説明

超高純度イオン性液体

【課題】 ハロゲンイオン等の不純物含有量が極めて低いイオン性液体であって、比較的安価で容易に得られるイオン性液体を提供する。
【解決手段】 カチオンKおよびアニオンAの対よりなる、一般式(1):Kで表されるイオン性液体であって、不純物であるアルカリ金属の含有量が5ppm以下であり、かつハロゲンイオンの含有量が計1ppm以下であるものとする。カチオンは、三級アミン化合物又は三級ホスフィン化合物を下記一般式(3)で表される酸エステルを用いて四級化したのち、塩交換することにより得られる、下記一般式(2)で表される群から選択されるものであることが好ましい。
一般式(2):
【化1】


一般式(3): ROY
【化2】


但し、式(2)中、R〜Rはそれぞれ独立の炭素数1〜8の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、Xは、ヘテロ原子である。式(3)中、Rは炭素数1〜8の直鎖状または分岐状のアルキル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学デバイスに有効なハロゲンフリーな高純度イオン性液体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオン性液体は、難揮発性であることから蒸留による精製ができない。従って、その高純度化は大きな課題の一つとされている。
【0003】
従来のイオン性液体は、ハロゲン化アルキルを用いて四級化することによりカチオンオニウム塩を合成し、それをアニオンとなる酸(HA)や塩(MA)を用いて塩交換することにより合成している。
【0004】
このような方法により合成されたイオン性液体は、ハロゲンイオンをカウンターイオンに持つカチオンオニウム塩を経由するため、目的のイオン性液体に変換した後もハロゲンイオンが残留するという問題があった。特にハロゲンイオンの混入が大きな影響を与えるデバイス材料用途においては完全ハロゲンフリーなイオン性液体が求められている。
【0005】
ハロゲンイオンを除去する方法としては、一般的に酸(HA)を用いてハロゲン化水素として揮発させる方法があるが、この方法は腐食性で有害なガスが発生する問題がある。また、アニオンのアルカリ金属塩(MA)を用いてハロゲンイオンをアルカリ金属塩(MX)とし、水洗して除去する方法も良く用いられるが、この方法では原料やそれに由来する有機ハロゲン化物を除去することは困難である。その他のハロゲンの除去方法としては、1992年のジャーナル オブ ケミカル ソサイエティーのケミカル コミュニケーション第965項に、酢酸銀などを用いてハロゲンイオンを不溶性のハロゲン化銀として除去する方法が、また、特表平09−509888号公報には鉛塩を用いて不溶性のハロゲン化鉛としてハロゲンイオンを除去する方法が報告されているが、これらの方法は用いられている金属塩が高価であることや、有害な金属を含んだ廃棄物を生じることから安価で容易な合成法とは言い難い。
【特許文献1】特表平09−509888号公報
【非特許文献1】グリーンケミストリーシリーズvol.2「イオン性液体の機能創成と応用」 NTS出版、2004年2月1日 P.31−32
【非特許文献2】ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティー ケミカルコミュニケーション 第965項
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来の四級化剤にハロゲン化アルキルを用いたイオン性液体の製造にあっては、ハロゲンイオンをカウンターイオンとするカチオンオニウム塩を経由するため、ハロゲンイオンを有害なガスとして揮発させたり、高価な試薬を用いて除去する必要があり、また完全にハロゲンフリーにすることは困難であった。そして、そのようなイオン性液体を電池やコンデンサーなどの電気化学デバイスに用いると、ハロゲンイオンにより電極の腐食などを起こすという問題があった。
【0007】
本発明は、これらの問題に鑑みて、ハロゲンイオン等の不純物含有量が極めて低いイオン性液体であって、比較的安価で容易に得られ、各種電気化学デバイスにも好適に用いられるイオン性液体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のイオン性液体は、カチオンKおよびアニオンAの対よりなる下記一般式(1)で表されるイオン性液体であって、不純物であるアルカリ金属の含有量が5ppm以下であり、かつハロゲンイオンの含有量が1ppm以下であるものとする。
一般式(1): K
【0009】
上記におけるカチオンは、下記一般式(2)で表される群から選択される1種又は2種以上であることが好ましい(請求項2)。
一般式(2):
【化1】

【0010】
但し、式(2)中、R〜Rはそれぞれ独立の炭素数1〜8の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、1組又はそれ以上の同一の基を含んでいてもよい。Xは、酸素、硫黄等のヘテロ原子である。
【0011】
上記カチオンは、三級アミン化合物又は三級ホスフィン化合物を下記一般式(3)で表される酸エステルを用いて四級化したのち、塩交換することにより得ることができる(請求項3)。
一般式(3): ROY
【化2】

【0012】
但し、式(3)中、Rは炭素数1〜8の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、1の化合物中に含まれる複数のRは同一でも異なっていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハロゲンイオンを代表とする不純物の含有量が極めて低いため、各種電気化学デバイスに好適に用いられる高純度イオン性液体を提供できる。
【0014】
本発明のハロゲンフリー高純度イオン性液体は、安価で工業的使用にも適する酸エステルを用いて各種三級アミンや三級ホスフィン化合物を四級化し、目的のアニオンと塩交換することで容易に、かつ安価で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の上記一般式(1)で表される化合物に適用されるカチオンKは、特に限定されるものではないが、例としては、イミダゾリウムカチオン、ピロリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ホスホリウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ホスホロリウムカチオン等が挙げられ、モルホリンやチオモルホリンのように酸素や硫黄などのヘテロ原子を含む物も挙げられる。
【0016】
より具体的には、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−メチル−3−エチルイミダゾリウム、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウム、1−エチル−3−ヘキシルイミダゾリウム、1−エチル−3−オクチルイミダゾリウム、1,3−ジプロピルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−プロピルイミダゾリウム、1−プロピル−3−オクチルイミダゾリウム、1,1−ジメチルピロリウム、1−エチル−1−メチルピロリニウム、1−メチル−1−プロピルピロリニウム、1−ヘキシル−1−メチルピロリウム、1−メチル−1−オクチルピロリウム、1,1−ジエチルピロリウム、1−エチル−1−プロピルピロリウム、1−エチル−1−ヘキシルピロリウム、1−エチル−1−オクチルピロリウム、1,1−ジプロピルピロリウム、1−プロピル−1−ヘキシルピロリウム、1−オクチル−1−プロピルピロリウム、1−メチル−1−ペンチルピロリウム、1−エチル−1−ペンチルピロリウム、1,1−ジペンチルピロリウム、1,1−ジヘキシルピロリウム、1−ヘキシル−1−オクチルピロリウム、1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−プロピルピリジニウム、1−ペンチルピリジニウム、1−ヘキシルピリジニウム、1−オクチルピリジニウム、1,3−ジメチルピリミジニウム、1−エチル−3−メチルピリミジニウム、1−メチル−3−プロピルピミリジニウム、1−メチル−3−ヘキシルピリミジニウム、1−メチル−3−オクチルピリミジニウム、1,3−ジエチルピリミジニウム、1−エチル−3−プロピルピミリジニウム、1−エチル−3−ヘキシルピリミジニウム、1−エチル−3−オクチルピリミジニウム、1,3−ジプロピルピリミジニウム、1−ヘキシル−3−プロピルピリミジニウム、1−オクチル−3−プロピルピリミジニウム、1,3−ジヘキシルピリミジニウム、1−ヘキシル−3−オクチルピリミジニウム、1,3−ジオクチルピリミジニウム、1、4−ジメチルピラジニウム、1−エチル−4−メチルピラジニウム、1−メチル−4−プロピルピラジニウム、1−メチル−4−ヘキシルピラジニウム、1−メチル−4−オクチルピラジニウム、1、4−ジエチルピラジニウム、1−エチル−4−プロピルピラジニウム、1−エチル−4−ヘキシルピラジニウム、1−エチル−4−オクチルピラジニウム、1、4−ジプロピルピラジニウム、1−ヘキシル−4−プロピルピラジニウム、1−オクチル−4−プロピルピラジニウム、1、4−ジヘキシルピラジニウム、1−ヘキシル−4−オクチルピラジニウム、1、4−ジオクチルピラジニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルプロピルアンモニウム、ジエチルメチルプロピルアンモニウム、オクチルジエチルメチルアンモニウム、1、1−ジメチルピロリジニウム、1−エチル−1−メチルピロリジニウム、1,1−ジエチルピロリジニウム、1−メチル−1−プロピルピロリジニウム、1−メチル−1−ヘキシルピロリジニウム、1−メチル−1−オクチルピロリジニウム、1−エチル−1−プロピルピロリジニウム、1,1−ジプロピルピロリジニウム、1−エチル−1−ヘキシルピロリジニウム、1−エチル−1−オクチルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−プロピルピロリジニウム、1−オクチル−1−プロピルピロリジニウム、1,1−ジヘキシルピロリジニウム、1−ヘキシル−1−オクチルピロリジニウム、1,1−ジオクチルピロリジニウム、1、1−ジメチルピペリジニウム、1−エチル−1−メチルピペリジニウム、1,1−ジエチルピペリジニウム、1−メチル−1−プロピルピペリジニウム、1−メチル−1−ヘキシルピペリジニウム、1−メチル−1−オクチルピペリジニウム、1−エチル−1−プロピルピペリジニウム、1,1−ジプロピルピペリジニウム、1−エチル−1−ヘキシルピペリジニウム、1−エチル−1−オクチルピペリジニウム、1−ヘキシル−1−プロピルピペリジニウム、1−オクチル−1−プロピルピペリジニウム、1,1−ジヘキシルピペリジニウム、1−ヘキシル−1−オクチルピペリジニウム、1,1−ジオクチルピペリジニウム、ヘキシルトリメチルホスホニウム、オクチルトリメチルホスホニウム、ヘキシルジエチルメチルホスホニウム、オクチルジエチルメチルホスホニウム、ジエチルジメチルプロピルホスホニウム、4−メチル−4−エチルモルホリン、4−メチル−4−プロピルモルホリン、4−エチル−4−ヘキシルモルホリン、4−メチル−4−エチルチオモルホリン、4−メチル−4−プロピルチオモルホリン、4−エチル−4−ヘキシルチオモルホリン等が挙げられる。
【0017】
本発明の上記一般式(1)で表される化合物に適用されるアニオンAも、特に限定されるものではないが、例としては、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート等の無機フッ素系アニオン、RSO(式中、Rはアルキル基又はフルオロアルキル基を表す)で示されるアルカンスルホネートアニオン、(RSO(式中、Rはアルキル基又はフルオロアルキル基を表す)で示されるアルカンスルホニルイミドアニオン、(XSO(式中、Xはハロゲンを表す)で示されるハロゲン化スルホニルイミドアニオン、(RSO(式中、Rはアルキル基又はフルオロアルキル基を表す)で示されるアルカンスルホニルカルボアニオン、RCOO(式中、Rはアルキル基又はフルオロアルキル基を表す)で示される有機カルボン酸等が挙げられる。
【0018】
本発明において、一般式(2)で表されるカチオンは、上記の通り酸エステルを用いて合成される。酸エステルは、上記一般式(3)で示される化合物であり、具体的には、硫酸、亜硫酸、リン酸、亜リン酸、炭酸などの無機酸エステルや、スルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸などの有機酸エステルが挙げられる。
【0019】
上記一般式(3)中、Rは炭素数1〜8の直鎖状または分岐状のアルキル基を表す。Rで示されるアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素数1〜8の直鎖または分岐状のアルキル基が挙げられ、好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖又は分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0020】
本発明で用いるカチオンの合成法においては、三級アミンや三級ホスフィン化合物1モルに対し、1〜10当量、好ましくは1〜3当量の酸エステルを用いることができる。酸エステル導入時は、激しい発熱を伴うことがあるため、1時間以上かけてゆっくりと滴下することが好ましい。反応温度は、通常0℃〜200℃、好ましくは20℃〜120℃の温度で、1〜100時間反応させることにより収率良く目的物を得ることができる。
【0021】
反応溶媒は使用しなくてもよいが、使用する方が好ましい。反応溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール等のアルコール溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、γ−ブチロラクトン、プロピオンカーボナート等のエステル溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、単独もしくは任意の2種以上の混合物として用いられる。
【0022】
こうして得られたカチオンオニウム塩は、当モル量のアニオンアルカリ金属塩と水または溶媒中で混合することにより、室温で容易に塩交換することができる。このとき用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、水、アセトニトリルなどのニトリル溶媒、メタノールやエタノールなどのアルコール溶媒等が好ましく、単独もしくは任意の2種以上の混合物として用いられる。目的のイオン性液体が疎水性の場合は水が最も好ましく、反応後分離したイオン性液体層を取り出し、30wt%以上のイオン交換水を加え、1回以上、好ましくは5回以上、水洗と分液を繰り返すことによりアルカリ金属含有量5ppm以下、ハロゲンイオン含有量1ppm以下のイオン性液体を得ることができる。また、有機溶媒を反応溶媒に用いた場合は、副生成物の塩が析出することがあるため、析出した塩を濾過し、濾液を濃縮後、30wt%以上のイオン交換水を加え、1回以上、好ましくは5回以上、水洗と分液を繰り返すことにより、また場合によっては疎水性の有機溶媒に抽出してから同様に30wt%以上のイオン交換水を加え、1回以上、好ましくは5回以上、水洗と分液を繰り返すことにより、アルカリ金属含有量5ppm以下、ハロゲンイオン含有量1ppm以下のイオン性液体を得ることができる。
【0023】
本発明のイオン性液体は電気化学デバイス用電解質塩や電気化学デバイス用電解液に好適に用いられる。その際、必要に応じて有機溶媒を併用することも可能である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0025】
(1)1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(次式で表される化合物)の合成
【化3】

【0026】
[実施例1]
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を附した200ml四ッ口フラスコに、1−メチルイミダゾール32.84g(0.4mol)、トルエン40mlを仕込み、40℃に加熱した。そこに、ジエチル硫酸67.84g(0.44mol)を1時間かけてゆっくり滴下した。なおこのとき温度が40℃から55℃に上昇した。滴下後、40℃で更に2時間反応させた後、未反応のジエチル硫酸をトルエンで溶媒洗浄することにより除去した。そして、減圧乾燥により1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・エチル硫酸塩94.3gを得た。
【0027】
次いで、得られた1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・エチル硫酸塩23.63gを水10mlに溶解し、それに室温でリチウム(ビストリフルオロメタンスルホニル)イミド28.71gを水10mlに溶解させた溶液を加え、撹拌した。二層に分離した下層を分液し、40wt%の純水を加え5回水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することで1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・(ビストリフルオロメタンスルホニル)イミド34.37gを得た。ICP発光分光分析(以下、単に「ICP分析」という)によりアルカリ金属イオン及びハロゲンイオン含有量を調べたところ、総アルカリ金属1.3ppm以下、塩素イオン0.2ppm、ヨウ素、臭素各0.1ppm以下(ICP検出限界以下)であった。
【0028】
[比較例1]
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を附した200ml四ッ口フラスコに、1−メチルイミダゾール32.84g(0.4mol)、トルエン40mlを仕込み、50℃に加熱した。そこに、ヨウ化エチル68.63g(0.44mol)を1時間かけてゆっくり滴下した。滴下後、50℃で更に4時間反応させた後、析出した固体を濾過し、溶媒洗浄した後、減圧乾燥することにより1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨウ素塩90.47gを得た。
【0029】
次いで、得られた1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ヨウ素塩90.47gを水10mlに溶解し、それに室温でリチウム(ビストリフルオロメタンスルホニル)イミド28.71gを水10mlに溶解させた溶液を加え、撹拌した。二層に分離した下層を分液し、40wt%の純水を加え5回水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することで1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・(ビストリフルオロメタンスルホニル)イミド33.57gを得た。ICP分析の結果、総アルカリ金属2.8ppm、塩素3.2ppm、ヨウ素4.8ppmを含んでいた。
【0030】
(2)1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(次式で表される化合物)の合成
【化4】

【0031】
[実施例2]
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を附した50ml四ッ口フラスコに、1−メチルイミダゾール41.05g(0.5mol)、トルエン50mlを仕込み、80℃に加熱後、メタンスルホン酸プロピル76.00g(0.55mol)を1時間以上かけてゆっくり滴下した。還流温度で40時間撹拌した。冷却後、トルエンによる溶媒洗浄を行い、減圧乾燥により1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムメタンスルホン酸塩99.13gを得た。次いで、得られた1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムメタンスルホン酸塩99.13gを水80mlに溶解し、それに室温でリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド139.24gを水80mlに溶解させて撹拌した。二層に分離した下層を取り出し、40wt%の純水を加え5回水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することにより1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド178.75gを得た。ICP分析の結果、総アルカリ金属2.1ppm以下、塩素イオン0.6ppm、ヨウ素、臭素各0.1ppm以下(ICP検出限界以下)であった。
【0032】
[比較例2]
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を附した50ml四ッ口フラスコに、1−メチルイミダゾール41.05g(0.5mol)、トルエン50mlを仕込み、50℃に加熱後、ヨウ化プロピル93.49g(0.55mol)を1時間以上かけてゆっくり滴下した。50℃で4時間加熱撹拌した後、析出物を濾取し、トルエンを用いて洗浄して減圧乾燥することにより1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨウ素塩122.26gを得た。次いで、得られた1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムメタンスルホン酸塩122.26gを水80mlに溶解し、それに室温でリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド139.24gを水80mlに溶解させて撹拌した。二層に分離した下層を取り出し、40wt%の純水を加え5回水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することにより1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド175.39gを得た。ICP分析の結果、総アルカリ金属2.4ppm、塩素2.9ppm、ヨウ素6.5ppmを含んでいた。
(3)1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(次式で表される化合物)の合成
【化5】

【0033】
[実施例3]
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を附した50ml四ッ口フラスコに、1−メチルイミダゾール41.05g(0.5mol)、トルエン50mlを仕込み、80℃に加熱後、ジヘキシル硫酸146.52g(0.55mol)を1時間以上かけてゆっくり滴下した。還流温度で25時間撹拌した。冷却後、トルエンによる溶媒洗浄を行い、減圧乾燥により1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムヘキシル硫酸塩156.83gを得た。次いで、得られた1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムヘキシル硫酸塩99.13gを水80mlに溶解し、それに室温でリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド139.24gを水80mlに溶解させて撹拌した。二層に分離した下層を取り出し、40wt%の純水を加え5回水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することにより1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド197.31gを得た。ICP分析の結果、総アルカリ金属2.7ppm、塩素イオン0.7ppm、ヨウ素、臭素各0.1ppm以下(ICP検出限界以下)であった。
【0034】
[比較例3]
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を附した50ml四ッ口フラスコに、1−メチルイミダゾール41.05g(0.5mol)、トルエン50mlを仕込み、50℃に加熱後、臭化ヘキシル90.24g(0.55mol)を1時間以上かけてゆっくり滴下した。還流温度で5時間撹拌した。冷却後、析出物を濾取し、溶媒洗浄し、減圧乾燥することにより1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム臭素塩119.88gを得た。次いで、得られた1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム臭素塩119.88gを水80mlに溶解し、それに室温でリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド139.24gを水80mlに溶解させて撹拌した。二層に分離した下層を取り出し、40wt%の純水を加え5回水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することにより1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド197.31gを得た。ICP分析の結果、総アルカリ金属3.7ppm、塩素3.3ppm、臭素24ppmを含んでいた。
【0035】
(4)1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドの合成
【化6】

【0036】
[実施例4]
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を附した200ml四ッ口フラスコに、1−メチルイミダゾール32.84g(0.4mol)、トルエン40mlを仕込み、30℃に加熱した。そこに、ジエチル硫酸67.84g(0.44mol)を1時間かけてゆっくり滴下した。なおこのとき温度が30℃から47℃に上昇した。滴下後、30℃で更に3時間反応させた後、未反応のジエチル硫酸をトルエンで溶媒洗浄することにより除去した。そして、減圧乾燥により1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・エチル硫酸塩93.8gを得た。
【0037】
次いで、得られた1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・エチル硫酸塩93.8gを水20mlに溶解し、それに室温でカリウムビス(フルオロスルホニル)イミド86.82gを水20mlに溶解させた溶液を加え、撹拌した。二層に分離した下層を分液し、40wt%の純水を加え5回水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することで1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(フルオロスルホニル)イミド107.20gを得た。ICP分析の結果、総アルカリ金属3.1ppm、塩素イオン0.3ppm、ヨウ素、臭素各0.1ppm以下(ICP検出限界以下)であった。
【0038】
[比較例4]
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を附した200ml四ッ口フラスコに、1−メチルイミダゾール32.84g(0.4mol)、トルエン40mlを仕込み、50℃に加熱した。そこに、ヨウ化エチル68.63g(0.44mol)を1時間かけてゆっくり滴下した。滴下後、50℃で更に4時間反応させた後、析出した固体を濾過し、溶媒洗浄した後、減圧乾燥することにより1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヨウ素塩90.47gを得た。
【0039】
次いで、得られた1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ヨウ素塩90.47gを水20mlに溶解し、それに室温でカリウムビス(フルオロスルホニル)イミド86.82gを水20mlに溶解させた溶液を加え、撹拌した。二層に分離した下層を分液し、40wt%の純水を加え5回水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することで1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(フルオロスルホニル)イミド95.2gを得た。ICP分析の結果、総アルカリ金属3.3ppm、塩素3.1ppm、ヨウ素5.1ppmを含んでいた。
【0040】
(5)ジエチルヘキシルメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(次式で表される化合物)の合成
【化7】

【0041】
[実施例5]
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を附した200ml四ッ口フラスコに、ジエチルヘキシルアミン78.65 g(0.5mol)、メタノール50mlを仕込み加熱した。そこに、トリメチルリン酸70.04g(0.50mol)を1時間以上かけてゆっくり滴下し、15時間還流させた。反応後、室温まで冷却し、減圧乾燥によりジエチルヘキシルメチルアンモニウムリン酸塩136.80gを得た。次いで、得られた減圧乾燥によりジエチルヘキシルメチルアンモニウムリン酸塩136.80gを水50mlに溶解し、それに室温でリチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド189.66gを水50mlに溶解させた溶液を加え、撹拌した。二層に分離した下層を分液し、40wt%の純水を加え5回水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することによりジエチルヘキシルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド262.43gを得た。ICP分析の結果、総アルカリ金属2.4ppm、塩素0.6ppm、ヨウ素、臭素各0.1ppm以下(ICP検出限界以下)であった。
【0042】
(6)1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(次式で表される化合物)の合成
【化8】

【0043】
[実施例6]
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を附した200ml四ッ口フラスコに、1−エチルイミダゾール48.07g(0.5mol)、トルエン50mlを仕込み、100℃に加熱した。そこに、メチルメタンスルホン酸55.07g(0.50mol)を1時間以上かけてゆっくり滴下し、25時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、減圧乾燥により1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチルスルホン酸塩101.07gを得た。次いで、得られたジエチルヘキシルメチルアンモニウムリン酸塩101.07gを水50mlに溶解し、それに室温でリチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド189.68gを水50mlに溶解させて撹拌した。二層に分離した下層を取り出し、40wt%の純水を加え5回水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することにより1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド228.71gを得た。ICP分析の結果、総アルカリ金属1.7ppm、塩素0.6ppm、ヨウ素、臭素各0.1ppm以下(検出限界以下)であった。
【0044】
(7)1−アリル−1−メチルピロリジニウムヘキサフルオロホスフェート(次式で表される化合物)の合成
【化9】

【0045】
[実施例7]
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を附した200ml四ッ口フラスコに、1−アリルイミダゾール54.07g(0.5mol)、トルエン50mlを仕込み、ジメチル硫酸63.01g(0.50mol)を1時間以上かけてゆっくり滴下し、5時間反応させた。反応後、減圧乾燥により1−アリル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩114.79gを得た。次いで、得られた1−アリル−3−メチルイミダゾリウムメチル硫酸塩114.79gを水80mlに溶解し、それに室温でリチウムヘキサフルオロホスフェート74.44gを水80mlに溶解させて撹拌した。二層に分離した下層を取り出し、40wt%の純水を加え5回水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することにより1−アリル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート127.37gを得た。ICP分析の結果、総アルカリ金属2.1ppm、塩素0.4ppm、ヨウ素、臭素各0.1ppm以下(ICP検出限界以下)であった。
【0046】
(8)1−メチル−1−プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(次式で表される化合物)の合成
【化10】

【0047】
[実施例8]
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を附した50ml四ッ口フラスコに、1−メチルピペリジン4.96g(0.05mol)、トルエン5mlを仕込み、50℃に加熱後、ジプロピル硫酸10.02g(0.055mol)を1時間以上かけてゆっくり滴下した。10時間反応させた後、減圧乾燥により1−メチル−3−プロピルピペリジニウムプロピル硫酸塩13.37gを得た。次いで、得られた1−メチル−3−プロピルピペリジニウムプロピル硫酸塩13.37gを水8mlに溶解し、それに室温でカリウムビス(フルオロスルホニル)イミド10.5gを水8mlに溶解させて撹拌した。二層に分離した下層を取り出し、40wt%の純水を加え5回水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することにより1−メチル−3−プロピルピロリニウムビス(フルオロスルホニル)イミド15.31gを得た。ICP分析の結果、総アルカリ金属1.8ppm、塩素0.5ppm、ヨウ素、臭素各0.1ppm以下(ICP検出限界以下)であった。
【0048】
(9)トリブチルメチルホスフィニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(次式で表される化合物)の合成
【化11】

【0049】
[実施例9]
攪拌機、滴下ロート、冷却管、温度計を附した50ml四ッ口フラスコに、トリブチルホスフィン101.16g(0.5mol)、トルエン50mlを仕込み、ジメチル硫酸63.07g(0.05mol)を1時間以上かけてゆっくり滴下した。反応後、トルエンによる溶媒洗浄を行った後、減圧乾燥によりトリブチルメチルホスフィニウムメチル硫酸塩159.30gを得た。次いで、得られたトリブチルメチルホスフィニウムメチル硫酸塩159.30gを水80mlに溶解し、それに室温でリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド139.24gを水80mlに溶解させて撹拌した。二層に分離した下層を取り出し、40wt%の純水を加え5回水洗することにより副生成物を除去し、真空乾燥することによりトリブチルメチルホスホフィニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド422.88gを得た。ICP分析の結果、総アルカリ金属1.6ppm、塩素0.5ppm、ヨウ素、臭素各0.1ppm以下(ICP検出限界以下)であった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のイオン性液体は、電池やキャパシタなどの電気化学デバイス用電解質や反応溶媒に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオンKおよびアニオンAの対よりなる下記一般式(1)で表されるイオン性液体であって、不純物であるアルカリ金属の含有量が5ppm以下であり、かつハロゲンイオンの含有量が1ppm以下であるイオン性液体。
一般式(1): K
【請求項2】
前記カチオンが下記一般式(2)で表される群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のイオン性液体。
一般式(2):
【化1】

但し、式(2)中、R〜Rはそれぞれ独立の炭素数1〜8の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、1組又はそれ以上の同一の基を含んでいてもよい。Xは、酸素、硫黄等のヘテロ原子である。
【請求項3】
前記カチオンが、三級アミン化合物又は三級ホスフィン化合物を下記一般式(3)で表される酸エステルを用いて四級化したのち、塩交換することにより得られたことを特徴とする、請求項2に記載のイオン性液体。
一般式(3): ROY
【化2】

但し、式(3)中、Rは炭素数1〜8の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、1の化合物中に含まれる複数のRは同一でも異なっていてもよい。

【公開番号】特開2006−278167(P2006−278167A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96423(P2005−96423)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】