説明

超音波診断装置

【課題】本発明は、超音波画像における有用な信号成分の欠落を抑制しつつ、サイドローブによるアーチフェクトを低減し、より高画質な超音波画像を形成し得る超音波診断装置を提供する。
【解決手段】本発明の超音波診断装置Sは、複数の圧電素子によって、所定方向にメインビームを形成した送信ビームの第1超音波信号を被検体内に送信するための送信信号を生成する送信部12と、所定方向に受信感度を持たせて、複数の圧電素子で受信された被検体内から来た第2超音波信号に基づいて第1受信信号を生成する第1受信部131と、所定方向の受信感度を無くして、複数の圧電素子で受信された被検体内から来た第2超音波信号に基づいて第2受信信号を生成する第2受信部132と、第1受信信号を第2受信信号に基づいて補正しつつ、第1受信信号に基づいて超音波画像を形成する画像処理部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、フェイズドアレイ型探触子におけるビームステアリングによる断層検査を行う超音波診断装置において、サイドローブによるアーチフェクトの影響を低減してより診断性の高い超音波画像を形成することができる超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は、通常、16000Hz以上の音波をいい、非破壊、無害および略リアルタイムでその内部を調べることが可能なことから、欠陥の検査や疾患の診断等の様々な分野に応用されている。その一つに、被検体内を超音波で走査し、被検体内から来た超音波の反射波(エコー)から生成した受信信号に基づいて当該被検体内の内部状態を画像化する超音波診断装置がある。この超音波診断装置は、医療用では、他の医療用画像装置に較べて小型で安価であり、そしてX線等の放射線被爆が無く安全性が高いこと、また、ドップラ効果を応用した血流表示が可能であること等の様々な特長を有している。このため、超音波診断装置は、循環器系(例えば心臓の冠動脈等)、消化器系(例えば胃腸等)、内科系(例えば肝臓、膵臓および脾臓等)、泌尿器系(例えば腎臓および膀胱等)および産婦人科系等で広く利用されている。
【0003】
この超音波診断装置には、被検体に対して超音波(超音波信号)を送受信する超音波探触子が用いられている。この超音波探触子は、圧電現象を利用することによって、送信の電気信号に基づいて機械振動して超音波を発生し、被検体内部で音響インピーダンスの不整合によって生じる超音波の反射波を受けて受信の電気信号を生成する複数の圧電素子を備えて構成されている。このような複数の圧電素子を備えるアレイ型超音波探触子で超音波を送受信する超音波診断装置では、超音波信号として所定の方向(方位)に音圧レベルの高い超音波ビームを形成すると、その構造等からメインローブの側方に1または複数のサイドローブが形成され、このサイドローブによる不要輻射の検出によってアーチフェクトが生じてしまい、超音波画像の画質が低下してしまう。
【0004】
このため、例えば、特許文献1に開示の超音波診断装置は、超音波の送受波により得られる受信信号に基づいて超音波画像を形成する超音波診断装置であって、所望方位に主ビームを向けつつ第1ビームパターンを形成し、第1受信信号を取得する手段と、前記第1ビームパターンに含まれるサイドローブの方向に主ビームを向けつつ第2ビームパターンを形成し、第2受信信号を取得する手段と、前記第1受信信号から前記第2受信信号を減算するサイドローブ低減手段と、を含み、前記第1ビームパターンの特定サイドローブと前記第2ビームパターンの主ビームの仮想的な重ね合わせによる相殺を利用して特定サイドローブを低減する超音波診断装置である。そして、第1受信信号は、複数の振動素子からの複数の受信信号が入力され、これら各受信信号の整相加算によって第1ビームパターンを形成する第1整相加算手段によって生成され、第2受信信号は、前記複数の振動素子からの複数の受信信号が入力され、これら各受信信号の整相加算によって第2ビームパターンを形成する第2整相加算手段によって生成される。この構成によれば、第1ビームパターンを形成して第1受信信号を取得するだけでなく、第1ビームパターンに含まれる特定サイドローブの方向に主ビームを向けつつ第2ビームパターンを形成して第2受信信号を取得することによって、ビームパターンに含まれるサイドローブ(不要輻射)を低減することができる。
【0005】
また、例えば、特許文献2に開示の超音波診断装置は、メインビームの方位が互いに一致しかつサイドローブパターンが互いに異なる複数の超音波ビームを形成するビーム形成手段と、前記複数の超音波ビームの形成によって得られる複数の受信信号の相互比較に基づいてサイドローブ成分を抽出する成分抽出手段と、前記複数の受信信号の少なくとも1つに対し、前記サイドローブ成分に従ってサイドローブ除外演算を実行する補正手段と、前記サイドローブ除外演算後の受信信号に基づいて超音波画像を形成する画像形成手段とを含む。この構成によれば、前記複数の超音波ビームの形成によって得られる複数の受信信号の相互比較に基づいてサイドローブ成分を抽出し、信号補正を行うことで、超音波画像の画質を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−127634号公報
【特許文献2】特開2002−272735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1や特許文献2に開示の超音波診断装置では、その手法から超音波診断画像において有用な信号成分までもサイドローブとして除去されてしまう可能性があった。
【0008】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、超音波画像におけるサイドローブによるアーチフェクトを低減し、より高画質な超音波画像を形成することができる超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる超音波診断装置は、圧電材料を備えて成り、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波信号との間で相互に信号を変換することができる複数の圧電素子と、前記複数の圧電素子によって、所定方向にメインビームを形成した送信ビームの第1超音波信号を被検体内に送信するための送信信号を生成する送信部と、前記所定方向に受信感度を持たせて、前記複数の圧電素子で受信された被検体内から来た第2超音波信号に基づいて第1受信信号を生成する第1受信部と、前記所定方向の受信感度を無くして、前記複数の圧電素子で受信された被検体内から来た前記第2超音波信号に基づいて第2受信信号を生成する第2受信部と、前記第1受信信号を前記第2受信信号に基づいて補正しつつ、前記第1受信信号に基づいて超音波画像を形成する画像処理部とを備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成の超音波診断装置では、送信ビームの所定方向に受信感度を持たせて、複数の圧電素子で受信された被検体内から来た第2超音波信号に基づいて第1受信信号が生成され、送信ビームの所定方向に受信感度を無くして、複数の圧電素子で受信された被検体内から来た第2超音波信号に基づいて第2受信信号が生成され、そして、第1受信信号を第2受信信号に基づいて補正しつつ、第1受信信号に基づいて超音波画像が形成される。このため、このような構成の超音波診断装置は、超音波画像において問題となる、アーチフェクトを引き起こすサイドローブによって受信される信号を第2受信信号によって略確定させることにより、アーチフェクトの除去あるいは緩和を可能とし、より信頼性の高い超音波画像を形成することができる。
【0011】
また、上述の超音波診断装置において、前記複数の圧電素子は、複数の圧電素子を含む第1および第2素子部を備え、前記第1素子部は、前記第1超音波信号の送信および前記第1受信信号の生成のために使用され、前記第2素子部は、前記第2受信信号の生成のために使用されることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、第1素子部によって第1超音波信号が送信されるとともに、第1素子部の出力信号から第1受信信号が生成され、第2素子部の出力信号から第2受信信号が生成される。このため、1つの第1超音波信号の送信ビームで第1受信信号と第2受信信号とが得られるので、1つの受信信号を得るために2つの第1超音波信号を送信する(2度打ちする)必要がなく、フレームレートの高い超音波画像を形成することが可能となる。
【0013】
また、上述の超音波診断装置において、前記第1および第2素子部は、外部に対し前記超音波信号の放射および入射する面から、前記第2素子部、前記第1素子部の順で前記超音波信号の放入射方向に積層されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、第2素子部では、第1素子部を介することなく、被検体内から来た第2超音波信号を受信することができるので、比較的音圧レベルの低い、超音波画像にとってアーチフェクト(ノイズ)となる第2受信信号のピークをより精度良く受信することが可能となる。
【0015】
また、これら上述の超音波診断装置において、前記複数の圧電素子は、複数の圧電素子を含む複数のグループにグループ分けされており、前記第1および第2受信部は、それぞれ、前記グループごとに前記第1および第2受信信号を生成することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、信号処理がグループごとに実行されるので、信号処理を比較的単純化することができる。このため、比較的小規模な処理回路によって前記信号処理が可能となり、また、高フレームレートを実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる超音波診断装置は、サイドローブによるアーチフェクトを低減し、より高画質な超音波画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態における超音波診断装置の外観構成を示す図である。
【図2】実施形態の超音波診断装置における超音波探触子の構成を示す図である。
【図3】実施形態における超音波診断装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】素子数が8個で周波数が4MHzで素子ピッチが100μmである場合におけるヌル方向を1つ持つビームの音圧分布を示す図である。
【図5】素子数が8個で周波数が4MHzで素子ピッチが1μmである場合におけるヌル方向を1つ持つビームの音圧分布を示す図である。
【図6】素子数が8個で周波数が12MHzで素子ピッチが1μmである場合におけるヌル方向を1つ持つビームの音圧分布を示す図である。
【図7】所定方向が0度である場合における第1受信信号の受信ビームと第2受信信号の受信ビームとの関係を示す図である。
【図8】所定方向が30度である場合における第1受信信号の受信ビームと第2受信信号の受信ビームとの関係を示す図である。
【図9】所定方向が60度である場合における第1受信信号の受信ビームと第2受信信号の受信ビームとの関係を示す図である。
【図10】第1受信信号を第2受信信号に基づいて補正する補正処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。
【0020】
図1は、実施形態における超音波診断装置の外観構成を示す図である。図2は、実施形態の超音波診断装置における超音波探触子の構成を示す図である。図3は、実施形態における超音波診断装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【0021】
超音波診断装置Sは、図1および図3に示すように、図略の生体等の被検体に対して超音波(第1超音波信号)を送信すると共に、この第1超音波信号に起因して被検体内から来た例えば反射波(エコー波)等の超音波(第2超音波信号)を受信する超音波探触子2と、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2へケーブル3を介して電気信号の送信信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して第1超音波信号を送信させると共に、超音波探触子2で受信された被検体内から来た第2超音波信号に応じて超音波探触子2で生成された電気信号の受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する超音波診断装置本体1とを備えて構成される。
【0022】
超音波探触子(超音波プローブ)2は、被検体内に第1超音波信号を送信しこの第1超音波信号に基づく被検体内から来た第2超音波信号を受信する装置である。超音波探触子2は、例えば、図2に示すように、平板状の音響制動部材(音響吸収部材、バッキング層、ダンパ層)21と、この音響制動部材21の一方主面上に積層された圧電部22と、この圧電部22上に積層された音響整合層23と、この音響整合層23上に積層された音響レンズ24とを備えて構成される。
【0023】
音響制動部材21は、圧電部22を機械的に支持し、また、圧電部22の音響特性を良好に保つべく音響的に制動をかけるものであり、超音波を吸収する材料(超音波吸収材)から構成され、主に、圧電部22から音響制動部材21方向へ放射される超音波を吸収するものである。圧電部22は、圧電材料を備えて成り、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波信号との間で相互に信号を変換することができる複数の圧電素子を備えて構成される。これら複数の圧電素子は、例えば、本実施形態では、直線的に配列され、1次元リニアアレイ型超音波振動子を構成している。圧電部22は、超音波診断装置本体1の送信部12からケーブル3を介して入力された送信信号を超音波信号へ変換してこの超音波信号を被検体へ第1超音波信号として送信すると共に、受信した第2超音波信号を電気信号へ変換してこの電気信号(受信信号)をケーブル3を介して超音波診断装置本体1の受信部13へ出力する。超音波探触子2が被検体に当てられることによって、圧電部22で生成された超音波信号が第1超音波信号として被検体内へ送信され、被検体内からの第2超音波信号が圧電部22で受信される。音響整合層23は、圧電部22の音響インピーダンスと被検体の音響インピーダンスとの整合をとる部材である。そして、音響レンズ24は、圧電部22から被検体に向けて送信される第1超音波信号を収束する部材であり、例えば、図2に示すように、円弧状に膨出した形状とされている。なお、音響整合層23と音響レンズ24とは、一体で構成されてもよい。
【0024】
超音波診断装置本体1は、例えば、図3に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像処理部14と、表示部15と、制御部16とを備えて構成されている。
【0025】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータを入力するものであり、例えば、複数の入力スイッチを備えた操作パネルやキーボード等である。
【0026】
送信部12は、制御部16の制御に従って、超音波探触子2の圧電部22における前記複数の圧電素子によって、所定方向(所定方位)にメインビーム(主ビーム)を形成した送信ビームの第1超音波信号を被検体内に送信するための送信信号を生成する回路である。送信信号は、前記複数の圧電素子のそれぞれに対し適宜に遅延時間を個別に設定した、パルス状の複数の駆動信号を備えて構成される。このような複数の駆動信号が前記複数の圧電素子に供給されると、各圧電素子から放射された超音波の位相が特定方向(特定方位)(あるいは、特定の送信フォーカス点)において一致し、その特定方向にメインビームが形成される。また、一般的に、メインビームの特定方向以外の方向にも超音波が放射され、これがサイドローブとなる。前記所定方向は、圧電部22における超音波信号の送受信面の法線方向を基準(0度)とした角度によって表される。このような電子走査方式には、リニア走査方式、セクタ走査方式およびコンベックス方式等があり、本実施形態の超音波診断装置Sでは、これらリニア走査方式、セクタ走査方式およびコンベックス方式が採用可能である。送信部12は、例えば、高電圧のパルスを生成する高圧パルス発生器と、送信ビームを形成すべく、高圧パルス発生器で生成されるパスルに遅延回路で前記遅延時間を付与することによって前記駆動信号を生成する送信ビームフォーマ等を備えて構成される。送信部12で生成された送信信号の複数の駆動信号は、ケーブル3を介して超音波探触子2の圧電部22における前記複数の圧電素子のそれぞれに供給され、この送信信号の複数の駆動信号によって超音波探触子2は、所定方向にメインビームを形成した送信ビームの第1超音波信号を発生する。
【0027】
受信部13は、制御部16の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して受信信号を受信する回路であり、この受信信号を画像処理部14へ出力する。受信部13は、送信ビームにおける前記所定方向に受信感度を持たせて、超音波探触子2の圧電部22における前記複数の圧電素子で受信された被検体内から来た第2超音波信号に基づいて第1受信信号を生成する第1受信部131と、前記所定方向の受信感度を無くして、前記複数の圧電素子で受信された被検体内から来た前記第2超音波信号に基づいて第2受信信号を生成する第2受信部132とを備えている。送信時の送信ビームの形成と同様に、受信時もいわゆる整相加算することによって受信ビームが形成される。すなわち、超音波探触子2の圧電部22における前記複数の圧電素子のそれぞれから出力される複数の出力信号に対し適宜に遅延時間を個別に設定し、これら遅延された複数の出力信号を加算することによって、各出力信号の位相が特定方向(特定方位)(あるいは、特定の受信フォーカス点)において一致し、その特定方向にメインビームが形成され、そのメインビームの側方にサイドローブが生じる。受信部13は、例えば、ケーブル3の伝送損失(伝送ロス)を補償すべく、各出力信号を予め設定された所定の増幅率で増幅する増幅回路、前記増幅回路で増幅された各出力信号が入力される第1受信部131としての第1受信ビームフォーマ、および、前記増幅回路で増幅された各出力信号が入力される第2受信部132としての第2受信ビームフォーマ等を備えて構成される。前記第1受信ビームフォーマは、送信ビームにおける前記所定方向に受信感度を持たせるように、遅延回路で前記遅延時間を設定してこれら遅延した各出力信号を加算することによって、前記第1受信信号を生成する回路であり、そして、前記第2受信ビームフォーマは、送信ビームにおける前記所定方向の受信感度を無くすように、遅延回路で前記遅延時間を設定してこれら遅延した各出力信号を加算することによって、前記第2受信信号を生成する回路である。
【0028】
画像処理部14は、制御部16の制御に従って、受信部13で受信処理した第1および第2受信信号に基づいて被検体内の内部状態を表す画像(超音波画像)を形成する回路である。画像処理部14は、第1受信信号を第2受信信号に基づいて補正しつつ、第1受信信号に基づいて超音波画像を形成する。前記補正は、例えば、本実施形態では、第1受信信号と第2受信信号との差を求めることによって実行される。画像処理部14は、例えば、受信部13で受信処理した第1および第2受信信号に基づいて被検体の超音波画像を生成するDSP(Digital Signal Processor)、および、表示部15に超音波画像を表示すべく、前記DSPで処理された信号をディジタル信号からアナログ信号へ変換するディジタル−アナログ変換回路(DAC回路)等を備えて構成される。前記DSPは、例えば、Bモード処理回路、ドプラ処理回路およびカラーモード処理回路等を備え、いわゆるBモード画像、ドプラ画像およびカラーモード画像の生成が可能とされている。
【0029】
表示部15は、制御部16の制御に従って、画像処理部14で生成された被検体の超音波画像を表示する装置である。表示部15は、例えば、CRTディスプレイ、LCD(液晶ディスプレイ)、有機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。制御部16は、例えば、マイクロプロセッサ、記憶素子およびその周辺回路等を備えて構成され、これら超音波探触子2、操作入力部11、送信部12、受信部13、画像処理部14および表示部15を当該機能に応じてそれぞれ制御することによって超音波診断装置Sの全体制御を行う回路である。
【0030】
上述の構成の超音波診断装置Sでは、例えば、操作入力部11から診断開始の指示が入力されると、制御部16の制御によって送信部12で送信信号が生成される。この生成された送信信号は、ケーブル3を介して超音波探触子2へ供給される。この送信信号は、上述したように、超音波探触子2の圧電部22における前記複数の圧電素子のそれぞれに対し適宜に遅延時間を個別に設定したパルス状の複数の駆動信号であり、各駆動信号は、メインビーム方向(メインビーム方位)を変えて被検体を走査すべく繰り返し生成される。この複数の駆動信号を備える送信信号が供給されることによって前記複数の圧電素子のそれぞれがその厚み方向に伸縮し、この送信信号に応じて超音波振動し、この超音波振動によって、前記複数の圧電素子は、音響整合層23および音響レンズ24を介して、所定方向にメインビームを形成した送信ビームの第1超音波信号を放射する。超音波探触子2が被検体に例えば当接されていると、これによって超音波探触子2から被検体に対して第1超音波信号が送信される。
【0031】
なお、超音波探触子2は、被検体の表面上に当接して用いられてもよいし、被検体の内部に挿入して、例えば、生体の体腔内に挿入して用いられてもよい。
【0032】
この被検体に対して送信された第1超音波信号は、被検体内部における音響インピーダンスが異なる1または複数の境界面で反射され、あるいは超音波造影剤に作用し、第2超音波信号となる。この第2超音波信号には、送信された第1超音波信号の周波数(基本波の基本周波数)成分だけでなく、基本周波数の整数倍の高調波の周波数成分も含まれる。例えば、基本周波数の2倍、3倍および4倍等の第2次高調波成分、第3次高調波成分および第4次高調波成分等も含まれる。この第2超音波信号は、超音波探触子2で受信される。より具体的には、この第2超音波信号は、音響レンズ24および音響整合層23を介して圧電部22の前記複数の圧電素子でそれぞれ受信され、各圧電素子で機械的な振動が電気信号に変換されて出力信号として取り出される。この取り出された出力信号は、超音波探触子2からケーブル3を介して超音波診断装置本体1の受信部13で受信される。受信部13は、この入力された各圧電素子からの出力信号を信号処理し、第1および第2受信信号を生成し、これら第1および第2受信信号を画像処理部14へ出力する。
【0033】
ここで、受信部13の第1受信部131は、送信ビームにおける所定方向に受信感度を持たせるように、遅延回路で前記遅延時間を付与してこれら遅延した各出力信号を加算することによって、第1受信信号を生成し、そして、第2受信部132は、送信ビームにおける前記所定方向の受信感度を無くすように、遅延回路で前記遅延時間を付与してこれら遅延した各出力信号を加算することによって、第2受信信号を生成する。
【0034】
この第1および第2受信信号についてより具体的に説明する。まず、アレイ型超音波振動子において、任意の所定の方向における感度を無くす手法について説明する。なお、この感度の無い方向を「ヌル」と呼称することとする。アレイ型超音波振動子における指向性は、アレイファクタAF(θ)と呼ばれ、複数N個の振動子(圧電素子)を直線的に一次元配列したリニアアレイ型超音波振動子の場合では、式1によって表される。第1受信信号は、この式1に従って生成すればよい。
【0035】
【数1】

【0036】
ここで、kは、自由空間における波数であり、波長をλとすると、k=2×π/λである。nは、複数N個の各素子に一方端から他方端へ順次に割り付けられた素子番号であり(n=1、2、・・・、N)、aは、素子番号nの素子における重み付け係数である。そして、dは、素子間隔であり、θは、方向である。なお、jは、虚数単位である。
【0037】
一方、任意の所定の方向θの感度を無くすためには、式1より、AF(θ)=0となるように、各素子nの重み付け係数aを設定すればよい。AF(θ)=0となる各素子nの重み付け係数aを求める手法として、例えば、シェルクノフの多項式と呼ばれる解法がある。
【0038】
この解法では、まず、zを式2のように定義すると、式1は、式3になる。
【0039】
【数2】

【0040】
【数3】

【0041】
ここで、式3が式4のように因数分解できると設定されると、それぞれのzは、AF(θ)=AF(z)=0を与える値である。
【0042】
【数4】

【0043】
そして、ヌル方向がzの1個だけであるとすると、式4は、式5となり、この式5を展開すると、式6となる。
【0044】
【数5】

【0045】
【数6】

【0046】
したがって、式3および式6から、θ方向の感度を無くするためには、各素子nの重み付け係数が式7のように設定されればよい。
【0047】
【数7】

【0048】
なお、ヌル方向が複数である場合も上述と同様である。
【0049】
図4は、素子数が8個で周波数が4MHzで素子ピッチが100μmである場合におけるヌル方向を1つ持つビームの音圧分布を示す図である。図4(A)は、素子配置と音圧分布との関係を示し、図4(B)は、ヌル方向が0度である場合を示し、図4(C)は、ヌル方向が30度である場合を示し、そして、図4(D)は、ヌル方向が60度である場合を示す。図4における周方向は、度単位で表す方位であり、その径方向は、音圧レベルである。後述の図5および図6も同様である。なお、音速は、以下も同様に、1440m/sとされた。
【0050】
図4から分かるように、8個の圧電素子が直線的に配列され、8個の圧電素子によって形成される超音波の送受信面の法線方向を基準(0度)とした場合に、各素子n(N=1〜8)の重み付け係数を上記式7のように設定することによって、ヌル方向を任意の角度、例えば0度(図4(B))、30度(図4(C))および60度(図4(D))に設定したビームを形成することが可能となる。
【0051】
また、素子数が8個で周波数が4MHzで素子ピッチが1μmである場合におけるヌル方向を1つ持つビームの音圧分布を図5に示し、また、素子数が8個で周波数が12MHzで素子ピッチが1μmである場合におけるヌル方向を1つ持つビームの音圧分布を図6に示す。図5および図6において、(A)は、ヌル方向が0度である場合を示し、(B)は、ヌル方向が30度である場合を示し、そして、(C)は、ヌル方向が60度である場合を示す。図5および図6から分かるように、複数の圧電素子における設計が上記設計である場合でも、各素子n(N=1〜8)の重み付け係数を上記式7のように設定することによって、ヌル方向を任意の角度、例えば0度(図5(A)、図6(A))、30度(図5(B)、図6(B))および60度(図5(C)、図6(C))に設定したビームを形成することが可能となる。
【0052】
図7ないし図9は、第1受信信号の受信ビームと第2受信信号の受信ビームとの関係を示す図である。図7ないし図9における周方向は、度単位で表す方位であり、その径方向は、音圧レベルである。図7は、第1受信信号の受信ビームR1におけるメインビーム方向が0度であって、第2受信信号の受信ビームR2におけるヌル方向が0度である場合の音圧分布を示す図であり、図8は、第1受信信号の受信ビームR1におけるメインビーム方向が30度であって、第2受信信号の受信ビームR2におけるヌル方向が30度である場合の音圧分布を示す図であり、そして、図9は、第1受信信号の受信ビームR1におけるメインビーム方向が60度であって、第2受信信号の受信ビームR2におけるヌル方向が60度である場合の音圧分布を示す図である。
【0053】
また、超音波画像を形成するために、第1超音波信号の送信ビームは、そのメインビーム方向が所定範囲、例えば0±60度の範囲で走査(ビームステアリング)されるが、第1受信部131によって、それに応じて送信ビームにおけるメインビーム方向に受信感度を持たせるように第1受信信号が生成され、そして、第2受信部132によって、送信ビームにおけるメインビーム方向の受信感度を無くすように第2受信信号が生成される。すなわち、第1受信部131は、第1受信信号として、第1超音波信号の送信ビームと略同一(同じ方向で同じフォーカス)の受信ビームR1を形成し、第2受信部132は、第2受信信号として、第1超音波信号の送信ビームにおけるメインビーム方向と同じ方向に感度を有しない受信ビームR2を形成する。
【0054】
例えば、第1超音波信号の送信ビームにおけるメインビーム方向が0度である場合には、図7に示すように、第1受信部131は、超音波探触子2の圧電部22における前記複数の圧電素子からの各出力信号のそれぞれに個別の遅延時間を付与してから加算することによって、メインビーム方向が0度である第1受信信号の受信ビームR1を生成し、そして、第2受信部132は、上記式7に従って、超音波探触子2の圧電部22における前記複数の圧電素子からの各出力信号のそれぞれに個別の遅延時間を付与してから加算することによって、ヌル方向が0度である第2受信信号の受信ビームR2を生成する。
【0055】
また例えば、第1超音波信号の送信ビームにおけるメインビーム方向が30度である場合には、図8に示すように、第1受信部131は、超音波探触子2の圧電部22における前記複数の圧電素子からの各出力信号のそれぞれに個別の遅延時間を付与してから加算することによって、メインビーム方向が30度である第1受信信号の受信ビームR1を生成し、そして、第2受信部132は、上記式7に従って、超音波探触子2の圧電部22における前記複数の圧電素子からの各出力信号のそれぞれに個別の遅延時間を付与してから加算することによって、ヌル方向が30度である第2受信信号の受信ビームR2を生成する。
【0056】
また例えば、第1超音波信号の送信ビームにおけるメインビーム方向が60度である場合には、図9に示すように、第1受信部131は、超音波探触子2の圧電部22における前記複数の圧電素子からの各出力信号のそれぞれに個別の遅延時間を付与してから加算することによって、メインビーム方向が60度である第1受信信号の受信ビームR1を生成し、そして、第2受信部132は、上記式7に従って、超音波探触子2の圧電部22における前記複数の圧電素子からの各出力信号のそれぞれに個別の遅延時間を付与してから加算することによって、ヌル方向が60度である第2受信信号の受信ビームR2を生成する。
【0057】
なお、各素子nの重み付け係数は、第2受信信号の受信ビームを生成する際に第2受信部132によって式7に従って逐次算出されてもよいが、角度ごとに予め式7に従って算出し、角度とその角度における各素子nの重み付け係数との対応関係を示すルックアップテーブルを作成し、このルックアップテーブルを第2受信部132に記憶するように構成することによって、第2受信信号の受信ビームを生成する際にこのルックアップテーブルを参照することによって、第2受信部132によって各素子nの重み付け係数が取り出されてもよい。このように構成することによって受信部13の演算処理負荷を軽減することができる。このため、比較的小規模な処理回路によって前記演算処理が可能となり、また、高フレームレートを実現することが可能となる。
【0058】
そして、画像処理部14は、制御部16の制御によって、受信部13で受信した第1受信信号を第2受信信号に基づいて補正しつつ、第1受信信号に基づいて、送信から受信までの時間や受信強度等から被検体の超音波画像を形成する。
【0059】
図10は、第1受信信号を第2受信信号に基づいて補正する補正処理を説明するための図である。図10(A)は、第1および第2受信信号を示し、図10(B)は、第1受信信号と第2受信信号とを個別に示す。図10(B)の上側が第1受信信号であり、下側が第2受信信号である。また、図10の横軸は、度単位で表す方位であり、その縦軸は、信号レベル(受信音圧レベル)である。
【0060】
第2受信信号は、上述したように、第1超音波信号の送信ビームにおけるメインビーム方向と同じ方向に感度を有していないため、第2受信信号のピークは、図10(B)に示すように、超音波画像にとってアーチフェクト(ノイズ)となる。したがって、第1受信信号と第2受信信号との差分を求めることによって、超音波画像における有用な信号成分の欠落を抑制しつつ、第1受信信号からアーチフェクトを低減することができ、第1受信信号を第2受信信号で補正することができる。そして、このような補正を行った第1受信信号に基づいて超音波画像を形成することによって、より高画質な超音波画像が得られる。
【0061】
そして、表示部15は、制御部16の制御によって、画像処理部14で生成された被検体の超音波画像を表示する。
【0062】
このように本実施形態の超音波診断装置Sでは、第1受信部131によって、送信ビームのメインビーム方向に受信感度を持たせて、前記複数の圧電素子で受信された第2超音波信号に基づいて第1受信信号が生成され、第2受信部132によって、送信ビームのメインビーム方向に受信感度を無くして、前記複数の圧電素子で受信された第2超音波信号に基づいて第2受信信号が生成され、そして、画像処理部14によって、第1受信信号を第2受信信号に基づいて補正しつつ、第1受信信号に基づいて超音波画像が形成される。このため、本実施形態の超音波診断装置Sは、超音波画像における有用な信号成分の欠落を抑制しつつ、サイドローブによるアーチフェクトを低減し、より高画質な超音波画像を形成することができる。
【0063】
また、近年、医療分野では、超音波診断装置は、その低価格化に伴ってその普及が促進され、いわゆる大病院だけでなく、開業医にも導入されつつある。このため、大病院のように熟練者が超音波診断装置の操作や画像出力を行って医師が診断するというワークフロではなく、操作に不慣れな医師も超音波診断装置を使用するケースが増加しつつある。本実施形態の超音波診断装置Sは、上述のように、装置S自体がアーチフェクトを低減するので、このような超音波診断装置の操作に不慣れな医師であっても、より高画質な超音波画像を超音波診断装置Sによって得ることが可能となる。
【0064】
なお、上述の実施形態において、超音波探触子2は、互いに所定の間隔を空けて平面視にて線形独立な2方向に、例えば、互いに直交する2方向にm行×n列で2次元アレイ状に配列されて構成される2次元アレイ型圧電素子を備えて構成されてもよい(m、nは、正の整数である)。
【0065】
また、上述の実施形態において、受信感度を向上すべく、超音波探触子2の圧電部22における前記複数の圧電素子から出力された出力信号と参照信号との相関処理を行うように、受信部13が構成されてもよい。この参照信号は、第1超音波信号に基づいて生じる第2超音波信号の予測波形(想定波形)であり、第1超音波信号の波形に応じて適宜に設定され、簡易には第1超音波信号の波形が用いられる。この参照信号は、例えば、予めテンプレートとして用意され、受信部13に記憶される。
【0066】
また、上述の実施形態において、超音波探触子2の圧電部22における前記複数の圧電素子は、複数の圧電素子を含む第1および第2素子部を備え、前記第1素子部は、第1超音波信号の送信および第1受信信号の生成のために使用され、前記第2素子部は、第2受信信号の生成のために使用されるように、構成されてもよい。
【0067】
このように構成することによって、第1素子部によって第1超音波信号が送信されるとともに、第1素子部の出力信号から第1受信信号が生成され、第2素子部の出力信号から第2受信信号が生成される。このため、1つの第1超音波信号の送信ビームで第1受信信号と第2受信信号とが得られるので、1つの受信信号を得るために2つの第1超音波信号を送信する(2度打ちする)必要がなく、フレームレートの高い超音波画像を形成することが可能となる。
【0068】
また、上述の場合において、前記第1および第2素子部のそれぞれは、無機圧電材料を備えて成り、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波信号との間で相互に信号を変換することができる複数の無機圧電素子を備えて構成されてもよい。複数の無機圧電素子のそれぞれは、無機圧電材料から成る所定の厚さの圧電体における両面に一対の電極を備えて構成される。この圧電体の厚さは、例えば、送信すべき超音波の周波数や無機圧電材料の種類等によって適宜に設定される。無機圧電材料は、例えば、いわゆるPZT、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、ニオブ酸タンタル酸カリウム(K(Ta,Nb)O)、チタン酸バリウム(BaTiO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO)等である。複数の無機圧電素子のそれぞれは、送信信号が入力されると、圧電現象を利用することによってこの入力された送信信号を超音波信号に変換してこの超音波信号を出力するとともに、超音波信号が入力されると、圧電現象を利用することによってこの入力された超音波信号を電気信号に変換してこの電気信号を出力信号として出力する。
【0069】
前記第1および第2素子部のうちのいずれか一方は、有機圧電材料を備えて成り、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波信号との間で相互に信号を変換することができる複数の有機圧電素子を備えて構成されてもよいが、上述の構成では、前記第1および第2素子部のそれぞれは、複数の無機圧電素子を備えているので、前記第1および第2素子部が有機−無機の組み合わせである場合に較べて、振動子の特性が互いに近くなり、例えば第1および第2素子部の設計の容易化や製造工程の簡単化等のメリットがある。
【0070】
また、上述の場合において、前記第1および第2素子部は、超音波信号の放入射方向に対し水平的に並べて配置されてもよいが、図3に示すように、前記第1および第2素子部221、223は、外部に対し前記超音波信号の放射および入射する面(図3に示す例では音響レンズ24の超音波信号の放入射面)から、前記第2素子部223、前記第1素子部221の順で前記超音波信号の放入射方向に積層されるように構成されてもよい。また、第1素子部221および第2素子部223は、直接的に積層されるように構成されてもよいが、図3に示す例では、中間層222を介して間接的に互いに積層されている。この中間層222は、第1素子部221と第2素子223とを積層するための部材であり、第1素子部221と第2素子223との音響インピーダンスを整合させるものである。
【0071】
このように構成することによって、第2素子部223では、第1素子部221を介することなく、被検体内から来た第2超音波信号を受信することができるので、比較的音圧レベルの低い、超音波画像にとってアーチフェクト(ノイズ)となる第2受信信号のピークをより精度良く受信することが可能となる。また、第1および第2受信信号波を第1超音波信号の高調波とした場合には、第2素子部223で受信する受信ビームの形状を第1超音波信号の高調波に好適なものとするために、第2素子部223を構成する複数の圧電素子の配列ピッチを、第1素子部221を構成する複数の圧電素子の配列ピッチとは、異なったものとすることができ、好ましい。
【0072】
また、上述の実施形態において、超音波探触子2の圧電部22における前記複数の圧電素子は、複数の圧電素子を含む複数のグループにグループ分けされており、第1および第2受信部131、132は、それぞれ、グループごとに第1および第2受信信号を生成するように構成されてもよい。このように構成することによって、信号処理がグループごとに実行されるので、信号処理を比較的単純化することができる。このため、比較的小規模な処理回路によって前記信号処理が可能となり、受信部13をこのような比較的小規模な処理回路によって構成可能となる。あるいは、受信部13の信号処理時間が短縮され、高フレームレートを実現することが可能となる。
【0073】
また、上述の実施形態において、より高精度の超音波画像を得る観点から、超音波診断装置Sは、ハーモニックイメージング(Harmonic Imaging)技術によって超音波画像を形成するように構成されてもよい。このハーモニックイメージング技術には、例えば、特開2001−286472号公報等に開示されているように、大別すると、フィルタ法と位相反転法(パルスインバージョン法)との2つの方法がある。このフィルタ法は、高調波検出フィルタによって基本波成分と高調波成分とを分離し、高調波成分だけを抽出し、この高調波成分から超音波画像を生成する方法である。また、この位相反転法は、同一方向に続けて互いに位相が反転している第Aおよび第B送信信号を送信し、これら第Aおよび第B送信信号に対応する第Aおよび第B受信信号を加算することによって高調波成分を抽出し、この高調波成分から超音波画像を生成する方法である。第Aおよび第B受信信号における基本波成分は、位相が反転しているが、高調波の例えば第2次高調波成分は、同相となるため、第Aおよび第B受信信号を加算することによってこの第2次高調波成分が抽出される。この超音波画像形成では、画像処理部14は、ハーモニックイメージング技術によって、受信部13で受信した第1および第2受信信号に基づいて被検体の超音波画像を生成するように構成される。例えば、画像処理部14では、フィルタ法によって受信信号から高調波成分が抽出され、この抽出された高調波成分に基づいてハーモニックイメージング技術を用いて被検体の超音波画像が生成される。また例えば、画像処理部14では、位相反転法によって受信信号から高調波成分が抽出され、この抽出された高調波成分に基づいてハーモニックイメージング技術を用いて被検体の超音波画像が生成される。
【0074】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0075】
S 超音波診断装置
2 超音波探触子
12 送信部
13 受信部
14 画像処理部
131 第1受信部
132 第2受信部
221 第1素子部
223 第2素子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料を備えて成り、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波信号との間で相互に信号を変換することができる複数の圧電素子と、
前記複数の圧電素子によって、所定方向にメインビームを形成した送信ビームの第1超音波信号を被検体内に送信するための送信信号を生成する送信部と、
前記所定方向に受信感度を持たせて、前記複数の圧電素子で受信された被検体内から来た第2超音波信号に基づいて第1受信信号を生成する第1受信部と、
前記所定方向の受信感度を無くして、前記複数の圧電素子で受信された被検体内から来た前記第2超音波信号に基づいて第2受信信号を生成する第2受信部と、
前記第1受信信号を前記第2受信信号に基づいて補正しつつ、前記第1受信信号に基づいて超音波画像を形成する画像処理部とを備えること
を特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記複数の圧電素子は、複数の圧電素子を含む第1および第2素子部を備え、
前記第1素子部は、前記第1超音波信号の送信および前記第1受信信号の生成のために使用され、
前記第2素子部は、前記第2受信信号の生成のために使用されること
を特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記第1および第2素子部は、外部に対し前記超音波信号の放射および入射する面から、前記第2素子部、前記第1素子部の順で前記超音波信号の放入射方向に積層されていること
を特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記複数の圧電素子は、複数の圧電素子を含む複数のグループにグループ分けされており、
前記第1および第2受信部は、それぞれ、前記グループごとに前記第1および第2受信信号を生成すること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図10】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−158374(P2010−158374A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2229(P2009−2229)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】