説明

車両の燃料供給装置

【課題】キャニスタを床下に配置するレイアウトであっても、キャニスタを前方からの飛散物から保護することを可能にする。
【解決手段】車体11の床(車体フロア)25下に燃料タンク35が配置され、床25下で且つ燃料タンク35の車体前方にはキャニスタ36が配置され、キャニスタ36の前方に車幅方向に延びるガード部材37が設けられる車両の燃料供給装置30において、車体11に、車体前方に配置されるパワープラント27と、このパワープラント27を支持するサブフレーム26と、これらのパワープラント27及びサブフレーム26を連結するトルクロッド38と、サブフレーム26に形成されトルクロッド38を取付けるロッド取付部41と、このロッド取付部41に設けられたカバー部材39と、を備え、ガード部材37が、燃料タンク35の底部35aよりも低い位置に設けられるとともに、キャニスタ36を、カバー部材39の後方に位置させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の床下に燃料タンクが配置され、床下で且つ燃料タンクの車体前方には燃料タンクから生じる蒸発燃料を吸着するキャニスタが配置される車両の燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の燃料供給装置が配置される車体レイアウトの一例として、エンジン(パワープラント)の前方から排気管を延出した排気装置が知られる。
この技術は、触媒コンバータやマフラ等の容積部を排気管と連結して構成した排気装置であり、最上流に位置する容積部の一部に弱剛性部を設け、弱剛性部に排気管端を嵌合するとともに、最上流の容積部以降の質量の大きな後方の排気系を揺動不能に車体へ支持したものである。
【0003】
この技術によれば、質量の大きな後方の排気系を揺動不能に車体へ支持したので、騒音及び振動を低減することが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−54650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1の技術は、パワープラント(エンジン)の前方から排気管が延出され、排気管がパワープラントの下方を通過して車体後方に延出されている。
このように、パワープラントの前方から排気管が延出される前方排気構造を有するとともに、パワープラントがサブフレーム(サブシャーシ)に支持され、燃料タンクからの蒸発燃料(蒸発ガス)を一時貯留するキャニスタが床下に且つサブフレームの後方に配置される車両の燃料供給装置では、排気管がサブフレームの下方を通過するために、サブフレームの設定高さが高くなり、サブフレームでキャニスタを保護することが困難になる。 そこで、何らかの手段でキャニスタを保護することが望まれる。
【0006】
本発明は、キャニスタを床下に配置するレイアウトにあっても、キャニスタを前方からの飛散物から保護することができる車両の燃料供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体の床下に燃料タンクが配置され、床下で且つ燃料タンクの車体前方には燃料タンクから生じる蒸発燃料を吸着するキャニスタが配置され、キャニスタの前方に車幅方向に延びるガード部材が設けられる車両の燃料供給装置において、車体に、車体前方に配置されるパワープラントと、このパワープラントを支持するサブフレームと、これらのパワープラント及びサブフレームを連結するトルクロッドと、サブフレームに形成されトルクロッドを取付けるロッド取付部と、このロッド取付部に設けられたカバー部材と、を備え、ガード部材が、燃料タンクの底部よりも低い位置に設けられるとともに、キャニスタを、カバー部材の後方に位置させたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、カバー部材の下端部が、ガード部材の下端部よりも高い位置にあることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、パワープラントの排気ガスを導く排気管が車体の前方から延出されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車体の床下に燃料タンクが配置され、床下で且つ燃料タンクの車体前方には燃料タンクから生じる蒸発燃料を吸着するキャニスタが配置され、キャニスタの前方に車幅方向に延びるガード部材が設けられ、車両の燃料供給装置が構成される。
車体に、車体前方に配置されるパワープラントと、このパワープラントを支持するサブフレームと、これらのパワープラント及びサブフレームを連結するトルクロッドと、サブフレームに形成されトルクロッドを取付けるロッド取付部と、このロッド取付部に設けられたカバー部材と、を備える。
ガード部材が、燃料タンクの底部よりも低い位置に設けられるとともに、キャニスタを、カバー部材の後方に位置させた。従って、キャニスタをエンジンルーム内ではなく床下に配置するレイアウトであっても、キャニスタを、前方からの飛散物から保護することができる。
【0011】
請求項2に係る発明では、カバー部材の下端部が、ガード部材の下端部よりも高い位置にあるので、ガード部材が燃料タンクを保護するために低い位置にあっても、カバー部材でキャニスタを保護することができる。
【0012】
請求項3に係る発明では、パワープラントの排気ガスを導く排気管が車体の前方から延出された前方排気構造を有する。そのため、排気管はサブフレームの下を通過させる必要がある。すなわち、サブフレームの下に排気管を通すためにサブフレームが高い位置になっても、カバー部材でキャニスタを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車両の燃料供給装置を示す底面図である。
【図2】図1に示された車両の燃料供給装置の正面図である。
【図3】図1に示された車両の燃料供給装置の側面図である。
【図4】図1に示された車両の燃料供給装置の作用説明図である。
【図5】図4の5部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0015】
図1〜図3に示されたように、車両10は、車体11に、車幅方向に延ばされ車室12とエンジンルーム13とに仕切るダッシュボードロア17と、車体前後方向に延びる左右のフロントサイドフレーム(サイドフレーム)18,18と、これらのフロントサイドフレーム18,18の後端から車体後方に延ばされた左右のフロアフレーム19,19と、これらのフロアフレーム19,19の車幅外方で車体前後方向に延びる左右のサイドシル21,21と、左右のサイドシル21,21の前部及び左右のフロアフレーム19,19の前部同士を車幅方向に繋ぐ左右のアウトリガー22,22と、左右のフロアフレーム19,19の前部を車幅方向に繋ぐダッシュボード側クロスメンバ23と、左右のフロアフレーム19,19の中間同士を車幅方向に繋ぐフロアクロスメンバ24と、フロアクロスメンバ24、ダッシュボード側クロスメンバ23、左右のアウトリガー22,22、左右のサイドシル21,21及び左右のフロアフレーム19,19の上部を覆う床(車体フロア)25と、パワープラント27を支持するサブフレーム(サブシャーシ)26と、を備える。
【0016】
車両の燃料供給装置30は、車体11の床(車体フロア)25下に配置される燃料タンク35と、燃料タンク35の前方に配置され、燃料タンク35から生じる蒸発燃料を吸着するキャニスタ36と、燃料タンク35を保護するガード部材(ガードパイプ)37と、パワープラント27とサブフレーム26とに連結されるトルクロッド38を保護するカバー部材(トルクロッドカバー)39と、の配置構造である。以下、詳細を説明する。
【0017】
パワープラント27は、エンジン31と変速機32とから構成される部材であり、車体前方(エンジンルーム13)に配置される。また、パワープラント27は、排気ガス33を導く排気管33が車体11の前方から延出された前方排気構造を有する。そのため、排気管33はサブフレーム26の下を通過させる必要がある。さらに、パワープラント27は、トルクロッド38を介してサブフレーム26に支持されている。
【0018】
トルクロッド38は、パワープラント27をサブフレーム26に支持し、パワープラント27からサブフレーム26への振動伝達を抑制するための支持棒であり、エンジン31とサブフレーム26との間に渡される(パワープラント27及びサブフレーム26を連結する)。
【0019】
サブフレーム26は、左右のフロントサイドフレーム18,18及びダッシュボード側クロスメンバ23にフローティング支持された部材である。また、サブフレーム26は、下方に排気管33を通過させるために凹部42が形成され、この凹部42に、トルクロッド38を取付けるロッド取付部41が形成される。
【0020】
ロッド取付部41には、トルクロッド38のサブフレーム26側を覆うカバー部材(トルクロッドガード)39が設けられる。これにより、サブフレーム26の下に排気管33を通すためにサブフレーム26が高い位置になっても、カバー部材39でキャニスタ36を保護することができる。
【0021】
床(車体フロア)25の下には、燃料を貯留する燃料タンク35と、この燃料タンク35の車体前方に配置され、燃料タンク35から生じる蒸発燃料を吸着するキャニスタ36と、このキャニスタ36の前方に配置され、キャニスタ36及び燃料タンク35を保護するガード部材(ガードパイプ)37と、パワープラント27(エンジン31)の車体前方から延出され、サブフレーム26の下を通過するとともに燃料タンク35の側方を通過
して車体後方に延びる排気管33と、が配置されている。
【0022】
燃料タンク35は、略車体中心C1に配置される。詳細には、前方がフロアクロスメンバ24に近接させて配置され、側方が左右のフロアフレーム19,19に近接して配置され、左右のタンクバンド45,45で車体11側に固定されている。
【0023】
キャニスタ36は、車体中心C1に対して車幅外方(車体11の右側)に配置される。キャニスタ36の前部がダッシュボード側クロスメンバ23に支持され、キャニスタ36の後部は、車体フロア25に支持される。
【0024】
また、キャニスタ36は、カバー部材(トルクロッドカバー)39の後方に位置させた。これにより、キャニスタ36をエンジンルーム13内ではなく床(車体フロア)25下に配置するレイアウトであっても、キャニスタ36を、前方からの飛散物から保護することができる。
キャニスタ36は、前部46がダッシュボード側クロスメンバ23に取付けられ、後部47が床(車体フロア)25に取付けられる。
【0025】
ガード部材37は、燃料タンク35及びキャニスタ36の前方であって、右のフロアフレーム19からダッシュボード側クロスメンバ23に車幅方向に延びる部材である。また、ガード部材37は、燃料タンク35の底部35aよりも低い位置に設けられる。詳細には、ガード部材37の下端部37aは、燃料タンク35の底部35aよりも寸法S1だけ低い位置に設定されている(図3参照)。
【0026】
すなわち、ガード部材37は、ダッシュボード側クロスメンバ23に取付けられる左取付部51と、この左取付部51から略垂直に下方に延ばされる垂直部52と、背面視(平面視)ではキャニスタ36の前方部位に(車幅方向に)沿わせた平行部53と、キャニスタ36の右のフロアフレーム19側では車幅外方に向けて車体後方に傾斜させた傾斜部54と、この傾斜部54から車幅外方に設けられ、右のフロアフレーム19に取付けられる右取付部55と、からなる。
【0027】
ガード部材37に平行部53を設けることで、ガード部材37でキャニスタ36の前方を保護することができる。ガード部材37に傾斜部54を設けることで、ガード部材37でキャニスタ36の右側方も保護することができる。
【0028】
また、カバー部材(トルクロッドカバー)39の下端部39aは、ガード部材(ガードパイプ)37の下端部37aよりも高い位置に設定される。これにより、ガード部材37が燃料タンク35を保護するために低い位置にあっても、カバー部材39でキャニスタ36を保護することができる。
【0029】
排気管33は、詳細には、パワープラント27(エンジン31)の車体前方から且つ車体中心C1の左から延出される略L字状の延出管61と、この延出管61の先端から車体下方に延びる垂直管62と、この垂直管62の先端から車体後方に且つ車体中心C1に対して平行に延びる前平行管63と、この前平行管63の先端から車幅外方に且つ車体後方に延びる傾斜管64と、この傾斜管64の先端から車体後方に延びる後平行管65と、からなる。
【0030】
前平行管63は、サブフレーム26の下を通過して車体後方に延びる。傾斜管64には、排気ガスを浄化する触媒ユニット66が設けられる。後平行管65は、燃料タンク35の側方と左のフロアフレーム19との間を通過する。
【0031】
図4(a)に示されたように、車両の燃料供給装置30では、キャニスタ36の下端部36aは、カバー部材(トルクロッドカバー)39の下端部39aよりも高い位置に設定される。カバー部材39の下端部39aは、ガード部材(ガードパイプ)37の下端部37aよりも高い位置に設定される。
【0032】
すなわち、図5に示されたように、規定の乗車定員がある時の車高の基準線を、定積グランドレベルGLとするときに、ガード部材37の下端部37aから定積グランドレベルGLまでの高さをh1、カバー部材39の下端部39aから定積グランドレベルGLまでの高さをh2、キャニスタ36の下端部36aから定積グランドレベルGLまでの高さをh3とするときに、これらの高さh1〜h3の関係は、h1<h2<h3の関係で設定されている。
【0033】
また、図4(b)に示されたように、車両の燃料供給装置30では、トルクロッド38の中心、カバー部材39(トルクロッドカバー)の中心、ガード部材(ガードパイプ)37の平行部53のほぼ中央、及びキャニスタ36は、車体前後方向に延ばした延長線C2の上に配置されている。
【0034】
図1〜図5に示されたように、車両の燃料供給装置30では、車体11の床(車体フロア)25下に燃料タンク35が配置され、床(車体フロア)25下で且つ燃料タンク35の車体前方には燃料タンク35から生じる蒸発燃料を吸着するキャニスタ36が配置され、キャニスタ36の前方に車幅方向に延びるガード部材(ガードパイプ)37が設けられる。
【0035】
車体11に、車体前方に配置されるパワープラント27と、このパワープラント27を支持するサブフレーム26と、これらのパワープラント27及びサブフレーム26を連結するトルクロッド38と、サブフレーム26に形成されトルクロッド38を取付けるロッド取付部41と、このロッド取付部41に設けられたカバー部材39と、を備える。
【0036】
ガード部材(ガードパイプ)37が、図3に示されたように、燃料タンク35の底部35aよりも低い位置に設けられるとともに、キャニスタ36を、カバー部材(トルクロッドカバー)39の後方に位置させた。従って、キャニスタ36をエンジンルーム13内ではなく床(車体フロア)25下に配置するレイアウトであっても、キャニスタ36を、前方からの飛散物から保護することができる。
【0037】
図3及び図5に示されたように、車両の燃料供給装置30では、カバー部材39の下端部39aが、ガード部材37の下端部37aよりも高い位置にあるので、ガード部材37が燃料タンク35を保護するために低い位置にあっても、カバー部材39でキャニスタ36を保護することができる。
【0038】
図1に示されたように、車両の燃料供給装置30では、パワープラント27の排気ガスを導く排気管33が車体11の前方から延出された前方排気構造を有する。そのため、排気管33はサブフレーム26の下を通過させる必要がある。すなわち、サブフレーム26の下に排気管33を通すためにサブフレーム26が高い位置になっても、カバー部材39でキャニスタ36を保護することができる。
【0039】
尚、本発明に係る車両の燃料供給装置は、図1に示すように、排気管33は床(車体フロア)25の車体11の左側に配置され、キャニスタ36、ガード部材37、トルクロッド38及びカバー部材39は車体11の右側に配置されたが、これに限るものではなく、排気管は床(車体フロア)の車体の右側に配置され、キャニスタ、ガード部材、トルクロッド及びカバー部材は車体の左側に配置されるものであってもよい。
【0040】
この場合に、ガード部材の平行部53及び傾斜部54も車体中心C1に対して左右対称に形成される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る車両の燃料供給装置は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0042】
10…車両、11…車体、18…サイドフレーム(フロントサイドフレーム)、25…床(車体フロア)、26…サブフレーム、27…パワープラント、30…車両の燃料供給装置、33…排気管、35…燃料タンク、36…キャニスタ、37…ガード部材(ガードパイプ)、38…トルクロッド、39…カバー部材(トルクロッドカバー)、41…ロッド取付部、C1…車体中心、C2…延長線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の床下に燃料タンクが配置され、前記床下で且つ前記燃料タンクの車体前方には前記燃料タンクから生じる蒸発燃料を吸着するキャニスタが配置され、前記キャニスタの前方に車幅方向に延びるガード部材が設けられる車両の燃料供給装置において、
前記車体は、車体前方に配置されるパワープラントと、このパワープラントを支持するサブフレームと、これらのパワープラント及びサブフレームを連結するトルクロッドと、前記サブフレームに形成され前記トルクロッドを取付けるロッド取付部と、このロッド取付部に設けられたカバー部材と、を備え、
前記ガード部材は、前記燃料タンクの底部よりも低い位置に設けられるとともに、前記キャニスタを、前記カバー部材の後方に位置させたことを特徴とする車両の燃料供給装置。
【請求項2】
前記カバー部材の下端部は、前記ガード部材の下端部よりも高い位置にあることを特徴とする請求項1に記載の車両の燃料供給装置。
【請求項3】
前記パワープラントは、排気ガスを導く排気管が前記車体の前方から延出されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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