説明

超音波診断装置及びプログラム

【課題】超音波診断装置による撮影者と診断医が異なる場合において、診断に必要な箇所が含まれる、診断に適した画像を診断医に提供できるようにする。
【解決手段】超音波診断装置1によれば、制御部11は、超音波探触子Pからの超音波の受信信号に基づいて画像処理部14により超音波画像が生成されると、生成された超音波画像を順次一時記憶部153に記憶させる。フリーズボタン181が操作されると、フリーズボタン181が操作されたタイミングを基点としてその前及び/又は後の予め定められた時間範囲内に取得された超音波画像を一時記憶部181から読み出して、読み出した超音波画像の中から、異常陰影候補を含む超音波画像、正常候補を含む超音波画像、異常陰影候補又は正常候補の少なくとも一方を含む超音波画像、の何れかを検索対象として検索を行ない、検索された超音波画像を診断用画像として通信制御部19により端末装置2に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳癌検査の一つとして、超音波診断装置を利用した乳腺検査が行われている。 超音波診断装置を利用した検査を支援する技術として、例えば、特許文献1には、超音波診断装置により取り込まれた対象画像からリアルタイムで微小石灰化部分等の微小構造物を抽出して高輝度で表示する技術が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、操作者がフリーズしたいと思った瞬間と実際にフリーズ操作を行った時との時間的ずれを予め登録しておき、フリーズ時にその時間を考慮して超音波画像を表示する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−143号公報
【特許文献2】特開2000−126187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、超音波を利用した乳腺検査では一人当たり10分程度の時間が必要であるため、診断医が検査を行うのは現状の検査環境では困難である。そこで、撮影技師等の撮影者が超音波診断装置によりリアルタイムで乳房の観察を行い、異常の疑いのある領域等診断に必要と思われる箇所を発見するとフリーズ操作を利用してその箇所の超音波画像を診断用の画像として取り込み、診断医に提供している。診断医は、撮影者から提供された診断用の画像とレポートを参考にして最終的な診断を行っている。
【0006】
このように、乳腺検査では撮影者と診断医が異なるため、診断医に提供する画像は、異常陰影候補や異常陰影に似ている陰影であるが正常である箇所(正常候補という)等、客観的に診断に必要な箇所が含まれた、診断に適した画像である必要がある。しかしながら、診断画像は撮影者による主観により取得されるもの、および撮影技術によるものであるので、必ずしも客観的に診断に適した画像であるとは限らない。
【0007】
ここで、特許文献1に記載の技術は、取得された超音波画像からリアルタイムで微小構造物の抽出を行って表示するものであるので、撮影者に対してリアルタイムで微小構造物の位置や様子を提示することはできる。しかし、リアルタイムで超音波画像の観察を行うことができない診断医に対してはこれらの有用な情報を提供することはできない。また、特許文献1に記載の技術においては、撮影者のフリーズ操作とは関係なく取得された全ての画像に対して微小構造物の抽出処理を行っており、撮影者が読影した成果はなんら処理に反映されていない。
【0008】
一方、特許文献2に記載の技術は、フリーズ操作のタイムラグを解消することを目的としているが、フリーズ操作から予め設定した時間ずれたタイミングの画像が必ずしも診断に適した画像であるとは限らないという問題がある。また、フリーズ操作を行おうとした時点から実際のフリーズ操作までの間に超音波探触子が移動してしまうことも考えられるが、この場合には診断医が所望の画像を取り込むことはできない。
【0009】
本発明の課題は、超音波診断装置による撮影者と診断医が異なる場合において、診断に必要な箇所が含まれる、診断に適した画像を診断医に提供できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を取得する超音波探触子と、前記超音波探触子により取得され受信信号に基づいて超音波画像を生成する画像処理手段と、当該生成された超音波画像を順次画面上に表示する表示手段と、を備える超音波診断装置であって、
前記画像処理手段により生成された時間的に連続する複数の超音波画像を一時的に記憶する一時記憶手段と、
前記表示手段に表示されている超音波画像の画面上への表示の保持の指示を入力するための操作手段と、
前記操作手段が操作されたタイミングを基点としてその前及び/又は後の予め定められた時間範囲内に取得された超音波画像を前記一時記憶手段から読み出して、前記読み出された超音波画像のうち、異常陰影候補を含む超音波画像、正常候補を含む超音波画像、異常陰影候補又は正常候補の少なくとも一方を含む超音波画像、の何れかを検索対象として検索する検索手段と、
前記検索手段により検索された超音波画像を診断用画像として出力する出力手段と、
を備える。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記検索手段による検索対象となる前記時間範囲をユーザが設定するための設定手段を備える。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記検索手段による検索対象とする画像種別を異常陰影候補を含む画像、正常候補を含む画像、異常陰影候補又は正常候補の少なくとも一方を含む画像の中からユーザが選択するための選択手段を備える。
【0013】
請求項4に記載の発明のプログラムは、
被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を取得する超音波探触子と、前記超音波探触子により取得した受信信号に基づいて超音波画像を生成する画像処理手段と、当該生成された超音波画像を順次画面上に表示する表示手段と、を備える超音波診断装置に用いられるコンピュータを、
前記画像処理手段により生成された時間的に連続する複数の超音波画像を一時的に記憶する一時記憶手段、
前記表示手段に表示されている超音波画像の画面上への表示の保持を指示を入力するための操作手段、
前記操作手段が操作されたタイミングを基点としてその前及び/又は後の予め定められた時間範囲内に取得された超音波画像を前記一時記憶手段から読み出して、前記読み出された超音波画像のうち、異常陰影候補を含む超音波画像、正常候補を含む超音波画像、異常陰影候補又は正常候補の少なくとも一方を含む超音波画像、の何れかを検索対象として検索する検索手段と、
前記検索手段により検索された超音波画像を診断用画像として出力する出力手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、超音波診断装置による撮影者と診断医が異なる場合において、診断に必要な箇所が含まれる、診断に適した画像を診断医に提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態における超音波診断システムの全体構成例を示す図である。
【図2】超音波診断装置の制御部により実行される診断用画像検索処理を示すフローチャートである。
【図3】画像種別選択画面の一例を示す図である。
【図4】辺縁の形状の算出手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(超音波診断システム100の構成)
まず、本発明の実施の形態の構成を説明する。
図1に、本実施の形態における超音波診断システム100のシステム構成を示す。
【0017】
図1に示すように、超音波診断システム100は、超音波診断装置1と、端末装置2と、がLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークNを介してデータ送受信可能に接続されて構成されている。
【0018】
超音波診断装置1は、図1に示すように、超音波診断装置本体10と超音波探触子Pとを備えている。
超音波探触子Pは、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。そして、超音波探触子Pは、受信した反射超音波から電気信号である受信信号を取得し、超音波診断装置本体10に出力する。
超音波診断装置本体10は、超音波探触子Pとケーブル等を介して接続されており、超音波探触子Pに電気信号の送信信号を送信して超音波探触子Pに被検体に対して超音波を送信させたり、超音波探触子Pから受信された受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化、表示したりする。
【0019】
超音波診断装置本体10は、図1に示すように、制御部11、送信部12、受信部13、画像処理部14、メモリ部15、表示部16、記憶部17、操作部18、通信制御部19等を備えて構成され、各部はバス101を介して接続されている。
【0020】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成され、記憶部17に記憶されている各種プログラムとの協働により各種処理を実行し、超音波診断装置1の動作を統括的に制御する。
【0021】
送信部12は、ケーブル等を介して超音波探触子Pに送信信号を供給し、超音波探触子Pに超音波を発生させる。送信部12は、例えば高電圧のパルスを生成する高圧パルス発生器等を備えて構成され、送信信号としてのパルスを超音波探触子Pに供給する。
【0022】
受信部13は、アンプ、対数変換器、包絡線検波回路、A/D変換器等を備え、ケーブル等を介して超音波探触子Pから受信信号を受信し、この受信信号を変換した受信電気信号を電気的に増幅し、デジタル変換等の信号処理を施して画像処理部14に出力する。
【0023】
画像処理部14は、受信部13が出力したデジタル受信信号に基づいてBモード画像を生成する。Bモード画像は、受信信号の強さを輝度によって表したものである。このようにして生成されたBモード画像は、超音波画像としてメモリ部15に出力される。
【0024】
メモリ部15は、フレームメモリ151、シネメモリ152、一時記憶部153等を備えて構成される。
フレームメモリ151は、画像処理部14から出力された超音波画像をフレーム画像単位で記憶する。制御部11は、画像処理部14から超音波画像が出力されると、出力された超音波画像によりでフレームメモリ151を上書きし、表示部16に表示させる。
シネメモリ152は、例えば直前数分間に取得された複数の超音波画像(複数のフレーム画像)を動画再生可能に一時的に記憶する。
一時記憶部153は、後述する診断用画像検索処理において探索対象時間として設定された時間範囲内に取得された複数の超音波画像(複数のフレーム画像)を記憶する。なお、探索対象時間としてシネメモリ152が記録可能な時間が設定された場合は、シネメモリ152を一時記憶部153として機能させ、シネメモリ152に記憶されている超音波画像を診断画像の検索に用いても良い。
【0025】
表示部16は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ又はプラズマディスプレイ等により構成され、制御部11からの制御に従って、フレームメモリ151に記憶されている超音波画像を順次連続表示したり、各種操作画面等を画面上に表示したりする。
【0026】
記憶部17は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や半導体の不揮発性メモリ等で構成されている。記憶部17には、各種プログラムやプログラムの実行に必要なデータ等が記憶されている。
【0027】
操作部18は、各種スイッチ、機能ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部11に出力する。例えば、操作部18は、フリーズボタン181を備えている。フリーズボタン181は、フリーズ操作を行うためのボタンである。即ち、フレームメモリ151への画像の上書きを中止して現在表示部16に表示されている超音波画像の画面上への表示の保持の指示を入力するためのボタンである。例えば、ユーザである撮影者は、病変と疑われる陰影を発見した場合等に、このフリーズボタン181を操作することで、その陰影を静止画像として詳しく観察することができる。
【0028】
通信制御部19は、LANカード等により構成され、スイッチングハブを介して通信ネットワークNに接続された端末装置2等の外部機器との間でデータの送受信を行う。
【0029】
端末装置2は、超音波診断装置1から超音波画像を受信して医師の診断用に表示する装置である。
端末装置2は、図1に示すように、制御部21、操作部22、表示部23、通信制御部24、記憶部25等を備えて構成され、各部はバス26を介して接続されている。
【0030】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成され、記憶部25に記憶されている各種プログラムとの協働により各種処理を実行し、端末装置2の動作を統括的に制御する。
【0031】
操作部22は、文字入力キー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードで押下操作されたキーの押下信号とマウスによる操作信号とを、入力信号として制御部21に出力する。
【0032】
表示部23は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等のモニタを備えて構成されており、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。
【0033】
通信制御部24は、LANカード等により構成され、スイッチングハブを介して通信ネットワークNに接続された超音波診断装置1等の外部機器との間でデータの送受信を行う。
【0034】
記憶部25は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や半導体の不揮発性メモリ等で構成されている。記憶部25には、前述のように各種プログラム等が記憶されている。
【0035】
(超音波診断システム100の動作)
次に、超音波診断システム100における動作について説明する。
図2に、超音波診断装置1の制御部11により実行される診断用画像検索処理を示すフローチャートを示す。診断用画像検索処理は、操作部18からの指示に応じて制御部11と記憶部17に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0036】
ここで、一般的に、乳房の超音波診断においては、撮影技師等の撮影者が乳房に超音波探触子Pをあてて乳房の超音波画像を取り込みながらリアルタイムで観察を行い、診断に必要と思われる領域(具体的には、異常陰影候補又は正常候補)が現れたときにフリーズ操作を行って、そのタイミングの超音波画像を静止画像として取り込んで診断医に提供している。しかし、フリーズ操作中に超音波探触子Pが移動したり、フリーズ操作と画像取込との間にタイムラグが生じたりすることにより、撮影者が意図した画像が得られないことがある。また、撮影者がフリーズ操作をしたタイミングに表示されていた画像が、必ずしも客観的に診断に適した画像であるとは限らない。ただし、撮影者は何らかの陰影を見つけた際にフリーズ操作を行うと考えられるので、フリーズ操作をしたタイミングの直前又は直後には、診断に適した画像、即ち、異常陰影候補又は正常候補が描画された画像が存在すると考えられる。
【0037】
そこで、超音波診断装置1においては、以下に説明する診断用画像検索処理を行って、フリーズ操作(フリーズボタン181の押下)がなされたタイミングを基点として予め定められた探索対象時間内に取り込まれた超音波画像の中から選択された種別の超音波画像(例えば、異常陰影候補が存在するフレーム画像)を自動的に検索し、検索された超音波画像を診断用画像として端末装置2に送信することで、ユーザである撮影者が診断に重要であると判断した判断結果を反映し、かつ客観的に診断に適した画像を診断医に提供する。
【0038】
まず、ユーザが診断用画像の探索対象時間を設定するための設定画面(図示せず)が表示部16に表示され、当該設定画面からの操作部18の入力に応じて探索対象時間が設定される(ステップS1)。探索対象時間は、例えば、(1)画像取得開始からフリーズ操作が行われたタイミングまでの時間(フリーズ操作が行われたタイミングから遡って画像取得開始時点までの時間)、(2)シネメモリ152が記録可能な時間(フリーズ操作が行われたタイミングから遡ってシネメモリ152に画像が記録可能な時間、(3)フリーズ操作が行われたタイミングを基点としてユーザが指定した時間範囲等が設定可能である。なお、(3)では、フリーズ操作が行われたタイミングの前だけでなく、フリーズ操作をした後、及び/又はフリーズ操作の前後を含む時間範囲についても設定することができる。フリーズ操作後を含む時間範囲が設定された場合には、フリーズ操作後について設定された時間範囲内に取得された超音波画像については一時記憶部153への記憶が続行される。
【0039】
次いで、超音波画像の取得が行われる。即ち、超音波探触子Pから被検体に対し超音波が供給され、被検体から受信された受信信号に基づいて画像処理部14により超音波画像が生成され、生成された超音波画像がメモリ部15の各メモリに記憶される(ステップS2)。フリーズボタン181が押下されるまで(フリーズ操作がなされるまで)、超音波画像の取得が繰り返される。
【0040】
フリーズボタン181の押下が検知されると(ステップS3;YES)、表示部16に、診断医へ提示する画像種別をユーザが選択するための画像種別選択画面161が表示される(ステップS4)。
図3に、画像種別選択画面161の一例を示す。図3に示すように、画像種別選択画面161には、患者情報表示欄161a、異常ボタン161b、正常ボタン161c、正常/異常ボタン161d、探索実行ボタン161e、フリーズ結果表示欄161f、提示候補表示欄161g、画像送信ボタン161h等が設けられている。
患者情報表示欄161aは、診断対象の患者の情報を表示する欄である。異常ボタン161bは、異常陰影候補が含まれる画像を診断医に提示する画像種別として選択するためのボタンである。正常ボタン161cは、正常候補が含まれる画像を診断医に提示する画像種別として選択するためのボタンである。正常/異常ボタン161dは、異常陰影候補又は正常候補の少なくとも一方が含まれる画像を診断医に提示する画像種別として選択するためのボタンである。探索実行ボタン161eは、異常ボタン161b、正常ボタン161c、正常/異常ボタン161dの中から選択された種別の画像の検索の実行を指示するためのボタンである。フリーズ結果表示欄161fは、フリーズ操作された時点で表示されていた超音波画像を表示する欄である。提示候補表示欄161gは、検索された画像を表示するための欄である。画像送信ボタン161hは、提示候補表示欄161に表示された画像を端末装置2に送信することを指示するためのボタンである。
【0041】
操作部18により異常ボタン161b及び探索実行ボタン161eが押下されることにより異常陰影候補が含まれる画像の検索が指示されると(ステップS5;YES)、一時記憶部153に記憶されている、探索対象時間内に取得された超音波画像が読み出され、当該読み出された超音波画像の中から異常陰影候補が含まれる超音波画像の検索が行なわれる(ステップS6)。
操作部18により正常ボタン161c及び探索実行ボタン161eが押下されることにより、正常候補が含まれる画像の検索が指示されると(ステップS5;NO、ステップS7;YES)、一時記憶部153に記憶されている、探索対象時間内に取得された超音波画像が読み出され、読み出された超音波画像の中から正常候補が含まれる超音波画像の検索が行なわれる(ステップS8)。
操作部18により正常/異常ボタン161d及び探索実行ボタン161eが押下されることにより、正常候補又は異常陰影候補の少なくとも一方が含まれる画像の検索が指示されると(ステップS7;NO、ステップS9;YES)、一時記憶部153に記憶されている、探索対象時間内に取得された超音波画像が読み出され、読み出された超音波画像の中から異常陰影候補、正常候補の少なくとも一方が含まれる超音波画像の検索が行なわれる(ステップS10)。
【0042】
異常陰影候補、正常候補が含まれる画像の検索は、例えば、CAD(Computer-Aided Diagnosis)技術、類似画像検索技術等の手法を用いて行うことができる。
CAD技術を用いた検索は、例えば、以下のようにして行うことができる。
(1)まず、異常の疑いのある領域の特定が行われる。異常の疑いのある領域は、例えば、canny法によりエッジ検出を行い、次いでwartershed法により領域分割を行うことにより抽出された領域に対して、面積、平均濃度、重心の位置、周辺との濃度差、縦横比等の特徴量を算出し、算出された特徴量を予め定められた閾値と比較する等により特定することができる(福岡大輔著、「乳腺超音波画像におけるCADシステム」日本放射線技術学会誌、2007年12月)。
(2)次いで、異常の疑いがあるとして特定された領域(一次候補と呼ぶ)について、辺縁の形状、内部の不均一性、縦横比、病変辺縁の形状等の特徴量が算出される。
辺縁の形状は、例えば、図4に示すように、一次候補領域の重心から辺縁への最短距離dminを最長距離dmaxで除算することにより求めることができる。
縦横比は、一次候補領域に外接する楕円の縦軸の1/2と横軸の1/2との割合を算出することにより求めることができる。
内部の不均一性は、以下の式に示すエントロピーを算出することにより求めることができる。
【数1】

病変辺縁の形状は、以下の式に示すフラクタル次元を算出することにより求めることができる。
【数2】

(3)次いで、(2)で算出された4つの特徴量を互いに異なる4次元の軸にあてはめ、これら4次の要素からなるベクトルxが設定される。
(4)次いで、予め収集された多数の異常陰影のパターン(既知の異常陰影のパターン)、正常陰影のパターン(既知の正常陰影のパターン)のそれぞれについての上記4つの特徴量の要素からなるベクトルが算出され、異常陰影のパターン、正常陰影のパターンのそれぞれについて平均したベクトルuが算出される。そして、x、uを下記[数3]の式に当てはめることにより、一次候補から異常陰影のパターンまでのマハラノビス距離D1(x)、一次候補から正常陰影のパターンまでのマハラノビス距離D2(x)が算出される。
【数3】

(5)マハラノビス距離D1(x)>D2(x)の一次候補は異常陰影候補として抽出され、マハラノビス距離D2(x)≧D1(x)の一次候補は正常候補として抽出される。
なお、マハラノビス距離の近い順に番号を付与しておく(あるいはソートする)ことにより、診断時に重要度の高い順に画像を表示することが可能となる。
【0043】
類似画像検索技術を用いた検索は、例えば、特開2004−5364の手法を用いることができる。例えば、既知の異常陰影を示す画像、正常陰影を示す画像をデータベースに格納しておき、探索対象時間に撮影された各超音波画像の中から、データベースに格納されている異常陰影を示す画像と類似判定項目(例えば、陰影の形状、陰影の大きさ、陰影の方向、濃淡パターンの特性等)の類似度が所定以上の超音波画像を異常陰影候補が含まれる画像として取得することができる。同様に、正常陰影を示す画像と類似判定項目の類似度が所定以上の超音波画像を正常候補が含まれる画像として取得することができる。
【0044】
画像の検索が終了すると、表示部16に表示された画像種別選択画面161の提示候補表示欄161gに検索された画像が表示される(ステップS11)。そして、操作部18からの送信指示に応じて、検索された画像が通信制御部19により端末装置2に送信される(ステップS12)。なお、超音波画像は静止画形式で送信しても動画形式で送信してもよい。
【0045】
端末装置2においては、通信制御部24により超音波診断装置1から送信された超音波画像が受信されると、受信された超音波画像が記憶部25に記憶される。そして、診断医により操作部22からの表示指示に応じて表示される。
【0046】
以上説明したように、超音波診断装置1によれば、制御部11は、超音波探触子Pからの超音波の受信信号に基づいて画像処理部14により超音波画像が生成されると、生成された超音波画像を順次一時記憶部153に記憶させる。フリーズボタン181が操作されると、フリーズボタン181が操作されたタイミングを基点としてその前及び/又は後の予め定められた時間範囲内に取得された超音波画像を一時記憶部181から読み出して、読み出した超音波画像の中から、異常陰影候補を含む超音波画像、正常候補を含む超音波画像、異常陰影候補又は正常候補の少なくとも一方を含む超音波画像、の何れかを検索対象として検索を行ない、検索された超音波画像を診断用画像として通信制御部19により端末装置2に出力する。
【0047】
従って、撮影者が診断に必要な箇所が含まれていると判断してフリーズ操作を行ったタイミングの近辺に取得された超音波画像の中から、異常陰影候補や正常候補が含まれる、客観的に診断に適した超音波画像を出力するので、超音波診断装置による撮影者と診断医が異なる場合において、撮影者は、診断に必要な箇所が含まれる、客観的に診断に適した超音波画像を診断医に提供することが可能となる。
また、異常陰影候補や正常候補の検索は、フリーズ操作のタイミングを基点とした、予め定められた探索対象時間内に取得された超音波画像に対して行われるので、検索処理時間を必要最低限に抑えることが可能となる。
また、フリーズ操作のタイミングが検索処理の基点となるので、撮影者が乳房内部全体を観察した結果、診断に重要と判断した箇所に対してのみ診断医に提供する対象とすることができ、診断医の診断作業を効率化することが可能となる。
【0048】
また、フリーズ操作が行われたタイミングからどの程度の範囲内に取得された超音波画像を検索の対象とするかをユーザである撮影者が設定することができるので、撮影者の読影レベル等に応じた使い勝手のよい装置を提供することができる。
【0049】
また、診断医に提供するために検索する画像の種別は、異常陰影候補を含む画像、正常候補を含む画像、異常陰影候補又は正常候補の少なくとも一方を含む画像の中からユーザが選択することができるので、検査の目的等に応じた画像を医師に提供することができる。
【0050】
なお、上記実施の形態における記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0051】
例えば、上記実施の形態においては、端末装置2に超音波画像を送信することで診断医に対して超音波画像を提供する態様としたが、超音波画像をプリンタにより印刷出力する構成としてもよい。
【0052】
また、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリ等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD−ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0053】
その他、超音波診断システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0054】
100 超音波診断システム
1 超音波診断装置
10 超音波診断装置本体
11 制御部
12 送信部
13 受信部
14 画像処理部
15 メモリ部
151 フレームメモリ
152 シネメモリ
153 一時記憶部
16 表示部
17 記憶部
18 操作部
181 フリーズボタン
19 通信制御部
101 バス
P 超音波探触子
2 端末装置
21 制御部
22 操作部
23 表示部
24 通信制御部
25 記憶部
26 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を取得する超音波探触子と、前記超音波探触子により取得され受信信号に基づいて超音波画像を生成する画像処理手段と、当該生成された超音波画像を順次画面上に表示する表示手段と、を備える超音波診断装置であって、
前記画像処理手段により生成された時間的に連続する複数の超音波画像を一時的に記憶する一時記憶手段と、
前記表示手段に表示されている超音波画像の画面上への表示の保持の指示を入力するための操作手段と、
前記操作手段が操作されたタイミングを基点としてその前及び/又は後の予め定められた時間範囲内に取得された超音波画像を前記一時記憶手段から読み出して、前記読み出された超音波画像のうち、異常陰影候補を含む超音波画像、正常候補を含む超音波画像、異常陰影候補又は正常候補の少なくとも一方を含む超音波画像、の何れかを検索対象として検索する検索手段と、
前記検索手段により検索された超音波画像を診断用画像として出力する出力手段と、
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記検索手段による検索対象となる前記時間範囲をユーザが設定するための設定手段を備える請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記検索手段による検索対象とする画像種別を異常陰影候補を含む画像、正常候補を含む画像、異常陰影候補又は正常候補の少なくとも一方を含む画像の中からユーザが選択するための選択手段を備える請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を取得する超音波探触子と、前記超音波探触子により取得した受信信号に基づいて超音波画像を生成する画像処理手段と、当該生成された超音波画像を順次画面上に表示する表示手段と、を備える超音波診断装置に用いられるコンピュータを、
前記画像処理手段により生成された時間的に連続する複数の超音波画像を一時的に記憶する一時記憶手段、
前記表示手段に表示されている超音波画像の画面上への表示の保持を指示を入力するための操作手段、
前記操作手段が操作されたタイミングを基点としてその前及び/又は後の予め定められた時間範囲内に取得された超音波画像を前記一時記憶手段から読み出して、前記読み出された超音波画像のうち、異常陰影候補を含む超音波画像、正常候補を含む超音波画像、異常陰影候補又は正常候補の少なくとも一方を含む超音波画像、の何れかを検索対象として検索する検索手段と、
前記検索手段により検索された超音波画像を診断用画像として出力する出力手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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