説明

身体清潔効果のための生理用ナプキン

改善された身体適合特性を確実に達成できる吸収性物品。吸収性物品は、第1弾性率を有する液体透過性フェーシング層と、フェーシング層に接合された吸収性コア(吸収性コアは第2弾性率を有し、約1%〜約5%の均等な歪みにおいて、第1弾性率は第2弾性率よりも大きい)と、フェーシング層に接合された液体不透過性バックシートとを含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用品及び軽失禁製品のような吸収性物品に関する。特に、本発明は改善された快適性及び身体適合性を有する生理用ナプキンのような生理用品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、使い捨ておむつ及び成人用失禁製品のような使い捨て吸収性製品は、当該技術分野において周知である。かかる製品は、典型的には、時にはフェーシング層と呼ばれ、より一般にはトップシートと呼ばれる身体に面する層を有する。使い捨て吸収性物品上のトップシートは、液体透過性シート又はウェブであり、一般には不織布ウェブが利用される。不織布ウェブは、液体透過性、可撓性、及び柔軟性を提供する。更に使い捨て吸収性製品は、典型的には、身体から吸収された液体を獲得し収容するための吸収性コアと、獲得及び/又は収容された液体が身体又は衣類に接触することを防止するための液体不透過性バックシートとを有する。典型的には、トップシート、バックシート及び吸収性コア、並びに任意に間に配置された他の層は、層状関係に配置されており、少なくともトップシートとバックシートは、典型的には外周縁に沿って接合されている。
【0003】
快適性及び身体適合性は、吸収性物品にとって、商業的に成功するための重要な設計パラメータである。液体処理性能を犠牲にすることのない快適性及び身体適合性は、生理用ナプキン及びパンティライナーのような生理用品、並びに軽失禁パッドにおいて特に重要である。かかる装置は、女性が下着のクロッチ部分に取り付けることによって着用されるように設計されている。かかる装置は、少なくとも生理用ナプキンの体液を受け取るために配置された部分において、接近した、好ましくは身体に接触した、密着した適合性があるように適合すべきであるということが重要である。
【0004】
使い捨て吸収性物品の性能、快適性、及び身体適合性を改善するために、様々な手段が開発されてきた。例えば、米国特許第5,197,959号(1993年3月30日、ビュエルに発行)は、耐屈曲変形要素(flexure-resistant deformation element)を有する生理用ナプキンを開示しており、生理用ナプキンは、生理用ナプキンが着用された時に凸状の上向きの輪郭を有する。生理用ナプキンは、生理用ナプキンが着用された時に凸状の上向きの輪郭を形成又は維持するために、着用者の大腿の横方向の圧縮力に依存する。しかしながら、ビュエル(Buell)の生理用ナプキンは変形要素の追加を必要とし、変形要素は装置にコスト及び複雑さを付加させる。
【0005】
米国特許第6,447,494号(2002年9月10日、カシワギ(Kashiwagi)らに発行)は、中央域及び中央域に隣接して位置する側域を含む生理用ナプキンを開示しており、中央域は側域のよりも低い剛性を有するように構成されている。カシワギ(Kashiwagi)の装置に関して請求された1つの利点は、ナプキンが両側から圧縮された時に逆U字形をとることに起因する改善された適合性である。しかしながら、この装置の作用は、必要な変形を容易にするための接着剤の箇所及び/又は長手方向に向けられている溝の注意深い配置に依存していると思われる。
【0006】
改善された身体適合性の他の試みとして、米国特許第6,447,496号(2002年9月10日、ミズタニ(Mizutani)に発行)が挙げられ、これは変形誘発手段を備えた吸収性積層体を開示している。変形誘発手段は、積層体の肌当接面へのパネル部材の凸形変形を生じさせると言われる。しかしながら、ミズタニ(Mizutani)の積層体は、比較的高価な弾性伸縮部材を必要とする。
【0007】
生理用ナプキンの身体適合性を改善する更に別の試みは、米国特許第6,503,233号(2003年1月7日、チェン(Chen)らに発行)に教示されている。チェン(Chen)らの物品は、股領域において身体にぴったり合った形状を達成するために、外側及び中央の吸収性部材に、それぞれ下方偏向折り目線(downward-deflecting crease lines)及び上方偏向形成線(upward-deflecting shaping line)を組み合わせることによって、身体適合性を向上させると言われる。身体にぴったり合った形状は、「W字形」として記述されている。しかしながら、チェン(Chen)らの装置は、物品を着用する女性のうちわずか60%が使用中にW字形が達成され維持されることを見出した場合に、物品がうまくW字形に曲がると見なされるので、信頼性のある身体適合性を提供しないように思われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故に、簡単且つ経済的に製造できる、改善された身体適合性を有する使い捨て吸収性物品の必要性がある。
更に、改善された身体適合特性を確実に達成できる生理用ナプキンの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
改善された身体適合特性を確実に達成できる吸収性物品が開示される。吸収性物品は、第1弾性率を有する液体透過性フェーシング層と、フェーシング層に接合された吸収性コア(吸収性コアは第2弾性率を有し、約1%〜約5%の均等な歪みにおいて、第1弾性率は第2弾性率よりも大きい)と、フェーシング層に接合された液体不透過性バックシートとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の効果は、生理用ナプキン、パンティライナー、及び軽失禁製品のような、着用者のパンティ内に着用するために設計された実質的にあらゆる女性用衛生製品において享受できるが、本発明は図面に関連して、生理用ナプキンの好ましい実施形態として開示されるであろう。
【0011】
図1は、本発明の生理用ナプキン20の一実施形態の表面を一部切り取った平面図を示し、この生理用ナプキン20は、液体透過性フェーシング層21と、液体不透過性バックシート22と、このフェーシング層21とバックシート22との間に配置された吸収性コア24とを含み、フェーシング層とバックシートは周辺部25の周りで接合され得る。生理用ナプキン20のフェーシング層21は、一般に当該技術分野においてトップシート26として既知であるような、身体接触層であり得る。フェーシング層21は、図1に示すように、また当該技術分野において既知であるようなトップシート26及び補助トップシート27を含む複合体であり得る。
【0012】
生理用ナプキン20は、一般に「ウィング」と呼ばれる側部伸張部28を有することができ、このウィングは生理用ナプキン20のユーザーのパンティの股領域の両側を包むように設計される。生理用ナプキン20及び/又はウィング28は、典型的には、生理用ナプキン20をパンティに取り外し可能に固定するための締着手段(図示せず)を有する。締着手段は、感圧接着剤手段又はフック・ループ式ファスナーのような機械的締結具であり得る。
生理用ナプキン20は、手作業又は当該技術分野において既知であるような商業用高速製造ラインで作製することができる。
【0013】
生理用ナプキン20、並びにその各層又は構成要素は、「身体に面する」表面及び「衣類に面する」表面を有するとして記述することができる。生理用ナプキンの最終的な使用法を考慮すれば容易に理解し得るように、身体に面する表面とは使用中に身体により近い方に向いた層又は構成要素の表面のことであり、衣類に面する表面とは使用中にユーザーの衣類により近い方に向いた表面のことである。従って、例えば、フェーシング層21は、(実際に身体に接触する表面であり得る)身体に面する表面30と、下にある吸収性コアに接着し得る表面である衣類に面する表面31とを有する。例えば、生理用ナプキンの液体不透過性バックシート22の衣類面表面32は、着用者の使用中のパンティに最も近い方を向いており、パンティに接触してもよい(使用される場合、粘着剤取り付け手段を介する)。
【0014】
生理用ナプキン20は、長手方向軸線L及び横断方向軸線Tを有する。長手方向軸線L及び横断方向軸線Tは、使用前の生理用ナプキンの2次元的平面を規定し、これは、図示した実施形態では、高速商業用製造ラインで生理用ナプキンを作製する分野において一般に既知であるような機械方向(MD)及び機械横方向(CD)と関連する。生理用ナプキン20は長さを有し、長さは長手方向軸線Lに平行に測定される最長の寸法である。生理用ナプキンは幅を有し、幅は機械横方向、例えば、横断方向軸線に平行に測定される寸法である。幅は変化することができ、又は生理用ナプキンの長さに沿ってほぼ一定であることができる。一般に、幅は横縁29の間で、横断方向軸線Tに平行に測定することができる。しかしながら、本発明の目的上、本明細書で「有効幅We」と呼ばれ、以下に詳細に論じる更に決定的な寸法が重要である。有効幅Weとは、生理用ナプキンの部分が「面外(out-of-plane)」に変形、すなわち座屈又は上方に偏向することを容易にするのに有効な幅のことであり、一般に横断方向軸線に平行に測定された吸収性コア24の幅、又は以下により詳細に開示するようなエンボス加工されたチャネルの間の幅のことである。一般に、「面外」は図2に表すような「Z」方向への伸張を意味し、「上方」は図2及び3の配向に関して上方を意味し、これは生理用ナプキン20の起立した着用者の上向き方向に対応する。
【0015】
フェーシング層21は、使い捨て吸収性物品上のトップシート用として当該技術分野において既知であるような不織布材を含むことができる。吸収性コア24及びバックシート22は、同様に、当該技術分野において周知であるような吸収性材料及びフィルム材をそれぞれ含むことができる。補助トップシート27は(使用される場合)、吸収性コア24に吸収及び収容される前に、MD及びCDの方向に液体を分配する役目を果たす分配層であることができる。ウィング28は、使用される場合、トップシート又はバックシート又はその両方の一体伸張部であり得、それらのウィングは、長手方向軸線L、横断方向軸線T又はその両方を中心として対称であり得る。
【0016】
本発明に使用される不織布ウェブは、いかなる既知の不織布ウェブ又は2以上の不織布ウェブの複合体でもあることができ、各々は、以下により十分に記述されるように、フェーシング層21として利用されるに十分な機械的(例えば、伸び)特性を有する繊維を含む。繊維は、単一成分繊維、2成分繊維、2構成要素繊維、又は毛管チャネル繊維であり得る。
【0017】
本明細書で使用する時、用語「不織布ウェブ」は、織布又は編地のような規則的で繰り返し的な方法ではなく、個々の繊維又は糸が間に入った(interlaid)構造を有するウェブを指す。不織布ウェブ又は不織布は、例えば、メルトブローイングプロセス、スパンボンディングプロセス、水流交絡プロセス、及び接着カードウェブプロセスなどの多くのプロセスから形成されてきた。不織布の坪量は通常1平方メートル当たりのグラム(g/m2)で表され、繊維直径は通常ミクロンで表される。繊維の大きさはデニールで表すこともできる。(単一層又は1超過の層の複合体であり得る)フェーシング層21のような、本発明の構成要素として有用な不織布ウェブの坪量は、10g/m2〜200g/m2の範囲であり得る。
【0018】
不織布ウェブの構成要素繊維は、ポリマー繊維であり得、単一成分繊維、2成分繊維及び/又は2構成要素繊維、毛管チャネル繊維であり得、5〜200ミクロンの範囲の主要断面寸法(例えば、丸形繊維については直径)を有し得る。構成要素繊維は、約0.1デニール〜約100デニールの範囲であり得る。
【0019】
本明細書で使用する時、「スパンボンド繊維」は、押し出されるフィラメントの直径を持つ微細で通常は円形をした複数個のスピナレットの毛管から、溶融した熱可塑性材料をフィラメントとして押し出し、その後急激に縮小させることにより形成される小径繊維を指す。スパンボンド繊維は、集積表面に付着する時、一般には粘着性はない。スパンボンド繊維は、一般に連続しており、7ミクロンより大きい(サンプルでは少なくとも10)、及びより具体的には約10ミクロン〜40ミクロンの平均直径を有する。
【0020】
本明細書で使用する時、用語「メルトブローイング」は、溶融した熱可塑性材料を、微細で通常は円形をした複数個の金型の毛管を通して、溶融した糸又はフィラメントとして、高速で通常は加熱された収束気体(例えば、空気)流の中へ押し出し、この気体流によって溶融した熱可塑性材料のフィラメントを細くしてその直径を縮小する(その直径はマイクロ繊維の直径となり得る)ことにより繊維が形成されるプロセスを指す。その後、高速気体流によって、メルトブロー繊維を移動させ、集積表面上に付着させ(まだ粘着性であることが多い)、ランダムに分散したメルトブロー繊維のウェブを形成する。メルトブロー繊維は、連続していても、連続していなくてもよく、一般に平均直径が10ミクロンよりも小さいマイクロ繊維である。
【0021】
本明細書で使用される時、用語「ポリマー」には、ホモポリマー、例えばブロック、グラフト、ランダム及び交互性コポリマーのようなコポリマー、ターポリマーなど、並びにこれらのブレンド及び修飾物が一般に含まれるが、これらに限定されない。更に、特に限定しない限り、用語「ポリマー」は、あらゆる可能な幾何学的構成の材料を含む。その構成としては、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチック及びランダム対称が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用する時、用語「単一成分」繊維は、1つのポリマーのみを使用して1以上の押出成形機から形成された繊維を指す。これは、1つのポリマーから形成された繊維であって、着色、静電気防止特性、潤滑性、親水性などのために少量の添加剤が添加された繊維を除外することを意味するものではない。これらの添加剤、例えば着色用の二酸化チタンは、一般に、約5重量%未満、より典型的には約2重量%の量で存在する。
【0023】
本明細書で使用する時、用語「2成分繊維」は、別個の押出成形機から押し出されるが、共に紡糸されて1つの繊維を形成する少なくとも2つの異なるポリマーから形成された繊維を指す。2成分繊維はまた、複合繊維又は多成分繊維と呼ばれることもある。複数個のポリマーは、2成分繊維の断面全体に実質的に絶え間なく置かれた別個区域に配置され、2成分繊維の長さに沿って連続して延出する。かかる2成分繊維の形状は、例えば、1つの繊維が別の繊維により包囲されるシース/コア配置であってもよく、又はサイド・バイ・サイド配置、パイ型配置、又は「海島型」配置であってもよい。
【0024】
本明細書で使用する時、用語「2構成成分繊維」は、同じ押出成形機からブレンドとして押し出される少なくとも2つのポリマーから形成された繊維を指す。用語「ブレンド」は、以下に定義される。2構成成分繊維は、繊維の断面領域全体に比較的一定に置かれた別個の区域に配置される様々なポリマー構成成分を有さず、様々なポリマーは、通常、繊維の全長に沿って連続しておらず、その代わり、通常、ランダムに開始し終端するフィブリルを形成している。2構成成分繊維は、多構成成分繊維と呼ばれることもある。
【0025】
本明細書で使用する時、用語「毛管チャネル繊維」は、毛管現象を介して液体の動きを容易にできる毛管チャネルを有する繊維を指す。かかる繊維は、例えば中空の繊維であり得るが、好ましくは、それらの外側表面上に毛管チャネルを有する繊維である。毛管チャネルは、「U字形」、「H字形」、「C字形」及び「V字形」のような様々な断面形状であり得る。
【0026】
本発明の生理用ナプキンは、着用者が経験する液体排泄物の全て又は大部分を吸収すると同時に、改善された身体適合性、並びに改善された快適性を提供する。これらの有利な特性は、使用中に生理用ナプキンがとる形状の結果である。本発明の生理用ナプキンの使用部分は、一般に平坦な形体で提供されるが、ナプキンの身体に面する表面は、液体排泄物の地点において着用者の身体に近接又は接触さえして、それによって着用者の快適性及び生理用ナプキンの性能が向上するように、使用する際に上方すなわち着用者の身体の方向に変形する。
【0027】
図3は、本発明の使用中の生理用ナプキン20の断面図であり、これは着用者のパンティ35の中に着用されており、40として表される。生理用ナプキンはパンティ35のクロッチ部分に配置され、ウィング28がある場合は、パンティの側縁を包み込み、パンティのクロッチ部分の下側に固定される。図3に示す断面図は、着用者の外陰部42、及び具体的には着用者の陰唇44の領域に近接している。
【0028】
本明細書に記述され加わっているようなフェーシング層21及び吸収性コア24が生理用ナプキン20に用いられた時、図3で力Fとして表すような横方向圧縮力の印加により横方向に圧縮されると、フェーシング層21及び吸収性コア24の部分は、一体として上方に(すなわち起立した着用者に関して「上」方向に)、又は、一般に、着用者の身体の方向(すなわち図2及び3で示すような「Z方向」)に変形すなわち偏向することが驚くべきことに見出された。この上方への偏向又は変形によって、生理用ナプキンの上方に偏向された部分は、着用者の身体に近接し、あるいは接触しさえする。図3に示すように、フェーシング層21/吸収性コア24の中央部分、すなわち長手方向中心線に対応する部分は最大の変形量を示し、その結果、フェーシング層21/吸収性コア24は逆「V字」形の断面形体となる着用者の身体に近接することによって、特に接触することによって、性能が実際に向上するばかりでなく、着用者の漏れ防止の主観的認知もまた向上し得る。
【0029】
図3に示すように、一般に、生理用ナプキン20のバックシート22は上方に偏向せず、配置されたようにパンティ上に位置したままであり、例えばパンティ固定用接着剤によってパンティに貼付されている。こうして吸収性コア24とバックシート22の分離が生じ得、分離の量は、フェーシング層21/吸収性コア24の上方への変形の量に比例する。空隙部分37が吸収性コア24の衣類に面する表面とバックシート22との間に規定される。
【0030】
一定の有効幅Weに関して、生理用ナプキン20が示すフェーシング層21及び吸収性コア24の上方への変形量は、横方向圧縮に起因して経験する歪みの量に正比例する。生理用ナプキンは変化する有効幅Weを有し得、また使用中に着用者の脚によって横方向に加えられる圧縮力の量は、生理用ナプキンに沿った長手方向の位置に関して変化するので、本発明の生理用ナプキン20は、Z方向の変化する変形量を示すという有益な特質を有し、最大の変形が所望される領域において、最大の(すなわち上方であるZ方向に関して「最も高い」)変形が可能となる。例えば、図3に示すように、着用者の陰唇に対応する領域において、着用者の大腿の内側は生理用ナプキンのこの部分に最大の横方向圧縮力を生じさせるので、着用者の脚によって加えられた横方向圧縮は一般に最大である。従って、有効幅Weは、生理用ナプキンのこの部分の上方への変形が最大となり得、その結果、フェーシング層21/吸収性コア24がこの領域内の身体に近接するようになされることができる。生理用ナプキンが一般に着用者の身体に近接せず、その結果、身体適合性が乏しくなり液体漏れが増加するのは、まさに着用者の陰唇領域なので、これは生理用ナプキンの設計において有益な改善である。更に、生理用ナプキンの長手方向末端部、すなわち使用中に着用者の外陰領域及び着用者の臀部溝領域に対応する生理用ナプキンの「前側」及び「後側」部分において、本発明の生理用ナプキン20は、フェーシング層/吸収性コアの最小の上方への変形を示し、これも、生理用ナプキンの全体の性能及び着用者の快適性に寄与する。
【0031】
生理用ナプキン20の審美的外観並びにフェーシング層21/吸収性コア24の機能性の予測の両方を改善するために、生理用ナプキン20は、図4に示すように、本明細書においてチャネル36と呼ばれる、長手方向に向けられているエンボス加工が施されることができる。図4に示された1対のチャネル36は、本発明にとって好ましい配向を有し、1対のチャネルは、図4に示すように、オボロ(ovolo)形状の各チャネルの全体的な外観の理由で、「眼形状(eye-shaped)」と呼ばれ得る形状を形成する。眼形状(eye-shaped)チャネルは、図4に示すように開放端状及び/若しくはオフセットであり得、又は閉鎖端状、すなわちレンズ形状であり得る。図4に示す生理用ナプキン20はウィングを有さないが、一般に「砂時計」形状であり、身体に面する表面、具体的にはフェーシング層及び吸収性コアにエンボス加工された1対のチャネル36を有する。チャネルの存在によって、吸収性コアに吸収される前のフェーシング層の横方向の液体流出が防止され、生理用ナプキンの液体処理特性が改善される。フェーシング層21を吸収性コア24に深くエンボス加工することは、横方向の液体流出を妨げるチャネルを提供し、このチャネルは、横方向の液体の流れを封じ込めるのを助け、同様に生理用ナプキン20の審美的外観を高める。驚くべきことに、チャネルの存在が、使用中に生理用ナプキンの上方へ変形する部分の形成を助けることも見出された。
【0032】
使用前の全体的に平坦な2次元的形体で図4の生理用ナプキン20を示す、図5の断面図に示すように、深くエンボス加工されたチャネル36は、チャネル(単数又は複数)36の領域内の吸収性コア24を著しく圧縮することができる。例として、深くエンボス加工されたチャネル36のZ方向の深さ寸法は、生理用ナプキン20のキャリパー(Z方向の厚さ)の少なくとも約50%、より好ましくはキャリパーの約60%、70%、80%又は90%であり得る。従って、生理用ナプキン20のキャリパーが10mmである場合、生理用ナプキンの身体に面する表面から測定されたチャネル(単数又は複数)36のエンボス加工の深さは、6mm、7mm、8mm、又は9mmであり得る。一般に、チャネル36の幅は一定であり得、また深さの最大100%であり得る。チャネル36の幅はまた深さの20%、30%、40%又は50%又はそれ以上であり得る。キャリパー、幅及び深さの寸法は、いずれかが生理用ナプキン全体にわたって一定でない場合、平均寸法であり得る。
【0033】
上記のように、チャネル36の存在が、使用中に生理用ナプキンが変形する方法に影響を及ぼすことが見出された。具体的には、図3に示すように、フェーシング層及び吸収性コアの面外、上方への変形は、チャネル36の間の生理用ナプキンの部分に制限され得る。従って、長手方向軸線に沿った様々な地点での面外変形の量は、チャネルの形状及び配置によってある程度まで制御することができる。こうした理由で、生理用ナプキンの幅Wに加え有効幅Weが規定され、これは一般に生理用ナプキンのチャネル36間の内側の幅であり、具体的には図5に示すように、チャネル36の中心線の間の幅である。横断方向に平行な隔てる寸法を有する2つのチャネルがない(例えば、チャネルがないか、又は図4の横断面6Dに示すように1つのチャネルを有する)場合、有効幅Weは、吸収性コア24の幅であると見なされる。
【0034】
従って、使用中に、生理用ナプキンの部分の上方への変形の量は、有効幅Weに基づいて制御することができる。これは生理用ナプキンの設計を容易にし、生理用ナプキンにおいては、上方への変形の量及び位置が、生理用ナプキンの長手方向長さに沿って変化し得る有効幅Weに基づいて影響され向上され得る。図6Aは、使用中に着用者40の前側外陰領域に配置される生理用ナプキンの部分に対応し、この部分は典型的にはごくわずかな横方向圧縮力Fしか経験しない。図6Aに見られるように、横方向圧縮力が低く尚且つ有効幅が比較的小さい場合、吸収性コアのごくわずかな上方への変形しか示されない。
【0035】
図6B及び6Cはそれぞれ、着用者40の陰唇領域及び膣口領域における、生理用ナプキン20の使用中の断面図を示す。図6B及び6Cの両方に見られるように、着用者の大腿の内側は十分な横方向圧縮力Fを提供して、フェーシング層21/吸収性コア24の上方への座屈を引き起こし、その結果、有効幅内における膣排泄物が生じる外陰部の部分又はその付近で、ほぼ逆V字型の断面形体が得られる。
【0036】
図6Dは、着用者40の臀部の溝に近接して配置された、生理用ナプキン20の使用中の断面図を示す。フェーシング層21/吸収性コア24の上方への座屈を引き起こすための横方向圧縮力Fがほとんど又は全く存在しないので、図示するように、フェーシング層21/吸収性コア24のごくわずかな上方への変形しか示されない。
【0037】
図6A〜6Dを考慮すれば理解できるように、本発明の生理用ナプキン20は、かかる上方への偏向が所望される場所においてだけ、生理用ナプキンの一部分の上方への偏向を容易にすることによって、改善された身体適合性の効果をもたらす。更に、フェーシング層21/吸収性コア24の上方への座屈に起因する上方への偏向は、ユーザーが生理用ナプキンを使用する際にすでに行っていることと何ら異なることを必要とせずに起こる。ユーザーは平坦でほぼ2次元的な生理用ナプキン20をパッケージから取り出し、生理用ナプキンをユーザーのパンティの股領域に固定し、パンティを所定の位置に引き上げるだけである。ユーザーの身体の自然な動き、及びユーザーの大腿の内側の圧縮が、フェーシング層21/吸収性コア24の上方への変形を引き起こし、ユーザーに快適性及びより良い液体処理性能の両方を提供する。
【0038】
本発明の生理用ナプキン20において、改善された快適性及び性能をもたらすフェーシング層21/吸収性コア24の上方への変形は、結合された実質的に単一の設計において特定の材料特性を有する、フェーシング層21及び吸収性コア24の材料を組み合わせることによって達成される。従って、先行技術の生理用ナプキンにおいて典型的には分離されているこれら2つの構成要素は、規定された関係内で連結されている。具体的には、各構成要素、すなわちフェーシング層21及び吸収性コア24は、共に特定の関係の弾性率を有する。すなわち、各材料は弾性率を有しており、各構成要素のための材料の選択は、各材料の弾性率の相対的な大きさに基づいてなされる。一般に、本発明の生理用ナプキン20はフェーシング層21及び吸収性コア24を含み、均等な歪み量において、フェーシング層21の弾性率は吸収性コア24の弾性率よりも大きく、2つの構成要素は、単一の構成要素として変形するようにそれらの境界23で十分に接合される。
【0039】
材料の弾性率を測定する実用的な目的のために、当該の歪み度は弾性領域内にあり、これは使い捨て吸収性物品のための大部分の当該材料に関しては約5%未満の歪みである。従って、一実施形態において、本発明はフェーシング層21及び吸収性コア24を含み、約1%〜約5%の均等な歪み量に関しては、フェーシング層21の弾性率は吸収性コア24の弾性率よりも大きい。
【0040】
フェーシング層21の弾性率は、好ましくは約6kPa〜約700kPaである。吸収性コア24の弾性率は、好ましくは約0.3kPa〜約2.0kPaである。吸収性コア24は、好ましくは1立方センチメートル当たり約0.05グラム(g/cm3)〜1立方センチメートル当たり約0.15グラム(g/cm3)の密度を有する。
【0041】
本発明の一実施形態において、フェーシング層21は、米国特許第4,629,643号に開示され、X27121の名称でインディアナ州テレホートのトレデガー・フィルム・プロダクツ(Tredegar Film Products)から入手される孔あき成形フィルムトップシート26と、MH080.105の名称でカナダ、ガティノーのコンサート・インダストリーズ社(Concert Industries Ltd.)から入手可能な80g/m2の不織布ウェブ補助トップシート27とを含んだ。トップシート26及び補助トップシート27は、約6.4g/m2の使用量(loading)で適用されるフィンドレー(Findley)HX1500−1メルトブローン接着剤によって接合され、その結果、約2mmのキャリパー(すなわち厚さ)を有するフェーシング層が得られた。このフェーシング層は、約350kPaの弾性率を有する。吸収性コアはテネシー州メンフィスのバッカイ・テクノロジーズ社(Buckeye Technologies Inc.)から入手可能なフォーリー・フラッフ・パルプ(Foley Fluff pulp)であり、これを分解して1立方センチメートル当たり0.07グラム(g/cm3)の密度を有するコアに形成し、その結果、約10mmのキャリパーを有する吸収性コアが得られた。この吸収性コアは、約0.5kPaの弾性率を有する。吸収性コアは、約4.0g/m2の使用量で螺旋模様に適用された同じくフィンドレー(Findley)HX1500−1接着剤によって、補助トップシートに接着された。これらの構成要素は、生理用ナプキンとして用いるために、液体不透過性バックシートを有する吸収性物品に組み込まれた。構成要素層のキャリパーは、当該技術分野において既知である多くのよく知られた手段のいずれかによって決定することができる。
【0042】
弾性率は、当該技術分野において既知である多くのよく知られた手段のいずれかによって決定できる、材料の構造的特性である。一般に、インストロン(Instron)、MTS、トゥイング−アルバート(Thwing-Albert)などによって作製された試験用機器と共に用いられる既知の圧縮試験、引張り試験又は曲げ試験のいずれも、特に弾性領域内で応力/歪みを測定するために、また弾性率を報告するために用い得ることを、当業者は理解するであろう。本明細書において、圧縮力、引張り力及び曲げ力のいずれも使用条件に対して適切な歪み速度で測定されることが示唆される。適切な歪み速度は、100%の歪み/約2秒〜100%の歪み/約3秒のいずれかとして規定される。フェーシング層の弾性率の、吸収性コアの弾性率に対する比は、約6:1〜約2000:1であり得、好ましくは約700:1〜約1000:1である。
【0043】
更に、フェーシング層(例えば、滑らかで柔軟な不織布)、及び吸収性コア(例えば、セルロース系ウェブ、エアフェルト、毛羽など)に有用な材料の弾性率は、当該の歪み範囲を超過して非線形の応力−歪み曲線を有することができるので、フェーシング層及び吸収性コアの材料特性の関係を記述する別の方法は、一定の歪み度における各材料の接線モジュラスに関連する。接線モジュラスは単に所定の歪み度における応力−歪み曲線の導関数(derivative)である。従って、工学応力及び工学歪みを測定されたパラメータとして用いる際、本発明のフェーシング層及び吸収性コアは、一定範囲内の所定の歪みに関して、フェーシング層の接線モジュラスが常に吸収性コアの接線モジュラスよりも大きくなるように選択される。例えば、約1%〜約50%のいかなる歪みにおいても、フェーシング層の接線モジュラスは、吸収性コアの接線モジュラスよりも大きい。
【0044】
着用者の外陰部に対しフェーシング層が接近し、密着した身体適合性を有することが望ましい生理用ナプキンにおいて、有効幅Weは、着用者の外陰部、例えば陰唇及び膣口に近接して着用されることを意図する生理用ナプキンの領域の最小寸法よりも大きくなければならない。大部分の生理用ナプキンにおいて、この領域は生理用ナプキンの長手方向中央部分であり、例えば図4に33として表される。仮に生理用ナプキンを長手方向軸線に沿って3分割したならば、この中央部分は33は、例えば同じく図4に示すように、前側部分31と後側部分32との間にある、生理用ナプキンの3分割の中央を占めていると言うことができるであろう。一般に、生理用ナプキンの中央部分33の有効幅Weは、フェーシング層及び吸収性コアの上方への変形を引き起こすために、着用者の大腿の内側が、十分に高い横方向の力を加えることができるほど十分に大きくなければならない。チャネルを有さない生理用ナプキンにおいて、中央部分33の有効幅Weは、少なくとも約40mm、より好ましくは約50mm、より好ましくは約60mmであるべきであり、最高80mmにすることができると思われる。1対のチャネル36を有する生理用ナプキンにおいて、有効幅Weは、少なくとも約20mm、より好ましくは約30mm、より好ましくは約35mmであるべきであり、最高50mmにすることができる。
【0045】
フェーシング層21及び吸収性コア24の接合は、接着剤結合、熱接着、超音波結合などのような、当該技術分野において既知のいかなる手段でもあり得る。境界23における完全な結合は必要でないが、結合は、一体としての構成要素の動き、例えば、以下により十分に記述されるように、十分な横方向の力により共に面外に曲がるのを容易にするのに十分であるべきだと考えられている。好ましい実施形態において、フェーシング層21は、例えばメルトブローン熱可塑性接着剤を使用して、2つの構成要素の間のほぼ全表面境界で、吸収性コア24の身体に面する側に接着されている。接着は、噴霧又はスロットコーティングのような当該技術分野において既知の手段によって適用される、ほぼ均一な接着剤の層の適用によることができる。接着剤は、均等にコーティングされた場合、吸収性コアへの液体の流れを遮るべきではない。従って、好ましい実施形態において、接着剤は前述のフィンドレー(Findley)HX1500−1接着剤のような液体透過性接着剤である。
【0046】
「発明を実施するための最良の形態」において引用したすべての文書は、関連する部分において、参考として本明細書に組み込まれるが、いかなる文書の引用も、本発明に関する先行技術であることの容認と考えられるべきではない。
本発明の特定の実施形態について説明し記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、その他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には自明である。従って、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の生理用ナプキンの平面図。
【図2】図1の切断部2−2の断面図。
【図3】使用中の本発明の一部分の断面図。
【図4】チャネルを有する本発明の生理用ナプキンの平面図。
【図5】図4の切断部5−5の断面図。
【図6A】図5に示す切断部の横方向圧縮後の断面図。
【図6B】図5に示す切断部の横方向圧縮後の断面図。
【図6C】図5に示す切断部の横方向圧縮後の断面図。
【図6D】図5に示す切断部の横方向圧縮後の断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第1弾性率を有する液体透過性フェーシング層と;
b)該フェーシング層に接合された吸収性コアであって、第2弾性率を有する該吸収性コアと;
c)該フェーシング層に接合された液体不透過性バックシートと
を含み;
d)1%〜5%の均等な歪みにおいて、該第1弾性率が該第2弾性率よりも大きいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
該第1弾性率の該第2弾性率に対する比が6:1〜2000:1である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
該吸収性物品が20mm〜80mmの有効幅を有する、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
該吸収性物品が生理用品、好ましくは生理用ナプキンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
該フェーシング層が、それらの各境界面のほぼ全体において該吸収性コアに接合されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
該フェーシング層がトップシート及び補助トップシートを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
1対の深くエンボス加工されたチャネルを更に含み、該チャネルが有効幅を規定する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
a)第1接線モジュラスを有する液体透過性フェーシング層と;
b)該フェーシング層に接合された吸収性コアであって、第2接線モジュラスを有する該吸収性コアと;
c)該フェーシング層に接合された液体不透過性バックシートと
を含み;
d)1%〜50%の歪みのいずれにおいても、該第1接線モジュラスが該第2接線モジュラスよりも大きいことを特徴とする吸収性物品。
【請求項9】
1対の深くエンボス加工されたチャネルを更に含み、該チャネルが有効幅を規定する、請求項8に記載の吸収性物品。
【請求項10】
吸収性物品が生理用品、好ましくは生理用ナプキンである、請求項8又は9に記載の吸収性物品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【公表番号】特表2007−523669(P2007−523669A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517246(P2006−517246)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/018823
【国際公開番号】WO2004/112668
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】