説明

足場板固定用の締結具

【課題】水平梁材に容易に装着し得るとともに容易に取り外すことができ、繰り返して再利用できる足場板固定用の締結具を提供する。
【解決手段】締結具20は足場板10を水平梁材11に固定するために使用される。締結具20は鋼材製の棒材からなり、足場板10の表面に沿って延びる締結具本体部21を有し、この一端部には足場板10の一方側から突出する水平梁材11の一方の突出端に係合する第1のフック部22と、水平梁材11の他方の突出端に係合する第2のフック部23とを有している。フック部22を水平梁材11に係合させた状態のもとでフック部23を水平梁材11に係合させることにより足場板10は水平梁材11に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水平梁材の上に配置される足場板を水平梁材に固定するための締結具に関し、特に、水平梁材から取り外して繰り返して使用することができる締結具に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物を構築したり改修したりする際には、作業者が建築作業を行うために足場装置が建築物の周囲や内部に仮設され、地盤に基礎用のパネルを構築する際にも土木作業用の足場装置が地盤に構築される。このような足場装置としては、水平梁材が設けられた四角形の建て枠を所定の間隔を隔てて配置し、2つの隣り合う建て枠の水平梁材に足場板を装着するようにしたタイプがある。このタイプの足場装置は、特許文献1に記載されるように、両端部にはフックつまり爪部が設けられた足場板が使用されており、足場板はフックの部分で水平梁材に引っ掛けられて装着される。このように両端部にフックが設けられた足場板は布板とも言われている。
【0003】
一方、足場装置が設けられる部位によっては、特許文献2および特許文献3に記載されるように、両端部にフックが設けられていない足場板が使用される。フックが設けられていない足場板を水平梁材に固定するには、特許文献2に記載されるように、鋼材などからなる金属製のバンドやワイヤ等の結束具を用いて足場板を水平梁材に固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−253877号公報
【特許文献2】実開昭57−192353号公報
【特許文献3】特開2001−49623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、バンド等の結束具を用いて足場板を水平梁材に固定するようにすると、足場板を水平梁材に締結する際には、鋼材からなる金属製の結束具を折り曲げるために締結用の工具を用いる必要があり、足場板の締結作業に時間がかかることになる。一方、仮設足場を用いて建築作業や土木作業が終了した後には、仮設足場装置を建築現場や土木作業現場から撤去することになり、その際にはバンド等の結束具を足場装置から取り外すことになる。バンド等の結束具の取り外しは、ワイヤカッター用の工具を用いて行われており、取り外し作業に時間を要することになる。しかも、取り外されたバンド等の結束具は、短く寸断されるので、それをそのままでは再利用することはできずに廃棄されている。
【0006】
土木建築作業を迅速に行うには、仮設用の足場装置をいかにして迅速に組み立てることができるかが重要な課題となっている。しかも、従来のように、足場板を水平梁材に固定するために金属製のバンド等の結束具を用いると、足場板を取り外す際には結束具をワイヤカッターにより短く寸断する必要があり、結束具を再利用することはできずに、取り外された結束具は産業廃棄物となっている。
【0007】
本発明の目的は、水平梁材に容易に装着し得るとともに容易に取り外すことができる足場板固定用の締結具を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、繰り返して再利用することができる足場板固定用の締結具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の足場板固定用の締結具は、水平梁材の上に配置された足場板を前記水平梁材に固定する足場板固定用の締結具であって、鋼材製の棒材からなり、前記水平梁材の上に配置された足場板の表面に沿って幅方向に延びる締結具本体部と、前記締結具本体部の一端部に連なって前記一端部に対して折り曲げられ、前記水平梁材の上に配置された足場板の一方側から突出する前記水平梁材の一方の突出端に係合する円弧状の第1のフック部と、前記足場板の他方側から突出する前記水平梁材の他方の突出端に係合する円弧状の第2のフック部とを有し、前記第1のフック部を前記水平梁材に係合させた状態のもとで前記第2のフック部を前記水平梁材に係合させて前記足場板を前記水平梁材に固定することを特徴とする。
【0010】
本発明の足場板固定用の締結具は、前記足場板の表面に当接して前記第1と第2のフック部が前記水平梁材に係合した状態のもとで前記足場板を前記水平梁材に向けて押し付ける押圧部を前記締結具本体部に設けることを特徴とする。本発明の足場板固定用の締結具は、前記第1と第2のフック部の一方のフック部の先端に広がる方向に折り曲げられ、前記一方のフック部を前記水平梁材に対して着脱する際に、前記一方のフック部に対する前記水平梁材を案内する折り曲げガイドを有することを特徴とする。本発明の足場板固定用の締結具は、前記締結具本体部を部分的に折り曲げることにより前記押圧部を前記締結具本体部に一体に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、締結具の両端部に設けられたフック部をそれぞれ水平梁材に係合させることによって水平梁材の上に配置された足場板は水平梁材に締結される。足場板を水平梁材から取り外す際には、それぞれのフック部と水平梁材との係合を解いて締結具を水平梁材から取り外す。このように、フック部を水平梁材に係合つまり引っ掛ける操作により容易に水平梁材に締結具を装着し得るとともに容易に取り外すことができる。さらに、取り外した締結具は、廃棄物として廃棄することなく、別の足場装置における足場板固定用として繰り返して再利用することができるので、産業廃棄物の発生を抑制することができる。
【0012】
締結具本体部の中央部分を足場板に当接するようにすると、フック部を水平梁材に係合させるときには締結具本体部の両端部が足場板に向けて接近する方向に弾性変形するので、フック部を水平梁材に係合する作業を容易に行うことができる。しかも、中央部分を起点としてそれぞれのフック部には水平梁材に向かう弾性力が加えられるので、締結具により足場板を確実に固定することができる。これにより、足場板が水平梁材の上でずれ移動することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態である締結具を用いて足場板を水平梁材に固定した状態を示す斜視図である。
【図2】(A)は図1に示された締結具を示す拡大斜視図であり、(B)は図2(A)の正面図である。
【図3】(A)は図1における3A−3A線方向の拡大断面図であり、(B)は図3(A)における3B−3B線方向の断面図であり、(C)は図3(A)における3C−3C線方向の断面図である。
【図4】(A),(B)は締結具を用いて足場板を固定する手順を示す工程図であり、図4(C)は図4(B)における4C−4C線方向の断面図である。
【図5】(A)〜(C)はそれぞれ本発明の他の実施の形態である締結具を用いて足場板を固定した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示されるように、足場板10は足場装置を構成する水平梁材11の上に配置される。それぞれの水平梁材11は垂直支柱12に固定され、足場板10は水平梁材11に対して締結具20を用いて固定される。足場装置を構成する垂直支柱12は、足場装置が建築作業に使用される際には、建築物の周囲や内部に据え付けられ、足場装置が土木作業に使用される際には、地盤に据え付けられることになる。図1においては、それぞれの水平梁材11はその一端部に垂直支柱12が固定されているが、足場装置によっては水平梁材11の両端部に垂直支柱12が固定されることになる。
【0015】
締結具20は、図2に示されるように、鋼材製の丸棒により形成されており、これを図示するように折り曲げることにより形成されている。図示する場合には丸棒としては外径が約6mm程度の部材が使用されている。図1および図3には2枚の足場板10が水平梁材11に配置された状態が示されており、締結具20は2枚の足場板10の合計の幅寸法Wよりもやや長い寸法Lの締結具本体部21を有している。この締結具本体部21は、水平梁材11に締結されたときには足場板10の表面に沿ってその幅方向に延びることになる。
【0016】
締結具本体部21の一端部には円弧状の第1のフック部22が連なって設けられている。第1のフック部22は、図3(A)に示されるように、足場板10の一方側から突出する水平梁材11の一方の突出端に係合される。第1のフック部22は、図3(B)に示されるように、締結具本体部21の一端部に対してほぼ直角方向に折り曲げられた基部22aと、この先端から締結具本体部21に対して幅方向に突出するように円弧状に湾曲した湾曲部22bとを有し、その先端部は水平梁材11の接線方向に真っ直ぐとなって上方に向けて傾斜した傾斜部22cとなっている。
【0017】
締結具本体部21の他端部には第2のフック部23が連なって設けられており、第2のフック部23は第1のフック部22に対して対向している。第2のフック部23は、図3(A)に示されるように、足場板10の他方側から突出する水平梁材11の他方の突出端に係合される。第2のフック部23は、図3(C)に示されるように、締結具本体部21の他端部に対して、第1のフック部22と同様に、ほぼ直角方向に折り曲げられた基部23aと、この先端から締結具本体部21に対して幅方向に突出するように円弧状に湾曲した湾曲部23bとを有しており、その先端部は広がる方向つまり水平梁材11から離れる方向に折り曲げられた折り曲げガイド23cとなっている。
【0018】
締結具20におけるそれぞれのフック部22,23の長さDは、図3に示されるように、足場板10の厚みと水平梁材11の直径との合計寸法Eよりも大きく設定されている。
【0019】
締結具本体部21の長手方向中央部には、図3に示されるように、両方のフック部22,23がそれぞれ水平梁材11に係合した状態のもとで、足場板10を水平梁材11に向けて押し付ける押圧部24が設けられている。この押圧部24は締結具本体部21を部分的に折り曲げることにより締結具本体部21と一体に形成されている。押圧部24は締結具本体部21に対してフック部22,23側つまり図3において下方側にずらすように折り曲げられており、押圧部24は締結具本体部21に対して段差部25を有している。したがって、両方のフック部22,23をそれぞれ水平梁材11に係合させて締結具20を水平梁材11に装着した状態のもとでは、図3(A)に示されるように、締結具本体部21と足場板10との間には段差部25により隙間26が形成されることになり、押圧部24の締結具本体部21に対して弾性変形し、その弾性力によって足場板10には水平梁材11からずれないように締め付け力が加えられる。
【0020】
図2(A)に示すように締結具本体部21がほぼ真っ直ぐとなっているのに対して、図2(B)において二点鎖線で示すように、予め締結具本体部21をフック部側が凸となるように湾曲させた形態とすると、締結具20による足場板10に対する締め付け力を強くすることができる。しかも、このように湾曲した形態とすると、締結具20を水平梁材11に装着して足場板10を締結した状態のもとで締結具本体部21と足場板10との間の隙間26を大きくしても、強固に足場板10を締結することができる。
【0021】
図2に示す足場板固定用の締結具20を用いて足場板10を水平梁材11に固定するには、図4(A)に示すように、水平梁材11に足場板10が配置された状態のもとで、一方のフック部22を水平梁材11の一方の突出端部に係合つまり引っ掛ける。一方のフック部22を水平梁材11に係合させるときには、他方のフック部23を足場板10よりも上方に離して締結具20を足場板10に対して傾斜した状態とすることにより、締結具本体部21の角部に足場板10が入り込むことになる。これにより、作業者は手作業により容易にフック部22を水平梁材11に係合させることができる。
【0022】
次いで、図4(B)に示されるように、他方のフック部23を足場板10に向けて下降移動させる。図4(C)はこのように他方のフック部23を下降移動させてフック部23の先端が水平梁材11に接触した状態を示す。この状態のもとでは、一方のフック部22が既に水平梁材11に係合されているので、図4(C)に示されるように、締結具20は足場板10の長手方向に傾斜した状態となる。この状態のもとで、作業者により図示しない工具を使用してよりフック部23の先端部を押し広げるように弾性変形させるとともにフック部23を水平梁材11に向けて押し付けると、図3に示されるように、締結具20はその両端のフック部22,23がそれぞれ水平梁材11に係合されて水平梁材11に取り付けられた状態となる。このときには、締結具本体部21の両端部には押圧部24に対して段差部25が設けられているので、締結具本体部21の両端部は水平梁材11に向けてこれに当接するまで弾性変形することになる。これにより、フック部23の先端部を弾性変形させる変形量を少なくすることができ、水平梁材11に対するフック部23の係合操作が容易となる。
【0023】
フック部23を水平梁材11に向けて押し付ける際には、フック部23の先端部には、広がる方向つまり水平梁材11から離れる方向に折り曲げられた折り曲げガイド23cが設けられているので、フック部22の先端部のように水平梁材11の接線方向に真っ直ぐとなって上方に向けて傾斜した傾斜部22cを設ける場合に比して、容易にフック部23を水平梁材11に係合させることができる。ただし、フック部23の先端部をフック部22と同様に傾斜部としても、フック部23を水平梁材11に係合させることは工具を用いて先端部を広げるように弾性変形させれば可能である。また、フック部22の先端部をフック部23と同様に折り曲げガイドとしても良い。
【0024】
図3に示すように、締結具20を用いて水平梁材11に足場板10を締結した状態のもとでは、段差部25により締結具本体部21と足場板10との間には隙間26が形成されるので、押圧部24を起点として締結具本体部21の両端部に設けられたフック部22,23には、図3において上方に向かう方向の弾性力が矢印Fで示すように加えられることになる。これにより、鋼材製の棒材からなる締結具20により足場板10は、押圧部24とフック部22,23とにより締め付けられるようにして水平梁材11に締結されることになる。
【0025】
図1に示す仮設足場装置を使用した建築作業や土木作業が終了して、足場装置を分解して所定の作業場所から撤去する際には、締結具20を水平梁材11に装着した場合とは逆にフック部23をまず水平梁材11から取り外すことになる。このときには、工具を用いてフック部23の先端の折り曲げガイド23cを押し広げる。これにより、フック部23が広がる方向に弾性変形するとともに、フック部23が設けられた方の締結具本体部21が足場板10に向けて弾性変形するので、工具を用いて容易にフック部23を水平梁材11から取り外しことができる。
【0026】
フック部23が取り外された後には、工具を使用することなく、フック部22を手作業により容易に水平梁材11から取り外すことができる。締結具20を水平梁材11から取り外しても、締結具20はもとの形状にその弾性により戻るので、他の工事現場の仮設足場装置における足場板10を締結するために締結具20を再使用することができる。したがって、締結具20を足場板10から取り外しても締結具20を廃棄することがなく、産業廃棄物が発生することを防止することができる。
【0027】
図5(A)〜図5(C)はそれぞれ本発明の他の実施の形態である締結具20を示す。上述した締結具20と相違し、図5(A)は1枚の足場板10を締結するため使用される締結具20を示し、図5(B)は相互に平行となって配置された3枚の足場板10を水平梁材11に締結するために使用される締結具20を示す。それぞれ締結具本体部21の長さが相違することを除いて基本構造は上述した場合と同様である。
【0028】
図5(C)に示す締結具20は、締結具本体部21が真っ直ぐとなっており、その締結具本体部21には足場板10側に位置させて別部品によって押圧部24が取り付けられている。この押圧部24は締結具本体部21との間に隙間を形成する本体部24aと、その両端部が折り曲げられて締結具本体部21に溶接等により固定される取付端部24bとを有している。このように、押圧部24を上述のように締結具本体部21を折り曲げることにより形成するようにしても良く、別部品を締結具本体部21に固定するようにしても良い。折り曲げる形態としては、締結具本体部21を全体的に湾曲させてその中央部分を押圧部24として足場板10に接触させるようにした形態がある。
【0029】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した締結具20は棒材を折り曲げることにより締結具本体部21と両方のフック部22,23とが一体となっているが、締結具本体部21とフック部22,23とを別部品を用いて締結具本体部21に対してフック部22,23を溶接するようにしても良い。
【符号の説明】
【0030】
10 足場板
11 水平梁材
12 垂直支柱
20 締結具
21 締結具本体部
22 フック部(第1のフック部)
23 フック部(第2のフック部)
24 押圧部
25 段差部
26 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平梁材の上に配置された足場板を前記水平梁材に固定する足場板固定用の締結具であって、
鋼材製の棒材からなり、前記水平梁材の上に配置された足場板の表面に沿って幅方向に延びる締結具本体部と、
前記締結具本体部の一端部に連なって前記一端部に対して折り曲げられ、前記水平梁材の上に配置された足場板の一方側から突出する前記水平梁材の一方の突出端に係合する円弧状の第1のフック部と、
前記足場板の他方側から突出する前記水平梁材の他方の突出端に係合する円弧状の第2のフック部とを有し、
前記第1のフック部を前記水平梁材に係合させた状態のもとで前記第2のフック部を前記水平梁材に係合させて前記足場板を前記水平梁材に固定することを特徴とする足場板固定用の締結具。
【請求項2】
請求項1記載の足場板固定用の締結具において、前記足場板の表面に当接して前記第1と第2のフック部が前記水平梁材に係合した状態のもとで前記足場板を前記水平梁材に向けて押し付ける押圧部を前記締結具本体部に設けることを特徴とする足場板固定用の締結具。
【請求項3】
請求項1または2記載の足場板固定用の締結具において、前記第1と第2のフック部の一方のフック部の先端に広がる方向に折り曲げられ、前記一方のフック部を前記水平梁材に対して着脱する際に、前記一方のフック部に対する前記水平梁材を案内する折り曲げガイドを有することを特徴とする足場板固定用の締結具。
【請求項4】
請求項2記載の足場板固定用の締結具において、前記締結具本体部を部分的に折り曲げることにより前記押圧部を前記締結具本体部に一体に形成することを特徴とする足場板固定用の締結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−58265(P2011−58265A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209452(P2009−209452)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(507060516)ジャパン スチールス グループ株式会社 (10)