説明

超音波診断装置

【課題】 精度の良い三次元の超音波画像が構成可能な超音波診断装置を提供する。
【解決手段】 データ除去処理部91が前記撮像対象を含む二次元の超音波画像を該二次元の超音波画像の撮像面に略直交する軸方向に複数得て、複数得られた二次元の超音波画像のうちの三次元画像の構成に寄与しない二次元の超音波画像を特定し、前記特定された二次元の超音波画像を除去し、時相演算処理部92がデータ除去処理部91に除去されなかった二次元の超音波画像を用いて前記撮像対象の運動の時相を演算し、ボリュームデータ構成処理部93が時相演算処理部92に演算された運動の同時相での前記撮像対象の二次元の超音波画像を用いて三次元の超音波画像を構成し、ボリュームレンダリング処理部94がボリュームデータ構成処理部93に構成された三次元の超音波画像にレンダリング処理を行い、該レンダリング処理を行った三次元の超音波画像をメモリ6に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間の経過と共に周期的運動している撮像対象の三次元画像を構成する機能を有する超音波診断装置に係り、特に三次元画像構成の画質向上技術に関する。
【背景技術】
【0002】
STIC(Spatio Temporal Image Correlation)法は、時間経過と共に周期的運動している例えば胎児心臓に3次元超音波画像を得る技術であり、その技術は特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-74225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1が開示する技術は、次の問題点を有しているが未だ解決に至っていない。
【0005】
(1)胎児は母体の子宮内を自由に泳動するため、胎児は成人のように撮像を受けるための姿勢を維持できない。
【0006】
(2)胎児の超音波検査は、医師、臨床検査技師や看護師を含む操作者が超音波探触子を手で持って胎児を撮像する場合が多く、超音波探触子を手で持つ超音波検査は操作者の手振れが影響する。
【0007】
これらの問題点は、胎児心臓を含む二次元の超音波画像が的確に撮像できず、結果として精度の良い三次元の超音波画像が構成できないことになる。
【0008】
本発明の目的は、精度の良い三次元の超音波画像が構成可能な超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の超音波診断装置は、被検体の撮像対象に超音波ビームを送信すると共に、該撮像対象からの反射エコー信号を受信する超音波探触子と、前記超音波探触子から前記撮像対象への超音波送信と前記撮像対象から前記超音波探触子への超音波受信とを切り替える送受信切替部と、送受信切替部を介して前記超音波探触子の駆動信号を前記超音波探触子に供給するビーム形成部と、送受信切替部を介し前記超音波探触子からの反射エコー信号を受信して信号処理する信号処理部と、信号処理部に信号処理された反射エコー信号から超音波画像データへ変換する変換部と、変換部に変換された超音波画像データを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された超音波画像データを超音波画像として表示する表示部と、表示部に前記撮像対象の超音波画像を表示するための動作条件を入力する入力部と、入力部に入力された動作条件によって送受信切替部、ビーム形成部、信号処理部、変換部、記憶部及び表示部を制御する制御部と、を備えた超音波診断装置であって、前記制御部は、前記撮像対象を含む二次元の超音波画像を該二次元の超音波画像の撮像面に略直交する軸方向に複数得て、複数得られた二次元の超音波画像のうちの三次元画像の構成に寄与しない二次元の超音波画像を特定し、前記特定された二次元の超音波画像を除去するデータ除去処理部と、データ除去処理部に除去されなかった二次元の超音波画像を用いて前記撮像対象の運動の時相を演算する時相演算処理部と、時相演算処理部に演算された運動の同時相での前記撮像対象の二次元の超音波画像を用いて三次元の超音波画像を構成するボリュームデータ構成処理部と、ボリュームデータ構成処理部に構成された三次元の超音波画像にレンダリング処理を行い、該レンダリング処理を行った三次元の超音波画像を前記記憶部に出力するレンダリング処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明では、データ除去処理部が前記撮像対象を含む二次元の超音波画像を該二次元の超音波画像の撮像面に略直交する軸方向に複数得て、複数得られた二次元の超音波画像のうちの三次元画像の構成に寄与しない二次元の超音波画像を特定し、前記特定された二次元の超音波画像を除去し、時相演算処理部がデータ除去処理部に除去されなかった二次元の超音波画像を用いて前記撮像対象の運動の時相を演算し、ボリュームデータ構成処理部が時相演算処理部に演算された運動の同時相での前記撮像対象の二次元の超音波画像を用いて三次元の超音波画像を構成し、レンダリング処理部がボリュームデータ構成処理部に構成された三次元の超音波画像にレンダリング処理を行い、該レンダリング処理を行った三次元の超音波画像を前記記憶部に出力するので、三次元の超音波画像の構成に用いる二次元の超音波画像のうちの三次元画像の構成に寄与しない二次元の超音波画像が除去されるから、精度の良い三次元の超音波画像が構成できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、精度の良い三次元の超音波画像が構成可能な超音波診断装置を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した超音波診断装置の構成を示すブロック図。
【図2】図1の制御部6の構成例を示すブロック図。
【図3】データ除去処理の原理を説明する図。
【図4】図2の制御部6の動作例を示すフローチャート。
【図5】円形度によるデータ除去処理の原理を説明する図。
【図6】撮像対象領域の平均輝度値によるデータ除去処理の原理を説明する図。
【図7】撮像対象領域の平均輝度値によるデータ除去処理の原理を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の超音波診断装置について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明を適用した超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
超音波診断装置は、超音波探触子1、送受信切替部2、ビーム形成部3、信号処理部4、変換部5、メモリ6、表示部7、入力部8及び制御部9を備えている。
【0015】
超音波探触子1は、撮像対象に超音波ビームを送信すると共に、撮像対象からの反射エコー信号を受信する。ここでは、撮像対象は母体Mの子宮内の胎児Eを例に説明する。また、超音波探触子1は、振動子素子が超音波探触子の長軸方向にmチャンネル配列される構造となった一次元超音波探触子がある。さらに、超音波探触子1は、長軸方向に加え短軸方向にもkチャンネル配列されている構造となった二次元超音波探触子がある。さらにまた、超音波探触子1は、圧電素子により振動子が形成されるもの、超音波探触子1は、cMUT(Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer:IEEE Trans. Ultrason. Ferroelect. Freq. Contr. Vol45 pp.678-690 May 1998等)と呼ばれる半導体により振動子が形成されるものがある。
【0016】
送受信切替部2は、超音波探触子1の送信/受信の機能を切り替える。また、送受信切替部2は、超音波探触子1の送信機能時には超音波探触子1にビーム形成部3からの送信信号を超音波探触子1に供給する。さらに、送受信切替部2は、超音波探触子1の送信機能時には被検体(母体M)からの反射エコー信号を受信し信号処理部4に出力する。
【0017】
ビーム形成部3は、超音波探触子1に超音波ビームを被検体へ送信させるための信号を形成する。また、ビーム形成部3は超音波探触子1の短軸方向の各振動子素子(1〜kチャンネル)に与える遅延時間を変えることにより、短軸方向にも送波や受波のビームフォーカスが可能になっている。さらに、ビーム形成部3は短軸方向の各振動子素子に与える超音波送信信号の振幅を変えることにより超音波送信信号の重み付けがされ、短軸方向の各振動子素子からの超音波受信信号の増幅度又は減衰度を変えることにより超音波受信信号の重み付けがされるようになっている。さらにまた、ビーム形成部3は短軸方向のそれぞれの振動子素子を駆動することにより、口径制御ができるようになっている。
【0018】
信号処理部4は、前記反射エコー信号を増幅しデジタル化してエコーデータとする。
変換部5は、前記エコーデータから二次元の超音波画像データへ変換する。
メモリ6は、二次元の超音波画像データ、後述の三次元の超音波画像データを記憶する。
【0019】
表示部7は、メモリ6に記憶された超音波画像を表示するもので、例えばCRTモニタあるいは液晶モニタからなる。また、表示部7は超音波画像が表示されて操作者によって診断可能な画像が表示されればよいのであって、アナログ出力、デジタル出力の何れの表示技術であっても本発明の実施に含むものとする。
【0020】
入力部8は、超音波画像データを撮像するためのパラメータなどの超音波診断装置の制御パラメータを入力する。また、入力部8はキーボード、トラックボール、マウスなどの少なくとも一つのデバイスで構成される。
【0021】
制御部9は、入力部8によって入力された超音波画像データを撮像するためのパラメータ等に基づき送受信切替部2、ビーム形成部3、信号処理部4、変換部5、メモリ6及び表示部7をそれぞれ機能させるように制御する。また、制御部9は中央演算装置を中核とする所謂コンピュータシステムで構成される。
【0022】
次に、図1の制御部6の主な構成について図2、図3を用いて説明する。
図2は図1の制御部6の構成例を示すブロック図、図3はデータ除去処理の原理を説明する図である。
【0023】
制御部9は、データ除去処理部91、時相演算処理部92、ボリュームデータ構成処理部93及びボリュームレンダリング処理部94を備える。
【0024】
データ除去処理部91は、変換部5に変換された超音波画像データについて前記撮像対象を含む二次元の超音波画像を該二次元の超音波画像の撮像面に略直交する軸方向に複数得て、複数得られた二次元の超音波画像のうちの三次元画像の構成に寄与しない二次元の超音波画像を特定し、前記特定された二次元の超音波画像を除去する。
【0025】
データ除去処理部91が行う二次元の超音波画像の削除の原理は図3を用いて説明する。
【0026】
まず、図3(A)に示すように、3次元空間に胎児心臓が配置され、胎児心臓の二次元の超音波画像を撮像する断面に沿って二次元の超音波画像I1〜I7を得る。二次元の超音波画像I1〜I7のうち、両端のI1、I7及びI6は胎児心臓の断面とならない結果となったことを想定している。
【0027】
次に、図3(B)に示すように、一方の二次元の超音波画像I1、I6及びI7は胎児心臓を横断していない画像となっているため、三次元の超音波画像の構成には寄与しないことになる。他方の二次元の超音波画像I2〜I5は胎児心臓を横断した画像となっているため、三次元の超音波画像の構成に寄与する。
【0028】
つまり、二次元の超音波画像I2〜I5が三次元の超音波画像を作成する二次元の超音波画像としてデータ保存され、二次元の超音波画像I1、I6及びI7はデータ削除される。
【0029】
ここで、二次元の超音波画像がデータ保存されるかデータ削除されるかは、予めメモリ6等に記憶される胎児心臓を模したテンプレートと比較演算する公知の画像認識技術で判定される。画像認識技術は公知でかつ最新のアルゴリズムが最も洗練された画像認識技術が用いられることとしてもよい。
【0030】
時相演算処理部92は、データ除去処理部91に除去されなかった二次元の超音波画像I2〜I5を用いて前記撮像対象の運動の時相を演算する。ここで時相を演算するとは胎児心臓を撮像した中で、心拍のR波など特徴的な波形毎に撮像した二次元の超音波画像を特定する演算である。実際には胎児の心拍は平均120-160心拍/分で、頻脈161心拍/分以上が測定の条件であるので、より高いフレームレートで撮像されるが、ここでは簡単のため二つの二次元の超音波画像I2、I4が心拍R波で得られた二次元の超音波画像とする。
【0031】
ボリュームデータ構成処理部93は、時相演算処理部92に演算された運動の同時相での前記撮像対象の二次元の超音波画像I2、I4を用いて三次元の超音波画像を構成する。
【0032】
ボリュームレンダリング処理部94は、ボリュームデータ構成処理部93に構成された三次元の超音波画像にボリュームレンダリング処理を行い、該ボリュームレンダリング処理を行った三次元の超音波画像をメモリ6に出力する。
【0033】
ボリュームレンダリング法は、3次元空間内に分布している二次元の超音波画像の画素値について不透明度を付与しながらレイキャスティング処理をし、不透明度の値を加算していくことで最終的に半透明な画像を生成する。ボリュームレンダリング法では、表示対象としている胎児心臓の表面に対応するボクセルの不透明度を大きくすることで、その対象を不透明に近く、強調して描画することが可能となる。
【0034】
また、ボリュームレンダリング法を含む3次元の超音波画像の描画をレンダリング法というが、レンダリング法は陰影モデルを用いるサーフェースレンダリング法やデプス法をなどの他の陰影づけ方法を用いてもよい。
【0035】
次に、図2の制御部6の動作について図4を用いて説明する。
図4は図2の制御部6の動作例を示すフローチャートである。
データ除去処理部91は、変換部5に変換された超音波画像データについて前記撮像対象を含む二次元の超音波画像を該二次元の超音波画像の撮像面に略直交する軸方向に複数得て、複数得られた二次元の超音波画像のうちの三次元画像の構成に寄与しない二次元の超音波画像を特定し、前記特定された二次元の超音波画像を除去する(ステップS1)。
【0036】
時相演算処理部92は、データ除去処理部91に除去されなかった二次元の超音波画像I2〜I5を用いて前記撮像対象の運動の時相の二つの二次元の超音波画像I2、I4を演算する(ステップS2)。
【0037】
ボリュームデータ構成処理部93は、時相演算処理部92に演算された運動の同時相での前記撮像対象の二次元の超音波画像I2、I4を用いて三次元の超音波画像を構成する(ステップS3)。
【0038】
ボリュームレンダリング処理部94は、ボリュームデータ構成処理部93に構成された三次元の超音波画像にボリュームレンダリング処理を行い、該ボリュームレンダリング処理を行った三次元の超音波画像をメモリ6に出力する(ステップS4)。
【0039】
以上説明した実施例1によれば、データ除去処理部91が前記撮像対象を含む二次元の超音波画像を該二次元の超音波画像の撮像面に略直交する軸方向に複数得て、複数得られた二次元の超音波画像のうちの三次元画像の構成に寄与しない二次元の超音波画像を特定し、前記特定された二次元の超音波画像を除去し、時相演算処理部92がデータ除去処理部91に除去されなかった二次元の超音波画像を用いて前記撮像対象の運動の時相を演算し、ボリュームデータ構成処理部93が時相演算処理部92に演算された運動の同時相での前記撮像対象の二次元の超音波画像を用いて三次元の超音波画像を構成し、ボリュームレンダリング処理部94がボリュームデータ構成処理部93に構成された三次元の超音波画像にレンダリング処理を行い、該レンダリング処理を行った三次元の超音波画像をメモリ6に出力するので、三次元の超音波画像の構成に用いる二次元の超音波画像のうちの三次元画像の構成に寄与しない二次元の超音波画像が除去されるから、精度の良い三次元の超音波画像が構成できる。
【0040】
また、実施例1の特別な効果は、二次元の超音波画像のデータ保存及びデータ除去を公知でかつ最新のアルゴリズムが画像認識技術を用いて判定されるため、最高速又は最高精度での二次元の超音波画像のデータ保存及びデータ除去の判定が可能となる。
【実施例2】
【0041】
実施例2では、データ除去処理部91のデータ消去の方法が二次元の超音波画像中に含まれる撮像対象の円形度に基づく場合について図面を用いて説明する。
【0042】
また、実施例2では、図1、図2で説明したハードウエア、図3のデータ保存/削除の原理、図4のフローチャートは実施例1と共通する説明であるため、これらの共通部分の説明を省略し、実施例1との相違部分であるデータ消去のアルゴリズムのみについて説明することとする。
【0043】
図5は円形度によるデータ除去処理の原理を説明する図である。
円形度は、分母が撮像対象の周囲長の二乗で得られ、分子が撮像対象の面積に4πを乗じて得られ、分子を分母で除した値で、真円であれば1となると定義される。
【0044】
一方の二次元の超音波画像I1では、図5(A)に示すように、撮像対象領域が無いため、撮像対象の面積A、周囲長Lが0である。
【0045】
故に、円形度の分母、分子は共に0となり、二次元の超音波画像I1の円形度の演算は0の除算で演算不可能となる。
【0046】
従って、円形度の演算が閾値以下(例えば0.71以下(1/√2)を胎児心臓と認識するとすれば)あるいは閾値との比較演算が不可能な場合の二次元の超音波画像をデータ除去の対象とする。
【0047】
他方の二次元の超音波画像I2では、図5(B)に示すように、撮像対象領域が有って、撮像対象の面積A=25(画素)、周囲長Lが20(画素)である。
【0048】
故に、円形度は0.78と計算され、円形度は演算可能となる。
従って、円形度が閾値以上と演算されるときには二次元の超音波画像をデータ保存の対象とする。
【0049】
以上説明した実施例2によれば、実施例1と同様に、三次元の超音波画像の構成に用いる二次元の超音波画像のうちの三次元画像の構成に寄与しない二次元の超音波画像が除去されるから、精度の良い三次元の超音波画像が構成できる。
【0050】
また、実施例2の特別な効果は、実施例1の画像認識の場合と比較して円形度の演算だけで二次元の超音波画像のうちの三次元画像の構成に寄与するあるいは寄与しないが判定が可能となるので、リアルタイム性を損なうことのない超音波診断装置を提供できる。
【実施例3】
【0051】
実施例3では、データ除去処理部91のデータ消去の方法が二次元の超音波画像中に含まれる撮像対象の領域の平均輝度値に基づく場合について図面を用いて説明する。
【0052】
また、実施例3では、図1、図2で説明したハードウエア、図3のデータ保存/削除の原理、図4のフローチャートは実施例1と共通する説明であるため、これらの共通部分の説明を省略し、実施例1との相違部分であるデータ消去のアルゴリズムのみについて説明することとする。
【0053】
図6は撮像対象領域の平均輝度値によるデータ除去処理の原理を説明する図である。
平均輝度値は、分母が撮像対象の輝度値の総和で得られ、分子が撮像対象の面積の画素数で得られ、分子を分母で除した値で定義される。
【0054】
一方の二次元の超音波画像I1では、図6(A)に示すように、撮像対象領域が無いため、撮像対象の面積Aが0である。
【0055】
故に、平均輝度値の分母は0となり、二次元の超音波画像I1の平均輝度値の演算は0の除算で演算不可能となる。
【0056】
従って、平均画素値の演算が閾値以下(例えば胎児心臓の平均画素値100を閾値とし、閾値の±10%、つまり90〜110とすれば)あるいは閾値との比較演算が不可能な場合の二次元の超音波画像をデータ除去の対象とする。
【0057】
他方の二次元の超音波画像I2では、図6(B)に示すように、撮像対象領域が有って、撮像対象の面積A=25(画素)、平均画素値100とし、対象領域内の画素値が91〜109を満足するとすれば、平均画素値は計算される。
【0058】
従って、平均画素値が閾値以上と演算されるときには二次元の超音波画像をデータ保存の対象とする。
【0059】
以上説明した実施例3によれば、実施例1と同様に、三次元の超音波画像の構成に用いる二次元の超音波画像のうちの三次元画像の構成に寄与しない二次元の超音波画像が除去されるから、精度の良い三次元の超音波画像が構成できる。
【0060】
また、実施例3の特別な効果は、実施例1の画像認識の場合と比較して平均画素値の演算だけで二次元の超音波画像のうちの三次元画像の構成に寄与するあるいは寄与しないが判定が可能となるので、リアルタイム性を損なうことのない超音波診断装置を提供できる。
【0061】
さらに、実施例3の特別な効果は、実施例2の円形度は小数点演算が必要であることに対して実施例3では整数演算で良いため、実施例2と比較して演算器の回路構成やプログラミングを容易にすることが可能となる。
【実施例4】
【0062】
実施例4では、データ除去処理部91のデータ消去の方法が二次元の超音波画像と参照画像に基づく場合について図面を用いて説明する。
【0063】
また、実施例4では、図1、図2で説明したハードウエア、図3のデータ保存/削除の原理、図4のフローチャートは実施例1と共通する説明であるため、これらの共通部分の説明を省略し、実施例1との相違部分であるデータ消去のアルゴリズムのみについて説明することとする。
【0064】
図7は撮像対象領域の平均輝度値によるデータ除去処理の原理を説明する図である。
図1のハードウエアに外部記憶装置10が追加される。
外部記憶装置10は磁気ディスク装置(MD)に代表されるように、不揮発性の記憶手段である。外部記憶装置10には参照画像Irが記憶されている。
【0065】
一方の二次元の超音波画像I1では、図7(A)に示すように、参照画像Irと差分をしたとき、二次元の超音波画像I1には撮像対象領域が無いため、画像類似指数が閾値未満となる。ここでは、画像類似指数が比較対象画像同士の完全一致を1とする場合、画像類似指数が0.8以上を閾値とする。
【0066】
故に、二次元の超音波画像I1では、参照画像Irと全く一致していないので、画像類似指数は0となるから、二次元の超音波画像I1はデータ除去の対象とする。
【0067】
他方の二次元の超音波画像I2では、図7(B)に示すように、参照画像Irと略一致するので二次元の超音波画像をデータ保存の対象とする。
【0068】
以上説明した実施例4によれば、実施例1と同様に、三次元の超音波画像の構成に用いる二次元の超音波画像のうちの三次元画像の構成に寄与しない二次元の超音波画像が除去されるから、精度の良い三次元の超音波画像が構成できる。
【0069】
また、実施例4の特別な効果は、実施例1の画像認識の場合と比較して平均画素値の演算だけで二次元の超音波画像のうちの三次元画像の構成に寄与するあるいは寄与しないが判定が可能となるので、リアルタイム性を損なうことのない超音波診断装置を提供できる。
【0070】
さらに、実施例4の特別な効果は、実施例2の円形度は小数点演算が必要であることに対して実施例3では整数演算で良いため、実施例2と比較して演算器の回路構成やプログラミングを容易にすることが可能となる。
【0071】
さらにまた、実施例4の特別な効果は、実施例3の平均輝度値はであることに対して実施例4では画像の実体を用いるため画素分布も判定演算に反映できるため、実施例3と比較して演算器の回路構成やプログラミングを容易にすることが可能となる。
【0072】
また、添付図面を参照して、本発明に係る超音波診断装置等の好適ないくつかの実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0073】
91 データ除去処理部、92 時相演算処理部、93 ボリュームデータ構成処理部、94 ボリュームレンダリング処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の撮像対象に超音波ビームを送信すると共に、該撮像対象からの反射エコー信号を受信する超音波探触子と、前記超音波探触子から前記撮像対象への超音波送信と前記撮像対象から前記超音波探触子への超音波受信とを切り替える送受信切替部と、送受信切替部を介して前記超音波探触子の駆動信号を前記超音波探触子に供給するビーム形成部と、送受信切替部を介し前記超音波探触子からの反射エコー信号を受信して信号処理する信号処理部と、信号処理部に信号処理された反射エコー信号から超音波画像データへ変換する変換部と、変換部に変換された超音波画像データを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された超音波画像データを超音波画像として表示する表示部と、表示部に前記撮像対象の超音波画像を表示するための動作条件を入力する入力部と、入力部に入力された動作条件によって送受信切替部、ビーム形成部、信号処理部、変換部、記憶部及び表示部を制御する制御部と、を備えた超音波診断装置であって、
前記制御部は、前記撮像対象を含む二次元の超音波画像を該二次元の超音波画像の撮像面に略直交する軸方向に複数得て、複数得られた二次元の超音波画像のうちの三次元画像の構成に寄与しない二次元の超音波画像を特定し、前記特定された二次元の超音波画像を除去するデータ除去処理部と、
データ除去処理部に除去されなかった二次元の超音波画像を用いて前記撮像対象の運動の時相を演算する時相演算処理部と、
時相演算処理部に演算された運動の同時相での前記撮像対象の二次元の超音波画像を用いて三次元の超音波画像を構成するボリュームデータ構成処理部と、
ボリュームデータ構成処理部に構成された三次元の超音波画像にレンダリング処理を行い、該レンダリング処理を行った三次元の超音波画像を前記記憶部に出力するレンダリング処理部と、を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記データ除去処理部は、前記撮像対象の領域の形状の円形度に基づき前記二次元の超音波画像を除去する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記データ除去処理部は、前記撮像対象の領域の輝度値に基づき前記二次元の超音波画像を除去する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記撮像対象の参照画像を記憶する外部記憶部をさらに備え、
前記データ除去処理部は、前記外部記憶部に記憶された参照画像と前記変換部に変換された撮像対象の二次元の超音波画像との比較に基づき前記二次元の超音波画像を除去する請求項1に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−143141(P2011−143141A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7832(P2010−7832)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】