説明

超音波診断装置及び画像処理装置

【課題】人工弁を装着する被検体に与える負担を軽減することができる超音波診断装置及び画像処理装置を提供する。
【解決手段】被検体Pに対して超音波の送受波を行う超音波プローブ10と、超音波プローブ10を駆動して被検体Pの心臓領域に超音波を走査する送受信部20と、送受信部20からの受信信号に基づき心臓画像データを生成する画像データ生成部40と、被検体Pに装着される人工弁AVを3次元画像化した動画再生が可能な人工弁画像データ80を保存する画像データ記憶部51と、画像データ記憶部51から人工弁画像データ80を読み出して前記心臓画像データと合成する画像データ処理部52と、画像データ処理部52で合成された合成画像データを表示する表示部53とを備え、画像データ処理部52は、合成画像データ56の人工画像データ80を被検体PのECG信号に同期して表示部53に動画表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波により被検体の体内を画像化した画像データを表示させて診断を行う超音波診断装置及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波を送受波する超音波プローブを用いて被検体内に超音波を走査し、走査領域における組織の音響インピーダンスの差異によって生ずる反射波に基づく画像データをモニタ上に表示するものである。この超音波による診断方法では、超音波プローブを体表面に接触させるだけの簡単な操作で、画像データをリアルタイムに表示することができるため、生体内の心臓、血管、腹部、泌尿器、産婦人科などの検査に広く用いられている。
【0003】
ところで、心臓には血液の逆流を防止する弁膜があり、この弁膜が開いたときの口面積が狭くなる狭窄や閉じたときの閉塞不全を来した心臓弁膜症の被検体に対する外科療法として、弁膜を切除して人工弁に取り替える人工弁置換手術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この手術では、超音波診断装置、X線CT装置、MRI装置等の画像診断装置を用いて予め疾患の内容が確認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−206739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、人工弁置換手術においては、手術前に様々な大きさの人工弁を用意し、被検体の胸を切開したときに、心臓の人工弁を装着する部分を採寸して人工弁の大きさを決める必要があるため、術前の被検体に精神的な負担を与えている。また、手術に時間がかかるため、術中の被検体に肉体的な負担を与えている。
【0006】
本発明の実施形態は、上記問題点を解決するためになされたもので、人工弁を装着する被検体に与える負担を軽減することができる超音波診断装置及び画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、実施形態の超音波診断装置は、被検体に対して超音波の送受波を行う超音波プローブと、前記超音波プローブを駆動して前記被検体の心臓の領域に超音波を走査する送受信手段と、前記送受信手段からの受信信号に基づいて3次元画像データを生成する画像データ生成手段と、前記被検体に装着される人工弁を3次元画像化した動画再生が可能な人工弁画像データを、前記3次元画像データと合成して前記心臓の活動に伴い発生する生体信号に同期して動画再生させるための合成画像データを生成する画像データ処理手段と、前記合成画像データの動画を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例に係る画像データ記憶部に保存された人工弁画像データの一例を示す図。
【図3】本発明の実施例に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施例に係る表示部に表示された心臓画像データ及び人工弁画像データの画面の一例を示す図。
【図5】本発明の実施例に係る表示部に表示された合成画像データの画面の一例を示す図。
【図6】本発明の実施例に係る合成画像データの断面位置の一例を示す図。
【図7】本発明の実施例に係る表示部に表示される2つの断面画像データ及びマーカの画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の超音波診断装置の実施例を図1乃至図7を参照して説明する。
図1は、実施例に係る超音波診断装置の構成を示したブロック図である。この超音波診断装置100は、被検体Pに対して超音波の送受波を行う超音波プローブ10と、超音波プローブ10を駆動して被検体P内に超音波を走査する送受信部20と、送受信部20からの受信信号を処理してBモードデータやドプラデータ等の各データを生成する信号処理部30と、被検体Pの生体信号を計測する生体信号計測部33とを備えている。
【0011】
また、超音波診断装置100は、信号処理部30で生成された各データに基づいて画像データを生成する画像データ生成部40と、画像データ生成部40で生成された画像データの表示、保存、合成等を行う画像処理部50と、各種コマンド信号等の入力を行う操作部60と、送受信部20、信号処理部30、生体信号計測部33、画像データ生成部40、及び画像処理部50の各ユニットを統括して制御するシステム制御部70とを備えている。
【0012】
超音波プローブ10は、被検体Pの体表面にその先端面を接触させた状態で超音波の送受波を行なうものであり、例えば2次元に配列された複数個の振動子を先端部分に有している。この振動子は、送受信部20から出力される駆動信号である電気パルスを超音波パルス(送信超音波)に変換して被検体P内に送波する。また、被検体P内で反射した超音波(受信超音波)を電気信号に変換する。そして、電気信号に変換した受信信号を送受信部20に出力する。
【0013】
送受信部20は、超音波プローブ10で送信超音波を発生させるための駆動信号を生成する送信部21と、超音波プローブ10の振動子から得られる複数チャンネルの受信信号に対して整相加算を行なう受信部22とを備えている。
【0014】
送信部21は、レートパルス発生器、送信遅延回路、及びパルサ等を備えている。そして、レートパルス発生器は、被検体Pに放射する超音波パルスの繰り返し周期(Tr)を決定するレートパルスを送信遅延回路に出力する。また、送信遅延回路は、被検体P内の各深さ方向の所定の深さで超音波ビームを集束させるための集束用遅延時間と各深さ方向への送波により超音波を走査するための偏向用遅延時間を前記レートパルスに与えてパルサに出力する。更に、パルサは、送信遅延回路により出力されたレートパルスから駆動パルスを生成する。
【0015】
受信部22は、プリアンプ、受信遅延回路、及び加算器等を備えている。そして、プリアンプは、超音波プローブ10からの微小な受信信号を増幅して十分なS/Nを確保する。また、受信遅延回路は、被検体P内における各深さ方向の所定の深さからの受信超音波を集束するための集束用遅延時間と深さ方向に超音波ビームの受信指向性を設定するための偏向用遅延時間をプリアンプからの増幅された受信信号に与える。更に、加算器は、受信遅延回路からの受信信号を加算して1つに纏めて信号処理部30に出力する。
【0016】
信号処理部30は、送受信部20の受信部22から出力された受信信号に基づいてBモードデータを生成するBモードデータ生成部31及びドプラデータを生成するドプラデータ生成部32を備えている。そして、Bモードデータ生成部31は、受信部22からの整相加算された信号に対して包絡線検波を行った後、対数変換する。そして、対数変換した信号をA/D変換してBモードデータを生成し、生成したBモードデータを画像データ生成部40に出力する。また、ドプラデータ生成部32は、受信部22からの整相加算された信号に対してドプラ偏移周波数を検出してA/D変換した後、血流や心臓壁の移動情報に関する信号を抽出して、その抽出したドプラ信号に対して自己相関処理を行う。そして、この自己相関処理結果に基づいて血液の流速や心臓壁の速度等を表すドプラデータの生成を行い、画像データ生成部40に出力する。
【0017】
生体信号計測部33は、被検体Pの心臓の活動に伴う心音、血圧、心電図(ECG)等の生体信号を計測する。以下では、例えばECG信号を計測し、計測したECG信号を増幅してA/D変換した後、その変換したECG信号から例えばR波を検出する。そして、検出したR波に基づいて、ECG信号に同期させるための1心拍に要する時間(心拍時間)の算出やトリガ信号の生成を行う。
【0018】
ここで、心拍時間の算出及びトリガ信号の生成の一例を説明する。互いに隣り合うR波間の時間(R−R間隔)をR波の検出毎に求め、求めた所定数のR―R間隔の平均である平均R−R間隔を算出して心拍時間とする。また、平均R−R間隔の算出に用いた最新のR波の位置を0%とし、次に検出するR波の位置を100%とすると、0%のR波の位置から予め設定されたX%(0<X≦100)で表わされる位置における位相(遅延位相)をトリガとするトリガ信号を生成する。例えば、算出した平均R−R間隔を1000msとし、設定された遅延位相を45%とすると、0%のR波の位置から1000msの45%である450ms後に、トリガ信号及び1000msをシステム制御部70に出力する。
【0019】
画像データ生成部40は、信号処理部30から出力された各データに基づいて画像データを生成し、生成した画像データを画像処理部50に出力する。そして、信号処理部30のBモードデータ生成部31で生成された各フレームのBモードデータを画像表示のための走査変換を行って、被検体P内の超音波を走査した2次元の走査領域を画像化したBモード画像データを生成する。また、信号処理部30のドプラデータ生成部32で生成されたドプラデータを画像表示のための走査変換を行って、血液の流速や心臓壁の速度等を経時的に表わすドプラ画像データを生成する。
【0020】
また、画像データ生成部40は、被検体Pの心臓の領域の超音波走査により信号処理部30のBモードデータ生成部31で生成された複数フレームのBモードデータをフレーム毎に走査変換を行って、複数フレームのBモード画像データを生成する。次いで、生成した複数フレームのBモード画像データを再構成して超音波を走査した3次元の走査領域における3次元画像データ(心臓画像データ)を生成する。そして、システム制御部70から供給されるトリガ信号を、このトリガ信号が生成されたときの位相における心臓の状態を示す心臓画像データに付加する。
【0021】
画像処理部50は、画像データ生成部40で生成された画像データ等を保存する画像データ記憶部51と、画像データ生成部40で生成された画像データや画像データ記憶部51に保存された画像データの合成等を行う画像データ処理部52と、画像データ生成部40で生成された画像データ等を表示する表示部53とを備えている。
【0022】
画像データ記憶部51は、画像データ生成部40で生成されたBモード画像データ、ドプラ画像データ、及び心臓画像データ等の各画像データを静止画像データ又は動画像データとして保存する。また、外部の装置で作成された被検体Pに装着される人工弁を3次元画像化した動画再生が可能な人工弁画像データを保存する。更に、画像データ処理部52で合成された動画再生が可能な合成画像データを保存する。
【0023】
画像データ処理部52は、画像データ生成部40から出力されたBモード画像データやドプラ画像データ等を用いて計測や計算を行う。そして、例えばドプラ画像データから指定された領域における単位時間当たりの血液の流量(血流量)や圧力等の血流データを得る。また、画像データ記憶部51に保存された人工弁画像データを読み出し、読み出した人工弁画像データを、心臓画像データと合成して被検体Pから得られたECG信号に同期して動画再生させるための合成画像データを生成する。更に、画像データ記憶部51から読み出した人工弁画像データを、心臓画像データと合成して血流データに同期して動画再生させるための合成画像データを生成する。そして、生成した合成画像データを画像データ記憶部51や表示部53に出力する。
【0024】
表示部53はCRTや液晶パネル等のモニタを備え、画像データをD/A変換及びテレビフォーマット変換により映像信号に変換して表示する。そして、画像データ生成部40で生成された各画像データをリアルタイムに表示する。また、画像データ記憶部51に保存されたBモード画像データ、ドプラ画像データ、心臓画像データ、及び人工弁画像データの静止画又は動画を再生表示する。更に、画像データ処理部52で合成された合成画像データの動画又は静止画を再生表示する。
【0025】
操作部60は、ボタン、スイッチ、キーボード、トラックボール、マウス、タッチパネル等の入力デバイスを備え、これらの入力デバイスを用いて撮像条件(ゲイン、送受信周波数、パルス繰り返し周波数、視野深度、フレームレート、生成モード(Bモード画像データを生成する2Dモード、ドプラ画像データを生成するドプラモード、3次元画像データを生成する3Dモードなど)等を設定するための入力、検査開始及び検査終了の入力、画像データの合成を可能にする画像合成モードの入力等の様々な入力を行う。
【0026】
システム制御部70はCPU及び記憶回路を備え、操作部60から入力された入力情報に基づいて、送受信部20、信号処理部30、生体信号計測部33、画像データ生成部40、及び画像処理部50の各ユニットの制御や、システム全体の制御を統括して行う。
【0027】
次に、図1及び図2を参照して、画像データ記憶部51に保存された人工弁画像データの一例を説明する。
図2は、画像データ記憶部51に保存された人工弁画像データの一例を示した図である。この人工弁画像データ80は、人工弁AVの人工弁膜が最大に閉じて血液の逆流を防止する開口率0%のときの状態を示し、人工弁AVの開閉する人工弁膜を3次元画像化した人工弁膜データ81及び人工弁膜を支持する支持体を3次元画像化した支持体データ82から成る。そして、開口率0%から最大に開いて血液が通過する開口率100%まで達した後、開口率0%に戻るまでの1心拍分の各位相における開口率の状態を示す動画再生させるための複数フレームからなる開口率の情報が付加された3次元画像データ(3D画像データ)により構成される。
【0028】
人工弁画像データ80には、操作部60からの心電図同期のモードの入力に応じて、生体信号計測部33で計測されるECG信号に同期して動画再生させるためのフラグが付加されている。また、操作部60からの血流同期のモードの入力に応じて、ドプラ画像データに基づいて得られる血流量や血圧等の血流データに同期して動画再生させるための血流情報が付加されている。
【0029】
心電図同期のモードにおいては、生体信号計測部33から出力されるトリガ信号をトリガとして表示部53に表示させる3D画像データにフラグが付加されている。ここで、被検体Pの心臓の例えば僧帽弁が人工弁AVに置換される場合にフラグを付加する一例を説明する。例えば僧帽弁が開いて左心房から左心室に血液が流れ込むときの心位相をトリガとする場合、人工弁画像データ80の人工弁AVが開くときの開口率の状態を示す3D画像データにフラグを付加する。また、僧帽弁が開くときの心位相は心臓の拡張期の初めに当たるECG信号のT波の末端付近における位置であるため、その位置における位相を遅延位相として操作部60から入力して設定する。そして、生体信号計測部33からトリガ信号が出力されたとき、フラグが付加された3D画像データ(フラグ画像データ)を表示部53に表示させ、生体信号計測部33で算出された心拍時間を1周期とする人工弁画像データ80の動画を表示部53に再生表示させる。これにより、人工弁画像データ80をECG信号に同期して動画再生させることができる。
【0030】
血流同期のモードにおいては、画像データ生成部40で生成されるドプラ画像データに基づいて得られる血流データである例えば弁膜を通過する血流量に同期して人工弁画像データ80を動画再生させるための流量等の血流情報が付加されている。この血流情報の求め方について説明する。閉じた人工弁AVで仕切られる2つの空間を設け、この空間に血液と同様の物性を有する流体を充填する。次いで、流体を様々の圧力で加圧したときの人工弁AVの開口率とこの開口率で開口した人工弁膜を通過する流体の単位時間当たりの流量の関係を求める。そして、求めた加圧したときの圧力、開口率、及び流量の関係に基づいて、各開口率の状態を示す3D画像データにその開口率のときの圧力及び流量の血流情報を付加する。そして、心臓画像データと同じ位相におけるドプラ画像データに基づいて血流量を計算し、計算した血流量と同じ流量の情報が付加された3D画像データを前記心臓画像データの表示に同期して表示部53に表示させる。
【0031】
また、人工弁画像データ80には、人工弁AVのサイズの情報が付加され、表示部53に表示される拡大及び縮小前の人工弁画像データ80は標準サイズの人工弁AVに対応している。そして、人工弁画像データ80と心臓画像データを合成するとき、心臓画像データのサイズに合わせて人工弁画像データ80を拡大又は縮小する入力が操作部60から行われると、画像データ処理部52は人工弁画像データ80を拡大又は縮小すると共に、拡大又は縮小した人工弁画像データ80に対応する人工弁AVのサイズを計算する。そして計算した人工弁AVの拡大サイズ又は縮小サイズの情報を拡大又は縮小した人工弁画像データ80に付加する。このため、人工弁画像データ80には人工弁AVの拡大サイズ及び縮小サイズにおける圧力及び流量に変換する変換テーブルも付加されている。
【0032】
なお、人工弁には人工弁膜の形状、構造、材質等が異なる様々な種類があるので、人工弁毎に求めた血流情報がその人工弁の画像データに付加される。
【0033】
以下、図1乃至図7を参照して、実施例に係る超音波診断装置100の動作の一例を説明する。
図3は、超音波診断装置100の動作を示したフローチャートである。画像処理部50の画像データ記憶部51には、図2に示した人工弁画像データ80が保存されている。そして、人工弁AVへの置換手術が行われる被検体Pの識別情報、3Dモードを含む撮像条件等を設定する入力が操作部60から行われる。次いで、生体信号計測部33のECG信号を計測するための電極が被検体Pに装着された後、操作部60から被検体Pの検査開始の入力が行われると、超音波診断装置100は動作を開始する(ステップS1)。
【0034】
システム制御部70は、送受信部20、信号処理部30、生体信号計測部33、画像データ生成部40、及び画像処理部50に検査を指示する。そして、被検体Pの画像データを収集するために、操作部60から収集開始の入力が行われると、システム制御部70は、送受信部20、信号処理部30、生体信号計測部33、画像データ生成部40、及び画像処理部50に画像データの生成及び表示の開始を指示する。
【0035】
生体信号計測部33は、被検体PのECG信号を計測し、計測したECG信号に基づいて心拍時間の算出及びトリガ信号の生成を行う。次いで、算出した心拍時間T及び生成したトリガ信号をシステム制御部70に出力する。超音波診断装置100の操作者が超音波プローブ10を被検体Pの心臓近傍の体表面に当てることにより、被検体Pに対して超音波の送受波が行われ、送受信部20は被検体P内の心臓を含む領域に超音波を走査する。信号処理部30は、送受信部20の受信部22から出力された受信信号に基づいてBモードデータを生成し、生成したBモードデータを画像データ生成部40に出力する。
【0036】
画像データ生成部40は、信号処理部30から出力されたBモードデータに基づいて心臓画像データを生成し、システム制御部70から供給されたトリガ信号及び心拍時間Tを、生成した心臓画像データの内のそのトリガ信号が生成されたときの位相における心臓の状態を示す心臓画像データに付加する。そして、生成した心臓画像データをフレーム毎に画像処理部50の表示部53に出力する。表示部53は、画像データ生成部40から出力された心臓画像データをリアルタイムに表示する(ステップS2)。
【0037】
次に、超音波プローブ10を移動して、表示部53に所望の心臓画像データが表示されたとき、操作部60から心臓画像データを動画像データとして保存する入力が行われると、画像データ生成部40は、システム制御部70から供給されるトリガ信号に基づいて、動画像として例えば1心拍分の心臓画像データを画像データ記憶部51に出力する。画像データ記憶部51は、画像データ生成部40から出力された心臓画像データを保存する(ステップS3)。
【0038】
画像データ記憶部51に心臓画像データが保存され、操作部60から収集終了の入力が行われると、システム制御部70は、送受信部20、信号処理部30、生体信号計測部33、画像データ生成部40、及び画像処理部50に画像データの生成及び表示の終了を指示する。
【0039】
次に、画像データ記憶部51に保存された心臓画像データと人工弁画像データ80の合成を行うために、操作部60から画像合成モードを選択する入力が行われた後、画像データ記憶部51に保存された心臓画像データ及び人工弁画像データ80の動画を再生表示させる入力が行われると、画像データ処理部52は、画像データ記憶部51から心臓画像データ及び人工弁画像データ80を読み出し、読み出した心臓画像データ及び人工弁画像データ80を動画像データとして表示部53に出力する。表示部53は、画像データ処理部52から出力された心臓画像データ及び人工弁画像データ80の動画を再生表示する(ステップS4)。
【0040】
図4は、表示部53に表示された心臓画像データ及び人工弁画像データ80の画面の一例を示した図である。この画面54には、心臓画像データ55及び人工弁画像データ80の動画が再生表示されている。そして、心臓画像データ55には、例えば人工弁AVへの置換対象となる被検体Pの心臓の弁膜部位に当たる弁膜部位データ551が含まれている。このように、表示部53に人工弁画像データ80の動画を再生表示することができる。
【0041】
次に、操作部60から例えば心電図同期のモードの入力が行われると、画像データ処理部52は、心臓画像データ55のトリガ信号が付加された心臓画像データ(トリガ画像データ)及び人工画像データ80のフラグが付加されたフラグ画像データを同じタイミングで表示部53に出力し、心臓画像データ55に付加された心拍時間Tを1周期として繰り返し再生表示させるための心臓画像データ55及び人工画像データ80の動画像データを表示部53に出力する。表示部53は、画像データ処理部52から出力された心臓画像データ55及び人工弁画像データ80の動画を再生表示する(図3のステップS5)。
【0042】
このように、ECG信号に同期して人工弁画像データ80の動画を表示部53に再生表示させることができる。
【0043】
次に、表示部53に表示された心臓画像データ55と人工弁画像データ80を合成するために、操作部60からの入力により人工弁画像データ80を心臓画像データ55の弁膜部位データ551の位置まで移動する。
【0044】
なお、図3のステップS2の後に、例えば図4の画面54に表示された心臓画像データ55が表示部53にリアルタイムに表示されているとすると、表示部53に人工弁画像データ80を表示させて弁膜部位データ551上に重畳させた後、心電図同期のモードの入力を行うことにより、心臓画像データ55を表示部53にリアルタイムに表示すると共に、弁膜部位データ551上でECG信号に同期して人工弁画像データ80の動画を再生表示することができる。
【0045】
人工弁画像データ80を移動した後、心臓画像データ55及び人工弁画像データ80を静止させて、弁膜部位データ551の人工弁AVを装着する位置に当たる装着領域と支持体データ82が重なるように人工弁画像データ80の視点の位置を心臓画像データ55の視点の位置と合わせる入力を操作部60から行う。なお、視点の位置を合わせた後、弁膜部位データ551と人工弁画像データ80のサイズが異なり重ならない場合には、弁膜部位データ551と重なるサイズになるまで人工弁画像データ80を拡大又は縮小する入力を行う。
【0046】
心臓画像データ55の弁膜部位データ551に支持体データ82を重ね合わせた後、弁膜部位データ551の装着領域又は支持体データ82の領域を指定して貼り付ける入力が操作部60から行われると、画像データ処理部52は、弁膜部位データ551の位置情報に基づいて、弁膜部位データ551の装着領域に支持体データ82を貼り付けて心臓画像データ55と人工弁画像データ80を合成し、合成した合成画像データを静止画像データとして表示部53に出力する。表示部53は、画像データ処理部52から出力された合成画像データを表示する。
【0047】
次に、操作部60から動画再生を選択する入力が行われると、画像データ処理部52は、合成画像データの心臓画像データ55の動画を再生表示させると共に人工弁画像データ80をECG信号に同期して再生表示させる動画像データとして表示部53に出力する。表示部53は、画像データ処理部52から出力された合成画像データの動画を表示する(図3のステップS6)。
【0048】
図5は、表示部53に表示された合成画像データの画面の一例を示した図である。この画面54aには、合成画像データ56の動画が表示されている。合成画像データ56は、弁膜部位データ551の装着領域に支持体データ82を貼り付けて心臓画像データ55と人工弁画像データ80を合成したもので、被検体Pの心臓に人工弁AVを装着したときの人工弁AVの動きを想定した動画像データである。
【0049】
合成画像データ56に含まれる人工弁画像データ80は、心臓画像データ55の弁膜部部位データ551の装着領域の動きに合わせて支持体データ82が移動しながら、人工弁膜データ81が開閉している。これは、心臓の動きに合わせて支持体が移動しながら弁膜が開閉する人工弁の動きを想定した動画像データである。
【0050】
このように、合成画像データ56の心臓画像データ55の動画を表示させると共に人工弁画像データ80をECG信号に同期して再生表示させることができる。これにより、被検体Pの心臓に装着される人工弁AVの動きを想定した合成画像データ56の動画を表示部53に表示することが可能となり、表示部53に表示された合成画像データ56を術前のしかも検査中に見せることにより、被検体Pに与える精神的な負担を軽減することができる。
【0051】
なお、表示部53の画面54aに合成画像データ56が表示されているとき、支持体データ82の動きにより移動しながら開閉する人工弁膜データ81の動きを観察することが難しい場合には、操作部60から固定モードを選択する入力が行われると、画像データ処理部52は、合成画像データ56の支持体データ82及び弁膜部位データ551の装着領域の位置を固定し、固定した装着領域に対して心臓画像データ55の装着領域以外の領域を相対的に移動させると共に、支持体データ82の位置が固定された状態で人工弁膜データ81を開閉させる動画像データを表示部53に表示させる。これにより、人工弁膜データ81の動きを容易に観察することができる。また、操作部60からスロー再生の入力が行われると、画面54aに表示された合成画像データ56の動画をスロー再生表示することができる。また、コマ送り再生の入力が行われると、合成画像データ56を例えば1フレーム毎にコマ送りして再生表示することができる。
【0052】
ここで、表示部53の画面54aに表示された合成画像データ56の例えば人工弁画像データ80を含む断面位置を指定する入力が操作部60から行われると、画像データ処理部52は、図6に示すように、合成画像データ56の人工弁画像データ80を通る直線561で互いに直交する2つの面562,563の位置で、合成画像データ56を切断したときの断面を示す互いに直交する2つの断面画像データを生成する。また、合成画像データ56に対する面562,563の位置を示すマーカを生成する。そして、生成した2つの断面画像データ及びマーカを表示部53に出力する。表示部53は、画像データ処理部52から出力された2つの断面画像データ及びマーカを表示する。
【0053】
図7は、表示部53に表示される2つの断面画像データ及びマーカの画面の一例を示した図である。この画面54bには、互いに直交する2つの断面画像データ564,565及びマーカ566が表示される。そして、断面画像データ564は図6に示した面562の位置で切断したときの合成画像データ56の断面を示し、断面画像データ564上の直線567は断面画像データ564に直交する断面画像データ565の位置を示している。また、断面画像データ565は図6に示した面563の位置で切断したときの合成画像データ56の断面を示し、断面画像データ565上の直線568は断面画像データ565に直交する断面画像データ564の位置を示している。更に、マーカ566は、図6に示した合成画像データ56及び面562,563を模した模式図を縮小したものである。
【0054】
なお、図6に示した直線561上の人工弁画像データ80と交わる位置を指定することにより、2つの断面画像データ564,565と共に、指定した位置を通り面562,563に直交する面の位置で切断したときの合成画像データ56の断面を示す断面画像データを表示部53の画面に表示することができる。また、図7に示した画面54bの各直線567,568を操作部60からの入力により左右に移動することにより、図6に示した各面562,563の合成画像データ56に対する位置を移動して、合成画像データ56の様々な断面の画像データを表示部53に表示させることができる。
【0055】
このように、合成画像データ56の人工弁画像データ80を含む断面画像データ564,565を表示部53に表示させることにより、被検体Pの心臓や血管の壁面と接触する人工弁AVの位置を確認することができる。
【0056】
次に、表示部53の画面54aに表示された合成画像データ56に含まれる人工弁画像データ80に対応する人工弁AVのサイズを表示させる入力が行われると、画像データ処理部52は、合成後の人工弁画像データ80に付加された標準サイズ、拡大した人工弁画像データ80に対応する人工弁AVの拡大サイズ、又は縮小した人工弁画像データ80に対応する人工弁AVの縮小サイズの情報を表示部53に表示させる。
【0057】
このように、表示部53に動画表示される合成画像データ56や断面画像データ564,565を観察して、人工弁画像データ80の大きさに異常がない場合には、その人工弁画像データ80に対応する人工弁AVのサイズを表示部53に表示させることにより、術前に準備する人工弁AVのサイズの種類を削減することができる。これにより、準備した人工弁AVと照合して採寸する術中における時間を短縮して被検体Pに与える肉体的な負担を軽減することができる。
【0058】
図3に示したステップS6の後に、操作部60から表示部53の画面54aに表示された合成画像データ56を保存する入力が行われると、画像データ処理部52は、図5の画面54aに表示された合成画像データ56を画像データ記憶部51に保存する(図3のステップS7)。
【0059】
画像データ記憶部51に合成画像データ56が保存された後、操作部60から検査終了の操作が行われると、システム制御部70が送受信部20、信号処理部30、画像データ生成部40、及び画像処理部50を停止させることにより、超音波診断装置100は動作を終了する(図3のステップS8)。
【0060】
被検体Pに人工弁AVが装着された後、人工弁AVが装着された心臓の領域の超音波を走査して人工弁装着の心臓画像データを生成し、生成した心臓画像データ及び画像データ記憶部51に保存された合成画像データ56を表示部53に並べて動画表示することができる。そして、合成画像データ56の周期が人工弁装着の心臓画像データの周期と合わない場合、合成画像データ56に付加された心拍時間Tを変更して人工弁装着の心臓画像データの周期に合わせることができる。更に、周期を合わせた人工弁装着の心臓画像データと心臓画像データを重ね合わせて表示部53に表示することができる。
【0061】
なお、画像処理部50と同様に人工弁画像データ80の保存、人工弁画像データ80の合成、合成した画像データの表示等を行う外部画像処理部、各種コマンド等の入力が可能な操作部、操作部からの入力に基づいて外部画像処理部を制御する制御部により構成される画像処理装置を、例えば超音波診断装置100とネットワークを介して接続可能に設け、外部画像処理部で超音波診断装置100から得られる心臓画像データ55と人工弁画像データ80を合成してECGに同期して動画再生させるための合成画像データ56を生成するように実施してもよい。
【0062】
以上述べた本発明の実施例によれば、心臓画像データ55を動画像データとして収集して、人工弁AVを3次元画像化した動画再生可能な人工弁画像データ80と合成し、合成した合成画像データ56の心臓画像データ55の動画を表示させると共に人工弁画像データ80をECG信号に同期して表示させることができる。これにより、被検体Pの心臓に装着される人工弁AVの動きを想定した合成画像データ56の動画を表示部53に表示することが可能となり、表示部53に表示された合成画像データ56の動画を見せることにより被検体Pに与える精神的な負担を軽減することができる。
【0063】
また、合成画像データ56の断面を示す断面画像データ564,565を生成して表示部53に表示することができる。そして、表示部53に表示される合成画像データ56や断面画像データ564,565を観察して、人工弁画像データ80の大きさに異常がない場合には、合成画像データ56に含まれる人工弁画像データ80に対応する人工弁AVのサイズを表示部53に表示させることにより、術前に準備する人工弁AVのサイズの種類を削減することができる。これにより、準備した人工弁AVと照合して採寸する術中における時間を短縮して被検体Pに与える肉体的な負担を軽減することができる。
【符号の説明】
【0064】
P 被検体
10 超音波プローブ
20 送受信部
21 送信部
22 受信部
30 信号処理部
31 Bモードデータ生成部
32 ドプラデータ生成部
33 生体信号計測部
40 画像データ生成部
50 画像処理部
51 画像データ記憶部
52 画像データ処理部
53 表示部
60 操作部
70 システム制御部
100 超音波診断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波の送受波を行う超音波プローブと、
前記超音波プローブを駆動して前記被検体の心臓の領域に超音波を走査する送受信手段と、
前記送受信手段からの受信信号に基づいて3次元画像データを生成する画像データ生成手段と、
前記被検体に装着される人工弁を3次元画像化した動画再生が可能な人工弁画像データを、前記3次元画像データと合成して前記心臓の活動に伴い発生する生体信号に同期して動画再生させるための合成画像データを生成する画像データ処理手段と、
前記合成画像データの動画を表示する表示手段とを
備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
被検体に対して超音波の送受波を行う超音波プローブと、
前記超音波プローブを駆動して前記被検体の心臓の領域に超音波を走査する送受信手段と、
前記送受信手段からの受信信号に基づいてドプラ画像データ及び3次元画像データを生成する画像データ生成手段と、
前記被検体に装着される人工弁を3次元画像化した動画再生が可能な人工弁画像データを、前記3次元画像データと合成して前記ドプラ画像データに基づき得られる血流データに同期して動画再生させるための合成画像データを生成する画像データ処理手段と、
前記合成画像データの動画を表示する表示手段とを
備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
前記画像データ処理手段は、前記合成画像データを切断したときの断面を示す互いに直交する少なくとも2つの断面画像データを生成し、
前記表示手段は、前記画像データ処理手段により生成された前記断面画像データを表示するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波診断装置
【請求項4】
前記人工弁画像データは、前記人工弁の弁膜を画像化した弁膜データ及び前記弁膜を支持する支持体を画像化した支持体データにより構成され、
前記画像データ処理手段は、前記3次元画像データに含まれる弁膜部位データの装着領域に前記支持体データを貼り付けて前記3次元画像データと前記人工弁画像データを合成し、
前記表示手段は、前記支持体データが前記装着領域の動きに合わせて移動し、前記弁膜データが前記装着領域の動きに合わせて移動しながら開閉している動画を表示するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記人工弁画像データは、前記人工弁の弁膜を画像化した弁膜データ及び前記弁膜を支持する支持体を画像化した支持体データにより構成され、
前記画像データ処理手段は、前記3次元画像データに含まれる弁膜部位データの装着領域に前記支持体データを貼り付けて前記3次元画像データと前記人工弁画像データを合成し、合成した前記合成画像データの前記支持体データ及び前記装着領域の位置を固定し、固定した前記装着領域に対して前記3次元画像データの装着領域以外の領域を相対的に移動させると共に、前記支持体データの位置を固定した状態で前記弁膜データを開閉させる動画像データを前記表示手段に表示させるようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
被検体に装着される人工弁を3次元画像化した動画再生が可能な人工弁画像データを保存する画像データ記憶手段と、
前記画像データ記憶手段から前記人工弁画像データを読み出し、読み出した前記人工弁画像データを、前記被検体の心臓の領域への超音波の走査により生成された3次元画像データと合成して前記心臓の活動に伴い発生する生体信号に同期して動画再生させるための合成画像データを生成する画像データ処理手段と、
前記合成画像データの動画を表示する表示手段とを
備えたことを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−234863(P2011−234863A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108393(P2010−108393)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】