説明

路面排水処理装置

【課題】路面排水からの汚染物質の除去処理を簡易且つ安価な構成によって達成する路面排水処理装置を提供する。
【解決手段】略鉛直方向に配設された排水管90の途中又は終端に処理ユニット1を介設した路面排水処理装置において、処理ユニット1を、流路中に濾材30が配設された第1流路2と、濾材30を迂回して排水管90に接続された第2流路3を備えて構成する。係る構成によれば、地中に処理槽を設ける構成に比して、設置に伴う占有スペースが小さく、スペース面での設置自由度が高く、また、大規模な土木建築工事を必要とせず、設置コストの低減という面において極めて有用であり、延いては路面排水処理装置をより安価に提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、路面排水の処理装置、さらに詳しくは、高架道路の路面に降った雨水とか路面洗浄水等の路面排水を、高架道路の橋脚に沿って略鉛直に配設された排水管を通して地面側に流下させて放水路へ排出するようにした路面排水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車が走行する道路の路面上には、自動車の排気ガス中の有害物質を含んだ微粒子、濁水の原因となる微粒子、タイヤの摩耗塵、アスファルト摩耗塵等の環境破壊を招来する恐れのある様々な物質(以下、これを総称して「汚染物質」という)が堆積している。
【0003】
このような路面上に堆積した汚染物質は、降雨によって洗い流され、雨水に混入した状態で雨水と共に側溝に流入し、該側溝を通って路面排水として放水路へ排出される。この場合、特に道路が高架道路である場合には、広範囲から側溝に集水された路面排水は、集水後、側溝部分から橋脚に沿って略鉛直に配設された排水管を通って地面まで流下し、地面側の放水路へ排出される(特許文献1参照)。
【0004】
ところで、各種の汚染物質が混入した路面排水を何等の汚染物質除去処理を行うことなくそのまま放水路へ排出すると、この汚染物質が河川に流入して水質汚染を引き起こすとか、土壌中に浸透して土壌汚染を引き起こす危険性のあることは容易に想像でき、そのため路面排水に混入した汚染物質の除去を主旨とする路面排水処理技術が種々提案されている(例えば、特許文献2〜5参照)。
【0005】
一方、汚染物質の除去を目的とする路面排水処理技術を開発するに際しては、降雨開始時点からの時間の経過に伴う「路面排水量の変化」と、路面排水への「汚染物質の混入量の変化」の関係を考慮することが必要である。
【0006】
「路面排水量の変化」 路面排水はその殆どが雨水によってもたらされるものである。そして、路面排水量は、時間当たりの雨量が少ない「小降り状態」であっても、時間当たりの雨量が多い「大降り状態」であっても、また断続的な降雨であっても「継続的な降雨」であっても、「降雨の継続時間」という観点からすれば、これら何れの場合も、「降雨の継続時間の経過とともに路面排水量が増加する」ものとして総括できる。
【0007】
「汚染物質の混入量の変化」 路面に堆積した汚染物質は雨水によって洗い流されるが、その多くは降雨初期の雨水によって集中的に洗い流される。従って、降雨初期の路面排水には汚染物質が多量に含まれるが、それ以降の路面排水には汚染物質は殆ど含まれていない、換言すれば、汚染物質は降雨初期の路面排水に集中する、と考えられる。
【0008】
これら二点を勘案すれば、降雨初期に発生する路面排水、いわゆる「初期フラッシュ排水」には「水量は少ないが汚染物質の混入量は多い」という特性がある一方、それ以降に発生する路面排水には「汚染物質の混入量は極めて少ないものの、その水量が多い」という特性がある。
【0009】
以上のことから、路面排水の全量に対して同じような浄化処理を行うのは非現実的であり、汚染物質の混入量の多い初期フラッシュ排水に対してのみ浄化処理を行うべきであると考えられ、係る観点から、路面排水を初期フラッシュ排水とこれ以外の排水に分水し、初期フラッシュ排水を処理対象とする技術も提案されている(例えば、特許文献2〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】 特開2009−257005号公報
【特許文献2】 特開2004−183376号公報
【特許文献3】 特開2001−334257号公報
【特許文献4】 特開2006−028844号公報
【特許文献5】 特開2009−035963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、特許文献1〜5に示されるものは、共に、路面排水を、地面に設置した処理槽に導入し、処理槽内において汚染物質を沈殿除去するもの(特許文献1、2、5)、処理槽内において汚染物質を沈殿及び濾過により除去するもの(特許文献3)、処理槽内において汚染物質を旋回分離により除去するもの(特許文献4)であって、何れも処理槽を用いることから、大きな設置スペースを必要とし、その結果、装置の設置に伴うイニシャルコストが高くつくとともに、処理槽に溜まった汚染物質の取り除き作業が面倒であり、その維持管理に係るランニングコストも高くつくという問題がある。
【0012】
また、特許文献2〜5のそれぞれに固有の問題としては以下の点が挙げられる。
【0013】
特許文献1に示されるものは、高架道路の雨水を利用するに際して、降雨初期に発生する路面排水を初期汚濁水として初期汚濁水槽に貯留した後、これをポンプによって下水道へ排出し、初期汚濁水以降の路面排水のみを雑用水として利用するものである。従って、この技術では、初期汚濁水は、雑用水とは分水されるものの、汚染物質の除去処理がなされることなくそのまま下水道へ排出されることから、環境汚染の防止という観点からすれば無意味な技術といわざるを得ないものである。
【0014】
特許文献2に示されるものでは、「道路側溝排水枡蓋」を、該排水枡蓋の外周縁に沿って設けられた集水溝とその内側に位置する大きな開口部からなる二重構造とし、水量の少ない初期フラッシュ排水を上記集水溝に導入し、これを処理槽に流入させる一方、初期フラッシュ排水以降の水量の多い路面排水は上記開口から直接処理槽へ流入させることで、初期フラッシュ排水とそれ以外の路面排水を分水するものである。しかし、この分水機能は、路面勾配に依存して上記排水枡蓋側へ流れてくる路面排水を、初期フラッシュ排水とそれ以外の路面排水との間における水量差及び流速差を利用して分水するものであるため、路面状態(例えば、路面上における土砂の堆積状態等)によって分水機能が左右され、その信頼性という点において問題がある。
【0015】
特許文献3に示されるものは、処理槽にU型の初期フラッシュ排水の流路を設け、その流入口から流入する初期フラッシュ排水を一旦降下移動させてその底部で汚染物質を沈殿除去し、さらに初期フラッシュ排水を上記底部から流出口へ向けて上昇移動させるとともに、この上昇移動の間に上昇流路に設けた処理体で汚染物質を濾過し、最終的に上記流出口から排出させるようになっている。しかし、初期フラッシュ排水の流れは、上記流入口と流出口のヘッド差に依存し、流入に伴う動圧は殆ど寄与しない構成であるところ、このヘッド差自体が少ないため上記処理体透過時の圧損の影響が顕著となり、その結果、初期フラッシュ排水の流れは極めて緩慢となり、初期フラッシュ排水からの汚染物質の除去機能は低いものと考えられる。
【0016】
特許文献4及び特許文献5に示されるものは、ともに、初期フラッシュ排水に混入した汚染物質を旋回分離によって除去するものであるが、初期フラッシュ排水はその水量が少ないことから、旋回分離機能は低いものとならざるを得ず、従って、汚染物質の除去機能の信頼性という点において問題がある。
【0017】
そこで本願発明は、高架道路のように路面排水を略鉛直に配設された排水管を通して排出するようにした路面排水処理装置において、路面排水からの汚染物質の除去処理を簡易且つ安価な構成によって確実に実現することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0019】
本願の第1の発明では、路面排水を略鉛直方向に配設された排水管90を通して放水路95へ排出するようにした路面排水処理装置において、上記排水管90の途中又は終端に介設される処理ユニット1を備えるとともに、上記処理ユニット1を、上記排水管90に対して略同軸上に接続され且つその流路中に濾材30が配設された第1流路2と、該第1流路2の上記濾材30を迂回するように該第1流路2の上流部2aと下流部2bを連通し且つその流路面積が上記排水管90の流路面積と略同等となるように設定された第2流路3を備えて構成したことを特徴としている。
【0020】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る路面排水処理装置において、上記濾材30を、上記第1流路2に対して着脱自在に構成したことを特徴としている。
【0021】
本願の第3の発明では、上記第1又は第2の発明に係る路面排水処理装置において、上記濾材30を、上記第1流路2の流路方向に前後して併設される複数の濾材31,32,33で構成したことを特徴としている。
【0022】
本願の第4の発明では、上記第3の発明に係る路面排水処理装置において、上記各濾材31,32,33を、繊維素材で構成された繊維濾材、濾過砂、濾過砂利、活性炭の何れか一つ又は二つ以上を主要素として構成したことを特徴としている。
【0023】
本願の第5の発明では、上記第3の発明に係る路面排水処理装置において、上記各濾材31,32,33の濾過速度を、該各濾材31,32,33相互間において略均等に設定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
(a)本願の第1の発明に係る路面排水処理装置では、路面排水を略鉛直方向に配設された排水管90を通して放水路95へ排出するようにした路面排水処理装置において、上記排水管90の途中又は終端に介設される処理ユニット1を備えるとともに、上記処理ユニット1を、上記排水管90に対して略同軸上に接続され且つその流路中に濾材30が配設された第1流路2と、該第1流路2の上記濾材30を迂回するように該第1流路2の上流部2aと下流部2bを連通し且つその流路面積が上記排水管90の流路面積と略同等となるように設定された第2流路3を備えて構成しているので、以下のような特有の効果が得られる。
【0025】
(a−1)処理ユニット1が、上記濾材30を備えた上記第1流路2と上記第2流路3の二つの流路を併設した極めて簡単且つコンパクトな構成とされ、しかも排水管90の途中又は終端に介設される構成であることから、従来のように地中に処理槽を設ける構成に比して、設置に伴う占有スペースが小さいため、スペース面での設置自由度が高く、また、大規模な土木建築工事を必要とせず、設置コストの低減という面において極めて有用であり、これらの結果、路面排水処理装置をより安価に提供することができる。
【0026】
(a−2)上記処理ユニット1においては、その第1流路2と第2流路3の流路方向が共に略鉛直方向とされていることから、路面排水は流路壁との間に接触摩擦を殆ど生じることなく重力によって流下し、特に上記濾材30が備えられた上記第1流路2においてはこれが上記排水管90に対して略同軸上に接続されているため、初期フラッシュ排水は高い動圧をもって上記濾材30に直接流入し、該濾材30の流通抵抗に起因する圧損の影響を殆ど受けることなく該濾材30をスムーズに透過することで高い濾過速度が得られ、その結果、上記濾材30において路面排水に混入している汚染物質が効率的に且つより確実に除去され、該汚染物質が放水路95側に排出されることに起因する環境破壊が可及的に防止されるなど、環境保全という面において極めて有用である。
【0027】
(a−3)降雨継続時間の経過に伴って路面排水の水量が増大して上記第1流路2側の許容流量(上記濾材30の流通抵抗を加味した許容流量)を越えると、次第に上記濾材30の上流側に路面排水の溜まりが生じることになるが、この路面排水の溜まりが上記第1流路2の上流部2aに達すると、それまで上記第1流路2側に流入していた路面排水の多くは上記第2流路3側へ流入し、該第2流路3を通って流下排出されることで路面排水の高い排水性が確保され、例えば、上記排水管90に路面排水が溜まって水位が上昇しこれが路面に噴出する路面排水の逆流状態の発生が未然に且つ確実に回避されるなど、路面排水処理装置の信頼性という面において有用な効果が得られる。この場合、路面排水の全量に対する上記濾材30を透過する水量の割合は小さくなるが、このように上記第2流路3側へ路面排水が流入する時点においては路面排水への汚染物質の混入は皆無か、有っても極めて少量であるため、汚染物質による環境破壊の懸念は生じない。
【0028】
なお、このような路面排水処理装置の信頼性の確保という効果は、上述のような路面排水の水量増加時のみではなく、例えば、上記濾材30に目詰まりが生じてその透過速度が大きく低下したような場合においても得られるものである。
【0029】
(b)本願の第2の発明に係る路面排水処理装置によれば、上記(a)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記濾材30を、上記第1流路2に対して着脱自在に構成しているので、上記濾材30において捕捉された汚染物質を取り除く等のメンテナンス作業に際しては、該濾材30を上記第1流路2側から取り外して十分な作業スペースがある場所でメンテナンスを実施することができ、その結果、メンテナンス作業の簡易化が促進され、延いては高い保守管理性を備えた路面排水処理装置を提供することができる。
【0030】
(c)本願の第3の発明に係る路面排水処理装置によれば、上記(a)又は(b)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記濾材30を、上記第1流路2の流路方向に前後して併設される複数の濾材31,32,33で構成しているので、例えば、上記濾材30が単体構成である場合に比して、各濾材31,32,33をコンパクト且つ軽量に形成することができ、そのメンテナンス作業における作業性が良好となり、延いては路面排水処理装置の保守管理性のさらなる向上が期待できる。
【0031】
また、通常、路面上に堆積する汚染物質の種類とか量は一定ではなく、その路面の使用条件(例えば、走行する自動車の種類とか台数等)とか、その路面の位置的な条件(例えば、降雨、降雪の多い場所と少ない場所、砂埃が多い場所と少ない場所等)によって異なるものであるところ、例えば、上各濾材31,32,33相互間において異なる種類あるいは性状の濾材を選択して使用することで、上記濾材30全体としての濾過特性を上記各使用条件に対応させて任意に設定することができ、その結果、路面排水処理装置の要求性能面での多様化が促進され、延いては路面排水処理装置の適用範囲の拡大及び汎用性の向上が期待できる。
【0032】
(d)本願の第4の発明に係る路面排水処理装置によれば、上記各濾材31,32,33を、繊維素材で構成された繊維濾材、濾過砂、濾過砂利、活性炭の何れか一つ又は二つ以上を主要素として構成しているので、これら濾材それぞれの特性を考慮してこれを適宜選択することで、上記(c)に記載の効果をより確実に得ることができる。
【0033】
(e)本願の第5の発明に係る路面排水処理装置によれば、上記(c)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記各濾材31,32,33の濾過速度を、該各濾材31,32,33相互間において略均等に設定しているので、路面排水は上記各濾材31,32,33を略同じ速度で淀みなく流れ、該各濾材31,32,33における汚染物質の除去作用が安定的に且つ効率良く行われ、より高い汚染物質の除去性能をもつ路面排水処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】 本願発明の第1の実施形態に係る路面排水処理装置の設置状態を示す斜視図である。
【図2】 図1に示した路面排水処理装置を構成する処理ユニットの拡大図である。
【図3】 図2のIII−III断面図である。
【図4】 図3のIV−IV断面図である。
【図5】 図3のV−V断面図である。
【図6】 図3のVI−VI断面図である。
【図7】 図3のVII−VII断面図である。
【図8】 図3に示した濾材の収納体の構造を示す拡大斜視図である。
【図9】 図3に示したスクリーン支持体の構造を示す拡大斜視図である。
【図10】 本願発明の第2の実施形態に係る路面排水処理装置の設置状態を示す斜視図である。
【図11】 図10に示した路面排水処理装置を構成する処理ユニットの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0035】
A:第1の実施形態
図1には、本願発明の第1の実施形態に係る路面排水処理装置Zを示している。この路面排水処理装置Zは、高速道路等の高架道路101の路面上に降った雨水による路面排水を、これに混入した汚染物質を除去しながら地面側の放水路95へ排出するためのものであって、高架道路101の路側に設置された側溝(図示省略)と、該側溝にて集水された路面排水を橋脚102側へ引き出す導水管(図示省略)と、上記橋脚102の壁面に沿って略鉛直方向に設置されるとともに、その上端が上記導水管に接続された排水管90と、該排水管90の下端寄り部位に介設された処理ユニット1を備えて構成される。
【0036】
上記排水管90は、樹脂管とか鋼管で構成されるが、特にこの実施形態ではこれを樹脂製丸管で構成したものを例示している。そして、この排水管90の下端寄り部位に次述の処理ユニット1が介設される。この場合、上記処理ユニット1の介設形態としては、新規に設けられる排水管90に上記処理ユニット1を介設する場合と、既設の排水管90に上記処理ユニット1を介設する場合とが考えられるが、この実施形態では後者の場合を例示している。なお、ここでは、上記排水管90を、上記処理ユニット1より上流側に位置する部分を上流側管部91、下流側に位置する部分を下流側管部92として示している。
【0037】
上記処理ユニット1は、本願発明の要旨を成すものであって、図2〜図4に示すように、縦長の略矩形の外観形体をもち、その全長に亘って伸び且つ上記排水管90と略同等の流路面積をもつ第1流路2と、該第1流路2と略同等の流路面積をもち且つ該第1流路2よりも流路長さの短い第2流路3が、流路方向に延設された隔壁14を挟んでその両側に隣接状態で併設されている。
【0038】
上記第1流路2は、図3に示すように、その上端部2aが上記上流側管部91の下端に、その下端部2bが上記下流側管部92の上端に、それぞれ接続されることから、該上端部2aと下端部2bを上記上流側管部91及び下流側管部92に対応した径寸法をもつ丸管状に形成し、これら上端部2aと下端部2bの中間に位置する部分は角管状に形成している(図2、図5、図7参照)。
【0039】
上記第2流路3は、図3に示すように、上記隔壁14を挟んで上記第1流路2の角管部に対応するように形成された角管状の流路であって、その上流側は上記隔壁14に形成した流入口17を介して上記第1流路2に連通され、その下流側は上記隔壁14に形成した流出口18を介して上記第1流路2に連通されており、上記第1流路2との関係では該第1流路2の角管部(後述するスクリーン支持体19及び各収納体21〜23の配置部分)を迂回する迂回流路となっている。
【0040】
一方、上記第1流路2の角管部の軸方向中央寄り部分(即ち、上記第2流路3による迂回部分)には、次述のスクリーン支持体19及び三個の収納体21〜23が、それぞれ着脱自在に配置される。これら各部材19、21〜23の着脱を可能とするために、図3に示すように、上記第1流路2の反第2流路3側の壁面13に縦長の作業用開口16を形成し、この作業用開口16を蓋体15によって開閉蓋し得るようにしている。さらに、上記作業用開口16を通して臨み得る上記第1流路2の内部の上記作業用開口16を挟んで対向する両壁面11,11(図4、図7参照)には、奥行き方向に伸びる左右一対の桟材28,28が上下方向に所定間隔をもって、多段(この実施形態では、上記スクリーン支持体19及び三個の収納体21〜23に対応させて4段)に設けられている。
【0041】
そして、上から一番目の桟材28部分には次述のスクリーン支持体19が、二番目〜四番目の桟材28部分には次述の第1収納体21〜第3収納体23が、それぞれ上記第1流路2の奥行き方向に移動可能に収納配置される(図3、図4、図7参照)。なお、この場合、図4に示すように、上記第1収納体21の上面と上記流入口17の下縁17aの間に寸法hの高低差を確保している。
【0042】
上記第1収納体21〜第3収納体23であるが、これら各収納体21〜23は、その内部に収納される濾材の種類とか収納量等が異なるのみであってそれ自体の構造は同一であるので、ここでは、図8に示すように、第1収納体21を例にとって説明し、これを第2収納体22及び第3収納体23の構成にそれぞれ援用する。
【0043】
上記第1収納体21は、例えば、樹脂材あるいはステンレス鋼等の金属材によって形成された上面開口の箱体であって、その底壁25には適宜径の通孔26が多数形成されている。また、その周壁24の対向する一対に壁部の上端寄り部位には横長スリット状の手掛部27が形成されており、第1収納体21の着脱時にはこの手掛部27に手を掛けて作業を行うようになっている。
【0044】
ここで、上記各収納体21〜23内にそれぞれ収納される濾材31〜33について説明する。濾材の種類としては、繊維素材で構成された繊維濾材とか、濾過砂とか、濾過砂利又は活性炭が考えられる。
【0045】
上記繊維濾材の素材繊維としては、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ガラス繊維等があり、これらの素材繊維を用いた繊維濾材が市販されている。これら各繊維濾材は、空隙率(濾材体積から繊維体積を除いた空間率)が高いため濾過速度が高く、濾過に伴う圧損が低く、極微細粒子の捕捉も可能で、しかも軽量で且つ変形容易性に富むという素材繊維に由来する特性を有することから、濾過対象である路面排水に混入した夾雑物の形体とか汚染物質の形体及び性状等に照らして、最適なものを選択して使用すれば良い。
【0046】
また、繊維濾材の形体としては、球状、糸状、帯状、板状等のものが市販されているので、これらを選択して使用すれば良い。
【0047】
なお、この実施形態のように、上記収納体21〜23を着脱する構成としたものにあっては、繊維濾材の軽量性は濾材選択に際しての重要ポイントとなる。また、繊維濾材の変形容易性は、特に糸状、帯状、板状の繊維濾材を採用した場合には、該繊維濾材の上記収納体への収納あるいは取出しに際してその作業が極めて容易となることから、これも濾材選択に際しての重要ポイントとなる。
【0048】
また、繊維濾材は、一の収納体に同一種類及び形体のものを用いることに限定されるものではなく、例えば、複数種類及び形体のものを組み合わせて用いることもできる。この点は、上記各収納体21〜23相互間においても同様である。また、繊維濾材と濾過砂、濾過砂利あるいは活性炭を組み合わせて用いることも可能である。
【0049】
なお、濾過砂、濾過砂利及び活性炭については周知であるため説明を省略する。
【0050】
一方、上記各収納体21〜23において路面排水に混入した汚染物質の除去作用を安定的に且つ効率良く行うという観点から、該各収納体21〜23に収納される各濾材31,32,33の濾過速度を、これら相互間において略均等に設定することも必要である。また、上記各収納体21〜23相互間においては、上流側に配置されるものほど汚染物質の捕捉量が多いと考えられるため、この捕捉物の貯留容積を確保する観点から、上流側に配置される収納体ほど、ここに収納される濾材の体積を小さくすることが必要となるが、単に濾材体積を増減させたのでは、濾過速度の均等化が阻害される。これらの点を勘案すれば、上流側の収納体に収納される濾材を圧縮してその充填度を高めることが最適と考えられ、また、係る要請に対しては変形容易性に富む繊維濾材が好適であるといえる(図3参照)。
【0051】
このように上記各収納体21〜23相互間において、これらにそれぞれ収納される繊維濾材31〜33の充填度を変化させるということは、該各繊維濾材31〜33における繊維密度が変化し、該各繊維濾材31〜33の微粒子捕捉性能が変化するということに他ならず、従って、この実施形態の場合には、上記第1収納体21の第1濾材31、上記第2収納体22の第2濾材32、上記第3収納体23の第3濾材33の順に微粒子捕捉性能が変化する設定となっている。なお、濾過砂、濾過砂利あるいは活性炭において微粒子捕捉性能変化させる場合には、その粒径を収納体の配置位置に応じて変更設定する。
【0052】
上記スクリーン支持体19は、上記第1流路2側から流下する路面排水の動圧を調整して過度の動圧が上記各収納体21〜23側にかかるのを抑制する緩衝機能と、上記第1流路2側から流下する路面排水を上記第2流路3側へ偏流させる偏流機能を併せ持つものであって、図9に示すように、上面が開口した矩形箱体をその上面側から底壁19a側に向けて斜めにカットした側面視略三角状の形体をもつとともに、その斜めカットの開口部分を閉蓋するように、通孔20aを多数備えた多孔板で成るスクリーン20を着脱自在に取付けて構成される。なお、上記底壁19aには、多数の通穴19bが設けられている。
【0053】
続いて、上記処理ユニット1における路面排水の浄化作用について、図3を参照して説明する。
【0054】
既述のように、高架道路101の路面に堆積した各種の汚染物質は、降雨時に雨水に混入して路面排水として上記排水管90側へ集水される。また、この汚染物質の混入量は降雨初期の雨水による路面排水、即ち、初期フラッシュ排水に集中的に含まれ、降雨初期以降の路面排水には殆ど含まれないため、汚染物質の除去処理は初期フラッシュ排水に対して行われれば十分と考えられる。さらに、路面排水の水量は、初期フラッシュ排水の発生期間においては少なく、当該期間経過後においては増大する。そして、この増大した水量の最大量は、上記排水管90の設計時において設定された最大水量に対応するものと考えられる。
【0055】
この実施形態の路面排水処理装置は、上述のような排水条件及び汚染物質の除去条件に適応すべく構成されたものであり、これによって所期の目的が確実に達成されるものである。
【0056】
図3において、降雨初期の路面排水、即ち、初期フラッシュ排水は、矢印「w1a」で示すように、上記排水管90の上流側管部91から直接に処理ユニット1の上記第1流路2側に流下流入する。この場合、初期フラッシュ排水は、その水量が少ないため、流通抵抗を殆ど受けることなく上記スクリーン支持体19の上記スクリーン20を通過して上記スクリーン支持体19内に導入される。そして、上記スクリーン支持体19の底壁19aの各通穴19bを通過する際、初期フラッシュ排水に混入していた比較的大きな夾雑物が捕集除去される。
【0057】
上記スクリーン支持体19を通過した初期フラッシュ排水は、その下流側にそれぞれ位置する上記各収納体21〜23に順次流入し、該第1収納体21の第1濾材31、上記第2収納体22の第2濾材32及び上記第3収納体23の第3濾材33を順次透過して、上記下流側管部92側へ流出する。
【0058】
上記各収納体21〜23の各濾材31〜33を初期フラッシュ排水が透過する際に、この初期フラッシュ排水に混入していた汚染物質、即ち、自動車の排気ガス中の有害物質を含んだ微粒子とか、タイヤの摩耗塵とか、アスファルト摩耗塵等の環境破壊を招来する恐れのある様々な物質が、濾過により捕集され、最下段の第3収納体23の第3濾材33を通過した路面排水は、汚染物質の除去された清浄排水「wa2」として、放水路95から河川等に排出される。従って、初期フラッシュ排水に混入した汚染物質が河川等に排出されるということがなく、この汚染物質による環境汚染とか土壌汚染が未然に且つ確実に防止され、環境保全が図られるものである。
【0059】
なお、初期フラッシュ排水は、その水量が少ないため、最上段に位置する第1収納体21の上流側に貯留されることは殆ど無く、もし貯留されるとしても上記第1収納体21の上面よりも上記流入口17の下縁17aが上方へ寸法hだけ上位に位置しているため、この部分が堰となるので、上記初期フラッシュ排水が上記流入口17を通って上記第2流路3側へ流入することは無く、初期フラッシュ排水の全量に対して汚染物質の除去処理が為される。
【0060】
一方、降雨継続時間の経過とともに路面排水の水量は次第に増加するが、上記第1流路2側の許容通水量は上記各濾材31〜33の流通抵抗によって自ずと制限されるので、初期フラッシュ排水の発生期間の経過後においては、路面排水が最上段に位置する第1収納体21の第1濾材31の上側から上記スクリーン支持体19の底部側に掛けての部分に溜まり始める。そして、その水位が上記流入口17の下縁17aを越えて上昇すると、路面排水は、その一部は依然として上記第1流路2側へ流入するものの、その大部分は矢印「w1b」で示すように、上記流入口17を通って上記第2流路3側へ流入し、上記各濾材31〜33を通ることなくこれを迂回した状態で、該各濾材31〜33よりも下流側の上記流出口18から上記第1流路2側へ再流入し、未処理の路面排水「w2b」として、上記第1流路2側を通った処理済の路面排水「w2a」と合流して放水路95側へ排出される。この時点での路面排水には汚染物質が殆ど含まれていないため、未処理の路面排水「w2b」が河川等に排出されても環境汚染を引き起こすことはない。
【0061】
なお、水量が増加した路面排水が上記第1流路2側から上記流入口17を通って上記第2流路3側へ流れる場合、上記スクリーン支持体19の上記スクリーン20の緩衝機能によって路面排水による過度の動圧が上記各収納体21〜23側にかかるのが抑制される一方、上記スクリーン20の偏流機能によって路面排水は上記第1流路2側からスムーズに上記第2流路3側へ流入することになる。
【0062】
また、上記第2流路3は、その流路面積が上記排水管90の流路面積と略同等とされているので、降雨量が激増した場合でも、これが当初の設計流量を越えない限り、良好な排水性が確保される。
【0063】
上記処理ユニット1の長期に亘る稼動に伴って、上記スクリーン支持体19内には捕集された比較的大きな夾雑物が堆積し、また上記各収納体21〜23の上記各濾材31〜33には濾過捕集物が付着堆積し、それぞれその機能低下を招来するため、定期的にあるいは必要に応じてこれらを清掃してその機能回復を図るとか、上記各濾材31〜33にあっては新たな濾材に取り替える等の点検保守作業が必要である。係る場合には、図3に示すように、上記処理ユニット1に設けた上記蓋体15を取り外して上記作業用開口16から上記スクリーン支持体19及び上記各収納体21〜23を外部へ引き出せばよい。このように上記各収納体21〜23を上記処理ユニット1側から取り出すことで、その点検保守作業を広い作業スペースにおいて迅速且つ的確に行うことができる。点検保守後は、上記スクリーン支持体19及び上記収納体21〜23を上記作業用開口16から上記処理ユニット1内に差し入れて所定位置にセットし、さらに上記蓋体15によって上記作業用開口16を閉蓋する。
【0064】
B:第2の実施形態
図10及び図11には、本願発明の第2の実施形態に係る路面排水処理装置Zを示している。この路面排水処理装置Zは、上記第1の実施形態に係る路面排水処理装置Zとその基本構成を同じにするものであって、これと異なる点は、上記第1の実施形態の路面排水処理装置においては上記排水管90が樹脂製の丸管で構成されていたのに対して、この第2の実施形態の路面排水処理装置Zでは上記排水管90を角型の鋼管で構成した点である。このように上記排水管90を角型の鋼管で構成した場合には、上記第1の実施形態において説明したと同様の作用効果が得られることは勿論であるが、これに加えて、以下のような特有の利点が得られる。
【0065】
即ち、上記排水管90を鋼管製としたことで、該排水管90と上記処理ユニット1とを溶接にて接続することができ、特に既設の排水管90に対して、その一部を切り取ってここに上記処理ユニット1を介設するような場合には、その作業性が良好となることから、路面排水処理装置の低コスト化を図る上においても好適である。
【0066】
また、上記排水管90を鋼管製としたことで、これに接続される上記処理ユニット1においては、上記第1の実施形態のように該処理ユニット1の上下両端部を丸管状に形成することなく、該処理ユニット1の全体を角管状に形成することができるのでその製作が容易であり、上記処理ユニット1の製作コストをより低く抑えることができる。
【0067】
これ以外の構成及び作用効果については、上記第1の実施形態の該当説明を援用してここでの説明を省略する。
【0068】
C:その他
(1)上記各実施形態においては、上記処理ユニット1を上記排水管90の下端寄りの途中に介設しているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、他の実施形態においては、例えば、上記処理ユニット1を上記排水管90の下端に配置し、該処理ユニット1の上記第1流路2から上記放水路95へ直接路面排水を排出するように構成することもできる。係る構成とした場合には、上記処理ユニット1の介設作業が簡易となることから、作業コストのさらなる低減が期待できる。
【0069】
(2)上記各実施形態においては、上記処理ユニット1を角管構造としているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、例えば、他の実施形態においては、これを丸管構造とすることもできるものである。
【0070】
(3)上記各実施形態においては、上記各収納体21〜23を同一形状としているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、例えば、他の実施形態においては、該各収納体21〜23の形状、例えば、高さ寸法を必要に応じて適宜異ならせることもできるものである。
【0071】
(4)上記各実施形態においては、上記濾材30を第1濾材31〜第3濾材33の三つの濾材で構成しているが、本願発明は係る構成に限定されるものではなく、例えば、他の実施形態においては、この濾材30を構成する濾材の数を必要に応じて適宜増減させることもできるものである。
【符号の説明】
【0072】
1 ・・処理ユニット
2 ・・第1流路
3 ・・第2流路
11 ・・側面壁
12 ・・背面壁
13 ・・前面壁
14 ・・隔壁
15 ・・蓋体
16 ・・作業用開口
17 ・・流入口
18 ・・流出口
19 ・・スクリーン支持体
20 ・・スクリーン
21 ・・第1収納体
22 ・・第2収納体
23 ・・第3収納体
24 ・・周壁
25 ・・底壁
26 ・・通孔
27 ・・手掛部
28 ・・桟材
30 ・・濾材
31 ・・第1濾材
32 ・・第2濾材
33 ・・第3濾材
90 ・・排水管
95 ・・放水路
101・・高架道路
102・・橋脚
Z ・・路面排水処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面排水を略鉛直方向に配設された排水管(90)を通して放水路(95)へ排出するようにした路面排水処理装置であって、
上記排水管(90)の途中又は終端に介設される処理ユニット(1)を備えるとともに、
上記処理ユニット(1)が、上記排水管(90)に対して略同軸上に接続され且つその流路中に濾材(30)が配設された第1流路(2)と、該第1流路(2)の上記濾材(30)を迂回するように該第1流路(2)の上流部(2a)と下流部(2b)を連通し且つその流路面積が上記排水管(90)の流路面積と略同等となるように設定された第2流路(3)とを備えた構成であることを特徴とする路面排水処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記濾材(30)は、上記第1流路(2)に対して着脱自在に構成されていることを特徴とする路面排水処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記濾材(30)は、上記第1流路(2)の流路方向に前後して併設される複数の濾材(31),(32),(33)で構成されていることを特徴とする路面排水処理装置。
【請求項4】
請求項3において、
上記各濾材(31),(32),(33)は、繊維素材で構成された繊維濾材、濾過砂、濾過砂利、活性炭の何れか一つ又は二つ以上を主要素として構成されていることを特徴とする路面排水処理装置。
【請求項5】
請求項3において、
上記各濾材(31),(32),(33)の濾過速度を、該各濾材(31),(32),(33)相互間において略均等に設定したことを特徴とする路面排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−26256(P2012−26256A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181458(P2010−181458)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(510203924)大真興業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】