説明

身体機能訓練用具または知育用具

【課題】 人間のもつ認識能力に対して特別に作用する形状と、視覚を通して脳を刺激する彩色との相乗作用により、飽きることなく楽しく使用することができ、かつコスト的な負担をも小さく抑えることができる身体機能訓練用具または知育用具を提供する。
【解決手段】 ベースシートに手形を描き、この手形に多色からなる彩色を施こす。この手形を左右一対からなる左手形Aaと右手形Baによって構成し、個別のベースシートA、Bに描く。これらの手形Aa、Baに数字、文字または記号などによる識別表示を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体障害者などの機能(脳、視覚、手足など)回復、向上あるいは幼児の学習教材、知育教材などに供される身体機能訓練器具または知育用具に関するものであり、人間のもつ認識能力に対して特別に作用する形状と、視覚を通して脳を強く刺激する彩色を使用した点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、五指を有する手袋において、その左手側の指先に雄ファスナーを設ける一方、右手側の指先に雌ファスナーを設け、その接着および離反操作によって手指の機能回復訓練を行うものが提案されている。(特許文献1参照)
【0003】
また五指を有する手袋において、その左手側の指先に雄接点を設ける一方、右手側の指先に雌接点を設け、その接触動作によって音を発生し、音感を養うと共に手指の機能回復訓練を行うものも知られている。(特許文献2参照)このものは、幼児の情操教育用にも提供されている。
【0004】
またベースボードの表面に文字、数字あるいは図形の輪郭形状をもつ嵌込孔を配設する一方、ボード外に上記の輪郭形状に対応するブロック片を用意しておき、このブロック片を嵌込孔に嵌めこむことによって幼児などの知育を促すようにした器具も提案され、一般的にも周知となっている。(特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 実開平06−66721号
【特許文献2】 特開平11−03081号
【特許文献3】 実開平2−13597号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来例に挙げた特許文献1の考案は、義務的に反復操作して機能回復訓練を行うには適したものである。しかしながら、彩色による脳の刺激など考慮されておらず、面白味がなく飽きられてしまい、障害者自身が興味をもって楽しく使用するまでには至っていない。
【0007】
また特許文献2の発明は、音感を刺激することで面白味をもつが、介護者がいないと取り扱いが困難であり、楽しく使えるまでに時間が掛かるという難点があった。またコスト的に高価であり、低幼児にとっては難易度が高すぎるという点も指摘された。
【0008】
また特許文献3の考案は、大きさ、形などの形状認識によるものであり、従って構成パーツに多様性がないと面白味がなく、このため、製作コストが嵩んでしまうという問題があった。また単なる形合せのため操作パターンを憶えてしまうと飽きられやすく、特に知育用としては不満があった。
【0009】
本発明は、こうした点に鑑みてなされたものであり、人に対して特別な認識力を作用する手足の形状と、視覚を通して脳を強く刺激する彩色との相乗作用によって興味をもって楽しく使用することができ、かつコスト的な負担を小さく抑えることができる身体機能訓練用具または知育用具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る身体機能訓練用具または知育用具は、ベースシートに手形または足形を描くと共に、この手形または足形に多色からなる彩色を施したことを特徴とするものである。
【0011】
また本発明に係る身体機能訓練用具または知育用具は、請求項2において、手形を左右一対からなる左手形と右手形によって構成し、これら左手形と右手形を個別のベースシートに描くようにしたことを特徴としている。
【0012】
また本発明に係る身体機能訓練用具または知育用具は、請求項3において、足形を左右一対からなる左足形と右足形によって構成し、これら左足形と右足形を個別のベースシートに描くようにしたことを特徴としている。
【0013】
また本発明に係る身体機能訓練用具または知育用具は、請求項4において、左右の手形または左右の足形を複数個備えると共に、これら手形または足形に数字、文字または記号による識別表示を施したことを特徴としている。
【0014】
また本発明に係る身体機能訓練用具または知育用具は、請求項5において、手形または足形に五指を描き、これら五指に彩色、数字、文字または記号による識別表示を施したことを特徴としている
【発明の効果】
【0015】
このように構成した課題解決手段は、人間のもつ能力の一つである認識能力に対して特別に作用する手足形状と、視覚を通して脳を強く刺激する彩色を用いたものであり、これらの相乗的作用を得ることができる。このため、飽きずに楽しい気分でリハビリなどを行うことができるという優れた効果が得られる。また製作が容易であり、安価に提供することができる。
【0016】
また請求項4のようにしたときには、多数の手形または足形を並べて配列することができる。このため、操作範囲や選択範囲など使用勝手を広げることができると共に、視覚的にもカラフルで心理的にも和む身体機能訓練用具または知育用具を得ることができる。
【0017】
また請求項5のようにしたときには、手形または足形の五指にも操作範囲や選択範囲など使用勝手を広げることができると共に、視覚的にもカラフルで心理的にも和む身体機能訓練用具または知育用具を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 本発明に係る身体機能訓練用具または知育用具のうち、手形を描いたベースシートの説明図である。
【図2】 同じく、足形を描いたベースシートの説明図である。
【図3】 手形を描いたベースシートの使用状態を示す説明図である。
【図4】 足形を描いたベースシートの使用状態を示す説明図である。
【図5】 本発明に係る身体機能訓練用具または知育用具と共に使用した手袋の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る身体機能訓練用具または知育用具を一実施例について説明する。図1において、Aは一方のベースシート AaはベースシートAに描いた左手形 この左手形Aaには、親指1a、人差し指2a、中指3a、薬指4a、小指5aの五指を描くと共に、個別に、例えば赤色、青色、黄色、緑色、ピンク色の彩色による識別表示を施す。また、手形Aaにおける甲の部分にも、赤色、青色、黄色、緑色からなる彩色を施す。
【0020】
また上記の左手形Aaには英字からなる識別表示を施すものであり、rは甲部の「A」からなる識別表示である。また五指には、数字からなる識別表示を施すものであり、aは親指1aに付した「1」の数字からなる識別表示 bは人差し指2aに付した「2」の識別表示 cは中指3aに付した「3」の識別表示 dは薬指4aに付した「4」の識別表示 eは小指5aに付した「5」の識別表示である。
【0021】
また同図において、Baは他方のベースシートBに描いた右手形 この右手形Baには、親指1b、人差し指2b、中指3b、薬指4b、小指5bの五指を描くと共に、個別に、例えば左手形Aaと同じ赤色、青色、黄色、緑色、ピンク色の彩色による識別表示を施す。また、右手形Baにおける甲の部分にも、赤色、青色、黄色、緑色からなる彩色を施す。
【0022】
また上記の右手形Baには、英字からなる識別表示を施すものであり、sは甲部の「B」からなる識別表示 他方、五指には数字からなる識別表示を施すものであり、aは親指1bに付した「1」の数字からなる識別表示 bは人差し指2bに付した「2」の識別表示 cは中指3bに付した「3」の識別表示 dは薬指4bに付した「4」の識別表示 eは小指5bに付した「5」の識別表示である。
【0023】
なお、上記の左手形Aa、右手形Baの甲部に付した「A」、「B」は、英字に代えて「1」、「2」、「3」などの数字、「あ」、「い」、「う」或いは「ド」、「レ」、「ミ」などのかな文字、「□」、「△」などの記号または花、動物、果実などのイラスト図を用いてもよい。またベースシートA、B内ならば手形の表示範囲外に付してもよい。
【0024】
本発明に係る身体機能訓練用具(手形)は上記のように構成されており、これを使用するに当たっては、最初に、2枚のベースシートA、Bをテーブル上などに並べて用意する。障害者などはテーブル前の椅子などに座るようにする。
【0025】
準備が終ったならば、傍にいる介護者が例えば「右手を、シートの右手形Baに合わせて下さい。」の言葉を掛ける。この言葉により障害者は、右手を動かし、その手をベースシートBの右手形Baに合せる。また、「左手の中指で、左手形Aaの親指1aを指して下さい。」の言葉により、指のリハビリ操作を行わせることもできる。
【0026】
このような操作は、他の手指についても同様にして行うことができる。また、指の呼称に代えて彩色表示、数字表示によって行うことができることは勿論である。また2色、例えば左右の「赤」と「青」を指示することで、両手を同時に使用させることもできる。色や数字の指定は任意で良く、このため、個人の障害度によって適切な調整ができる。こうして、カラフルな手指の形状を意識さらには確認しながら新しい感覚で楽しく取り組むことができる。
【0027】
また、本発明に係る身体機能訓練用具は、図3に示すように、障害者から離れた壁などに連続番号からなる識別表示を付した多数枚を貼り付けて使用することができる。この場合、「左手形1、右手形3、左手形4の順に触れて下さい。」の言葉を掛けることにより、歩行を伴ないつつリハビリ作業を楽しく行うこともできる。この場合、カラフルな手形表示が視認性を向上すると共に脳を活性化するため、障害者の運動意欲が高揚し、高いリハビリ効果を得ることができる。
【0028】
また一実施例では、手形をもって身体機能訓練用具としたが、図2のような足形においても適用することができる。
【0029】
同図において、Sは一方のベースシート SaはベースシートSに描いた左足形 mは甲部の「あ」文字からなる識別表示である。この左足形Saには、親指11a、人差し指12a、中指13a、薬指14a、小指15aの五指を描くと共に、個別に、例えば赤色、青色、黄色、緑色、ピンク色の彩色による識別表示を施す。また、足形Saにおける甲の部分にも、赤色、青色、黄色、緑色などからなる彩色を施す。
【0030】
なお指部の五指には、文字、数字、記号などによる識別表示を施してないが、彩色の違いをもって識別表示としている。上記の文字などの識別表示を施すことは容易である。
【0031】
次に、Tは他方のベースシート TaはベースシートTに描いた右足形 nは甲部の「い」文字からなる識別表示である。この右足形Taには、親指11b、人差し指12b、中指13b、薬指14b、小指15bの五指を描くと共に、個別に、例えば赤色、青色、黄色、緑色、ピンク色の彩色による識別表示を施す。また、足形Taにおける甲部分にも、赤色、青色、黄色、緑色などからなる彩色を施す。
【0032】
この他方の右足形Taにおいても、左足形Saと同様に、指部の五指には文字、数字、記号などによる識別表示を施してないが、彩色の違いをもって識別表示としている。
【0033】
上記の左足形Sa、右足形Taによる足脚にリハビリ作業は、ベースシートS、Tを床面などに置いて行うようにするが、前記の手形の場合とでは人的機能の相違があるものの、ほぼ同様にして行うことができる。しかし、足脚と手指とでは自由度が大きく違うところから、作業指示においては、それなりの配慮が必要となる。
【0034】
また本発明に係る身体機能訓練用具は、図4に示すように連続番号からなる識別表示を施した多数枚を床面に並べて使用することができる。この場合、「左足形1、右足形2、左足形3を順に踏んで下さい。」の言葉により、歩行を伴なったリハビリ作業を楽しく行うことができる。このときも、カラフルな彩色表示が脳を活性化するため運動意欲が高揚し、高いリハビリ効果を得ることができる。
【0035】
なお上記の実施例では、手形と足形とを別個に分けて説明したが、両者を同時に使用してリハビリなどの作業などを行うことができることは勿論である。このようにした場合は、手足を同時に使用することによって、さらに運動意欲が増進され、一層楽しさが向上すると共に自由度の高いリハビリ作業を行うことができる。
【0036】
また一実施例では、素手によって手形(左手形Aa、右手形Ba)を指したり、触れたりしたが、図5に示す手袋(左手袋20、右手袋30)を装着して行うこともできる。この手袋には、左手形Aa、右手形Baと同じ彩色、識別表示を施してあり、このようにすることにより、一層楽しいリハビリ作業を行うことができる。上記手袋の彩色、識別表示は手形と異別であっても良いことは勿論である。
【0037】
また一実施例では手形と足形において、彩色と識別表示を左右対称的に施したものであるが、一本一本の指について異なる彩色および識別表示を行ってもかまわない。例えば、数字の場合は10本の指に「0から9」までを連続して符し、彩色の場合は、前述の5色に加えて「黒、紫、橙、肌、灰」などの彩色をしてもよい。
【0038】
また一実施例では、介護者のもとでのリハビリ作業について説明したが、単独で行うことができることは勿論である。また上記の手形、足形は幼児の知育用、教育用としてそのまま適用することができ、保育者と共に、あるいは一人で楽しく遊ぶことができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0039】
A ベースシート
Aa 左手形
1a 親指
2a 人差し指
3a 中指
4a 薬指
5a 小指
a 数字の識別表示
b 数字の識別表示
c 数字の識別表示
d 数字の識別表示
e 数字の識別表示
r 英字の識別表示
B ベースシート
Ba 左手形
1b 親指
2b 人差し指
3b 中指
4b 薬指
5b 小指
s 英字の識別表示
S ベースシート
Sa 左足形
m 識別表示
T ベースシート
Ta 右足形
n 識別表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースシートに手形または足形を描くと共に、この手形または足形に多色からなる彩色を施したことを特徴とする身体機能訓練用具または知育用具。
【請求項2】
手形を左右一対からなる左手形と右手形によって構成し、これら左手形と右手形を個別のベースシートに描くようにしたことを特徴とする請求項1の身体機能訓練用具または知育用具。
【請求項3】
足形を左右一対からなる左足形と右足形によって構成し、これら左足形と右足形を個別のベースシートに描くようにしたことを特徴とする請求項1の身体機能訓練用具または知育用具。
【請求項4】
左右の手形または左右の足形を複数個備えると共に、これら手形または足形に数字、文字または記号による識別表示を施したことを特徴とする請求項2または請求項3の身体機能訓練器用具または知育用具。
【請求項5】
手形または足形に五指を描き、これら五指に彩色、数字、文字または記号による識別表示を施したことを特徴とする請求項1の身体機能訓練用具または知育用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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