説明

身長推定装置

【課題】撮像装置で撮像した撮像画像を処理し、撮像されている人物の身長の推定が精度よく行える身長推定装置を提供する。
【解決手段】身長推定装置1は、ステレオカメラ10で撮像した身長推定対象者の撮像画像を立体的に処理し、当該身長推定対象者の目の高さを検出する。また、身長推定装置1は、身長推定対象者を立体的に処理して得た、身長推定対象者の顔部品の特徴量に基づいて性別や年齢等の属性を推定する。そして、身長推定対象者の目の高さに、予め定めたオフセット量を加えた値を、当該身長推定対象者の身長として推定する。オフセット量は、性別や年齢等の属性別に登録している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、撮像装置で撮像した撮像画像を処理し、撮像されている人物(身長推定対象者)の身長を推定する身長推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テーマパーク等の施設では、様々なアトラクションを来園者に提供している。また、利用者に対して、安全面から身長制限をかけているアトラクション(特に乗り物系のアトラクション)がある。例えば、身長155cm未満や、160cm未満の利用者に対して、利用制限をかけている。一般的なテーマパーク等の施設では、係員が身長制限をかけているアトラクションの利用者の身長を目視により確認している。すなわち、係員が、利用者の身長を確認しなければならず、係員の作業が煩雑であった。
【0003】
また、撮像装置で撮像した撮像画像を処理し、この撮像画像に撮像されている人物の身長を推定する装置がある(特許文献1参照)。この特許文献1は、撮像画像における対象者の顔の大きさが予め定めた大きさであるときに、撮像画像の高さ方向における顔画像の撮像位置から、その対象者の身長を推定する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−123100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成は、対象者の顔の大きさが略同じであることを前提して、身長を推定している。すなわち、対象者と、撮像装置との距離が予め定めた距離になったときに、撮像画像における対象者の顔画像の大きさが予め定めた大きさになるということを前提にしている。このため、比較的顔が小さい対象者や、比較的顔が大きい対象者については、推定される身長の精度が十分に確保されない。
【0006】
この発明の目的は、撮像装置で撮像した撮像画像を処理し、撮像されている人物の身長の推定が精度よく行える身長推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の身長推定装置は、上述した目的を達するために、以下のように構成している。
【0008】
撮像画像入力部には、撮像装置が撮像エリアを略同時に撮像した視差のある2つの撮像画像が入力される。この撮像装置は、所謂ステレオカメラである。人物検出部は、撮像画像入力部に入力された撮像画像を処理して、撮像されている人物の有無を検出する。人物検出部は、処理負荷を抑えるために、撮像されている人物の有無にかかる検出を、入力された2つの撮像画像(一対の撮像画像)の一方に対して行う構成とするのが好ましい。
【0009】
また、顔部品抽出部は、人物検出部が検出した人物について、目、鼻、口、眉、顎、頬、額等の顔部品を抽出する。
【0010】
高さ検出部は、撮像画像入力部に入力された2つの撮像画像を用い、撮像されている人物を立体的に処理することにより、人物抽出部が抽出した人物の特定の顔部品(例えば、目)の高さを検出する。特定の顔部品は、予め定めておけばよい。そして、身長推定部が、予め定めたオフセット量を、高さ検出部が検出した特定の顔部品の高さに、加えた値を身長として推定する。
【0011】
このように、撮像された人物(身長推定対象者)の身長を、この人物について検出した顔部品の高さと、予め定めたオフセット量と、の加算値であると推定するので、推定結果顔の大きさの違いによる身長の推定誤差が抑えられる。したがって、身長の推定精度の向上が図れる。
【0012】
また、オフセット量記憶部が、身長推定部が身長の推定に用いるオフセット量を、属性毎に区分して記憶する構成としてもよい。属性は、性別や年齢とすればよい。この場合には、人物抽出部において、抽出した人物の顔部品の特徴量を検出し、ここで検出した顔部品の特徴量から、当該人物の属性を推定する属性推定部を設ければよい。身長推定部は、属性推定部で推定された属性に応じたオフセット量を、検出した特定の顔部品の高さに加えた値を、当該人物の身長として推定すればよい。
【0013】
このようにすれば、身長推定対象者の属性に応じて、当該人物の身長を推定することができる。したがって、身長の推定精度の一層の向上が図れる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、撮像装置で撮像した人物について、その身長の推定が精度よく行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】身長推定装置の主要部の構成を示す図である
【図2】画像処理部の機能構成を示す概略のブロック図である。
【図3】オフセットテーブルを示す図である。
【図4】身長推定装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態である身長推定装置について説明する。
【0017】
図1は、この身長推定装置の主要部の構成を示す図である。身長推定装置1は、制御部2と、撮像画像入力部3と、画像処理部4と、オフセット量記憶部5と、出力部6と、を備えている。この身長推定装置1は、撮像画像入力部3に接続されているステレオカメラ10が撮像した人物(以下、身長推定対象者と言う。)の身長を推定し、出力する。ステレオカメラ10は、公知のように、撮像エリアの一部が重複するように設定した2つの撮像部を有し、重複している撮像エリアについて、略同時に撮像した視差のある2つの撮像画像(一対の撮像画像)を得る撮像装置である。
【0018】
制御部2は、身長推定装置1本体各部の動作を制御する。撮像画像入力部3は、ステレオカメラ10から入力される一対の撮像画像を一時的に記憶するバッファを有している。また、撮像画像入力部3は、接続されているステレオカメラ10に対して撮像指示を与ええる機能を有している。
【0019】
画像処理部4は、撮像画像入力部3に入力された一対の撮像画像を処理する。具体的には、撮像画像入力部3に入力された一対の撮像画像を用いて、重複エリアに撮像されている被写体(人物等)の立体的処理(3次元処理)を行う。
【0020】
図2は、画像処理部の機能構成を示す概略のブロック図である。画像処理部4は、人物検出部11と、顔部品抽出部12と、属性推定部13と、高さ検出部14と、を備えている。人物検出部11は、撮像画像入力部3に入力された一対の撮像画像(ステレオカメラ10で撮像した撮像画像)の一方について、身長推定対象者が撮像されているかどうかを検出する。例えば、顔の輪郭パターンを用いたパターンマッチングにより、顔が撮像されているかどうかを検出することにより、身長推定対象者が撮像されているかどうかを検出する。
【0021】
顔部品抽出部12は、人物検出部11が撮像されていることを検出した身長推定対象者について、目、鼻、口、眉、顎、頬、額等の顔部品を抽出するとともに、抽出した顔部品の特徴量を検出する。顔部品抽出部12は、撮像画像入力部3に入力された一対の撮像画像を用いて、撮像されている身長推定対象者を立体的に処理し、当該身長推定対象者の顔部品の特徴量を抽出する。
【0022】
なお、画像処理部4の処理負荷を抑えるために、顔部品抽出部12は、撮像画像入力部3に入力された一対の撮像画像の一方を用いて、撮像されている身長推定対象者を平面的に処理し、当該身長推定対象者の顔部品の特徴量を抽出する構成としてもよい。
【0023】
属性推定部13は、顔部品抽出部12が抽出した身長推定対象者の各顔部品の特徴量に基づいて、この身長推定対象者の性別、および年齢を含む属性を推定する。属性推定部13は、抽出された各顔部品の特徴量から、性別や年齢等の属性を推定するのに用いる各種パラメータを図示していないメモリに記憶している。属性を推定する手法は、すでに様々な手法が提案されているが、公知のどの手法を利用してもよい。
【0024】
また、高さ検出部14は、撮像画像入力部3に入力された一対の撮像画像を用いて、撮像されている身長推定対象者を立体的に処理し、この身長推定対象者について、予め定めた顔部品の高さを検出する。ここでは、高さ検出部14は、身長推定対象者の目の高さを検出するものとして説明するが、鼻、口、眉、顎、頬、額等の他の顔部品の高さを検出する構成であってもよい。
【0025】
画像処理部4は、属性推定部13が推定した身長推定対象者の属性、および高さ検出部14が検出した身長推定対象者の目の高さを制御部2に入力する。
【0026】
オフセット量記憶部5は、図3に示すオフセットテーブル20を記憶している。このオフセットテーブル20は、目の高さと、身長との差(オフセット量)を登録したテーブルである。また、このオフセットテーブル20は、オフセット量を、性別、および年齢で区分して登録している。例えば、図3に示す例では、6歳の男性のオフセット量は7.9cmであり、6歳の女性のオフセット量は7.8cmである。
【0027】
制御部2は、オフセットテーブル20から、属性推定部13が推定した身長推定対象者の属性に応じたオフセット量を読み出す。また、制御部2は、身長推定対象者の身長が、高さ検出部14が検出した身長推定対象者の目の高さに、オフセットテーブル20から読み出したオフセット量を加えた値であると推測する。
【0028】
なお、上述したように、ここでは、高さ検出部14が、身長推定対象者の目の高さを検出する構成としたので、オフセット量を目の高さと、身長との差としたが、高さ検出部14が、身長推定対象者の他の顔部品の高さを検出する構成であれば、オフセット量については、当該他の顔部品と、身長との差にすればよい。
【0029】
出力部6は、身長推定対象者について推定した身長を出力する。出力部6には、上位装置が接続される。例えば、テーマパーク等で、身長制限をかけているアトラクションの利用者を管理する装置が上位装置として接続される。この上位装置では、推定された身長が、予め定めた身長(利用制限をかけている身長)に満たない利用者が検出されたときに、係員に対して警告報知等を行う構成とすればよい。
【0030】
次に、この身長推定装置1の動作について詳細に説明する。図4は、身長推定装置の動作を示すフローチャートである。
【0031】
身長推定装置1は、一定時間毎(例えば、数100ms毎)に、図4に示す処理を実行する。身長推定装置1は、ステレオカメラ10に対して撮像指示を与える(s1)。ステレオカメラ10は、この撮像指示にしたがって、撮像した一対の撮像画像を撮像画像入力部3に入力する。撮像画像入力部3は、ステレオカメラ10から入力された一対の撮像画像をバッファに一時記憶する(s2)。
【0032】
なお、s2では、前回の処理で記憶した一対の撮像画像をバッファに記憶しているが、今回入力された一対の撮像画像を当該バッファに上書きする。
【0033】
また、ここでは、撮像画像入力部3が、ステレオカメラ10に対して撮像指示を与えるとしたが、ステレオカメラ10が一定時間毎に撮像した撮像画像を、撮像画像入力部3に入力する構成であってもよい。
【0034】
画像処理部4が、バッファに記憶した一対の撮像画像(ステレオカメラ10で撮像した撮像画像)の一方について、身長推定対象者が撮像されているかどうかを判定する(s3)。s3では、上述したように、顔の輪郭パターンを用いたパターンマッチングにより、顔が撮像されているかどうかを検出することにより、身長推定対象者が撮像されているかどうかを検出する。身長推定装置1は、s3で身長推定対象者が撮像されていないと判定すると、今回の処理を終了する(次回の実行タイミングを待つ。)。人物検出部11が、このs3にかかる処理を実行する。
【0035】
画像処理部4は、s3で身長推定対象者が撮像されていると判定すると、撮像されている身長推定対象者の顔部品検出し、検出した各顔部品の特徴量を抽出する(s4)。s4では、今回入力された一対の撮像画像を用い、身長推定対象者の顔画像を立体的に処理する。すなわち、s4で抽出される顔部品の特徴量は、身長推定対象者を立体的に処理して得られたものである。顔部品抽出部12が、このs4にかかる処理を行う。
【0036】
画像処理部4は、s4で抽出した身長推定対象者の顔部品の特徴量を用いて、当該身長推定対象者の性別、および年齢を含む属性を推定する(s5)。画像処理部4は、図示していないメモリに記憶しているパラメータを用いて、身長推定対象者の属性を推定する。属性推定部13が、このs5にかかる処理を行う。
【0037】
また、画像処理部4は、s4で検出した顔部品の1つである目の高さを検出する(s6)。s6では、今回入力された一対の撮像画像を用い、身長推定対象者を立体的に処理する。したがって、身長推定対象者の目の高さを精度よく検出できる。高さ検出部14が、このs6にかかる処理を行う。
【0038】
制御部2は、オフセット量記憶部5が記憶しているオフセットテーブル20から、画像処理部4において推定された身長推定対象者の属性に応じたオフセット量を読み出す(s7)。制御部2は、s7で読み出したオフセット量を、s6で検出された目の高さに加えた値を算出し、これを身長推定対象者の身長として推定する(s8)。
【0039】
身長推定装置1は、s8で推定した身長推定対象者の身長を出力部6から出力し(s9)、本処理を終了する(次回の実行タイミングを待つ。)。
【0040】
このように、この身長推定装置1は、ステレオカメラ10で撮像した身長推定対象者の撮像画像を立体的に処理し、当該身長推定対象者の目の高さを検出する。したがって、身長推定対象者の目の高さが精度よく検出できる。そして、この目の高さに、予め定めたオフセット量を加えた値を、当該身長推定対象者の身長とするので、顔の大きさの違いによる身長の推定誤差が抑えられる。また、身長推定対象者の頭と、風船やバック等の物体とが重なっている撮像画像であっても、当該身長推定対象者の身長が精度よく推定できる。
【0041】
また、前記オフセット量を性別、および年齢で区分して設定しているので、身長推定対象者に対する身長の推定精度の一層の向上が図れる。
【0042】
また、身長推定対象者の属性の推定を、身長推定対象者を立体的に処理して得た、身長推定対象者の顔部品の特徴量に基づいて行うので、属性の推定精度も十分に確保できる。
【0043】
なお、上記の例では、オフセットテーブル20は、目の高さと、身長と、の差を属性別に登録しているとしたが、眉、鼻、口等の他の顔部品の高さと、身長と、の差を属性別に登録した構成であってもよい。この場合には、s6で検出する目の高さを、該当する顔部品の高さに置き換えればよい。
【符号の説明】
【0044】
1…身長推定装置
2…制御部
3…撮像画像入力部
4…画像処理部
5…オフセット量記憶部
6…出力部
10…ステレオカメラ
11…人物検出部
12…顔部品抽出部
13…属性推定部
14…高さ検出部
20…オフセットテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置が撮像エリアを同時に撮像した視差のある2つの撮像画像を入力する撮像画像入力部と、
前記撮像画像入力部に入力された撮像画像を処理して、撮像されている人物の有無を検出する人物検出部と、
前記人物検出部が検出した人物の顔部品を抽出する顔部品抽出部と、
前記人物抽出部が抽出した人物の特定の顔部品の高さを検出する高さ検出部と、
予め定めたオフセット量を、前記高さ検出部が検出した特定の顔部品の高さに加えた値を、当該人物の身長として推定する身長推定部と、を備えた身長推定装置。
【請求項2】
前記顔部品抽出部は、前記人物検出部が検出した人物の顔部品の特徴量を検出し、
前記顔部品抽出部が検出した人物の顔部品の特徴量を用いて、当該人物の属性を推定する属性推定部と、
前記身長推定部が身長の推定に用いる前記オフセット量を、属性で区分して記憶するオフセット量記憶部と、を備えた請求項1に記載の身長推定装置。
【請求項3】
前記属性推定部は、属性として性別、および年齢を推定し、
前記オフセット量記憶部は、前記オフセット量を性別、および年齢で区分して記憶する、請求項2に記載の身長推定装置。
【請求項4】
前記高さ検出部は、目の高さを検出する、請求項1〜3のいずれかに記載の身長推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−186788(P2011−186788A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51463(P2010−51463)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】