説明

身だしなみ確認ミラー

【課題】衝撃を受けても破片の散乱を防止することができ、不用意な像の歪みを抑えて必要な範囲をミラーから近い距離で映すことができる身だしなみ確認ミラーを提供する。
【解決手段】表面側を突状に湾曲させた樹脂製の透明板3と、この透明板の裏面に積層された反射層とからなるミラー本体2と、ミラー本体2の裏面側に設けられた取り付け部6とを有し、透明板3の平面視での最長部の長さLを400mm以上に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身だしなみ確認ミラーに関し、さらに詳しくは、衝撃を受けても破片の散乱を防止することができ、不用意な像の歪みを抑えて必要な範囲をミラーから近い距離で映すことができる身だしなみ確認ミラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品工場や半導体工場のクリーンルーム等の入口や店舗のバックヤード等には、身だしなみ確認ミラーが設置されていることがある。食品工場等では、商品(製品)への異物混入防止するために設置されている。作業者は、このミラーによって自身の服装等の乱れの有無を確認するようにしている。例えば、自身に付着しているゴミ、抜け毛等があることを確認した場合には、粘着ローラ等の除去器具を用いてこれらを除去している。店舗等では接客マナー向上等を目的として、身だしなみ確認ミラーが設置されている。
【0003】
ガラス製ミラーは、人や物が衝突等して衝撃を受けると破損して破片が散乱することがある。このような場合、ミラーの破片が異物として商品等に混入しないように厳格に破片を回収しなければならず、その回収作業には多大な労力が必要であった。
【0004】
このような破片の散乱は、樹脂製ミラーにすることにより、大幅に抑制することができる。衝撃に強くて破損し難いミラーとしては、ポリカーボネート等の透明板を用いた樹脂製ミラーが知られている(例えば、特許文献1参照)。身だしなみ確認ミラーとして機能するにはある程度の大きさが必要になるが、樹脂製ミラーは、ガラス製ミラーに比して剛性(形状保持性)が低いため、サイズがある程度大きくなると歪みが生じ易くなる。そのため、樹脂製の平面ミラーにすると映した像の不用意な歪みが目立つという不具合が生じる。また、平面ミラーでは、必要な範囲を映すためにミラーからある程度離れなければならないので、ミラーの使用には相応のスペースが必要になる。しかしながら、特に、店舗等のバックヤードでは広いスペースを確保することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−38860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、衝撃を受けても破片の散乱を防止することができ、不用意な像の歪みを抑えて必要な範囲をミラーから近い距離で映すことができる身だしなみ確認ミラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、表面側を突状に湾曲させた樹脂製の透明板と、この透明板の裏面に積層された反射層とからなるミラー本体と、ミラー本体の裏面側に設けられた取り付け部とを有し、前記透明板の平面視での最長部の長さが400mm以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反射層を裏打ちする透明板を樹脂製にしたので、ガラス製ミラーに比して耐衝撃性が向上する。そのため、取り付け部を介してミラーを必要な場所に設置した際に、ミラー本体に人や物が衝突等して衝撃を受けても、ミラー本体が破損して破片が散乱するような事態を回避できる。
【0009】
樹脂製の透明板の表面側を突状に湾曲させた仕様にすることで、平面ミラーに比して剛性(形状保持性)が向上する。これにより、ミラー本体のサイズがある程度大きくなっても歪みが生じ難くなるので、透明板の平面視での最長部の長さが400mm以上となる大型の樹脂製ミラーであっても、映した像の不用意な歪みを抑えることができる。映した像が平面ミラーに比して小さくなるので、樹脂板の歪みに起因する不用意な歪みがあったとしても目立ちに難くなる。また、このような突状に湾曲した曲面ミラーにすることで、ミラー本体との距離を大きくとらなくても、身だしなみの確認に必要な範囲を確認し易く映すことができる。
【0010】
さらに、必要な範囲を映すには、平面ミラーに比してサイズをコンパクトにできるので、衝突等により衝撃を受ける危険も低減する。加えて、透明板は表面側を突状に湾曲させているので、表面側からの衝撃に耐えるには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の身だしなみ確認ミラーの表面を例示する平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】図2の一部拡大図である。
【図5】別の取り付け部を設けた身だしなみ確認ミラーの実施形態を例示する背面図である。
【図6】図5の実施形態の側面図である。
【図7】図5の実施形態の上面図である。
【図8】図5の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の身だしなみ確認ミラーを、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図4に例示するように、本発明の身だしなみ確認ミラー1(以下、確認ミラー1という)は、ミラー本体2とその裏側に設けられた取り付け部6とを備えている。ミラー本体2は、表面側を突状に湾曲させた樹脂製の透明板3と、この透明板3の裏面に積層された反射層4とを有している。ミラー本体2の表面には表面コート層5a、裏面には裏面コート層5b、5cが積層されている。最外層となる裏面コート層5cは耐水性を確保するために設けられている。
【0014】
身だしなみを確認する範囲は、上半身だけの場合もあり、全身の場合もある。したがって、確認する範囲によって求められるミラー本体2(透明板3)の大きさは異なるが、確認ミラー1として機能させるには、ミラー本体2の大きさは平面視で縦400mm〜800mm、横200mm〜400mm程度になる。即ち、平面視でのミラー本体2(透明板3)の最長部の長さLは400mm以上となり、上限値は800mm程度になる。この実施形態では、ミラー本体2、即ち、透明板3が楕円形なので、長軸が最長部であり、その長さLが400mm以上になっている。
【0015】
透明板3に用いる樹脂としては、ポリカーボネート、アクリル、PET、ポリプロピレン等を例示することができる。ポリカーボネート製の透明板3にすることで耐衝撃性を著しく向上させることができる。
【0016】
ポリカーボネート製の透明板3にした場合は、その厚さを1mm〜3mm程度にすることが好ましい。厚さが1mm未満であると十分な耐衝撃性を確保することが難しくなる。一方、透明板3の厚さを3mm超にすると耐衝撃強度が過大になり不要な重量増加になるためである。より安定して耐衝撃性を得るには2mm以上とするのがよいので厚さを2mm〜3mmに設定するのがより好ましい。ポリカーボネート以外の樹脂によって透明板3を形成した場合は、十分な耐衝撃性を確保するために厚さを3mm以上にする。
【0017】
反射層4としては、金属蒸着膜や金属メッキ膜等を用いることができる。反射層4の層厚は、例えば50nm〜200nm程度であり、この範囲内でほぼ一定の厚さになっている。
【0018】
表面コート層5aとしてはアクリル系、裏面コート層5bとしてはアルキッド系、裏面コート層5cとしてはウレタン系等を用いることができる。表面コート層5aの層厚は10μm程度、裏面コート層の層厚(5bと5cの総厚)は50μm〜70μm程度であり、この範囲内でほぼ一定の厚さになっている。尚、図4は各層の層厚の関係を厳密に例示するものではない。
【0019】
取付け部6は、ミラー本体2を所定の場所に取り付けるために機能する部分であり、樹脂、金属或いは樹脂および金属で形成されている。この実施形態の取り付け部6は、ミラー本体2の裏面に固定される円状の基板7と、平坦な細長形状の引掛板8とを平板状の部材で間隔をあけて連結した構造になっている。引掛板8には貫通穴8aが設けられている。
【0020】
透明板3の曲率半径Rは一定であり、1000mm〜2500mm程度に設定される。曲率半径Rが1000mm未満では、ミラー本体2に映した像が小さくなり過ぎて、身だしなみを確認し難くなる。曲率半径Rが2500mm超では、必要な範囲をミラー本体2に映すためにミラー本体2との距離を大きくしなければならないので、身だしなみを確認するために大きなスペースが必要になる。また、曲率半径Rが2500mm超では、透明板3の剛性を高める効果が小さくなる。したがって、曲率半径Rは1000mm〜2500mmに設定するのが好ましく、より好ましくは1500mm〜2200mmにする。
【0021】
確認ミラー1を製造する手順を以下に例示する。
【0022】
まず、透明板3の表面に表面コート層5aを積層した後、この透明板3を真空成型により所定の形状(曲率半径R)に湾曲させる。次いで、この透明板3の裏面にアルミニウム箔等を蒸着させて反射層4を積層する。次いで、反射層4の裏面に裏面コート層5b、5cを積層した後、所定の形状(楕円形状等)に切断するとミラー本体2になる。このミラー本体2の裏面側に取り付け部6を装着することにより、確認ミラー1が完成する。
【0023】
確認ミラー1は、食品工場や半導体工場のクリーンルーム等の入口や店舗のバックヤード、その他、作業者や接客者等が身だしなみを確認する必要がある場所に設置される。例えば、図2に例示するように、所定の壁面Wに固定されたフック9を、引掛板8に設けた貫通穴8aに係止して確認ミラー1を設置する。この取り付け部6は、平坦な引掛板8が壁面Wに当接することにより、ミラー本体2が壁面Wに平行に設置されるように構成されている。
【0024】
確認ミラー1は、確認ミラー1だけで単独で使用することもできるが、例えば、平面ミラー、凸面ミラー等の別のミラーと対向させて配置して使用することもできる。この場合は、確認ミラー1に映した像を、対置した別のミラーに映して身だしなみを確認する。この使用方法によれば、通常では確認が困難な首回りや背中等の部位であっても確認が容易になる。例えば、背中等に付着したゴミや抜け毛等を粘着ローラ等の除去器具で除去する際に、除去器具の位置と除去器具を当てるべき部位の位置を容易に確認できるので、ゴミ等の除去残りを防止するには有利になる。
【0025】
本発明では透明板3が樹脂製であり、ガラスに比べて耐衝撃性に優れているので、ミラー本体2に人や物が衝突等して衝撃を受けても、ミラー本体2が破損して破片が散乱する事態を回避できる。したがって、散乱したミラー本体2の破片の回収作業に多大な労力を要することもない。そのため、食品工場や半導体工場のクリーンルーム等の入口にも安心して設置することができる。ポリカーボネート製の透明板3にすると著しく耐衝撃性が向上するので、上記のような事態をより確実に回避でき、一段と安全性が高くなる。
【0026】
樹脂製の透明板3を用いて平面ミラーを製造した場合、樹脂はガラスに比して剛性(形状保持性)が低いので、透明板3の平面視での最長部の長さLが400mm以上になると歪みが生じ易くなる。これに起因してミラー本体2に映した像の不用意な歪みが目立つという不具合が生じる。しかしながら、本発明の透明板3は、表面側を突状に湾曲させた仕様になっているので、平面ミラーに比べて剛性が高くなっている。そのため、透明板3が平面視での最長部の長さLが400mm以上の大型サイズであっても歪み難くなり、ミラー本体2に映した像の不用意な歪みを抑えることができる。また、映した像が平面ミラーに比べて小さくなるので、樹脂板3の歪みに起因する不用意な歪みがあったとしても目立ちに難くなる。
【0027】
このようにミラー本体2を突状に湾曲させることで、ミラー本体2との距離を大きくとらなくても、身だしなみの確認に必要な範囲を確認し易く映すことができる。それ故、スペースに余裕のない店舗のバックヤード等にも十分設置することができる。
【0028】
さらに、ミラー本体2が突状の曲面なので、必要な範囲を映すには、平面ミラーに比してサイズをコンパクトにできる。それ故、人や物がミラー本体2に衝突する可能性も低減し、これに伴って衝撃を受ける危険も低減するので、益々、ミラー本体2が破損し難くなる。表面側を突状に湾曲させている透明板3は、表面側からの衝撃に耐えるには有利な形状でもある。
【0029】
この実施形態では、ミラー本体2は平面視で楕円形であるが、円形、四角形等の他の形状にすることもできる。平面視で楕円形にすると、必要な部分のみを映して背景等を映り込み難くすることができる。
【0030】
この取付け部6では、基板7と引掛板8との間にすき間があるので、このすき間に指を挿入して引掛板8を把持できる。したがって、引掛板8を把持して確認ミラー1を任意に場所に容易に移動させることができる。そして、任意の場所に設けられたフック9等の突起を、貫通穴8aに係止するだけで確認ミラー1を設置が完了する。
【0031】
尚、この実施形態では、基板7の表面に、その周縁に沿って全周に渡って両面テープが貼り付けられており、この両面テープによって基板7がミラー本体2に固定されている。この基板7がミラー本体2の補強材としても機能するため、益々、ミラー本体2(透明板3)が歪み難くなっているので、不用意な像の歪みを抑えるには一段と有利になっている。
【0032】
取り付け部6は構造の異なる複数種類を用意しておき、その中から必要に応じて選択したいずれか1種類の取付け部6を、ミラー本体2の裏面側に着脱自在に設けることもできる。
【0033】
例えば、図5〜図8に例示する取り付け部6を用いることもできる。この取り付け部6は、ミラー本体2の裏面の上端部と下端部とを連結するように取り付けられた細長形状のブリッジになっている。ブリッジの材質としては、アルミニウム等の金属や樹脂等を用いる。このブリッジは、ミラー本体2の上下方向に伸びる細長の底板10と、底板10に対向する上板11と、底板10および上板11の幅方向両端どうしを連結する側板12とを備えて、断面四角形状の筒状に形成されている。ブリッジは、断面形状は四角形状に限定されるものではなく、少なくともミラー本体2の上下方向に延びる細長の底板と、この底板の幅方向両側から立設された側板とを備えた筒状であればよい。
【0034】
上板11の長手方向両端部は、底板10よりも突出していてミラー本体2の裏面に沿うように形成されている。このミラー本体2の裏面に沿う部分が固定端部11aになっている。固定端部11aは発泡体やゴム等を基材にした両面テープ15によって、ミラー本体2の裏面と接合されている。
【0035】
また、固定端部11aにはネジ穴が設けられ、ミラー本体2にも、このネジ穴に相当する位置にネジ穴が設けられている。これらネジ穴を連通するネジ13にナット14が螺合している。これにより、両面テープ15による固定端部11aとミラー本体2との接合が剥離した場合でも、ネジ13とナット14によって、ブリッジはミラー本体2から離脱することはない。ミラー本体2と固定端部11aとの接合は、主に両面テープ15が担うので、ナット14をネジ13にきつく螺合させる必要がなく、緩めた状態で螺合させることができる。
【0036】
底板10には、貫通孔10aが設けられている。この貫通孔10aに、壁面Wに固定されたフック9を係止して確認ミラー1を設置する。このブリッジは筒状に形成されて軽量でありながら曲げ剛性を高くするには有利になっている。そのため、このブリッジ(取り付け部6)をミラー本体2の裏面の上端部と下端部とを連結するように設けることで、ミラー本体2(透明板3)が一段と歪み難くなる。
【符号の説明】
【0037】
1 身だしなみ確認ミラー
2 ミラー本体
3 透明板
4 反射層
5a 表面コート層
5b、5c 裏面コート層
6 取り付け部
7 基板
8 引掛板
8a 貫通穴
9 フック
10 底板
10a 貫通穴
11 上板
11a 固定端部
12 側板
13 ネジ
14 ナット
15 両面テープ
W 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側を突状に湾曲させた樹脂製の透明板と、この透明板の裏面に積層された反射層とからなるミラー本体と、ミラー本体の裏面側に設けられた取り付け部とを有し、前記透明板の平面視での最長部の長さが400mm以上であることを特徴とする身だしなみ確認ミラー。
【請求項2】
前記透明板がポリカーボネート製である請求項1に記載の身だしなみ確認ミラー。
【請求項3】
前記透明板の曲率半径が、1000mm〜2500mmである請求項1または2に記載の身だしなみ確認ミラー。
【請求項4】
前記取り付け部が、前記ミラー本体に裏面に固定される円状の基板と、この基板の背面側に設けられる平坦な引掛板とを有し、この引掛板に貫通孔が設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の身だしなみ確認ミラー。
【請求項5】
前記取り付け部が、前記ミラー本体の裏面の上端部と下端部とを連結するように設けられる細長形状のブリッジであり、このブリッジがミラー本体の上下方向に延びる細長の底板と、この底板の幅方向両側から立設する側板とを備えた筒状であるとともに、底板に貫通孔が設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の身だしなみ確認ミラー。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−177486(P2011−177486A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122419(P2010−122419)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(390010526)コミー株式会社 (10)
【Fターム(参考)】