説明

超音波診断装置

【課題】広範囲の静止画像データを得るための静止画像データの収集にかかる手間を軽減することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】被検体Pに超音波の送受波を行う超音波プローブ10と、超音波プローブ10を駆動して超音波を走査する送受信部20と、送受信部20からの受信信号に基づき画像データを生成する画像データ生成部31と、超音波プローブ10の移動可能な位置を示す位置データを生成する位置データ生成部41と、画像データ生成部31で生成された画像データを表示する表示部50とを備え、位置データ生成部41は画像データ生成部31で生成された画像データから静止画像データを収集して広範囲の静止画像データを得るための位置データを生成する。そして、収集した静止画像データ及び生成した位置データを表示部50に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波により被検体の体内を画像化し診断を行う超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波を送受波する超音波プローブを用いて被検体内に超音波を走査し、走査領域における組織の音響インピーダンスの差異によって生ずる反射波に基づいて生成される画像データをモニタ上に表示するものである。この超音波による診断方法では、超音波プローブを体表面に接触させるだけの簡単な操作で、画像データをリアルタイムに表示することができるため、生体内の心臓、血管、腹部、泌尿器、産婦人科などの検査に広く用いられている。
【0003】
そして、被検体内における関心領域が超音波の走査領域よりも広い場合、超音波プローブを超音波の走査方向へ体表面に沿って少しずつ移動させながら複数フレーム分の画像データを収集して、各フレームの画像データの互いに重複する部分を繋ぎ合わせることで、広範囲の静止画像データを得ることができる「Panoramic Imaging」と呼ばれるパノラマ技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この技術では、超音波プローブを移動させながら、移動を開始した位置から移動した位置までの領域の画像データを表示させて、関心領域全体のデータが画像データに含まれているか否かを確認することができる。しかしながら、超音波プローブを体表面に沿って移動させると、超音波の走査方向への移動が困難である場合、各フレームの互いに重複する部分を繋ぎ合わせることがでないため、広範囲の静止画像データを得ることができないことがある。
【0005】
このような場合、超音波プローブの所定の位置及びこの位置から移動した位置の2つの位置における静止画像データを収集し、収集した2つの静止画像データを並べて広範囲の画像データを表示させるデュアル技術が利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−330764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、デュアル技術の場合、超音波プローブの移動量が少ないために2つの静止画像データの重複する部分が多くて関心領域が不足したり、超音波プローブの移動量が多いために2つの静止画像データの間隔が空いて関心領域に隙間ができたりして、関心領域を全域に亘って表示させることができないことがある。この場合、再度、静止画像データの収集を行う必要があるため、検査に手間がかかる問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、広範囲の静止画像データを得るための静止画像データの収集にかかる手間を軽減することができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するために、請求項1に係る本発明の超音波診断装置は、被検体に対して超音波の送受波を行う超音波プローブと、前記超音波プローブを駆動して前記被検体に超音波を走査する送受信手段と、前記送受信手段からの受信信号に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段と、前記超音波プローブの第1の位置で生成された前記画像データから静止画像データを収集し、前記超音波プローブが前記第1の位置から移動された第2の位置で、収集した前記静止画像データと重複して合成可能に生成される仮想の画像データの、前記静止画像データに対する位置を示す位置データを生成する位置データ生成手段と、前記静止画像データ、この静止画像データ上に重畳された前記位置データ、及び前記画像を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項7に係る本発明の超音波診断装置は、被検体に対して超音波の送受波を行う超音波プローブと、前記超音波プローブを駆動して前記被検体に超音波を走査する送受信手段と、前記送受信手段からの受信信号に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段と、前記超音波プローブの第1の位置で生成された前記画像データから静止画像データを収集し、前記超音波プローブが前記第1の位置から移動された第2の位置で、収集した前記静止画像データと重複して合成可能に生成される仮想の画像データの、前記静止画像データに対する位置を示す位置データを生成する位置データ生成手段と、前記画像データ及びこの画像データ上に重畳して前記静止画像データの前記位置データに含まれる領域を示すデータを表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、収集した静止画像データに基づいてこの静止画像データと重複して合成可能に生成される仮想の画像データの位置を示す位置データを生成し、生成した位置データに基づいて超音波プローブを移動させることができる。これにより、広範囲の静止画像データを得るための静止画像データの収集にかかる手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャート。
【図3】本発明の実施例に係る表示部に表示されたBモード画像データの画面及びこの画面が表示されたときの超音波プローブの位置の一例を示す図。
【図4】本発明の実施例に係る表示部に表示されたBモード画像データ及び矢印データの画面、並びにこの画面が表示されたときの超音波プローブの位置の一例を示す図。
【図5】本発明の実施例に係る表示部に表示された1回目に収集した静止画像データ、1回目の位置データ、矢印データ、及びBモード画像データの画面、並びにこの画面が表示されたときの超音波プローブの位置の一例を示す図。
【図6】本発明の実施例に係る超音波プローブを図5に示す位置から移動させた位置で表示部に表示された1回目に収集した静止画像データ、1回目の位置データ、矢印データ、及びBモード画像データの画面、並びにこの画面が表示されたときの超音波プローブの位置の一例を示す図。
【図7】本発明の実施例に係る表示部に表示された1回目に合成した合成画像データ、2回目の位置データ、矢印データ、及びBモード画像データの画面、並びにこの画面が表示されたときの超音波プローブの位置の一例を示す図。
【図8】本発明の実施例に係る超音波プローブを図7に示す位置から移動させた位置で表示部に表示された1回目に合成した合成画像データ、2回目の位置データ、矢印データ、及びBモード画像データの画面、並びにこの画面が表示されたときの超音波プローブの位置の一例を示す図。
【図9】本発明の実施例に係る表示部に表示された2回目に合成した合成画像データ、3回目の位置データ、矢印データ、及びBモード画像データの画面、並びにこの画面が表示されたときの超音波プローブの位置の一例を示す図。
【図10】本発明の実施例に係る表示部に表示された2回目に合成した合成画像データの画面を示す図。
【図11】本発明の実施例に係る表示部に表示される1回目に収集した静止画像データ、Bモード画像データ、及び透過データの画面、及びこの画面が表示されるときの超音波プローブの位置の一例を示す図。
【図12】本発明の実施例に係る表示部に表示される3次元画像データ及び矢印データの画面、並びにこの画面が表示されたときの超音波プローブの位置の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の超音波診断装置の実施例を図1乃至図12を参照して説明する。
図1は、実施例に係る超音波診断装置の構成を示したブロック図である。この超音波診断装置100は、被検体Pに対して超音波の送受波を行う超音波プローブ10と、超音波プローブ10を駆動して被検体P内に超音波を走査する送受信部20と、送受信部20からの受信信号に基づいてBモードデータ等のデータを生成する信号処理部30と、信号処理部30で生成されたデータに基づいて画像データを生成する画像データ生成部31とを備えている。
【0015】
また、超音波診断装置100は、画像データ生成部31で生成された画像データから静止画像データを収集して広範囲の静止画像データを得るために超音波プローブ10の移動可能な方向及び位置を示す位置データの生成や収集した静止画像データの合成を行う画像データ処理部40と、画像データ生成部31で生成された画像データや画像データ処理部40で生成された位置データ等を表示する表示部50とを備えている。
【0016】
更に、超音波診断装置100は、画像データ処理部40で位置データの生成や静止画像データの合成を行わせる合成モードの開始及び終了の入力、超音波プローブ10の移動方向を指定する入力、位置データを表示部50に表示させる入力等を行う操作部60と、送受信部20、信号処理部30、画像データ生成部31、画像データ処理部40、及び表示部50の各ユニットを統括して制御するシステム制御部70とを備えている。
【0017】
超音波プローブ10は、被検体Pの体表面にその先端面を接触させた状態で超音波の送受波を行なうものであり、例えば1次元又は2次元に配列された複数個の振動子を先端部分に有している。この振動子は、送受信部20から出力される駆動信号である電気パルスを超音波パルス(送信超音波)に変換して被検体Pに送波する。また、被検体P内で反射した超音波(受信超音波)を電気信号に変換する。そして、電気信号に変換した受信信号を送受信部20に出力する。
【0018】
送受信部20は、超音波プローブ10で送信超音波を発生させるための駆動信号を生成する送信部21と、超音波プローブ10の振動子から得られる複数チャンネルの受信信号に対して整相加算を行なう受信部22とを備えている。
【0019】
送信部21は、レートパルス発生器、送信遅延回路、及びパルサ等を備えている。そして、レートパルス発生器は、被検体Pに放射する超音波パルスの繰り返し周期(Tr)を決定するレートパルスを送信遅延回路に出力する。また、送信遅延回路は、被検体P内の各深さ方向の所定の深さで超音波ビームを集束させるための集束用遅延時間と各深さ方向への送波により超音波を走査するための偏向用遅延時間を前記レートパルスに与えてパルサに出力する。更に、パルサは、送信遅延回路により出力されたレートパルスから駆動パルスを生成する。
【0020】
受信部22は、プリアンプ、受信遅延回路、及び加算器等を備えている。そして、プリアンプは、超音波プローブ10からの微小な受信信号を増幅して十分なS/Nを確保する。また、受信遅延回路は、被検体P内における各深さ方向の所定の深さからの受信超音波を集束するための集束用遅延時間と深さ方向に超音波ビームの受信指向性を設定するための偏向用遅延時間をプリアンプからの増幅された受信信号に与える。更に、加算器は、受信遅延回路からの受信信号を加算して1つに纏めて信号処理部30に出力する。
【0021】
信号処理部30は、送受信部20の受信部22により出力された受信信号に対して例えば包絡線検波を行った後に対数変換し、その対数変換した信号をデジタル信号に変換してBモードデータを生成する。そして、生成したBモードデータ等のデータを画像データ生成部31に出力する。
【0022】
画像データ生成部31は、信号処理部30で生成されたBモードデータ等のデータを走査変換して、予め設定されたフレームレートでBモード画像データ等の2次元の画像データを生成する。また、生成した複数フレームのBモード画像データから予め設定されたフレームレートで3次元の画像データを生成する。そして、生成した2次元画像データや3次元画像データ等の画像データをフレーム毎に画像データ処理部40に出力する。
【0023】
なお、2次元の画像データを生成する場合には1次元又は2次元に配列された複数個の振動子を有し、3次元の画像データを生成する場合には2次元に配列された複数個の振動子を有する超音波プローブ10が使用される。また、3次元の画像データを生成する場合には1次元に配列された複数個の振動子及びこの振動子を配列方向に直交する方向に揺動する揺動機構を備えた超音波プローブを用いるようにしてもよい。
【0024】
画像データ処理部40は、画像データ生成部31で生成された画像データから静止画像データを収集して広範囲の静止画像データを得るために超音波プローブ10の移動可能な位置を示して案内するための位置データを生成する位置データ生成部41と、位置データ生成部41で生成された位置データに基づいて超音波プローブ10が移動された複数の位置で画像データ生成部31により生成された画像データから複数の静止画像データを収集して合成を行う合成処理部42と、画像データ生成部31で生成された画像データや合成処理部42で複数の静止画像データが合成された合成画像データを表示用に配置する表示データ生成部43とを備えている。
【0025】
位置データ生成部41は、操作部60からの合成モードを開始させる合成モード開始の入力に応じて、超音波プローブ10の移動が可能な移動方向を示す複数の矢印データを生成する。また、複数の矢印データの中から1つの矢印データを指定する入力が行われた後に、位置データを表示させるための例えば位置案内ボタンの押下による操作部60からのn回目(1以上の整数)の位置案内入力に応じて、n回目に位置案内入力されたときに画像データ生成部31で生成された画像データから例えば1フレームの画像データ(静止画像データ)を収集する。そして、n回目に収集した静止画像データに基づいてn回目の位置データを生成し、生成した位置データ及び指定された矢印データを合成処理部42に出力する。
【0026】
n回目の位置データは、n回目に位置案内入力されたときの第1の位置S1nから超音波プローブ10が指定された矢印データの方向へ移動された第2の位置S2nで、n回目に収集した静止画像データと重複して合成可能に生成される仮想の画像データの、前記静止画像データに対する位置を示すデータである。
【0027】
合成処理部42は、操作部60からのn回目の位置案内入力に応じて、n回目に位置案内入力されたときに画像データ生成部31で生成された画像データから静止画像データを収集し、このn回目に収集した静止画像データに基づいて合成を行う。そして、1回目の位置案内入力に応じて、1回目に収集した静止画像データ上に1回目の位置データを重畳する。
【0028】
また、1回目の位置データに基づいて、超音波プローブ10が1回目に位置案内入力されたときの第1の位置S11から第2の位置S21の方向に移動された第1の位置S11と第2の位置S21間の途中の位置又は第2の位置S21で行われる2回目の位置案内入力に応じて、1回目に収集した静止画像データを2回目に収集した静止画像データと合成して合成画像データを生成し、この1回目に合成した合成画像データ上に2回目の位置データを重畳する。
【0029】
更に、n回目(nは2以上の整数)の位置データに基づいて超音波プローブ10がn回目に位置案内入力されたときの第1の位置S1nから第2の位置S2nの方向に移動された第1の位置S1nと第2の位置S2n間の途中の位置又は第2の位置S2nで行われる(n+1)回目の位置案内入力に応じて、(n−1)回目に合成した合成画像データを、(n+1)回目に収集した静止画像データと合成して合成画像データを生成し、このn回目に合成した合成画像データ上に(n+1)回目の位置データを重畳する。
【0030】
ここで、収集した静止画像データ及び合成画像データを、収集した静止画像データと合成する処理の一例を説明する。先に収集した静止画像データと、この静止画像データの後に収集した静止画像データとの重なり合う領域及び重なり合わない領域を例えばパターンマッチング処理により判別する。そして、先に収集した静止画像データに、後に収集した静止画像データの先に収集した静止画像データと重なり合わない領域のデータを繋ぎ合わせて合成する。また、合成画像データと、この合成画像データの後に収集した静止画像データとの重なり合う領域及び重なり合わない領域をパターンマッチング処理により判別する。そして、合成画像データに、収集した静止画像データの合成画像データと重なり合わない領域のデータを繋ぎ合わせて合成する。なお、重なり合う領域の高輝度を有するデータを採用するようにしてもよい。これにより、鮮明なデータを得ることができる。
【0031】
そして、1回目に収集した静止画像データ、1回目の位置データ、及び指定された矢印データを表示データ生成部43に出力する。また、1回目に合成した合成画像データ、2回目の位置データ、及び前記矢印データを表示データ生成部43に出力する。更に、n回目に合成した合成画像データ、(n+1)回目の位置データ、及び前記矢印データを表示データ生成部43に出力する。
【0032】
表示データ生成部43は、画像データ生成部31で生成された2次元画像データや3次元画像データを表示部50に出力する。また、1回目に収集した静止画像データ、1回目の位置データ、及び指定された矢印データと、画像データ生成部31で生成される画像データを並べて表示部50に出力する。また、1回目に合成した合成画像データ、2回目の位置データ、及び前記矢印データと、画像データ生成部31で生成される画像データを並べて表示部50に出力する。更に、n回目に合成した合成画像データ、(n+1)回目の位置データ、及び前記矢印データと、画像データ生成部31で生成される画像データを並べて表示部50に出力する。
【0033】
表示部50は、CRTや液晶パネルなどのモニタを備え、画像データ処理部40の表示データ生成部43から出力された画像データ等を表示する。
【0034】
操作部60は、合成処理操作を行うためのボタン、スイッチ、キーボード、トラックボール、マウス、タッチパネル等の入力デバイスを備え、これらの入力デバイスを用いて撮像条件(ゲイン、送受信周波数、パルス繰り返し周波数、視野深度、フレームレート、Bモード画像生成モードや3次元画像生成モードの生成モード等)を設定するための入力、位置データ生成モードを設定するための入力、検査開始及び検査終了の入力、合成モード開始及び終了の入力、位置データの表示や静止画像データの合成を行わせる位置案内入力等の様々な入力を行う。
【0035】
システム制御部70は、CPU及び記憶回路を備え、操作部60から入力される入力情報に基づいて送受信部20、信号処理部30、画像データ生成部31、画像データ処理部40、及び表示部50の各ユニットの制御や、システム全体の制御を統括して行う。
【0036】
以下、図1乃至図11を参照して、実施例に係る超音波診断装置100の動作の一例を説明する。
図2は、超音波診断装置100の動作を示したフローチャートである。被検体Pの検査を行うために超音波診断装置100の操作者により、例えば被検体Pの識別情報、Bモード画像生成モードを含む撮像条件等を設定する入力が操作部60から行われる。そして、検査開始の入力が行われると、超音波診断装置100は動作を開始する(ステップS1)。
【0037】
システム制御部70は、操作部60からの入力情報に基づいて、送受信部20、信号処理部30、画像データ生成部31、画像データ処理部40、及び表示部50に検査を指示する。そして、操作者が超音波プローブ10を被検体Pの体表面に当てることにより、被検体Pに対して超音波の送受波が行われ、送受信部20は超音波プローブ10を介して被検体P内に超音波を走査する。
【0038】
信号処理部30は、送受信部20の受信部22から出力された受信信号に基づいて、Bモードデータを生成し、生成したBモードデータを画像データ生成部31に出力する。画像データ生成部31は、信号処理部30から出力されたBモードデータからBモード画像データを生成する。そして、生成したBモード画像データを画像データ処理部40に出力する。表示データ生成部43は、画像データ生成部31から出力されたBモード画像データを表示部50に出力する。表示部50は、表示データ生成部43から出力されたBモード画像データをリアルタイムに表示する。
【0039】
図3は、表示部50に表示されたBモード画像データの画面及びこの画面が表示されたときの超音波プローブ10の位置の一例を示した図である。この画面51には、超音波プローブ10の各走査線θ1乃至θKの方向への超音波の送受波により被検体P内の超音波が走査された走査領域の断面を示すBモード画像データ80がリアルタイムに表示されている。そして、Bモード画像データ80が表示されているときの超音波の走査領域は、被検体Pの関心領域である患部P1から離れているとする。
【0040】
次に、超音波プローブ10を被検体Pの体表面に当てた状態で例えば超音波の走査方向に移動し、被検体Pの患部P1の例えば一端部を示すデータを含むBモード画像データが表示部50の画面に表示されたとき、操作部60から合成モード開始の入力が行われると、位置データ生成部41は、2次元画像データ用の矢印データを表示データ生成部43に出力する。表示データ生成部43は画像データ生成部31から出力されたBモード画像データ及び位置データ生成部41から出力された矢印データを表示部50に出力する。表示部50は、表示データ生成部43から出力されたBモード画像データ及び矢印データを表示する(図2のステップS2)。
【0041】
図4は、表示部50に表示されたBモード画像データ及び矢印データの画面、並びにこの画面が表示されたときの超音波プローブ10の位置の一例を示した図である。この画面51aには、Bモード画像データ80aがリアルタイムに表示されている。そして、Bモード画像データ80aは、被検体Pの患部P1の一端部を示す患部データ801aを右側に内包している。
【0042】
Bモード画像データ80aの右側には超音波プローブ10の移動可能な方向を示す矢印データ52が表示され、矢印データ52の方向は超音波の走査方向である矢印L1方向を示している。また、Bモード画像データ80aの左側には超音波プローブ10の移動可能な方向を示す矢印データ53が表示され、矢印データ53の方向はL1方向とは反対方向の矢印L2方向を示している。
【0043】
このように、合成可能な静止画像データを収集することができる超音波プローブ10の移動方向を示す矢印データ52,53を表示部50に表示することができる。これにより、超音波プローブ10の移動可能な方向を操作者に知らせることができる。
【0044】
ここでは、図4の画面51aに表示されたBモード画像データ80aには患部データ801aが含まれているため、Bモード画像データ80aから静止画像データを収集する必要がある。また、患部データ801aに連なる患部データを含む静止画像データを収集するために、超音波プローブ10をL1方向へ移動させる必要がある。このため、操作部60から矢印データ52を指定する入力が行われる。なお、Bモード画像データ80aが、被検体Pの患部P1の例えば他端部を示す患部データを左側に内包している場合、超音波プローブ10をL2方向へ移動させることになる。
【0045】
このように、静止画像データを収集するために超音波プローブ10をL1方向及びL2方向の2方向へ移動させることができる。これにより、超音波プローブ10の移動方向が超音波の走査方向のみに限定されるパノラマ技術を利用する場合よりも、超音波プローブ10を操作する作業を軽減することができる。
【0046】
操作部60から例えば矢印データ52を指定する入力が行われた後に、図4の画面51aに表示されたBモード画像データ80aから静止画像データを収集すると共に、収集した静止画像データの位置データを表示させるために、1回目の位置案内入力が行われると、位置データ生成部41は、1回目に位置案内入力されたときに画像データ生成部31で生成されたBモード画像データから静止画像データを収集する。そして、1回目に収集した静止画像データ及び指定された矢印データ52に基づいて、1回目の位置データを生成し、この生成した1回目の位置データ及び指定された矢印データ52を合成処理部42に出力する。
【0047】
合成処理部42は、操作部60からの1回目の位置案内入力に応じて、1回目に収集した静止画像データ上に1回目の位置データを重畳する。そして、1回目に収集した静止画像データ、1回目の位置データ、及び指定された矢印データ52を表示データ生成部43に出力する。表示データ生成部43は、合成処理部42から出力された1回目に収集した静止画像データ、1回目の位置データ、及び矢印データ52と、画像データ生成部31から出力されるBモード画像データを並べて表示部50に出力する。表示部50は、表示データ生成部43から出力された1回目に収集した静止画像データ、1回目の位置データ、及び矢印データ52を表示すると共に、Bモード画像データをリアルタイムに表示する(図2のステップS3)。
【0048】
図5は、表示部50に表示された1回目に収集した静止画像データ、1回目の位置データ、矢印データ52、及びBモード画像データの画面、並びにこの画面が表示されたときの超音波プローブ10の位置の一例を示した図である。この画面51bは、第1及び第2の表示エリア54,55により構成される。
【0049】
第1の表示エリア54には、1回目に収集した静止画像データ82、この静止画像データ82上に重畳された1回目の位置データ83、及び超音波プローブ10の移動可能な方向を示す矢印データ52が表示されている。また、第2の表示エリア55には、超音波プローブ10が1回目に位置案内入力されたときの位置である第1の位置S11で生成されたBモード画像データ80bがリアルタイムに表示されている。
【0050】
そして、静止画像データ82は、図4の画面51aに表示されたBモード画像データ80aから収集した静止画像データであり、Bモード画像データ80aに含まれる患部データ801aが静止した患部データ821を含んでいる。
【0051】
位置データ83は、超音波プローブ10が第1の位置S11から指定された方向であるL1方向へ所定の移動量移動された第2の位置S21で、静止画像データ82と重複して合成可能に生成される仮想のBモード画像データ(仮想画像データ)の例えば輪郭の位置を示している。そして、静止画像データ82の位置データ83に含まれる領域データ822は、仮想画像データと重複する領域であり、静止画像データ82と合成可能な静止画像データの領域のデータを示している。
【0052】
ここで、仮想画像データの位置の求め方の一例を説明する。重複領域の面積が静止画像データ82及び仮想画像データの面積の例えば50%以上である場合に静止画像データ82と仮想画像データの合成が可能であるとする。そして、超音波プローブ10が第1の位置S11からL1方向へ移動させて、静止画像データ82と重複領域の面積が50%になる仮想画像データが生成される位置を第2の位置S21とし、第1の位置S11から第2の位置S21まで移動する超音波プローブ10の移動量Dを求める。そして、求めた移動量Dに基づいて、静止画像データ82に対する仮想画像データの位置を示す位置データを求める。
【0053】
なお、図5の画面51bに表示された静止画像データ82や位置データ83の全領域が表示されていない場合、操作部60からスクロール操作して第1の表示エリア54から外れた静止画像データ82や位置データ83の領域を表示させることができる。また、操作部60から縮小操作して、第1の表示エリア54内に全域が入るように静止画像データ82及び位置データ83を縮小することができる。
【0054】
このように、表示部50の画面51bに静止画像データ82及び位置データ83を表示することにより、静止画像データ82と合成可能な静止画像データの領域のデータを確認することができる。また、静止画像データ82及び位置データ83と共にBモード画像データ80bを表示部50に表示することにより、Bモード画像データ80bを静止画像データ82の領域データ822と照合することができる。これにより、静止画像データ82と合成可能な静止画像データを収集することができる超音波プローブ10の位置を確認することができる。
【0055】
図5の画面51bに表示された静止画像データ82に被検体Pの患部P1の全域のデータが含まれていないと判断され、静止画像データ82に含まれる患部データ821に繋がるデータを含む静止画像データを収集するために、操作者が超音波プローブ10を第1の位置S11からL1方向へ移動させると、被検体P内における超音波の走査領域がL1方向に移動するため、静止画像データ82の領域データ822と略同じデータが、表示部50の画面に表示されるBモード画像データの領域内を矢印データ52とは反対方向に移動する。
【0056】
そして、表示部50の画面に表示されたBモード画像データの例えば中央近傍に領域データ822と略同じデータが含まれているとき、超音波プローブ10がL1方向へ移動された第1の位置S11と第2の位置S21間の途中に位置していることがわかる。また、表示部50の画面に表示されたBモード画像データに領域データ822と略同じデータが全く含まれていないときや一部しか含まれていないとき、例えばL1方向への移動が困難である被検体Pの体表面に沿った移動により超音波プローブ10が指定方向から外れて位置していることがわかる。更に、図6に示すように、画面51cの第2の表示エリア55に表示されたBモード画像データ80cに患部データ801cが含まれ、且つBモード画像データ80c左端部に領域データ822と略同じデータが含まれているとき、超音波プローブ10が第2の位置S21に位置していることがわかる。
【0057】
このように、超音波プローブ10を指定方向へ移動させて、表示部50にリアルタイムに表示されるBモード画像データに患部データが含まれているか否かを確認すると共に、静止画像データ82の領域データ822と照合することにより、静止画像データ82と合成が不可能な位置における静止画像データの収集を避けて、合成が可能な患部データを含む静止画像データを収集することができる位置へ超音波プローブ10を移動させることができる。
【0058】
図2に示したステップS3の後に、超音波プローブ10を例えば第2の位置S21まで移動させる。そして、操作部60から2回目の位置案内入力が行われると、位置データ生成部41は、2回目に位置案内入力されたときに画像データ生成部31で生成されたBモード画像データから静止画像データを収集する。そして、2回目に収集した静止画像データ及び指定された矢印データ52に基づいて2回目の位置データを生成し、この生成した2回目の位置データ及び矢印データ52を合成処理部42に出力する。
【0059】
合成処理部42は、操作部60からの2回目の位置案内入力に応じて、2回目に収集した静止画像データを1回目に収集した静止画像データと合成して合成画像データを生成し、この1回目に合成した合成画像データ上に2回目の位置データを重畳する。そして、1回目に合成した合成画像データ、2回目の位置データ、及び合成モード開始の入力に応じて指定された矢印データ52を表示データ生成部43に出力する。
【0060】
表示データ生成部43は、合成処理部42から出力された1回目に合成した合成画像データ、2回目の位置データ、及び矢印データ52と、画像データ生成部31から出力されるBモード画像データを並べて表示部50に出力する。表示部50は、表示データ生成部43から出力された1回目に合成した合成画像データ、2回目の位置データ、及び矢印データ52を表示すると共に、Bモード画像データをリアルタイムに表示する(図2のステップS4)。
【0061】
図7は、表示部50に表示された1回目に合成した合成画像データ、2回目の位置データ、矢印データ52、及びBモード画像データの画面、並びにこの画面が表示されたときの超音波プローブ10の位置の一例を示した図である。この画面51dの第1の表示エリア54には、1回目に合成した合成画像データ82a、この合成画像データ82a上に重畳された2回目の位置データ83a、及び超音波プローブ10の移動可能な方向を示す矢印データ52が表示されている。また、第2の表示エリア55には、超音波プローブ10が2回目に位置案内入力されたときの図5に示した第2の位置S21と略同じ位置である第1の位置S12で生成されたBモード画像データ80dがリアルタイムに表示されている。
【0062】
合成画像データ82aは、図6の画面51cに表示されたBモード画像データ80cから収集した静止画像データと第1のエリア54に表示された静止画像データ82を合成した静止画像データ82よりも広範囲の静止画像データである。そして、静止画像データ82の患部データ821と、この患部データ821に連なるBモード画像データ80cに含まれる患部データ801cの静止画像データとを合成した患部データ821aを含んでいる。
【0063】
位置データ83aは、超音波プローブ10が第1の位置S12からL1方向へ移動量D移動された第2の位置S22で、2回目に収集した静止画像データと重複して合成可能に生成される仮想画像データの輪郭の位置を示している。そして、合成画像データ82aの位置データ83aに含まれる領域データ822aは、仮想画像データと重複する領域であり、合成画像データ82aと合成可能な静止画像データの領域のデータを示している。
【0064】
このように、1回目に収集した静止画像データ82を2回目に収集した静止画像データと合成することにより、静止画像データ82よりも広範囲の合成画像データ82aを得ることができる。そして、合成画像データ82aを表示部50にすることにより、合成画像データ82aに被検体Pの患部P1の全域のデータが含まれているか否かを確認することができる。また、表示部50に合成画像データ82a及び位置データ83を表示することにより、合成画像データ82aと合成が可能な静止画像データの領域のデータを確認することができる。
【0065】
図7の画面51dに表示された合成画像データ82aに被検体Pの患部P1の全域のデータが含まれていないと判断され、超音波プローブ10を第1の位置S12からL1方向へ移動させる。そして、図8に示すように、画面51eの第2の表示エリア55に表示されたBモード画像データ80e領域内の左端部に領域データ822aと略同じデータが含まれているとき、操作部60から3回目の位置案内入力が行われる。
【0066】
このように、超音波プローブ10を移動させて、表示部50にリアルタイムに表示されるBモード画像データに患部データが含まれているか否かを確認すると共に合成画像データ82aの領域データ822aと照合することにより、合成画像データ82aと合成が不可能な静止画像データの収集を避けて、合成が可能な患部データを含む静止画像データを収集することができる位置へ超音波プローブ10を移動することができる。
【0067】
図2に示したステップS4の後に、操作部60から3回目の位置案内入力が行われると、位置データ生成部41は、3回目に収集した静止画像データ及び矢印データ52に基づいて、3回目の位置データを生成する。そして、生成した位置データ及び矢印データ52を合成処理部42に出力する。合成処理部42は、1回目に合成した合成画像データ82aを、3回目に収集した静止画像データと合成して合成画像データを生成し、この2回目に合成した合成画像データ上に3回目の位置データを重畳する。そして、2回目に合成した合成画像データ、3回目の位置データ、及び矢印データ52を表示データ生成部43に出力する。表示データ生成部43は、合成処理部42から出力された2回目に合成した合成画像データ、3回目の位置データ、及び矢印データ52と、画像データ生成部31から出力されるBモード画像データを並べて表示部50に出力する。表示部50は、表示データ生成部43から出力された2回目に合成した合成画像データ、3回目の位置データ、及び矢印データ52を表示すると共に、Bモード画像データをリアルタイムに表示する(図2のステップS5)。
【0068】
図9は、表示部50に表示された2回目に合成した合成画像データ、3回目の位置データ、矢印データ52、及びBモード画像データの画面、並びにこの画面が表示されたときの超音波プローブ10の位置の一例を示した図である。この画面51fの第1の表示エリア54には、2回目に合成した合成画像データ82b、この合成画像データ82b上に重畳された3回目の位置データ83b、及び超音波プローブ10の移動可能な方向を示す矢印データ52が表示されている。また、第2の表示エリア55には、超音波プローブ10が3回目に位置案内入力されたときの図7に示した第2の位置S22と略同じ位置である第1の位置S13で生成されたBモード画像データ80fがリアルタイムに表示されている。
【0069】
合成画像データ82bは、図8の画面51eに表示されたBモード画像データ80eから収集した静止画像データと第1のエリア54に表示された合成画像データ82aを合成した合成画像データ82aよりも広範囲の静止画像データである。そして、合成画像データ82aの患部データ821aと、この患部データ821aに連なるBモード画像データ80eに含まれる患部データ801eの静止画像データとを合成した患部データ821bを含んでいる。
【0070】
位置データ83bは、超音波プローブ10が3回目に位置案内入力されたときの第1の位置S13からL1方向へ移動量D移動された第2の位置S23で、3回目に収集した静止画像データと重複して合成可能に生成される仮想画像データの輪郭の位置を示している。そして、合成画像データ82bの位置データ83bに含まれる領域データ822bは、仮想画像データと重複する領域であり、合成画像データ82bと合成可能な静止画像データの領域のデータを示している。
【0071】
このように、合成画像データ82aを収集した3回目に収集した静止画像データと合成することにより、合成画像データ82aより広範囲の合成画像データ82bを得ることができる。そして、合成画像データ82bを表示部50にすることにより、合成画像データ82bに被検体Pの患部P1の全域のデータが含まれているか否かを確認することができる。
【0072】
ここでは、図9の画面51fに表示された合成画像データ82bに被検体Pの患部P1の全域のデータが含まれていると判断され、合成画像データ82bの全域に亘る範囲を確認するために、操作部60から合成画像データ82bを全域表示させる全域表示操作が行われると、表示データ生成部43は、2回目に合成画像データ82bのみを表示部50に出力する。表示部50は、表示データ生成部43から出力された2回目に合成した合成画像データ82bを表示する。
【0073】
図10は、表示部50に表示された2回目に合成した合成画像データ82bの画面を示した図である。この画面51gは、第1及び第2の表示エリア54,55を1つのエリアとする第3の表示エリア56により構成される。そして、第3の表示エリア56に合成画像データ82bの全領域が表示されている。
【0074】
このように、表示部50に合成画像データ82bの全領域を表示させることにより、被検体Pの患部P1の全域のデータが合成画像データ82bに含まれているか否かを確認することができる。
【0075】
なお、図9の画面51fに表示された合成画像データ82bに被検体Pの患部P1の全域のデータが含まれていないと判断されたとき、合成画像データ82bに含まれる患部データ821bに繋がる患部データを含む静止画像データを収集するために、n回目(nは3以上の整数)の位置データに基づいて超音波プローブ10を第1の位置S1nからL1方向へ移動させる。そして、超音波プローブ10が移動された第1の位置S1nと第2の位置S2nの途中の位置又は第2の位置S2nで、(n+1)回目の位置案内入力を行う。このn回目の位置案内入力に応じて、(n−1)回目に合成した合成画像データを、(n+1)回目に収集した静止画像データと合成して合成画像データを生成する。そして、n回目に合成した合成画像データに、被検体Pの患部P1の全域のデータが含まれているか否かを確認することにより、患部P1の全域のデータを含む合成画像データを得ることができる。
【0076】
図2に示したステップS5の後に、図10の画面51gに表示された合成画像データ82bに被検体Pの患部P1の全域のデータが含まれていることを確認した操作者により、操作部60から合成モード終了の入力が行われると、合成画像データ82bは図示しない記憶回路に保存され、表示部50には合成モード開始の入力が行われる前と同様にBモード画像データのみが表示される。次いで、操作部60から検査終了の操作が行われると、システム制御部70が送受信部20、信号処理部30、画像データ生成部31、画像データ処理部40、及び表示部50に検査終了を指示することにより、超音波診断装置100は、動作を終了する(図2のステップS6)。
【0077】
なお、位置データ生成部41で生成される位置データに基づいて、収集した静止画像データ又は合成した合成画像データの前記位置データに含まれる領域を示すデータを、表示部50の画面の第2の表示エリア55に表示される画像データ上に重畳して表示するように実施してもよい。例えば図5に示した画面51bを、図11に示すように、画面51hに置き換えて表示する。この画面51hの第1の表示エリア54に静止画像データ82を表示する。また、第2の表示エリア55にBモード画像データ80bをリアルタイムに表示する。更に、静止画像データ82の位置データ83に含まれる領域データ822を例えば所定の透過率で透過させた透過データ823を、Bモード画像データ80bが表示される領域内の矢印データ52とは反対方向の端部上に重畳して表示する。
【0078】
そして、超音波プローブ10をL1方向へ移動させて、表示部50にリアルタイムに表示されるBモード画像データに患部データが含まれているか否かを確認すると共に、そのBモード画像データを透過データ823と照合し、そのBモード画像データの例えば透過データ823と重なる領域に透過データ823と略同じデータが表示されたとき、超音波プローブ10が第2の位置S21に位置していることがわかる。このように、静止画像データ82と合成が不可能な位置における静止画像データの収集を避けて、合成が可能な患部データを含む静止画像データを収集することができる位置へ超音波プローブ10を移動させることができる。
【0079】
以上述べた本発明の実施例によれば、表示部50の画面51bに1回目に収集した静止画像データ82及びこの静止画像データ82に基づいて生成された位置データ83を表示させることができる。そして、超音波プローブ10を移動させて表示部50の画面にリアルタイムに表示されるBモード画像データに患部データが含まれているか否かを確認すると共に、そのBモード画像データを静止画像データ82の領域データ822と照合することにより、静止画像データ82と合成が不可能な静止画像データの収集を避けて、合成が可能な患部データを含む静止画像データを収集することができる位置へ超音波プローブ10を移動させることができる。
【0080】
また、表示部50の画面51dに静止画像データ82と2回目に収集した静止画像データを合成した静止画像データ82よりも広範囲の合成画像データ82a及び2回目に収集した静止画像データに基づいて生成された位置データ83aを表示させることができる。そして、超音波プローブ10を移動させて表示部50の画面にリアルタイムに表示されるBモード画像データに患部データが含まれているか否かを確認すると共に、そのBモード画像データを合成画像データ82aの領域データ822aと照合することにより、合成画像データ82aと合成が不可能な静止画像データの収集を避けて、合成が可能な患部データを含む静止画像データを収集することができる位置へ超音波プローブ10を移動させることができる。
【0081】
更に、表示部50の画面51fに合成画像データ82aと3回目に収集した静止画像データを合成した合成画像データ82aよりも広範囲の合成画像データ82b及び3回目に収集した静止画像データに基づいて生成された位置データ83bを表示させることができる。そして、超音波プローブ10を移動させて表示部50の画面にリアルタイムに表示されるBモード画像データに患部データが含まれているか否かを確認すると共に、そのBモード画像データを合成画像データ82bの領域データ822bと照合することにより、合成画像データ82bと合成が不可能な静止画像データの収集を避けて、合成が可能な患部データを含む静止画像データを収集することができる位置へ超音波プローブ10を移動させることができる。
【0082】
以上により、合成が可能な関心領域を含む静止画像データを収集することができる位置へ超音波プローブ10を容易に移動させることができる。これにより、広範囲の静止画像データを得るための静止画像データの収集にかかる手間を軽減することができる。
【0083】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、3次元画像生成モードを設定することにより、Bモード画像生成モードタの場合と同様に図2に示したステップS1乃至S8を実行させることにより、画像データ生成部31により生成された3次元画像データから静止画像データを収集し、収集した静止画像データに基づいて3次元空間における位置データを生成する。そして生成した位置データに基づいて超音波プローブ10の複数の位置で収集した複数の静止画像データを合成する。この場合、Bモード画像生成モードの場合と異なる点を、図12を参照して説明する。
【0084】
図12は、図2のステップS4において表示部50に表示される3次元画像データ及び矢印データの画面、並びにこの画面が表示されたときの超音波プローブ10の位置の一例を示した図である。この画面51jには、超音波プローブ10の各走査線θa1乃至θmKの方向への超音波の送受波により被検体P内に走査される超音波の走査領域の3次元画像データ85がリアルタイムに表示される。また、3次元画像データ85の近傍に超音波プローブ10の移動が可能な方向を示す4つの矢印データ571乃至574が表示される。そして、矢印データ571の方向は、超音波プローブ10の矢印L3方向を示している。また、矢印データ572の方向は、L3方向とは反対方向である矢印L4方向を示している。また、矢印データ573の方向は、L3方向及びL4方向に対して垂直方向であるL5方向を示している。また、矢印データ574の方向は、L5方向とは反対方向である矢印L6方向を示している。このように、超音波プローブ10の移動可能な方向を4つの矢印データ571乃至574の中から指定する点が、Bモード画像データの場合と異なる。
【0085】
これにより、合成が不可能な3次元の静止画像データの収集を避けて、合成可能な患部データを含む3次元の静止画像データを収集することができる位置へ超音波プローブ10を容易に移動させることができるため、広範囲の静止画像データを得るための静止画像データの収集にかかる手間を軽減することができる。
【符号の説明】
【0086】
P 被検体
10 超音波プローブ
20 送受信部
30 信号処理部
31 画像データ生成部
40 画像データ処理部
41 位置データ生成部
42 合成処理部
43 表示データ生成部
50 表示部
60 操作部
70 システム制御部
100 超音波診断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波の送受波を行う超音波プローブと、
前記超音波プローブを駆動して前記被検体に超音波を走査する送受信手段と、
前記送受信手段からの受信信号に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段と、
前記超音波プローブの第1の位置で生成された前記画像データから静止画像データを収集し、前記超音波プローブが前記第1の位置から移動された第2の位置で、収集した前記静止画像データと重複して合成可能に生成される仮想の画像データの、前記静止画像データに対する位置を示す位置データを生成する位置データ生成手段と、
前記静止画像データ、この静止画像データ上に重畳された前記位置データ、及び前記画像を表示する表示手段とを
備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記超音波プローブが移動された前記第1の位置と前記第2の位置間の途中の位置又は前記第2の位置で生成された前記画像データから静止画像データを収集し、この収集した静止画像データと前記第1の位置で収集した前記静止画像データを合成して合成画像データを生成する合成処理手段を有することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記合成処理手段は、前記超音波プローブが前記途中位置又は前記第2の位置から更に前記第1の位置とは反対方向に移動された位置で生成された前記画像データから静止画像データを収集し、この収集した静止画像データと前記合成画像データを合成するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記超音波プローブの移動方向を指定する入力を行う操作手段を有し、
前記操作手段からの入力により指定された前記超音波プローブの移動方向は、前記静止画像データが2次元画像データである場合、前記送受信手段により超音波が走査される方向又はこの方向とは反対方向であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記超音波プローブの移動方向を指定する入力を行う操作手段を有し、
前記操作手段からの入力により指定された前記超音波プローブの移動方向は、前記第1の位置を交点として互いに直交する2つの直線の方向として示される4方向の内のいずれかの方向であることを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記位置データは、前記仮想の画像データの領域の輪郭の位置を示すデータであることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
被検体に対して超音波の送受波を行う超音波プローブと、
前記超音波プローブを駆動して前記被検体に超音波を走査する送受信手段と、
前記送受信手段からの受信信号に基づいて画像データを生成する画像データ生成手段と、
前記超音波プローブの第1の位置で生成された前記画像データから静止画像データを収集し、前記超音波プローブが前記第1の位置から移動された第2の位置で、収集した前記静止画像データと重複して合成可能に生成される仮想の画像データの、前記静止画像データに対する位置を示す位置データを生成する位置データ生成手段と、
前記画像データ及びこの画像データ上に重畳して前記静止画像データの前記位置データに含まれる領域を示すデータを表示する表示手段とを
備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
前記表示手段は、前記静止画像データの前記位置データに含まれる領域が所定の透過率で透過する透過データを、前記画像データを表示する領域内の前記超音波プローブが移動される方向とは反対方向に対応する方向の端部上に表示するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−217927(P2011−217927A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89900(P2010−89900)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】