説明

車両の後部構造

【課題】少ない部品点数でありながら、外観性の高い車両を提供することを課題とする。
【解決手段】車両10は、車体11の後部に車幅方向に延在し、車体11の前方に膨出させた凹部30Rを有するリヤバンパ20と、凹部30Rに取付けられているリフレクタ40Rと、を備えている。凹部30Rは、リフレクタ40Rをリヤバンパ20に固定する開口33,34を有する。リフレクタ40Rは、開口33,34に取付けるための取付部43,44と、上下方向に延在する縦壁部49とを有し、凹部30Rは、縦壁部49の車両下方近傍に対応する位置に、第1の還流孔57を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤバンパにリフレクタを備えている車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の後部にリヤバンパが取付けられ、このリヤバンパにリフレクタが取付けられている車両が広く知られている(例えば、特許文献1(図1)、特許文献2(図1)参照。)。
【0003】
特許文献1に示された車両は、リヤバンパにランプユニットの取り付け孔が形成されており、この取り付け孔にランプユニットを挿入する構成を有する。ランプユニットは、ランプハウジングにランプレンズ等が取り付けられている。ランプハウジングの下部には、ランプの取り付け孔よりも車体前方まで延ばされた庇部を有している。
【0004】
庇部によって後輪が跳ね上げる泥水等を補足する。補足した水は、庇部を伝って庇部の車体前端部から滴下、排水される。車体前方に排出されるため、ランプユニットの下側とランプ取付孔との間から、車体後方の意匠面に水が排出されることを回避することができる。
【0005】
ところで、後輪の跳ね上げた水が、庇部よりも上方まで飛散することがある。庇部よりも上方に飛散した水は、ランプユニットの上方からランプユニットにかかる。ランプユニットにかかった水が、ランプユニット内に侵入することがある。特許文献1に示されるような車両によれば、一度ランプユニット内に浸入した水を排出することが困難である。
【0006】
特許文献2に示された車両は、リヤバンパに車体前方に向かって凹む凹部を形成し、この凹部にリフレクタを嵌合させている。リヤバンパのリフレクタが取付けられている部位は、車体内部側から遮蔽部材によって覆われている。
【0007】
遮蔽部材によって覆うことにより、後輪の跳ね上げる泥水が、リフレクタの取付部からリフレクタ側へ侵入することを防ぐことができる。リフレクタ側への泥水の侵入を防ぐことで、リフレクタからリヤバンパの意匠面側へ泥水が排出されることを防ぐ。リヤバンパの意匠面へ泥水が排出されないため、高い外観性を保つことができる。
【0008】
しかし、特許文献2に係る発明は、遮蔽部材を用いるので部品点数が多い。このため、車両のコストダウンを図るには、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−194038号公報
【特許文献2】特開2008−290605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、少ない部品点数でありながら、高い外観性を保つことのできる車両の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、車体の後部に車幅方向に延在し、車体の前方に膨出させた凹部を有するリヤバンパと、凹部に取付けられているリフレクタと、を備えると共に、凹部は、リフレクタをリヤバンパに固定する開口を有する車両の後部構造であって、リフレクタは、開口に取付けるための取付部と、上下方向に延在する縦壁部とを有し、凹部は、縦壁の車両下方近傍に対応する位置に、還流孔を有することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、凹部は、リフレクタに接触する当接部と、この当接部の外方に車幅方向に延在し、車幅方向の一方に向かって傾斜する稜線部と、を有し、稜線部の端部に、さらに還流孔が形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、リヤバンパは、その背面に開口の車幅外方に立設する衝立部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明では、開口は、取付部が取付けられる部位を囲うように、閉塞部で覆われていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明は、車体は、車体前後方向に向かって配設され、車幅方向の一方に偏倚する消音器を備え、凹部は、消音器の側部近傍に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、リフレクタは、上下方向に延在する縦壁部を有し、凹部は、縦壁の車両下方近傍に対応する位置に、還流孔を有する。凹部の開口から侵入した泥水等の水は、縦壁部を伝って還流孔に導かれる。水は、還流孔からリヤバンパの背面へ向かって戻される。水がリフレクタを介して、リヤバンパの表へと流れることを防ぐことができる。表側へ水が流れることを防止することで、リヤバンパの外観性を高めることができる。
【0017】
加えて、縦壁部は、リフレクタと共に一体成形することができ、還流孔は、凹部に開けられた孔である。即ち、リヤバンパの外観性を高めるために、新たな部品を用いる必要がない。
【0018】
以上から、本発明によれば、少ない部品点数でありながら、高い外観性を保つことのできる車両を提供することができる。
【0019】
請求項2に係る発明では、凹部は、リフレクタに接触する当接部と、車幅方向の一方に向かって傾斜する稜線部とを有し、稜線部の端部に、さらに還流孔が形成されている。リフレクタ内部に侵入した水は、当接部を介して稜線部に滲み出る。稜線部に滲み出た水は、稜線部の傾斜により下方に向かって流れる。下方に向かって流れた水の一部は、還流孔からリヤバンパの背面へ向かって流れる。一方、還流孔へ流れなかった水の残部は、稜線部の傾斜によりさらに下方に向かって流れる。水の残部は稜線部の端部に形成された還流孔からリヤバンパの背面へ向かって流れる。さらに還流孔を備えたことで、より確実に水がリヤバンパの表側へ流れることを防止することができる。
【0020】
請求項3に係る発明では、リヤバンパは、その背面に開口の車幅外方に立設する衝立部を有する。後輪によって巻き上げられた水は、リヤバンパ背面側の風の流れによって、凹部背面を車幅方向外側から内側へ向かって流れているものと考えられる。開口の車幅外方に衝立部を立設することにより、車幅方向の外側から開口へ向かって流れる水の侵入を抑制する。開口への水の侵入を抑制することにより、さらに、水がリヤバンパの表側へ流れることを防止することができる。
【0021】
請求項4に係る発明では、開口は、取付部が取付けられる部位を囲うように、閉塞部で覆われている。閉塞部で覆うことにより、開口への水の侵入を抑制する。開口への水の侵入を抑制することにより、さらに、水がリヤバンパの表側へ流れることを防止することができる。
【0022】
請求項5に係る発明では、車体は、前後方向に向かって配設され、車幅方向の一方に偏倚する消音器を備え、凹部は、消音器の側部近傍に位置している。消音器は、高温の排気ガスが流れる部材である。消音器が凹部の近傍に配置されていることにより、凹部は、消音器からの熱の影響を受ける。ここで、リヤバンパの一般面側へ水が流れないための対策としては、本発明による構造の他、遮蔽部材によってリヤバンパの背面を覆うことが考えられる。
しかし、遮蔽部材の素材によっては、消音器からの熱により、遮蔽部材が劣化する。劣化する場合には、遮蔽部材を消音器の近傍で用いることは困難である。
【0023】
本発明によれば、凹部の還流孔から水を排出する。凹部の還流孔から水を排出するため、他の部品を使用する必要がない。即ち、遮蔽部材を設定できない部位であっても、リヤバンパの一般面側へ水が流れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例に係る車両の背面図である。
【図2】図1の2部拡大図である。
【図3】図2に示されたリフレクタをリヤバンパから外した状態を説明する図である。
【図4】図3に示された凹部の正面図である。
【図5】図4に示された凹部の背面図である。
【図6】図3に示されたリフレクタの背面図である。
【図7】図2の7−7線断面図である。
【図8】図2の8−8線断面図である。
【図9】図2の9矢視図である。
【図10】リフレクタに侵入した水の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
なお、実施例中左右とは、車両に着座した乗員を基準として左右をいい、前後とは、車両の進行方向を基準として前後をいう。
【実施例】
【0026】
実施例に係る車両の後部構造について、図1に基づき説明する。
図1に示されるように、車両10は、車体11の左右に後輪12R,12L(Rは運転者から見た右、Lは運転者から見た左を示す添え字。以下同じ。)が回転可能に支持され、これらの後輪12R,12Lの上方に幅方向に向かってリヤバンパ20が延びている。これらのリヤバンパ20の上部にリヤランプ13R,13Lが取付けられている。リヤバンパ20の下方に、内燃機関で発生した排気ガスを外部に排出するための消音器70が取付けられている。消音器70は、車体の底部を前後方向(図面表裏方向)に向かって延びている。
【0027】
リヤバンパ20は、一般面21と、この一般面21から車体前方に向かって凹ませた凹部30R,30Lとからなる。凹部30R,30Lは、リヤバンパ20の両端に形成され、車体後方から見て、略四角形を呈する。凹部30R,30Lと同形状のリフレクタ40R,40Lが、凹部30R,30Lにそれぞれ嵌め込まれている。リフレクタ40R,40Lは、後続の車両のライトが照射されることで光を反射する、樹脂製の反射板である。リフレクタ40Rは、消音器70の近傍に取付けられている。
【0028】
本発明に係る車両10の後部構造は、少なくとも消音器70近傍に配置されるリフレクタ40Rに適用されるものである。しかし、消音器70から離して取付けられているリフレクタ40Lについても、リフレクタ40Rの構成を適用することができる。特に消音器70近傍に配置されるリフレクタ40Rに、本発明に係る構造を適用することが望ましい理由については、後述する。次図以降では、車体右側のリフレクタ40Rを例に説明する。
【0029】
図2及び図3に示されるように、リフレクタ40Rの一部は、消音器70の一部に車幅方向で重なり合っている。リフレクタ40Rは、背面に爪状の取付部43,44が2箇所形成されていると共に、タッピングねじ(ビス)(図8、符号65)が螺合されるねじ取付孔45が形成されている。これらの取付部43,44及びねじ取付孔45を介して、リフレクタ40Rは、リヤバンパ20に取り付けられている。
【0030】
リフレクタ40Rは、凹部30Rに対して着脱可能な構成とされている。凹部30Rは、リヤバンパ20の一般面21に略平行な底面部31と、この底面部31から立ち上げられ一般面21に繋げられる立上げ部32とからなる。
【0031】
底面部31には、リフレクタ40Rを取り付けるための開口33,34が2箇所に形成されている。さらに、底面部31には、タッピングねじ(図8、符号65)を通すためのねじ通し孔35が形成されている。
【0032】
リフレクタ40Rは、本体部41と、この本体部41に被せられ光を反射する反射部42とからなる。本体部41には、凹部30Rの開口33,34に対応させた部位に、開口33,34に取り付けられる取付部43,44が形成されている。また、ねじ通し孔35に対応させた部位に、タッピングねじが螺合されるねじ取付孔45が形成されている。
【0033】
取付部43,44及びねじ取付孔45から本体部41の縁部41aに向かって縦壁部47,48,49が延びている。縦壁部47,48,49は、取付部43,44及びねじ取付孔45の強度を高める部材であると共に、リフレクタ40R内に侵入した水の流れをガイドするための部材でもある。
凹部30R及びリフレクタ40Rについて、さらに詳細に次図以降で説明する。
【0034】
図4に示すように、立上げ部32は、底面部31に対して緩やかに繋げられ、立上げ部32と底面部31とが接続される部位は、略円弧形状を呈する。この略円弧形状の部位が稜線部51である。稜線部51は、底面部31の全周に沿って形成されている。
【0035】
立上げ部32は、車幅方向に略水平に延びている第1の横辺32aと、この第1の横辺32aの一端から斜下方に延びる第1の縦辺32bと、この第1の縦辺32bの下端から下がり勾配に延びている第2の横辺32cと、この第2の横辺32cの下側の端部から立ち上げられ第1の横辺32aに繋げられる第2の縦辺32dとからなる。
【0036】
第1の縦辺32bは、第2の横辺32cに対して鈍角で接続されている。加えて、この接続されている部位は、半径rの円弧を描く。リフレクタ40R内に侵入した水が、第1の縦辺32bと第2の横辺32cとが接続される部位に留まることを防止することができる。
【0037】
開口33,34は、略四角形を呈すると共に、それぞれ閉塞部53,54によって覆われている。閉塞部53,54は共に、凹部30Rの底面部31をさらに車体前方に向かって凹ませた形状を呈する。閉塞部53,54を凹形状とすることで、底面部31の剛性を高め、高い強度でリフレクタ40Rを支持することができる。
【0038】
ねじ通し孔35は、凹部30Rをさらに車体前方に向かって凹ませた部位に形成されている。ねじ通し孔35近傍の剛性を高め、高い強度でリフレクタ40Rを支持することができる。また、底面部31の任意の部位に、底面部31の強度を補強するためのビード部55が形成されている。
【0039】
稜線部51は、ねじ通し孔35の下方の位置に、水を排出するための第1の還流孔57が形成され、第2の横辺32cの下端部に第2の還流孔58が形成されている。
【0040】
図3も参照して以下のようにいうこともできる。ねじ取付孔45に繋げられる縦壁部49の下方近傍に対応する位置に、第1の還流孔57が形成されている。また、稜線部51の下側の端部に第2の還流孔58が位置する。ここで、縦壁部49の下方近傍とは、車幅方向で、縦壁部49に第1の還流孔57の少なくとも一部が重なっていることをいう。
【0041】
第1の還流孔57は、縦壁部47〜49に対応する任意の位置に形成することができる。また、複数形成することもできる。即ち、縦壁部47〜49が複数形成されている場合には、任意の縦壁部47〜49の車両下方近傍に対応する位置に、第1の還流孔57は少なくとも1つ形成されているということができる。
【0042】
第2の横辺32cには、複数の突起部59が形成されている。これらの突起部59は、リフレクタ40Rの位置決めを行うための調整用リブである。
凹部30Rについて、次図でさらに詳細に説明する。
【0043】
図5に示されるように、凹部30Rの背面24a(リヤバンパ20の背面24)に、略L字状の衝立部62が形成されている。衝立部62は、車幅方向外側の開口33のさらに車幅方向外側に立設される部材であり、閉塞部53から車幅方向外側に向かって延びる延伸部62aと、この延伸部62aの端部から下方に延び閉塞部53に対面する対面部62bとからなる。衝立部62は、異なる方向に延びる延伸部62a及び対面部62bとからなる。延伸部62a又は対面部62bのみからなる衝立を用いた場合に比べ、開口33へ侵入する水の量を減らすことができる。
【0044】
加えて、衝立部62の高さは、閉塞部53が凹部30Rから車体前方に向かって凹まされる高さよりも高く設定されている。閉塞部53に対して十分に高くすることで、開口33への水の侵入を防ぐ。
リフレクタについて詳細を次図で説明する。
【0045】
図6に示されるように、車幅方向外側の取付部43は、本体部41から立ち上げられる基部43aと、この基部43aの先端に形成され開口(図3、符号33)に係止される爪部43bとから形成されている。爪部43bは、車幅方向外側を向けて形成されている。
【0046】
車幅方向内側の取付部44は、本体部41から立ち上げられる基部44aと、この基部44aの先端に形成され開口(図3、符号34)に係止される爪部44bとから形成されている。爪部44bは、車幅方向内側を向けて形成されている。
【0047】
ねじ取付孔45の側方に、さらに縦壁部63が形成されている。この縦壁部63は、凹部(図3、符号30R)に取付けるための部位を有さない。また、縦壁部63の下端は、第2の還流孔58に車幅方向で重なっている。
【0048】
リフレクタ40Rを凹部30Rに取付ける場合は、車体後方側からリフレクタ40Rを凹部に向かって押し込む。
【0049】
図7に示されるように、押し込むことで爪部44bが開口44に係止され、リフレクタ40Rが凹部30Rに仮止めされる。また、開口34は、取付部44が取付けられる部位(爪部44b近傍)を囲うように、閉塞部54で覆われている。
【0050】
閉塞部53,54で覆うことにより、開口33,34への水の侵入を抑制する。開口33,34への水の侵入を抑制することにより、水がリヤバンパ20の表側(一般面21側)へ流れることを防止することができる。
【0051】
なお、爪部43bも図7に示されるのと同様の構成で開口33に係止されている。また、開口33は、取付部43が取付けられる部位(爪部43b近傍)を囲うように、閉塞部53で覆われている
【0052】
図6も参照して、取付部43,44が複数形成される場合に、爪部43b,44bは、互いに車幅方向逆側又は上下方向逆側を向けて形成されていることが望ましい。逆側を向けることで、リフレクタ40Rを凹部30Rに仮止めした場合のがたつきを抑制することができる。がたつきを抑制することで、ねじ取付け孔45をねじ通し孔35に容易に合わせることができ、リフレクタ40Rの取付け作業が容易になる。
【0053】
図8に示されるように、仮止めされたリフレクタ40Rは、車体前方側からタッピングねじ65をねじ取付け孔45に螺合させることで凹部30Rに固定される。リフレクタ40Rが凹部30Rに当接する部位を当接部66という。当接部66は、底面部31の一部を占めている。
このような車両10の作用を、次図以降で説明する。
【0054】
図9に示すように、例えば、車両10の走行中に、後輪12Rが泥水等の水を跳ね上げる(矢印(1)参照。)。跳ね上げられた水は、リヤバンパ20の背面24近傍の気流により、矢印(2)で示すように、リヤバンパ20の背面24に沿って車体外側から内側へ向かって流れるものと考えられる。車体外側から内側に向かって流れた水は、開口33,34や、ねじ通し孔35を介してリフレクタ(図3、符号40)側に侵入する。
侵入した水の流れについては、次図で説明する。
【0055】
図10に示すように、開口33,34から侵入した水(矢印(3)参照。)は、それぞれ縦壁部47,48を伝って下方に向かう。矢印(4)で示すように、縦壁部47,48の下端に達した水は、稜線部51へ流れる。稜線部51は、車幅方向内側へ向かって下り勾配で形成されているため、水は、第1の還流孔57へ向かって流れる。第1の還流孔57へ向かって流れた水の大部分第1の還流孔57から、リヤバンパ20の背面(図9、符号24)側へ戻される。第1の還流孔57の周辺を通過し、第1の還流孔57から戻らなかった水は、矢印(5)で示すように、稜線部51の下端部まで流れる。稜線部51の下端部までながれたた水は、第2の還流孔58からリヤバンパ20の背面側へ戻される。
【0056】
ねじ通し孔(図8、符号35)からタッピングねじ(図8、符号65)を介して、リフレクタ40R側に水が滲み出すことがある。このような水も、基本的には開口33,34から侵入した水と同じように流れる。即ち、矢印(6)で示すように、ねじ取付孔45から縦壁部49を伝って、ほとんどの水が第1の還流孔57へ流れる。第1の還流孔57から戻らなかった水は、矢印(5)で示すように、稜線部51の下端部に流れ、第2の還流孔58からリヤバンパ20の背面側へ流される。
【0057】
図9及び図10から、以下のことがいえる。
リフレクタ40Rは、上下方向に延在する縦壁部49を有し、凹部30Rは、縦壁部49の車両下方近傍に対応する位置に、第1の還流孔57を有する。凹部30Rの開口33,34から侵入した泥水等の水は、縦壁部49を伝って第1の還流孔57に導かれる。水は、第1の還流孔57からリヤバンパ20の背面24へ向かって戻される。水がリフレクタ40Rを介して、リヤバンパ20の表(図1、一般面21参照。)へと流れることを防ぐことができる。表側へ水が流れることを防止することで、リヤバンパ20の外観性を高めることができる。
【0058】
加えて、縦壁部49は、リフレクタ40Rと共に一体成形することができ、第1の還流孔57は、凹部30Rに開けられた孔である。即ち、リヤバンパ20の外観性を高めるために、新たな部品を用いる必要がない。
【0059】
以上から、本発明によれば、少ない部品点数でありながら、高い外観性を保つことのできる車両10を提供することができる。
【0060】
さらに、リヤバンパ20は、その背面24に開口33の車幅外方に立設する衝立部62(図5も参照。)を有する。後輪12Rによって巻き上げられた水は、リヤバンパ20背面24側の風の流れによって、凹部30R背面24aを車幅方向外側から内側へ向かって流れているものと考えられる。開口33の車幅外方に衝立部62を立設することにより、車幅方向の外側から開口33へ向かって流れる水の侵入を抑制する。開口33への水の侵入を抑制することにより、さらに、水がリヤバンパの表側へ流れることを防止することができる。
【0061】
加えて、車体11は、車体11前後方向に向かって配設され、車幅方向の一方に偏倚する消音器70を備え、凹部30Rは、消音器70の側部近傍に位置している。消音器70は、高温の排気ガスが流れる部材である。消音器70が凹部30Rの近傍に配置されていることにより、凹部30Rは、消音器70からの熱の影響を受けやすい。ここで、リヤバンパ20の一般面(図1、符号21)側へ水が流れないための対策としては、本発明による構造の他、遮蔽部材によってリヤバンパ20の背面24を覆うことが考えられる。
しかし、遮蔽部材の素材によっては、消音器70からの熱により、遮蔽部材が劣化する。劣化する場合には、遮蔽部材を消音器70の近傍で用いることは困難である。
本発明によれば、凹部30Rの第1・第2の還流孔57,58から水を排出する。凹部30Rの還流孔57,58から水を排出するため、他の部品を使用する必要がない。即ち、遮蔽部材を設定できない部位であっても、リヤバンパ20の一般面側へ水が流れることを防止できる。
【0062】
図8も参照し、凹部30Rは、リフレクタ40Rに接触する当接部66と、車幅方向の一方に向かって傾斜する稜線部51とを有している。特に図10に示すように、稜線部51の下側の端部に、第2の還流孔58が形成されている。リフレクタ40R内部に侵入した水は、当接部66を介して稜線部51に滲み出る。稜線部51に滲み出た水は、稜線部51の傾斜により下方に向かって流れる。下方に向かって流れた水の一部は、第1の還流孔57からリヤバンパ20の背面24へ向かって流れる。一方、第1の還流孔57へ流れなかった水の残部は、稜線部51の傾斜によりさらに下方に向かって流れる。水の残部は稜線部51の下側の端部に形成された第2の還流孔58からリヤバンパ20の背面24へ向かって流れる。第2の還流孔58を備えたことで、より確実に水がリヤバンパ20の表側へ流れることを防止することができる。
【0063】
尚、本発明に係る車両の後部構造は、消音器が車体左側に寄せて配置されるものや、車体の左右に分配されるもの、中央に配置されるものであっても適用することができる。即ち、消音器の取付位置にかかわらず、本発明に係る車両の後部構造を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の車両の後部構造は、車両が降雨時走行する際の構造として好適である。
【符号の説明】
【0065】
10…車両、11…車体、20…リヤバンパ、30R,30L…凹部、33,34…開口、40R,40L…リフレクタ、43,44…取付部、49…縦壁部、51…稜線部、53,54…閉塞部、57…第1の還流孔、58…第2の還流孔、62…衝立部、66…当接部、70…消音器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の後部に車幅方向に延在し、前記車体の前方に膨出させた凹部を有するリヤバンパと、前記凹部に取付けられているリフレクタと、を備えると共に、
前記凹部は、前記リフレクタを前記リヤバンパに固定する開口を有する車両の後部構造であって、
前記リフレクタは、前記開口に取付けるための取付部と、上下方向に延在する縦壁部とを有し、
前記凹部は、前記縦壁の車両下方近傍に対応する位置に、還流孔を有することを特徴とする車両の後部構造。
【請求項2】
前記凹部は、
前記リフレクタに接触する当接部と、
この当接部の外方に車幅方向に延在し、車幅方向の一方に向かって傾斜する稜線部と、を有し、
前記稜線部の端部に、さらに還流孔が形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両の後部構造。
【請求項3】
前記リヤバンパは、その背面に前記開口の車幅外方に立設する衝立部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の後部構造。
【請求項4】
前記開口は、前記取付部が取付けられる部位を囲うように、閉塞部で覆われていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の車両の後部構造。
【請求項5】
前記車体は、車体前後方向に向かって配設され、車幅方向の一方に偏倚する消音器を備え、
前記凹部は、前記消音器の側部近傍に位置していることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の車両の後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−107494(P2013−107494A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253898(P2011−253898)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)