針位置検出部30による穿刺針の検出、穿刺針位置検出部30による穿刺針の所定長さの挿入検出等をトリガとして観察角度を切り替えるようにしてもよい。いずれの動作をトリガとするかは、設定によって選択可能であることが好ましい。
【0036】
(穿刺針位置画像の生成表示機能)
次に、本超音波診断装置10が有する、穿刺針位置画像の生成表示機能について説明する。この機能は、検出された穿刺針の位置に基づいて穿刺針位置画像を生成し、これを三次元超音波画像と共に表示するものである。ここで、穿刺針位置画像とは、三次元画像上の穿刺針を視認し易いように支援する画像である。従って、同様の効果を達成するものであれば、どの様なものであってもよいが、超音波画像の特性上、特に穿刺針を含む走査面の位置を判定容易にするもの、穿刺針から手前とその奥とを判定容易にするもの等が好ましい。
【0037】
図4は、穿刺針位置画像の一例であり、穿刺針を含む直交二断面を示した図である。この直交二弾面を穿刺針位置画像とした場合には、当該穿刺針位置画像は、例えば図5に示す様に超音波画像と合成されて表示されることになる。術者は、平面A及び平面Bの位置によってボリュームデータVと穿刺針Nとの位置関係(特に、穿刺針Nから手前とその奥)を容易に視認することができる。
【0038】
なお、穿刺針位置画像は、例えば操作パネル13を介する所定操作、穿刺針位置検出部30による穿刺針の挿入検出、所定の挿入長さの検出等をトリガとして表示するようにしてもよい。いずれの動作をトリガとするかは、設定によって選択可能であることが好ましい。また、重畳する穿刺針を視認可能とするために、該穿刺針位置画像は半透明であり、且つ、その透過率は制御可能であることが好ましい。
【0039】
また、後述する穿刺治療部位の特定を支援するものとして、穿刺針アダプタの位置及び当該アダプタによる穿刺針の挿入方向が超音波画像上に基準線として表示される。係る場合、基準線は、直交2断面の交線で表現されることが望ましい。このように構成した場合、硬い組織などによって穿刺針が曲がった場合にも、直交2断面の交線が穿刺ガイドを表示しているため、穿刺針が曲がったことが操作者に識別しやすくなる。
【0040】
(穿刺針の位置に基づくクリッピング機能)
次に、本超音波診断装置10が有する、穿刺針の位置に基づくクリッピング機能について説明する。この機能は、検出された穿刺針の位置に基づくクリッピング処理(すなわち、当該穿刺針を含むクリッピング面より手前にあるボリュームデータを取り除き、一方クリッピング面及びこれより奥側に存在するボリュームデータを切り取る処理)を実行し、これによって得られる部分的なボリュームデータを用いて三次元画像を生成し表示するものである。この機能により、手前に存在する組織が穿刺針に重畳することがなくなり、穿刺針をより好適に視認することができる。
【0041】
図6、図7は、穿刺針の位置に基づくクリッピング機能を説明するための概念図である。穿刺針が例えば図6に示すような形態にて挿入されている場合には、三次元画像生成部23bは、クリッピング処理を実行し、クリッピング面C(図7参照)よりも奥側にある部分的なボリュームデータvを切り取る。クリッピング面は、穿刺針Nと頂点T(すなわち、プローブ当接位置)とを含むものである。また、三次元画像生成部23bは、クリッピング処理によって得られたボリュームデータvを用いて三次元画像を生成する。生成された三次元画像は、表示画像合成部25において処理を受け、例えば図7に示すような形態にて表示部14に表示される。これにより、クリッピング面Cよりも手前に存在する組織等と穿刺針とが重畳することがなくなるため、術者は穿刺針と治療部位との位置関係を良好に視認することができる。
【0042】
なお、穿刺針アダプタが、穿刺中に超音波プローブ12の位置に対してずれる場合がある。係る場合には、術者から見て穿刺針位置画像の表示位置は固定とし、上記ずれを補正するように三次元画像を自動的に又はマニュアル操作によってシフトすることが好ましい。
【0043】
以上述べた観察角度切替機能、穿刺針位置画像の生成表示機能、穿刺針の位置に基づくクリッピング機能は、それぞれ他の機能と組み合わせて使用することも可能である。例えば、穿刺針位置画像の生成表示機能と穿刺針の位置に基づくクリッピング機能とを組み合わせて使用した場合には、クリッピング処理により切り取られた図5の平面Bよりも奥側のボリュームデータを用いて三次元画像が生成されることになる。
【0044】
また、穿刺針位置を表示するために使用している直交2断面(平面A、平面B)を用いたクリッピング処理を実行するようにしてもよい。例えば、例えば図5において、平面Aと平面Bとで分割されるボリュームデータの4領域のうち、最も手前に存在する領域をクリッピングすることで、組織内に存在する穿刺針の位置をより好適に視認することができる。
【0045】
(動作)
次に、本超音波診断装置1を穿刺術のモニタリングに用いた場合の動作について説明する。なお、以下説明を具体的にするため、観察角度切替は、操作パネル13からの指示入力をトリガとするものとする。
【0046】
図8は、穿刺術のモニタリング中において実行される各処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、当該患者に関する情報(患者情報:例えば、患者ID、治療部位等)が入力される(ステップS1)。次に、治療部位を含む領域に対するボリュームスキャンを実行し、これによって得られる三次元画像を回転・移動等させながら穿刺治療部位が決定される(ステップS2)。なお、この穿刺治療部位決定においては、三次元画像のみならず、MPR画像による直交三断面表示が採用される場合もある。
【0047】
次に、穿刺術中に治療部位と穿刺針とを視認するのに好適と思われる視線角度θが登録される(ステップS3)。すなわち、視線角度θが操作パネル13を介して入力されると、システム制御部27は、自身のメモリ領域又は記憶部28の領域に当該視線角度θを記憶する。以後、操作パネル13から指示を入力することで、所望のタイミングで観察角度を切り替えることができる。
【0048】
次に、表示された穿刺ガイドに沿って穿刺針が挿入されると(ステップS4)、当該穿刺針の被検体への挿入をトリガとして穿刺針位置画像が生成され表示される(ステップS5)。また、例えば穿刺針のある閾位置以上の長さの被検体挿入をトリガとして、クリッピング処理された超音波画像が生成され表示される(ステップS6)。術者は、表示された超音波画像と穿刺針位置画像との合成画像により、穿刺針と治療部位との位置関係を視認しながら穿刺針を目的の位置まで挿入させ、焼灼等の治療を実行する(ステップS7)。
【0049】
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0050】
本超音波診断装置によれば、所定の動作をトリガとして、表示画像を予め登録された観察角度による三次元画像に自動的に切り替えることができる。従って、特別な操作をする必要がないため穿刺術中における作業負担を軽減できる。また、穿刺針と治療部位との位置関係の視認を支援することができ、医療行為の質の向上に寄与することができる。
【0051】
また、本超音波診断装置によれは、モニタリング用の三次元画像と共に、穿刺針位置画像を表示することができる。従って、三次元画像中の穿刺針の位置、特に奥行き方向に関する穿刺針と治療対象との位置関係、穿刺針を含む断面等の把握を支援することができ、医療行為の質の向上に寄与することができる。
【0052】
さらに、本超音波診断装置によれは、検出された穿刺針の位置に基づくクリッピング処理を実行し、これによって得られる部分的なボリュームデータを用いて三次元画像を生成し表示する。そのため、クリッピング面(すなわち、穿刺針)手前に存在する組織が穿刺針に重畳することがなくなり、その結果、穿刺針と治療対象との位置関係の把握を支援することができ、医療行為の質の向上に寄与することができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0054】
(1)本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0055】
(2)上記実施形態においては、穿刺針の位置に基づくクリッピング機能により、クリッピング面より手前のデータを取り除く例を示した。しかしながら、これに拘泥されず、例えばクリッピング面より手前のデータの透過率を低下させることで、クリップ面手前に存在する組織等による穿刺針等の視認性の低下を防止するようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上本発明によれば、穿刺術において三次元画像を用いて治療部位及び穿刺針をモニタリングする場合において、穿刺針と治療部位との位置関係の視認を容易ならしめる超音波診断装置及びその制御方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る超音波診断装置10のブロック構成を示した図である。
【図2】図2は、観察角度切替機能を説明するための概念図である。
【図3】図3は、観察角度切替機能を説明するための概念図である。
【図4】図4は、穿刺針位置画像の一例であり、穿刺針を含む直交二断面を示した図ある。
【図5】図5は、穿刺針位置画像の生成表示機能を説明するための概念図である。
【図6】図6は、穿刺針の位置に基づくクリッピング機能を説明するための概念図である。
【図7】図7は、穿刺針の位置に基づくクリッピング機能を説明するための概念図である。
【図8】図8は、穿刺術のモニタリング中において実行される各処理の流れを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
10…超音波診断装置、11…穿刺針アダプタ、12…超音波プローブ、13…操作パネル、14…表示部、21…送受信部、22…二次元画像構成、22a…二次元メモリ、22b…二次元画像生成部、23…三次元画像構成部、23a…三次元メモリ、23b…三次元画像生成部、25…表示画像合成部、27…システム制御部、28…記憶部、30…穿刺針位置検出部、32…穿刺針位置画像(直交二断面)構成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の三次元領域を超音波によって走査することで得られるエコー信号に基づいて、所定の観察角度に関する三次元画像を生成する画像生成手段と、
前記三次元画像を表示する表示手段と、
前記三次元画像の観察角度を登録する登録手段と、
登録された前記観察角度に関する三次元画像が生成されるように、所定のトリガに応答して前記画像生成手段を制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記被検体に挿入される穿刺針の位置を検出する検出手段をさらに具備し、
前記制御手段は、前記検出手段による所定位置の検出をトリガとして、前記制御を実行すること、
を具備することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記画像生成手段は、前記穿刺針の位置に基づいて、当該穿刺針を含むクリッピング面によってクリッピング処理された三次元画像を生成することを特徴とする請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
被検体の三次元領域を超音波によって走査することでエコー信号を取得する超音波走査手段と、
前記被検体に挿入される穿刺針の位置を検出する検出手段と、
前記エコー信号に基づいて三次元画像を生成し、且つ検出された前記穿刺針の位置に基づいて当該穿刺針の位置を示すための穿刺針位置画像を生成する画像生成手段と、
前記三次元画像と前記穿刺針位置画像とを合成して表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
前記穿刺針位置画像は、前記穿刺針を含む直交二断面であることをと特徴とする請求項4記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記画像生成手段は、前記穿刺針の位置に基づいて、当該穿刺針を含むクリッピング面によってクリッピング処理された三次元画像を生成することを特徴とする請求項4又は5記載の超音波診断装置。
【請求項7】
被検体の三次元領域を超音波によって走査することで得られるエコー信号に基づいて、所定の観察角度に関する三次元画像を生成する画像生成手段と、
前記被検体に挿入される穿刺針の位置を検出する検出手段と、
検出される前記穿刺針の位置及び前記エコー信号に基づいて、前記穿刺針を含むクリッピング面によってクリッピング処理された三次元画像を生成するように、前記画像生成手段を制御する制御手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
被検体の三次元領域を超音波によって走査することで得られるエコー信号に基づいて、画像生成手段に所定の観察角度に関する三次元画像を生成させる画像生成過程と、
表示手段に前記三次元画像を表示させる表示過程と、
登録手段に前記三次元画像の観察角度を登録させる登録過程と、
制御手段に、登録された前記観察角度に関する三次元画像が生成されるように、所定のトリガに応答して前記画像生成手段を制御させる制御過程と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置制御方法。
【請求項9】
前記検出手段に、前記被検体に挿入される穿刺針の位置を検出させる検出過程をさらに具備し、
前記制御過程においては、前記検出手段による所定位置の検出をトリガとして前記制御を実行させること、
を具備することを特徴とする請求項8記載の超音波診断装置制御方法。
【請求項10】
前記画像生成過程においては、前記穿刺針の位置に基づいて、当該穿刺針を含むクリッピング面によってクリッピング処理された三次元画像を前記画像生成手段に生成させることを特徴とする請求項9記載の超音波診断装置制御方法。
【請求項11】
超音波走査手段に、被検体の三次元領域を超音波によって走査させエコー信号を取得させる超音波走査過程と、
検出手段に前記被検体に挿入される穿刺針の位置を検出させる検出過程と、
画像生成手段に、前記エコー信号に基づいて三次元画像を生成させ、且つ検出された前記穿刺針の位置に基づいて当該穿刺針の位置を示すための穿刺針位置画像を生成させる画像生成過程と、
表示手段に、前記三次元画像と前記穿刺針位置画像とを合成して表示させる表示過程と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置制御方法。
【請求項12】
前記穿刺針位置画像は、前記穿刺針を含む直交二断面であることをと特徴とする請求項11記載の超音波診断装置制御方法。
【請求項13】
前記画像生成過程においては、前記穿刺針の位置に基づいて、当該穿刺針を含むクリッピング面によってクリッピング処理された三次元画像を生成させることを特徴とする請求項11又は12記載の超音波診断装置制御方法。
【請求項14】
画像生成手段に、被検体の三次元領域を超音波によって走査することで得られるエコー信号に基づいて、所定の観察角度に関する三次元画像を生成させる画像生成過程と、
検出手段に前記被検体に挿入される穿刺針の位置を検出させる検出過程と、
制御手段に、検出される前記穿刺針の位置及び前記エコー信号に基づいて、前記穿刺針を含むクリッピング面によってクリッピング処理された三次元画像を生成するように前記画像生成手段を制御させる制御過程と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−117566(P2007−117566A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316313(P2005−316313)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】