説明

超音波診断装置

【課題】 被検者の体型によらずに精度良い長さ計測の補助が可能な超音波診断装置を提供する。
【解決手段】 本発明の超音波診断装置は、被検者の身長と体重又は体表面積(BSA)の情報を予め記憶する被検者情報管理部14と、前記被検者の身長と体重又はBSAの情報により前記標準体型からの補正値を計算する推定情報管理部15と、前記補正値と前記標準体型情報により前記第2点の候補点を計算して前記入力部のカーソルを移動して表示する演算部16とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して被検者の体内の診断部について断層像(Bモード画像)およびMモード画像を得て表示する超音波診断装置に係り、心機能を評価するための計測を行う超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医師や臨床検査技師などの検者は、超音波診断装置を用い、被検者の心臓領域のBモード画像とMモード画像より、心機能を評価している。検者は、心機能の評価の一工程で、Bモード画像上で臓器の大きさ、移動距離などの長さを計測することがある。
【0003】
長さを計測方法は、検者が計測したい部位の一方に点をトラックボールなどのポインティングデバイスを用いて設定し、そしてもう一端の点を設定することでその間の距離を計測する方法が一般的ある。
【0004】
複数の点の長さを連続して計測する場合は、1点目、2点目を順次設定することで1点目と2点目の距離を計測し、さらに3点目を設定することで1点目あるいは2点目と3点目の距離を計測する方法があり、例えば特許文献1がある。
【0005】
特許文献1では、心電波形の特徴点の位置座標に基づいてMモード像上にラインを設定し、前記ライン上の輝度情報から複数の計測点を設定し、前記複数の計測点に基づいて厚さ或いは径を計測することで、Mモード画像上の左室計測において自動化を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-223558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では、被検者の体型が成人の標準体型(平均身長、平均体重)を基に計算しているため、標準体型の成人と比較して体が小さすぎる例えば小児やあるいは体が標準体型より大きい人が被検者である場合には従来技術で開示する方法を適用できないという課題があった。
【0008】
本発明の目的は、被検者の体型によらずに精度良い長さ計測の補助が可能な超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の超音波診断装置は、被検者に当接された超音波探触子からの情報に基づいて、前記被検者の断層像(Bモード画像)およびMモード像を得る作像部と、前記Bモード画像およびMモード像を表示する画像表示部と、前記Bモード画像およびMモード像上に任意の第1点を設定する入力部と、前記第1点を一方の端点とし、他方の端点の候補点を第2点の候補点として標準体型情報により計算して前記入力部のカーソルを移動して表示するカーソル表示部と、を備えた超音波診断装置であって、前記被検者の身長と体重又は体表面積(BSA)の情報を予め記憶する被検者体型情報記憶部と、前記被検者の身長と体重又はBSAの情報により前記標準体型からの補正値を計算する補正値計算部とを備え、前記カーソル表示部は、前記補正値と前記標準体型情報により前記第2点の候補点を計算して前記入力部のカーソルを移動して表示することを特徴とする。
【0010】
超音波診断装置は、被検者体型情報記憶部が前記被検者の身長と体重又はBSAの情報を予め記憶し、補正値計算部が前記被検者の身長と体重又はBSAの情報により前記標準体型からの補正値を計算し、前記カーソル表示部が前記補正値と前記標準体型情報により前記第2点の候補点を計算して前記入力部のカーソルを移動して表示するので、標準体型から被検者の身長等によって補正値を求めるため、被検者の体型によらずに精度良い長さ計測の補助ができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、被検者の体型によらずに精度良い長さ計測の補助が可能な超音波診断装置を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による超音波診断装置の実施の形態を示すブロック図。
【図2】超音波診断装置上のMモード像上での本発明のフローチャートの例を表した図。
【図3】超音波診断装置上のMモード像上で座標の推定の動作の例を表した図。
【図4】本発明による座標の推定方法を表した図。
【図5】超音波診断装置上のBモード像上での本発明のフローチャートの例を表した図。
【図6】超音波診断装置上のBモード像上で座標の推定の動作の例を表した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用してなる超音波診断装置の実施例1を説明する。なお、以下の説明では、同一機能部品については同一符号を付して重複説明を省略する。
【0014】
本発明の超音波診断装置は、超音波を利用して被検者の撮影部位に関する断層像と断層像の断面上のさらにある一直線に注目し経時経過を画像化した情報をMモード画像として表示する。
【0015】
超音波診断装置は図1に示すように、超音波探触子11と超音波送信部12と値入力部13と表示部17と被検者情報管理部14と推定情報管理部15と演算部16とを備えて構成される。
【0016】
超音波探触子11は機械的又は電子的にビーム走査を行って被検者内に超音波を送受信するものであり、その内部には、超音波の発生源であると共に生体内からの反射エコーを受信する一つ又は複数の振動子を有している。
【0017】
超音波送受信部12は、超音波探触子11を駆動して超音波を発生させると共に受信した反射エコーの信号を処理するものであり、超音波探触子11から被検者内へ送信する超音波ビームを形成するための公知の送波パルサ及び送波遅延回路と、超音波探触子11の各振動子で受信した反射エコー信号を増幅する受信増幅器と、受信した各反射エコー信号の位相を揃えて加算し受波超音波ビームを形成する受波遅延回路及び加算器などから成る整相回路とを有して構成されている。
【0018】
値入力部13は、被検者の身長、体重、BSAの情報を被検者情報管理部14に格納する操作と計測中に座標を決定する操作を行うものである。値入力部は、キーボードやトラックボールで構成されている。
【0019】
被検者情報管理部14は、座標を推定するための被検者の身長、体重、BSAの情報を保存するものである。被検者情報をデータベースに格納する被検者情報保存部14aと標準体型(平均身長、平均体重)が記憶されるデータベースより被検者情報を取得して利用可能にする被検者情報設定部14bで構成されている。
【0020】
推定情報管理部15は、座標を推定するための過去に得た標準体型情報などの座標データを保存するものである。推定情報をデータベースに保持する推定情報格納部15aとデータベースより推定情報を取得して利用可能にする推定情報設定部15bで構成されている。
【0021】
データベースには、標準体型情報(例えば、日本人の成人男子が173cm、62kgとする場合、人体のBSAはおよそ1.7m2とされる。(宮本征一ほか:床座時の人体の有効放射面積と形態係数に関する研究,日本建築学会計画系論文集,No.479,pp.27-33,1996)。
【0022】
この標準体型で10mmの血管の径を測るとき、20画素移動する必要があるとすれば、被検者が身長110cm、体重20kg、BSA0.85m2の小児の場合の例を説明すると、小児のBSAは標準体型のBSAの1/2であるので、距離としては1/√2の移動量に換算すればよい。
【0023】
演算部16は、座標を推定する演算を行うものである。被検者情報設定部14bと推定情報設定部15bで取得した情報と現在の計測中の部位の情報より距離を推定する距離推定演算部16aと距離推定演算部で取得した距離情報を実際の画像の座標に変換する座標変換部16bで構成されている。
【0024】
表示部17は、出力信号を画像として表示するものと計測のための座標を表示するものである。
【0025】
本発明の実施形態に係る超音波診断装置の詳細な構成について、Mモード像の場合を図2、図3、図4に示した処理手順に従って動作と共に説明する。
【0026】
図2のS21で検者は、計測したい心臓の部位を画面上に表示する。計測したい心臓の部位が画面上に表示されると検者はS22に進み、その画面上で計測したい部位を計るための計測を起動する。
【0027】
計測が起動した場合、図3に示す部位を計測するためのカーソル31が画面上に表示される。S23において検者は計測したい部位の始点の位置までカーソルを移動する。
【0028】
S24において検者は確定操作をすることで計測したい部位の始点32を決定する。カーソルの移動および確定操作は値入力部13によって行われる。始点が確定されるとS25に進み、S25とS26とS27で距離の推定が行われる。
【0029】
S25とS26とS27の動作を図4に示す。S25において、被検者情報設定部14bより身長、体重、BSAを取得する。S26において、現在計測している部位のテーブルを推定情報設定部15bより取得する。
【0030】
S27においてS25で取得した身長、体重、BSAの情報を用いて、S26で選択したテーブルのなかで一致する情報を推定情報として取得する。S26で取得した情報より図3に示すようにカーソルが計測したい部位の次の点付近33に移動する。
【0031】
断層像の場合を図5、図6で示した処理手順に従って動作と共に説明する。
図2のS501で検者は、計測したい心臓の部位を画面上に表示する。計測したい心臓の部位が画面上に表示されると検者はS502に進み、その画面上で計測したい部位を計るための計測を起動する。
【0032】
計測が起動した場合、図6に示す部位を計測するためのカーソル61が画面上に表示される。S503において検者は計測したい部位の1点目の位置までカーソルを移動する。
【0033】
S504において検者は確定操作をすることで計測したい部位の1点目62を決定する。S505において検者は計測したい部位の2点目の位置までカーソル63を移動する。S506において検者は確定操作をすることで計測したい部位の2点目64を決定する。2点目が決定されると同時にカーソルを移動する直線65も決定される。
【0034】
2点目と角度が確定されるとS507に進み、S507とS508とS509で距離の推定が行われる。S507とS508とS509の動作を図4に示す。S507において、被検者情報設定部14bより身長、体重、BSAを取得する。
【0035】
S508において、現在計測している部位のテーブルを推定情報設定部15bより取得する、S509においてS57で取得した身長、体重、BSAの情報より、S508で選択したテーブルのなかで換算するあるいは一致する情報を推定情報として取得する。S510で取得した情報より図6に示すようにカーソルが計測したい部位の次の点付近66に移動する。
【0036】
本実施例に係る超音波診断装置は、以上説明してきた如き内容のものなので、検査時間の低減とルーチンワークの効率の向上とそれにより検者の負担を低減するとこができる。
【0037】
また、図面を参照して、本発明に係る超音波診断装置等の好適ないくつかの実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0038】
9 音速補正部、9a メモリ、9b 演算部、13 値入力部、14 被検者情報管理部、14a 被検者情報保存部、14b 被検者情報設定部、15 推定情報管理部、15a 推定情報格納部、15b 推定情報設定部、16 演算部、16a 距離推定演算部、16b 座標変換部、17 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に当接された超音波探触子からの情報に基づいて、前記被検者の断層像(Bモード画像)およびMモード像を得る作像部と、前記Bモード画像およびMモード像を表示する画像表示部と、前記Bモード画像およびMモード像上に任意の第1点を設定する入力部と、前記第1点を一方の端点とし、他方の端点の候補点を第2点の候補点として標準体型情報により計算して前記入力部のカーソルを移動して表示するカーソル表示部と、を備えた超音波診断装置であって、前記被検者の身長と体重又は体表面積(BSA)の情報を予め記憶する被検者体型情報記憶部と、前記被検者の身長と体重又はBSAの情報により前記標準体型からの補正値を計算する補正値計算部とを備え、前記カーソル表示部は、前記補正値と前記標準体型情報により前記第2点の候補点を計算して前記入力部のカーソルを移動して表示することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、前記被検者の検査部位が拡張末期、収縮末期それぞれの左室径と左室後壁厚と心室中隔厚と右室後壁厚であることを特徴とする超音波診断装置
【請求項3】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、前記被検者の検査部位が拡張末期大動脈径と収縮早期大動脈弁開口長と収縮末期大動脈弁開口長と左房内径と左室流出路内径とあることを特徴とする超音波診断装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−15872(P2011−15872A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163414(P2009−163414)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】