説明

車両のスポイラ装置

【課題】 車両走行中にバタツキが発生することなく、縁石等の障害物と干渉しても傷がつきにくい車両のスポイラ装置を提供する。
【解決手段】 フロントバンパー5の下端部に前後方向に回動自在に軸支されて、上下方向に沿って延びる縦壁部19と、前記開口11から導入される風Wを受けて、下方に向けて押される受け部21と、これらの縦壁部19及び受け部21を連結する連結部23とを備え、車両走行時に前記開口11から走行風Wが導入されたときに、前記受け部21の押圧力を連結部23を介して縦壁部19に伝達するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のスポイラ装置に関し、さらに詳しくは、車両走行時においてもバタツキのない車両のスポイラ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両の前端部に配設されたフロントバンパーの下部には、走行風の流れを制御して車両の走行速度を向上させるためにスポイラ装置が配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、空力性能を向上させるために、スポイラ装置の下端位置は、できるだけ低く設定することが望ましいことが知られている。
【特許文献1】実開平3−91877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常時に、同一の位置に配置されるタイプのスポイラ装置は、フロントバンパーの下部に設けると、車両走行中に縁石等の障害物と干渉して、スポイラに傷がつくおそれがあった。また、車両走行中に走行風を受けて、スポイラ装置にバタツキが発生するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、車両走行中にバタツキが発生することなく、縁石等の障害物と干渉しても傷がつきにくい車両のスポイラ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、開口を有するフロントバンパーの下端部に前後方向に回動自在に軸支された縦壁部と、前記開口から導入される走行風を受けて、下方に向けて押圧される受け部と、これらの縦壁部及び受け部を連結する円弧状の連結部とを備え、車両走行時に前記開口から走行風が導入されたときに、前記受け部の押圧力を連結部を介して縦壁部に伝達するようにしたことを特徴とした車両のスポイラ装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両のスポイラ装置によれば、車両走行中に開口から導入される風を受け部で受け、この押圧力を縦壁部に伝達するため、走行風によって縦壁部に後方側への押圧力が作用しても、縦壁部がバタツキを起こすことがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0009】
図1は本発明の実施形態によるスポイラ装置を配設した車両前部を示す斜視図、図2は図1のA−A線による断面図である。
【0010】
図1に示すように、車両1の前部には、フード3が配設され、該フード3の左右両側には、左右一対のヘッドランプ7が配設されている。また、フード3の前端の下部には、車幅方向に沿って延びるフロントバンパー5が配設されている。該フロントバンパー5の高さ方向中央部には、後述するラジエータ9(図2参照)に走行風Wを送給する開口11が設けられている。また、フロントバンパー5の下側には、本実施形態によるスポイラ装置13が配設されている。
【0011】
図2に示すように、フロントバンパー5の車両後方側には、バンパーレインフォース15が配設されており、該バンパーレインフォース15の後側には、ラジエータ9が配設されている。このラジエータ9の前側には、フロントバンパー5の複数のグリル17が配設され、これらのグリル17の間は開口11に形成されている。よって、車両走行時には、前記開口11からラジエータ9に向けて、破線の矢印に示す走行風Wが導入され、この走行風Wによってラジエータ9は冷却される。
【0012】
図3は、図2の要部を拡大した断面図である。
【0013】
本発明の実施形態によるスポイラ装置13は、フロントバンパー5の下端部に前後方向に回動自在に軸支されて、上下方向に沿って延びる縦壁部19と、前記開口11から導入される走行風Wを受けて、下方に向けて押される受け部21と、これらの縦壁部19及び受け部21を連結する連結部23とを備えている。
【0014】
前記縦壁部19は、車幅方向及び上下方向に延びる一枚のプレート状部材であり、その上端部は図示しない回動軸を介してフロントバンパー5の下端面25に軸支されている。また、前記受け部21も、車幅方向及び車両前後方向に沿って延びるプレート状部材であり、通常状態においては、後方斜め上方に向けて傾斜配置されている。そして、受け部21の前端には、受け部21に直交して延びる係止片29が形成され、該係止片29の先端には後方に突出する断面略三角状の爪部31が形成されている。さらに、受け部21と縦壁部19とは、円弧状の連結部23を介して橋渡しされている。この連結部23は、縦壁部19の回動軸を中心に描いた円弧に形成されており、受け部21を下方に押すと、この押圧力が連結部23を介して縦壁部19に伝達されるように構成されている。
【0015】
また、フロントバンパー5の下端面25は、ほぼ水平状に後方に延びており、前記受け部21の係止片29が挿入自在の係止孔33が穿設されている。通常時において、この係止孔33の周縁のうち後部には、受け部21の係止片29の爪部31が係止されるように構成されている。フロントバンパー5の下端面25の上面には、図示しない上方に延びるストッパーが設けられており、該ストッパーの上端には、受け部21の下面が当接して保持されている。
【0016】
なお、縦壁部19の上端部の背面側には、付勢手段であるスプリング27が縮んだ状態で配設されており、スプリング27の一端はフロントバンパー5の下端面25に押し当てられ、他端は縦壁部19の上端部の背面に押し当てられている。よって、スプリング27は、その付勢力によって縦壁部19を前方に向けて押圧している。
【0017】
図4は、スポイラ装置が障害物に干渉した状態を示す断面図である。
【0018】
車両走行時に、例えば縁石等の障害物にスポイラ装置13の縦壁部19が干渉すると、縦壁部19に大きな荷重が入力される。この荷重は、連結部23を介して受け部21に伝わるため、受け部21の係止片29の爪部31がフロントバンパー5の下端面25の係止孔33から外れる。
【0019】
こののち、縦壁部19はスプリング27の付勢力によって強制的に前方に回動させられ、受け部21も下方に回動する。そして、受け部21の係止片29が係止孔33に挿入され、爪部31が係止孔33に係止される。
【0020】
以下に、本発明の実施形態による作用効果を説明する。
【0021】
開口11を有するフロントバンパー5の下端部に前後方向に回動自在に軸支されて、上下方向に沿って延びる縦壁部19と、前記開口11から導入される風Wを受けて、下方に向けて押される受け部21と、これらの縦壁部19及び受け部21を連結する連結部23とを備え、車両走行時に前記開口11から走行風Wが導入されたときに、前記受け部21の押圧力を連結部23を介して縦壁部19に伝達するように構成している。
【0022】
図2に示すように、車両走行中には、フロントバンパー5の開口11から走行風Wが車両後方に向けて流れる。ここで、スポイラ装置13の縦壁部19には車両後方に向かう走行風Wが当たり、縦壁部19を後方に押圧する。その一方、開口11の下端側から導入される走行風Wは、スポイラ装置13の受け部21に当たるため、受け部21には、下方に押しつけられる押圧力が作用する。従って、縦壁部19が確実に前端位置に配置され、車両走行時において、スポイラ装置13の縦壁部19がバタツキを起こすことがない。
【0023】
前記縦壁部19を車両前側に向けて付勢する付勢手段(スプリング27)を設けているため、車両走行中に縦壁部19に障害物が干渉して、受け部21の爪部31が係止孔33から外れた場合でも、通常時の位置に自動的に回動して戻る。
【0024】
前記フロントバンパー5の下端面25に係止孔33を穿設し、前記受け部21に爪部31を設け、通常状態のときには前記爪部31を係止孔33に係止する一方、前記縦壁部19に所定値以上の後方荷重が入力されたときには、爪部31が係止孔33から外れるように構成している。
【0025】
このため、車両走行中に縦壁部19に障害物が干渉した場合でも、縦壁部19に過剰な荷重が入力されないため、縦壁部19に傷がつきにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態によるスポイラ装置を配設した車両の前部を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線による断面図である。
【図3】図2の要部を拡大した断面図である。
【図4】スポイラ装置が障害物に干渉した状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
5…フロントバンパー
11…開口
13…スポイラ装置
19…縦壁部
21…受け部
23…連結部
27…スプリング(付勢手段)
31…爪部
33…係止孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有するフロントバンパーの下端部に前後方向に回動自在に軸支された縦壁部と、前記開口から導入される風を受けて、下方に向けて押される受け部と、これらの縦壁部及び受け部を連結する連結部とを備え、車両走行時に前記開口から風が導入されたときに、前記受け部の押圧力を連結部を介して縦壁部に伝達するように構成したことを特徴とする車両のスポイラ装置。
【請求項2】
前記縦壁部を車両前方に向けて付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両のスポイラ装置。
【請求項3】
前記フロントバンパーの下端面に係止孔を穿設し、前記受け部に爪部を設け、通常状態においては前記爪部を係止孔に係止して保持する一方、前記縦壁部に所定値以上の後方荷重が入力されたときには、前記爪部が係止孔から外れるように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のスポイラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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