説明

車両のタイヤハウス用噴霧装置

【課題】タイヤサイズが異なる多種多様な車両に対応でき、実際に車両を走行させなくても路面を走行する車両が跳ね上げる水しぶきを正確に再現することができる車両のタイヤハウス用噴霧装置を提供する。
【解決手段】車両のタイヤハウス内にテスト水を噴霧してタイヤが跳ね上げる水しぶき等を再現する車両のタイヤハウス用噴霧装置において、タイヤの接地面上に移動自在に配設されるベース21と、タイヤに対し上下方向への伸縮調整と前後方向への移動調整を可能にしてベース21に取り付けられたステー23と、先端部にテスト水を噴霧するノズル部材25を設けるとともに他端側にテスト水を供給するホースが接続される給水口25bを設けてステー23に取り付けられたパイプ状のノズル部材25と、を備える車両のタイヤハウス用噴霧装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のタイヤハウス用噴霧装置に関するものであり、特に、雨水等で濡れた路面を走行する車両が跳ね上げる水しぶきを、車両を走行させずに正確に再現する車両のタイヤハウス用噴霧試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、雨水等で濡れた路面状況を再現して、自動車におけるタイヤのスリップやハイドロプレーニング現象を試験する装置等は知られている例えば、特許文献1、特許文献2参照。
【0003】
特許文献1に記載の装置は、1対の回転ローラに掛け渡されて回転するとともに、その上部上面に回転するタイヤが設置される無端ベルトと、該無端ベルトの下部をくぐらせる水が収容される水槽とを備え、無端ベルトをタイヤと同期させて回転させるように構成している。そして、無端ベルトが回転するとき、水の粘性により無端ベルトの上部水面に水を汲み上げて水膜を形成し、この水膜を設けた無端ベルト上でタイヤを回転させて走行状態を作ることにより雨水等で濡れた路面状況を再現できる構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−153708号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の装置は、無端ベルトが回転するとき、水の粘性により無端ベルトの上部上面に水を汲み上げて水膜を形成し、この水膜上でタイヤを回転させる構造になっているが、この構造では1対のローラに掛け渡された無端ベルト上で実際の走行状態、特に高速での走行を再現することは非常に困難であった。
【0006】
また、車両のタイヤハウス内には、フェンダライナー及びフェンダライナー後部下側のゴム製泥よけが取り付けられ、このタイヤハウスのフェンダライナーとゴム製泥よけよりタイヤから跳ね上げられる水しぶきや泥を抑えている。このようなタイヤから跳ね上げられる水しぶきや泥を抑えるタイヤハウス内の試験では、近年では塩害や酸性雨での影響による試験をすることも多くなって来ている。
【0007】
そこで、塩害や酸性雨での影響を試験するために、無端ベルトをくぐらせる水槽内に塩水や酸性水を溜めて試験を行うことも考えられる。しかし、水槽内に塩水や酸性水を溜めて試験を行うと、無端ベルトや回転ローラ等が腐食するという悪い影響が心配される。このため、従来では塩害や酸性雨での影響を試験するためには、別の場所において、ホース等をタイヤ接地面に固定して、車両を走行させずにホースから塩水や酸性水をタイヤハウス内に吹きかけて試験をする方法等が採用されていた。
【0008】
しかしながら、ホース等をタイヤ接地面に固定して、車両を走行させずにホースから塩水や酸性水をタイヤハウス内に吹きかけて試験を行う方法では、それぞれタイヤサイズが異なる多種多様な車両に簡単に対応することができない。このため、路面を走行する車両が跳ね上げる水しぶきを、車両を走行させずに正確に再現することが難しいという問題点があった。
【0009】
そこで、タイヤサイズの異なる多種多様な車両に簡単に対応できるとともに、実際に車両を走行させなくても路面を走行する車両が跳ね上げる水しぶきを正確に再現することができる車両のタイヤハウス用噴霧装置を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、車両のタイヤハウス内にテスト水を噴霧してタイヤが跳ね上げる水しぶき等を再現する車両のタイヤハウス用噴霧装置において、前記タイヤの接地面上に移動自在に配設されるベースと、前記タイヤに対し上下方向への伸縮調整と前後方向への移動調整を可能にして前記ベースに取り付けられたステーと、先端部に前記テスト水を噴霧する噴霧口を設けるとともに他端側に前記テスト水を供給するホースが接続される給水口を設けて前記ステーに取り付けられたパイプ状のノズル部材と、を備える車両のタイヤハウス用噴霧装置を提供する。
【0011】
この構成によれば、ノズル部材の前後方向の位置の切り換えは、ステーをベースに対して前後方向に移動させると切り換えることができる。また、ノズル部材の高さ方向の位置の切り換えは、ステーを伸縮させることにより切り換えることができる。さらに、ノズル部材の左右方向の位置の切り換えは、ノズル部材をステーに対して左右方向に移動させると切り換えることができる。このようにして、ノズル部材の位置を、前後、上下、左右の各方向に調整すると、テスト水を噴霧する噴霧口の位置を調整することができ、これによりタイヤサイズの異なる多種多様な車両に対し同一のタイヤハウス用噴霧装置を使用して同じ条件で試験を行うことができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、上記ベースは、上記タイヤの前後を位置決めする1対の位置決め固定バーを、該ベースから上記タイヤの左右方向に突出して設けてなる車両のタイヤハウス用噴霧装置を提供する。
【0013】
この構成によれば、1対の位置決め固定バーをタイヤの前後を位置決めすることにより、タイヤを基準として装置を所定の位置に簡単に位置決めすることができる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成において、上記ノズル部材は、上記タイヤを挟んで左右の位置に配置される少なくとも2個以上の噴霧口を設けてなる車両のタイヤハウス用噴霧装置を提供する。
【0015】
この構成によれば、左右に離れた2個以上のノズル部材を使用して、車両走行時により近い状態でテスト水をタイヤハウス内に吹きかけて試験をすることができる。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1,2または3記載の構成において、上記ノズル部材を取り付けた上記ステーは、上記ベースに前後方向に離れて少なくとも2個以上設けてなる車両のタイヤハウス用噴霧装置を提供する。
【0017】
この構成によれば、前後に離れた2個以上のノズル部材を使用して、車両走行時により近い状態でタイヤハウス内にテスト水を吹きかけて試験をすることができる。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1,2,3または4記載の構成において、上記ノズル部材は、上記ステーに対し上下方向に回動して、上記噴霧口のテスト水噴霧角度を上下方向に調整可能に取り付けられている車両のタイヤハウス用噴霧装置を提供する。
【0019】
この構成によれば、ノズル部材の噴霧口の角度を上下方向に調整して、車両走行時により近い状態でタイヤハウス内にテスト水を吹きかけて試験をすることができる。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項1,2,3または4記載の構成において、上記ノズル部材は、上記ステーに対して左右方向に移動調整可能に取り付けられている車両のタイヤハウス用噴霧装置を提供する。
【0021】
この構成によれば、ノズル部材の噴霧口の角度を左右方向に調整して、車両走行時により近い状態でタイヤハウス内にテスト水を吹きかけて試験をすることができる。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項1,2,3,4,5または6記載の構成において、上記ノズル部材は、泥水状の物質を供給するホースと接続可能に設けられている車両のタイヤハウス用噴霧装置を提供する。
【0023】
この構成によれば、タイヤハウス内に泥水状の物質を噴霧して試験を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1記載の発明は、タイヤサイズの異なる多種多様な車両に対して、同一のタイヤハウス用噴霧装置を使用して同じ条件で試験を簡単に行うことができるので、車両タイプ毎にタイヤハウス用噴霧装置を用意しなくても済むことになり、保管管理が簡単で、保管スペースも少なくて済む。これにより経済性が向上する。
【0025】
請求項2記載の発明は、1対の位置決め固定バーにより、タイヤとタイヤハウス用噴霧装置の前後位置を簡単に位置決めして、同じ条件で試験を行うことができるので、請求項1の発明の効果に加えて、試験の信頼性が向上する。
【0026】
請求項3記載の発明は、左右に離れた2個以上の噴霧口を使用して、車両走行時により近い状態でタイヤハウス内にテスト水を吹きかけて試験をすることができるので、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、試験の信頼性がさらに向上する。
【0027】
請求項4記載の発明は、前後に離れた2個以上のノズル部材を使用して、車両走行時により近い状態でタイヤハウス内にテスト水を吹きかけて試験をすることができるので、請求項1,2または3記載の発明の効果に加えて、試験の信頼性がより一層向上する。
【0028】
請求項5記載の発明は、ノズル部材の噴霧口の角度を上下方向に調整して、車両走行時により近い状態でタイヤハウス内にテスト水を吹きかけて試験をすることができるので、請求項1,2,3または4記載の発明の効果に加えて、試験の信頼性がより一層向上する。
【0029】
請求項6記載の発明は、ノズル部材の噴霧口の角度を左右方向に調整して、車両走行時により近い状態でタイヤハウス内にテスト水を吹きかけて試験をすることができるので、請求項1,2,3または4記載の発明の効果に加えて、試験の信頼性がより一層向上する。
【0030】
請求項7記載の発明は、タイヤハウス内に泥水状の物質を噴霧して試験を行うことができるので、請求項1,2,3,4,5または6記載の発明の効果の加えて、よりリアルな試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るタイヤハウス用噴霧装置を使用して試験を行っている状態を示す配置構成図。
【図2】同上タイヤハウス用噴霧装置の平面図。
【図3】同上タイヤハウス用噴霧装置の側面図。
【図4】図3のA−A線拡大断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明はタイヤサイズの異なる多種多様な車両に対応でき、実際に車両を走行させなくても路面を走行する車両が跳ね上げる水しぶきを正確に再現することができる車両のタイヤハウス用噴霧装置を提供するという目的を達成するために、車両のタイヤハウス内にテスト水を噴霧してタイヤが跳ね上げる水しぶき等を再現する車両のタイヤハウス用噴霧装置において、前記タイヤの接地面上に移動自在に配設されるベースと、前記タイヤに対し上下方向への伸縮調整と前後方向への移動調整を可能にして前記ベースに取り付けられたステーと、先端部に前記テスト水を噴霧する噴霧口を設けるとともに他端側に前記テスト水を供給するホースが接続される給水口を設けて前記ステーに取り付けられたパイプ状のノズル部材と、を備えることにより実現した。
【0033】
以下、本発明の実施形態によるタイヤハウス用噴霧装置の一実施例を、図1乃至図4を参照しながら詳細に説明する。
【実施例】
【0034】
図1は、本発明に係るタイヤハウス用噴霧装置を使用してタイヤハウスにテスト水を噴霧してタイヤが跳ね上げる水しぶきを再現する試験を行っている状態を示す配置構成図を示すものである。
【0035】
同図において、被試験車両以下、「自動車」という11は、前部の左右と後部の左右とにタイヤ12が配置され、これらタイヤ12の上方にそれぞれタイヤハウス13が設けられている。該タイヤハウス13は、ホイールハウスやタイヤハウジング等とも呼ばれ、車体の一部を構成する。また、該タイヤハウス13は、金属製とされ、前記タイヤ12の上方を覆うような形状に成形されている。
【0036】
前記タイヤハウス13における前記タイヤ12側の面は自動車の外側の面となっており、この外側の面を覆うようにフェンダライナー図示せずが前記タイヤハウス13に取り付けられる。
【0037】
前記フェンダライナーは、自動車11の走行中に前記タイヤ12が路面から跳ね上げる小石や泥水等によってボディパネルが傷付けられることを防止し、前記タイヤ12と接地面路面Eとによって発生するロードノイズ等の騒音を低減させるための自動車の外装部品とされている。したがって、前記フェンダライナーには、剛性や耐久性及び吸音性が良好な材料が使用され、また取り付けられた該フェンダライナーの耐久性及び吸音性が満足できるものであるか否か等を実際に色々と試験する必要があり、その一つとして本実施形態のタイヤハウス用噴霧装置20を使用して、雨水や塩水のテスト水をタイヤハウス13内に噴霧する試験がある。
【0038】
その雨水や塩水のテスト水をタイヤハウス13内に噴霧するための前記タイヤハウス用噴霧装置20は、図1に示すように、前部の左右と後部の左右にそれぞれ配置された前記タイヤ12,12,12,12に近接して配置される。また、該タイヤハウス用噴霧装置20が配置される位置及び個数は、試験によって色々と異なり、同図に示す本実施例では、前部の左右のタイヤ12,12と後部の左右のタイヤ12,12の全ての位置にそれぞれ配置して試験を行う場合を一例としている。
【0039】
次に、前記タイヤハウス用噴霧装置20の構造を図2乃至図4を用いて更に詳細に説明する。該タイヤハウス用噴霧装置20は、ベース21と、第1位置決め固定バー22aと、第2位置決め固定バー22bと、ステー23と、ノズル部材25とを備えている。
【0040】
前記ベース21は、前記自動車11の前後方向に延びる板状の鋼板で形成された部材であり、図4に示すように、上面部21aと、該上面部21aの左右両端部分から外側へ向かって傾斜する左右の傾斜面部21b,21cと、該傾斜面部21b,21cの下端部分からそれぞれ下側へ向かって真っ直ぐに延びる垂下面部21d,21eとを一体に有して、下面が開口され、かつ内部が空洞の断面多角形形状した台として成形されている。
【0041】
また、前記ベース21の前記上面部21aには、前後方向に延びるステー用ガイド孔26が形成されている。前記ベース21の、前記車体と対向している前記傾斜面部21bには、前後方向に延びる第2位置決め固定バー用ガイド孔27が形成されている。
【0042】
前記第1位置決め固定バー22aは、前記ベース21の車体と対向して配置される前記垂下面部21dから前記接地面Eに沿って略直角に外側へ突出した状態にして、該垂下面部21dに固定して取り付けられている。
【0043】
前記第2位置決め固定バー22bは、一端側がブラケット部材28を介して前記ベース21の前記第2位置決め固定バー用ガイド孔27に取り付けられ、他端側が前記垂下面部21dから前記接地面Eに沿って略直角に外側へ突出し、前記第1位置決め固定バー22aと略平行な状態にして配設されている。そのブラケット部材28は、前記第2位置決め固定バー用ガイド孔27内に摺動可能に係合されている。また、前記ブラケット部材28はロックレバー28aを有し、該ロックレバー28aのロック・アンロック操作により、該第2位置決め固定バー用ガイド孔27内を摺動できる状態と、摺動不能な状態に切り換えできるようになっている。
【0044】
そして、第2位置決め固定バー22bは、前記ロックレバー28aをアンロック状態にすると、前記ブラケット部材28と共に前記第2位置決め固定バー用ガイド孔27に沿って移動させることができ、この移動により該第2位置決め固定バー22bと前記第1位置決め固定バー22aとの距離を調整することができる。また、調整後は、前記ロックレバー28aをロック状態に切り換えると、前記ブラケット部材28が固定され、前記第2位置決め固定バー22bもその位置で固定することができる。
【0045】
前記ステー23は、前後に離れて平行に1対設けられている。また、各ステー23,23は本体部23aと伸縮補助部材23bとでなる。そして、該本体部23aの下端側は、それぞれブラケット部材29を介して前記ステー用ガイド孔26に摺動自在に係合されて取り付けられている。その各ブラケット部材29,29は、前記ステー用ガイド孔26内に摺動可能に係合されており、またロックレバー29aを有し、該ロックレバー29aのロック・アンロック操作により、該ステー用ガイド孔26内を摺動できる状態と、摺動不能な状態に切り換えできるようになっている。
【0046】
そして、前記各ステー23,23は、前記ロックレバー29a,29aをアンロック状態にすると、前記ブラケット部材29,29と共に前記ステー用ガイド孔26に沿って移動させることができ、この移動により該各ステー23と23との距離及び前記ベース21上の位置を調整することができる。また、調整後は、前記ロックレバー29a,29aをロック状態に切り換えると、前記ブラケット部材29,29がそれぞれ固定され、前記ステー23,23もその位置で固定することができる。
【0047】
また、前記本体部23a,23aの上端側にそれぞれ設けられた前記伸縮補助部材23b,23bは、該本体部23a,23aに対して各々伸縮可能に設けている。なお、該本体部23a,23aに対する該伸縮補助部材23b,23bの伸縮動作は、ロックレバー23c,23cのロック・アンロック操作により、伸縮調整できる状態と、伸縮不能な状態に切り換えできるようになっている。
【0048】
そして、該各ステー23,23の該伸縮補助部材23b,23bは、前記ロックレバー23c,23cをアンロック状態にすると、前記伸縮補助部材23b,23bの前記各本体部23a,23aからの突出量を調整して、該各ステー23,23の全体の長さ高さを伸縮調整することができる。また、調整後は、前記ロックレバー23c,23cをロック状態に切り換えると、前記伸縮補助部材23b,23bのそれぞれの位置を固定することができる。
【0049】
前記ノズル部材25は、前記各ステー23,23の前記伸縮補助部材23b,23bの上端部にブラケット部材31を介して車体の左右方向に摺動自在に取り付けられている。そのノズル部材25は、パイプ状の部材であり、先端部にテスト水を噴霧する噴霧口を設けた1対の噴霧ノズル25a,25aを有し、他端側にテスト水を供給する給水口25bを有している。
【0050】
前記各ブラケット部材31,31は、水平方向並びに上下方向に回動可能で、また前記ノズル部材25を前記伸縮補助部材23b,23bに対して左右方向に可動可能に保持している。さらに、ブラケット部材31,31はロックレバー31aを各々有し、該ロックレバー31a,31aのロック・アンロック操作により、該ノズル部材25,25の水平方向及び上下方向への回動及び左右方向への移動を調整することができるようになっている。
【0051】
そして、該各ブラケット部材31,31は、前記ロックレバー31a,31aをアンロック状態にすると、前記ブラケット部材31,31を水平方向及び上下方向に回動させて前記噴霧ノズル25a,25aの噴霧角度及び方向をそれぞれ調整することができ、また左右方向に移動させると前記噴霧ノズル25a,25aの位置をそれぞれ調整することができる。また、調整後は、前記ロックレバー23a,23aをロック状態に切り換えると、該各ブラケット部材31,31の前記補助部材23a,23aに対する位置をそれぞれ固定することができる。
【0052】
そして、このように構成されたタイヤハウス用噴霧装置20は、試験を行うためにセットする場合、まず試験位置に運ばれた前記自動車11の前記タイヤ12の前側または後側に前記第1位置決め固定バー22aを当接させて、前記タイヤ12に対して前記ベース21を位置決めする。その後、前記ロックバー28aによるロックを緩めて前記第2位置決め固定バー22bを前または後側に移動させ、該第2位置決め固定バー22bを該タイヤ12の後側または前側に当接させる。また、前記第2位置決め固定バー22bが前記タイヤ12に当接したら、前記ロックバー28aをロックする。これにより、前記ベース21の前後方向の位置が決定する。
【0053】
次いで、前記ステー23,23の位置調整と、前記ノズル部材25の高さ位置及び向きの調整を行い、前記噴霧ノズル25a,25aが前記タイヤハウス13内にテスト水を吹き付ける位置及び向きを調整する。そして、このようにして前記噴霧ノズル25a,25aの位置及び向きを調整した後、前記ノズル部材25の給水口25bからテスト水を送り込む。こうしてノズル部材25内にテスト水が供給されると、該噴霧ノズル25a,25aから前記タイヤハウス13内にテスト水が噴霧される。また、前記ノズル部材25内に供給されるテスト水の圧力を調整することにより、車両走行時に前記タイヤ12が水等を跳ね上げる状態を、前記自動車11を走行させることなく再現して試験を行うことができる。
【0054】
なお、この試験は、屋内、屋外に限ることなく、どのような場所でも行うことができる。また、テスト水を供給しての試験が終了したら、前記ノズル部材25の前記給水口25bに接続しているテスト水を送り込むパイプを取り外し、その後、エアを送り込むパイプを取り付け、該パイプから前記ノズル部材25内にエアを吹き込んで該ノズル部材25内に溜まっているテスト水を完全に抜くようにして、前記噴霧ノズル25a,25aの目詰まり、及び、該ノズル部材25内に錆が発生するのを防止する。
【0055】
このように構成された本実施例のタイヤハウス用噴霧装置20では、前記ノズル部材25の前後方向の位置の切り換えは、前記ステー23を前記ベース21に対して前後方向に移動させることにより切り換えることができ、また前記ノズル部材25の高さ方向の位置の切り換えは、前記ステー23の本体部23aに対して前記補助部材23bを伸縮調整させることにより切り換えることができ、さらに前記ノズル部材25の前記噴霧ノズル25aにおける左右方向の位置の切り換え及び上下方向の向きの切り換えは、前記補助部材23aに対して前記ノズル部材25を摺動及び回動させることにより切り換えできる。したがって、タイヤサイズの異なる多種多様な自動車に対しても位置及び向きを切り換え調整することにより、同一のタイヤハウス用噴霧装置20を使用して同じ条件で試験を行うことができることになる。
【0056】
また、上記実施例では、テスト水として雨水や塩水を噴霧する場合について説明したが、前記ノズル部材25の前記給水口25bには泥水状の物質を供給するホースを接続して、前記ノズル部材25から前記タイヤハウス13内に泥水状の物質を供給することも可能であり、泥水状の物質を供給するとよりリアルな試験を行うことができることになる。
【0057】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、塩水や酸性水をタイヤハウス内に吹きかけて試験する以外に、泥水等を噴霧する装置としても応用できる。
【符号の説明】
【0059】
11 被試験車両自動車
12 タイヤ
13 タイヤハウス
20 タイヤハウス用噴霧装置
21 ベース
21a 上面部
21b,21c 傾斜面部
21d,21e 垂下面部
22a 第1位置決め固定バー
22b 第2位置決め固定バー
23 第1ステー
23a 本体部
23b 伸縮補助部材
23c ロックレバー
25 ノズル部材
25a 噴霧ノズル噴霧口
25b 給水口
26 ステー用ガイド孔
27 第2位置決め固定バー用ガイド孔
28 ブラケット部材
28a ロックレバー
29 ブラケット部材
29a ロックレバー
30 ブラケット部材
30a ロックレバー
31 ブラケット部材
31a ロックレバー
E 接地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のタイヤハウス内にテスト水を噴霧してタイヤが跳ね上げる水しぶき等を再現する車両のタイヤハウス用噴霧装置において、
前記タイヤの接地面上に移動自在に配設されるベースと、
前記タイヤに対し上下方向への伸縮調整と前後方向への移動調整を可能にして前記ベースに取り付けられたステーと、
先端部に前記テスト水を噴霧する噴霧口を設けるとともに他端側に前記テスト水を供給するホースが接続される給水口を設けて前記ステーに取り付けられたパイプ状のノズル部材と、
を備えることを特徴とする車両のタイヤハウス用噴霧装置。
【請求項2】
上記ベースは、上記タイヤの前後を位置決めする1対の位置決め固定バーを、該ベースから上記タイヤの左右方向に突出して設けてなることを特徴とする請求項1記載の車両のタイヤハウス用噴霧装置。
【請求項3】
上記ノズル部材は、上記タイヤを挟んで左右の位置に配置される少なくとも2個以上の噴霧口を設けてなることを特徴とする請求項1または2記載の車両のタイヤハウス用噴霧装置。
【請求項4】
上記ノズル部材を取り付けた上記ステーは、上記ベースに前後方向に離れて少なくとも2個以上設けてなることを特徴とする請求項1,2または3記載の車両のタイヤハウス用噴霧装置。
【請求項5】
上記ノズル部材は、上記ステーに対し上下方向に回動して、上記噴霧口のテスト水噴霧角度を上下方向に調整可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1,2,3または4記載の車両のタイヤハウス用噴霧装置。
【請求項6】
上記ノズル部材は、上記ステーに対して左右方向に移動調整可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1,2,3または4記載の車両のタイヤハウス用噴霧装置。
【請求項7】
上記ノズル部材は、泥水状の物質を供給するホースと接続可能に設けられていることを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載の車両のタイヤハウス用噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−163388(P2012−163388A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22395(P2011−22395)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(390026974)株式会社東洋製作所 (132)