説明

車両の側突用エアバッグ装置

【目的】 車両の側面衝突の際に、エアバッグ装置のエアバッグ本体が前方に膨出する際にパッド材がちぎれて飛散するのを防止する。エアバッグ本体を簡易迅速且つ正確に膨出させる。
【構成】 エアバッグ装置11の収納容器14をシートフレーム3の側部に固着する。エアバッグ本体16を表皮材7のメインサイド布7bと横マチ布7cの縫製部9を破断して膨出させる。パッド材5のサイド部5bにスリット8を形成する。スリット8の両側のパッド材5に面部材21,22を取付ける。エアバッグ本体16を面部材21,22間のスリット8より膨出させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両の側突用エアバッグ装置に関し、更に詳細に説明すると、シートフレームと、該シートフレームに取付けられるパッド材と、該パッド材を被覆する表皮材とからなる車両用シートの側部に設けられ、前記シートフレームに取付けられる収納容器と、該収納容器に収納固着されるガス発生器と、該ガス発生器の作動時に該ガス発生器から噴出されるガスが流入されるように前記収納容器に固着されているエアバッグ本体とを備える車両の側突用エアバッグ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、車両の側面衝突の際に、その衝撃荷重により変形するドア等の車体側壁側と着座者との間の直接的な衝撃を回避するために、種々のエアバッグ装置が提案されており、例えば、特開平4−50052号公報に示すような車両のシート構造がある。
【0003】この車両のシート構造は、車体側壁側に対向したシートバック側部外方に、前記車体側壁側に対して垂直方向乃至着座者との間の空間に膨出するエアバッグ装置が設けられている。このエアバッグ装置はシートの乗降性及びクッション性を考慮すると、シートバックのパッド材の後部に配設せざるを得ないものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】然し乍ら、このような従来の技術では、エアバッグ装置のエアバッグ本体が前方に膨出する際に、パッド材を押し退けることになり、パッド材に用いられるウレタン等は1kg /cm3 程の引張力しかなく、エアバッグ本体の膨出時にパッド材がちぎれて飛散する虞れを有していた。
【0005】本発明は、車両の側面衝突の際に、エアバッグ装置のエアバッグ本体が前方に膨出する際にパッド材がちぎれて飛散する虞れがなく、エアバッグ本体を簡易迅速且つ正確に膨出させることができ、着座者が受ける衝撃荷重を抑えることができる車両の側突用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上述せる課題に鑑みてなされたもので、本発明の請求項1に記載の車両の側突用エアバッグ装置は、シートフレームと、該シートフレームに取付けられるパッド材と、該パッド材を被覆する表皮材とからなる車両用シートの側部に設けられ、前記シートフレームに取付けられる収納容器と、該収納容器に収納固着されるガス発生器と、該ガス発生器の作動時に該ガス発生器から噴出されるガスが流入されるように前記収納容器に固着されているエアバッグ本体とを備える車両の側突用エアバッグ装置において、前記収納容器はシートフレームの側部に固着され、前記エアバッグ本体が前記パッド材のサイド部に形成されたスリットを介して表皮材の縫製部を破断して膨出するようになされていることを特徴とする。
【0007】本発明の請求項2に記載の車両の側突用エアバッグ装置は、シートフレームと、該シートフレームに取付けられるパッド材と、該パッド材を被覆する表皮材とからなる車両用シートの側部に設けられ、前記シートフレームに取付けられる収納容器と、該収納容器に収納固着されるガス発生器と、該ガス発生器の作動時に該ガス発生器から噴出されるガスが流入されるように前記収納容器に固着されているエアバッグ本体とを備える車両の側突用エアバッグ装置において、前記収納容器はシートフレームの側部に固着され、前記エアバッグ本体が前記パッド材のサイド部に形成されたスリットを介して表皮材の縫製部を破断して膨出するようになされ、前記パッド材のサイド部に形成されたスリットの両側のパッド材に面部材が取付けられていることを特徴とする。
【0008】
【作用】本発明の請求項1に記載の車両の側突用エアバッグ装置によれば、エアバッグ本体がパッド材のサイド部に形成されたスリットを介して表皮材の縫製部を破断して膨出するようになされているので、ガス発生器の作動時にエアバッグ本体がパッド材のサイド部に形成されたスリットに導かれ、エアバッグ本体がパッド材を押圧すると共に、エアバッグ本体が表皮材の縫製部を破断し、エアバッグ本体がスリットより外部に突出し、所定の膨出状態となる。この膨出の際にパッド材がちぎれて飛散する虞れがなく、エアバッグ本体を簡易迅速且つ正確に膨出させることができる。
【0009】本発明の請求項2に記載の車両の側突用エアバッグ装置によれば、エアバッグ本体がパッド材のサイド部に形成されたスリットを介して表皮材の縫製部を破断して膨出するようになされ、前記パッド材のサイド部に形成されたスリットの両側のパッド材に面部材が取付けられているので、ガス発生器の作動時にエアバッグ本体が面部材を押圧し、該面部材がパッド材を押圧すると共に、パッド材のサイド部に形成されたスリットに導かれ、エアバッグ本体が表皮材の縫製部を破断し、エアバッグ本体がスリットより外部に突出し、所定の膨出状態となる。この膨出の際にパッド材がちぎれて飛散する虞れがなく、エアバッグ本体を簡易迅速且つ正確に膨出させることができる。
【0010】
【実施例】以下本発明に係わる車両の側突用エアバッグ装置を図面を参照して詳述する。図1乃至図3には本発明に係わる車両の側突用エアバッグ装置の一実施例が夫々示されており、この車両の側突用エアバッグ装置は車両用シートの運転席、助手席またはリア席に適用することができる。また車両用シートのシートバックに適用した場合として説明するが、シートクッションにも同様に適用することができる。
【0011】図1に示す如く、車両の側突用エアバッグ装置11はモジュール化され、シートバック2のシートフレーム3に固着されている。このエアバッグ装置11はガス発生器15及びエアバッグ本体16を収納した収納容器14を有し、この収納容器14がシートフレーム3の側部にボルト14a及びナット14b等により固着されている。
【0012】シートバック2のシートフレーム3にはパッド材5及び表皮材7が取付けられ、前記パッド材5はメイン部5aとサイド部5bからなり、前記表皮材7はメイン布7aとメインサイド布7b及び横マチ布7cとを備えている。
【0013】前記エアバッグ装置11のエアバッグ本体16はパッド材5のサイド部5bに斜め外方に延びて形成されたスリット8を介してメインサイド布7bと横マチ布7cの縫製部9を破断して前方に膨出し得るように形成されている。
【0014】前記収納容器14は、図1に示す如く、後部側に円筒状のガス発生器15を収納固着し得るように形成され、前部側に折り畳まれたエアバッグ本体16を収納固着し得るように略扁平な箱状に形成されている。また収納容器14のガス噴出側となる前部にガス噴出用開口14cが形成されている。
【0015】前記スリット8は収納容器14のガス噴出用開口14c側と、メインサイド布7bと横マチ布7cの縫製部9との間に斜め外方に延びて形成されている。このスリット8の両側のパッド材5のサイド部5bに面部材21,22が取付けられている。この面部材21,22は粗毛布、不織布、ナイロン等の布地、合成樹脂材等から形成することができる。
【0016】前記面部材21,22は何れか一方を省略することができ、また面部材21の一端21aを前記収納容器14の取付けボルト14aによりシートフレーム3の側部に固着し、また面部材21の他端21bをメインサイド布7bと横マチ布7cの縫製部9に縫着することもできる。
【0017】次に、図3を参照してエアバッグ装置11の作動状態を説明する。先ず、ガス発生器15が作動すると、エアバッグ本体16の初期の膨出状態で、エアバッグ本体16が面部材21,22を押圧し、エアバッグ本体16がこの面部材21,22の間のスリット8を拡開し、サイド部5bをスリット8を中心として左右方向に押圧する。
【0018】エアバッグ本体16の膨出が進行すると、エアバッグ本体16が表皮材7のメインサイド布7bと横マチ布7cの縫製部9の縫製糸を破断し、エアバッグ本体16が面部材21,22に当接しながら所定の膨出状態となる。このエアバッグ本体16の膨出状態で、パッド材5のサイド部5bの前部は面部材21により押圧され、またパッド材5のサイド部5bの横マチ布7c側は面部材22により押圧され、且つ被覆された状態にあるので、パッド材5のサイド部5bの前部がちぎれて飛散する虞れがない。
【0019】尚、上述せる実施例は、本発明の一実施例を示したものであり、収納容器及びエアバッグ本体の構造、形状、大きさ、及びスリット及び面部材の形状、大きさ等は図示のものに限定されるものではなく、種々の変形変更をなし得るものである。
【0020】
【発明の効果】以上が本発明に係わる車両の側突用エアバッグ装置の一実施例の構成であるが、本発明の請求項1に記載の車両の側突用エアバッグ装置によれば、エアバッグ本体がパッド材のサイド部に形成されたスリットを介して表皮材の縫製部を破断して膨出するようになされているので、ガス発生器の作動時にエアバッグ本体がパッド材のサイド部に形成されたスリットに導かれ、エアバッグ本体がパッド材を押圧すると共に、エアバッグ本体が表皮材の縫製部を破断し、エアバッグ本体がスリットより外部に突出し、所定の膨出状態となる。この膨出の際にパッド材がちぎれて飛散する虞れがなく、エアバッグ本体を簡易迅速且つ正確に膨出させることができる。
【0021】本発明の請求項2に記載の車両の側突用エアバッグ装置によれば、エアバッグ本体がパッド材のサイド部に形成されたスリットを介して表皮材の縫製部を破断して膨出するようになされ、前記パッド材のサイド部に形成されたスリットの両側のパッド材に面部材が取付けられているので、ガス発生器の作動時にエアバッグ本体が面部材を押圧し、該面部材がパッド材を押圧すると共に、パッド材のサイド部に形成されたスリットに導かれ、エアバッグ本体が表皮材の縫製部を破断し、エアバッグ本体がスリットより外部に突出し、所定の膨出状態となる。この膨出の際にパッド材がちぎれて飛散する虞れがなく、エアバッグ本体を簡易迅速且つ正確に膨出させることができる。
【0022】本発明によれば、車両の側面衝突の際に、エアバッグ装置のエアバッグ本体が前方に膨出する際にパッド材がちぎれて飛散する虞れがなく、エアバッグ本体を簡易迅速且つ正確に膨出させることができ、着座者が受ける衝撃荷重を抑えることができる車両の側突用エアバッグ装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両の側突用エアバッグ装置をシートバックに適用した状態の一実施例を示す断面図。
【図2】本発明に係る車両の側突用エアバッグ装置をシートバックに適用した状態の一実施例を示す斜視図。
【図3】本発明に係る車両の側突用エアバッグ装置のガス発生器の作動後の断面図。
【符号の説明】
2 シートバック
3 シートフレーム
5 パッド材
5a メイン部
5b サイド部
7 表皮材
7a メイン布
7b メインサイド布
7c 横マチ布
8 スリット
9 縫製部
11 エアバッグ装置
14 収納容器
14a ボルト
14b ナット
14c ガス噴出用開口
15 ガス発生器
16 エアバッグ本体
21 面部材
21a 一端
21b 他端
22 面部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 シートフレームと、該シートフレームに取付けられるパッド材と、該パッド材を被覆する表皮材とからなる車両用シートの側部に設けられ、前記シートフレームに取付けられる収納容器と、該収納容器に収納固着されるガス発生器と、該ガス発生器の作動時に該ガス発生器から噴出されるガスが流入されるように前記収納容器に固着されているエアバッグ本体とを備える車両の側突用エアバッグ装置において、前記収納容器はシートフレームの側部に固着され、前記エアバッグ本体が前記パッド材のサイド部に形成されたスリットを介して表皮材の縫製部を破断して膨出するようになされていることを特徴とする車両の側突用エアバッグ装置。
【請求項2】 シートフレームと、該シートフレームに取付けられるパッド材と、該パッド材を被覆する表皮材とからなる車両用シートの側部に設けられ、前記シートフレームに取付けられる収納容器と、該収納容器に収納固着されるガス発生器と、該ガス発生器の作動時に該ガス発生器から噴出されるガスが流入されるように前記収納容器に固着されているエアバッグ本体とを備える車両の側突用エアバッグ装置において、前記収納容器はシートフレームの側部に固着され、前記エアバッグ本体が前記パッド材のサイド部に形成されたスリットを介して表皮材の縫製部を破断して膨出するようになされ、前記パッド材のサイド部に形成されたスリットの両側のパッド材に面部材が取付けられていることを特徴とする車両の側突用エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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