説明

車両の後方確認装置

【課題】リヤワイパーの構造を複雑にすることなく、補助線とリヤワイパーとの干渉を回避し、車両後端を把握するための補助線を車両幅方向中央に設けることを可能にする。
【解決手段】車両10の後部に設けられたリヤウインドガラス31と、リヤウインドガラス31の近傍に設けられ、車両幅方向中央を含んだ車両後方下部の死角を視認可能とする後方確認ミラー21と、車両10の後部の車外側に設けられ、車両幅方向中央C1を通って車両幅方向に延びる装飾部材32と、リヤウインドガラス31の下端部31a近傍に設けられ、停止位置と反転位置との間で往復動するリヤワイパー36と、を備えた車両の後方確認装置20であって、装飾部材32が、車両10の後部の車体色と異なる色に形成され、リヤワイパー36が、停止位置において車両幅方向中央C1よりも外側に全体が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の死角を視認可能とする後方確認ミラーと、車両幅方向中央を通って車両幅方向に延びる装飾部材と、停止位置と反転位置との間で往復動するリヤワイパーと、で構成される車両の後方確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の後方確認装置には、車両の周囲を視認するための車両用ミラーであり、車両の一部の写像に対して離間するように配置され、車両の進行方向へ指向するマーカ部を備えたものがある。
【0003】
この車両の後方確認装置によれば、車両の一部の写像と、車両の進行方向へ指向するマーカ部とを対比することで、車両の進行方向を認識しやすくすることが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、車両の後方確認装置には、リヤウインドガラス近傍の車室側に設けられ後下方の死角を視認可能とする後方確認ミラーと、リヤウインドガラスの下端部近傍に、略車幅向きとなる初期位置と略車両上下向きとなる反転位置との間で往復揺動可能に配置され、往復揺動することによりリヤウインドガラスを払拭するリヤワイパー機構と、車両の後進動作を検出する後進検出手段とを有し、後進検出手段が車両の後進動作を検出したときに、リヤワイパー機構を反転位置にて停止させる制御部を備えたものがある。
【0005】
この車両の後方確認装置によれば、リヤウインドガラスの視認範囲が拡大することで、駐停車時に駐車場の車止め等を認識しやすくすることが可能である(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−143537号公報
【特許文献2】特開2009−173185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、特許文献1の車両の後方確認装置では、車室後部若しくは車両後部にミラーを設け、車両後方下部を見る構造が開示されている。また、リヤバンパーにマーカ部を設け、車両後端の位置を把握しやすくすることが開示されている。特許文献2の車両の後方確認装置では、車室後部に設けたミラーにより車両後方下部を見ること、及び後進時(ギアポジションがリバースの時)に、リヤワイパーを初期位置から反転位置に移動させることが開示されている。
【0008】
一般的な車両では、車両の最後端(車両の中で最も後方に位置する部位)は車両の幅方向中央部に設けられる。よって、特許文献1の車両の後方確認装置のように車両後部にマーカ部(車両後端を把握するための補助線)を設ける場合、車両幅方向中央に設けることが好ましい。
しかし、車両後部に設けられたリヤウインドウを払拭するリヤワイパーが車両幅方向中央に配置されていると、リヤワイパーによってマーカ部の視認が阻害されるおそれがある。従って、特許文献2の車両の後方確認装置のように、後進時にリヤワイパーを反転させることが考えられるが、そのための回路や制御が必要となり、リヤワイパーの構造が複雑になる。
【0009】
本発明は、リヤワイパーの構造を複雑にすることなく、補助線とリヤワイパーとの干渉を回避し、車両後端を把握するための補助線を車両幅方向中央に設けることができる車両の後方確認装置を提供することを課題とする。
また、車両後端を把握するための補助線を設ける場合には、極力、部品点数の削減やコストの削減に貢献できる車両の後方確認装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、車両の後部に設けられたリヤウインドガラスと、リヤウインドガラスの近傍に設けられ、車両幅方向中央を含んだ車両後方下部の死角を視認可能とする後方確認ミラーと、車両の後部の車外側に設けられ、車両幅方向中央を通って車両幅方向に延びる装飾部材と、リヤウインドガラスの下端部近傍に設けられ、停止位置と反転位置との間で往復動するリヤワイパーと、を備えた車両の後方確認装置であって、装飾部材が、車両の後部の車体色と異なる色に形成され、リヤワイパーが、停止位置において車両幅方向中央よりも外側に全体が配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、後方確認ミラーが、リヤウインドガラスよりも車内側に設けられ、装飾部材が、リヤウインドガラスの下端部に隣接して設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明は、装飾部材には、装飾部材の表面よりも後方に突出するエンブレムが設けられ、エンブレムが、車両幅方向中央に設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明は、装飾部材の表面が反射材で形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明は、後方確認ミラーが、車両幅方向中央に配置され、リヤワイパーが、後方確認ミラーの鏡面の車両幅方向の外端よりも外側に配置されることを特徴とする。
【0015】
請求項6に係る発明は、後方確認ミラーが、車両幅方向中央に対してリヤワイパーとは反対側に偏在していることを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る発明は、リヤワイパーが、車両幅方向中央に対して車両の運転席側とは反対側に配置されることを特徴とする。
【0017】
請求項8に係る発明は、リヤワイパーの上方に、ウォッシャ液を噴射するウォッシャノズルを備え、ウォッシャノズルが、後方確認ミラーの鏡面の車両幅方向の外端よりも外側に配置されることを特徴とする。
【0018】
請求項9に係る発明は、リヤワイパーに、リヤウインドガラスを払拭するワイパーブレードと、ワイパーブレードの回動中心となるとともに、ワイパーブレードの車両幅方向中央側の端部よりも車両幅方向中央側に配置されるピボット軸と、を備え、ウォッシャノズルを、リヤワイパーのピボット軸の上方に配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車両の後方確認装置に、車両の後部に設けられたリヤウインドガラスと、リヤウインドガラスの近傍に設けられ、車両幅方向中央を含んだ車両後方下部の死角を視認可能とする後方確認ミラーと、車両の後部の車外側に設けられ、車両幅方向中央を通って車両幅方向に延びる装飾部材と、リヤウインドガラスの下端部近傍に設けられ、停止位置と反転位置との間で往復動するリヤワイパーと、を備えた。
装飾部材が、車両の後部の車体色と異なる色に形成されたので、装飾部材を、運転者が車両後端を把握するための補助線として利用することができる。これにより、部品点数の削減及びコストの削減を図ることができる。
例えば、車両の後部の車外側に設けられた装飾部材を視認する際には、リヤワイパーが邪魔をすることが多い。そこで、リヤワイパーが、停止位置において車両幅方向中央よりも外側に全体が配置される。すなわち、車両幅方向中央(一般的な車両において車両の最後端となる部位)からリヤワイパーをずらすことで、車両幅方向中央を通って車両幅方向に延びる補助線としての装飾部材とリヤワイパーとの干渉を回避して装飾部材(補助線)を視認しやすくできる。
【0020】
請求項2に係る発明では、後方確認ミラーが、リヤウインドガラスよりも車内側に設けられる。この場合、リヤウインドガラスを通じて見る後方確認ミラーの視界における車両の後端はリヤウインドガラスの下端部になる。そこで、装飾部材が、リヤウインドガラスの下端部に隣接して設けられることで、より有効に装飾部材を車両後端を認識するための補助線として利用することができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、装飾部材には、装飾部材の表面よりも後方に突出するエンブレムが設けられ、エンブレムが、車両幅方向中央に設けられたので、エンブレムによって車両幅方向中央(通常は車両の最後端が位置する部位)を把握でき、より確実に車両後端を認識することができる。
【0022】
請求項4に係る発明では、装飾部材の表面が反射材で形成された。例えば、後方確認ミラーは、車両の下方に指向しているために、後方確認ミラーで視認される像が暗くなることがある。そこで、装飾部材の反射率を上げることで、装飾部材の視認性がその他の像に比べて向上し、補助線としての効果を高めることができる。
なお、反射材には、一般的な反射材の他、実施例のようなメッキ仕様や、鏡面処理された金属部材等も含む。
【0023】
請求項5に係る発明では、後方確認ミラーが、車両幅方向中央に配置されたので、車両の写像をほぼ均等に写し出すことができる。この結果、後方確認ミラーの写像を認識しやすくすることができる。
リヤワイパーが、後方確認ミラーの鏡面の車両幅方向の外端よりも外側に配置された。すなわち、車両幅方向における後方確認ミラーの鏡面の範囲からリヤワイパーが外れるので、後方確認ミラーが平面鏡の場合は、リヤワイパーが映らなくなり、また曲面鏡の場合でも、像の歪みが少ないミラーの中央付近からリヤワイパーの写像を外すことができる。これにより、後方確認ミラーの写像の視認性が向上する。
【0024】
請求項6に係る発明では、後方確認ミラーが、車両幅方向中央に対してリヤワイパーとは反対側に偏在している。すなわち、後方確認ミラーをリヤワイパーとは反対側にずらすことで、リヤワイパーをできるだけ車両幅方向中央に近づけて配置することができる。
なお、「偏在する」とは、後方確認ミラーが、リヤワイパーとは反対側に位置していることを意味する。
【0025】
請求項7に係る発明では、リヤワイパーが、車両幅方向中央に対して車両の運転席側とは反対側に配置される。すなわち、運転車が振り返って後方を視認する際に、見え難い運転席側ではなく助手席側を重点的にリヤワイパーで払拭するので、後方視界が良好となる。
【0026】
請求項8に係る発明では、リヤワイパーの上方に、ウォッシャ液を噴射するウォッシャノズルを備える。
ウォッシャノズルが、後方確認ミラーの鏡面の車両幅方向の外端よりも外側に配置されるので、ウォッシャノズルから液だれが起きたとしても、車両幅方向における後方確認ミラーの鏡面の範囲から液だれが起こらない。これにより、後方確認ミラーが平面鏡の場合は、液だれ部位が映らなくなり、また曲面鏡の場合でも、像の歪みが少ない範囲から液だれ部位を外すことができる。
【0027】
請求項9に係る発明では、リヤワイパーに、リヤウインドガラスを払拭するワイパーブレードと、ワイパーブレードの回動中心となるとともに、ワイパーブレードの車両幅方向中央側の端部よりも車両幅方向中央側に配置されるピボット軸と、を備える。
ウォッシャノズルを、リヤワイパーのピボット軸の上方に配置したので、リヤワイパーのピボット軸によって、液だれがワイパ払拭範囲よりも下方の意匠面(アウタパネルの意匠面)まで至ることを抑制できる。この結果、車両の外観性の低下を抑制できる。
車両幅方向中央側にウォッシャノズルを配置したので、例えば、ワイパーブレードの上方に配置するよりも、ウォッシャ液の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る実施例1の車両の後方確認装置が採用された車両を示す正面図である。
【図2】本発明に係る実施例1の車両の後方確認装置が採用された車両を示す背面図である。
【図3】図2の3−3線断面図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図2に示された車両の後方確認装置が採用された車両を示す斜視図である。
【図6】図2に示された車両の後方確認装置の後方確認ミラーに写る写像の説明図である。
【図7】図2に示された車両の後方確認装置の比較検討図である。
【図8】図2に示された車両の後方確認装置の作用説明である。
【図9】本発明に係る実施例2の車両の後方確認装置が採用された車両を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例1】
【0030】
図1〜図4に示されたように、車両10は、車体11の後方に形成された後部開口15と、この後部開口15を開閉自在に覆うテールゲート16と、このテールゲート16近傍で車内12に設けられた後方確認ミラー21と、車内12の前方に配置されたルームミラー22と、車内12に配置された運転席23、助手席24及び後部座席(不図示)と、運転席23の前方に配置されたステアリング25と、を備える。なお、車両10は、右ハンドルの車両である。また、ラインC1は車両幅方向中央を示す。
【0031】
テールゲート16は、テールゲート本体(枠体)27と、このテールゲート本体27の上部に設けられたリヤウインドガラス31と、このリヤウインドガラス31の下方でテールゲート本体27に設けられた装飾部材32と、この装飾部材32内に配置されたエンブレム33と、装飾部材32の下方に配置されたライセンスプレート34と、装飾部材32内に配置され、ライセンスプレート34を照明するランプ35と、リヤウインドガラス31内に配置されたリヤワイパー36と、テールゲート本体27の上部に配置され、ウォッシャ液を噴射するウォッシャノズル37と、を備える。
【0032】
車両の後方確認装置20は、リヤウインドガラス31と、後方確認ミラー21と、装飾部材32と、エンブレム33と、リヤワイパー36と、ウォッシャノズル37と、から構成される。
【0033】
後方確認ミラー21は、車両幅方向中央を含んだ車両後方下部の死角を視認可能とする車内後方上部に設けられた曲面鏡若しくは平面鏡である。さらに、後方確認ミラー21は、ブレーキ操作に連動して点灯するハイマウントストップランプユニット28内に組み込まれ、テールゲート16上部中央に取付けられている。
【0034】
すなわち、後方確認ミラー21は、リヤウインドガラス31よりも車内12側に設けられ、車両幅方向中央に配置され、且つリヤワイパー36とは反対側に偏在する位置に配置されたものといえる。
なお、「偏在する」とは、後方確認ミラー21が、リヤワイパー36とは反対側に位置していることを意味する。
【0035】
リヤウインドガラス31は、後方視界が視認可能な透明部38と、この透明部38に周囲をマスキングしたマスキング部39とからなる。リヤウインドガラス31は、前述のように、テールゲート16のテールゲート本体27の上方に設けられたものであり、車両10の後部に設けられたものといえる。
【0036】
装飾部材32は、リヤウインドガラス31の下方でテールゲート本体27に設けられたクロームメッキ仕様のテールゲート用モールである。すなわち、テールゲート用モール(装飾部材)32の表面32bが反射材で形成され、リヤウインドガラス31の下端部31aに隣接して設けられる。また、装飾部材32は、車両10の後部の車外側に設けられ、車両幅方向中央を通って車両幅方向に延びる部材であり、車両10の後部の車体色と異なる色に形成されたものである。
【0037】
エンブレム33は、テールゲート用モール(装飾部材)32の中央部に設けられ、テールゲート用モール32の表面(車外面)32bよりも後方に突出する。さらに、エンブレム33は、車両10に対して車両幅方向中央に設けられている。
【0038】
リヤワイパー36は、リヤウインドガラス31の下端部31a近傍に設けられ、停止位置と反転位置との間で往復動する部材である。詳細には、リヤワイパー36は、テールゲート本体27の内部で且つ下部に設けられた駆動機構41と、この駆動機構41で揺動され、駆動機構41からリヤウインドガラス31に突出したピボット軸42と、このピボット軸42に取付けられたアーム43と、このアーム43に取付けられ、リヤウインドガラス31を払拭するワイパーブレード44と、からなる。
【0039】
ピボット軸42は、アーム43及びワイパーブレード44の回動中心の回転軸であり、ワイパーブレード44の車両幅方向中央側の端部44aよりも車両幅方向中央側に配置される。
リヤワイパー36の車両10に対する配置位置は、停止位置において車両幅方向中央よりも外側に全体が配置され、後方確認ミラー21の鏡面29の車両幅方向の外端29aよりも外側に配置され、且つ車両幅方向中央に対して車両10の運転席23側とは反対側に配置されている。
【0040】
ウォッシャノズル37は、リヤウインドガラス31の表面31bに、ウォッシャ液を噴射する部分であり、リヤウインドガラス31の周りに設けられている。具体的には、ウォッシャノズル37は、リヤウインドガラス31の周りとなるテールゲート本体(枠体)27に設けられる。言い換えれば、リヤワイパー36の上方に、設けられたものともいえる。なお、リヤウインドガラス31のマスキング部39にウォッシャノズル37を配置するものでもよい。
【0041】
さらに、後方確認ミラー21及びリヤワイパー36の位置関係については、ウォッシャノズル37は、後方確認ミラー21の鏡面29の車両幅方向の外端29aよりも外側に配置されるとともに、リヤワイパー36のピボット軸42の上方に配置されている。
【0042】
図5において車両10の後方の路面に、車幅左ライン51、車幅右ライン52、車幅左ライン51から車幅外方に寸法αだけ拡げた車幅左プラスαライン53、車幅右ライン52から車幅外方に寸法αだけ拡げた車幅右プラスαライン54、車幅左プラスαライン53と車幅右プラスαライン54の後端を結ぶ接続ライン55、等間隔の縦ライン56、等間隔の横ライン57が描かれ、これらのライン51〜57を後方確認ミラー21で視認したときの写像が図6に示される。
【0043】
図6では、車幅左ライン51の写像を51a、車幅右ライン52の写像を52a、車幅左プラスαライン53の写像を53a、車幅右プラスαライン54の写像を54a、接続ライン55の写像を55a、等間隔の縦ライン56の写像を56a、等間隔の横ライン57の写像を57a、で表示するとともに、装飾部材32の写像を32a、エンブレム33の写像を33a、リヤワイパー36の写像を36aと表示する。
【0044】
後方確認ミラー21では、装飾部材32の写像32aで車両10の後端が認識され、エンブレム33の写像33aで車両幅方向中央が認識される。このときに、リヤワイパー36の写像36aが後方確認ミラー21の中央にないので、装飾部材32の写像32a及びエンブレム33の写像33aがクリアに認識できる。
【0045】
図7(a)に比較例の車両の後方確認装置120が示され、図7(b)に比較例の車両の後方確認装置120の後方確認ミラー121に写る写像が示される。図8(a)に実施例の車両の後方確認装置20が示され、図8(b)に実施例の車両の後方確認装置20の後方確認ミラー21に写る写像が示される。
【0046】
図7(a)に示されたように、比較例の車両の後方確認装置120はリヤウインドガラス131と、補助線132と、後方確認ミラー121と、リヤワイパー136と、から構成される。
【0047】
補助線132は、黄色の補助線であり、テールゲート116の車内112側の下部に設けられる。後方確認ミラー121は、リヤウインドガラス131よりも車内112側に、且つ車両幅方向中央C3に配置される。リヤワイパー136は、ピボット軸142が車両幅方向中央C3よりも右に設けられ、ワイパーブレード144の車両幅方向外側の端部144aが車両幅方向中央C3よりも左に設けられている。
【0048】
比較例の車両の後方確認装置120では、テールゲート116の車内112側の下部に補助線132を設定する必要があるので、車両の後方確認装置120の構成が煩雑となる。
【0049】
図7(b)に示されたように、比較例の車両の後方確認装置120では、リヤワイパー136の写像136aが後方確認ミラー121の中央付近に写り込むので、車両の後端位置が視認しにくい。また、車両幅方向中央C3を認識する情報がないので、車両幅方向中央C3は、運転者の経験にたよるものであった。なお、図7(b)において、符号132aは補助線132の写像である。
【0050】
実施例の車両の後方確認装置20は、図8(a)に示されたように、リヤウインドガラス31と、後方確認ミラー21と、装飾部材32と、エンブレム33と、リヤワイパー36と、から構成される。
実施例の車両の後方確認装置20では、図8(a),(b)に示されたように、比較例の車両の後方確認装置の補助線132を装飾部材32で代用している。これにより、車両の後方確認装置20の構成の簡略化を図ることができる。
【0051】
また、車両幅方向中央C1を認識できるように、エンブレム33を後方確認ミラー21に写り込み可能な位置に設定した。この結果、車両幅方向中央C1を認識することを可能にした。さらに、停止位置において車両幅方向中央C1よりも外側に全体が配置されたので、後方確認ミラー21の写像(特に装飾部材32の写像32a及びエンブレム33の写像33a)が認識しやすい。
【0052】
図4に示されたように、車両の後方確認装置20では、車両10の後部に設けられたリヤウインドガラス31と、リヤウインドガラス31の近傍に設けられ、車両幅方向中央を含んだ車両後方下部の死角を視認可能とする後方確認ミラー21と、車両10の後部の車外側に設けられ、車両幅方向中央C1を通って車両幅方向に延びる装飾部材32と、リヤウインドガラス31の下端部31a近傍に設けられ、停止位置と反転位置との間で往復動するリヤワイパー36と、を備えた。
【0053】
装飾部材32が、車両10の後部の車体色と異なる色に形成されたので、装飾部材32を、運転者が車両後端を把握するための補助線として利用することができる。これにより、部品点数の削減及びコストの削減を図ることができる。
【0054】
例えば、車両の後部の車外側に設けられた装飾部材を視認する際には、リヤワイパーが邪魔をすることが多い。そこで、リヤワイパー36が、停止位置において車両幅方向中央C1よりも外側に全体が配置される。すなわち、車両幅方向中央(一般的な車両において車両の最後端となる部位)からリヤワイパー36をずらすことで、車両幅方向中央C1を通って車両幅方向に延びる補助線としての装飾部材32とリヤワイパー36との干渉を回避して装飾部材(補助線)32を視認しやすくできる(図6参照)。
【0055】
図2及び図3に示されたように、車両の後方確認装置20では、後方確認ミラー21が、リヤウインドガラス31よりも車内12側に設けられる。この場合、リヤウインドガラス31を通じて見る後方確認ミラー21の視界における車両10の後端はリヤウインドガラス31の下端部31aになる。そこで、装飾部材32が、リヤウインドガラス31の下端部31aに隣接して設けられることで、より有効に装飾部材32を車両後端を認識するための補助線として利用することができる。
【0056】
図2及び図3に示されたように、車両の後方確認装置20では、装飾部材32には、装飾部材32の表面(車外面)32bよりも後方に突出するエンブレム33が設けられ、エンブレム33が、車両幅方向中央C1に設けられたので、エンブレム33によって車両幅方向中央(通常は車両の最後端が位置する部位)C1を把握でき、より確実に車両後端を認識することができる(図6参照)。
【0057】
図2に示されたように、車両の後方確認装置20では、装飾部材32の表面32bが反射材で形成された。例えば、後方確認ミラー21は、車両の下方に指向しているために、後方確認ミラー21で視認される像が暗くなることがある。そこで、装飾部材32の反射率を上げることで、装飾部材32の視認性がその他の像に比べて向上し、補助線としての効果を高めることができる。
なお、反射材には、一般的な反射材の他、実施例のようなメッキ仕様や、鏡面処理された金属部材等も含む。
【0058】
図2及び図3に示されたように、車両の後方確認装置20では、後方確認ミラー21が、車両幅方向中央C1に配置されたので、車両10の写像をほぼ均等に写し出すことができる。この結果、後方確認ミラー21の写像を認識しやすくすることができる。
【0059】
リヤワイパー36が、後方確認ミラー21の鏡面29の車両幅方向の外端29aよりも外側に配置された。すなわち、車両幅方向における後方確認ミラー21の鏡面29の範囲からリヤワイパー36が外れるので、後方確認ミラー21が平面鏡の場合は、リヤワイパー36が映らなくなり、また曲面鏡の場合でも、像の歪みが少ないミラーの中央付近からリヤワイパー36の写像を外すことができる。これにより、後方確認ミラー21の写像の視認性が向上する。
【0060】
図1に示されたように、車両の後方確認装置20では、リヤワイパー36が、車両幅方向中央C1に対して車両10の運転席23側とは反対側に配置される。すなわち、運転車が振り返って後方を視認する際に、見え難い運転席23側ではなく助手席24側を重点的にリヤワイパー36で払拭するので、後方視界が良好となる。
【0061】
図2及び図4に示されたように、車両の後方確認装置20では、リヤワイパー36の上方に、ウォッシャ液を噴射するウォッシャノズル37を備える。
ウォッシャノズル37が、後方確認ミラー21の鏡面29の車両幅方向の外端29aよりも外側に配置されるので、ウォッシャノズル37から液だれが起きたとしても、車両幅方向における後方確認ミラー21の鏡面29の範囲から液だれが起こらない。これにより、後方確認ミラー21が平面鏡の場合は、液だれ部位が映らなくなり、また曲面鏡の場合でも、像の歪みが少い範囲から液だれ部位を外すことができる。
【0062】
図2及び図4に示されたように、車両の後方確認装置20では、リヤワイパー36に、リヤウインドガラス31を払拭するワイパーブレード44と、ワイパーブレード44の回動中心となるとともに、ワイパーブレード44の車両幅方向中央側の端部44aよりも車両幅方向中央側に配置されるピボット軸42と、を備える。
【0063】
ウォッシャノズル37を、リヤワイパー36のピボット軸42の上方に配置したので、リヤワイパー36のピボット軸42によって、液だれがワイパ払拭範囲S1よりも下方の意匠面(テールゲート本体27等のアウタパネルの意匠面)まで至ることを抑制できる。この結果、車両10の外観性の低下を抑制できる。
車両幅方向中央側にウォッシャノズル37を配置したので、例えば、ワイパーブレード44の上方に配置するよりも、ウォッシャ液の有効利用を図ることができる。
【実施例2】
【0064】
図9に実施例2の車両の後方確認装置80が示される。なお、実施例1の車両の後方確認装置20(図2参照)と同一部品は同一符号を用い詳細な説明は省略する。
図9に示されたように、車両の後方確認装置80では、後方確認ミラー81が、車両幅方向中央C2に対して車両70の右側若しくは右寄りに配置され、車両幅方向中央C2に対してリヤワイパー36が車両70の左側若しくは左寄りに配置される。
後方確認ミラー81は、ブレーキ操作に連動して点灯するハイマウントストップランプユニット88内に組み込まれる。
【0065】
図9に示されたように、車両の後方確認装置80では、後方確認ミラー81が、車両幅方向中央C2に対してリヤワイパー36とは反対側に偏在している。すなわち、後方確認ミラー81をリヤワイパー36とは反対側にずらすことで、リヤワイパー36をできるだけ車両幅方向中央C2に近づけて配置することができる。
なお、「後方確認ミラー81が、車両幅方向中央C2に対してリヤワイパー36とは反対側に偏在する」とは、後方確認ミラー81の車幅方向の中央線C3が、車幅方向中央C2に対してリヤワイパー36とは反対側に位置することを意味する。」
【0066】
尚、本発明に係る車両の後方確認装置は、図2に示すように、装飾部材32は車両幅方向中央C1付近に設けられたものであったが、これに限るものではなく、車両幅方向端部まで延ばすことを妨げるものではない。
【0067】
本発明に係る車両の後方確認装置は、テールゲート16を有する車両10に設けられたが、これに限るものではなく、セダン等のテールゲート16のない車両のリヤウインドガラス廻りに構成されるものであってもよい。
【0068】
本発明に係る車両の後方確認装置は、右ハンドルの車両10に採用されたが、左ハンドルの車両に採用されるものであってもよく、この場合は、ウォッシャノズル、ピボット軸及びワイパーブレードも、車両幅方向中央C1に対してウォッシャノズル37、ピボット軸42及びワイパーブレード44と対称に配置される。
【0069】
本発明に係る実施例2の車両の後方確認装置は、図9に示したように、ハイマウントストップランプユニット88を車両70の右側若しくは右寄りに配置したが、これに限るものではなく、ハイマウントストップランプユニットを車両幅方向中央に配置し、後方確認ミラーのみを車両の右側若しくは右寄りに配置するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る車両の後方確認装置は、ミニバンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0071】
10,70…車両、20,80…車両の後方確認装置、21,81…後方確認ミラー、23…運転席、29…鏡面、29a…外端、31…リヤウインドガラス、31a…リヤウインドガラスの下端部、32…装飾部材、32b…表面、33…エンブレム、36…リヤワイパー、37…ウォッシャノズル、42…ピボット軸、44…ワイパーブレード、44a…ワイパーブレードの車両幅方向中央側の端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部に設けられたリヤウインドガラスと、前記リヤウインドガラスの近傍に設けられ、車両幅方向中央を含んだ車両後方下部の死角を視認可能とする後方確認ミラーと、前記車両の後部の車外側に設けられ、前記車両幅方向中央を通って車両幅方向に延びる装飾部材と、前記リヤウインドガラスの下端部近傍に設けられ、停止位置と反転位置との間で往復動するリヤワイパーと、を備えた車両の後方確認装置であって、
前記装飾部材は、前記車両の後部の車体色と異なる色に形成され、
前記リヤワイパーは、停止位置において車両幅方向中央よりも外側に全体が配置されることを特徴とする車両の後方確認装置。
【請求項2】
前記後方確認ミラーは、前記リヤウインドガラスよりも車内側に設けられ、
前記装飾部材は、前記リヤウインドガラスの下端部に隣接して設けられることを特徴とする請求項1記載の車両の後方確認装置。
【請求項3】
前記装飾部材には、該装飾部材の表面よりも後方に突出するエンブレムが設けられ、
前記エンブレムは、前記車両幅方向中央に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の後方確認装置。
【請求項4】
前記装飾部材は、表面が反射材で形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車両の後方確認装置。
【請求項5】
前記後方確認ミラーは、前記車両幅方向中央に配置され、
前記リヤワイパーは、前記後方確認ミラーの鏡面の前記車両幅方向の外端よりも外側に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車両の後方確認装置。
【請求項6】
前記後方確認ミラーは、前記車両幅方向中央に対して前記リヤワイパーとは反対側に偏在していることを特徴とする請求項5記載の車両の後方確認装置。
【請求項7】
前記リヤワイパーは、前記車両幅方向中央に対して前記車両の運転席側とは反対側に配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の車両の後方確認装置。
【請求項8】
前記リヤワイパーの上方に、ウォッシャ液を噴射するウォッシャノズルを備え、
前記ウォッシャノズルは、前記後方確認ミラーの鏡面の前記車両幅方向の外端よりも外側に配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の車両の後方確認装置。
【請求項9】
前記リヤワイパーは、リヤウインドガラスを払拭するワイパーブレードと、前記ワイパーブレードの回動中心となるとともに、前記ワイパーブレードの車両幅方向中央側の端部よりも車両幅方向中央側に配置されるピボット軸と、を備え、
前記ウォッシャノズルは、前記リヤワイパーのピボット軸の上方に配置することを特徴とする請求項8記載の車両の後方確認装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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